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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】パワーユニットマウント構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20220628BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
F16F13/10 E
B60K5/12 J
B60K5/12 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018181777
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020051527
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】松下 敏之
(72)【発明者】
【氏名】毎熊 宗幸
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-2298(JP,A)
【文献】特開2005-226745(JP,A)
【文献】特開2000-297837(JP,A)
【文献】特開2006-177379(JP,A)
【文献】実開昭60-122039(JP,U)
【文献】特開昭59-231233(JP,A)
【文献】特開平8-200431(JP,A)
【文献】特開平4-283124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/10
B60K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーユニット側に取り付けられる本体部と、車体側に取り付けられる車体側取付部と、を具備し、
前記本体部は、マウントケースと、前記マウントケースと連続して形成された当接部と、前記マウントケースの内部に形成された空洞であり衝撃を減衰するための液が封入される液封入部と、を有し、
前記車体側取付部は、前記当接部に当接することで前記本体部の動きを規制する変位規制部を有し、
前記本体部は、更に、
前記液封入部と連通して前記当接部の内部に形成された液圧供給部と、
前記液圧供給部に作用する液圧に応じて進退することで、前記本体部の前記当接部と、前記車体側取付部の前記変位規制部との間に形成される間隙の幅を可変とする可変ストッパと、を有することを特徴とするパワーユニットマウント構造。
【請求項2】
前記当接部は前記マウントケースから側方に向かって突出し、
前記変位規制部は、前記当接部に上方から対向する位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載のパワーユニットマウント構造。
【請求項3】
前記可変ストッパと前記マウントケースとが摺動する部分に、前記液をシールする第1シール手段を配設することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパワーユニットマウント構造。
【請求項4】
前記液圧供給部の端部と前記可変ストッパと間に、前記液をシールする第2シール手段を配設することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のパワーユニットマウント構造。
【請求項5】
前記可変ストッパは、突出した状態で前記変位規制部に当接することを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のパワーユニットマウント構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーユニットマウント構造に関し、特に、エンジンを含むパワーユニットを弾性的に車体に取り付けるパワーユニットマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両では、エンジンを車体に固定するために、エンジンの動きを所定範囲に規制し且つ緩衝するエンジンマウント構造が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ゴム弾性体を介在させた内筒と外筒との間にこれら内外筒とに一体に形成したストッパ部を配置し、ストッパ構造の当接面を軸方向平行当接面とすることにより、軸方向に直交する方向の過大な相対変位を規制するエンジンマウント構造が記載されている。
【0004】
特許文献2には、内筒を加硫接着されたゴム部を、内部に一体化される外筒を備えたゴムブッシュを圧入されて車体側への取付部をなすブラケットによって形成し、マウントの構成部品を軽量な樹脂によって構成した、エンジンマウント構造が記載されている。
【0005】
特許文献3には、ストッパとエンジンに固定されるブラケットが形成されたブラケット部とクッション本体部とを一体に成形してエンジン側マウントを構成し、ストッパを受け入れるストッパ受けを形成し、車体に固定される車体側マウントを構成したエンジンマウント構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-168425号公報
【文献】実開平6-69470号公報
【文献】特開2000-2298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した背景技術に係るエンジンマウント構造では、エンジンの振動が車体に伝達することを抑制しつつ、エンジンの大きな変位を抑制することは容易ではなかった。
【0008】
具体的には、特に、引用文献3を参照すると、エンジンに接続されるブラケット部と、車体に接続されるストッパ受けとの離間距離を適切に設定することが困難であった。即ち、ブラケット部の上側部分は硬質材料から成り、ブラケット部の下側部分は軟質材料から成るが、ブラケット部の下側部分としてより軟らかい材料を採用すると、エンジンからの振動をブラケット部で効果的に吸収することができる。しかしながら、このようにすると、ブラケット部とストッパ受けとの干渉を防止するために両者の離間距離を大きくする必要があるが、そのようにするとエンジンの変位を効果的に抑制することができず、コーナリング時の車体の応答特性が低下してしまう課題があった。
【0009】
一方、車体の応答特性の向上等を目的として、ブラケット部とストッパ受けとの離間距離を短くすると、車両が平坦道を走行している際やアイドリング時に、ブラケット部とストッパ受けとが不必要に接触してしまい、エンジンの振動の多くが車体に伝達してしまい、搭乗者の快適性が損なわれてしまう課題が発生する。
【0010】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、エンジンの防振対策およびエンジンの動き規制を高いレベルで両立することができるパワーユニットマウント構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のパワーユニットマウント構造は、パワーユニット側に取り付けられる本体部と、車体側に取り付けられる車体側取付部と、を具備し、前記本体部は、マウントケースと、前記マウントケースと連続して形成された当接部と、前記マウントケースの内部に形成された空洞であり衝撃を減衰するための液が封入される液封入部と、を有し、前記車体側取付部は、前記当接部に当接することで前記本体部の動きを規制する変位規制部を有し、前記本体部は、更に、前記液封入部と連通して前記当接部の内部に形成された液圧供給部と、前記液圧供給部に作用する液圧に応じて進退することで、前記本体部の前記当接部と、前記車体側取付部の前記変位規制部との間に形成される間隙の幅を可変とする可変ストッパと、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のパワーユニットマウント構造では、前記当接部は前記マウントケースから側方に向かって突出し、前記変位規制部は、前記当接部に上方から対向する位置に形成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のパワーユニットマウント構造では、前記可変ストッパと前記マウントケースとが摺動する部分に、前記液をシールする第1シール手段を配設することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のパワーユニットマウント構造では、前記液圧供給部の端部と前記可変ストッパと間に、前記液をシールする第2シール手段を配設することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のパワーユニットマウント構造では、前記可変ストッパは、突出した状態で前記変位規制部に当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパワーユニットマウント構造は、パワーユニット側に取り付けられる本体部と、車体側に取り付けられる車体側取付部と、を具備し、前記本体部は、マウントケースと、前記マウントケースと連続して形成された当接部と、前記マウントケースの内部に形成された空洞であり衝撃を減衰するための液が封入される液封入部と、を有し、前記車体側取付部は、前記当接部に当接することで前記本体部の動きを規制する変位規制部を有し、前記本体部は、更に、前記液封入部と連通して前記当接部の内部に形成された液圧供給部と、前記液圧供給部に作用する液圧に応じて進退することで、前記本体部の前記当接部と、前記車体側取付部の前記変位規制部との間に形成される間隙の幅を可変とする可変ストッパと、を有することを特徴とする。これにより、本発明のパワーユニットマウント構造によれば、入力荷重に応じて可変ストッパが、本体部の当接部と、車体側取付部の変位規制部との間隙の幅を可変としている。よって、アイドリング時等に於いてパワーユニットマウントに入力している荷重が小さいときには、可変ストッパの突出量は小さく、当接部と変位規制部との間隙は大きく確保されている。従って、パワーユニットが運転されることで発生する振動はマウントケースにより吸収され、当接部および変位規制部を介してこの振動が車体に伝達することを抑止できる。一方、車両が段差に乗り上げた際などにパワーユニットに大入力が作用した際には、液圧供給部に大きな液圧が作用し、これに伴い可変ストッパが押し出され、当接部と変位規制部との間隙が小さくなる。よって、当接部と変位規制部とが容易に接触することで、パワーユニットの不要な動きを抑制し、車体の揺れを抑止することができる。
【0017】
また、本発明のパワーユニットマウント構造では、前記当接部は前記マウントケースから側方に向かって突出し、前記変位規制部は、前記当接部に上方から対向する位置に形成されることを特徴とする。これにより、本発明のパワーユニットマウント構造によれば、パワーユニットマウント部の大きな変位を抑止する効果を顕著にできる。
【0018】
また、本発明のパワーユニットマウント構造では、前記可変ストッパと前記マウントケースとが摺動する部分に、前記液をシールする第1シール手段を配設することを特徴とする。これにより、本発明のパワーユニットマウント構造によれば、可変ストッパとマウントケースとが摺動する部分から液が流出することを防止することができる。
【0019】
また、本発明のパワーユニットマウント構造では、前記液圧供給部の端部と前記可変ストッパと間に、前記液をシールする第2シール手段を配設することを特徴とする。これにより、本発明のパワーユニットマウント構造によれば、液圧供給部から液が外部に流出することを防止することができる。
【0020】
また、本発明のパワーユニットマウント構造では、前記可変ストッパは、突出した状態で前記変位規制部に当接することを特徴とする。これにより、本発明のパワーユニットマウント構造によれば、大入力が作用した際に、パワーユニットの大きな変位を抑制し、更に、マウントケースの大きな変形を抑制することで耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係るパワーユニットマウント構造を備えた車両を示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るパワーユニットマウント構造を示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るパワーユニットマウント構造に小入力が作用している状態を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は拡大断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るパワーユニットマウント構造に大入力が作用している状態を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は拡大断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るパワーユニットマウント構造に大入力が作用して変位する状態を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係るパワーユニットマウント構造を図面に基づき詳細に説明する。ここで、パワーユニットマウント構造とは、後述するパワーユニットマウント20が車両10に備えられる構造である。以下の説明に於いて、小入力とは、車両10のアイドリング時や車両10が平坦道路を走行する際等に、パワーユニットマウント20に作用する小さな力である。一方、大入力とは、車両10が障害物に乗り上げた際や、車両10が急カーブを曲がる際などに、パワーユニットマウント20に作用する大きな力である。
【0023】
図1(A)は、本実施形態に係るパワーユニットマウント構造を備える車両10におけるパワーユニット12の配置を示す正面図であり、図1(B)は、その側面図である。車両10は、例えば、乗用自動車等であり、パワーユニット12は、車両10を走行させるための動力源である。
【0024】
図1(B)に示すように、パワーユニット12は、内燃機関等であるエンジン13と、トランスミッション14と、を有し、車両10の前部のエンジンコンパートメント内に配置される。なお、エンジン13は、例えば、水平対向エンジン等であり、クランクシャフトが車両10の進行方向に対して略平行となる、いわゆる縦置きに搭載される。
【0025】
図1(A)および図1(B)に示すように、車両10の前部の底面近傍には、車幅方向に延在して車両10の車体の一部を構成する補強部材であるクロスメンバ11が設けられる。クロスメンバ11は、パワーユニット12を支える支持部材である。クロスメンバ11の上部には、パワーユニット12を支持するパワーユニットマウント20が取り付けられ、パワーユニットマウント20の上部にパワーユニット12が取り付けられる。
【0026】
図2は、パワーユニットマウント20を示す斜視図である。図1に示したように、パワーユニットマウント20は、クロスメンバ11とパワーユニット12との間に設けられる。そして、パワーユニットマウント20は、パワーユニット12を弾性的に支持し、更に、パワーユニット12の変位を一定範囲で規制している。
【0027】
具体的には、パワーユニットマウント20は、本体部21と車体側取付部22とから構成されている。本体部21は上記したパワーユニット12に締結され、車体側取付部22は上記したクロスメンバ11に締結される。
【0028】
本体部21は、マウントケース23と、取付部33と、取付孔34と、当接部24と、固定ボルト37を具備する。
【0029】
マウントケース23は、略円柱状を呈しており、本体部21の本体を形成している。
【0030】
取付部33は、マウントケース23の対向する側辺から外側に向かって一体的に突出している。取付孔34は、取付部33を上下方向に貫通する孔であり、取付孔34に挿通するボルト等の締結手段によりにより、本体部21は、パワーユニット12に締結される。
【0031】
当接部24は、マウントケース23の側面から側方に向かって一体的に突出する部位である。当接部24は、後述する車体側取付部22の変位規制部27と当接する部位である。当接部24の上面には可変ストッパ30が配置されており、可変ストッパ30は図3等を参照して後述する。
【0032】
固定ボルト37は、マウントケース23の底部に形成されており、後述する車体側取付部22のボルト孔38に挿入され、締結される。
【0033】
車体側取付部22は、一枚の鋼板をプレス加工することで形成され、座板36と変位規制部27とを有する。
【0034】
座板36は、略円形を呈する部位であり、上記したクロスメンバ11に載置される。
【0035】
変位規制部27は、座板36の外周縁部から上方に向かって曲折加工された部位であり、本体部21の当接部24を上方から覆うように形成されている。変位規制部27は、車両10の状況に応じて、当接部24または可変ストッパ30と当接する部位である。
【0036】
図3を参照して、パワーユニットマウント20の構成を詳述する。図3(A)は図2の切断面線A-Aに於けるパワーユニットマウント20の断面図であり、図3(B)は当接部24およびその周辺を拡大して示す拡大断面図である。
【0037】
図3(A)を参照して、マウントケース23の内部を空洞とすることで液封入部26が形成されており、液封入部26には液25が封入されている。また、マウントケース23の下部は、ゴムなどの軟質材料から形成されており、この軟質材料が変形することでエンジン13の振動が吸収される。一方、マウントケース23の上部は、硬質樹脂または金属等の硬質材料から形成されている。ここでは、マウントケース23の軟質部分と硬質部分とを異なるハッチングで示している。
【0038】
上記したように、マウントケース23の側面から側方に向かって一体的に突出する当接部24が形成されており、液封入部26から当接部24まで伸びる流路として液圧供給部28が形成されている。
【0039】
当接部24には、可変ストッパ30が配置されている。可変ストッパ30は、液封入部26に入力する荷重に応じて進退する部位であり、本体部21が車体側取付部22に当接する際には、可変ストッパ30が変位規制部27に当接する。可変ストッパ30の構成は図3(B)を参照して、後述する。
【0040】
本体部21の可変ストッパ30と、車体側取付部22の変位規制部27との間には、間隙29が形成されている。間隙29が形成されることで、上記したエンジン13から発せられる振動が、車体側に伝達することを抑制できる。
【0041】
図3(B)を参照して、当接部24の先端部には空洞として収納空間42が形成されており、収納空間42は、液圧供給部28を介して、上記した液封入部26と連通している。また、収納空間42と当接部24の上面との間には、孔部43が形成されている。
【0042】
可変ストッパ30は、略円板状の外部ヘッド39と、略円板状の内部ヘッド40と、外部ヘッド39と内部ヘッド40とを接続する略円柱状の軸部41から構成されている。外部ヘッド39は、当接部24の上面に配置されており、内部ヘッド40は収納空間42に収納されており、軸部41は摺動可能に孔部43を貫通している。可変ストッパ30は、例えば、硬質な合成樹脂や金属から成る。可変ストッパ30は、パワーユニットマウント20への入力に応じて進退可能とされており、ここでは、可変ストッパ30が突出していない状態を示している。
【0043】
可変ストッパ30の外部ヘッド39の上面と変位規制部27の下面との距離L10は、上記した小入力がパワーユニットマウント20に作用することで、本体部21が振動した場合でも、可変ストッパ30の外部ヘッド39が変位規制部27に接触しない程度とされている。
【0044】
第1シール手段31は、当接部24の孔部43の内側面と、可変ストッパ30の軸部41の外側面の間に配置されている。第1シール手段31は、例えばゴムなどの軟性樹脂から成り、軸部41の摺動を許容しつつ、孔部43の内側面と軸部41の外側面との間をシールする。これにより、孔部43と軸部41との間から、液25が外部に漏出することを防止することができる。
【0045】
第2シール手段32は、液圧供給部28と収納空間42との間に配置されている。第2シール手段32は、例えば、シート状に形成された樹脂材料から成る。第2シール手段32を配設することで、液25が外部に漏出することを防止することができる。
【0046】
以下に、上記した構成を有するパワーユニットマウント20の機能および作用を説明する。
【0047】
図3を参照して、パワーユニットマウント20に小入力が印加された場合を説明する。図3(A)を参照して、パワーユニットマウント20に小入力が印加された場合、パワーユニット側または、車体側から、液封入部26の液25に入力する圧力は小さい。よって、図3(B)を参照して、第2シール手段32を介して収納空間42に作用する圧力も小さく、可変ストッパ30は上方に向かって突出しない。換言すると、可変ストッパ30の外部ヘッド39は、当接部24の上面に載置されているか、上面に極めて接近している。
【0048】
このことにより、可変ストッパ30の外部ヘッド39と変位規制部27との距離L10は、充分に長く確保されている。換言すると、間隙29は充分に大きく形成されている。よって、上記したパワーユニット12のエンジン13が運転されることで、小入力がパワーユニットマウント20に作用したとしても、本体部21の可変ストッパ30と、車体側取付部22の変位規制部27とは離間しており、可変ストッパ30と変位規制部27とを経由して振動が車体側に伝達することはない。小入力は、本体部21の軟性部分が変形することで吸収され、小入力の殆どはクロスメンバ11には伝達しない。よって、アイドリング時や平坦路走行時における、乗員の快適性を向上することができる。
【0049】
パワーユニットマウント20に大入力が作用した場合を図4および図5を参照して説明する。図4(A)は、大入力が作用した場合を示し、図2の切断面線A-Aにおける断面図である。図4(B)は、図4(A)の当接部24およびその周辺部を拡大した断面拡大図である。
【0050】
図4(A)を参照して、パワーユニットマウント20に大入力が作用すると、大入力はパワーユニット側または、車体側から液封入部26の液25に圧力を加える。
【0051】
図4(B)を参照して、その圧力は液圧供給部28に封入された液25および第2シール手段32を介して、収納空間42に伝達する。その圧力により、可変ストッパ30の内部ヘッド40が上方に押されることで、可変ストッパ30全体が上方に向かって摺動する。この結果、可変ストッパ30の外部ヘッド39が変位規制部27に接近し、可変ストッパ30と変位規制部27との距離L10は、図3(B)に示した小入力の場合と比較して短くなる。換言すると、間隙29が小さくなる。
【0052】
図5を参照して、大入力が作用することで、本体部21が上方に向かって変形した場合を示す。図5(A)はこの場合に於けるパワーユニットマウント20の断面図であり、図5(B)はこの場合に於ける拡大断面図である。
【0053】
図5(A)を参照して、大入力により本体部21の軟質部分が変形することで、当接部24から上方に突出する可変ストッパ30が、変位規制部27に接触する。
【0054】
図5(B)を参照して、可変ストッパ30の外部ヘッド39は、当接部24から上方に突出した状態のまま、変位規制部27に当接している。これにより、図1に示したパワーユニット12の移動を規制し、例えば、車両10のコーナリング時に於ける応答特性を向上することができる。更には、マウントケース23の過度の変形が抑制され、マウントケース23の耐久性を向上することができる。
【0055】
大入力の印加が終了したら、パワーユニットマウント20は、図3に示した状態に戻る。即ち、可変ストッパ30は収納空間42の内部に収納され、可変ストッパ30と変位規制部27との距離L10は充分に長く確保される。
【0056】
本実施形態によれば、図3(B)を参照して、本体部21に印加される荷重に応じて進退する可変ストッパ30を備えることで、本体部21の当接部24と車体側取付部22の変位規制部27との距離L10を調節することができる。即ち、アイドリングや平坦路走行時に小入力がパワーユニットマウント20に作用する際には、図3(B)に示すように、可変ストッパ30を突出させないことで、距離L10を充分に長く確保している。換言すると、間隙29を大きくしている。これにより、マウントケース23のバネ定数を軟らかくし、本体部21の防振効果を大きくし、エンジン13が運転されることで発生する振動がクロスメンバ11に伝達することを抑制している。よって、車両10の乗員の快適性を向上することができる。
【0057】
一方、図4(B)を参照して、車両10が急カーブを走行する際などにパワーユニットマウント20に大入力が印加された場合、その大入力を用いて可変ストッパ30を突出させ、距離L10を短くしている。換言すると、間隙29を小さくしている。よって、図5(B)に示すように、大入力時に於いて、本体部21の可変ストッパ30が、変位規制部27に当接することで、本体部21に接続されたパワーユニット12の過度の変位を抑制し、車両10がカーブを走行する際の応答性を向上することができる。
【0058】
上記のように構成することで、エンジン13の運転振動が車体に伝達することを抑制でき、パワーユニット12の動きを好適に規制でき、更に、パワーユニットマウント20の耐久性を向上することができる。
【0059】
また、本実施形態では、本体部21に可変ストッパ30を備えるというシンプルな構成で、間隙29の大きさを良好に調整できるため、大きなコストアップを伴うことが無い。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 車両
11 クロスメンバ
12 パワーユニット
13 エンジン
14 トランスミッション
20 パワーユニットマウント
21 本体部
22 車体側取付部
23 マウントケース
24 当接部
25 液
26 液封入部
27 変位規制部
28 液圧供給部
29 間隙
30 可変ストッパ
31 第1シール手段
32 第2シール手段
33 取付部
34 取付孔
36 座板
37 固定ボルト
38 ボルト孔
39 外部ヘッド
40 内部ヘッド
41 軸部
42 収納空間
43 孔部
図1
図2
図3
図4
図5