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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】圃場水管理システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
A01G25/00 501D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018243961
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020103099
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】原田 潤
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-275684(JP,A)
【文献】特開2017-192368(JP,A)
【文献】特開平09-156664(JP,A)
【文献】特開平07-250412(JP,A)
【文献】特開2015-229732(JP,A)
【文献】特開2017-192366(JP,A)
【文献】特開平09-065777(JP,A)
【文献】特開平09-322664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0237660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00
E02B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の水管理を行う圃場水管理システムであって、
前記圃場への給水または前記圃場からの排水を制御する変位機構を備える送水制御装置、
前記送水制御装置に取り付けられ、前記変位機構を駆動する電動アクチュエータ、および
前記圃場に設けられるセンサ端末を備え、
前記電動アクチュエータは、
本体ケース、
前記本体ケースの上に設けられる太陽電池パネル、
前記本体ケース内に設けられ、前記太陽電池パネルによって発電された電力を蓄電可能な蓄電池、
前記本体ケース内に設けられ、前記変位機構を駆動する駆動機構、
前記本体ケース内に設けられ、外部機器から送信される前記電動アクチュエータの制御信号をアンテナを介して受信可能な無線通信部、および
前記本体ケース内に設けられ、前記電動アクチュエータの動作を制御する制御部を備え、
前記センサ端末は、
配線を介して前記電動アクチュエータと接続され、当該電動アクチュエータから供給される電力によって駆動されて前記圃場の状態を検出すると共に、検出したデータを当該電動アクチュエータに出力するセンサ、および
前記センサを収容する有頂縦筒状の合成樹脂製の筐体を備え、
前記アンテナは、前記筐体内の上部空間に配置される、圃場水管理システム。
【請求項2】
前記アンテナは、前記本体ケースの上面よりも高い位置に配置される、請求項1記載の圃場水管理システム。
【請求項3】
前記アンテナと前記無線通信部とを接続する配線は、前記筐体と前記本体ケースとの間の外部空間において、前記センサと前記電動アクチュエータとを接続する配線と外面保護層によって一体化されている、請求項1または2記載の圃場水管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場水管理システムに関し、特にたとえば、圃場の水管理を遠隔操作または自動制御で行う圃場水管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圃場水管理システム(給排水システム)の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の技術では、圃場への給水または圃場からの排水を制御する変位機構を備える送水制御装置(給水バルブおよび落水口など)に、その変位機構を駆動する電動アクチュエータを取り付けることで、圃場の水管理を遠隔操作または自動制御で行うことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-193914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、電動アクチュエータは、ネットワーク上に設けられる外部機器との間で無線通信を行うための無線通信部を備えている。そして、この無線通信部のアンテナは、電動アクチュエータの本体ケースの内部、または太陽電池パネルを本体ケースに取り付けるための支柱の内部に配置される。
【0005】
しかしながら、電動アクチュエータの本体ケースまたは支柱の上には、太陽電池パネルとこれを支持するための金属製の保持体とが設けられる。すなわち、太陽電池パネルおよび保持体の直下にアンテナが配置されるので、電波の一部が太陽電池パネルおよび保持体によって遮断されてアンテナに電波が届き難くなり、無線通信が不安定になるという問題がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、圃場水管理システムを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、電動アクチュエータの無線通信の安定化を図ることができる、圃場水管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、圃場の水管理を行う圃場水管理システムであって、圃場への給水または圃場からの排水を制御する変位機構を備える送水制御装置、送水制御装置に取り付けられ、変位機構を駆動する電動アクチュエータ、および圃場に設けられるセンサ端末を備え、電動アクチュエータは、本体ケース、本体ケースの上に設けられる太陽電池パネル、本体ケース内に設けられ、太陽電池パネルによって発電された電力を蓄電可能な蓄電池、本体ケース内に設けられ、変位機構を駆動する駆動機構、本体ケース内に設けられ、外部機器から送信される電動アクチュエータの制御信号をアンテナを介して受信可能な無線通信部、および本体ケース内に設けられ、電動アクチュエータの動作を制御する制御部を備え、センサ端末は、配線を介して電動アクチュエータと接続され、当該電動アクチュエータから供給される電力によって駆動されて圃場の状態を検出すると共に、検出したデータを当該電動アクチュエータに出力するセンサ、およびセンサを収容する有頂縦筒状の合成樹脂製の筐体を備え、アンテナは、筐体内の上部空間に配置される、圃場水管理システムである。
【0009】
第1の発明では、圃場水管理システムは、給水栓または落水口などの送水制御装置、送水制御装置の変位機構を駆動する電動アクチュエータ、および圃場に設けられるセンサ端末を備え、圃場の水管理を遠隔操作または自動制御で行う。電動アクチュエータは、本体ケース、太陽電池パネル、蓄電池、駆動機構、無線通信部および制御部を備える。一方、センサ端末は、圃場の状態を検出する水位センサ等のセンサと、センサを収容する有頂縦筒状の合成樹脂製の筐体とを備える。センサ端末のセンサは、配線を介して電動アクチュエータと接続されて、電動アクチュエータから供給される電力によって駆動されると共に、検出したデータを電動アクチュエータに出力する。そして、電動アクチュエータが備える無線通信部のアンテナは、センサ端末の筐体内の上部空間に配置される。
【0010】
第1の発明によれば、電動アクチュエータが備える無線通信部のアンテナをセンサ端末の筐体内の上部空間に配置したので、アンテナで送受信される電波が太陽電池パネル等の影響を受け難くなる。したがって、電波状態が改善され、電動アクチュエータの無線通信の安定化を図ることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、アンテナは、本体ケースの上面よりも高い位置に配置される。
【0012】
第2の発明によれば、無線通信の安定化をより適切に図ることができる
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、アンテナと無線通信部とを接続する配線は、筐体と本体ケースとの間の外部空間において、センサと電動アクチュエータとを接続する配線と外面保護層によって一体化されている。
【0013】
第3の発明によれば、アンテナ用の配線に止水処理などの保護処理を別途施す必要がなくなる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、電動アクチュエータが備える無線通信部のアンテナをセンサ端末の筐体内の上部空間に配置するので、アンテナで送受信される電波が太陽電池パネル等の影響を受け難くなる。したがって、電波状態が改善され、電動アクチュエータの無線通信の安定化を図ることができる。
【0015】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の一実施例である圃場水管理システムを示す図解図である。
図2】圃場水管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
図3】給水栓の内部構造を示す図解図である。
図4】電動アクチュエータの内部構造を示す図解図である。
図5】電動アクチュエータを取り付けた給水栓を示す図解図である。
図6】電動アクチュエータを取り付けた落水口を示す図解図である。
図7】落水口に電動アクチュエータを取り付けるためのアダプタを示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および図2を参照して、この発明の一実施例である圃場水管理システム10(以下、単に「システム10」と言う。)は、圃場100に設けられる送水制御装置の一例である給水栓12と、送水制御装置の他の例である落水口14とを備える。システム10では、給水栓12および落水口14のそれぞれに電動アクチュエータ16が取り付けられ、圃場100の水管理を遠隔操作または予め記憶されたプログラムに基づく自動制御などによって行う。
【0018】
詳細は後述するように、この実施例では、給水栓12および落水口14の変位機構を駆動する電動アクチュエータとして、同じ構造を有する電動アクチュエータ16が用いられる。また、システム10は、圃場100の状態を検出するためのセンサ(水位センサ94等)を有するセンサ端末18を備え、センサ端末18で検出されたセンサ情報は、電動アクチュエータ16の制御部64に入力される。
【0019】
また、この実施例では、システム10は、畦畔によって区画された複数の耕作区を含むシステムとなっている。給水栓12および落水口14のそれぞれは、各耕作区に設置され、これらに取り付けられる各電動アクチュエータ16は、特定小電力無線規格(920MHz帯)に従った無線通信方法によって中継機120と無線通信可能に接続される。そして、各電動アクチュエータ16は、この中継機120およびネットワーク上に設けられた管理サーバ122等を経由して、ユーザが所有するスマートフォン、タブレット端末、PDAおよびPCのような遠隔操作端末124と無線通信可能に接続される。
【0020】
なお、この無線通信においては、クラウドコンピューティングを利用するとよい。たとえば、各電動アクチュエータ16で取得された情報(弁体30の開度および仕切体72の設定位置などの給水栓12および落水口14の状態に関する情報、およびセンサ端末18から受信した圃場100の水位などのセンサ情報など)を管理サーバ122の一例であるクラウドサーバに随時送信して記憶しておく。ユーザは、遠隔操作端末124からクラウドサーバにアクセスすることで、各電動アクチュエータ16で取得された情報を確認し、遠隔操作端末124を用いて各電動アクチュエータ16を遠隔操作することで、圃場100の水管理を行うことができる。
【0021】
以下、システム10が備える給水栓12、落水口14、電動アクチュエータ16およびセンサ端末18の構成について説明する。ただし、これらの具体的構成については、以下に例示するものに限定されず、この発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。
【0022】
図3に示すように、給水栓12は、用水パイプライン106から耕作区(圃場100)への給水を制御するための給水装置であって、弁軸および弁体などを含む変位機構を有する。この実施例では、一般的に広く普及している、弁軸の軸回転に伴い弁軸及び弁体が上下動する方式の給水栓を用いている。
【0023】
簡単に説明すると、給水栓12は、円筒状の弁箱20を備える。弁箱20の上半部は、ドーム状の飛散防止カバー22によって覆われており、弁箱20の側壁上部には、複数の吐水口24が周方向に並ぶように形成される。また、弁箱20の上端部には、内周面に雌ねじが形成された軸受26が設けられ、この軸受26には、飛散防止カバー22を貫通するように、外周面に雄ねじが形成された弁軸28が螺合されている。この弁軸28の下端には、下面に止水ゴム30aを有する円板状の弁体30が設けられる。また、弁箱20内の略中央部には、通水口32aを有する弁座32が設けられる。このような給水栓12において、弁軸28に対して軸線回りの回転力が加えられると、送りねじ機構によって弁軸28および弁体30が上下動し、弁座32の通水口32aが開閉される。すなわち、この実施例の給水栓12は、弁軸28の回転に伴い上下動する弁体30を含む変位機構を備える。
【0024】
上述のような給水栓12は、図1に示すように、たとえば、給水桝104内に配置され、農道102の下に敷設される用水パイプライン106から分岐して圃場100内まで延びる分岐管108の下流側端部(上端部)に取り付けられる。そして、給水栓12の上には、電動アクチュエータ16が取り付けられ、この電動アクチュエータ16によって給水栓12の変位機構(弁軸28および弁体30)が作動される。
【0025】
次に、電動アクチュエータ16の構成について説明する。図4および図5を参照して、電動アクチュエータ16は、円筒状の本体ケース40を備える。本体ケース40の大きさ、形状および材質などは、後述する内部機構を収容可能なものであれば特に限定されないが、この実施例では、呼び径が150mmの硬質ポリ塩化ビニル製の短管および管継手を組み合わせることによって本体ケース40を形成している。本体ケース40の上下方向の長さ(高さ寸法)は、たとえば800mmである。
【0026】
本体ケース40の上には、太陽電池パネル42が着脱可能に取り付けられる。太陽電池パネル42は、屈曲板状の金属製の保持体44によって所定角度となるように支持される。
【0027】
また、本体ケース40の内部には、電子基板48と、蓄電池50と、モータ52およびメインギア54等を含む駆動機構とが収容される。
【0028】
電子基板48には、CPUおよびメモリ等を含む制御部64、および無線通信モジュール等を含む無線通信部66などが配設される(図2参照)。制御部64には、モータ52、操作パネル60、無線通信部66および水位センサ94等が電気的に接続される。制御部64のCPUは、電動アクチュエータ16の全体制御を司り、モータ52等の駆動を制御する。メモリは、ROM、RAMおよびHDDなどを包括的に示したものであり、電動アクチュエータ16の動作を制御する制御プログラムを記憶したり、CPUが動作する際のワークエリアとして機能したりする。また、無線通信部66は、たとえば同軸ケーブルによってアンテナ68と接続され、このアンテナ68を介して中継機120などの外部機器と無線通信を行う。
【0029】
蓄電池50は、太陽電池パネル42によって発電された電力を蓄電する。モータ52は、蓄電池50に蓄えられた電力によって駆動される。このモータ52の出力軸52aの先端部には、小ギア56が設けられており、メインギア54は、この小ギア56と連結されることで、モータ52からの駆動力を受けて軸線回りに回転する。
【0030】
メインギア54は、両ボス型のギアであり、メインギア54の軸部には、略円柱状の回転軸58が挿通される。この回転軸58の下端部には、給水栓12の弁軸28の上端部と連結されるカップリング部58aが形成される。また、メインギア54の軸部の内周面には、軸方向に沿って延びるキー溝54aが形成され、回転軸58の外周面には、キー溝54aと嵌合される滑りキー58bが軸方向に沿って延びるように形成される。これによって、回転軸58は、メインギア54が回転すると共に回転し、かつメインギア54の軸部に対して軸方向に摺動可能となる。
【0031】
また、本体ケース40の外側面には、手動(電動手動)でモータ52を作動させるための操作パネル60が設けられる。操作パネル60には、主電源スイッチ、上昇ボタン、下降ボタン、および電動アクチュエータ16の動作モード(遠隔モード、自動モードまたは手動モード等)を切り替えるための選択ボタン等が適宜設けられる。この操作パネル60には、センサ端末18から延びる配線を接続するための接続端子なども設けられる。また、本体ケース40の下端部には、回転軸58などの動作確認および清掃などの維持管理作業を行うための点検口62が形成される。
【0032】
図5に示すように、給水栓12の上に電動アクチュエータ16を取り付ける際には、給水栓12の飛散防止カバー22上に電動アクチュエータ16の本体ケース40を載置した状態で、飛散防止カバー22および軸受26と本体ケース40の底壁とがボルト止めされる。また、給水栓12の弁軸28の上端部と電動アクチュエータ16の回転軸58のカップリング部58aとが回転不可に連結される。
【0033】
上述のような電動アクチュエータ16を取り付けた給水栓12においては、たとえば、ユーザが遠隔操作端末124を用いて管理サーバ122にアクセスし、給水栓12を全閉、全開または任意の開度とするため等の操作指示(制御信号)を送信すると、この操作指示に応じた制御信号が管理サーバ122から中継機120を介して電動アクチュエータ16に対して送信される。電動アクチュエータ16の制御部64は、無線通信部66が受信した制御信号に応じてモータ52を駆動させる。このモータ52の駆動力は、メインギア54に伝達されて、メインギア54と共に回転軸58が回転する。これにより、回転軸58に固定的に連結された給水栓12の弁軸28に対して、回転力が付与される。回転力が加えられた弁軸28は、自身と軸受26との送りねじ機構によって上下動され、弁体30が全開位置および全閉位置などに移動される。
【0034】
また、各電動アクチュエータ16で取得された情報(給水栓12の状態に関する情報、およびセンサ端末18から受信したセンサ情報など)は、定期的に、電動アクチュエータ16の無線通信部66から中継機120を介して管理サーバ122に送信される。
【0035】
続いて、落水口14の構成について説明する。図1および図6に示すように、落水口14は、圃場100からの排水を制御するための排水装置であって、仕切体などを含む変位機構を有する。この実施例では、落水口14として、水位設定機能を有するものが用いられる。
【0036】
簡単に説明すると、落水口14は、短円筒状のゴム製の受枠部材70と、受枠部材70に嵌入されて、受枠部材70によって上下動可能に支持される円筒状の仕切体72とを備える。この仕切体72の上端開口は、排水口として機能する。そして、仕切体72に対して上下方向(軸方向)に力が加えられると、仕切体72が上下動して、排水口が任意の高さに調整される。
【0037】
このような落水口14は、図1に示すように、たとえば排水桝110内に配置され、排水路112まで延びる排水管114の上流側端部に取り付けられる。そして、落水口14には、電動アクチュエータ16が取り付けられ、電動アクチュエータ16によって落水口14の変位機構(仕切体72)が上下動される。
【0038】
なお、落水口14に電動アクチュエータ16を取り付ける際には、アダプタ74が用いられる。上述のように、落水口14の仕切体72は、上下動可能に設けられているだけであり、それ自体は回転力を受けても上下動しない。このため、電動アクチュエータ16の回転軸58の回転力は、上下方向(軸方向)の力に変換して、仕切体72に伝達する必要がある。そこで、ねじ機構によって上下動する可動部82をアダプタ74に設け、この可動部82を介して回転軸58と仕切体72とを連結するようにしている。
【0039】
具体的には、図6および図7に示すように、アダプタ74は、排水桝110上に電動アクチュエータ16を載置するための平板状の台座76を備える。台座76の中央部には、挿通孔が形成され、この挿通孔に円筒状の保持部78が設けられる。この保持部78には、電動アクチュエータ16の回転軸58と連結される連結軸80の上部が回転可能に挿通される。また、連結軸80の下部80aの外周面には、雄ねじが形成され、この連結軸80の下部80aには、内周面に雌ねじが形成された円筒状の可動部82が螺合される。この可動部82には、可動部82に対して仕切体72を連結固定するための固定部84が設けられる。さらに、可動部82が連結軸80と共に回転(連れ回り)することを防止するための棒状の回り止め部86が、固定部84と台座76とを連結するように設けられる。このようなアダプタ74において、連結軸80に対して軸線回りの回転力が加えられると、送りねじ機構によって可動部82および固定部84が上下動する。
【0040】
アダプタ74を用いて落水口14に電動アクチュエータ16を取り付けるときには、排水桝110の上端部に台座76を取り付けると共に、仕切体72に対して固定部84の端部をボルト止めする。また、台座76上に電動アクチュエータ16を載置して台座76と本体ケース40の底壁とをボルト止めすると共に、連結軸80の上端部を回転軸58のカップリング部58aに対して回転不可に連結する。
【0041】
上述のような電動アクチュエータ16を取り付けた落水口14においては、たとえば、ユーザが遠隔操作端末124を用いて管理サーバ122にアクセスし、落水口14における排水高さ(仕切体72の上端開口の高さ位置)を変更するための操作指示を送信すると、この操作指示に応じた制御信号が管理サーバ122から中継機120を介して電動アクチュエータ16に対して送信される。電動アクチュエータ16の制御部64は、受信した制御信号に応じてモータ52を駆動させる。このモータ52の駆動力は、メインギア54に伝達されて、メインギア54および回転軸58が回転する。これにより、回転軸58に固定的に連結されたアダプタ74の連結軸80に対して、回転力が付与される。連結軸80に対して軸線回りの回転力が加えられると、連結軸80と可動部82との送りねじ機構によって可動部82が上下動し、これに伴い、可動部82に連結固定された仕切体72が所定の高さ位置に移動される。
【0042】
続いて、センサ端末18の構成について説明する。図1に示すように、センサ端末18は、硬質塩化ビル等の合成樹脂によって形成される有頂縦筒状の筐体90を備え、給水栓12および落水口14の周辺位置において圃場100に設けられる。センサ端末18は、たとえば、圃場100に突き刺した棒状の固定具92に筐体90を連結固定することで、圃場100に立設される。筐体90の呼び径は、たとえば50mmである。また、筐体90の上下方向の長さ(高さ寸法)は、筐体90の上部が電動アクチュエータ16の本体ケース40の上面よりも上方に延びる大きさに設定されることが好ましく、たとえば1500~2000mmに設定される。
【0043】
センサ端末18の筐体90には、圃場100の状態を検出する各種のセンサが収容される。この実施例では、センサ端末18は、圃場水位を検出する水位センサ94を備える。水位センサ94としては、たとえば、用水の静電容量または圧力の変化を利用して圃場水位を計測するセンサを用いるとよい。
【0044】
ただし、センサ端末18には、水位センサ94と共に、或いは水位センサ94の代わりに、圃場100に溜められた用水の温度を検出する水温センサ、気温を検出する気温センサ、湿度を検出する湿度センサ、気圧を検出する圧力センサ、土壌水分を検出する土壌水分センサ、土壌の温度を検出する地温センサ等のセンサが適宜設けられてもよい。また、全ての電動アクチュエータ16に対して同種のセンサが接続される必要はなく、接続されるセンサの種類および数などが電動アクチュエータ16によって異なっていてもよいし、給水栓12および落水口14のいずれか一方に取り付けられる電動アクチュエータ16にのみ、センサを接続することもできる。
【0045】
センサ端末18に設けられるセンサ(この実施例では水位センサ94)は、たとえばRS-485規格に準拠した信号ケーブルによって、電動アクチュエータ16の制御部64と接続される。そして、センサ端末18が備えるセンサで検出された圃場水位などのセンサ情報は、電動アクチュエータ16の制御部64に入力される。また、センサ端末18が備えるセンサを作動させるための電源としては、電動アクチュエータ16の蓄電池50に蓄えられた電力が用いられ、この電力は制御部64からセンサに対して供給される。センサ端末18の電源として電動アクチュエータ16が備える太陽電池パネル42および蓄電池50を用いることで、センサ端末18に乾電池などの電源を別途設ける必要がなくなり、電池交換などの手間が不要となる。
【0046】
そして、この実施例では、電動アクチュエータ16が備える無線通信部66のアンテナ68が、センサ端末18の筐体90内の上部空間に配置される。すなわち、電動アクチュエータ16を駆動するための制御信号を管理サーバ122等の外部機器から受信可能な無線通信部66のアンテナ68は、太陽電池パネル42および保持体44の直下となる本体ケース40内ではなく、本体ケース40から離れた筐体90内に配置される。これにより、アンテナ68で送受信される電波が太陽電池パネル42および保持体44の影響を受け難くなるので、電波状態が改善され、電動アクチュエータ16の無線通信の安定化を図ることができる。また、アンテナ68を筐体90内に配置することで、アンテナ68の耐候性も保持される。
【0047】
ここで、図1に示すように、圃場100には、農道102を挟んで段差状に配置される複数の耕作区を含むものがある。このような場合、たとえば、農道102の下に敷設される用水パイプライン106から両側の耕作区(圃場100)に用水が供給される。つまり、圃場100の用水パイプライン106側の端部に給水栓12が配置され、その反対側の端部に落水口14が配置される。そして、中継機120は、周辺で最も高位置にある農道102上に配置される。このような圃場100では、中継機120が設置された農道102とほぼ同じ高さ位置にある耕作区においては、通信障害は生じ難い。一方、中継機120が設置された農道102よりも低い位置にある耕作区においては、従来のように電動アクチュエータ16の本体ケース40内にアンテナ68を設置していると、斜面近くに配置される(つまり中継機120から見えない位置に配置される)給水栓12の電動アクチュエータ16において通信障害が発生し易くなる。中継機120が低位置の農道102上に配置される場合に、高位置の圃場100に設置される電動アクチュエータ16についても同様のことが言える。
【0048】
そこで、上記のような通信障害の生じ易い位置に設置される電動アクチュエータ16については特に、アンテナ68をセンサ端末18の筐体90内に設けるに際して、筐体90の高さ寸法を予め大きく設定しておくと共に、アンテナ68を本体ケース40の上面よりも高い位置に配置することが好ましく、太陽電池パネル42の上端よりも高い位置に配置することがより好ましい。このようにアンテナ68を背の高いセンサ端末18の筐体90内の高い位置に配置することによって、電波状態がより改善されるので、上記のような通信障害の生じ易い位置に設置される電動アクチュエータ16においても適切に電波を送受信でき、電動アクチュエータ16の無線通信をより安定化させることができる。
【0049】
また、上述のように、無線通信部66とアンテナ68とは、同軸ケーブル等の配線によって接続され、電動アクチュエータ16の制御部64と水位センサ94とは、信号ケーブル等の配線によって接続されるが、これらの配線は、本体ケース40と筐体90との間の外部空間において、耐候性および止水性を有する外面保護層によって一体化して1本の配線96としておくことが好ましい。これにより、アンテナ68用の配線に止水処理などの保護処理を別途施す必要がなくなる。
【0050】
以上のように、この実施例によれば、電動アクチュエータ16が備える無線通信部66のアンテナ68をセンサ端末18の筐体90内の上部空間に配置したので、アンテナ68で送受信される電波が太陽電池パネル42および保持体44の影響を受け難くなる。したがって、電波状態が改善され、電動アクチュエータ16(延いてはシステム10)の無線通信の安定化を図ることができる。また、電波状態が改善されることで、システム10の適用範囲を拡大することもできる。
【0051】
なお、上述の実施例では、システム10は、送水制御装置の一例である給水栓12および他の例である落水口14の双方を備えているが、給水栓12および落水口14のいずれか一方を備えているだけでもよい。また、システム10が給水栓12および落水口14の双方を備えている場合でも、センサ端末18の筐体90内に電動アクチュエータ16の無線通信部66のアンテナ68を配置する構成は、給水栓12側および落水口14側のいずれか一方の電動アクチュエータ16のみに採用することもできる。なお、給水栓12および落水口14のいずれか一方の電動アクチュエータ16のみにセンサ端末18が接続されている場合には、その一方のセンサ端末18の筐体90内に電動アクチュエータ16の無線通信部66のアンテナ68が配置されることとなる。
【0052】
また、上述の実施例では、電動アクチュエータ16の無線通信部66は、中継機120を介して管理サーバ122等と無線通信するようにしたが、中継機120は、必ずしも設置される必要はない。たとえば、無線通信部66は、中継機120を介さずに、管理サーバ122または遠隔操作端末124等の外部機器と無線通信を行い、電動アクチュエータ16の制御信号を受信するようにしてもよい。
【0053】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 …圃場水管理システム
12 …給水栓(送水制御装置)
14 …落水口(送水制御装置)
16 …電動アクチュエータ
18 …センサ端末
30 …弁体
40 …本体ケース
42 …太陽電池パネル
50 …蓄電池
52 …モータ
54 …メインギア
58 …回転軸
72 …仕切体
90 …筐体
94 …水位センサ
96 …配線
100 …圃場
120 …中継機
122 …管理サーバ
124 …遠隔操作端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7