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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】屋根構造体
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20220628BHJP
   E04B 7/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
E04B1/343 Y
E04B7/02 501E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018192110
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020060044
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 陽
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-030464(JP,U)
【文献】実開昭61-181420(JP,U)
【文献】実開昭59-088160(JP,U)
【文献】特開2018-115517(JP,A)
【文献】実開昭61-123105(JP,U)
【文献】特開2012-229573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/343
E04B 7/02
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に対して突出するように延在され、上方に開口する下方パネル収容溝が設けられた下方フレーム材と、
前記下方フレーム材の上方において前記外壁に対して突出するように延在され、下方に開口する上方パネル収容溝が設けられた上方フレーム材と、
前記下方フレーム材及び前記上方フレーム材の間に設けられた側方フレーム材と、
側方に開口する側方パネル収容溝が設けられ、前記側方パネル収容溝が前記下方パネル収容溝及び前記上方パネル収容溝を連続するように前記側方フレーム材に設けられた縦框部材と、
縁部が前記下方パネル収容溝、前記上方パネル収容溝及び前記側方パネル収容溝に挿入された状態で配設された屋根妻パネルと
を備える屋根構造体であって、
前記縦框部材には、前記側方パネル収容溝よりも外周側となる部位に中空部が設けられ、
前記上方パネル収容溝は、前記中空部に連通するように設けられ、
前記中空部において前記上方パネル収容溝の小口端面よりも下方となる部位には、前記下方パネル収容溝に対向する部位にのみ排水孔を確保した状態で底壁部が設けられていることを特徴とする屋根構造体。
【請求項2】
前記上方フレーム材は、前記外壁から離隔するに従って下方となるように傾斜し、
前記縦框部材は、前記上方フレーム材において前記外壁から離隔した延在端部に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造体。
【請求項3】
前記底壁部は、前記排水孔に向けて漸次低くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造体。
【請求項4】
前記縦框部材には、前記排水孔が前記下方パネル収容溝に対向した場合に前記下方パネル収容溝に挿入される突部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造体。
【請求項5】
前記側方フレーム材は、水平方向に沿って延在され、その端部に前記下方フレーム材及び前記上方フレーム材が連結されるものであり、
前記上方パネル収容溝は、パネル収容溝が設けられた別体の上框部材を前記上方フレーム材に取り付けることによって構成され、
前記側方フレーム材の端部には、端部キャップが取り付けられ、
前記端部キャップには、前記側方フレーム材の小口端面を覆う本体カバー部と、前記上方フレーム材の外方側面から前記縦框部材の外方側面にわたる部位を覆う延長カバー部とが一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造体。
【請求項6】
前記延長カバー部において前記上方フレーム材に対向する内表面の縁部及び前記縦框部材に対向する内表面の縁部には、シール材を塗布するための一連のシール塗布用溝が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の屋根構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラス囲い等の屋外構造物に適用される屋根構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テラス囲い等、建物の外壁に設けられる屋外構造物には、外壁に設けられた縦枠と、外壁に対して突出するように設けられた上方側枠及び下方側枠と、前枠との間に構成される台形状の開口に屋根妻パネルを設けて屋根構造体を構成するようにしたものがある。屋根妻パネルは、前枠の端部、縦枠、上方側枠、下方側枠に設けられたパネル収容溝に縁部が挿入された状態でこれら前枠、縦枠、上方側枠、下方側枠に支持されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の屋根構造体では、雨水等の水が上方側枠のパネル収容溝に浸入すると、上方側枠の傾斜に沿ってパネル収容溝の内部を移動し、前枠端部のパネル収容溝を介して下方側枠のパネル収容溝に到達する。下方側枠のパネル収容溝に到達した水は、図示せぬ排水口を介して屋根構造体の外部に排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-229573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前枠の端部に設けられるパネル収容溝は、横方向に開口するものである。従って、上方側枠のパネル収容溝から前枠端部のパネル収容溝へ到達した水は、屋根妻パネルの表面側に漏出し易い状態にある。しかも、前枠端部に設けられたパネル収容溝は、上方側枠に設けられたパネル収容溝に比べて長さが短い場合が多く、収容できる水の容量もごく限られたものとなる。このため、上述の屋根構造体では、上方側枠のパネル収容溝から前枠端部のパネル収容溝に到達した水が下方側枠のパネル収容溝に排出される以前に外部に溢れ出るおそれもある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、雨水等の水が溢れ出る事態を防止することのできる屋根構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る屋根構造体は、建物の外壁に対して突出するように延在され、上方に開口する下方パネル収容溝が設けられた下方フレーム材と、前記下方フレーム材の上方において前記外壁に対して突出するように延在され、下方に開口する上方パネル収容溝が設けられた上方フレーム材と、前記下方フレーム材及び前記上方フレーム材の間に設けられた側方フレーム材と、側方に開口する側方パネル収容溝が設けられ、前記側方パネル収容溝が前記下方パネル収容溝及び前記上方パネル収容溝を連続するように前記側方フレーム材に設けられた縦框部材と、縁部が前記下方パネル収容溝、前記上方パネル収容溝及び前記側方パネル収容溝に挿入された状態で配設された屋根妻パネルとを備える屋根構造体であって、前記縦框部材には、前記側方パネル収容溝よりも外周側となる部位に中空部が設けられ、前記上方パネル収容溝は、前記中空部に連通するように設けられ、前記中空部において前記上方パネル収容溝の小口端面よりも下方となる部位には、前記下方パネル収容溝に対向する部位にのみ排水孔を確保した状態で底壁部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、縦框部材に中空部を設けるとともに、上方パネル収容溝が中空部に連通するように設けてあるため、上方パネル収容溝からの水は中空部に流入することになり、側方パネル収容溝の開口から屋根妻パネルの表面に水が漏出する事態を防止することができる。しかも、中空部に到達した水は、底壁部によって内部に集められた後に、排水孔を通過して下方パネル収容溝にのみ排出されるため、外部に溢れ出るおそれもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態である屋根構造体を備えた屋外構造物を示すもので、(a)は外観斜視図、(b)はフレーム材の構成を示す斜視図である。
図2図1に示した屋外構造物の屋根構造体を示す拡大断面側面図である。
図3図2に示した屋根構造体の横断面図である。
図4図2におけるX-X線断面図である。
図5図2に示した屋根構造体の前枠部分を示す拡大断面側面図である。
図6図2におけるY-Y線拡大断面図である。
図7図2に示した屋根構造体の縦框部材を示すもので、(a)は側方フレーム材側から見た正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は背面図、(e)は背面側から見た斜視図、(f)は正面側から見た斜視図、(g)は(d)におけるA-A線断面図、(h)は(d)におけるB-B線断面図である。
図8図2に示した屋根構造体の前枠部分を室外側から見たもので、(a)は端部キャップを取り外した状態の斜視図、(b)は端部キャップを取り付けた状態の斜視図である。
図9図2に示した屋根構造体の前枠部分と端部キャップとを示すもので、(a)は端部キャップを内表面側から見た側面図、(b)は端部キャップを取り付ける以前の前枠部分の断面側面図、(c)は前枠部分に取り付けた状態の端部キャップを内表面側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る屋根構造体の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1図4は、本発明の実施の形態である屋根構造体を備えた屋外構造物を示したものである。ここで例示する屋外構造物10は、建物の外壁Wに隣接したテラス1を利用してサンルームを構成するためのテラス囲いと称されるもので、複数のフレーム材を組み合わせることによって構成された略直方体状の外殻を備えている。フレーム材は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長がほぼ一様の断面を有するように構成してある。本実施の形態では、フレーム材として、躯体縦枠11、根太掛け12、垂木掛け13、妻梁14、柱15、桁16、前枠(側方フレーム材)17、腕木(下方フレーム材)18、妻垂木(上方フレーム材)19を適用し、これらを適宜組み合わせることによって屋外構造物10の外殻が構成してある。このうち、垂木掛け13、前枠17、腕木18、妻垂木19は、後述する框部材21、屋根パネル22、屋根妻パネル23及び端部キャップ30とによって屋根構造体を構成するものである。
【0011】
以下、屋外構造物10についてより具体的に説明する。なお、以下においては便宜上、建物の上下に沿う方向を上下、外壁Wに沿って水平となる方向を左右、外壁Wに直交して水平となる方向を前後とし、外壁Wから離隔する方向を前方、外壁Wに近接する方向を後方と称することとする。
【0012】
この屋外構造物10では、まず、建物の外壁Wに左右の躯体縦枠11を取り付けるとともに、躯体縦枠11の下端部間に根太掛け12を取り付け、かつ躯体縦枠11の上端部間に垂木掛け13を取り付けることにより、建物の外壁Wに矩形の枠が構成される。垂木掛け13は、両端の小口端面が左右に開口するように、両端部の下面を介して躯体縦枠11の上面に当接した状態で外壁Wに取り付けてある。図からも明らかなように、垂木掛け13及び躯体縦枠11には、外壁Wに当接する面の縁部にシール溝13a,11aが設けてある。垂木掛け13には、外壁W側の上方縁部にシール溝13aが設けてあり、躯体縦枠11には、外壁W側の両側縁部にそれぞれシール溝11aが設けてある。これらのシール溝13a,11aは、垂木掛け13や躯体縦枠11を建物に取り付けた場合に、外壁Wとの間に断面が矩形状となるように構成したもので、垂木掛け13及び躯体縦枠11で互いに同一の幅を有するように構成してある。
【0013】
根太掛け12には、両端部から室外側に向けてほぼ水平となるように左右の妻梁14が突設してあり、妻梁14の延在端部には、それぞれ柱15が連結してある。柱15は、左右の躯体縦枠11と同じ間隔を確保した状態で上下に沿う状態でテラス1に立設したもので、個々の上端が躯体縦枠11の上端よりも低くなるように設けてある。左右の柱15の間には、桁16及び前枠17が取り付けてある。桁16は、妻梁14とほぼ同じ高さとなるように配設したもので、左右に沿ってほぼ水平に延在している。前枠17は、左右両端部の下面にそれぞれ柱15の上端面が当接するように配設してあり、垂木掛け13よりも低い位置において左右に沿ってほぼ水平に延在している。なお、本実施の形態では、これら左右の柱15、桁16及び前枠17によって構成される矩形状の前面開口24に引き違い窓40が取り付けてあり、左右の障子41をスライドさせることで前面開口24を開閉することが可能である。
【0014】
前枠17は、中空の筒状を成す前枠基部17aと、前枠基部17aの上部に設けた上方ヒレ部17bと、前枠基部17aの外周側となる側面に設けた前方ヒレ部17cとを一体に構成したものである。上方ヒレ部17bは、前枠基部17aとの間に、後述する屋根パネル22の縁部が挿入されるパネル装着溝22Aを構成するためのもので、前枠基部17aの上部から上方に突出した後、建物の外壁Wに近接する方向に屈曲して延在している。前方ヒレ部17cは、前枠基部17aの外周に樋17dを構成するためのもので、前枠基部17aの側面から斜め上方に突出した後、鉛直上方に向けて屈曲し、さらに屈曲縁部が建物の外壁Wに向けてわずかに屈曲している。
【0015】
前枠17の両端部には、躯体縦枠11との間にそれぞれ腕木18が取り付けてある。腕木18は、前枠17の下方部から外壁Wに向けてほぼ水平に延在し、延在端部が躯体縦枠11の室外に臨む表面11cに連結してあり、躯体縦枠11、柱15及び妻梁14との間に矩形状の側方開口25を構成している。なお、本実施の形態では、左右の側方開口25にそれぞれFIX窓50が取り付けてあり、側方開口25が常時閉塞された状態にある。
【0016】
さらに、前枠17の両端部には、腕木18よりも上方となる部位にそれぞれ妻垂木19が取り付けてある。妻垂木19は、建物の外壁Wに向けて漸次上方となるように傾斜し、延在端部がそれぞれ垂木掛け13の両端部に連結してある。左右の妻垂木19は、垂木掛け13及び前枠17との間に矩形状の屋根開口26を構成し、かつ躯体縦枠11、腕木18及び前枠17との間にそれぞれ台形状の屋根妻開口27を構成している。
【0017】
屋根開口26には、妻垂木19と平行となるように垂木28が設けられるとともに、開口26を閉塞するように屋根パネル22が取り付けてある。屋根パネル22は、屋外構造物10の屋根となるもので、外壁Wから離隔するに従って漸次下方となるように傾斜している。図からも明らかなように、屋根パネル22は、四周の縁部を垂木掛け13、妻垂木19及び前枠17のそれぞれに設けたパネル装着溝22Aに挿入することにより、屋根開口26を常時閉塞する状態で取り付けてある。屋根パネル22としては、ポリカーボネート等の樹脂によって成形した透光性を有する板材を適用している。パネル装着溝22Aの内部においては、屋根パネル22の上下両面に対して少なくとも一方にシール部材22aが当接した状態にある。屋根パネル22に当接するシール部材22aは、予め成形された定形を成すものである。
【0018】
一方、屋根妻開口27には、屋根妻パネル23が配設してある。屋根妻パネル23は、四周の縁部を前枠17の端部、妻垂木19、躯体縦枠11、腕木18に設けたパネル収容溝29に挿入することにより、屋根妻開口27を常時閉塞する状態で取り付けてある。腕木18のパネル収容溝(以下、区別する場合に下方パネル収容溝29Aという)は、腕木18の上面に一体に形成してあり、上方に向けて開口している。これに対して前枠17の端部、妻垂木19、躯体縦枠11では、パネル収容溝29を有した框部材21を別体に成形し、それぞれの内周側となる表面に框部材21を取り付けることによってパネル収容溝29が設けてある。妻垂木19のパネル収容溝(以下、区別する場合に上方パネル収容溝29Bという)は下方に向けて開口し、前枠17の端部のパネル収容溝(以下、区別する場合に側方パネル収容溝29Cという)は後方に向けて開口し、躯体縦枠11のパネル収容溝(以下、区別する場合に後方パネル収容溝29Dという)は前方に向けて開口している。
【0019】
框部材21は、前枠17、妻垂木19、躯体縦枠11よりも幅が小さく構成してあり、個々の外方側面21aが、前枠17の小口端面17e、妻垂木19の外方側面19a、躯体縦枠11の外方側面11bに対して一段退行した位置に取り付けてある。同様に、腕木18には、下方パネル収容溝29Aよりも室外側に位置する部位に、腕木18の外方側面18aよりも一段退行した段状側面18bが設けてある。この段状側面18bは、框部材21の外方側面21aとほぼ同一の平面上に位置している。屋根妻パネル23としては、屋根パネル22と同様、ポリカーボネート等の樹脂によって成形した透光性を有する板材を適用している。パネル収容溝29の内部においては、屋根妻パネル23の内外両表面に対して少なくとも一方にパネルシール部材23aが当接した状態にある。屋根妻パネル23に当接するパネルシール部材23aは、予め成形された定形を成すものである。
【0020】
図からも明らかなように、本実施の形態では、前枠17に設けた框部材(以下、区別する場合に縦框部材21Cという)の上端部に妻垂木19の框部材(以下、区別する場合に上框部材21Bという)が挿入する形で連結してある。また、上框部材21Bにおいて外壁W側に位置する端部には、その下面に躯体縦枠11に設けた框部材(以下、区別する場合に後框部材21Dという)の上端面が当接した状態で連結してある。
【0021】
上框部材21B及び後框部材21Dは、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、断面が略矩形の中空状を成すように構成してある。上方パネル収容溝29B及び後方パネル収容溝29Dは、それぞれの框部材21B,21Dにおいて矩形の一辺を構成する周壁の全長に開口を設けることによって構成してある。すなわち、上框部材21B及び後框部材21Dでは、中空状の内部全体がパネル収容溝29B,29Dとなっている。図3及び図4に示すように、上框部材21Bは、周壁を介してネジ部材Sを螺合することにより妻垂木19に固定してあり、後框部材21Dは、周壁を介してネジ部材Sを螺合することにより躯体縦枠11に固定してある。
【0022】
一方、縦框部材21Cは、樹脂によって型成形したもので、図5図7に示すように、断面が略矩形の中空状を成すように構成してある。縦框部材21Cの左右に位置する2つの側周壁61は、相互間に上框部材21Bを収容することのできる寸法に構成してある。また、縦框部材21Cにおいて前枠17に対向する前枠対向周壁62及び躯体縦枠11に対向する縦枠対向周壁63には、それぞれの略上半部分に上框部材21Bを挿通可能とする切欠62a,63aが設けてある。
【0023】
側方パネル収容溝29Cは、縦枠対向周壁63に凹所を設けることによって構成してある。すなわち、縦枠対向周壁63は、2つの側周壁61から互いに対向する方向に向けてほぼ直角に延在した2つの縁側壁部63bと、個々の縁側壁部63bから内部に向けて延在する2つの内側壁部63cと、内側壁部63cの内縁部間を連結するように設けた内奥壁部63dとを有しており、2つの内側壁部63cと内奥壁部63dとによって囲まれる凹所に側方パネル収容溝29Cを構成している。つまり、縦框部材21Cにおいては、前枠対向周壁62及び2つの側周壁61及び縦枠対向周壁63によって囲まれる異形の中空筒状を成す筒状基部(中空部)60Aと、側方パネル収容溝29Cとが互いに独立した空間となっている。図7(c)からも明らかなように、平面視において筒状基部60Aの内部断面積は、側方パネル収容溝29Cの断面積よりも十分に大きく確保してある。
【0024】
この縦框部材21Cの筒状基部60Aには、切欠62a,63aよりも下方となる部位に底壁部64が設けてある。底壁部64は、側方パネル収容溝29Cに対応する中央部分にのみ排水孔64aを確保した状態で筒状基部60Aの内部を封止するものである。図からも明らかなように、底壁部64の上面は、排水孔64aに向けて漸次低くなるように傾斜するとともに、前枠17に向けて漸次低くなるように傾斜している。
【0025】
さらに、縦框部材21Cの前枠対向周壁62には、突部65及び弾性係合ピン66が設けてある。突部65は、前枠対向周壁62において排水孔64aに対応する部分から下方に向けて延在し、縦框部材21Cの下面21bから突出するように設けたものである。この突部65は、下方パネル収容溝29Aに対して排水孔64aが対向した状態で縦框部材21Cの下面21bを腕木18の上面に当接した場合に、下方パネル収容溝29Aの内部に挿入され、室内側の側面が下方パネル収容溝29Aの内部側面に当接するように構成してある。弾性係合ピン66は、前枠対向周壁62において前枠17に対向する表面から突出した円筒状部材であり、周方向に4分割してある。4分割したそれぞれの部分には、先端部の外周面に係合突起66aが設けてある。
【0026】
この縦框部材21Cは、突部65を下方パネル収容溝29Aに挿入した状態で弾性係合ピン66を前枠17に設けた図示せぬ係合孔に装着することによって前枠17に取り付けてある。上述したように、縦框部材21Cの上端部には、上框部材21Bの端部が挿入してあり、上方パネル収容溝29Bの小口端面が筒状基部60Aの内部に臨む位置で開口している。換言すれば、上框部材21Bは、上方パネル収容溝29Bが筒状基部60Aの内部に連通するように縦框部材21Cに連結してあり、さらに筒状基部60Aの内部を介して上方パネル収容溝29Bが下方パネル収容溝29Aに連続している。
【0027】
また、屋外構造物10には、前枠17の小口端面17eに端部キャップ30が装着してある。端部キャップ30は、図8及び図9に示すように、前枠17の小口端面17eを覆う本体カバー部31と、縦框部材21Cの外方側面21aから側方パネル収容溝29Cに隣接する表面21cまでの間を覆う縦框カバー部(延長カバー部)32と、妻垂木19の外方側面19aを覆う側枠カバー部(延長カバー部)33とを樹脂によって一体に成形したものである。
【0028】
本体カバー部31及び側枠カバー部33は、ほぼ同一の平面上に位置する板状部材である。これに対して縦框カバー部32は、本体カバー部31との間及び側枠カバー部33との間がそれぞれ周囲カバー部(延長カバー部)34によって連結してあり、その外表面32aが本体カバー部31の外表面31a及び側枠カバー部33の外表面33aよりも一段退行した位置に配置してある。周囲カバー部34は、妻垂木19の下面19b及び前枠17の外壁Wに臨む表面17fを覆う部分であり、本体カバー部31及び側枠カバー部33に対してほぼ直交する方向に延在している。つまり、本体カバー部31の内表面31bを前枠17の小口端面17eに当接もしくは近接して配置した場合に、側枠カバー部33の内表面33bが妻垂木19の外方側面19aに当接もしくは近接して配置されるとともに、縦框カバー部32の内表面32bが縦框部材21Cの外方側面21aに当接もしくは近接して配置され、周囲カバー部34の内表面34aが妻垂木19の下面19b及び前枠17の外壁Wに臨む表面17fに当接もしくは近接して配置されるように構成してある。
【0029】
この端部キャップ30には、本体カバー部31の内表面31bにおいて前枠17が当接もしくは近接して配置される部分に一連の端部溝30aが形成してある。また、側枠カバー部33の内表面33b、縦框カバー部32の内表面32b及び周囲カバー部34の内表面34aには、妻垂木19及び縦框部材21Cに対向する部位の縁部に一連のシール塗布用溝30bが形成してある。
【0030】
上記のように構成した屋外構造物10では、図1(b)に示すように、建物の外壁Wに躯体縦枠11、根太掛け12及び垂木掛け13を取り付けた後、躯体縦枠11及び垂木掛け13に対して左右の腕木18及び妻垂木19を取り付け、さらに腕木18及び妻垂木19の相互間に前枠17を設けることで屋根構造体の骨格が構成される。この状態から、前枠17の両小口端面17eに対して端部キャップ30が取り付けられる。このとき、端部キャップ30のシール塗布用溝30bに予めシール材を塗布しておけば、端部キャップ30を取り付けることにより、屋根構造体のシール性を確保することが可能となる。
【0031】
すなわち、端部キャップ30においては、本体カバー部31によって前枠17の小口端面17eが閉塞される。さらに側枠カバー部33によって前枠17と妻垂木19との接合部がシールされるとともに、縦框カバー部32及び周囲カバー部34によって前枠17と縦框部材21Cとの接合部、妻垂木19と縦框部材21Cとの接合部、上框部材21Bと縦框部材21Cとの接合部、縦框部材21Cと腕木18との接合部がそれぞれシールされることになる。従って、端部キャップ30を取り付けた後においては、これらの接合部に対して個別にシール材を塗布する作業を行う必要がなくなり、屋根構造体を組み立てる作業を煩雑化することなくシール性を確保することが可能となる。
【0032】
さらに、前枠17に中空状の筒状基部60Aを設けるとともに、上方パネル収容溝29Bが筒状基部60Aの内部に連通するように設けているため、上方パネル収容溝29Bからの水は筒状基部60Aの内部に流入することになり、側方パネル収容溝29Cの開口から屋根妻パネル23の表面に水が漏出する事態を招来するおそれがない。しかも、筒状基部60Aに到達した水は、底壁部64によって内部に集められた後に、排水孔64aを介して下方パネル収容溝29Aにのみ排出されるため、外部に溢れ出るおそれもなくなる。
【0033】
なお、上述した実施の形態では、テラス囲いと称される屋外構造物に適用された屋根構造体を例示しているが、本発明は必ずしもこれに限定されず、下方フレーム材、上方フレーム材及び側方フレーム材によって囲まれる屋根妻開口に屋根妻パネルが配設されるものであればその他のものにも適用することが可能である。また、上方フレーム材に上框部材を取り付けることによってパネル収容溝を設けるようにしているが、下方フレーム材と同様、パネル収容溝を一体に成形するようにしても良い。さらに、中空部として筒状を成すものを例示しているが、下方パネル収容溝に排水できるものであれば必ずしも筒状を成している必要はない。
【0034】
以上のように、本発明に係る屋根構造体は、建物の外壁に対して突出するように延在され、上方に開口する下方パネル収容溝が設けられた下方フレーム材と、前記下方フレーム材の上方において前記外壁に対して突出するように延在され、下方に開口する上方パネル収容溝が設けられた上方フレーム材と、前記下方フレーム材及び前記上方フレーム材の間に設けられた側方フレーム材と、側方に開口する側方パネル収容溝が設けられ、前記側方パネル収容溝が前記下方パネル収容溝及び前記上方パネル収容溝を連続するように前記側方フレーム材に設けられた縦框部材と、縁部が前記下方パネル収容溝、前記上方パネル収容溝及び前記側方パネル収容溝に挿入された状態で配設された屋根妻パネルとを備える屋根構造体であって、前記縦框部材には、前記側方パネル収容溝よりも外周側となる部位に中空部が設けられ、前記上方パネル収容溝は、前記中空部に連通するように設けられ、前記中空部において前記上方パネル収容溝の小口端面よりも下方となる部位には、前記下方パネル収容溝に対向する部位にのみ排水孔を確保した状態で底壁部が設けられていることを特徴としている。
【0035】
この発明によれば、縦框部材に中空部を設けるとともに、上方パネル収容溝が中空部に連通するように設けているため、上方パネル収容溝からの水は中空部に流入することになり、側方パネル収容溝の開口から屋根妻パネルの表面に水が漏出する事態を防止することができる。しかも、中空部に到達した水は、底壁部によって内部に集められた後に、排水孔を通過して下方パネル収容溝にのみ排出されるため、外部に溢れ出るおそれもなくなる。
【0036】
また本発明は、上述した屋根構造体において、前記上方フレーム材は、前記外壁から離隔するに従って下方となるように傾斜し、前記縦框部材は、前記上方フレーム材において前記外壁から離隔した延在端部に配設されていることを特徴としている。
【0037】
この発明によれば、雨水等の水が上方フレーム材の傾斜に沿って外壁から離隔する方向に案内されるため、防水上の点で有利となる。
【0038】
また本発明は、上述した屋根構造体において、前記底壁部は、前記排水孔に向けて漸次低くなるように傾斜していることを特徴としている。
【0039】
この発明によれば、縦框部材の中空部に至った水が底壁部の傾斜に従って排水孔に案内されるため、中空部に水が滞留してしまう事態を招来するおそれがない。
【0040】
また本発明は、上述した屋根構造体において、前記縦框部材には、前記排水孔が前記下方パネル収容溝に対向した場合に前記下方パネル収容溝に挿入される突部が設けられていることを特徴としている。
【0041】
この発明によれば、突部によって中空部の排水孔が下方パネル収容溝に対して正確に位置決めされた状態を維持することになり、外部への漏水をより確実に防止することができる。
【0042】
また本発明は、上述した屋根構造体において、前記側方フレーム材は、水平方向に沿って延在され、その端部に前記下方フレーム材及び前記上方フレーム材が連結されるものであり、前記上方パネル収容溝は、パネル収容溝が設けられた別体の上框部材を前記上方フレーム材に取り付けることによって構成され、前記側方フレーム材の端部には、端部キャップが取り付けられ、前記端部キャップには、前記側方フレーム材の小口端面を覆う本体カバー部と、前記上方フレーム材の外方側面から前記縦框部材の外方側面にわたる部位を覆う延長カバー部とが一体に設けられていることを特徴としている。
【0043】
この発明によれば、側方フレーム材の端部に端部キャップを装着することにより、上方フレーム材の外方側面から縦框部材の外方側面にわたる部位が延長カバー部によって覆われるため、互いの接合部を通じた水の浸入が防止され、水密性の点で有利となる。
【0044】
また本発明は、上述した屋根構造体において、前記延長カバー部において前記上方フレーム材に対向する内表面の縁部及び前記縦框部材に対向する内表面の縁部には、シール材を塗布するための一連のシール塗布用溝が設けられていることを特徴としている。
【0045】
この発明によれば、シール塗布用溝に予めシール材を塗布しておくことで、上方フレーム材及び縦框部材の接合部についても同時にシールすることができ、組立作業の煩雑化を招来することなく高い水密性を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
17 前枠、17e 小口端面、18 腕木、19 妻垂木、19a 外方側面、21B 上框部材、21C 縦框部材、21a 外方側面、23 屋根妻パネル、27 屋根妻開口、29A 下方パネル収容溝、29B 上方パネル収容溝、29C 側方パネル収容溝、30 端部キャップ、30b シール塗布用溝、31 本体カバー部、31b 内表面、32 縦框カバー部、32b 内表面、33 側枠カバー部、33b 内表面、34 周囲カバー部、34a 内表面、60A 筒状基部、64 底壁部、64a 排水孔、65 突部、W 外壁
図1
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図9