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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】ホームステップ装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
B61B1/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018112107
(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2019214276
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 美樹
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-297670(JP,A)
【文献】米国特許第01364749(US,A)
【文献】実開昭49-023399(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0196234(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0291186(US,A1)
【文献】実開昭57-077499(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
B60R 3/02
B62D 31/02
E05B 17/20
E05C 1/04
E05C 3/14
E05C 1/14
B64D 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体から出し入れされるステップ部材の位置を固定するロック部材が、当該ロック部材に連結された連結部材の端部が前記筐体内に設けられたロック用の孔に差し込まれた状態だと前記位置を固定する姿勢で維持され
前記ロック部材が前記位置を固定しない姿勢のときに前記端部を差し込む非ロック用の孔が前記筐体内に設けられ、
前記連結部材は鉛直方向に移動可能に前記ロック部材と連結されており、前記端部は鉛直下方を向いており、前記ロック用の孔と前記非ロック用の孔の間に前記端部が接触すると当該端部を滑らせて各々の孔まで案内する突起が設けられているホームステップ装置。
【請求項2】
前記端部が前記突起に接触する接触面積が閾値未満である
請求項に記載のホームステップ装置。
【請求項3】
前記突起に前記端部が接触する状態では前記連結部材の上端が前記筐体の蓋付きの開口部から突き出た状態になる
請求項又はに記載のホームステップ装置。
【請求項4】
前記連結部材は、付勢部材により鉛直下向きに力を加えられている
請求項からのいずれか1項に記載のホームステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームと車両の隙間への落下を防ぐ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ホームと車両の隙間への落下を防ぐ技術として、特許文献1には、可動ステップの正常又は異常を判断するためにモータ等の状態検知センサ及び可動ステップの位置検知センサ等を備えたプラットホームステップ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-63693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステップを出し入れするホームステップ装置において、例えばステップを出した状態で異常が発生してステップが動かなくなると、出発した車両への接触の危険があるため手動でステップを格納させなければならない。その場合に、ステップ部材と筐体の隙間から侵入した小石等の異物がストッパとステップ部材の間に挟まると、ステップ部材が最後まで収容されなくなり少し張り出した状態になる。この状態ではステップ部材に車両が接触する恐れがあり危険である。
本発明は、上記の背景に鑑み、ステップ部材の位置を確実に固定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、筐体から出し入れされるステップ部材の位置を固定するロック部材が、当該ロック部材に連結された連結部材の端部が前記筐体内に設けられたロック用の孔に差し込まれた状態だと前記位置を固定する姿勢で維持されるホームステップ装置を第1の態様として提供する。
【0006】
第1の態様のホームステップ装置によれば、ステップ部材の位置を確実に固定することができる。
【0007】
上記の第1の態様のホームステップ装置において、前記ロック部材が前記位置を固定しない姿勢のときに前記端部を差し込む非ロック用の孔が前記筐体内に設けられている、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0008】
第2の態様のホームステップ装置によれば、ステップ部材の位置を固定しない位置からロック部材が動かないようにすることができる。
【0009】
上記の第2の態様のホームステップ装置において、前記連結部材は鉛直方向に移動可能に前記ロック部材と連結されており、前記端部は鉛直下方を向いており、前記ロック用の孔と前記非ロック用の孔の間に前記端部が接触すると当該端部を滑らせて各々の孔まで案内する突起が設けられている、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0010】
第3の態様のホームステップ装置によれば、端部がいずれの孔にも差し込まれていない状態が起こりにくいようにすることができる。
【0011】
上記の第3の態様のホームステップ装置において、前記端部が前記突起に接触する接触面積が閾値未満である、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0012】
第4の態様のホームステップ装置によれば、端部が突起上で止まりにくいようにすることができる。
【0013】
上記の第3又は第4の態様のホームステップ装置において、前記突起に前記端部が接触する状態では前記連結部材の上端が前記筐体の蓋付きの開口部から突き出た状態になる、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0014】
第5の態様のホームステップ装置によれば、連結部材の端部が孔に差し込まれていない状態に気付きやすいようにすることができる。
【0015】
上記の第3から第5のいずれか1つの態様のホームステップ装置において、前記連結部材は、付勢部材により鉛直下向きに力を加えられている、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0016】
第6の態様のホームステップ装置によれば、端部が突起上で止まりにくいようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例に係るホームステップ装置の外観を表す図
図2】ホームステップ装置の外観を表す図
図3】ホームステップ装置の外観を表す図
図4】天板部を外したホームステップ装置の外観を表す図
図5】天板部を外したホームステップ装置の平面図を表す図
図6】ステップを表す図
図7】収容されたステップ部材を表す図
図8】鉛直上方から見た手動ロック部を表す図
図9A】水平方向に見た手動ロック部を表す図
図9B】水平方向に見た手動ロック部を表す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1]実施例
図1は実施例に係るホーム設備1の外観を表す。ホーム設備1は、鉄道の駅のホーム9(プラットホーム)の線路側に設置され、ホーム9からの乗客の転落を防ぎつつ、鉄道の車両がホーム9に到着したときには乗降を可能にすると共に乗降時の転落を防ぐ役割を果たす設備である。図1(a)では、線路側から見たホーム設備1が表され、図1(b)では、鉛直上方から見たホーム設備1が表されている。
【0019】
ホーム設備1は、少なくとも1つのホームドア3と、少なくとも1つのホームステップ装置10とを備えており、本実施例では、複数のホームドア3と、複数のホームステップ装置10とを備えている。各ホームドア3は、いずれもドア4と、格納部5とを備える。ドア4は、本実施例では、停車した車両のドアに対向する位置に配置されている。格納部5は、水平方向の一方の端から開放位置にあるドア4を格納する(いわゆる戸袋としての役割を果たす)。
【0020】
また、格納部5は、反対側の端が閉鎖位置にあるドア4と接触してホーム9にいる乗客を線路側に通さないようにしている。開放位置とは最も開いた状態のドア4の位置であり、閉鎖位置とは完全に閉じた状態のドア4の位置である。複数のホームドア3がホーム9の延伸する方向であるホーム延伸方向A3(線路の延伸方向でもある)の全体に渡って並べて設置されることで、ホーム9の線路側及び内側を隔てるようにしている。ここでいう内側とは、ホーム9の線路側を外側とした場合の外側から離れた部分を意味する。線路側及び内側は、ホーム9のうちの線路に近い方(線路側)及び遠い方(内側)と言い換えてもよい。
【0021】
ホームステップ装置10は、筐体20と、ステップ部材30とを備え、筐体20に収容されたステップ部材30を出し入れする装置である。筐体20は、板状且つ中空の形をしており、線路側に開口部21を有している。ステップ部材30は、筐体20の内部に収容され、後述する駆動手段によって駆動されて筐体20の開口部21を通って出し入れされる。ステップ部材30は、ホーム9と停車した車両との隙間に張り出して、乗降する乗客の足場となる。
【0022】
ホームステップ装置10は、前述したホーム9の内側から線路側に向かう方向(張出方向A1)にステップ部材30を移動させて筐体20から張り出した張出状態にし、張り出した状態のステップ部材30を線路側からホーム9の内側に向かう方向(収容方向A2)に移動させて筐体20に収容された収容状態にする。ホームステップ装置10は、ホーム9のホーム延伸方向A3の寸法が張出方向A1の寸法よりも長い形をしている。なお、ホーム9のホーム延伸方向A3は、張出方向A1及び収容方向A2に直交する方向であるものとする。
【0023】
ホーム9には、ホームステップ装置10を設置するための切り欠き93が設けられている。切り欠き93には、収容部材6が設置されている。収容部材6は、ホームステップ装置10を収容するためにホーム9の切り欠き93に設置される部材である。収容部材6は、中空の直方体の6面のうち上面及び線路側の側面を除く4面を有する形をしており、内側にホームステップ装置10を収容可能な大きさで形成された箱状の部材である。収容部材6は、自部材と切り欠き93との間にモルタル等の充填材が注入されることで切り欠き93に固定されている。
【0024】
ホームステップ装置10は、切り欠き93に固定された収容部材6の内側に設置されている。この状態で、ホームステップ装置10は、自装置の上面11がホーム9の上面91と概ね同一の平面を成し、自装置の線路側の側面12(ステップ部材30が収容された状態における側面)がホーム9の側面92と概ね同一の平面を成すように設置される。ホーム9に設置されたホームステップ装置10のホーム延伸方向A3の両端の上方には、ホームドア3の格納部5が設置されている。
【0025】
ステップ部材30は、本実施例では、ホーム延伸方向A3の寸法が、隣り合う格納部5同士の距離(ドア4が開いたときの乗降経路の幅)と概ね同じになっている。ホームドア3及びホームステップ装置10は、図示せぬ制御装置に電気的に接続されており、ドア4の開閉とステップ部材30の出し入れが連動するようになっている。具体的には、例えば、車両が停止すると、まずステップ部材30が張り出し、次にドア4が開く。そして、出発時間になると、まずドア4が閉じてからステップ部材30が収容され、車両が出発する。なお、乗客の安全が確保されるのであれば、これとは異なるタイミングで開閉及び出し入れが行われてもよい。
【0026】
図2及び図3はホームステップ装置10の外観を表す。図2では、ステップ部材30が筐体20に収容された状態のホームステップ装置10が表されており、図3では、ステップ部材30が張出方向A1に移動して筐体20から張り出した状態のホームステップ装置10が表されている。筐体20は、本体部40と、天板部50とを備える。本体部40は、中空の直方体のうち鉛直上方及び線路側の面を除いた4面を有する箱状の部材である。
【0027】
天板部50は、本体部40の鉛直上方を覆う板状の部材であり、5枚の天板51、52、53、54、55を有する。各天板は、金属等で形成され、乗客に踏まれても容易には変形しない強度を有する。各天板には、滑り止めの突起が上面に形成されている。この滑り止めの突起は、ステップ部材30の上面にも形成されている。各天板は、本体部40内の後述する天板支持部材にリベットで固定されている。ホーム9に一度設置すると、天板を外す機会は少ないが、修理等で必要な場合は、ドリル等を用いてリベットを取り外すことで天板を外すことができる。
【0028】
ただし、それでは手間がかかるので、例えば不具合でステップ部材30が動かなくなるといった緊急の事態に対応するために、作業員(例えば駅員)が手動で作業を行うための開口部56が天板53に設けられており、開口部57が天板54に設けられている。天板53は開口部56を覆う蓋58を有し、天板54は開口部57を覆う蓋59を有している。蓋58及び59は、一般人が取り外しできないように、専用の冶具を用いて天板53、54への取り付け及び取り外しが行われる。
【0029】
図4は天板部50を外したホームステップ装置10の外観を表し、図5はその平面図を表す。なお、図5以降では、図を見やすくするため、滑り止めの突起は図示を省略している。ホームステップ装置10は、本体部40と、天板支持部材41-1及び4つの41-2(それぞれを区別しない場合は「天板支持部材41」という)と、ガイドレール42-1及び42-2(それぞれを区別しない場合は「ガイドレール42」という)と、モータ駆動部43と、電磁ブレーキ部44と、手動駆動部45と、手動ロック部60と、設置台70とを備える。
【0030】
本体部40は、側板401、402と、後方板403と、底板404とを有し、上述した4面を有する形状をしている。天板支持部材41は、各天板の端部に対応する位置に設けられ、各天板を支持する。天板支持部材41-1は、本体部40の側板401、402及び後方板403の鉛直上方の端に取り付けられている。天板支持部材41-2は、底板404のうち隣接する天板同士が接する位置に取り付けられている。各天板支持部材41には、前述したリベットを取り付ける孔が設けられており、各天板が固定される。
【0031】
ガイドレール42は、天板部50を含む筐体20内に設けられ、自レールの延伸する方向にステップ部材30を案内する。ガイドレール42-1は、ホームステップ装置10を張出方向A1から見たときの中央よりも右側に配置され、ガイドレール42-2は、ホームステップ装置10を張出方向A1から見たときの中央よりも左側に配置されている。モータ駆動部43は、モータ431及びボールねじ432を有し、モータ431の回転力をボールねじ432が張出方向A1に沿った方向の力に変換してステップ部材30に伝達し、ステップ部材30を駆動する。
【0032】
このように、モータ駆動部43は、電力で動作し、筐体20に収容されるステップ部材30に駆動力を伝達してそのステップ部材30を出し入れする。モータ駆動部43は、ホームステップ装置10を張出方向A1から見たときのホーム延伸方向A3における中央に配置されている。ここで、ステップ部材30について図6を参照して説明する。
【0033】
図6はステップ部材30を表す。図6(a)では鉛直上方から見たステップ部材30を表し、図6(b)では収容方向A2から見たステップ部材30を表している。ステップ部材30は、ステップ部31と、支持部32と、伝達部33とを有する。ステップ部31は、筐体20から張り出して乗客に踏みつけられる板状の部分である。支持部32は、レール部32-1及び32-2と、板部32-3とを有する。
【0034】
レール部32-1及び32-2は、ガイドレール42の鉛直上方に配置され、ガイドレール42によって支持される。レール部32-1は、レール上を移動可能な形をしたキャスタ部35-1を鉛直下方に有し、キャスタ部35-1は、ガイドレール42-1上を移動する。レール部32-2は、同じくキャスタ部35-2を鉛直下方に有し、キャスタ部35-2は、ガイドレール42-2上を移動する。
【0035】
板部32-3は、ステップ部31よりも厚手で且つステップ部31をわずかに小さくした形をした板状の部材であり、ステップ部31のほぼ全体を鉛直下方から支持する。板部32-3は、レール部32-1及び32-2は板部32-3に溶接されており、ステップ部31に加わる乗客の荷重をレール部32-1及び32-2も一体になって支えている。伝達部33は、モータ駆動部43のボールねじ432が挿入されるナット孔34を有する。ナット孔34に挿入されたボールねじ432が回転すると、ボールねじ432の回転力が直線移動の駆動力として伝達される。
【0036】
上記のとおり、ステップ部材30は、乗客が直接踏みつけるステップ部31と、ステップ部31を支持し且つガイドレール42による案内もされる支持部32とを一体にした一体型のステップである。また、ホームステップ装置10は、伝達部33に伝達される駆動力により、ガイドレール42の長手方向に案内されるこの一体型のステップ部材30を筐体20から出し入れする。
【0037】
図5に戻る。電磁ブレーキ部44は、張り出した状態になったステップ部材30が張出方向A1及び収容方向A2のいずれに動いても危険なので、動かないようにブレーキをかける部分である。電磁ブレーキ部44は、レール部32-2に接触してブレーキをかけるように設置されている。手動駆動部45は、モータ駆動部43等に異常が生じてステップ部材30の出し入れが正常に行われなくなった場合に、手動でステップ部材30の出し入れをするための手段である。
【0038】
図7は収容されたステップ部材30を表す。ステップ部材30は、例えばモータ駆動部43に異常が発生した場合でも、手動駆動部45を駅員等の作業員が操作することで、図7に表すように筐体20の内部に収容される。手動ロック部60は、このように手動で筐体20に収容されたステップ部材30が張出方向A1に(収容方向A2にも)動かないように固定(ロック)する手段である。
【0039】
レール部32-1には、ロック用の孔が設けられている。手動ロック部60は、棒状の部分を有し、この孔にその棒状の部分を挿入することでステップ部材30を固定する。設置台70は、本体部40の底板404に固定され、鉛直上方の面に手動ロック部60が設けられている。手動ロック部60の詳細について図8以降を参照して説明する。
【0040】
図8は鉛直上方から見た手動ロック部60を表す。図9A及び図9Bは水平方向に見た手動ロック部60を表す。手動ロック部60は、ばね固定部61と、2本のばね62と、2つのロック部材63と、軸部64と、ハンドル65と、差込棒66と、上部ストッパ67と、下部ストッパ68と、ばね69とを有する。ばね固定部61は、設置台70に固定された棒状の部材であり、2本のばね62の各一端がそれぞれ固定される。
【0041】
2本のばね62は、いずれもコイルバネであり、鉛直方向に並べて配置されている。鉛直上方に配置されたばね62の他端は鉛直上方に配置されたロック部材63に固定され、鉛直下方に配置されたばね62(鉛直上方のばね62と重なって見えていない)の他端は同じく鉛直下方に配置されたロック部材63に固定されている。2つのロック部材63は、いずれも筐体20から出し入れされるステップ部材30の位置を固定する部材である。
【0042】
ロック部材63は、鉛直上方から見るとクランクの形(棒状部の両端側が左右反対に直角に折れ曲がった形)をしており、一方の端部631にばね62が固定されている。ロック部材63は、端部631側の直角に折れ曲がった部分が軸部64に連結されている。軸部64は、設置台70に固定された棒状の部材であり、2つのロック部材63を回転可能に支持している。
【0043】
ロック部材63は、通常は図8(a)に表すようにばね62に引っ張られてばね62が固定された端部631とは反対側の端部632がステップ部材30のレール部32-1から離れるようになっている。ここで作業員が手動でステップ部材30を筐体20に収容させると、レール部32-1が図8(b)に表すように手動ロック部60の近くまで移動する。レール部32-1には、ロック部材63側の面に鉛直方向に並んだ2つの孔321が設けられている。
【0044】
この状態で作業員がハンドル65を操作して軸部64を軸にしてロック部材63を回転させると、2つの端部632(各ロック部材63の端部632)が2つの孔321にそれぞれ差し込まれて、ステップ部材30が張出方向A1及び収容方向A2に移動しないようにその位置を固定(ロック)する。以下ではロック部材63の図8(b)における位置をロック位置、図8(a)における位置を非ロック位置という。
【0045】
設置台70には、ロック部材63がロック位置にあるときに差込棒66が差し込まれるロック用の孔71と、ロック部材63が非ロック位置にあるときに差込棒66が差し込まれる非ロック用の孔72とが設けられている。図9A及び図9Bは、ハンドル65、差込棒66、上部ストッパ67、下部ストッパ68及びばね69を除き、これらの孔71及び72の中心を通る断面を表している。
【0046】
差込棒66は、ハンドル65の鉛直下方に接続された棒状の部材であり、2つのロック部材63に鉛直方向に移動可能に連結されている。ハンドル65及び差込棒66は本発明の「連結部材」の一例である。図9A(a)ではロック部材63がロック位置にあって差込棒66の鉛直下方を向いた端部661が非ロック用の孔71に差し込まれている。図9B(e)ではロック部材63が非ロック位置にあって端部661がロック用の孔72に差し込まれている。
【0047】
このように、差込棒66の端部661が筐体20内に設けられたロック用の孔72に差し込まれた状態だと、ステップ部材30の位置を固定する姿勢(位置及び向き)でロック部材63が維持される。ロック用の孔72が設けられていなければ、ロック部材63の端部632がレール部32-1の孔321から抜けてしまい、ステップ部材30が張出方向A1に移動する恐れがある。本実施例では、ロック用の孔72に差込棒66を差し込むことで、ロック部材63がロック位置から動かないようにしている。
【0048】
その結果、端部632が孔321から抜けないようにして、ステップ部材の位置を確実に固定することができる。また、ロック部材63がステップ部材30の位置を固定しない姿勢のときに差込棒66の端部661を差し込む非ロック用の孔71が筐体20内に設けられている。本実施例では、この非ロック用の孔71に差込棒66を差し込むことで、ステップ部材30の位置を固定しない非ロック位置からロック部材63が動かないようにすることができる。
【0049】
2つのロック部材63の中央の棒状部633には差込棒66を差し込み可能な孔634がそれぞれ空いており、それらの孔634に差込棒66を差し込むことで、差込棒66が鉛直方向に移動可能に連結されている。それだけだと差込棒66が抜けてしまうので、差込棒66には、上部ストッパ67と、下部ストッパ68とが取り付けられている。上部ストッパ67は、鉛直上方のロック部材63よりもさらに鉛直上方において差込棒66に取り付けられている。
【0050】
上部ストッパ67は、差込棒66が鉛直下方に移動する範囲を制限している。下部ストッパ68は、2つのロック部材63の間において差込棒66に取り付けられている。下部ストッパ68及び鉛直上方のロック部材63の間にはばね69が設けられている。下部ストッパ68及びばね69は、差込棒66が鉛直下方に移動する範囲を制限するとともに、差込棒66に鉛直下向きの力を加えている(鉛直下向きに付勢している)。ばね69は本発明の「付勢部材」の一例である。
【0051】
非ロック用の孔71及びロック用の孔72の間には、突起部材80が設けられている。突起部材80は、斜面81と、斜面82と、頂点部83とを有する。頂点部83は、頂点部83において最も高い部分である。斜面81は、頂点部83から非ロック用の孔71にかけて徐々に低くなる平面である。斜面82は、頂点部83からロック用の孔72にかけて徐々に低くなる平面である。突起部材80は、設置台70の鉛直上方の面に固定された部材であり、本発明の「突起」の一例である。
【0052】
図9A(b)、図9B(c)、図9(d)では、ロック部材63を非ロック位置からロック位置まで移動させる操作を表している。作業者は、まず、図9A(b)に表すように、差込棒66の端部661が頂点部83よりも高くなる位置までハンドル65を持ち上げる。次に、作業員は、図9B(c)に表すように、ハンドル65を持ち上げたまま、ハンドル65をロック用の孔72の方に向けて移動させる。
【0053】
続いて、作業員は、ハンドル65を離して差込棒66を鉛直下方に移動(落下)させる。このとき、図9(d)に表すように差込棒66がロック用の孔72の真上まで来ていない場合、差込棒66の端部661が突起部材80の斜面82に接触する。端部661は、頂点を鉛直下方に向けた円錐の形をしているため、端部661が突起部材80に接触する接触面積が極めて小さくなっており、端部661が突起部材80から受ける摩擦力も極めて小さくなっている。
【0054】
そのため、端部661は斜面82の低い方に滑り落ちていき、斜面82の終端にあるロック用の孔72にまで滑り落ち、図9(e)に表すようにロック用の孔72に差し込まれた状態になる。このとき、差込棒66は、自重による力に加えてばね69によっても鉛直下方に向かう力を受けている。これらの力を受けることで、例えばばね69が設けられておらず自重だけの力が加わる場合に比べて、端部661が突起部材80上で止まりにくいようにすることができる。
【0055】
突起部材80は、上記の通り、差込棒66の端部661が接触するとその端部661を滑らせてロック用の孔72まで案内する。なお、突起部材80は、反対側の斜面81においても斜面82と同様に、差込棒66の端部661が接触するとその端部661を滑らせて非ロック用の孔71まで案内する。つまり、突起部材80は、差込棒66の端部661が接触するとその端部661を滑らせて各々の孔(孔71及び孔72)まで案内する。
【0056】
これにより、突起部材80が設けられていない場合に比べて、差込棒66の端部661がいずれの孔(孔71及び孔72)にも差し込まれていない状態が起こりにくいようにすることができる。なお、差込棒66は、上記のとおり突起部材80上で止まりにくいようになっているが、止まることがないわけではない。ハンドル65を静かに下すと静止摩擦力によって端部661が突起部材80上で停止することが起こり得る。
【0057】
ホームステップ装置10においては、例えば突起部材80の頂点部83に端部661が接触した状態で停止すると、図9(c)に表すようにハンドル65の上端が筐体20の蓋付きの開口部57から突き出た状態になるサイズのハンドル65及び差込棒66が用いられている。これにより、ハンドル65の上端が開口部57から突き出た状態にならない場合に比べて、差込棒66の端部661が孔(孔71及び孔72)に差し込まれていない状態、すなわちステップ部材30が完全に固定されていないことに作業者が気付きやすいようにすることができる。
【0058】
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は必要に応じてそれぞれ組み合わせてもよい。
【0059】
[2-1]差込棒の端部
差込棒の端部の形状は実施例で述べた形状(頂点を鉛直下方に向けた円錐の形)に限らない。差込棒の端部は、例えば、先端が丸まった円錐の形をしていてもよいし、単なる円柱の形をしていてもよい。いずれの場合も、差込棒の端部が突起部材80に接触する接触面積が小さいほど望ましく、例えば定められた閾値未満であることが望ましい。
【0060】
この場合の閾値は、例えば、ハンドル65を決められた高さで離して差込棒を落下させた場合に突起部材80上で停止する割合が所定の割合(5%など)未満になる場合の接触面積が用いられればよい。このように差込棒の端部の形状を定めることで、接触面積と突起部材80上で停止する割合に相関関係がある場合(接触面積が小さいほどこの割合も小さくなる場合)に、接触面積が閾値以上になる場合に比べて、差込棒の端部が突起部材80上で止まりにくいようにすることができる。
【0061】
[2-2]ロック部材
ロック部材は実施例で述べたものに限らない。例えば実施例では上下2つのロック部材が用いられたが、1つのロック部材だけが用いられてもよい。また、実施例のロック部材はレール部の孔に差し込まれる形状であったが、例えばレール部に設けられたフックに引っ掛ける形状であってもよい。また、実施例のロック部材は図8に表すばね62で非ロック位置の方に回転するよう力が加えられていたが、ばね62が設けられていなくてもよい。
【0062】
その場合でも、非ロック用の孔71に差込棒が差し込まれることで非ロック位置から動かないようにすることができる。ただし、ばね62で力を加えることで、ばね62を設けない場合に比べて、地震等の衝撃でロック部材が跳ね上がってロック位置に移動するということ(ステップ部材の不必要なロック及び手動ロック部の破損の原因になる)が生じにくいようにすることができる。
【0063】
なお、ばね62に限らず、例えば軸部64にねじりコイルばねを取り付けてばね62と同様の力をロック部材に加えるようにしてもよい。要するに、ホームステップ装置において、ロック部材に非ロック位置に向かう方向の力を加える手段が設けられていればよい。
【0064】
[2-3]付勢部材
実施例では図9に表すコイルばねのばね69で差込棒66に鉛直下向きの力を加えたが、この力を加える付勢部材はこれに限らない。例えば板ばね等の他の形のばねが用いられてもよいし、磁石を用いて付勢して(例えば上部のロック部材63にN極磁石を取り付け、下部ストッパ68にS極磁石を取り付ける)もよい。要するに、差込棒66に鉛直下向きの力を加えられるものであれば、どのようなものが付勢部材として用いられてもよい。
【0065】
[2-4]突起
ホームステップ装置に設けられる突起は実施例で述べたものに限らない。例えば設置台に突起部材を固定するのではなく、突起部材と同じ形状を設置台の上面が有するように設置台を加工してもよい(設置台と突起が一体になる)。また、突起の上面は実施例では平面であったが、曲面であってもよい。その場合でも、頂点部からロック用の孔及び非ロック用の孔にかけて徐々に低くなる面であることが望ましい。
【0066】
ただし、全面に渡って徐々に低くなる面(斜面)である必要はなく、一部に水平な面が含まれていてもよい。その場合でも、水平な面が十分に小さければ端部661が滑る勢いで水平な面も超えて次の斜面まで滑り続けることになる。要するに、差込棒66の端部661が接触するとその端部661を滑らせてロック用の孔及び非ロック用の孔まで案内する形状となっていれば、どのような突起が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…ホーム設備、6…収容部材、10…ホームステップ装置、20…筐体、30…ステップ部材、31…ステップ部、32…支持部、40…本体部、50…天板部、41…天板支持部材、42…ガイドレール、43…モータ駆動部、44…電磁ブレーキ部、45…手動駆動部、60…手動ロック部、61…ばね固定部、62…ばね、63…ロック部材、64…軸部、65…ハンドル、66…差込棒、67…上部ストッパ、68…下部ストッパ、69…ばね、70…設置台、71…孔、72…孔、80…突起部材、81…斜面、82…斜面、83…頂点部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B