(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】ドアミラー格納ユニット
(51)【国際特許分類】
B60R 1/074 20060101AFI20220628BHJP
B60R 1/06 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B60R1/074
B60R1/06 D
(21)【出願番号】P 2018145156
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】特許業務法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐平
(72)【発明者】
【氏名】中川 悟
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-298117(JP,A)
【文献】登録実用新案第3197992(JP,U)
【文献】特開2018-047728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0069406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/074
B60R 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に設けられるドアミラー(4)を回転可能にするドアミラー格納ユニット(11、12)であって、
前記ドアミラーとともに回転可能なモータ(30)と、
前記モータを収容可能なモータケース(65)と、
環状に形成されており、前記モータの径方向における前記モータケースの外面であるケース外面(66)に内面(81)が接触するように、前記モータケースに設けられて
おり、前記モータの径方向に変形可能であるモータ支持部(80、280)と、
を備え
、
前記モータケースは、前記モータの径方向に連通する支持部穴(68)を前記ケース外面に有し、
前記モータ支持部は、前記支持部穴を介して、前記モータに接触するドアミラー格納ユニット。
【請求項2】
前記モータ支持部(80)は、前記モータ支持部の変形前の内径(Ds)が前記モータケースの外径(Dc)よりも小さくなるように、形成されている請求項
1に記載のドアミラー格納ユニット。
【請求項3】
前記モータ支持部(280)は、前記ケース外面に接触したとき、前記モータの軸方向に変形する請求項1
または2に記載のドアミラー格納ユニット。
【請求項4】
前記モータ支持部は、ゴムまたは樹脂で形成されている請求項1から
3のいずれか一項に記載のドアミラー格納ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドアミラー格納ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、ドアミラーを回転させる格納機構を備える車両用ミラー装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、嵌合されたケースおよびカバーがモータを収容しつつ、モータを支持している。また、モータの軸方向において、ケースとモータとの間、および、カバーとモータとの間に設けられる弾性体がモータを支持している。この構成では、複数の弾性体がケースおよびカバーの内側に設けられており、装置の構成が複雑になる。
【0005】
また、弾性体が設けられるケースまたはカバーの箇所において、比較的高い寸法精度が要求される。弾性体が設けられるケースまたはカバーの箇所における寸法精度が低いとき、弾性体の位置ズレが生じて、弾性体によるモータを支持する力が小さくなり、モータにガタツキが発生する虞がある。モータにガタツキが発生すると、ドアミラーが回転するとき、モータが振動して騒音になることがある。
【0006】
本開示の目的は、簡易な構成で、モータの振動を抑制するドアミラー格納ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、車両(1)に設けられるドアミラー(4)を回転可能にするドアミラー格納ユニット(11、12)である。ドアミラー格納ユニットは、モータ(30)、モータケース(65)およびモータ支持部(80、280)を備える。
【0008】
モータは、ドアミラーとともに回転可能である。モータケースは、モータを収容可能である。モータ支持部は、環状に形成されており、ケース外面(66)にモータ支持部の内面(81)が接触するように、モータケースに設けられており、モータの径方向に変形可能である。ケース外面は、モータの径方向におけるモータケースの外面である。モータケースは、モータの径方向に連通する支持部穴(68)をケース外面に有し、モータ支持部は、支持部穴を介して、モータに接触する。
【0009】
モータ支持部の内面がケース外面に接触したとき、モータ支持部は、モータの径方向外側から径方向内側に向かって働く力である接触力をモータケースに作用する。接触力により、モータケースの内面がスリーブに接触し、モータは、モータケースに支持され、固定される。モータケースの外側にモータ支持部が設けられているため、モータ支持部の取付が容易になり、ドアミラー格納ユニットの構成が簡易になる。また、接触力により、モータケースの内面がスリーブに接触してモータが固定されるため、モータのガタツキを抑制できる。モータのガタツキが抑制されるため、モータの振動が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態のドアミラー格納ユニットが用いられる車両の構成図。
【
図2】本実施形態のドアミラー格納ユニットが用いられるドアミラーの構成図。
【
図3】第1実施形態のドアミラー格納ユニットの断面図。
【
図5】第1実施形態のドアミラー格納ユニットにおけるモータ支持部が変形する前のモータの径方向における断面図。
【
図7】第1実施形態のドアミラー格納ユニットにおけるモータ支持部がモータケースに取り付けられ、モータ支持部が変形した後のモータの径方向における断面図。
【
図8】第2実施形態のドアミラー格納ユニットにおけるモータ支持部の径方向の断面図。
【
図9】第2実施形態のドアミラー格納ユニットにおけるモータ支持部が軸方向に変形しているときの断面図。
【
図10】第2実施形態のドアミラー格納ユニットにおけるモータ支持部が復元したときの断面図。
【
図11】他の実施形態のドアミラー格納ユニットにおけるモータ支持部が軸方向に変形するときの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、ドアミラー格納ユニットの実施形態を図面に基づいて説明する。複数の実施形態において、実質的に同一の構成には、同一の符号を付して説明する。また、本実施形態という場合、複数の実施形態を包括する。本実施形態のドアミラー格納ユニットは、車両1に設けられるドアミラー4に用いられる。まず、車両1およびドアミラー4について説明する。
【0012】
図1に示すように、車両1は、左ドア2および右ドア3を備える。左ドア2および右ドア3は、開閉可能であり、左ドア2および右ドア3のそれぞれにドアミラー4が設けられている。ドアミラー4によって、車両1の運転手は、車両1の後方または車両1の周辺を視認できる。
【0013】
車両1の前進方向を「前」とする。車両1の後退方向を「後」とする。また、前進方向から見て上側を「上」とする。前進方向から見て下側を「下」とする。上下方向と車両の高さ方向である車高方向とは、同一方向である。さらに、前進方向から見て右側を「右」とする。前進方向から見て左側を「左」とする。左右方向と車両の幅方向である車幅方向とは、同一方向である。
【0014】
図2に示すように、ドアミラー4は、ハウジング5およびミラー6を備える。ハウジング5は、有底筒状に形成され、樹脂で形成されている。ミラー6は、ハウジング5に収容されている。ミラー6は、車両または車両の周辺を含む鏡像を映すことが可能である。本実施形態のドアミラー格納ユニットにより、ハウジング5が回転し、ドアミラー4が格納可能になる。
【0015】
(第1実施形態)
図3に示すように、ドアミラー格納ユニット11は、ユニットケース20、モータ30、減速機40、クラッチ45、シャフト60、モータケース65、ギヤカバー70およびユニットカバー75を備えている。
【0016】
ユニットケース20は、ハウジング5に取付可能であり、ユニット筒部21、ユニット底部22およびユニット取付部23を有する。ユニット筒部21は、シャフト60、モータケース65およびギヤカバー70を収容している。また、ユニット筒部21は、減速機40を収容しつつ支持している。ユニット底部22は、ユニット筒部21の下端部を塞ぐユニットケース20の部位であり、減速機40を支持している。また、ユニット底部22は、孔24を含む。孔24にシャフト60が挿入されており、ユニット底部22は、シャフト60を支持している。ユニット取付部23は、ユニット筒部21およびユニット底部22と一体となって接続されており、ハウジング5に固定される。
【0017】
モータ30は、例えば、整流子電動機で構成されており、スリーブ31およびモータ出力軸32を有する。スリーブ31は、長方形状の断面を含み、図示しない界磁および電機子を内側に含む。界磁は、スリーブ31の内壁に固定されている。電機子は、界磁の内側で回転可能に設けられている。モータ出力軸32は、電機子の回転軸である。断面図において、モータ30の所在を明確にするため、モータ30を模式的に白色で記載している。
【0018】
減速機40は、ユニット筒部21およびユニット底部22に支持されつつ、回転可能である。減速機40は、第1ウォーム41、第1ウォームホイール51、第2ウォーム42および第2ウォームホイール52を有し、モータ出力軸32の回転を減速し、クラッチ45を介して、シャフト60に回転力を伝える。図において、第1ウォーム41、第1ウォームホイール51、第2ウォーム42および第2ウォームホイール52は、模式的に記載されている。
【0019】
第1ウォーム41は、モータ出力軸32とともに回転可能に、モータ出力軸32と嵌合している。第1ウォームホイール51は、第1ウォーム41に噛み合っている。第2ウォーム42は、第1ウォームホイール51とともに回転可能に、第1ウォームホイール51と嵌合している。第2ウォームホイール52は、第2ウォーム42に噛み合っている。また、第2ウォームホイール52は、クラッチリング46に対向しており、クラッチリング46側に、ホイール凹部53を含む。
【0020】
クラッチ45は、減速機40の回転力をシャフト60に伝達可能であり、クラッチリング46およびクラッチスプリング47を有する。クラッチリング46は、第2ウォームホイール52およびユニット底部22の間に設けられており、第2ウォームホイール52側にクラッチ凸部48を含む。クラッチ凸部48は、ホイール凹部53とともに回転可能に、ホイール凹部53と嵌合可能である。また、クラッチリング46は、環状に形成されており、シャフト60とともに回転可能に、シャフト60と嵌合している。なお、図において、ホイール凹部53およびクラッチ凸部48は、誇張して記載されている。
【0021】
クラッチスプリング47は、一端がプレート49に設けられ、他端が第2ウォームホイール52に設けられており、第2ウォームホイール52をクラッチリング46に向かって付勢している。クラッチスプリング47の付勢力によって、ホイール凹部53とクラッチ凸部48とが嵌合する。モータ30が回転したとき、第1ウォーム41、第1ウォームホイール51、第2ウォーム42および第2ウォームホイール52を介して、クラッチリング46に回転力が伝達される。クラッチリング46に回転力が伝達されたとき、クラッチリング46が回転し、シャフト60が回転する。
【0022】
シャフト60は、上下方向に延びており、ユニット底部22に支持されつつ、回転可能である。シャフト60の下端部61は、径が比較的大きくなるように形成されており、ユニット底部22と係合しやすいように、形成されている。
【0023】
モータケース65は、筒状に形成され、スリーブ31に対応する形状に形成されており、モータ30を収容可能である。モータケース65は、例えば、樹脂で形成されており、スリーブ31の上端部が露出するように、設けられている。
【0024】
ギヤカバー70は、減速機40およびクラッチ45を保護可能である。また、ギヤカバー70は、例えば、樹脂で形成され、モータケース65と一体になって形成されている。モータケース65に収容されたモータ30ととともに、ギヤカバー70は、ユニットケース20に取り付けられる。
【0025】
ユニットカバー75は、有底筒状に形成されており、ユニット筒部21の上端部に嵌合している。ユニットカバー75は、モータ30およびシャフト60を結ぶ直線方向に延びており、モータ30、減速機40およびクラッチ45の防水手段および防塵手段として機能している。
【0026】
従来、特許文献1に記載されているように、ドアミラーを回転させる格納機構を備える車両用ミラー装置が知られている。特許文献1の構成では、嵌合されたケースおよびカバーがモータを収容しつつ、モータを支持している。また、モータの軸方向において、ケースとモータとの間、および、カバーとモータとの間に設けられる弾性体がモータを支持している。
【0027】
この構成では、複数の弾性体がケースおよびカバーの内側に設けられており、装置の構成が複雑になる。また、弾性体が設けられるケースまたはカバーの箇所において、比較的高い寸法精度が要求される。弾性体が設けられるケースまたはカバーの箇所における寸法精度が低いとき、弾性体の位置ズレが生じて、弾性体によるモータを支持する力が小さくなり、モータにガタツキが発生する虞がある。モータにガタツキが発生すると、ドアミラーが回転するとき、モータが振動して騒音になることがある。そこで、本実施形態のドアミラー格納ユニット11は、簡易な構成で、モータ30の振動を抑制する。
【0028】
図4に示すように、ドアミラー格納ユニット11は、モータ支持部80をさらに備える。モータ支持部80の内面を支持部内面81とする。モータ30の径方向外側におけるモータケース65の外面をケース外面66とする。モータ30の径方向内側におけるモータケース65の内面をケース内面67とする。
【0029】
図5および
図6に示すように、モータ支持部80は、環状に形成されている。モータ支持部80は、例えば、円環形状に形成されており、モータ支持部80の径方向における断面が円形形状となるように、形成されている。モータ支持部80は、支持部内面81がケース外面66に接触するように、モータケース65の径方向外側であって、ケース外面66に沿うように設けられており、モータケース65を介してモータ30およびモータケース65を支持可能である。支持部内面81がケース外面66に接触したとき、ケース内面67がスリーブ31に接触する。
【0030】
モータ支持部80は、ゴムまたは樹脂で形成されており、モータ30またはモータケース65の径方向に弾性変形可能である。なお、モータ支持部80は、塑性変形可能であってもよい。モータ支持部80は、ケース外面66に沿うように、弾性変形している。モータ支持部80の弾性変形前の最小内径を支持部内径Dsとする。モータケース65の最大外径をケース外径Dcとする。モータ支持部80は、支持部内径Dsがケース外径Dcよりも小さくなるように、形成されている。
【0031】
また、モータケース65は、モータ30の角部に位置する部位に支持部穴68を有する。支持部穴68は、モータ30の径方向に連通する。モータ支持部80は、モータ30の径方向外側から径方向内側に向かって変形しており、支持部穴68を介して、支持部内面81がスリーブ31に接触している。なお、このように変形するように、モータ支持部80およびモータケース65の寸法は、調整されている。
【0032】
[1]
図7に示すように、支持部内面81がケース外面66に接触したとき、モータ支持部80は、モータ30の径方向外側から径方向内側に向かって働く力である接触力Faをモータケース65に作用する。接触力Faにより、ケース内面67がスリーブ31に接触し、モータ30は、モータケース65に支持され、固定される。
【0033】
モータケース65の外側にモータ支持部80が設けられているため、モータ支持部80の取付が容易になり、ドアミラー格納ユニット11の構成が簡易になる。また、接触力Faにより、ケース内面67がスリーブ31に接触してモータ30が固定されるため、モータ30のガタツキを抑制できる。モータ30のガタツキが抑制されるため、モータ30の振動が抑制される。
【0034】
[2]モータ支持部80は、モータ30またはモータケース65の径方向に弾性変形可能である。これにより、モータ30の径方向外側から径方向内側に向かって、モータ支持部80が変形したときに生じる復元力Feをモータケース65に作用する。復元力Feにより、モータ30を固定する力が向上する。このため、モータ30の振動がさらに抑制される。
【0035】
[3]モータ支持部80は、支持部内径Dsがケース外径Dcよりも小さくなるように、形成されている。これにより、モータ支持部80がモータケース65に設けられたとき、モータ支持部80は、変形しやすくなる。モータ支持部80が変形しやすくなると、復元力Feが向上する。復元力Feが大きくなるに伴い、モータ30を固定する力が向上し、モータ30の振動がさらに抑制される。
【0036】
[4]モータ支持部80は、支持部穴68を介して、スリーブ31に接触しており、モータ30の径方向外側から径方向内側に向かう力である直接接触力Fdをモータ30に作用する。モータ支持部80がモータ30に直接接触することによって、モータ30を固定する力が向上する。また、モータ30の固定力が向上し、モータ30の振動がさらに抑制される。
【0037】
[5]モータ支持部80は、ゴムまたは樹脂で形成されている。ゴムまたは樹脂は、エネルギー吸収能が高いため、モータ30が振動したとき、モータ支持部80に伝播されるモータ30の振動エネルギーが熱エネルギーまたはモータ支持部80の変形エネルギーに変換されやすくなる。これにより、モータ30の振動がさらに抑制される。
【0038】
(第2実施形態)
図8に示すように、第2実施形態のドアミラー格納ユニット12におけるモータ支持部280は、モータケース65の形状に対応するように形成されており、複数の凸部281をさらに有する。凸部281は、支持部内面81からモータ30の径方向内側に向かって延びている。
【0039】
図9に示すように、モータケース65にモータ支持部280を取り付ける際、凸部281は、ケース外面66に接触したとき、モータ30またはモータケース65の軸方向に変形する。凸部281が支持部穴68に位置したとき、凸部281が元の形に復元する。
【0040】
図10に示すように、凸部281が元の形に復元したとき、凸部281は、スリーブ31に接触する。第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0041】
(他の実施形態)
[i]
図11に示すように、第2実施形態のドアミラー格納ユニット12において、支持部穴68の位置は、モータケース65の角部に限定されない。支持部穴68は、ケース外面66の平面部に形成されてもよい。
【0042】
[ii]モータのスリーブの形状は、限定されず、モータのスリーブは、円形形状、楕円形形状または多角形形状の断面を有してもよい。モータケースは、モータのスリーブの形状に対応するように、形成されていればよく、モータ支持部は、モータケースの形状に対応するように、形成されていればよい。
【0043】
以上、本開示はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ・・・車両、
4 ・・・ドアミラー、
11、12 ・・・ドアミラー格納ユニット、
30 ・・・モータ、
65 ・・・モータケース、 66 ・・・ケース外面、
80、280 ・・・モータ支持部、 81 ・・・支持部内面(内面)。