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特許7096106プリフォーム賦形方法及び複合材成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】プリフォーム賦形方法及び複合材成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/54 20060101AFI20220628BHJP
   B29C 70/48 20060101ALI20220628BHJP
   B29B 11/12 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B29C70/54
B29C70/48
B29B11/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018159800
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020032581
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】関根 尚之
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄太
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/090911(WO,A1)
【文献】特開2008-230020(JP,A)
【文献】特開2013-216012(JP,A)
【文献】国際公開第2015/156861(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2003/0132543(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0147620(US,A1)
【文献】国際公開第2005/071152(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03023241(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29C 43/00-43/58
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
C08J 5/04- 5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダを付着させたシート状の繊維を積層することにより繊維の積層体を製作するステップと、
前記繊維の積層体に可撓性を有する耐雷用のメッシュ導体を載置するステップと、
前記メッシュ導体が載置された状態で前記繊維の積層体を型に押し当てて加圧することによって賦形後の形状を有するプリフォームを製作するステップと、
前記加圧時に加熱することによって前記バインダで前記賦形後における前記プリフォームの形状を保持するステップと、
前記加圧前に前記繊維の積層体と前記メッシュ導体との間にシート状のバインダを補充し、前記メッシュ導体を前記シート状のバインダで前記繊維の積層体に仮留めするステップと、
を有するプリフォーム賦形方法。
【請求項2】
前記シート状のバインダとして熱可塑性の樹脂から成る繊維を編み込んだ織物材又は熱可塑性の樹脂から成る繊維で構成される不織布を使用し、前記加圧時に前記シート状のバインダを加熱して熱融着させることによって前記メッシュ導体を前記繊維の積層体に固定する請求項記載のプリフォーム賦形方法。
【請求項3】
表面が平面となっている積層治具に前記シート状の繊維を積層することにより前記繊維の積層体を製作し、前記積層治具に積層された前記繊維の積層体に前記シート状のバインダ及び前記メッシュ導体を載置する請求項2記載のプリフォーム賦形方法。
【請求項4】
加熱装置付きの繊維の自動積層装置を用いることによって、局所加熱によって前記バインダで前記シート状の繊維を自動的に仮留めしながら積層し、かつ前記メッシュ導体の仮留めも、前記自動積層装置に取付けられた前記加熱装置を用いて自動的に行う請求項記載のプリフォーム賦形方法。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のプリフォーム賦形方法で製作された前記プリフォームに樹脂を含浸させて硬化することによって複合材を製作する複合材成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリフォーム賦形方法及び複合材成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP: Glass fiber reinforced plastics)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics)等の樹脂を繊維で強化した複合材の成形方法の1つとしてRTM(Resin Transfer Molding)法が知られている。
【0003】
RTM法は、シート状の繊維を積層した後に熱硬化性樹脂を含浸させて加熱硬化する複合材の成形方法である。RTM法のうち、真空引きを行って繊維に樹脂を含浸させる方法は、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法と呼ばれ、金型を利用して樹脂を含浸させる方法は、マッチドダイ(matched-die)RTM法と呼ばれる。
【0004】
RTM法で複合材を成形する場合には、樹脂の含浸に先立ってドライプリフォームが製作される(例えば特許文献1参照)。ドライプリフォームはシート状の繊維の積層体を、成形後における複合材の形状に合わせて賦形したものである。ドライプリフォームの製作に用いられるテープ状の繊維基材はドライテープ材と呼ばれる。ドライテープ材を用いてドライプリフォームを製作する手法としては、平面状の積層治具上にドライテープ材を積層した後、ドライテープ材の積層体を金型に載置して加熱しながらプレスすることにより製品形状に賦形する手法が挙げられる。
【0005】
RTM法で複合材を成形する場合には、賦形後のドライプリフォームに樹脂が含浸される。この際、ドライプリフォームへの樹脂の含浸を促進させるためにメッシュ状のフローメディアを載置する技術やピールプライを介在させることによって樹脂の硬化後にフローメディアが樹脂と一体化しないようにする技術が知られている(例えば特許文献3参照)。フローメディアはポリプロピレンやポリエチレン等で構成され、真空引きを行った際に樹脂の流路となる隙間を形成するために敷設される。一方、ピールプライはナイロンやポリエステル等の繊維で構成される織布である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-150685号公報
【文献】特開2007-260925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ドライプリフォームの形状が複雑である場合には、フローメディアやピールプライ等の副資材を安定的にドライプリフォームの表面に載置及び固定する作業に労力を要する。特にドライプリフォームの形状が複雑である場合には、副資材をドライプリフォームの適切な位置に載置及び固定することが困難となる。
【0008】
そこで、本発明は、VaRTM法やマッチドダイRTM法等のRTM法で複合材を成形する場合において、副資材等をドライプリフォームの表面に載置する作業を容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係るプリフォーム賦形方法は、バインダを付着させたシート状の繊維を積層することにより繊維の積層体を製作するステップと、前記繊維の積層体に可撓性を有する耐雷用のメッシュ導体を載置するステップと、前記メッシュ導体が載置された状態で前記繊維の積層体を型に押し当てて加圧することによって賦形後の形状を有するプリフォームを製作するステップと、前記加圧時に加熱することによって前記バインダで前記賦形後における前記プリフォームの形状を保持するステップと、前記加圧前に前記繊維の積層体と前記メッシュ導体との間にシート状のバインダを補充し、前記メッシュ導体を前記シート状のバインダで前記繊維の積層体に仮留めするステップとを有するものである。
【0010】
また、本発明の実施形態に係る複合材成形方法は、上述したプリフォーム賦形方法で製作された前記プリフォームに樹脂を含浸させて硬化することによって複合材を製作するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るプリフォーム賦形方法を含む複合材成形方法の手順を示すフローチャート。
図2】(A)、(B)及び(C)はバギングを行うことによってプリフォームを賦形する方法を示す図。
図3】(A)、(B)及び(C)は型でプレスすることによってプリフォームを賦形する方法を示す図。
図4】熱可塑性バインダとして熱可塑性樹脂の微粒子を繊維に付着させたドライテープ材の構造を示す斜視図。
図5】熱可塑性バインダとして熱可塑性の不織布を繊維に付着させたドライテープ材の構造を示す斜視図。
図6】VaRTM法により複合材を成形する方法を説明する図。
図7】マッチドダイRTM法により複合材を成形する方法を説明する図。
図8図1に示すプリフォーム賦形方法及び複合材成形方法によって製作対象となるドライプリフォーム及び複合材の第1の形状例を示す斜視図。
図9図1に示すプリフォーム賦形方法及び複合材成形方法によって製作対象となるドライプリフォーム及び複合材の第2の形状例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るプリフォーム賦形方法及び複合材成形方法について添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係るプリフォーム賦形方法を含む複合材成形方法の手順を示すフローチャート、図2(A)、(B)及び(C)はバギングを行うことによってプリフォームを賦形する方法を示す図、図3(A)、(B)及び(C)は型でプレスすることによってプリフォームを賦形する方法を示す図である。
【0014】
プリフォームは、樹脂を繊維で強化したCFRPやGFRP等の繊維強化プラスチック(FRP:fiber reinforced plastics)の素材である。FRPは複合材とも呼ばれる。プリフォームのうち樹脂を含浸させる前のプリフォームはドライプリフォームと呼ばれる。
【0015】
そして、図1はドライプリフォームを製作し、製作したドライプリフォームを素材としてRTM法で複合材を成形する方法を示している。一方、図2(A)、(B)及び(C)並びに図3(A)、(B)及び(C)は、複合材の素材となるドライプリフォームの製作方法を示している。尚、RTM法は、繊維を積層して複合材の形状に合わせて賦形した後に未硬化の樹脂を含浸させて加熱硬化する複合材の成形方法である。
【0016】
まず図1に示すステップS1において、図2(A)及び図3(A)に示すように平板状の積層治具1にシート状の繊維が積層される。これにより、繊維の積層体2が製作される。テープ状の繊維はドライテープ材という名称で製品化されている。
【0017】
特に、バインダと繊維を組合せてテープ状にしたシート状の繊維もドライテープ材として市販されている。このため、バインダを付着させたドライテープ材を用いて繊維の積層体2を製作するようにすれば、バインダで部分的に滑らないように仮留めしながらドライテープ材を積層することが可能となる。
【0018】
バインダとしては、熱可塑性バインダ及び熱硬化性バインダが挙げられる。シート状、ネット状、不織布状又は粉末状の熱可塑性バインダを付着させたシート状の繊維や粉末状又は液状の熱硬化性バインダを付着させたドライテープ材等のシート状の繊維が製品化されている。
【0019】
図4は熱可塑性バインダとして熱可塑性樹脂の微粒子を繊維に付着させたドライテープ材の構造を示す斜視図である。
【0020】
図4に示すようにシート状に束ねた繊維束10に熱可塑性バインダとして熱可塑性樹脂の微粒子11を塗したドライテープ材12が市販されている。
【0021】
図5は熱可塑性バインダとして熱可塑性の不織布を繊維に付着させたドライテープ材の構造を示す斜視図である。
【0022】
図5に示すようにシート状に束ねた繊維束10に熱可塑性バインダとして熱可塑性の不織布13を重ねたドライテープ材14も市販されている。
【0023】
このため、図4及び図5に例示されるような所望のバインダを付着させたシート状の繊維を局所加熱によって仮留めしながら積層することができる。もちろん、仮留めしない場合には、バインダが付着されていないシート状の繊維を積層しても良い。シート状の繊維の仮留め及び積層は、バインダのスポット溶着を行うための加熱装置付きの繊維の自動積層装置を用いて自動的に行っても良いし、作業者が手作業で行うようにしても良い。
【0024】
具体例として、熱可塑性バインダを付着させたドライテープ材を仮留めしながら平板状の積層治具1に積層する場合であれば、加熱装置付きの繊維の自動積層装置を用いて熱可塑性バインダを局所加熱することによって一定間隔で熱可塑性バインダをドライテープ材に熱融着させることができる。これにより、各繊維層を構成するドライテープ材を積層方向に隣接するドライテープ材に熱可塑性バインダでスポット状に仮留めしながら積層することができる。
【0025】
次に、ステップS2において、図2(A)及び図3(A)に示すように繊維の積層体2に可撓性を有する副資材や部品等の物体3が載置される。すなわち、副資材及び部品の少なくとも一方が物体3として繊維の積層体2の上に設置される。副資材の例としては、フローメディア及びピールプライが挙げられる。従って、フローメディア及びピールプライの少なくとも一方を繊維の積層体2の上に載置することができる。一方、部品の例としては、耐雷用の銅メッシュが挙げられる。
【0026】
フローメディアは、VaRTM法において真空引きのみであっても繊維に樹脂を十分に含浸できるようにバギングフィルムとドライプリフォームの表面との間に設けられるメッシュ状のシートである。フローメディアは、ポリプロピレンやポリエチレン等の可撓性を有する材料で構成される。フローメディアを設けると、バギングフィルムとドライプリフォームの表面との間に隙間を形成することができる。このため、樹脂の流路を形成し、ドライプリフォームを構成する繊維への樹脂の含浸を促進させることができる。その結果、樹脂が流動性を有する間に繊維の隅々まで樹脂を浸透させて含浸を完了させることができる。
【0027】
一方、ピールプライは、ドライプリフォームを素材として成形される複合材の表面における接着性を改善するための織布である。ピールプライは、ナイロンやポリエステル等の繊維で構成されるシートである。
【0028】
以上のように典型的な副資材及び部品等の物体3はシート状、メッシュ状又はひも状である場合が多い。このため、シート状の繊維と同様に積層し、繊維の積層体2と共に加圧して賦形することが可能である。
【0029】
次に、ステップS3において、賦形用の加圧前における前処理として、必要に応じて副資材及び部品の繊維の積層体2への仮留めが行われる。すなわち、バインダを含むシート状の繊維が積層されている場合であれば、シート状の繊維に付着しているバインダを利用して副資材や部品等の物体3を繊維の積層体2に仮留めすることができる。つまり、副資材や部品等の物体3についてもシート状の繊維と同様にバインダで繊維の積層体2の表面に仮留めしながら積層することができる。
【0030】
また、副資材や部品等の物体3を十分な強度で仮留めするために、シート状の繊維に付着しているバインダでは不足する場合には、副資材や部品等の物体3を十分な強度で繊維の積層体2に仮留めできるようにバインダ4を補充することができる。図2(B)及び図3(B)は、シート状のバインダ4を繊維の積層体2と副資材や部品等の物体3との間に補充した例を示している。シート状のバインダ4の具体例としては、熱可塑性の樹脂から成る繊維を編み込んだ織物材や熱可塑性の樹脂から成る繊維で構成される不織布が挙げられる。
【0031】
具体例としてバインダ4が熱可塑性バインダであれば、副資材や部品等の物体3についてもシート状の繊維と同様に、加熱装置で一定間隔でスポット状に熱可塑性バインダを熱融着させることによって、副資材や部品等の物体3を繊維の積層体2に固定することができる。物体3の仮留めについても、繊維の自動積層装置に取付けられた加熱装置の加熱端子を用いて自動的に行っても良いし、作業者が手作業で行うようにしても良い。
【0032】
また、副資材や部品等の物体3を仮留めするためのバインダ4は、バインダが付着していないシート状の繊維を積層する場合においても使用することができる。その場合には、副資材や部品等の物体3のみがバインダ4で繊維の積層体2に仮留めされることになる。
【0033】
次に、ステップS4において、副資材や部品等の物体3が載置された状態で繊維の積層体2が賦形される。これにより、賦形後の形状を有する繊維の積層体2としてドライプリフォームを製作することができる。賦形は、副資材や部品等の物体3が載置された状態における繊維の積層体2を型に押し当てて加圧することによって実行される。
【0034】
バギングを行うことによってドライプリフォームを賦形する場合であれば、図2(C)に示すように副資材や部品等の物体3が載置された状態における繊維の積層体2をバギングし、大気圧を利用して下型5に押し当てることによってドライプリフォームを製作することができる。
【0035】
より具体的には、図2(C)に示すように下型5の上に載置された物体3及び繊維の積層体2をバギングフィルム6で覆い、バギングフィルム6の縁をシーラント7で下型5に貼付けることによって、物体3及び繊維の積層体2を密閉することができる。
【0036】
次に、バギングフィルム6で密閉された領域を、真空装置8で減圧することができる。尚、真空装置8は真空ホースでバギングフィルム6と連結しても良いし、下型5と連結しても良い。真空装置8による真空引きを行うと、物体3及び繊維の積層体2には、大気圧と、バギングフィルム6で密閉された領域内における圧力との差圧を負荷することができる。すなわち、物体3及び繊維の積層体2をバギングフィルム6でバギングすることによって、物体3及び繊維の積層体2を加圧することができる。これにより、副資材や部品等の物体3とともに賦形された繊維の積層体2として物体3が取付けられたドライプリフォームを取得することができる。
【0037】
また、シート状の繊維にバインダが付着している場合には、加圧時に加熱することによってバインダで賦形後におけるドライプリフォームの形状を保持することができる。加えて、副資材や部品等の物体3についても、繊維に付着しているバインダや追加されたバインダ4でドライプリフォームに貼付けることができる。具体例として、バインダとして熱可塑性バインダが使用される場合であれば、加圧時に熱可塑性バインダを加熱して熱融着させることによって副資材や部品等の物体3を賦形後における繊維の積層体2から成るドライプリフォームに固定することができる。
【0038】
熱可塑性バインダを使用する場合には、例えば、加熱装置9を下型5に内蔵し、熱可塑性のバインダを溶融するようにしてもよい。もちろん、バギング済みの物体3及び繊維の積層体2を下型5とともにオーブン等の独立した加熱装置9に搬入するようにしてもよい。
【0039】
一方、図3(C)に示すように副資材や部品等の物体3が載置された状態における繊維の積層体2を上型5Aと下型5Bとの間に挟み込んで加圧することによってドライプリフォームを製作することもできる。
【0040】
より具体的には、図3(C)に示すように副資材や部品等の物体3を取付けた状態における賦形後のドライプリフォームの形状にフィットする凹部を形成した上型5Aと、下型5Bで物体3及び繊維の積層体2を挟み込んで加圧することができる。これにより、副資材や部品等の物体3とともに賦形された繊維の積層体2として物体3が取付けられたドライプリフォームを取得することができる。
【0041】
上型5Aと下型5Bで物体3及び繊維の積層体2を挟み込む場合においても、熱可塑性のバインダを用いてドライプリフォームの賦形を行う場合には、物体3及び繊維の積層体2をバインダが溶融する温度まで加熱することが必要である。そこで、例えば、加熱装置9を上型5A及び下型5Bの少なくとも一方に内蔵し、熱可塑性のバインダを溶融するようにしてもよい。もちろん、物体3及び繊維の積層体2を上型5A及び下型5Bとともにオーブン等の独立した加熱装置9に搬入するようにしてもよい。
【0042】
上述したプリフォーム賦形方法で副資材や部品等の物体3が取付けられたドライプリフォームが製作されると、ドライプリフォームに樹脂を含浸させて硬化することによって複合材を製作することができる。具体的には、ステップS5において、ドライプリフォームを構成する繊維への樹脂の含浸が行われる。次に、ステップS6において、樹脂が加熱硬化される。これにより複合材が成形される。すなわち、目的とする形状を有する複合材を製作することができる。
【0043】
図6はVaRTM法により複合材を成形する方法を説明する図であり、図7はマッチドダイRTM法により複合材を成形する方法を説明する図である。
【0044】
VaRTM法で複合材を成形する場合には、図6に示すように複合材の成形用の下型20の上に副資材や部品等の物体3が取付けられた賦形後における繊維の積層体2、すなわち物体3が取付けられたドライプリフォームが載置される。下型20は、図2(C)に例示される下型5と共通にしても良いし、複合材成形専用の別の型としても良い。複合材成形用の下型20とドライプリフォームの賦形用の下型5を共通にする場合には、他の装置や設備についても共通にすることができる。
【0045】
そして、下型20に載置された物体3及び賦形後における繊維の積層体2がバギングフィルム21で覆われ、バギングフィルム21の縁がシーラント22で下型20に貼着される。そして、バギングフィルム21で密閉された領域が真空装置23によって減圧される。すなわち、真空装置23による真空引きによって物体3及び賦形後における繊維の積層体2がバギングされる。
【0046】
一方、マッチドダイRTM法で複合材を成形する場合には、図7に示すように複合材の成形用の下型20と上型24との間に形成される空間に副資材や部品等の物体3が取付けられた賦形後における繊維の積層体2、すなわち物体3が取付けられたドライプリフォームが配置される。そして、下型20と上型24との間に形成される空間の真空引きが真空装置23によって行われる。
【0047】
真空引きが完了すると、図6に示すようにバギングフィルム21を用いてバギングする場合或いは図7に示すように上型24を用いる場合のいずれにおいても、樹脂注入装置25から樹脂が注入される。すなわち、バギングフィルム21で覆われた領域又は下型20と上型24との間における領域に樹脂注入装置25から樹脂が注入される。これにより、副資材や部品等の物体3が取付けられた賦形後における繊維の積層体2に樹脂を含浸させることができる。
【0048】
特に、図6に示すようにバギングフィルム21を用いてバギングされている状態において、物体3としてフローメディアが取付けられた賦形後における繊維の積層体2に樹脂を含浸させれば、樹脂の含浸を促進し、ボイドの形成を回避することができる。
【0049】
また、必要に応じて樹脂に流動性が得られるように樹脂注入装置25において樹脂が加熱される。また、樹脂が加熱された状態で注入される場合には、樹脂の温度が低下しないように、下型20に加熱装置を内蔵して樹脂を加熱するようにしても良い。下型20に加熱装置を内蔵する場合には、例えば、加熱蒸気、熱風又は熱水等の加熱流体を流す配管を下型20に内蔵することができる。或いは、電気式のヒーターを下型20に内蔵しても良い。また、図7に示すように上型24を用いる場合には上型24に加熱装置を内蔵しても良い。
【0050】
次に、賦形後における繊維の積層体2に含浸させた樹脂の加熱硬化が行われる。具体的には、図6又は図7に示すように加熱装置26によって樹脂が硬化する温度まで加熱される。加熱装置26は、上述したように下型20や上型24に内蔵される加熱装置と共通にしても良いし、オーブン等の別の加熱装置としても良い。樹脂を硬化温度まで加熱すると、樹脂が硬化し、成形後における複合材を製作することができる。
【0051】
尚、図6及び図7を参照して説明した例は、複合材を構成するマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である場合の例であるが、マトリックス樹脂を熱可塑性樹脂としても良い。マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材の公知の製法で複合材を製作することができる。
【0052】
複合材が製作されると、フローメディア等の不要な副資材は複合材から取外されて除去される。一方、ピールプライ等の引続き使用される副資材については複合材に取付けた状態で次工程に提供される。また、部品についても複合材に取付けた状態で提供される。
【0053】
図8図1に示すプリフォーム賦形方法及び複合材成形方法によって製作対象となるドライプリフォーム及び複合材の第1の形状例を示す斜視図である。
【0054】
図8に示すように、例えば、ウェブ30の片面に2つの湾曲したフランジ31を形成したドライプリフォーム及び複合材を製作することができる。この場合、平板上に凸部を形成した型32を用いてドライプリフォーム及び複合材を製作することができる。
【0055】
図9図1に示すプリフォーム賦形方法及び複合材成形方法によって製作対象となるドライプリフォーム及び複合材の第2の形状例を示す斜視図である。
【0056】
図9に示すように、例えば、ウェブ30の両側に2つの湾曲したフランジ31を形成したドライプリフォーム及び複合材を製作することもできる。この場合においても、平板上に凸部を形成した型32を用いてドライプリフォーム及び複合材を製作することができる。
【0057】
尚、平坦なシート状の繊維を図2(A)又は図3(A)に示すような表面が平面となっている積層治具1に積層せずに、ドライプリフォームの賦形用の図2(C)に示すような下型5又は図3(C)に示すような下型5Bに積層するようにしても良い。但し、スポット状の局所加熱による繊維の仮留めを加熱装置で自動的に行う場合には、図2(A)又は図3(A)に示すような表面が平面となっている積層治具1に平坦なシート状の繊維を積層すれば、加熱装置の構造及び制御を簡易にすることができるため仮留めの自動化が容易となる。
【0058】
また、図2(C)に示すような下型5又は図3(C)に示すような下型5B等のドライプリフォームの賦形用の型にシート状の繊維を積層する場合には、繊維を積層しながら型のエッジに沿って1枚ずつ折曲げるようにしても良い。但し、繊維の積層後に繊維の折曲げを行うようにすれば、繊維の折曲げ回数が折曲げ線ごとに1回となるため、作業量の低減に繋がる。
【0059】
以上のようなプリフォーム賦形方法及び複合材成形方法は、ドライプリフォームを賦形する際にフローメディア等の副資材や銅メッシュ等の部品を繊維の積層体に載置した状態で一緒に賦形するようにしたものである。また、ドライプリフォームの賦形前後に亘って、フローメディア等の副資材や銅メッシュ等の部品を繊維の積層体にバインダで固定できるようにしたものである。
【0060】
(効果)
このため、プリフォーム賦形方法及び複合材成形方法によれば、フローメディア等の副資材や銅メッシュ等の部品をドライプリフォームの形状に合わせて成形することができる。しかも、フローメディア等の副資材や銅メッシュ等の部品をバインダでドライプリフォームに固定することも可能である。
【0061】
このため、フローメディア等の副資材や銅メッシュ等の部品をドライプリフォームの適切な位置に容易に設置し、かつ固定することができる。その結果、フローメディア等の副資材や銅メッシュ等の部品の設置作業を含む複合材成形に要する労力と時間を削減することができる。
【0062】
また、賦形後におけるドライプリフォームが複雑な形状を有する場合であっても、副資材や部品を設置することが可能である。換言すれば、より複雑な形状を有する複合材を設計及び製作することが可能となる。
【0063】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0064】
1 積層治具
2 繊維の積層体
3 副資材や部品等の物体
4 バインダ
5 下型
5A 上型
5B 下型
6 バギングフィルム
7 シーラント
8 真空装置
9 加熱装置
10 繊維束
11 微粒子
12 ドライテープ材
13 不織布
14 ドライテープ材
20 下型
21 バギングフィルム
22 シーラント
23 真空装置
24 上型
25 樹脂注入装置
26 加熱装置
30 ウェブ
31 フランジ
32 型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9