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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20220628BHJP
   F24F 11/41 20180101ALI20220628BHJP
   F24F 11/42 20180101ALI20220628BHJP
   F24F 11/62 20180101ALI20220628BHJP
   F24F 11/871 20180101ALI20220628BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20220628BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20220628BHJP
【FI】
F25B47/02 550R
F25B47/02 570M
F25B47/02 570H
F24F11/41 100
F24F11/41 112
F24F11/41 114
F24F11/41 120
F24F11/41 220
F24F11/41 250
F24F11/42
F24F11/62
F24F11/871
F24F11/89
F24F110:12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018180315
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020051667
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】朱 帥
(72)【発明者】
【氏名】安部 隼
(72)【発明者】
【氏名】岡田 覚
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-131851(JP,A)
【文献】特開平11-182995(JP,A)
【文献】特開2017-133714(JP,A)
【文献】特開2015-033929(JP,A)
【文献】特開平07-043051(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032430(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046350(WO,A1)
【文献】実開平04-095245(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、四方弁、室内熱交換器、減圧器及び室外熱交換器を冷媒配管で環状に接続した冷凍サイクルと、
前記室外熱交換器に外気を送る室外ファンと、
前記冷凍サイクル中の冷媒温度を検出する温度センサと、
暖房運転において、前記冷媒配管を流れる冷媒の循環方向を前記四方弁により逆に切替えた冷房サイクルで前記室外熱交換器の除霜を行う除霜運転を実行する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記四方弁により前記冷房サイクルに切替えて前記除霜運転を開始してから、その除霜運転中に前記温度センサにより検出される前記冷媒温度の所定時間あたりの温度低下量が予め定められた所定値に達するまでは前記室外ファンを運転させる空気調和機。
【請求項2】
前記温度センサは、前記圧縮機の吸込側の冷媒温度を検出する温度センサである請求項1記載の空気調和機。
【請求項3】
前記温度センサは、前記室内熱交換器の冷媒温度を検出する温度センサである請求項1記載の空気調和機。
【請求項4】
前記室外熱交換器に外気を送る複数の前記室外ファンを備え、
前記制御装置は、前記冷媒温度の前記温度低下量が前記所定値に達したとき、前記複数の室外ファンの運転を、相互に時間差をもって停止させるように停止制御する請求項1から3の何れか一項記載の空気調和機。
【請求項5】
前記室外熱交換器は、上下方向に並ぶ上側熱交換器と下側熱交換器とを含む複数のものであり、
前記複数の室外ファンは、前記上側熱交換器に対応するように配置された上側ファンと、前記下側熱交換器に対応するように配置された下側ファンとを含み、
前記制御装置は、前記冷媒温度の温度低下量が前記所定値に達したとき、前記上側ファンの運転を停止させ、その後に前記時間差をもたせて前記下側ファンの運転を停止させる請求項4記載の空気調和機。
【請求項6】
前記室外熱交換器は、前記冷房サイクルで凝縮器として機能するとき冷凍サイクル上流側となる上流側熱交換器と、冷凍サイクル下流側となる下流側熱交換器とを含む複数のものであり、
前記複数の室外ファンは、前記上流側熱交換器に対応するように配置された上流側ファンと、前記下流側熱交換器に対応するように配置された下流側ファンとを含み、
前記制御装置は、前記冷媒温度の温度低下量が前記所定値に達したとき、前記上流側ファンの運転を停止させ、その後に前記時間差をもたせて前記下流側ファンの運転を停止させる請求項4記載の空気調和機。
【請求項7】
室外の外気温度を検出するための室外温度センサを備え、
前記制御装置は、前記除霜運転を開始する際に前記室外温度センサで検出された外気温度が予め定められた所定温度よりも高いことを条件として、その除霜運転時に前記室外ファンの運転を行う請求項1から6の何れか一項記載の空気調和機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記除霜運転における前記室外ファンの運転時間に予め上限が定められており、前記除霜運転における前記室外ファンの運転時間が上限に達した場合に、前記冷媒温度の前記温度低下量とは無関係に前記室外ファンの運転を停止させる請求項1から7の何れか一項記載の空気調和機。
【請求項9】
前記制御装置は、前記除霜運転において前記室外ファンを運転するときの回転数を、通常の暖房運転時よりも高い回転数あるいは最大回転数に設定する請求項1から8の何れか一項記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和機では、暖房運転において室外熱交換器に着霜が生じると、冷凍サイクル内の冷媒の循環方向を逆に切替える、所謂リバース除霜運転により除霜が行われている。係る除霜運転では、冷凍サイクルが冷房運転用のサイクルとなるため室内ファンを停止させるとともに、冷たい外気を室外熱交換器に送らないように室外ファンも停止させるのが一般である。
【0003】
この点、例えば特許文献1の空気調和機では、除霜運転中に室外熱交換器の温度を検出し、その温度が閾値以上に上昇したとき室外ファンを起動させる制御が行われている。この室外ファンの制御は、除霜運転中の室内熱交換器に二相(液相、気相)の冷媒が流れることに起因する冷媒音を低減させるために行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-172560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の空気調和機では、除霜運転により着霜量が減少した室外熱交換器に対して、その除霜運転の途中から室外ファンで送風がなされることにより、室外熱交換器の温度が低下し、除霜時間が長くなる虞がある。
そこで、室外熱交換器の除霜時間を短縮できる空気調和機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の空気調和機は、圧縮機、四方弁、室内熱交換器、減圧器及び室外熱交換器を冷媒配管で環状に接続した冷凍サイクルと、前記室外熱交換器に外気を送る室外ファンと、前記冷凍サイクル中の冷媒温度を検出する温度センサと、暖房運転において、前記冷媒配管を流れる冷媒の循環方向を前記四方弁により逆に切替えた冷房サイクルで前記室外熱交換器の除霜を行う除霜運転を実行する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記四方弁により前記冷房サイクルに切替えて前記除霜運転を開始してから、その除霜運転中に前記温度センサにより検出される前記冷媒温度の所定時間あたりの温度低下量が予め定められた所定値に達するまでは前記室外ファンを運転させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における空気調和機の構成を概略的に示す図
図2】室外機の外観を表す斜視図
図3】除霜運転における制御内容を示すタイムチャート
図4】室外ファンの運転制御に係る処理の流れを示すフローチャート
図5】第2実施形態における室外ファンの運転制御に係る処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を具体化した複数の実施形態について、図面に基づき説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成については同一の符号を付す等して説明を省略する。
【0009】
<第1実施形態>
以下、第1実施形態について、図1から図4を参照しながら説明する。
図1に示すように、空気調和機1は、圧縮機2、四方弁3、室内熱交換器4、電子膨張弁5及び室外熱交換器6を冷媒配管7で環状に接続したヒートポンプ式の冷凍サイクル8を備えている。本実施形態の室外熱交換器6は、例えば上下方向に連設された上側熱交換器6aと下側熱交換器6bで構成されるものとし、「室外熱交換器6a,6b」とも称する。
【0010】
室内に設置される室内機11には、室内熱交換器4が収納されるとともに、その室内熱交換器4に室内空気を送る室内ファン13が収納されている。詳しい図示は省略するが、室内ファン13は例えば横流ファンであり、室内機11の吸込口から室内空気を吸い込んで、室内熱交換器4に対して空気の流れを生じさせ、その室内熱交換器4で熱交換された空気を、室内機11の吹出口から室内へ吹き出す気流を生じさせる。
【0011】
室外に設置される室外機12には、圧縮機2、四方弁3、電子膨張弁5及び室外熱交換器6a,6bが収納されるとともに、その室外熱交換器6a,6bに外気を送る室外ファン14a,14bが収納されている。室外ファン14a,14bは例えば、何れもプロペラファンである。詳しくは後述するように、室外ファン14a,14bは、室外熱交換器6a,6b各々に対して室外機12の背面側から外気を通過させる空気の流れを生じさせ、その室外熱交換器6a,6b各々で熱交換された外気を、室外機12の上下の吹出口21a,21b(図2参照)から吹き出す気流を生じさせる。
【0012】
圧縮機2は、吸込口2a側からガス冷媒を吸い込み、その冷媒を圧縮して吐出口2b側から吐出させることで、冷媒を高圧、高温化して冷媒配管7内の冷媒を循環させる。圧縮機2は、例えば能力可変型のものであり、後述する制御装置10(インバータ制御装置)により、その運転周波数たる回転数を変更可能に構成されている。
【0013】
四方弁3は、暖房運転時や冷房運転時或いは暖房運転中に行われるリバース除霜運転時において、冷媒配管7を流れる冷媒の循環方向を各運転に応じた循環方向に切替える。具体的には、四方弁3は、暖房運転時において圧縮機2の吐出口2bから吐出される冷媒の流路を室内熱交換器4に接続するとともに吸込口2aに吸い込まれる冷媒の流路を室外熱交換器6aに接続した暖房サイクルの状態と、冷房運転時或いはリバース除霜運転時において圧縮機2の吐出口2bから吐出される冷媒の流路を室外熱交換器6aに接続するとともに吸込口2aに吸い込まれる冷媒の流路を室内熱交換器4に接続した冷房サイクルの状態と、の間で切替わる。これにより、冷媒は、暖房サイクルの状態において図1の実線矢印Aで示す方向へ流れ、冷房サイクルの状態において図1の破線矢印Bで示す方向へ流れる。
【0014】
電子膨張弁5は、最小開度と最大開度との間で弁の開度を制御することで冷媒の絞り量が適正になるように調整される減圧器であり、例えばPMV(Pulse Motor Valve)で構成されている。
室内熱交換器4では、冷媒の流れる方向に応じて放熱又は吸熱作用が行われ、室内ファン13の運転によって、室内熱交換器4を通過する空気との熱交換が促される。
【0015】
室外熱交換器6a,6bでは、冷媒の流れる方向に応じて放熱又は吸熱作用が行われ、室外ファン14a,14bの運転によって、室外熱交換器6a,6bを通過する空気との熱交換が促される。
詳細には、室外熱交換器6a,6bたる上側熱交換器6aと下側熱交換機6bは、一体として室外熱交換器6を構成するが、図1では便宜上、上側熱交換器6aを「上側」、下側熱交換機6bを「下側」として別個に表している。また、図2では、上側熱交換器6aと下側熱交換機6bを収納した室外機12の外観を斜視図で表している。
【0016】
図2に示すように、室外機12において外郭をなす筐体20は、縦長の矩形箱状をなしており、その筐体20の左側面及び背面は、上側熱交換器6aと下側熱交換機6bを露出させる開放面とされている。筐体20の前面には、内部に収納される上側の室外ファン14aに対向して設けられた上側吹出口21aと、同様に下側の室外ファン14bに対向する下側吹出口21bが形成されている。なお、上下の吹出口21a、21bには、指等を挿入させないためにファンガード22a、ファンガード22bが、その外側にそれぞれ設けられている。上側の室外ファン14aを駆動することで、上側熱交換器6aに室外空気が吸い込まれ、熱交換後の外気は、上側吹出口21aのファンガード22aから室外に排気される。同様に、下側の室外ファン14bを駆動することで、下側熱交換器6bに室外空気が吸い込まれ、熱交換後の外気は、下側吹出口21bのファンガード22bから室外に排気される。
この室外機12の筐体20内において、上側熱交換器6aと下側熱交換機6bは、相互に上下方向に連なる配置とされており、上側熱交換器6aのプレートフィンPfと下側熱交換機6bのプレートフィンPfとが、長手方向を上下方向として連ねられている。このように、図2に例示する上側熱交換器6aと下側熱交換機6bは、所定間隔を有して多数並設されたプレートフィンPfを図示しない伝熱管が貫通してなるプレートフィンチューブ型のものである。
【0017】
また、図1に例示するように、上側熱交換器6aと下側熱交換機6bは、冷凍サイクル8内にて直列接続されている。また、詳しい図示は省略するが、上側熱交換器6aにおける、前記伝熱管の冷媒流路であって冷房サイクルで冷媒入口側となる流路を上流パス6upとし、下側熱交換機6bにおいて、冷房サイクルで冷媒出口側となる流路を下流パス6dpとする。この場合、上側熱交換器6aを通る上流パス6upは、室外熱交換器6全体の上部側に位置し、下側熱交換機6bを通る下流パス6dpは、室外熱交換器6全体の下部側に位置する。
【0018】
こうして、上側熱交換器6aは、冷房サイクルで凝縮器として機能するとき冷凍サイクル8上流側となる上流側熱交換器に相当し、下側熱交換器6bは、凝縮器として機能するとき冷凍サイクル8下流側となる下流側熱交換器に相当する。なお、伝熱管のパス数は、熱交換器6a,6b各々の伝熱管の流路が入口側から出口側まで1つのままの1パスでもよいし、例えば入口側で流路が複数に分かれ出口側まで続く複数パスとしてもよく、流路の分岐により適宜のパス数を設定することができる。
【0019】
室外ファン14a,14bは、上記した上側熱交換器6aと下側熱交換機6bに対応する上下一対のものであり、図2では上側のファンガード22aと下側のファンガード22bに対向する位置にある。
本実施形態の室外ファン14aは、上側熱交換器6aと対向するように室外機12の筐体20上部に配置された上側ファンであり、又、上側熱交換器6aとしての上流側熱交換器に対応する上流側ファンでもある。室外ファン14bは、下側熱交換器6bと対向するように室外機12の筐体20下部に配置された下側ファンであり、又、下側熱交換機6bとしての下流側熱交換器に対応する下流側ファンでもある。
室外ファン14aは、その運転により上側熱交換器6aに外気を送る。室外ファン14bは、その運転により下側熱交換器6bに外気を送る。これら室外ファン14a,14bの運転の制御は、制御装置10により各別に行われるようになっている。なお、通常の冷・暖房運転時には、この2つの室外ファン14a,14bは、ほぼ同じ回転数で運転される。
【0020】
空気調和機1は、温度検出手段として、図1に示す室外温度センサ15、室外熱交換器温度センサ16、圧縮機2の吸込温度センサ17を備えている。各温度センサ15~17は、例えばサーミスタで構成され、室外機12に配設されている。
室外温度センサ15は、室外機12内において外気と接触する箇所、通常は室外熱交換器6aまたは6bの空気吸い込み側(前記筐体20の背面の開放面側)、に設けられ、室外の温度つまり外気温度を検出する。室外熱交換器温度センサ16は、室外熱交換器6a,6bの何れかの伝熱管等に取り付けられることで、室外熱交換器6a,6bの温度を検出する。吸込温度センサ17は、圧縮機2の吸込口2a側の冷媒配管7に設けられ、圧縮機2に吸い込まれる冷媒の温度を検出する。なお、図1に示す、室内機11に配設された温度センサ18について、詳しくは後述する。
【0021】
空気調和機1の制御装置10は、例えばマイクロコンピュータを主体に構成されていて、図示しないROM、RAM等の記憶部を備える。記憶部には、上記した室外ファン14a,14b等の運転を制御するための運転制御プログラムが記憶されている。制御装置10には、圧縮機2、四方弁3、電子膨張弁5、室内ファン13、室外ファン14a,14b、及び各温度センサ15~17が接続されている(図1の二点鎖線参照)。そして、制御装置10は、図示しないリモコン等の操作部から入力される入力信号や各温度センサ15~17から入力される検出信号等に基づいて、圧縮機2、四方弁3、電子膨張弁5、室外ファン14a,14bの動作を制御する。
【0022】
なお、図1中、説明を簡略化するために制御装置10を室外機12のみに記載したが、実際には室内機11に図示しない室内制御器が設けられ、室外機12の制御装置10と通信により必要な情報をやり取りしている。リモコン等の操作部から入力される入力信号は、この室内制御器を経由して制御装置10に入力されており、室内ファン13は、室内制御器によって運転/停止及び回転数が制御される。このように、室内制御器も、室外制御器としての制御装置10とともに空気調和機1の動作を制御する制御装置に相当する。なお、空気調和機1の制御装置は、少なくとも室外機12と室内機11との何れか一方に配設されるものである。以下では説明の便宜上、制御装置10は、室内制御器を含むものとし、従って例えば室内ファン13をも制御するものとして説明する。
【0023】
上記した空気調和機1において、暖房運転を実行する際には、圧縮機2が起動されることにより、図1の実線矢印Aで示すように、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が室内熱交換器4に流入する。室内熱交換器4では、流入した高温高圧の冷媒が、室内ファン13から送られる室内空気に放熱しながら凝縮し、低温高圧の冷媒となって室内熱交換器4から流出する。
【0024】
室内熱交換器4から流出した冷媒は、電子膨張弁5を通過する際に減圧されて液化し、その後、室外熱交換器6a,6bにおける下側の熱交換器6bに流入する。室外熱交換器6a,6bでは、流入した冷媒が下側熱交換器6bから上側熱交換器6aへと向かう際に、対応する室外ファン14b,14aから送られる外気から吸熱して蒸発する。こうして、上側熱交換器6aから流出する冷媒は、ガス状態の冷媒となって圧縮機2に戻される。
【0025】
こうした暖房運転時において、室外熱交換器6a,6bの温度が0度以下で且つ外気の露点温度より低くなった場合、その外気中の水分が室外熱交換器6a,6bに霜となって付着し、熱交換を妨げる。この場合、霜の成長に伴う暖房性能の悪化を抑制するために、所定のタイミングでリバース除霜運転が行われる。リバース除霜運転では、暖房運転における冷媒の循環方向を四方弁3により逆に切替えた冷房サイクルで運転することで室外熱交換器6a,6bの除霜を行う。
【0026】
このリバース除霜運転(或いは冷房運転)を実行する際には、四方弁3を反転(冷房運転位置)に切り替えて、圧縮機2を運転することにより、図1の破線矢印Bで示すように、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が室外熱交換器6a,6bに対して上側の熱交換器6aから流入する。室外熱交換器6a,6bでは、流入した高温高圧の冷媒が上側熱交換器6aから下側熱交換器6bへと向かう際に、外気に放熱しながら凝縮し、低温高圧の冷媒となって下側の熱交換器6bから流出する。
室外熱交換器6bから流出した冷媒は、電子膨張弁5を通過する際に減圧され、その後、室内熱交換器4に流入し、室内空気から吸熱して蒸発する。こうして、室内熱交換器4から流出する冷媒は、ガス状態の冷媒となって圧縮機2に戻される。
【0027】
さて、リバース除霜運転の開始に際して、室外ファン14a,14bの運転を停止させれば、室外熱交換器6a,6bの霜を溶かすエネルギーは、既に冷媒が保有しているエネルギーに圧縮機2の仕事量のみとなる。そこで、外気温度が高い場合には、室外ファン14a,14bを運転して室外熱交換器6a,6bに送風すれば、室外熱交換器6a,6bの伝熱管が温まる前から外気による熱エネルギーで除霜を促進することができる。
【0028】
もっとも、室外ファン14a,14bを運転し続けると、リバース除霜運転の時間経過に伴って冷媒によって伝熱管側から温められたプレートフィンPfを冷却してしまい、かえって除霜時間が長くなる虞がある。
また、室外熱交換器6a,6bにあっては、上側熱交換器6aよりも冷媒流の下流側に位置する下側熱交換器6bの方で着霜量が多くなる傾向にある。更に、霜が溶けた水つまり除霜水が上側熱交換器6aから下側熱交換器6bへと流下し、下側熱交換器6bで滞留する(プレートフィンPfの隙間を狭める)等して熱交換性能を低下させる虞がある。また、室外熱交換器6a,6bにおける冷媒温度は、冷媒入口側の上側熱交換器6aよりも下側熱交換器6bの方が低くなり、上下の熱交換器6a,6b間で除霜の進行にズレが生じる虞がある。
【0029】
そこで、本実施形態の空気調和機1では、リバース除霜運転を開始してから、その除霜運転中に吸込温度センサ17により検出される冷媒温度の所定時間あたりの温度低下量が予め定められた所定値に達するまでは室外ファン14a,14bを運転させる構成とし、又、室外ファン14bの運転停止と室外ファン14aの運転停止とに時間差を持たせている。このリバース除霜運転に係る構成について(1)除霜運転開始、(2)除霜運転終了、(3)室外ファンの運転の順に、図3図4も参照しながら詳述する。なお、以下ではリバース除霜運転について、「除霜運転」と略す。
【0030】
(1)除霜運転開始
図3は、除霜運転における四方弁3の切替え状態、圧縮機2の運転周波数F、室外ファン14aの回転数Na及び室外ファン14bの回転数Nb、並びに吸込温度センサ17で検知される冷媒温度Tcを示すタイムチャートである。
【0031】
図3の「除霜検知」は、除霜が必要と検知されたことを示している。制御装置10は、暖房運転中において、室外熱交換器温度センサ16により検出される室内熱交換器温度を監視し、その温度変化に基づき除霜が必要であるか否かを検知する。除霜が必要であると検知されたとき、除霜開始条件が成立したものとして暖房運転を中断し、除霜運転を開始する。なお、除霜開始条件の判定は、室外熱交換器6a,6bの温度、所定時間での室外熱交換器6a,6bの温度低下量、低下率、さらには室外温度センサ15により検出した外気温を加味する等、公知の様々な条件を用いることができる。
上記のように、制御装置10は、暖房運転において室外熱交換器6の温度低下に伴い除霜開始条件が成立したとき、その時点t1で、暖房運転を中断する。このとき、室内ファン13を停止させるとともに、圧縮機2を一旦停止させてその運転周波数Fを0とする(図3参照)。
【0032】
次いで、制御装置10は、冷媒配管7を流れる冷媒の循環方向を、暖房サイクルの状態における循環方向(図1の実線矢印A参照)から、冷房サイクルの状態における循環方向(破線矢印B参照)となるよう、四方弁3により切替える。これによって、暖房運転を行っていた時の冷媒の高低圧差を緩和して圧縮機2を起動しやすくする。この切替え後、図3に示すように圧縮機2を起動して、その運転周波数Fを段階的に上昇させることにより、除霜運転を開始する。なお、上記した四方弁3の切替えは、「除霜検知」時点t1から「除霜開始」時点t2までの間に行われるものとする。また、除霜運転中は、室内ファン13の運転を停止させるものとするが、室内ファン13を低速で運転してもよい。
【0033】
そして、制御装置10は、除霜開始に際して、外気温度TOUTが所定温度T0よりも高い場合には(後述する図4のステップS1参照)、室外ファン14a,14bの運転を停止させることなく、その室外ファン14aの回転数Naと、室外ファン14bの回転数Nbとを最大回転数に設定する。
【0034】
なお、図3では、係る回転数Na,Nbについて、暖房運転時の最大回転数で当該室外ファン14a,14bを継続駆動させたときの例を示している。このように、回転数Na,Nbは、通常の暖房運転時における室外ファン14a,14bの回転数と同等に設定してもよいし、通常の暖房運転時における回転数よりも高い回転数に設定してもよい。また、詳しくは「(3)室外ファンの運転」で述べるように、室外ファン14a,14bの運転停止は、図3に示す冷媒温度Tcの温度低下量が所定値となった時点t3で上側の室外ファン14aの回転数Naを0とし、その後、時間差αを設けて下側の室外ファン14bの回転数Nbを0とする(同図の二点鎖線のNb参照)ことにより行われる。
【0035】
(2)除霜運転終了
除霜運転において、制御装置10は、室外熱交換器温度センサ16により検出される温度に基づいて除霜終了条件が成立したか否かを判断する。図3に示すように、制御装置10は、除霜終了条件が成立したとき、その時点t4で圧縮機2を停止させて除霜運転を終了する。除霜終了条件についても、室外熱交換器6の温度だけでなく、その温度変化等を組み合わせて判定してもよい。
【0036】
この場合、制御装置10は、冷媒配管7を流れる冷媒の循環方向を、冷房サイクルの状態における循環方向(図1の破線矢印B参照)から、暖房サイクルの状態における循環方向(実線矢印A参照)に戻すように四方弁3を切替える(図3参照)。また、制御装置10は、停止していた室内ファン13及び室外ファン14a,14bを夫々除霜開始前の回転数で起動させる。
【0037】
そして、制御装置10は、圧縮機2を起動して、その運転周波数Fを除霜開始前の運転周波数まで段階的に上昇させることにより、通常の暖房運転に復帰する。なお、除霜運転を終了する際の、t4,t5間の期間に、四方弁3の切替えと室内ファン13及び室外ファン14a,14bの起動とが行われる。
【0038】
(3)室外ファンの運転
図4は、上記した除霜運転開始から除霜運転終了までの間における、室外ファン14a,14bの運転制御に係る処理の流れを示している。
【0039】
先ず、制御装置10は、除霜開始条件が成立すると、除霜開始時点t2までに室外温度センサ15により検出される外気温度TOUTを取得し、その外気温度TOUTが予め定められた所定温度T0(例えば0℃)よりも高いか否かを判断する(ステップS1)。所定温度の値T0は、予め前記記憶部に記憶されており、0℃に限らず適宜変更しうるが、外気によって室外熱交換器6a,6bの霜を溶かすため、少なくとも0℃よりも高い値が設定される。
制御装置10は、外気温度TOUTが所定温度T0以下の場合(TOUT≦T0、ステップS1:NO)、外気によっては室外熱交換器6a,6bの霜を溶かすための吸熱ができないという判断により、室外ファン14aと室外ファン14bの双方について運転を停止させて、回転数Na,Nbを0とする(ステップS8)。この場合、制御装置10は、除霜開始時点t2から除霜終了時点t4まで、つまり除霜運転中は室外ファン14a,14bの運転を停止させたままとする。
【0040】
これに対し、制御装置10は、外気温度TOUTが所定温度T0よりも高い場合(TOUT>T0、ステップS1:YES)、室外ファン14aの回転数Naと、室外ファン14bの回転数Nbとを最大回転数に設定する(ステップS2)。このため、図3に示したように室外ファン14a,14bは、暖房運転時の最大回転数で継続駆動され、室外熱交換器6a,6bの霜を外気の熱によって溶かす。
【0041】
次いで、制御装置10は、除霜運転における室外ファン14a,14bの運転時間tが上限tMAX(「上限時間tMAX」とも称す)に達したか否かを判断する(ステップS3)。上限時間tMAXは、室外ファン14a,14bの運転が所期の時間(後述する3分+α)を超えて継続されることで除霜時間が長くなることを防止するために規定された判定時間である。この上限時間tMAXは例えば5分であり、予め前記記憶部に記憶されている。
【0042】
それ故、制御装置10は、除霜運転の開始時点t2(t1でもよい)から室外ファン14a,14bの運転時間tを計時しており、室外ファン14a,14bの運転時間tが上限時間tMAXに満たない場合(ステップS3:NO)、次の判定ステップS4以降に移行する。一方、制御装置10は、室外ファン14a,14bの運転時間tが上限時間tMAXに達したとき(t≧tMAX、ステップS3:YES)は、運転している室外ファン14a,14bを無条件に停止させる(ステップS8)。
【0043】
制御装置10は、室外ファン14a,14bの運転時間tが上限時間tMAXに満たない場合(ステップS3:NO)、現時点で複数の室外ファン14a,14bを運転しているか否かを判断する(ステップS4)。そして、制御装置10は、複数の室外ファン14a,14bを運転している場合(ステップS4:YES)、その除霜運転中に吸込温度センサ17により検出される冷媒温度Tcの所定時間Δtcあたりの温度低下量ΔTcが所定値THRに達したか否かを判断する(ステップS5)。
【0044】
即ち、図3に示すように圧縮機2の吸込側の冷媒温度Tcは、除霜開始時点t2から急激に上昇する。これは、四方弁3により冷媒の循環方向を逆にして圧縮機2が起動されることで、室内熱交換器4側に残存する高温の冷媒(暖房サイクル時のホットガス)が圧縮機2の吸込口2aに戻されることによる。また、この吸込口2a側の冷媒温度Tcは、冷房サイクルでの冷媒流により、前記ホットガス全部が圧縮機2に戻されて、冷凍サイクル8内の冷媒が通常の冷房サイクル時の温度状態に移行することに伴い、t2´の時点から当該温度遷移を反映して急激に低下する。上記したように、冷房サイクルでは、室外熱交換器6a,6bに流入した高温高圧の冷媒が放熱して凝縮し、これにより低温高圧となった冷媒が電子膨張弁5を通過し室内熱交換器4を経由して圧縮機2に戻されるため、このときの吸込口2a側の冷媒温度Tcと前記ホットガスの温度とでは大きな差が生じるからである。
【0045】
そこで、制御装置10は、除霜運転中に冷媒温度Tcを監視し、除霜運転中の冷媒温度Tcを時間差Δtcをおいて2回検出し、それら検出値の差である低下分ΔTcを求める。例えば、時点t2´から所定時間Δtcをおいた時点t3までの温度低下量ΔTcを取得する。よって、所定時間Δtcあたりの温度低下量ΔTcは、当該低下分ΔTcを当該時間Δtcで除算することにより求められる単位時間あたりの低下量(ΔTc/Δtc、冷媒温度Tcの傾き)として把握することができる。
【0046】
こうして、制御装置10は、求めた温度低下量ΔTcと予め定められた所定値THRとを比較する。所定値THRは、前記ホットガス全部を圧縮機2に戻し終える際の温度変化量に対応する閾値として、予め前記記憶部に記憶されている。
【0047】
制御装置10は、係る温度低下量ΔTcが所定値THRに達していないとき(ΔTc<THR、ステップS5:NO)、ステップS3にリターンしてステップS3~S5を繰り返す。この途中のステップS3で、室外ファン14a,14bの運転時間tが上限時間tMAXに達するようなことがあれば(ステップS3:YES)、運転している室外ファン14a,14bを停止させる(ステップS8)。一方、途中のステップS5で、温度低下量ΔTcが所定値THRに達したとき(ΔTc≧THR、ステップS5:YES)、制御装置10は、上側の室外ファン14aだけ運転を停止させる(ステップS6)。よって、これまでは運転されていた室外ファン14a,14bのうち、上側の室外ファン14aの回転数Naだけ、図3のt3の時点で0となる。
【0048】
この後、制御装置10は、上側の室外ファン14aの運転停止からの経過時間が予め定められた所定時間αに達したか否かを判断する(ステップS7)。所定時間αは、室外ファン14a,14bの運転停止に時間差α(例えば1分)をもたせるものでる。この時間差αは、予め前記記憶部に記憶されており、1分に限らず適宜変更しうる。
【0049】
制御装置10は、上側の室外ファン14aの運転停止から所定時間αが経過していない場合(ステップS7:NO)、ステップS3にリターンし、下側の室外ファン14bについて除霜開始からの運転時間tが上限時間tMAXに達していなければ(ステップS3:NO)、その室外ファン14b単独で(ステップS4:NO)、運転させる(ステップS3、S4、S7を繰り返す)。そして、制御装置10は、上側の室外ファン14aの運転停止から所定時間αが経過した場合(ステップS7:YES、図3の時間差α参照)、下側の室外ファン14bについても運転を停止して、この処理を終了する。
【0050】
上記した除霜運転において、外気温度TOUTが比較的高いとき(例えば0℃を超えるとき)、図3のt3の時点までは、上下の室外ファン14a,14bにより上下の熱交換器6a,6bに外気を送り、その後の時間差αを経る時点までは、下側の室外ファン14bだけで下側熱交換器6bに外気を送る。このt3までの期間(例えば除霜開始から3分位の期間)は、室内熱交換器4側の前記ホットガスが圧縮機2へ戻るのに要する期間に対応する一方、室外熱交換器6a,6b側で効果的に吸熱させる期間に対応するものとして、上記した温度低下量ΔTcに基づき一義的に求まる。
【0051】
それ故、除霜運転が開始されると、少なくともt3の時点まで室外ファン14a,14bを運転させることによって、室外熱交換器6a,6bでは、冷媒により各々の伝熱管が暖まる前から比較的高い温度TOUTの外気との熱交換が促され、室外熱交換器6a,6bでの吸熱量を増加させて当該室外熱交換器6a,6bの除霜を効果的に行うことができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の空気調和機1は、冷凍サイクル8と、室外ファン14a,14bと、冷凍サイクル8中の冷媒温度Tcを検出する吸込温度センサ17と、制御装置10と、を備え、制御装置10は、暖房運転において、冷媒配管7を流れる冷媒の循環方向を四方弁3により逆に切替えた冷房サイクルで室外熱交換器6a,6bの除霜を行う除霜運転を実行するものであり、四方弁3により冷房サイクルに切替えて除霜運転を開始してから、その除霜運転中に吸込温度センサ17により検出される冷媒温度Tcの所定時間あたりの温度低下量ΔTcが予め定められた所定値THRに達するまでは室外ファン14a,14bを運転させる。
【0053】
この構成において、四方弁3により冷房サイクルに切替えて除霜運転を開始したとき、その冷房サイクルの冷媒流により、室内熱交換器4側のホットガスが圧縮機2の吸込側に流れることで当該吸込側の冷媒温度Tcが急激に上昇し、そのホットガス全部が流れ終える際に急激に下降する。この冷媒温度Tcの温度降下特性を利用して、室外ファン14a,14bの運転停止の目安とする。これにより、冷媒温度Tcの温度低下量ΔTcが所定値THRに達するまでは室外ファン14a,14bを運転させ、その強制通風により、室外熱交換器6a,6bで外気から吸熱することで除霜時間を短縮することができる。
【0054】
制御装置10は、冷媒温度Tcの温度低下量ΔTcが所定値THRに達したとき、複数の室外ファン14a,14bの運転を、相互に時間差αをもって停止させるように停止制御する。
これによれば例えば、室外熱交換器6a,6bにおける、複数の室外ファン14a,14b各々の送風対象となる各部位で、除霜の進行状況に差が生じるような場合でも、時間差αをもった室外ファン14a,14bの停止制御により、除霜の進行をバランスさせて除霜時間を短縮することが可能となる。また、室外ファン14a,14bの停止制御以降の、言わばファン停止除霜において、室外熱交換器6a,6bの温度を送風により低下させずに除霜を行うことができる。
【0055】
室外熱交換器6a,6bは、上下方向に並ぶ上側熱交換器6aと下側熱交換器6bを含む複数のものであり、複数の室外ファン14a,14bは、上側熱交換器6aに対応するように配置された上側の室外ファン14aと、下側熱交換器6bに対応するように配置された下側の室外ファン14bとを含み、制御装置10は、冷媒温度Tcの温度低下量ΔTcが所定値THRに達したとき、上側の室外ファン14aの運転を停止させ、その後に時間差αをもたせて下側の室外ファン14bの運転を停止させる。
【0056】
この点、一般的に室外熱交換器における着霜量は、上側熱交換器よりも下側熱交換器の方が多くなる。また、除霜運転中に生じた除霜水は重力で流下するため、下側熱交換器では、上側熱交換器から滴下した分を含む除霜水が滞留して熱交換性能を低下させる虞があるが、本実施形態では、下側の室外ファン14bの運転停止につき、時間差αをもたせることで下側熱交換器6bでの吸熱量を確保し或いは熱交換性能を低下させないようにし、除霜の進行をバランスさせて除霜時間を短縮することができる。
【0057】
上側熱交換器6aは、冷凍サイクル上流側となる上流側熱交換器6aであり、下側熱交換器6bは、冷凍サイクル下流側となる下流側熱交換器6bでもある。それ故、制御装置10は、冷媒温度Tcの温度低下量ΔTcが所定値THRに達したとき、上流側の室外ファン14aの運転を停止させ、その後に時間差αをもたせて下流側の室外ファン14bの運転を停止させるものといえる。
この場合、除霜運転中の冷媒は、上流側熱交換器6aと下流側熱交換器6bを順に経由するため、冷媒温度Tcは、上流側熱交換器6aよりも下側熱交換器6bの方で低くなるが、下流側の室外ファン14bの運転停止につき、時間差αをもたせることで、下側熱交換器6bで除霜が遅れないように送風し或いは吸熱量を補完し、除霜の進行をバランスさせて除霜時間を短縮することができる。
【0058】
制御装置は、除霜運転を開始する際に室外温度センサで検出された外気温度TOUTが予め定められた所定温度T0よりも高いことを条件として、その除霜運転時に室外ファン14a,14bの運転を行う。これによれば、外気温度TOUTが所定温度T0よりも高い場合、室外ファン14a,14bの運転により、室外熱交換器6a,6bを通過する当該外気との熱交換を促進して、外気の熱量を除霜に有効利用することができる。
【0059】
制御装置10は、除霜運転における室外ファンの運転時間14a,14bに予め上限tMAXが定められており、除霜運転における室外ファン14a,14bの運転時間が上限tMAXに達した場合に、冷媒温度Tcの温度低下量ΔTcとは無関係に室外ファン14a,14bの運転を停止させる。これによれば、例えば何らかの原因で、吸込温度センサ17のセンサ機能が損なわれていたとしても、その検出結果たる冷媒温度Tcとは無関係に、室外ファン14a,14bの運転を停止させることができ、室外ファン14a,14bを運転し続けることで除霜時間が長くなることを防止することができる。
【0060】
制御装置10は、除霜運転において室外ファン14a,14bを運転するときの回転数Na,Nbを最大回転数に設定する。これによれば、室外ファン14a,14bの運転により、室外熱交換器6a,6bを通過する所定温度T0よりも高い外気との熱交換が促進され、室外熱交換器6a,6bの吸熱量を極力増加させて除霜を効果的に行うことができる。また、除霜運転において室外ファン14a,14bを運転するときの回転数Na,Nbを通常の暖房運転時よりも高い回転数した場合にも同様の効果を奏する。
【0061】
<第2実施形態>
本第2実施形態の空気調和機1は、室外機12において一の室外熱交換器6aと一の室外ファン14aが収納され、その余の室外熱交換器6bと室外ファン14bが削除されたいわゆる1ファンタイプの室外機としてシンプルな構造を備える。そこで説明の便宜上、本第2実施形態では一の室外熱交換器6aを「室外熱交換器6o」、一の室外ファン14aを「室外ファン14o」と称し、第1実施形態の如く上側と下側あるいは上流側と下流側といった関係にある他の室外熱交換器6bや室外ファン14bがある室外機12とは区別する。
【0062】
ここで、図5は、本第2実施形態における除霜運転中の室外ファン14oの運転制御に係る処理の流れを示すフローチャートであり、制御装置10は、図4のステップS1~S8に代えて、図5のステップS11~S15を実行する。
即ち、制御装置10は、除霜開始条件が成立すると、除霜開始時点t2(図3参照)までに室外温度センサ15により検出される外気温度TOUTを取得し、その外気温度TOUTが所定温度T0よりも高いか否かを判断する(図5のステップS11)。
【0063】
制御装置10は、外気温度TOUTが所定温度T0以下の場合(TOUT≦T0、ステップS11:NO)、室外ファン14oの運転を停止させる(ステップS15)。この場合、制御装置10は、除霜開始時点t2から除霜終了時点t4まで、室外ファン14a,14bの運転を停止させたままとする。
これに対し、制御装置10は、外気温度TOUTが所定温度T0よりも高い場合(TOUT>T0、ステップS11:YES)、室外ファン14oの回転数を最大回転数に設定する(ステップS12)。このため、図3に示したように室外ファン14oは、暖房運転時の最大回転数で継続駆動される。
【0064】
次いで、制御装置10は、除霜運転における室外ファン14oの運転時間tが上限時間tMAXに達したか否かを判断する(ステップS13)。そして、制御装置10は、室外ファン14oの運転時間tが上限時間tMAXに満たない場合(ステップS13:NO)、その除霜運転中に吸込温度センサ17により検出される冷媒温度Tcの所定時間Δtcあたりの温度低下量ΔTcが所定値THRに達したか否かを判断する(ステップS14)。
【0065】
制御装置10は、冷媒温度Tcの温度低下量ΔTcが所定値THRに達していないとき(ΔTc<THR、ステップS14:NO)、ステップS13にリターンし、その温度低下量ΔTcが所定値THRに達する(ステップS14:YES)まで、或いは室外ファン14oの運転時間tが上限時間tMAXに達するまで(ステップS13:YES)、ステップS13、S14を繰り返す。
こうして、制御装置10は、冷媒温度Tcの温度低下量ΔTcが所定値THRに達したとき(ステップS14:YES)、或いは室外ファン14oの運転時間tが上限時間tMAXに達したとき(ステップS13:YES)、室外ファン14oの運転を停止して、この処理を終了する。
【0066】
以上説明したように、本第2実施形態の空気調和機1は、室外機12に一の室外熱交換器6oと一の室外ファン14oを収納した構成にあって、制御装置10は、四方弁3により冷房サイクルに切替えて除霜運転を開始してから、その除霜運転中に吸込温度センサ17により検出される冷媒温度Tcの温度低下量ΔTcが所定値THRに達しするまでは室外ファン14oを運転させる。
これによれば、冷媒温度Tcの温度低下量ΔTcが所定値THRに達するまでは室外ファン14oを運転させ、その強制対流により、室外熱交換器6oで外気から吸熱することで除霜時間を短縮することができる。
【0067】
また、制御装置10は、除霜運転において室外ファン14oを運転するときの回転数を最大回転数に設定するため、室外熱交換器6oの吸熱量を極力増加させて除霜を効果的に行うことができる等、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0068】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態について、第1実施形態と異なる点を説明する。第1実施形態においては、除霜運転中の室外ファン14a,14bの停止条件として、冷凍サイクル8中の冷媒温度としての圧縮機2の吸込み側の冷媒温度Tcを用いたが、本実施形態では、冷媒温度として、室内熱交換器4の温度を用いる点が異なっている。他の構成及び制御動作は、第1実施形態と同様であり、詳細説明を省略する。
【0069】
図1において、室内熱交換器4の冷媒入口側に室内熱交換器温度センサ18が設けられる。この室内熱交換器温度センサ18は、室内熱交換器4途中の伝熱管等に取り付けられることで、室内熱交換器4の温度を検出する温度センサである。除霜運転中は室内ファン13を停止もしくは低速で運転するため、室内熱交換器4の温度は、この位置における冷凍サイクル8の冷媒温度を検出することになる。なお、冷媒温度の検出として、より正確を期すのであれば、温度センサ18を室内熱交換器4の入口側の冷媒配管7に接触して取り付けてもよい。また、除霜運転中は室内ファン13を停止もしくは低速で運転するため、室内熱交換器4の前後での冷媒温度の変化(上昇もしくは低下)は小さいため、温度センサ18を室内熱交換器4の出口側の冷媒配管7に取り付けてもよい。
【0070】
本第3実施形態での制御動作は、第1実施形態における冷媒温度Tcを温度センサ18で検出した冷媒温度に変更するだけである。除霜運転中は室内ファン13を停止もしくは低速で運転するため、実質的な冷媒の熱変化は、圧縮機2における加熱と室外熱交換器6a,6bにおける放熱のみである。したがって、圧縮機2の吸込み側の冷媒温度Tcの変化は、他の部分の冷凍サイクル温度にも同様に表れる。したがって、温度変化の度合いは小さくなるが室内熱交換器4及びその前後の冷媒配管7温度においても冷媒温度Tcと同様の変化がみられる。このため、温度変化に対する制御の閾値である所定値THRの大きさを、室内熱交換器温度センサ18の取り付け位置に基づき適宜変更する。
以上のように、冷媒温度Tcを検出する吸込温度センサ17に代えて、室内熱交換器4の冷媒温度を検出する室内熱交換器温度センサ18を用いた場合でも、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。さらに、圧縮機2の吸込み側の冷媒温度Tcや室内熱交換器4の冷媒温度以外の位置では冷媒の温度変化量が小さくなるため、温度変化度合いの検出が難しくなるが、これ以外の冷凍サイクル8の他の位置における冷媒温度を用いて室外ファン14a,14bの停止を決定してもよい。
【0071】
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した実施形態や変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変更し、或いは拡張することができる。例えば、室外熱交換器と室外ファンは、上記した二つずつあるいは一つずつのものに限らず、三つずつのものとしてもよい。つまり、室外機の筐体内において、その高さ方向に一以上の室外熱交換器を配列するとともに、これに対応させて一以上の室外ファンを配列する構成としてもよい。
【0072】
第1実施形態において、上側熱交換器6aを上流側熱交換器とし、下側熱交換器6bを下流側熱交換器として構成したが、上側熱交換器6aを下流側熱交換器とし、下側熱交換器6bを上流側熱交換器とするように冷媒配管7で接続してもよい。この場合、下流側となる上側熱交換器6aよりも、上流側となる下側熱交換器6bの方が霜の融解が早いため、下側の室外ファン14bの運転を先に停止させ、その後、除霜の進行を当該熱交換器6a,6b間でバランスさせるように設定された時間差αをもって上側の室外ファン14aを停止させることができる。
【0073】
第1実施形態において、室外ファン14a,14bの運転停止に時間差αをもたせるための手段として、最初の室外ファン14aの運転停止からの経過時間αを計測したが(ステップS7参照)、他の手段で時間差αをもたせるようにしてもよい。例えば、室外ファン14aの停止制御に用いる温度低下量ΔTcの所定値THRとは別に、室外ファン14bの停止制御に用いる温度低下量ΔTcの閾値を予め設定しておき、ステップS7に代えて、冷媒温度Tcの温度低下量ΔTcが当該閾値に達したときに室外ファン14bを停止させるステップを実行する。或いは、室外ファン14bの停止制御に用いる冷媒温度Tc(絶対温度)の閾値を予め記憶しておき、冷媒温度Tcが当該閾値まで低下したときに室外ファン14bを停止させるステップを実行する。これにより、室外ファン14a,14bの運転停止に時間差αをもたせることができ、第1実施形態と同様の効果を奏する。
この他、上記した除霜開始条件等の各条件ないし具体数値は、要旨を逸脱しない範囲で適宜設定すればよい。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
図面中、1は空気調和機、2は圧縮機、3は四方弁、4は室内熱交換器、5は電子膨張弁(減圧器)、6,6a,6b,6oは室外熱交換器、7は冷媒配管、8は冷凍サイクル、10は制御装置、15は室外温度センサ、17は吸込温度センサ(温度センサ)、18は室内熱交換器温度センサ(温度センサ)、14a,14b,14oは室外ファンを示す。
図1
図2
図3
図4
図5