(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】コンタクトピン及び電気部品用ソケット
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20220628BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20220628BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20220628BHJP
H01R 13/24 20060101ALI20220628BHJP
H01R 33/76 20060101ALN20220628BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R1/073 D
G01R31/26 J
H01R13/24
H01R33/76 Z
(21)【出願番号】P 2018141779
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 玲
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-307525(JP,A)
【文献】特開2017-37021(JP,A)
【文献】特開2010-25844(JP,A)
【文献】特表2004-503750(JP,A)
【文献】特開2003-167001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 1/073
G01R 31/26
H01R 13/24
H01R 33/76
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品と配線基板とを電気的に接続するコンタクトピンであって、
一端部が開口して筒状に形成された導電性バレルと、
一方の端部側に設けられ、前記導電性バレルの開口に挿入されて該導電性バレルの内壁面に当接することにより前記配線基板の接続部に導通する基板側小径部、及び、他方の端部側に設けられ、前記電気部品の端子の一部分に接触する先端部を有する端子側大径部、を含むプランジャと、
一方の端部が前記端子側大径部の根元部分に当接し、他方の端部が前記導電性バレルの開口周縁に当接し、前記電気部品が押圧されることにより収縮するスプリングと、を備え、
前記電気部品が押圧された状態で、前記プランジャの端子側大径部の先端部が前記電気部品の端子の一部分に接触する位置と、前記スプリングの一方の端部が前記端子側大径部の根元部分に当接する位置とが、前記端子が前記先端部を押す力と前記スプリングが前記根元部分を押し返す力とに起因する回転力を発生する前記端子側大径部の対角線上に位置していることを特徴とするコンタクトピン。
【請求項2】
電気部品と配線基板とを電気的に接続するコンタクトピンであって、
両端部が開口して筒状に形成された導電性バレルと、
前記導電性バレルの両端部に抜け止めしてその内部に一部が挿入され、前記電気部品の端子に接触する端子側プランジャ及び前記配線基板の接続部に接触して導通する基板側プランジャと、
前記導電性バレル内にて前記端子側プランジャ及び前記基板側プランジャを離間する方向に付勢し、前記電気部品が押圧されることにより収縮するスプリングと、を備え、
前記端子側プランジャは、前記導電性バレルに挿入された状態で該導電性バレルの内壁面に接合されて前記スプリングの一方の端部と根元部分で当接する端子側小径部と、前記導電性バレルから突出した状態で設けられ、前記電気部品の端子の一部分と接触する先端部を有する端子側大径部と、を含み、
前記電気部品が押圧された状態で、前記端子側プランジャの前記端子側大径部の先端部が前記電気部品の端子の一部分に接触する位置と、前記スプリングの一方の端部が前記端子側プランジャの前記端子側小径部の前記根元部分に当接する位置とが、前記端子が前記先端部を押す力と前記スプリングが前記根元部分を押し返す力とに起因する回転力を発生する前記端子側プランジャの対角線上に位置していることを特徴とするコンタクトピン。
【請求項3】
前記電気部品が押圧され、前記スプリングが収縮した状態において、前記スプリングの一方の端部と前記スプリングの他方の端部とは、位相が180度ずれていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンタクトピン。
【請求項4】
前記スプリングの一方の端部に当接する前記根元部分が傾斜面を有し、前記電気部品が押圧されるに従って、前記スプリングの一方の端部が前記傾斜面を摺動し、前記根元部分に当接する位置に位置決めされることを特徴とする請求項3に記載のコンタクトピン。
【請求項5】
前記根元部分の傾斜面において、前記根元部分に当接する位置に穴が設けられており、前記一方の端部が前記穴に挿入されて位置決めされることを特徴とする請求項4に記載のコンタクトピン。
【請求項6】
前記スプリングの一方の端部が前記根元部分に当接する位置に穴が設けられ、前記スプリングの前記一方の端部が前記穴に予め固定されていることを特徴とする請求項3に記載のコンタクトピン。
【請求項7】
配線基板に電気的に接続される電気部品の収容部を有する枠体と、
前記枠体にて、前記収容部の下方に設けられた支持プレートの複数の挿入孔にそれぞれ挿入され、前記電気部品の端子及び前記配線基板の接続部を電気的に接続する複数のコンタクトピンと、
を有する電気部品用ソケットであって、
前記コンタクトピンとして、請求項1~6の何れか1項に記載のコンタクトピンを備えたことを特徴とする電気部品用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICパッケージ等の電気部品の性能試験等に使用される電気部品用ソケットのコンタクトピンに関し、詳しくは、電気的接続を形成する通電経路の絶縁防止を図るコンタクトピン及びそれを備えた電気部品用ソケットに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体集積回路等の検査対象物の検査を行なう場合において、検査対象物と測定器側の検査用基板とを電気的に接続するためにコンタクトピンが一般的に使用されている(例えば、特許文献1参照)。なお、コンタクトピンは、「コンタクトプローブ」と称されることがある。
特許文献1には、検査対象物との接続用の第1プランジャと、検査用基板との接続用の第2プランジャと、第1及び第2プランジャを互いに離れる方向に付勢するスプリングとを備え、第1プランジャと第2プランジャとの接点部が一方のプランジャにおける筒状部の内周に他方のプランジャの柱状部が摺動自在に嵌合した構造であって、かつ柱状部は弾性変形部を有していて、その弾性変形部は筒状部の内周面に弾性変形による反力で接触しているコンタクトピンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなコンタクトピンを採用すると、弾性変形部が特殊な形状をしているため、筒状部の内周面に接触する接触面積が限定されるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、上記の弾性変形部のような特殊な形状を採用することなく、電気的接続を形成する通電経路の絶縁防止を図るコンタクトピン及びこれを備えた電気部品用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明によるコンタクトピン(本願の請求項1に係る発明)は、電気部品と配線基板とを電気的に接続するコンタクトピンであって、一端部が開口して筒状に形成された導電性バレルと、一方の端部側に設けられ、上記導電性バレルの開口に挿入されて該導電性バレルの内壁面に当接することにより上記配線基板の接続部に導通する基板側小径部、及び、他方の端部側に設けられ、上記電気部品の端子の一部分に接触する先端部を有する端子側大径部、を含むプランジャと、一方の端部が上記端子側大径部の根元部分に当接し、他方の端部が上記導電性バレルの開口周縁に当接し、上記電気部品が押圧されることにより収縮するスプリングと、を備えたものである。上記電気部品が押圧された状態で、上記プランジャの端子側大径部の先端部が上記電気部品の端子の一部分に接触する位置と、上記スプリングの一方の端部が上記端子側大径部の根元部分に当接する位置とが、上記端子が上記先端部を押す力と上記スプリングが上記根元部分を押し返す力とに起因する回転力を発生する上記端子側大径部の対角線上に位置している。
【0007】
また、本発明によるコンタクトピン(本願の請求項2に係る発明)は、電気部品と配線基板とを電気的に接続するコンタクトピンであって、両端部が開口して筒状に形成された導電性バレルと、上記導電性バレルの両端部に抜け止めしてその内部に一部が挿入され、上記電気部品の端子に接触する端子側プランジャ及び上記配線基板の接続部に接触して導通する基板側プランジャと、上記導電性バレル内にて上記端子側プランジャ及び上記基板側プランジャを離間する方向に付勢し、上記電気部品が押圧されることにより収縮するスプリングと、を備えたものである。上記端子側プランジャは、上記導電性バレルに挿入された状態で該導電性バレルの内壁面に接合されて上記スプリングの一方の端部と根元部分で当接する端子側小径部と、上記導電性バレルから突出した状態で設けられ、上記電気部品の端子の一部分と接触する先端部を有する端子側大径部と、を含む。上記電気部品が押圧された状態で、上記端子側プランジャの上記端子側大径部の先端部が上記電気部品の端子の一部分に接触する位置と、上記スプリングの一方の端部が上記端子側プランジャの上記端子側小径部の上記根元部分に当接する位置とが、上記端子が上記先端部を押す力と上記スプリングが上記根元部分を押し返す力とに起因する回転力を発生する上記端子側プランジャの対角線上に位置している。
【0008】
さらに、本発明による電気部品用ソケット(本願の請求項7に係る発明)は、配線基板に電気的に接続される電気部品の収容部を有する枠体と、上記枠体にて、収容部の下方に設けられた支持プレートの複数の挿入孔にそれぞれ挿入され、上記電気部品の端子及び上記配線基板の接続部を電気的に接続する複数のコンタクトピンと、を有する電気部品用ソケットであって、上記コンタクトピンとして、上記課題を解決するための手段に記載のコンタクトピンを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるコンタクトピン(本願の請求項1に係る発明)によれば、上記電気部品が押圧された状態で、上記プランジャの端子側大径部の先端部が上記電気部品の端子の一部分に接触する位置と、上記スプリングの一方の端部が上記端子側大径部の根元部分に当接する位置とが、上記端子が上記先端部を押す力と上記スプリングが根元部分を押し返す力とに起因する回転力を発生する上記端子側大径部の対角線上に位置している。これにより、上記コンタクトピンは、上記回転力に起因して発生する力のモーメントによる押圧力で、上記基板側小径部の側部を上記導電性バレルの内壁面に押し付けることができる。したがって、従来例の弾性変形部のような特殊な形状を採用することなく、また、スプリングに電流が流れることなく、電気的接続を形成する通電経路の絶縁防止を図ることができる。
【0010】
また、本発明によるコンタクトピン(本願の請求項2に係る発明)によれば、上記電気部品が押圧された状態で、上記端子側プランジャの上記端子側大径部の先端部が上記電気部品の端子の一部分に接触する位置と、上記スプリングの一方の端部が上記端子側プランジャの上記端子側小径部の根元部分に当接する位置とが、上記端子が上記先端部を押す力と上記スプリングが上記根元部分を押し返す力とに起因する回転力を発生する上記端子側プランジャの対角線上に位置している。これにより、上記コンタクトピンは、上記回転力に起因して発生する力のモーメントによる押圧力で、基板側プランジャの側部を上記導電性バレルの内壁面に押し付けることができる。したがって、従来例の弾性変形部のような特殊な形状を採用することなく、また、スプリングに電流が流れることなく、電気的接続を形成する通電経路の絶縁防止を図ることができる。
【0011】
さらに、本発明による電気部品用ソケット(本願の請求項7に係る発明)によれば、上記本発明によるコンタクトピンを用いることで、従来例の弾性変形部のような特殊な形状を採用することなく、また、スプリングに電流が流れることなく、電気的接続を形成する通電経路の絶縁防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による電気部品用ソケットの実施形態を示す平面図である。
【
図4】第1実施形態に係るコンタクトピンの拡大正面図である。
【
図6】ICパッケージからの押圧により発生する力の関係を示す説明図である。
【
図7】
図6における力の関係の比較例を示す説明図である。
【
図8】スプリングの位相のずれに関する説明図である。
【
図9】
図8に示すスプリングの形状が一部異なる場合の位相のずれに関する説明図である。
【
図10】プランジャの端子側大径部と、スプリングとの位置決めの仕組みを示す説明図である。
【
図11】プランジャの端子側大径部と、スプリングとの位置決めの仕組みを示す説明図である。
【
図12】プランジャの端子側大径部と、スプリングとの位置決めの仕組みを示す説明図である。
【
図13】プランジャの端子側大径部と、スプリングとの位置決めの仕組みを示す説明図である。
【
図14】第2実施形態に係るコンタクトピンの正面図である。
【
図16】ICパッケージからの押圧により発生する力の関係を示す説明図である。
【
図17】
図16における力の関係の比較例を示す説明図である。
【
図18】
図14におけるコンタクトピンの使用状態の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による電気部品用ソケットの実施形態を示す平面図である。
図2は、
図1の正面図であり、
図3は、
図1のA-A線断面図である。この電気部品用ソケット1は、ICパッケージ等の電気部品の性能試験等に使用されるもので、枠体2と、コンタクトピン3とを有している。
【0014】
枠体2は、試験対象の電気部品としての、例えばICパッケージ4を収容する部材となるもので、
図2及び
図3に示すように、配線基板P上に配設されるようになっている。この枠体2は、
図1~
図3に示すように、絶縁材料で矩形ブロック状に形成され、例えば上面中央部にICパッケージ4の収容部5が形成されている。収容部5は、
図2に示す配線基板Pに電気的に接続されるICパッケージ4を固定して収容するもので、ICパッケージ4の四隅部をコーナーガイド等で位置決めするようになっている。
【0015】
枠体2において、収容部5の下方には、
図3に示すように、支持プレート6と、底部プレート7とが設けられている。支持プレート6は、その上面にICパッケージ4を収容するもので、絶縁材料で平板状に形成された板材から成り、底部プレート7は、同じく絶縁材料で平板状に形成された板材から成り、支持プレート6の下面側に固定されている。
【0016】
収容部5の下方に位置する支持プレート6及び底部プレート7のそれぞれには、
図3に示すように、円形断面の挿入孔が上下方向に貫通して複数個形成されており、これらの挿入孔にそれぞれコンタクトピン3が上下方向に挿入される。これにより、
図1に示すように、例えば矩形状の平面的な拡がりをもった収容部5の全領域に亘って多数のコンタクトピン3が挿入される。これらのコンタクトピン3は、ICパッケージ4の端子及び配線基板Pの接続部を電気的に接続するようになっており、いわゆる表面圧接型に形成されている。
【0017】
なお、
図1~
図3では図示を省略しているが、
図2において収容部5にICパッケージ4が収容された状態でその上方を覆ってICパッケージ4を固定するソケットカバーが、一側端部(例えば右側端部)を回動中心として開閉可能に設けられている。
【0018】
次に、第1実施形態に係るコンタクトピンについて説明をする。
図4は、第1実施形態に係るコンタクトピンの正面図である。詳しくは、
図1に示す電気部品用ソケット1に用いられるコンタクトピン3を取り出して示す拡大正面図である。
図5は、
図4を示すコンタクトピンの断面図である。第1実施形態では、先ず、バネ部材が視認可能な外バネ方式のコンタクトピンを用いた適用例について説明する。
【0019】
このコンタクトピン3は、ICパッケージ4と配線基板Pとを電気的に接続するものである。詳細には、コンタクトピン3は、ICパッケージ4の端子4a及び配線基板Pの接続パッド(接続部)9を電気的に接続するものである(
図6参照)。コンタクトピン3は、プランジャ31と、導電性バレル32と、スプリング33とを備えている。なお、端子4aは、後述する使用状態を示す
図18において、例えば、半田ボール8である。
【0020】
詳細には、プランジャ31は、
図5に示すとおり、一方の端部側に設けられ、導電性バレル32の開口に挿入されて導電性バレル32の内壁面に当接することにより配線基板Pの接続部9(
図6参照)に導通する基板側小径部31a、及び、他方の端部側に設けられ、ICパッケージ4の端子4a(
図6参照)の一部分に接触する先端部31cを有する端子側大径部31b、を含む。プランジャ31は、金属等の導電性材料から成る。端子側大径部31bは、ICパッケージ4の端子4aと部分的に接触する先端部31cと、スプリング33の一方の端部33aと当接する根元部分31dとを有する。基板側小径部31aと端子側大径部31bとは、軸棒部31eでつながれている。
【0021】
導電性バレル32には、プランジャ31の一部(基板側小径部31aを含む領域)が挿入されている。導電性バレル32は、スプリング33の他方の端部33bと当接するテーパ形状の開口周縁部32aが設けられている。
【0022】
スプリング33は、
図5に示すとおり、一方の端部33aが端子側大径部31bの根元部分31dと当接し、他方の端部33bが導電性バレル32の開口周縁部32aと当接し、上記の押圧力により収縮する。具体的には、スプリング33は、例えば、コイルスプリングであって、プランジャ31の周囲を取り巻くようにして、導電性バレル32の開口周縁部32a及び端子側大径部31bの根元部分31dを離間する方向に付勢するものである。ここで、プランジャ31の周囲とは、スプリング33の一方の端部33aからスプリング33の他方の端部33bまで、プランジャ31がスプリング33で巻かれる領域を指している。
【0023】
次に、第1実施形態に係るコンタクトピン3の作用について説明する。
図6は、ICパッケージからの押圧により発生する力の関係を示す説明図である。
【0024】
図6において、ICパッケージ4が押圧された状態で、プランジャ31の端子側大径部31bの先端部31cがICパッケージ4の端子4aの一部分に接触する位置と、スプリング33の一方の端部33aが端子側大径部31bの根元部分31dに当接する位置とが、端子4aが先端部31cを押す力とスプリング33が根元部分31dを押し返す力とに起因する回転力を発生する端子側大径部31bの対角線上に位置している。
【0025】
ここで、先端部31cがICパッケージ4の端子4aの一部分に接触する位置は、押圧された状態で、ICパッケージ4の端子4aが先端部31cを押す力の作用点として機能する。また、スプリング33の一方の端部33aが端子側大径部31bの根元部分31dに当接する位置は、押圧された状態で、スプリング33の一方の端部33aが根元部分31dを押し返す力の反作用点として機能する。なお、第1実施形態に係るコンタクトピン3の以下の説明において、先端部31cが端子4aの一部分に接触する位置を、「作用点」ということがある。また、スプリング33の一方の端部33aが根元部分31dに当接する位置を、「反作用点」ということがある。そして、作用点と反作用点を結ぶ直線が対角線となる。
【0026】
具体的には、
図6において、ICパッケージ4からの押圧により、端子4aが先端部31cを力F
1で押すと、その反作用として、スプリング33の一方の端部33aが端子側大径部31bの根元部分31dを押し返す反力(-F
1)が発生する(マイナスの符号は向きが逆を意味する)。この場合、F
1の作用線A
1と、反力(-F
1)の作用線A
2が平行で、力F
1と反力(-F
1)とは互いに大きさが等しく、方向が反対向きの2つの力が発生することになるので、2つの力(偶力)によるモーメントが発生する。この2つの力によるモーメントM
1は、時計回りを正とした場合、下式で示される。
M
1=F
1×L
1…(1)
ここで、L
1は、2つの力によるモーメントの作用線間の距離である。具体的には、力F
1の作用点と、反力(-F
1)の反作用点を結ぶ距離(対角線)のsinθ成分である。
【0027】
2つの力によるモーメントは、力F1+反力(-F1)=0となるので、プランジャ31をX方向やY方向に移動させる力は生じないが、回転力(偶力のモーメント)が発生する。
【0028】
本実施形態では、プランジャ31における端子側大径部31bの先端部31cが、端子4aの一部分に接触するテーパ形状を有しているため、
図6において、プランジャ31には、先端部31cを支点として時計回りの回転力が作用している。
【0029】
一方、プランジャ31は、時計回りの回転力に対して、基板側小径部31aが導電性バレル32に挿入されているため、回転せず、静的なつり合いが成立している。この場合、先端部31cの支点から距離L2だけ離れた位置の基板側小径部31aに作用する力のモーメントM2は、下式で示される。
M2=F2×L2…(2)
【0030】
そして、静的なつり合いが成立しているので、この場合、式(1)=式(2)としてよく、下式が成立する。
F1×L1=F2×L2…(3)
【0031】
式(3)から、押圧力F2は、下式で示される。
F2=((F1×L1)/L2)…(4)
式(4)から、距離L1の値が大きい程、基板側小径部31aに作用する押圧力F2が大きくなる。これは、先端部31cと根元部分31dを結ぶ対角線の距離の値が大きい程、距離L1の値が大きくなることを意味する。これにより、コンタクトピン3は、その押圧力F2で基板側小径部31aの側部を導電性バレルの内壁面に押し付けることができる。
【0032】
図7は、
図6における力の関係の比較例を示す説明図である。
図7に示すコンタクトピン30は、
図6に示すコンタクトピン3と比較して、スプリング33の一方の端部33aが円周方向で反対側に設けられていると共に、他方の端部33bも円周方向で反対側に設けられている。そして、説明の便宜上、比較例では、導電性バレル32の開口周縁の構造が、コンタクトピン3と一部異なるが、回転力(偶力のモーメント)の発生には影響を与えない。
【0033】
図7に示す比較例では、ICパッケージ4が押圧された状態で、プランジャ31の端子側大径部31bの先端部31cが端子4aの一部分に接触する位置は、コンタクトピン3と同様であるが、スプリング33の一方の端部33aが端子側大径部31bに当接する位置が、根元部分31dの反対側の根元部分に位置している。この場合、F
1の作用線A
1と、反力(-F
1)の作用線A
2が平行で、力F
1と反力(-F
1)とは互いに大きさが等しく、方向が反対向きの2つの力が発生することになるので、2つの力(偶力)によるモーメントが発生する。しかしながら、作用線A
1と作用線A
2との間隔を示す作用線間の距離L
3が、
図6に示す距離L
1よりも短いため、基板側小径部31aに作用する押圧力F
2は、
図6の場合に比較して小さくなることがわかる。
【0034】
したがって、ICパッケージ4が押圧された状態で、プランジャ31の端子側大径部31bの先端部31cが端子4aの一部分に接触する位置と、スプリング33の一方の端部33aが端子側大径部31bの根元部分に当接する位置とが、距離L
1の値が大きくなるように、端子側大径部31bの対角線上に位置していることが望ましい。これは、端子4aが先端部31cを押す力とスプリング33が根元部分を押し返す力とに起因する回転力が、距離L
1の値が大きくなるほど大きくなることを意味する。つまり、根元部分は、
図6に示す根元部分31dの位置が望ましい。
【0035】
そして、本実施形態では、例えば、ICパッケージ4からの押圧により、スプリング33が、予め定めた設計位置に押し込まれることにより、収縮した状態でスプリング33の一方の端部33aとスプリング33の他方の端部33bとは、
図6に示すような配置になるようにして、位相が180度ずれていることが望ましい。
図6に示す配置で位相が180度ずれている場合、2つの力によるモーメント(偶力のモーメント)における距離L
1の値は、最大になる(
図6参照)。本実施形態において、距離L
1の値が最大とは、設計上、
図6に示す作用線A
1と作用線A
2との間隔を示す作用線間の距離L
1の値について最大値になることを意味し、この場合の距離L
1を、以下、「最大距離」という。
【0036】
図8は、スプリングの位相のずれに関する説明図である。
図8(a)は、
図4に示すコンタクトピン3のスプリング33を取り出した正面図である。
図8(b)は、Y
1方向からスプリング33を見た平面図である。
図8(c)は、Y
2方向からスプリング33を見た平面図である。本実施形態では、位相が180度ずれるとは、
図8(b)に示すスプリング33の一方の端部33aと、
図8(c)に示す他方の端部33bとの位置関係が、Y
1方向又はY
2方向から見て、180度ずれていることを意味する。
【0037】
また、本実施形態では、
図6に示すように、スプリング33の他方の端部33bと当接するテーパ形状の開口周縁部32aが設けられていることにより、他方の端部33bが、テーパ形状の開口周縁部32aにひっかかる構造になっている。そのため、ICパッケージ4が押圧された状態で、他方の端部33bが開口周縁部32aに押す力の荷重の伝達経路は、導電性バレル32に作用し、プランジャ31に作用しないので押圧力F
2に影響を与えない。
【0038】
以上より、第1実施形態に係るコンタクトピン3によれば、上記先端部31cが端子4aの一部分に接触する位置と、スプリング33の一方の端部33aが上記根元部分31dに当接する位置とを固定化できる構造とした。これにより、作用点と反作用点により生成される2つの力によるモーメント(偶力のモーメント)が安定的かつ強力に確保される。すなわち、第1実施形態に係るコンタクトピン3は、2つの力によるモーメントを発生させる距離L1を最大距離として固定することで、偶力発生のばらつきを抑制することができる。
【0039】
そして、第1実施形態に係るコンタクトピン3は、上記の距離L1を最大距離としたときの上記回転力に起因して発生する力のモーメントによる押圧力F2として、基板側小径部31aの側部を導電性バレル32の内壁面に押し付けることができる。つまり、基板側小径部31aの側部のコンタクト荷重が、安定かつ増大する。これにより、第1実施形態に係るコンタクトピン3は、上記の弾性変形部のような特殊な形状を採用することなく、また、電気的接続を形成する通電経路の絶縁防止を図ることができる。
【0040】
次に第1の実施形態の変形例について説明する。第1の実施形態の変形例では、プランジャ31を以下に説明するプランジャ31A~31Dに置き換える。また、プランジャ31A、31B、31Dについては、
図9に示すスプリング38を適用する。
【0041】
図9は、
図8に示すスプリングの形状が一部異なる場合の位相のずれに関する説明図である。
図9(a)は、
図4に示すコンタクトピン3に適用可能なスプリング38の正面図である。
図9(b)は、Y
1方向からスプリング38を見た平面図である。
図9(c)は、Y
2方向からスプリング38を見た平面図である。スプリング33とスプリング38との差異点は、
図9(b)に示すスプリング38の一方の端部38aがY方向に向いている突部を有していることにある。これに対し、
図9(c)に示すスプリング38の他方の端部38bは、
図8に示すスプリング33の他方の端部33bと同様である。
【0042】
次に、プランジャ31A~31Dの端子側大径部31bにおける形状及びその形状から導かれる作用効果について説明する。
【0043】
図10~
図13は、プランジャの端子側大径部と、スプリングとの位置決めの仕組みを示す説明図である。
図10~
図13に示すプランジャ31A~31Dについては、主に、
図5に示すプランジャ31との差異点について説明をする。なお、プランジャ31A~31Dについては、軸棒部31eの途中で切断した図を描いているが、それ以降の構造は、プランジャ31と同様とする。
【0044】
先ず、プランジャ31Aについて説明する。
図10に示すプランジャ31Aは、
図5に示すプランジャ31と同様、端子側大径部31b、先端部31c、根元部分31dを有する。但し、プランジャ31Aは、根元部分31dに穴部31fを有する点が、プランジャ31と異なる。具体的には、スプリング38の一方の端部38aが当接する根元部分31dの接触面において、そのスプリング38の一方の端部33aが対角線上の根元部分31dに当接する位置(反作用点)に穴部31fが設けられ、スプリング38における一方の端部38aの突部が穴部31fに予め固定されている。そして、スプリング38の他方の端部38bは、180度位相がずれた位置に位置決めされることになる。先端部31cと穴部31fとの位置関係は、上記の距離L
1が最大距離になるように設計されている。したがって、プランジャ31Aを採用した場合においても、コンタクトピン3は、上記の押圧力F
2で、基板側小径部31aの側部を導電性バレル32の内壁面に押し付けることができ、電気的接続を形成する通電経路の絶縁防止を図ることができる。
【0045】
次に、プランジャ31Bについて説明する。
図11に示すプランジャ31Bは、
図5に示すプランジャ31と同様、端子側大径部31b、先端部31c、根元部分31gを有する。但し、プランジャ31Bは、根元部分31gに穴部31fを有すると共に傾斜面を有する点が、プランジャ31と異なる。この穴部31fは、反作用点となる位置に設けられている。具体的には、スプリング38の一方の端部38aに当接する根元部分31gが傾斜面を有し、ICパッケージ4が押圧されるに従って、スプリング38の一方の端部38aが傾斜面を摺動し、スプリング38の一方の端部38aが対角線上の根元部分31gに当接する位置において、一方の端部38aが穴部31fに挿入されて位置決めされる。これにより、スプリング38の他方の端部38bは、180度位相がずれた位置に位置決めされる。
【0046】
換言すると、スプリング38がプランジャ31Bの周囲を、両端部が固定されていない回転フリーの状態で、組み込まれているときに、予め定めた設計位置にスプリング38が押し込まれていく場合、自己誘導的にスプリング38における一方の端部38aの突部が、穴部31fに挿入され、スプリング38の他方の端部38bは、180度位相がずれた位置に位置決めされる。したがって、プランジャ31Bを採用した場合においても、コンタクトピン3は、上記の押圧力F2で、基板側小径部31aの側部を導電性バレル32の内壁面に押し付けることができ、電気的接続を形成する通電経路の絶縁防止を図ることができる。
【0047】
次に、プランジャ31Cについて説明する。
図12に示すプランジャ31Cは、
図5に示すプランジャ31と同様、端子側大径部31b、先端部31c、根元部分31hを有する。但し、プランジャ31Cは、
図11に示す根元部分31gよりも、勾配が急な傾斜面(曲面テーパ)を有し、
図11に示す穴部31fのような穴部は設けられていない。この場合には、
図8に示すスプリング33を用いることで、予め定めた設計位置にスプリング33が押し込まれたときに、自己誘導的にスプリング33の一方の端部33aが、上記の距離L
1が最大距離になるように位置決めされる。
【0048】
換言すると、スプリング33の一方の端部33aに当接する根元部分31hが傾斜面(曲面テーパ)を有し、ICパッケージ4が押圧されるに従って、スプリング33の一方の端部33aが傾斜面を摺動し、スプリング33の一方の端部33aが対角線上の根元部分31hに当接する位置(反作用点)に位置決めされる。そして、スプリング33の他方の端部33bは、180度位相がずれた位置に位置決めされる。
【0049】
したがって、プランジャ31Cを採用した場合においても、コンタクトピン3は、上記の押圧力F2で、基板側小径部31aの側部を導電性バレル32の内壁面に押し付けることができ、電気的接続を形成する通電経路の絶縁防止を図ることができる。
【0050】
次に、プランジャ31Dについて説明する。
図13に示すプランジャ31Dは、
図5に示すプランジャ31と同様、端子側大径部31b、先端部31c、根元部分31iを有する。但し、プランジャ31Dは、根元部分31iに穴部31fを有すると共に、プランジャ31Cと同様、勾配が急な傾斜面(曲面テーパ)を有する点が、プランジャ31と異なる。この場合には、ICパッケージ4からの押圧により、スプリング38が予め定めた設計位置に押し込まれるに従って、スプリング38の一方の端部38aは、傾斜面に沿って移動し、設計位置に押し込まれたときに、スプリング38における一方の端部38aの突部が、穴部31fに挿入される。これにより、スプリング38の他方の端部38bは、180度位相がずれた位置に位置決めされる。
【0051】
したがって、プランジャ31Dを採用した場合においても、コンタクトピン3は、上記の押圧力F
2で、基板側小径部31aの側部を導電性バレル32の内壁面に押し付けることができ、電気的接続を形成する通電経路の絶縁防止を図ることができる。なお、本実施形態では、コンタクトピン3に適用されるスプリング33については、回転フリーであってもよいし、スプリング33の一方の端部33aのみを予め固定してもよいし、スプリング33の一方の端部33a及び他方の端部33bを予め固定してもよい。但し、上記の距離L
1が最大距離となるように、
図6に示すような配置にして、位相が180度ずれていることとする。
【0052】
次に、第2実施形態に係るコンタクトピンについて詳述する。以下、第1実施形態と異なる点について主に説明する。第2実施形態では、第1実施形態で説明した外バネ方式のコンタクトピンに対して、バネが外部から視認できないように構成されている内バネ方式のコンタクトピンを採用する。
【0053】
図14は、第2実施形態に係るコンタクトピンの正面図である。
図14では、本発明による電気部品用ソケットに用いられるコンタクトピンを取り出して示している。
図15は、
図14示すコンタクトピンの断面図である。
【0054】
このコンタクトピン3Aは、第1実施形態のコンタクトピン3と同様、
図2に示すICパッケージ4と配線基板Pとを電気的に接続するものである。コンタクトピン3Aは、
図14に示すとおり、導電性バレル34と、その導電性バレル34の両端部に抜け止めしてその内部に一部が挿入され、ICパッケージ4の端子に接触する端子側プランジャ35及び
図2に示す配線基板Pの接続部に接触して導通する基板側プランジャ36と、を備える。また、コンタクトピン3Aは、
図15に示すとおり、内部にスプリング37を備えている。
【0055】
導電性バレル34は、金属等の導電性材料から成り、
図15に示すとおり、両端部が開口した筒状に形成されたものである。導電性バレル34の上端部には、端子側プランジャ35の一部が挿入されている。この端子側プランジャ35は、ICパッケージ4の端子4a(
図16参照)に接触して電気的に接続するもので、金属等の導電性材料から成り、その一部が導電性バレル34の内部に嵌まり得る丸棒状に形成され、部分的に加工が施されている。
【0056】
具体的には、端子側プランジャ35は、導電性バレル34に挿入された状態でその導電性バレル34の内壁面に接合されてスプリング37の一方の端部37aと根元部分35dで当接する端子側小径部35aと、導電性バレルから突出した状態で設けられ、ICパッケージ4の端子の一部分と接触するテーパ形状の先端部35cを有する端子側大径部35bと、を含む。
【0057】
端子側小径部35aは、円周方向のくびれ部35fに導電性バレル34の内壁面の突部が嵌合して抜け止め固定されている。
【0058】
導電性バレル34の下端部側には、基板側プランジャ36が一部を残して挿入されている。この基板側プランジャ36は、
図16に示す配線基板Pの接続パッド9に接触して電気的に接続するもので、金属等の導電性材料から成る。
【0059】
基板側プランジャ36は、導電性バレル34内部に側面が当接すると共に、スプリング37の他方の端部37bと当接するテーパ形状の突部36cを有する基板側大径部36aと、該基板側大径部36aよりも直径が小さく、一部が導電性バレル34から突出した状態で先端が配線基板Pの接続パッド9に接触する細長状の基端側小径部36bと、を有する。基板側プランジャ36は、基板側大径部36aが導電性バレル34の内部に嵌まって、ICパッケージ4からの押圧によりスライド可能な丸棒状に形成されている。
【0060】
導電性バレル34の内部にて端子側プランジャ35と基板側プランジャ36との間には、スプリング37が挿入されている。このスプリング37は、導電性バレル34内にて端子側プランジャ35及び基板側プランジャ36を離間する方向に付勢し、ICパッケージ4が押圧されることにより収縮するものである。スプリング37は、例えば、金属等の導電性材料から成り、導電性バレル34内で伸縮可能となるように導電性バレル34の内径よりも小さい外径を有するコイルスプリングである。
【0061】
次に、コンタクトピン3Aの作用について説明する。
図16は、ICパッケージからの押圧により発生する力の関係を示す説明図である。
図16において、
図2に示すICパッケージ4が押圧された状態で、端子側プランジャ35の端子側大径部35bの先端部35cがICパッケージ4の端子4aの一部分に接触する位置と、スプリング37の一方の端部37aが端子側プランジャ35の端子側小径部35aの根元部分35dに当接する位置とが、端子4aが先端部35cを押す力とスプリング37が端子側小径部35aの根元部分35dを押し返す力とに起因する回転力を発生する端子側プランジャ35の対角線上に位置している。
【0062】
ここで、先端部35cがその端子4aの一部分に接触する位置は、押圧された状態で、ICパッケージ4の端子4aが先端部35cを押す力の作用点として機能する。また、スプリング37の一方の端部37aがその根元部分35dに当接する位置は、スプリング37が端子側小径部35aの根元部分35dを押し返す力の反作用点として機能する。なお、第2実施形態に係るコンタクトピン3Aの以下の説明において、先端部35cが端子4aの一部分に接触する位置を、「作用点」ということがある。また、スプリング37の一方の端部37aが根元部分35dに当接する位置を、「反作用点」ということがある。
【0063】
具体的には、
図16において、ICパッケージ4からの押圧により、端子4aが先端部35cを力F
1で押すと、その反作用として、スプリング37の一方の端部37aが端子側小径部35aの根元部分35dを押し返す反力(-F
1)が発生する。この場合、F
1の作用線A
1と、反力(-F
1)の作用線A
2が平行で、力F
1と反力(-F
1)とは互いに大きさが等しく、方向が反対向きの2つの力が発生することになるので、2つの力(偶力)によるモーメントが発生する。この2つの力によるモーメントM
1は、上述した式(1)で示される。
【0064】
2つの力によるモーメントは、第1実施形態のコンタクトピン3と同様、力F1+反力(-F1)=0となるので、端子側プランジャ35をX方向やY方向に移動させる力は生じないが、回転力が作用する。
【0065】
すなわち、本実施形態では、端子側プランジャ35における端子側大径部35bの先端部35cが、ICパッケージ4の端子4aと部分的に接触するテーパ形状を有しているため、
図16において、端子側プランジャ35は、端子側先端部35cを支点として時計回りの回転力が作用している
【0066】
一方、端子側プランジャ35と導電性バレル34とが渾然一体化しており、回転せず、静的なつり合いが成立している。この場合、先端部35cの支点から距離L
2だけ離れた位置の基板側大径部36aに作用する力のモーメントM
2は、上述した式(2)で示される。そして、上述した式(3)~(4)を適用すると、導電性バレル34が基板側プランジャ36を押圧する押圧力F
2(
図16参照)は、((F
1×L
1)/L
2)となる。このような構成により、コンタクトピン3Aは、押圧力F
2で、導電性バレル34が基板側プランジャ36を押圧することにより、結果的に基板側大径部36aの側部を導電性バレル34の内壁面に押し付けることができる。なお、
図6と比較して、
図16に示す押圧力F
2の矢印の位置が異なるのは、
図6の場合、プランジャ31に力のモーメントが作用しているのに対して、
図16の場合、力のモーメントは、渾然一体化された端子側プランジャ35及び導電性バレル34に作用しているためである。
【0067】
図17は、
図16における力の関係の比較例を示す説明図である。
図17に示すコンタクトピン30Aは、
図16に示すコンタクトピン3Aと比較して、スプリング37の一方の端部37aが円周方向で反対側に設けられていると共に、他方の端部37bも円周方向で反対側に設けられている。
【0068】
図17に示す比較例では、ICパッケージ4の端子4aと接触する端子側大径部35bの先端部35cと、スプリング37の一方の端部37aとの位置関係は、ICパッケージ4からの押圧により、端子4aが先端部35cを押す力と、スプリング37の一方の端部37aが端子側小径部35aを押し返す力とによって発生する力のモーメントが
図16と比較して小さくなるように配置されている構成になっている。つまり、作用線A
1と作用線A
2との間隔を示す作用線間の距離L
3が、
図16の場合と比較して小さい分、偶力のモーメントも小さくなる。したがって、コンタクトピン30Aよりもコンタクトピン3Aのような構成にすることが好ましい。
【0069】
本実施形態において、コンタクトピン3Aは、コンタクトピン3と同様、ICパッケージ4からの押圧により、スプリング37が予め定めた設計位置に押し込まれたときに、スプリング37の一方の端部37aとスプリング37の他方の端部37bとは、位相が180度ずれている。これにより、先端部35cを支点として、作用線A
1と作用線A
2との間隔を示す作用線間の距離L
1が最大になることを意味している。本実施形態では、スプリング37の他方の端部37bと当接するテーパ形状の突部36cが設けられていることにより、
図16に示すように、他方の端部37bが、テーパ形状の突部36cにひっかかる構造になっている。そのため、ICパッケージ4が押圧された状態で、他方の端部37bがテーパ形状の突部36cに押す力の荷重の伝達経路は、基板側プランジャ36の先端方向から配線基板Pに向かうため、導電性バレル34に作用しないので押圧力F
2に影響を与えない。
【0070】
以上より、第2実施形態に係るコンタクトピン3Aによれば、上記先端部35cが端子4aの一部分に接触する位置と、スプリング37の一方の端部37aが上記根元部分35dに当接する位置とを固定化できる構造とした。これにより、作用点と反作用点により生成される2つの力によるモーメント(偶力のモーメント)が安定的かつ強力に確保される。すなわち、第2実施形態に係るコンタクトピン3Aは、2つの力によるモーメントを発生させる距離L1を最大距離として固定することで、偶力発生のばらつきを抑制することができる。
【0071】
そして、第2実施形態に係るコンタクトピン3は、上記の距離L1を最大距離としたときの上記回転力に起因して発生する力のモーメントによる押圧力F2として、基板側大径部36aの側部を導電性バレル34の内壁面に押し付けることができる。つまり、基板側大径部36aの側部のコンタクト荷重が、安定かつ増大する。これにより、第2実施形態に係るコンタクトピン3Aは、上記の弾性変形部のような特殊な形状を採用することなく、また、電気的接続を形成する通電経路の絶縁防止を図ることができる。
【0072】
なお、第2実施形態に係るコンタクトピン3Aにおいても、
図10~
図13で示したプランジャ31A~31Dと同様の構成を、端子側プランジャ35の端子側小径部35aに適用してもよい。これにより、
図10~
図13で示したプランジャ31A~31Dで示した効果と同様の効果が得られる。
【0073】
また、本実施形態では、コンタクトピン3Aに適用されるスプリング37については、回転フリーであってもよいし、スプリング37の一方の端部37aのみを予め固定してもよいし、スプリング37の一方の端部37a及び他方の端部37bを予め固定してもよい。但し、上記の距離L
1が最大距離となるように、
図16に示すような配置にして、位相が180度ずれていることとする。
【0074】
次に、コンタクトピン3Aを備えた電気部品用ソケット1の使用及び動作について、
図2、
図3及び
図18を参照して説明する。なお、
図3において、コンタクトピン3をコンタクトピン3Aに置き換える。
【0075】
図18は、
図14におけるコンタクトピンの使用状態を示す説明図である。詳しくは、
図18は、上記電気部品用ソケット1を配線基板Pに実装し、その収容部に電気部品を収容する際のコンタクトピン3Aの動きを示す要部断面説明図である。
図2及び
図3に示すように、先ず、電気部品用ソケット1を配線基板P上に配設する。このとき、
図18(a)に示すように、
図3に示す底部プレート7の下面が配線基板Pの上面に載せられ、基板側プランジャ36の先端の接触部が配線基板Pの接続パッド9に圧接される。
【0076】
この状態で、
図2に示すように、枠体2の収容部5に試験対象のICパッケージ4を矢印Bのように収容する。このとき、ロボットアーム等の機械装置でICパッケージ4を吸着等により保持して電気部品用ソケット1まで搬送し、収容部5に収容する。その後、図示省略のソケットカバーを閉じて、ICパッケージ4を固定する。
【0077】
このとき、
図18(b)に示すように、上記ソケットカバーの閉じ動作に伴ってICパッケージ4が矢印Cのように押し下げられる。すると、ICパッケージ4の下面に格子状(グリッド状)に配列された半田ボール8が端子側プランジャ35の先端部35cを押し込む。このとき、端子側プランジャ35は、
図15に示すスプリング37の付勢力に抗して押し下げられ、導電性バレル34の全体が矢印C方向に下降して収縮する。これにより、ICパッケージ4の端子4a及び配線基板Pの接続部を電気的に接続することができる。このとき、コンタクトピン3Aの内部では、上述した押圧力F
2が作用することにより、端子側プランジャ35→導電性バレル34→基板側プランジャ36の経路で電流が流れる。
【0078】
これにより、可動部のあるコンタクトピン3Aにおいて、通電経路と想定されている部品が絶縁し、通電経路として想定されていないスプリング37に電流が流れてしまい、焼き切れる等の破損を防止することができる。なお、コンタクトピン3Aを用いた場合について説明したが、コンタクトピン3を用いた場合についても同様の効果を得られる。
【0079】
この状態で、ICパッケージ4を、例えば20~30秒間、電気部品用ソケット1に収容して所定の試験を行い、その試験が終了したらソケットカバーを開いてICパッケージ4を抜き取り、ロボットアーム等で格納位置へ搬送して一連の試験動作を終了する。そして、ICパッケージ4の端子及び配線基板Pの接続部を電気的に接続する導電部材の機械的接触性を高めてその抵抗値の安定化を図って、電気部品について所定の試験を行なうことができる。
【符号の説明】
【0080】
1…電気部品用ソケット
2…枠体
3、3A…コンタクトピン
4…ICパッケージ(電気部品)
4a…端子
5…収容部
6…支持プレート
9…接続パッド(配線基板の接続部)
31…プランジャ
31a…基板側小径部
31b…端子側大径部
31c、35c…先端部
32、34…導電性バレル
33、37、38…スプリング
33a、37a、38a…一方の端部
33b、37b、38b…他方の端部
35…端子側プランジャ
35a…端子側小径部
35b…端子側大径部
36…基板側プランジャ
P…配線基板