(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】配線用遮断器の端子金具
(51)【国際特許分類】
H01H 73/20 20060101AFI20220628BHJP
H01H 71/08 20060101ALI20220628BHJP
H01H 73/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H01H73/20 A
H01H71/08
H01H73/02 B
(21)【出願番号】P 2018212082
(22)【出願日】2018-11-12
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢司
(72)【発明者】
【氏名】安村 直樹
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3035548(JP,U)
【文献】特開2018-6178(JP,A)
【文献】特開2015-207542(JP,A)
【文献】米国特許第6201460(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/20
H01H 73/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースとカバーとからなる筐体を備えた配線用遮断器の端子金具であって、
電線固定面と、この電線固定面から垂直に立ち上げた立上げ片とを備えたL字形状であり、
この立上げ片の先端部に薄肉部を形成し、
カバーの一部を前記立上げ片の薄肉部にすることで形成された空間に形成したことを特徴とする配線用遮断器の端子金具。
【請求項2】
前記立上げ片の薄肉部の反対面に電路の接続部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の配線用遮断器の端子金具。
【請求項3】
ベースに、端子金具を左右両側から挟止する挟止部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の配線用遮断器の端子金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースとカバーとからなる筐体を備えた配線用遮断器の端子金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線用遮断器は、ベースとカバーとからなる筐体の内部に過電流の検出手段や引き外し機構などを収納した構造が一般的である。操作用のハンドルはカバーの上方に突出されており、端子金具もカバーの外側に露出させてある。
【0003】
特許文献1や特許文献2に示されるように、負荷側の端子金具は、ベースに形成された電線固定面と、この電線固定面から垂直に立ち上げた立上げ片とを備えたL字形状であり、立上げ片の先端は瞬時引き外し装置に接続されているものが多い。
【0004】
特許文献1の負荷側の端子金具は、
図7に示すように、ベース1の上部に形成された移動規制用の壁部2を避けるために立上げ片3が内側にクランク状に折り曲げられており、その上方からカバー4で覆われた構造となっている。カバー4は課電部である立上げ片3の外側(右側)を覆い、感電事故を防止している。8は立上げ片3の先端が溶接された瞬時引き外し装置である。
【0005】
しかしこの構造では、カバー4の右端と端子金具の立上げ片3との間に隙間があるため、詳しくは、クランク状に折り曲げるために曲げ許容を作る必要があり、そのためカバー4と立上げ片3との間に隙間が生じるため、Wとして示されるカバー4の内側空間に無駄がある。このため、端子金具の立上げ片3がカバー4の内側空間を圧迫しているという問題があった。
【0006】
また特許文献2の
図2の負荷側の端子金具は、
図8に示すように、ベース1に形成された電線固定面から垂直に立ち上げた立上げ片5を備えているが、この部分に対応するカバー6の端部7が薄肉化されている。このような構造とすれば、端子金具の立上げ片5がWとして示されるカバー6の内側空間を圧迫することはない。
【0007】
しかしカバー6は樹脂で形成されており、金型で成形するためには抜き勾配が必要である。このため特許文献2の構造では、カバー6の端部7が薄肉となり、カバー6の強度が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-294105号公報
【文献】特許第3228081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、カバーの強度を損なうことなく、カバーの内部に形成される機器内部空間を広く確保することができる配線用遮断器の端子金具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、ベースとカバーとからなる筐体を備えた配線用遮断器の端子金具であって、電線固定面と、この電線固定面から垂直に立ち上げた立上げ片とを備えたL字形状であり、この立上げ片の先端部に薄肉部を形成し、カバーの一部を前記立上げ片の薄肉部にすることで形成された空間に形成したことを特徴とするものである。
【0011】
なお請求項2のように、前記立上げ片の薄肉部の反対面に電路の接続部を形成することが好ましい。また請求項3のように、ベースに、端子金具を左右両側から挟止する挟止部を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配線用遮断器の端子金具は、立上げ片の先端部に薄肉部を形成し、カバーの一部をこの薄肉部にすることで形成された空間に形成した構造であるため、カバーを薄肉化する必要がなく、カバーの強度を確保することができる。また、立上げ片とカバーとの間に無駄な隙間が形成されることもないので、カバーの内部に形成される機器内部空間を広く確保することができる利点がある。
【0013】
請求項2の発明のように、立上げ片の薄肉部の反対面に電路の接続部を形成すれば、立上げ片のその部分の熱容量が小さくなるため溶接時に加熱され易くなり、電路の溶接が行い易くなる。
【0014】
請求項3の発明のように、ベースに端子金具を左右両側から挟止する挟止部を形成すれば、端子金具のガタツキを防止でき、しかも挟止部によって機器内部空間が圧迫されることもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の配線用遮断器の外観斜視図である。
【
図5】実施形態の配線用遮断器の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は実施形態の配線用遮断器の外観斜視図であり、ベース10とカバー11とによって筐体が形成されている。12はカバー11の上面に突出するハンドル、13は負荷側端子、14は電源側端子である。
【0017】
図2は接点開放状態の断面図である。15は上部に電源側端子14が形成された固定接触子であり、その下部先端には固定接点16が設けられている。17は可動接触子であり、その先端には可動接点18が設けられている。可動接触子17の開放端19は上方に屈曲させてあり、より線20の一端が溶接されている。
【0018】
21は可動接触子17を押し下げるクロスバーであり、22は可動接触子17の下方に配置されて可動接触子17を上向きに弾発しているバネである。ハンドル12とクロスバー21との間には公知の開閉リンク機構23が配置されており、ハンドル12を
図2の位置から左方向に倒すとクロスバー21が押し下げられ、可動接触子17も押し下げられて可動接点18が固定接点16に接触する。
【0019】
より線20の他端はコイル24の下端に溶接されている。コイル24の上端は後述する負荷側の端子金具25に溶接されており、電源側端子14と負荷側端子13とを結ぶ電路を形成している。このため、可動接点18が固定接点16に接触したオン状態において電路に大電流が流れるとコイル24に強い磁界が発生し、アーマチュア26がコイル24の中心のダッシュポット27に吸着されて公知の引き外し機構が作動し、クロスバー21を上昇させる。これと同時に可動接触子17はバネ22によって押し上げられ、回路が遮断される。なお、電源側端子14、負荷側端子13は、電線固定面30、電線を固定するためのねじ、ナット等からなる箇所を示すものである。
【0020】
これらのコイル24とアーマチュア26は瞬時引き外し機構を構成するものであるが、このほかに筐体の内部には公知の過電流引き外し機構も収納されており、過電流が所定時間流れたときには引き外し機構を作動させて回路を遮断する。
【0021】
以上に説明した配線用遮断器の構成及び動作は従来のものと同様であるが、負荷側の端子金具25の構造は従来とは異なるので、以下に説明する。
【0022】
図3は負荷側の端子金具25の拡大図であり、
図4は3極分の端子金具25の斜視図である。この端子金具25は銅板を折り曲げ成形したもので、全体がL字形状である。その下部は水平な電線固定面30であり、ネジ式の負荷側端子13が設けられている。電線固定面30は圧着端子のアテになる部分であるから、十分な肉厚を持たせ、強度を持たせておくものとする。電線固定面30には、電線を直接接続、または電線を圧着端子を介して接続されるものである。
【0023】
31はこの電線固定面30から垂直に立ち上げた立上げ片である。
図3に示されるように、この立上げ片31の先端部には薄肉部32が形成されている。この実施形態では、薄肉部32は立上げ片31の上半部の外側に形成されている。端子金具25は電路を形成する部材であるから、薄肉部32の肉厚を極度に薄くすることは好ましくなく、その他の部分の肉厚の50~80%程度としてある。薄肉部32はプレス成型しても、切削加工してもよい。このようにプレスまたは切削により薄肉化しても、立上げ片31の高さが変化するおそれはなく、カバー11がガタツクことはない。
【0024】
図3に示されるように、カバー11の端部33はこの薄肉部32にすることで形成された空間35に、カバー11の端部33と薄肉部32に重なるように形成され、端子金具25の立上げ片30の上方及び側方を覆っている。この構造とすれば、従来のようにカバー11の端部33を薄肉に成形する必要がないため、カバー11の強度低下がない。また、カバー11の端部33を端子金具25の立上げ片30と密着させるか、至近距離に配置することができるので、カバー11の内部に形成される機器内部空間を広く確保することができる。
【0025】
前記したように、コイル24の上端は、負荷側の端子金具25の薄肉部32の反対面に溶接されている。薄肉部は厚肉部よりも熱容量が小さく加熱され易いので、溶接を容易に行える利点がある。なお、薄肉部32にすることで形成された空間35に、カバー11の端部33と薄肉部32に重なるように形成した面とは反対側はフラット面に形成しているため、機器内部空間を広く確保することができる。
【0026】
図5は実施形態の配線用遮断器の水平断面図、
図6はその負荷側の端子金具25の付近の拡大図である。
図6に明示されているように、ベース10には端子金具25を左右両側から挟止する挟止部34が形成されている。端子金具25はコ字状の挟止部34内に落とし込むように取り付けられる。
【0027】
このように端子金具25を左右から保持させる構造とすれば、端子金具25のガタツキを確実に防止できるうえ、圧着端子のアテになる部分を補強することができる。
【0028】
以上に説明したように、本発明によれば、従来のようにカバー11の強度を損なうことなく、カバー11の内部に形成される機器内部空間を広く確保することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ベース
2 移動規制用の壁部
3 立上げ片
4 カバー
5 立上げ片
6 カバー
7 カバーの端部
8 瞬時引き外し装置
10 ベース
11 カバー
12 ハンドル
13 負荷側端子
14 電源側端子
15 固定接触子
16 固定接点
17 可動接触子
18 可動接点
19 開放端
20 より線
21 クロスバー
22 バネ
23 開閉リンク機構
24 コイル
25 端子金具
26 アーマチュア
27 ダッシュポット
30 電線固定面
31 立上げ片
32 薄肉部
33 カバーの端部
34 挟止部