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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】電動式ガス弁装置
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
F23K5/00 301D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018192374
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020060332
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】片岡 邦夫
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-128198(JP,A)
【文献】特開平06-272857(JP,A)
【文献】特開2016-205746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
F16K 31/04,31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナへのガス供給路に介設される電動式ガス弁装置であって、バルブケーシング内に、電磁安全弁と、流量調節弁と、電動モータにより連動機構を介して軸方向に駆動される操作ロッドと、バルブケーシング内の空間を軸方向一方の一次側ガス室と軸方向他方の二次側ガス室とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材とが設けられ、軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、電磁安全弁は、弁座部材に設けられた一次側ガス室に面する安全弁用弁座と、安全弁用弁座に対向する安全弁用弁体と、安全弁用弁体を復動方向に付勢して安全弁用弁座に着座させる弁バネと、安全弁用弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを備え、流量調節弁は、弁座部材に設けられた二次側ガス室に面する調節弁用弁座と、操作ロッドと一体に軸方向に移動する、調節弁用弁座に着座可能な調節弁用弁体と、調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座した状態でも一次側ガス室から二次側ガス室にガスを流すバイパス路とを備え、
バルブケーシング内に、弁座部材の復動方向への移動を所定の復動端位置で制止する弁座ストッパと、弁座部材を復動方向に付勢する弁座バネとが設けられ、電動モータを正転させて操作ロッドを往動方向に移動させることにより、調節弁用弁体を調節弁用弁座に着座させて、弁座部材を復動端位置から往動方向に押動させ、安全弁用弁座を安全弁用弁体に当接させて、安全弁用弁体を電磁石に吸着片が当接する開弁位置まで弁バネの付勢力に抗して押動させ、この状態で電磁石に通電することにより安全弁用弁体を開弁位置に吸着保持し、その後、電動モータを逆転させて操作ロッドを復動方向に移動させることにより、弁座部材を復動方向に移動させ、安全弁用弁座を開弁位置に吸着保持される安全弁用弁体から離隔させて、電磁安全弁を開弁させると共に、弁座部材が復動端位置に到達した後の更なる操作ロッドの復動方向への移動により調節弁用弁体が調節弁用弁座から離れて、バーナへのガス供給量が次第に増加するようにし、
更に、バーナ燃焼中にバーナへのガス供給量をバイパス路で規定される最小量に絞るときは、電動モータを、復動端位置に存する弁座部材の調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座する回転位置である第1の回転位置よりも正転方向に所定角度ずれた第2の回転位置まで正転させるものにおいて、
二次側ガス室に面するダイヤフラムが設けられ、ダイヤフラムにより二次側ガス室から仕切られた背圧室が画成されると共に、二次側ガス室と背圧室とを連通する通気路が設けられ、この通気路は、二次側ガス室内のガス圧が変化してから応答遅れを持って背圧室内のガス圧が変化するような通気抵抗を有することを特徴とする電動式ガス弁装置。
【請求項2】
前記ダイヤフラムは、前記二次側ガス室の復動方向側の端部に面するように配置され、ダイヤフラムに前記弁座部材が連結されて、ダイヤフラムが弁座部材と一緒に軸方向に変位することを特徴とする請求項1記載の電動式ガス弁装置。
【請求項3】
前記通気路は、前記ダイヤフラムに形成したオリフィス孔で構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の電動式ガス弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナへのガス供給路に介設される電動式ガス弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動式ガス弁装置として、バルブケーシング内に、電磁安全弁と、流量調節弁と、電動モータにより連動機構を介して軸方向に駆動される操作ロッドと、バルブケーシング内の空間を軸方向一方の一次側ガス室と軸方向他方の二次側ガス室とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材とを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、電磁安全弁は、弁座部材に設けられた一次側ガス室に面する安全弁用弁座と、安全弁用弁座に対向する安全弁用弁体と、安全弁用弁体を復動方向に付勢して安全弁用弁座に着座させる弁バネと、安全弁用弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを備え、流量調節弁は、弁座部材に設けられた二次側ガス室に面する調節弁用弁座と、操作ロッドと一体に軸方向に移動する、調節弁用弁座に着座可能な調節弁用弁体とを備えている。また、バルブケーシング内に、弁座部材の復動方向への移動を所定の復動端位置で制止する弁座ストッパと、弁座部材を復動方向に付勢する弁座バネとが設けられている。
【0003】
上記従来例では、電動モータを正転させて操作ロッドを往動方向に移動させることにより、調節弁用弁体を調節弁用弁座に着座させて、弁座部材を復動端位置から往動方向に押動させ、安全弁用弁座を安全弁用弁体に当接させて、安全弁用弁体を電磁石に吸着片が当接する開弁位置まで弁バネの付勢力に抗して押動させ、この状態で電磁石に通電することにより安全弁用弁体を開弁位置に吸着保持する。その後、電動モータを逆転させて操作ロッドを復動方向に移動させることにより、弁座部材を復動方向に移動させ、安全弁用弁座を開弁位置に吸着保持される安全弁用弁体から離隔させて、電磁安全弁を開弁させると共に、弁座部材が復動端位置に到達した後の更なる操作ロッドの復動方向への移動により調節弁用弁体が調節弁用弁座から離れて、バーナへのガス供給量が次第に増加するようにしている。
【0004】
また、流量調節弁は、調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座した状態でも一次側ガス室から二次側ガス室にガスを流すバイパス路を有している。ここで、バーナ燃焼中にバーナへのガス供給量をバイパス路で規定される最小量に絞るときに、電動モータを、復動端位置に存する弁座部材の調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座する回転位置で停止させるようにしたのでは、弁座部材の寸法公差や弁座ストッパの位置公差等により、調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座する前に電動モータが停止して、バーナへのガス供給量をバイパス路で規定される最小量まで絞れなくなることがある。そこで、従来、バーナ燃焼中にバーナへのガス供給量をバイパス路で規定される最小量に絞るときは、電動モータを、復動端位置に存する弁座部材の調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座する回転位置である第1の回転位置よりも正転方向に所定角度ずれた第2の回転位置まで正転させるようにしている。
【0005】
然し、これでは、以下の不具合を生ずる。即ち、従来例のものでは、電動モータを第2の回転位置まで正転させると、調節弁用弁体が復動端位置に存する弁座部材の調節弁用弁座に着座してから更に往動方向に移動し、弁座部材が調節用弁体に押されて往動方向に移動してしまう。そして、この移動により二次側ガス室の容積が拡大して、二次側ガス室内のガス圧が一時的に低下し、バーナへのガス供給量が一時的に最小量を下回る量までアンダーシュートし、失火してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-13251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、バーナ燃焼中にバーナへのガス供給量を最小量まで絞る際の失火を防止できるようにした電動式ガス弁装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナへのガス供給路に介設される電動式ガス弁装置であって、バルブケーシング内に、電磁安全弁と、流量調節弁と、電動モータにより連動機構を介して軸方向に駆動される操作ロッドと、バルブケーシング内の空間を軸方向一方の一次側ガス室と軸方向他方の二次側ガス室とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材とが設けられ、軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、電磁安全弁は、弁座部材に設けられた一次側ガス室に面する安全弁用弁座と、安全弁用弁座に対向する安全弁用弁体と、安全弁用弁体を復動方向に付勢して安全弁用弁座に着座させる弁バネと、安全弁用弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを備え、流量調節弁は、弁座部材に設けられた二次側ガス室に面する調節弁用弁座と、操作ロッドと一体に軸方向に移動する、調節弁用弁座に着座可能な調節弁用弁体と、調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座した状態でも一次側ガス室から二次側ガス室にガスを流すバイパス路とを備え、バルブケーシング内に、弁座部材の復動方向への移動を所定の復動端位置で制止する弁座ストッパと、弁座部材を復動方向に付勢する弁座バネとが設けられ、電動モータを正転させて操作ロッドを往動方向に移動させることにより、調節弁用弁体を調節弁用弁座に着座させて、弁座部材を復動端位置から往動方向に押動させ、安全弁用弁座を安全弁用弁体に当接させて、安全弁用弁体を電磁石に吸着片が当接する開弁位置まで弁バネの付勢力に抗して押動させ、この状態で電磁石に通電することにより安全弁用弁体を開弁位置に吸着保持し、その後、電動モータを逆転させて操作ロッドを復動方向に移動させることにより、弁座部材を復動方向に移動させ、安全弁用弁座を開弁位置に吸着保持される安全弁用弁体から離隔させて、電磁安全弁を開弁させると共に、弁座部材が復動端位置に到達した後の更なる操作ロッドの復動方向への移動により調節弁用弁体が調節弁用弁座から離れて、バーナへのガス供給量が次第に増加するようにし、更に、バーナ燃焼中にバーナへのガス供給量をバイパス路で規定される最小量に絞るときは、電動モータを、復動端位置に存する弁座部材の調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座する回転位置である第1の回転位置よりも正転方向に所定角度ずれた第2の回転位置まで正転させるものにおいて、二次側ガス室に面するダイヤフラムが設けられ、ダイヤフラムにより二次側ガス室から仕切られた背圧室が画成されると共に、二次側ガス室と背圧室とを連通する通気路が設けられ、この通気路は、二次側ガス室内のガス圧が変化してから応答遅れを持って背圧室内のガス圧が変化するような通気抵抗を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、電動モータが第1の回転位置を超えて正転したときに、弁座部材の復動端位置からの往動方向への移動に伴う二次側ガス室の容積拡大で二次側ガス室内のガス圧(二次ガス圧)が低下しても、背圧室内のガス圧は、通気路の通気抵抗により低下前の二次ガス圧から直ちには低下しないため、背圧室内のガス圧と二次側ガス室内のガス圧との差圧により、ダイヤフラムが二次側ガス室の容積を縮小する方向に変位する。従って、弁座部材が復動端位置から往動方向に移動しても、二次側ガス室の容積は左程拡大しない。その結果、バーナ燃焼中に電動モータを第1の回転位置を超えて第2の回転位置まで正転させて、バーナへのガス供給量を最小量まで絞る際に、二次側ガス室の容積拡大に起因してガス供給量が最小量を下回る量にアンダーシュートすることを抑制でき、失火を防止できる。
【0010】
尚、ダイヤフラムが二次側ガス室の容積を縮小する方向に変位すると、背圧室の容積が拡大して、背圧室内のガス圧が低下し、ダイヤフラムの上記方向への変位が抑制されて、二次側ガス室の容積拡大を十分に防止できなくなる虞がある。そこで、本発明において、ダイヤフラムは、二次側ガス室の復動方向側の端部に面するように配置され、ダイヤフラムに弁座部材が連結されて、ダイヤフラムが弁座部材と一緒に軸方向に変位することが望ましい。これによれば、弁座部材が復動端位置から往動方向に移動したときに、ダイヤフラムが弁座部材と一緒に往動方向、即ち、二次側ガス室の容積を縮小する方向に変位し、二次側ガス室の容積が拡大することを確実に防止できる。従って、バーナへのガス供給量を最小量まで絞る際の失火防止の確実性が向上する。
【0011】
ところで、通気路をバルブケーシングに設けることも可能であるが、これでは、通気路の加工コストが高くなる。そのため、本発明において、通気路は、ダイヤフラムに形成したオリフィス孔で構成されることが望ましい。これによれば、通気路の加工コストが殆どかからず、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態の電動式ガス弁装置の切断側面図。
図2】第1実施形態の電動式ガス弁装置に設けられる連動機構の分解斜視図。
図3】(a)(b)(c)第1実施形態の電動式ガス弁装置の作動を示す要部の切断側面図。
図4】本発明の第2実施形態の電動式ガス弁装置の切断側面図。
図5】電動モータを第2の回転位置まで正転させたときの第2実施形態の電動式ガス弁装置の要部の切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、Aは、コンロに設けられるバーナBへのガス供給路Gに介設した本発明の実施形態の電動式ガス弁装置である。このガス弁装置Aは、ガス流入口1aとバーナBに連なるガス流出口1bとを有するバルブケーシング1を備えている。このバルブケーシング1内には、電磁安全弁2と、流量調節弁3と、ステッピングモータ等から成る電動モータ4により連動機構5を介して軸方向に駆動される操作ロッド6と、バルブケーシング1内の空間をガス流入口1aに連通する軸方向一方の一次側ガス室11とガス流出口1bに連通する軸方向他方の二次側ガス室12とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材7とが設けられている。尚、電動モータ4は、バルブケーシング1の軸方向他方の端部に連動機構5を囲うようにして取付けられるボックス13の外端に搭載されている。
【0014】
軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、電磁安全弁2は、弁座部材7に設けられた一次側ガス室11に面する安全弁用弁座21と、安全弁用弁座21に対向する安全弁用弁体22と、安全弁用弁体22を復動方向に付勢して安全弁用弁座21に着座させる弁バネ23と、安全弁用弁体22に往動方向にのびる弁軸22aを介して連結した吸着片24と、吸着片24に対向する電磁石25とを備えている。そして、安全弁用弁体22を吸着片24が電磁石25に当接する開弁位置まで弁バネ23に抗して押動させた状態で電磁石25に通電することにより、安全弁用弁体22が開弁位置に吸着保持されるようにしている。また、バーナBに付設する図示省略した火炎検知素子により失火が検知されたときや、後述する点消火ボタン9を消火位置に押し込む消火操作を行ったときは、電磁石25への通電を停止し、安全弁用弁体22を弁バネ23により安全弁用弁座21に着座する閉弁位置に復帰させて、電磁安全弁2を閉弁する。
【0015】
バルブケーシング1内には、弁座部材7の復動方向への移動を安全弁用弁体22が着座可能な所定の復動端位置で制止する、バルブケーシング1の内面に形成した筒状突起部から成る弁座ストッパ71と、弁座部材7を復動方向に付勢して復動端位置に弾力的に保持する弁座バネ72とが設けられている。尚、弁座部材7には、後述する調節弁用弁座31の周辺部から復動方向に突出する複数の脚部7aが突設されており、復動端位置でこれら脚部7aが弁座ストッパ71に当接する。また、弁座部材7の外側で一次側ガス室11と二次側ガス室12との間にガスが流れることを防止するためにベロフラム73を設けている。
【0016】
流量調節弁3は、弁座部材7に設けられた二次側ガス室12に面する調節弁用弁座31と、操作ロッド6と一体に軸方向に移動する調節弁用弁体32とを備えている。調節弁用弁体32は、調節弁用弁座31に開設した弁孔31aを閉塞するように調節弁用弁座31に着座可能な閉塞弁部32aと、弁孔31aに復動方向から挿入可能なニードル部32bとを有している。また、流量調節弁3は、調節弁用弁座31に閉塞弁部32aが着座した状態でも一次側ガス室11から二次側ガス室12にガスを流すバイパス路33を備えている。尚、本実施形態では、バイパス路33を調節弁用弁体32に形成しているが、弁座部材7にバイパス路33を形成することも可能である。また、本実施形態では、調節弁用弁体32を操作ロッド6に一体に形成しているが、調節弁用弁体32を操作ロッド6と別体として、これを操作ロッド6に取付けてもよい。
【0017】
図2も参照して、連動機構5は、電動モータ4により回転駆動される、操作ロッド6と同心の筒状のカム体54と、カム体54に形成した螺旋状のカム溝54aに係合する、操作ロッド6に固定したピン55とを有し、カム体54の正転と逆転とでカム溝54aからピン55を介して作用する軸方向推力により操作ロッド6が往動方向と復動方向とに移動するようにしたカム機構で構成されている。電動モータ4とカム体54との間には、モータケース内に組み込んだ減速歯車列51と、減速歯車列51の出力側の回転軸52と、回転軸52とカム体54とを連結する連結子53とが設けられている。連結子53は、断面が非円形の回転軸52に嵌合する非円形の孔53aを有し、回転軸52と一緒に回転する。また、連結子53には、カム体54の復動方向側端部に形成した切欠き部54bに係合して回転力を伝達する突片部53bが設けられている。カム体54には、バルブケーシング1から復動方向に延出したガイド筒56が挿入されている。ガイド筒56には、軸方向に長手の長孔56aが形成されており、この長孔56aにピン55を軸方向に摺動自在に係合させている。また、カム体54の往動方向の端をボックス13の端壁で構成されるカムストッパ57に当接した状態に付勢保持するカムバネ58を設けている。
【0018】
また、電動式ガス弁装置Aを制御するコントローラ8が設けられている。コントローラ8には、コンロの操作パネル部に設けられた点消火ボタン9からの操作信号が入力される。点消火ボタン9は、プッシュプッシュ式であって、操作パネル部の表面とほぼ面一の消火位置から一旦押し込んで押し込み解除することにより操作パネル部の表面から突出した点火位置に変位し、この状態で火力調節のために回動操作することができる。そして、点消火ボタン9を点火位置に突出させる点火操作を行ったときに、コントローラ8はモータ駆動回路41を介して電動モータ4を正転させる。これによれば、連動機構5を介して操作ロッド6が往動方向に移動し、先ず、調節弁用弁体32の閉塞弁部32aが弁座ストッパ71で制止される復動端位置に存する弁座部材7の調節弁用弁座31に着座し、以後、弁座部材7が調節弁用弁体32に押されて往動方向に移動する。そして、安全弁用弁座21が安全弁用弁体22に当接して、安全弁用弁体22が開弁位置に押動される(図3(a)に示す状態)。この状態で電磁石25に通電して安全弁用弁体22を開弁位置に吸着保持する。その後、電動モータ4を逆転させて、操作ロッド6を復動方向に移動させると共に、図示省略したイグナイタに通電する。この際、弁座部材7は、復動端位置まで操作ロッド6に追従して復動方向に移動し、安全弁用弁座21が開弁位置に吸着保持される安全弁用弁体22から離れて、電磁安全弁2が開弁され、バーナBへのガス供給が開始される。その後、復動端位置に制止される弁座部材7に対し調節弁用弁体32を更に復動方向に移動させ、閉塞弁部32aを調節弁用弁座31から離して、バーナBへのガス供給量を次第に増加させ、バーナBに点火する。バーナ点火後、調節弁用弁体32が往動方向に移動して、復動端位置に存する弁座部材7の調節弁用弁座31に調節用弁用弁体32(正確には閉塞弁部32a)が着座すれば(図3(b)の状態)、バイパス路33のみを介してガスが流れて、バーナBへのガス供給量が最小量になる。
【0019】
但し、電動モータ4を、復動端位置に存する弁座部材7の調節弁用弁座31に調節弁用弁体32が着座する回転位置で停止させるようにしたのでは、弁座部材7の寸法公差や弁座ストッパ71の位置公差等により、調節弁用弁座31に調節弁用弁体32が着座する前に電動モータ4が停止して、バーナBへのガス供給量をバイパス路33で規定される最小量まで絞れなくなることがある。そこで、バーナ燃焼中に点消火ボタン9により指示される火力が最小火力に変更されて、バーナBへのガス供給量をバイパス路33で規定される最小量に絞るときは、電動モータ4を、復動端位置に存する弁座部材7の調節弁用弁座31に調節弁用弁体32が着座する回転位置である第1の回転位置よりも正転方向に所定角度ずれた第2の回転位置まで正転させるようにしている。
【0020】
然し、電動モータ4の第1の回転位置から第2の回転位置への正転で調節弁用弁体32に押されて弁座部材7が復動端位置から往動方向に移動してしまうと、二次側ガス室12の容積が拡大して、二次側ガス室12内のガス圧が一時的に低下し、バーナBへのガス供給量が一時的に最小量を下回る量までアンダーシュートし、失火してしまうことがある。
【0021】
そこで、本実施形態では、二次側ガス室12に面するダイヤフラム14を設けて、このダイヤフラム14により二次側ガス室12から仕切られた背圧室15を画成している。具体的には、ダイヤフラム14を二次側ガス室12の復動方向側の端部に面するように配置して、ダイヤフラム14の内周縁部14aを弁座ストッパ71の端部外周に外嵌させ、弁座ストッパ71の周囲に背圧室15を画成している。ダイヤフラム14の内周縁部14aは、弁座部材7との間に介設したバネ141で、弁座ストッパ71から抜け出ないように押さえられている。
【0022】
また、二次側ガス室12と背圧室15とを、二次側ガス室12内のガス圧が変化してから応答遅れを持って背圧室15内のガス圧が変化するような通気抵抗を有する通気路16を介して連通させている。尚、通気路16をバルブケーシング1に設けることも可能であるが、これでは、通気路16の加工コストが高くなる。そのため、本実施形態では、通気路16をダイヤフラム14に形成したオリフィス孔で構成している。具体的には、ダイヤフラム14の内周縁部14aに、当該内周縁部14aの復動方向を向く端面の周方向一箇所に位置させて、背圧室15に連通する溝部14bを形成すると共に、この溝部14bと二次側ガス室12とを連通するようにオリフィス孔から成る通気路16を形成している。このようにダイヤフラム14に通気路16を形成すれば、通気路16の加工コストが殆どかからず、コストダウンを図ることができる。
【0023】
以上の構成によれば、電動モータ4が第1の回転位置を超えて第2の回転位置まで正転したときに、図3(c)に示す如く、弁座部材7が復動端位置から往動方向に移動し、これに伴う二次側ガス室12の容積拡大で二次側ガス室12内のガス圧(二次ガス圧)が低下する。一方、背圧室15内のガス圧は、通気路16の通気抵抗により低下前の二次ガス圧から直ちには低下しない。そのため、背圧室15内のガス圧と二次側ガス室12内のガス圧との差圧により、ダイヤフラム14が、図3(c)に仮想線で示す状態から実線で示す如く、往動方向、即ち、、二次側ガス室12の容積を縮小する方向に変位する。従って、弁座部材7が復動端位置から往動方向に移動しても、二次側ガス室12の容積は左程拡大しない。その結果、バーナ燃焼中に電動モータ4を第1の回転位置を超えて第2の回転位置まで正転させて、バーナBへのガス供給量を最小量まで絞る際に、二次側ガス室12の容積拡大に起因してガス供給量が最小量を下回る量にアンダーシュートすることを抑制でき、失火を防止できる。
【0024】
次に、図4図5に示す第2実施形態について説明する。第2実施形態の基本的な構造は、上記第1実施形態のものと特に異ならず、第1実施形態と同様の部材、部位に上記と同一の符号を付している。
【0025】
ここで、第1実施形態のものでは、ダイヤフラム14が二次側ガス室12の容積を縮小する方向(往動方向)に変位すると、背圧室15の容積が拡大して、背圧室15内のガス圧が低下し、ダイヤフラム14の往動方向への変位が抑制されて、二次側ガス室12の容積拡大を十分に防止できなくなる虞がある。そこで、第2実施形態では、二次側ガス室12の復動方向側の端部に面するように配置されたダイヤフラム14に弁座部材7を連結して、ダイヤフラム14が弁座部材7と一緒に軸方向に変位するようにしている。具体的には、ダイヤフラム14の内周縁部14aを弁座ストッパ71の端面に対向させ、この内周縁部14aに、弁座部材7の各脚部7aの先端部を挿通係止して、ダイヤフラム14に弁座部材7を連結している。
【0026】
第2実施形態によれば、電動モータ4が第1の回転位置を超えて第2の回転位置まで正転して、弁座部材7が復動端位置から往動方向に移動したときに、ダイヤフラム14が図5に示す如く弁座部材7と一緒に往動方向、即ち、二次側ガス室12の容積を縮小する方向に変位し、二次側ガス室12の容積が拡大することを確実に防止できる。従って、バーナBへのガス供給量を最小量まで絞る際の失火防止の確実性が向上する。
【0027】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記第1実施形態では、ダイヤフラム14を二次側ガス室12の復動方向側の端部に面するように配置しているが、二次側ガス室12の周面の一部となるバルブケーシング1の部分に開口部を形成して、この開口部を覆うようにダイヤフラムを配置すると共に、ダイヤフラムの背面側にダイヤフラムカバーを配置し、ダイヤフラムとダイヤフラムカバーの間に背圧室を画成することも可能である。
【0028】
また、上記実施形態では、連動機構5を筒状のカム体54を有するカム機構で構成しているが、送りねじ機構で連動機構を構成することも可能である。更に、電動モータをバルブケーシングに対し軸方向に直交するように配置し、連動機構を操作ロッドに連結されたラックと、ラックに噛合するモータ駆動のピニオンとから成るラックピニオン機構で構成することも可能である。また、コンロ用バーナ以外のバーナへのガス供給路に介設する電動式ガス弁装置にも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0029】
A…電動式ガス弁装置、B…バーナ、G…ガス供給路、1…バルブケーシング、11…一次側ガス室、12…二次側ガス室、14…ダイヤフラム、15…背圧室、16…通気路(オリフィス孔)、2…電磁安全弁、21…安全弁用弁座、22…安全弁用弁体、22a…弁軸、23…弁バネ、24…吸着片、25…電磁石、3…流量調節弁、31…調節弁用弁座、32…調節弁用弁体、33…バイパス路、4…電動モータ、5…連動機構、6…操作ロッド、7…弁座部材、71…弁座ストッパ、72…弁座バネ。
図1
図2
図3
図4
図5