(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】尿素誘導体
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20220628BHJP
A61K 31/277 20060101ALI20220628BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20220628BHJP
A61K 31/402 20060101ALI20220628BHJP
A61K 31/4453 20060101ALI20220628BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220628BHJP
C07C 275/28 20060101ALI20220628BHJP
C07C 275/34 20060101ALI20220628BHJP
C07D 207/10 20060101ALI20220628BHJP
C07D 295/135 20060101ALI20220628BHJP
C07D 333/36 20060101ALI20220628BHJP
A61K 9/10 20060101ALN20220628BHJP
A61K 9/20 20060101ALN20220628BHJP
A61K 9/48 20060101ALN20220628BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/277
A61K31/381
A61K31/402
A61K31/4453
A61P13/12
A61P43/00 111
C07C275/28 CSP
C07C275/34
C07D207/10
C07D295/135
C07D333/36
A61K9/10
A61K9/20
A61K9/48
(21)【出願番号】P 2018543962
(86)(22)【出願日】2017-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2017036272
(87)【国際公開番号】W WO2018066646
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2016197867
(32)【優先日】2016-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146581
【氏名又は名称】石橋 公樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113583
【氏名又は名称】北野 範子
(74)【代理人】
【識別番号】100161160
【氏名又は名称】竹元 利泰
(74)【代理人】
【識別番号】100119622
【氏名又は名称】金原 玲子
(72)【発明者】
【氏名】曽根田 剛
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇二
(72)【発明者】
【氏名】松本 康嗣
(72)【発明者】
【氏名】田中 奈緒美
(72)【発明者】
【氏名】福永 大地
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502924(JP,A)
【文献】特表2016-512194(JP,A)
【文献】特表2014-534216(JP,A)
【文献】特開昭58-188864(JP,A)
【文献】REGISTRY(STN)[online],2014年01月20日,[検索日 2021.9.29],CAS登録番号:1525686-58-1
【文献】REGISTRY(STN)[online],2014年01月10日,[検索日 2021.9.29],CAS登録番号:1516378-94-1
【文献】REGISTRY(STN)[online],2014年01月16日,[検索日 2021.9.29],CAS登録番号:1521451-59-1
【文献】REGISTRY(STN)[online],2014年01月06日,[検索日 2021.9.29],CAS登録番号:1512071-67-8
【文献】REGISTRY(STN)[online],2012年12月27日,[検索日 2021.9.29],CAS登録番号:1505360-65-5
【文献】REGISTRY(STN)[online],2014年01月10日,[検索日 2021.9.29],CAS登録番号:1516916-40-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/198
A61K 31/277
A61K 31/381
A61K 31/402
A61K 31/4453
A61P 13/12
A61P 43/00
C07C 275/28
C07C 275/34
C07D 207/10
C07D 295/135
C07D 333/36
A61K 9/10
A61K 9/20
A61K 9/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
[上記式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、C
1-C
6アルキル基、ハロゲノC
1-C
6アルキル基又はC
3-C
6シクロアルキル基であり、Arは、置換されてよいフェニル基(当該置換基は、
フッ素原子、塩素原子、シアノ基、C
1-C
6アルキル基、ハロゲノC
1-C
6アルキル基、シアノC
1-C
6アルキル基、C
3-C
6シクロアルキル基、シアノC
3-C
6シクロアルキル基、C
1-C
6アルコキシ基、ハロゲノC
1-C
6アルコキシ基、C
1-C
6アルキルチオ基、ハロゲノC
1-C
6アルキルチオ基、ジ(C
1-C
3アルキル)アミノ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基から選ばれる同一又は異なった1~2個の置換基である。)又は置換されてよいチエニル基(当該置換基は、ハロゲン原子、シアノ基又はC
1-C
6アルキル基である。)である。]で表される化合物又はその薬理上許容される塩を有効成分として含有する
、血中のインドキシル硫酸を低減するための医薬組成物。
【請求項2】
一般式(I)
【化2】
[上記式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、C
1-C
6アルキル基又はC
3-C
6シクロアルキル基であり、Arは、置換されてよいフェニル基(当該置換基は、
フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ハロゲノC
1-C
6アルキル基、シアノC
1-C
6アルキル基、シアノC
3-C
6シクロアルキル基、ハロゲノC
1-C
6アルコキシ基、ハロゲノC
1-C
6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基から選ばれる同一又は異なった1~2個の置換基である。)又は5位がハロゲン原子で置換された2-若しくは3-チエニル基である。]で表される化合物又はその薬理上許容される塩を有効成分として含有する請求項1に記載の
、血中のインドキシル硫酸を低減するための医薬組成物。
【請求項3】
一般式(I)
【化3】
[上記式中、(A)Arは、式
【化4】
で表される基であり、R
1はメチル基であり、R
2はエチル基又はC
4-C
6アルキル基であり、nは1又は2であり、Xは、互いに独立して、
フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ハロゲノC
1-C
6アルキル基、シアノC
1-C
6アルキル基、シアノC
3-C
6シクロアルキル基、ハロゲノC
1-C
6アルコキシ基、ハロゲノC
1-C
6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である;
(B)Arは、式
【化5】
で表される基であり、R
1はC
3-C
6シクロアルキル基であり、R
2はC
2-C
6アルキル基又はC
3-C
6シクロアルキル基であり、nは0、1又は2であり、Xは、互いに独立して、
フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ハロゲノC
1-C
6アルキル基、シアノC
1-C
6アルキル基、シアノC
3-C
6シクロアルキル基、ハロゲノC
1-C
6アルコキシ基、ハロゲノC
1-C
6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である;
(C)Arは、式
【化6】
で表される基であり、R
1及びR
2は、同一又は異なって、C
2-C
6アルキル基であり、
R
3
は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基であり、R
4
は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ハロゲノC
1-C
6アルキル基、シアノC
2-C
6アルキル基、シアノC
3-C
6シクロアルキル基、ハロゲノC
1-C
6アルコキシ基、ハロゲノC
1-C
6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基であり、但し、
R
3
が水素原子の場合、R
4
はフッ素原子、塩素原子又はシアノ基ではない;又は、
(D)Arは、式
【化7】
で表される基であり、R
1及びR
2は、同一又は異なって、C
1-C
6アルキル基又はC
3-C
6シクロアルキル基であり、R
5は、水素原子であり、R
6は、ハロゲン原子である。]で表される化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項4】
一般式(I-1)
【化8】
[上記式中、R
1はメチル基であり、R
2はエチル基又はC
4-C
6アルキル基であり、nは1又は2であり、Xは、互いに独立して、
フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ハロゲノC
1-C
6アルキル基、シアノC
1-C
6アルキル基、シアノC
3-C
6シクロアルキル基、ハロゲノC
1-C
6アルコキシ基、ハロゲノC
1-C
6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である。]で表される、請求項3に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項5】
一般式(I-2)
【化9】
[上記式中、R
1はメチル基であり、R
2はエチル基又はC
4-C
6アルキル基であり、R
3は、水素原子、
フッ素原子、塩素原子又はシアノ基であり、R
4は、
フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ハロゲノC
1-C
6アルキル基、シアノC
1-C
6アルキル基、シアノC
3-C
6シクロアルキル基、ハロゲノC
1-C
6アルコキシ基、ハロゲノC
1-C
6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である。]で表される、請求項4に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項6】
R
2が、エチル基である、請求項4又は5に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項7】
R
3が、水素原子、フッ素原子又はシアノ基である、請求項5又は6に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項8】
R
4が、
フッ素原子、塩素原子、2,2,2-トリフルオロエチル基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基である、請求項5~7のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項9】
一般式(I-3)
【化10】
[上記式中、R
1はC
3-C
6シクロアルキル基であり、R
2はC
2-C
6アルキル基又はC
3-C
6シクロアルキル基であり、nは0、1又は2であり、Xは、互いに独立して、
フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ハロゲノC
1-C
6アルキル基、シアノC
1-C
6アルキル基、シアノC
3-C
6シクロアルキル基、ハロゲノC
1-C
6アルコキシ基、ハロゲノC
1-C
6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である。]で表される、請求項3に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項10】
一般式(I-4)
【化11】
[上記式中、R
1はC
3-C
6シクロアルキル基であり、R
2はC
2-C
6アルキル基又はC
3-C
6シクロアルキル基であり、R
3は、水素原子、
フッ素原子、塩素原子又はシアノ基であり、R
4は、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC
1-C
6アルキル基、シアノC
1-C
6アルキル基、シアノC
3-C
6シクロアルキル基、ハロゲノC
1-C
6アルコキシ基、ハロゲノC
1-C
6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である。]で表される、請求項9に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項11】
R
1が、シクロプロピル基である、請求項9又は10に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項12】
R
2が、エチル基又はシクロプロピル基である、請求項9~11のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項13】
R
3が、水素原子であり、R
4が、フッ素原子、シアノ基、シアノメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基である、請求項10~12のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項14】
一般式(I-4)
【化12】
[上記式中、R
1
はC
3
-C
6
シクロアルキル基であり、R
2
はC
2
-C
6
アルキル基又はC
3
-C
6
シクロアルキル基であり、R
3が、シアノ基であり、R
4が、水素原子である
。]で表される、請求項9に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項15】
R
1
が、シクロプロピル基である、請求項14に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項16】
R
2
が、エチル基又はシクロプロピル基である、請求項14に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項17】
一般式(I-6)
【化13】
[上記式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、C
2-C
6アルキル基であり、R
3は、水素原子、
フッ素原子、塩素原子又はシアノ基であり、R
4は、
フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ハロゲノC
1-C
6アルキル基、シアノC
2-C
6アルキル基、シアノC
3-C
6シクロアルキル基、ハロゲノC
1-C
6アルコキシ基、ハロゲノC
1-C
6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である。但し、R
3が水素原子である場合、R
4は
フッ素原子、塩素原子又はシアノ基ではない。]で表される、
請求項3に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項18】
R
1及びR
2が、同一又は異なって、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基である、
請求項17に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項19】
R
1及びR
2が、エチル基とエチル基、又は、エチル基とプロピル基、である、
請求項17に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項20】
R
1及びR
2が、共にエチル基である、
請求項17に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項21】
R
3が、水素原子である、
請求項17~20のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項22】
R
4が、トリフルオロメチル基、モノフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチルチオ基、フェニル基又は2-フルオロフェニル基である、
請求項17~20のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項23】
一般式(I-7)
【化14】
[上記式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、C
1-C
6アルキル基又はC
3-C
6シクロアルキル基であり、R
5は、水素原子であり、R
6は、ハロゲン原子である。]で表される、請求項3に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項24】
R
1及びR
2が、共にエチル基である、
請求項23に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項25】
R
6が、塩素原子である、
請求項23又は24に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項26】
ジシクロプロピル({[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)酢酸、
2-シクロプロピル-2-({[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
2-シクロプロピル-2-({[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸、
N-{[4-(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
2-シクロプロピル-2-[(フェニルカルバモイル)アミノ]ブタン酸、
2-シクロプロピル-2-{[(4-フルオロフェニル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸、
N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
、及び、
2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸からなる群から選ばれる、請求項3に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項27】
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン
、
(2R)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸、
(2S)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸、及び
2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸からなる群から選ばれる、請求項3に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【請求項28】
請求項3~27のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩を有効成分として含有する
、血中のインドキシル硫酸を低減するための医薬組成物。
【請求項29】
銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、
面間隔dが7.51、7.33、6.67、6.15、5.32、 5.24、 4.98、 4.79、3.96、及び、 3.59オングストロームに特徴的なピークを示す、N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリンの結晶、
面間隔が9.52、6.10、5.45、 5.29、 4.94、 4.89、4.75、3.80、3.48、及び、 3.44オングストロームに特徴的なピークを示す、N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリンの結晶、
面間隔が15.60、6.23、5.68、 5.34、5.20、 4.59、4.53、3.83、 3.37、及び、3.15オングストロームに特徴的なピークを示す、N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリンの結晶
、
面間隔が11.30、 8.35、 7.66、 5.64、 5.46、 5.22、 4.73、 4.50、 4.35、及び、4.02オングストロームに特徴的な主ピークを示す、(+)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸の結晶、
面間隔が15.66、11.62、 11.30、 8.35、 7.80、 6.84、 5.45、5.22、 4.5、及び、 4.02ングストロームに特徴的なピークを示す、(-)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸の結晶、および
面間隔が15.82、 9.42、 6.53、 5.85、 5.48、 5.24、 4.69、4.46、3.58、及び、 3.12オングストロームに特徴的なピークを示す、2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸の結晶からなる群から選ばれる、請求項3に記載の化合物の結晶。
【請求項30】
請求項29に記載の化合物の結晶のいずれか1つを有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項31】
2-エチル-2-[(フェニルカルバモイル)アミノ]ブタン酸、
2-{[3-(クロロフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸、
2-{[4-(クロロフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸、
2-エチル-2-{[(4-フルオロフェニル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸、
2-エチル-2-{[(3-フルオロフェニル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸、
2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸、
2-({[4-(シアノメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)-2-エチルブタン酸、及び、
2-エチル-2-[(チオフェン-3-イルカルバモイル)アミノ]ブタン酸からなる群から選ばれる化合物又はその薬理上許容される塩を有効成分として含有する請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項32】
医薬組成物が、トリプトファナーゼ阻害薬である、請求項1、2、
28、30又は31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
医薬組成物が、血中のインドキシル硫酸を低減するための医薬組成物である、
請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項34】
医薬組成物が、腎機能の悪化を抑制するための医薬組成物である、請求項1、2、
28、30又は31に記載の医薬組成物。
【請求項35】
医薬組成物が、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の予防若しくは治療のための、請求項1、2、
28、30又は31に記載の医薬組成物。
【請求項36】
医薬組成物が、慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行を遅延させるための医薬組成物である、請求項1、2、
28、30又は31に記載の医薬組成物。
【請求項37】
医薬組成物が、腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化を抑制するための医薬組成物である、請求項1、2、
28、30又は31に記載の医薬組成物。
【請求項38】
請求項3~27のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、
請求項29に記載の化合物の結晶を有効成分として含有する、血中のインドキシル硫酸の低減剤。
【請求項39】
請求項3~27のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、
請求項29に記載の化合物の結晶を有効成分として含有する、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の予防剤若しくは治療剤。
【請求項40】
請求項3~27のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、
請求項29に記載の化合物の結晶を有効成分として含有する、慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行遅延剤。
【請求項41】
請求項3~27のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、
請求項29に記載の化合物の結晶を有効成分として含有する、腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化抑制剤。
【請求項42】
血中のインドキシル硫酸を低減するための医薬組成物の製造のための、
請求項3~27のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、
請求項29に記載の化合物の結晶の使用。
【請求項43】
血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の予防若しくは治療のための医薬組成物の製造のための、
請求項42に記載の使用。
【請求項44】
慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行の遅延のための医薬組成物の製造のための、
請求項42に記載の使用。
【請求項45】
腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化の抑制のための医薬組成物の製造のための、
請求項42に記載の使用。
【請求項46】
疾患の予防若しくは治療のための方法における使用のための、
請求項3~27のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、
請求項29に記載の化合物の結晶。
【請求項47】
疾患が、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患である、
請求項46に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたトリプトファナーゼ阻害作用を有する尿素誘導体又はその薬理上許容される塩に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎臓病は、社会の大きな問題である。慢性腎臓病患者に対する現在の薬物療法はアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬をはじめとするレニン-アンジオテンシン系の阻害薬が第一選択薬、カルシウム拮抗薬や利尿薬が第2または第3選択薬になっており、さらに合併している疾患や原疾患をもとに高尿酸血症治療薬、高脂血症治療薬、糖尿病治療薬、ステロイド・免疫抑制薬、抗血小板薬・抗凝固薬、高リン血症治療薬、赤血球造血刺激因子製剤、鎮痛剤、抗不整脈薬、抗うつ薬、アルツハイマー型認知症治療薬、パーキンソン病薬、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗アレルギー薬、抗菌薬等多くの経口薬が処方されている。しかしながら、より優れたこれらの疾患の治療薬の開発が望まれている。
【0003】
腸内細菌のトリプトファナーゼによってトリプトファンを基質として生成するインドールは慢性腎臓病(Chronic kidney disease)の病態進行を加速化させる尿毒素インドキシル硫酸(IS)の前駆体である。インドールから水酸化・硫酸化を経て生成するインドキシル硫酸は腎臓の機能を悪化させ末期腎不全(腎代替療法移行や腎移植)への移行を促進するばかりでなく、血管の劣化や機能障害を引き起こすことによって心血管疾患さらには死亡率の上昇を招き、更に神経、骨、血球、骨格筋等各種臓器の障害や尿毒症症状に深く関連する尿毒素である。血中インドキシル硫酸を低減可能な医薬品としては、トリプトファナーゼによって生成するインドールを消化管管腔内で吸着し、糞とともにこれを排泄させる球形吸着炭が販売されている。しかしながら球形吸着炭の血中インドキシル硫酸低下作用は特にヒトにおいて弱く、血中のインドキシル硫酸の濃度を健常者の濃度レベルまで下げることは不可能であり、不十分である(非特許文献1)。
【0004】
腎臓の機能障害に基づく腎移植もしくは透析への移行は世界レベルで増加しており、例えば日本における透析患者数は現在31万人を超え、なお増加を続けている。透析は一般的に週3回の通院が必要で透析そのものにも時間を要する。また透析は医療経済の面でも負担が大きい。透析の代わりに腎移植も考慮されるがドナー数には限りがあるので、腎機能を少しでも長く温存することは患者の生命維持に関わる重要な解決すべき課題である。つまり慢性腎不全の保存療法期患者の腎代替療法移行を遅延すること、さらに腎移植のドナーが現れるまで時間を稼ぐことが非常に重要になっている。また腎代替療法移行後においても残存腎機能の悪化を抑制し、尿量を確保することは水分調節等の意味においても重要になっている。インドキシル硫酸は腎臓の尿細管上皮細胞でROS(Reactive oxygen species)の生成を促進し細胞老化を促進する(非特許文献2)。更に腎糸球体の上皮細胞においてもAhR(Aryl hydrocarbon receptor)を介して障害を及ぼすことが知られている(非特許文献3)ことから、インドキシル硫酸の産生を低減し、これら腎臓の細胞への影響を高度に減じることによって腎機能の悪化を抑制し、腎臓を温存することが期待される。
【0005】
特許文献1及び2に、N-ホルミルペプチド受容体のモジュレーター作用を有するアリール尿素誘導体が記載されているが、後記の本願発明の式(I)の化合物、又は、その塩の具体的な化合物の開示や示唆はない。
【0006】
【0007】
また、特許文献3に、脂肪酸結合タンパク質(FABP)4及び/又は5を阻害する尿素誘導体が記載されているが、後記の本願発明の式(I)の化合物、又は、その塩の具体的な化合物の開示や示唆はない。
【0008】
【0009】
[式中、R1及びR2はそれらが結合する炭素原子と一緒になってシクロアルキル基を形成する。]
また、AKos Consulting and Solutions Deutschland GmbH、又は、Aldlab Chemicals, LLC、又は、Aurora Fine Chemicals LLC、又は、Shanghai Chemhere Co., Ltd.などにより、種々の試薬が市販されているが、本願発明のトリプトファナーゼ阻害作用などの医薬用途は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO2014/138037号パンフレット
【文献】WO2013/070600号パンフレット
【文献】WO2014/146995号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【文献】Schulman-G AJKD,VOL 47, NO 4,2006
【文献】Shimizu-H, Am J Physiol Cell Physiol 299: C1110-C1117, 2010
【文献】Ichii-O, PLOS ONE 9(9), e108448, 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現在知られているトリプトファナーゼ阻害作用を有する化合物は、有効性の面で満足できるものではなく、有効性に優れたトリプトファナーゼ阻害薬が切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、優れたトリプトファナーゼ阻害作用を有し、インドキシル硫酸の前駆体であるインドールの産生を阻害することによって血中並びに腎臓中のインドキシル硫酸濃度を高度に低減することによって腎機能の悪化を抑制し、腎臓を温存することによる新しい医薬を目指して種々の合成検討を行った。その結果、特定の構造を有する尿素誘導体又はその薬理上許容される塩が、優れたトリプトファナーゼ阻害作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0014】
本発明は、優れたトリプトファナーゼ阻害作用を有する尿素誘導体又はその薬理上許容される塩及びこれらを含有する医薬組成物を提供する。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1) 一般式(I)
【0016】
【0017】
[上記式中、R1及びR2は、同一又は異なって、C1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルキル基又はC3-C6シクロアルキル基であり、Arは、置換されてよいフェニル基(当該置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、C1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC1-C6アルキル基、C3-C6シクロアルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキルチオ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、ジ(C1-C3アルキル)アミノ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基から選ばれる同一又は異なった1~2個の置換基である。)又は置換されてよいチエニル基(当該置換基は、ハロゲン原子、シアノ基又はC1-C6アルキル基である。)である。]で表される化合物又はその薬理上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物、
【0018】
(2) 一般式(I)
【0019】
【0020】
[上記式中、R1及びR2は、同一又は異なって、C1-C6アルキル基又はC3-C6シクロアルキル基であり、Arは、置換されてよいフェニル基(当該置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC1-C6アルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基から選ばれる同一又は異なった1~2個の置換基である。)又は5位がハロゲン原子で置換された2-若しくは3-チエニル基である。]で表される化合物又はその薬理上許容される塩を有効成分として含有する(1)に記載の医薬組成物、
【0021】
(3) 一般式(I)
【0022】
【0023】
[上記式中、(A)Arは、式
【0024】
【0025】
で表される基であり、R1はメチル基であり、R2はエチル基又はC4-C6アルキル基であり、nは1又は2であり、Xは、互いに独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC1-C6アルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である;
【0026】
(B)Arは、式
【0027】
【0028】
で表される基であり、R1はC3-C6シクロアルキル基であり、R2はC2-C6アルキル基又はC3-C6シクロアルキル基であり、nは0、1又は2であり、Xは、互いに独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC1-C6アルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である;
【0029】
(C)Arは、式
【0030】
【0031】
で表される基であり、R1及びR2は、同一又は異なって、C2-C6アルキル基であり、nは1又は2であり、Xは、互いに独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC2-C6アルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基であり、但し、nが1の場合、Xはハロゲン原子又はシアノ基ではない;又は、
【0032】
(D)Arは、式
【0033】
【0034】
で表される基であり、R1及びR2は、同一又は異なって、C1-C6アルキル基又はC3-C6シクロアルキル基であり、R5は、水素原子であり、R6は、ハロゲン原子である。]で表される化合物又はその薬理上許容される塩、
【0035】
(4) 一般式(I-1)
【0036】
【0037】
[上記式中、R1はメチル基であり、R2はエチル基又はC4-C6アルキル基であり、nは1又は2であり、Xは、互いに独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC1-C6アルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である。]で表される、(3)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
【0038】
(5) 一般式(I-2)
【0039】
【0040】
[上記式中、R1はメチル基であり、R2はエチル基又はC4-C6アルキル基であり、R3は、水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基であり、R4は、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC1-C6アルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である。]で表される、(4)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(6) R2が、エチル基である、(4)又は(5)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(7) R3が、水素原子、フッ素原子又はシアノ基である、(5)又は(6)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(8) R4が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、2,2,2-トリフルオロエチル基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基である、(5)~(7)のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
【0041】
(9) 一般式(I-3)
【0042】
【0043】
[上記式中、R1はC3-C6シクロアルキル基であり、R2はC2-C6アルキル基又はC3-C6シクロアルキル基であり、nは0、1又は2であり、Xは、互いに独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC1-C6アルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である。]で表される、(3)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
【0044】
(10) 一般式(I-4)
【0045】
【0046】
[上記式中、R1はC3-C6シクロアルキル基であり、R2はC2-C6アルキル基又はC3-C6シクロアルキル基であり、R3は、水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基であり、R4は、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC1-C6アルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である。]で表される、(9)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(11) R1が、シクロプロピル基である、(9)又は(10)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(12) R2が、エチル基又はシクロプロピル基である、(9)~(11)のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(13) R3が、水素原子であり、R4が、フッ素原子、シアノ基、シアノメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基である、(10)~(12)のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(14) R3が、シアノ基であり、R4が、水素原子である、(10)~(12)のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
【0047】
(15) 一般式(I-5)
【0048】
【0049】
[上記式中、R1及びR2は、同一又は異なって、C2-C6アルキル基であり、nは1又は2であり、Xは、互いに独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC2-C6アルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である。但し、nが1の場合、Xはハロゲン原子又はシアノ基ではない。]で表される、(3)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
【0050】
(16) 一般式(I-6)
【0051】
【0052】
[上記式中、R1及びR2は、同一又は異なって、C2-C6アルキル基であり、R3は、水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基であり、R4は、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC2-C6アルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基である。但し、R3が水素原子である場合、R4はハロゲン原子又はシアノ基ではない。]で表される、(15)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(17) R1及びR2が、同一又は異なって、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基である、(15)又は(16)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(18) R1及びR2が、エチル基とエチル基、又は、エチル基とプロピル基、である、(15)又は(16)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(19) R1及びR2が、共にエチル基である、(15)又は(16)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(20) R3が、水素原子である、(16)~(19)のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(21) R4が、トリフルオロメチル基、モノフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチルチオ基、フェニル基又は2-フルオロフェニル基である、(16)~(19)のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
【0053】
(22) 一般式(I-7)
【0054】
【0055】
[上記式中、R1及びR2は、同一又は異なって、C1-C6アルキル基又はC3-C6シクロアルキル基であり、R5は、水素原子であり、R6は、ハロゲン原子である。]で表される、(3)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(23) R1及びR2が、共にエチル基である、(22)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(24) R6が、塩素原子である、(22)又は(23)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(25) ジシクロプロピル({[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)酢酸、
2-シクロプロピル-2-({[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
2-シクロプロピル-2-({[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸、
N-{[4-(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
2-シクロプロピル-2-[(フェニルカルバモイル)アミノ]ブタン酸、
2-シクロプロピル-2-{[(4-フルオロフェニル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸、
N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸、
N-[(4-ブロモフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
N-[(4-ヨードフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、及び、
2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸からなる群から選ばれる、(3)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(26) N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
N-[(4-ブロモフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
N-[(4-ヨードフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
(2R)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸、
(2S)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸、及び
2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸からなる群から選ばれる、(3)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩、
(27) (3)~(26)のいずれか1項に記載の化合物又はその薬理上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物、
(28)銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、
面間隔dが7.51、7.33、6.67、6.15、5.32、 5.24、 4.98、 4.79、3.96、及び、 3.59オングストロームに特徴的なピークを示す、N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリンの結晶、
面間隔が9.52、6.10、5.45、 5.29、 4.94、 4.89、4.75、3.80、3.48、及び、 3.44オングストロームに特徴的なピークを示す、N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリンの結晶、
面間隔が15.60、6.23、5.68、 5.34、5.20、 4.59、4.53、3.83、 3.37、及び、3.15オングストロームに特徴的なピークを示す、N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリンの結晶、
面間隔が15.82、 6.50、6.25、 5.39、 4.67、 3.92、 3.86、3.59、3.39、及び、3.16オングストロームに特徴的なピークを示す、N-[(4-ブロモフェニル)カルバモイル]-D-イソバリンの結晶、
面間隔が16.92、 6.62、 4.99、4.44、 4.30、 4.18、 3.30、 3.21、 3.07、及び、3.02オングストロームに特徴的なピークを示す、N-[(4-ヨードフェニル)カルバモイル]-D-イソバリンの結晶、
面間隔が11.30、 8.35、 7.66、 5.64、 5.46、 5.22、 4.73、 4.50、 4.35、及び、4.02オングストロームに特徴的な主ピークを示す、(+)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸の結晶、
面間隔が15.66、11.62、 11.30、 8.35、 7.80、 6.84、 5.45、5.22、 4.5、及び、 4.02ングストロームに特徴的なピークを示す、(-)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸の結晶、および
面間隔が15.82、 9.42、 6.53、 5.85、 5.48、 5.24、 4.69、4.46、3.58、及び、 3.12オングストロームに特徴的なピークを示す、2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸の結晶からなる群から選ばれる、(3)に記載の化合物の結晶、
(29) (28)に記載の化合物の結晶のいずれか1つを有効成分として含有する医薬組成物、
(30) 2-エチル-2-[(フェニルカルバモイル)アミノ]ブタン酸、
2-{[3-(クロロフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸、
2-{[4-(クロロフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸、
2-エチル-2-{[4-(フルオロフェニル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸、
2-エチル-2-{[3-(フルオロフェニル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸、
2-{[3-(シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸、
2-({[4-(シアノメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)-2-エチルブタン酸、及び、
2-エチル-2-[(チオフェン-3-イルカルバモイル)アミノ]ブタン酸からなる群から選ばれる化合物又はその薬理上許容される塩を有効成分として含有する(1)又は(2)に記載の医薬組成物、
(31) 医薬組成物が、トリプトファナーゼ阻害薬である、(1)、(2)、(27)、(29)又は(30)に記載の医薬組成物、
(32) 医薬組成物が、血中のインドキシル硫酸を低減するための医薬組成物である、(1)、(2)、(27)、(29)又は(30)に記載の医薬組成物、
(33) 医薬組成物が、腎機能の悪化を抑制するための医薬組成物である、(1)、(2)、(27)、(29)又は(30)に記載の医薬組成物、
(34) 医薬組成物が、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の予防若しくは治療のための、(1)、(2)、(27)、(29)又は(30)に記載の医薬組成物、
(35) 医薬組成物が、慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行を遅延させるための医薬組成物である、(1)、(2)、(27)、(29)又は(30)に記載の医薬組成物、
(36) 医薬組成物が、腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化を抑制するための医薬組成物である、(1)、(2)、(27)、(29)又は(30)に記載の医薬組成物、
(37) (3)~(26)のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、(27)に記載の化合物の結晶を有効成分として含有する、血中のインドキシル硫酸の低減剤、
(38) (3)~(26)のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、(27)に記載の化合物の結晶を有効成分として含有する、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の予防剤若しくは治療剤、
(39) (3)~(26)のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、(27)に記載の化合物の結晶を有効成分として含有する、慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行遅延剤、
(40) (3)~(26)のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、(27)に記載の化合物の結晶を有効成分として含有する、腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化抑制剤、
(41) 医薬組成物の製造のための、(3)~(26)のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、(27)に記載の化合物の結晶の使用、
(42) 血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の予防若しくは治療のための医薬組成物の製造のための、(41)に記載の使用、
(43) 慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行の遅延のための医薬組成物の製造のための、(41)に記載の使用、
(44) 腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化の抑制のための医薬組成物の製造のための、(41)に記載の使用、
(45) (3)~(26)のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、(27)に記載の化合物の結晶の有効量を、哺乳動物に投与することからなる、血中のインドキシル硫酸の低減方法、
(46) 哺乳動物が、ヒトである、(45)に記載の方法、
(47) (3)~(26)のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、(27)に記載の化合物の結晶の有効量を、哺乳動物に投与することからなる、疾患の予防若しくは治療のための方法、
(48) 哺乳動物が、ヒトである、(47)に記載の方法、
(49) 疾患が、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患である、(47)又は(48)に記載の方法、
(50) 疾患の予防若しくは治療のための方法における使用のための、(3)~(26)のいずれか1項に記載の化合物、若しくは、その薬理上許容される塩、又は、(27)に記載の化合物の結晶、及び、
(51) 疾患が、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患である、(50)に記載の化合物又はその薬理上許容される塩。
【0056】
以下に、本発明化合物(I)における置換基の定義を説明する。
【0057】
本発明化合物(I)において、「C1-C6アルキル基」は、炭素数1~6個の直鎖又は分枝鎖飽和炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基又はヘキシル基であり得、好適には、炭素数1~3個の直鎖又は分枝鎖飽和炭化水素基(C1-C3アルキル基)であり、より好適には、メチル基又はエチル基である。
【0058】
本発明化合物(I)において「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、好適には、フッ素原子又は塩素原子である。
【0059】
本発明化合物(I)において「ハロゲノC1-C6アルキル基」は、同一又は異なった1~3個の前記「ハロゲン原子」により置換された前記「C1-C6アルキル基」であり、例えば、モノフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、クロロフルオロメチル基、トリフルオロメチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であり得、好適には、1~3個のフッ素原子により置換されたメチル基若しくはエチル基であり、より好適には、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基であり、特に好適には、トリフルオロメチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基である。
【0060】
本発明化合物(I)において「C3-C6シクロアルキル基」は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基のような炭素数3~6個の環状飽和炭化水素基であり、好適には、シクロプロピル基である。
【0061】
本発明化合物(I)において「シアノC1-C6アルキル基」は、1個のシアノ基が置換し、かつ、1個のC1-C5アルキル基が置換してよいメチル基であり、例えば、シアノメチル基、1-シアノエチル基、1-シアノプロピル基、1-シアノイソプロピル基又は1-シアノブチル基であり得、好適には、シアノメチル基又は1-シアノエチル基である。
【0062】
本発明化合物(I)において「シアノC3-C6シクロアルキル基」は、1個のシアノ基が置換した前記「C3-C6シクロアルキル基」であり、好適には、1個のシアノ基が置換したシクロプロピル基であり、より好適には、1-シアノシクロプロピル基である。
【0063】
本発明化合物(I)において「C1-C6アルコキシ基」は、前記「C1-C6アルキル基」が結合した酸素原子であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基又はブトキシ基であり得、好適には、前記「C1-C3アルキル基」が結合した酸素原子(C1-C3アルコキシ基)であり、より好適には、メトキシ基又はエトキシ基である。
【0064】
本発明化合物(I)において「ハロゲノC1-C6アルコキシ基」は、前記「ハロゲノC1-C6アルキル基」が置換した酸素原子であり、例えば、モノフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基であり得、好適には、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基である。
【0065】
本発明化合物(I)において「C1-C6アルキルチオ基」は、前記「C1-C6アルキル基」が結合した硫黄原子であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基又はブチルチオ基であり得、好適には、前記「C1-C3アルキル基」が結合した硫黄原子(C1-C3アルキルチオ基)であり、より好適には、メチルチオ基又はエチルチオ基である。
【0066】
本発明化合物(I)において「ハロゲノC1-C6アルキルチオ基」は、前記「ハロゲノC1-C6アルキル基」が置換した硫黄原子であり、例えば、モノフルオロメチルチオ基、ジフルオロメチルチオ基又はトリフルオロメチルチオ基であり得、好適には、ジフルオロメチルチオ基又はトリフルオロメチルチオ基である。
【0067】
本発明化合物(I)において「ジ(C1-C3アルキル)アミノ基」は、前記「C1-C3アルキル基」が結合した窒素原子であり、例えば、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基であり得る。
【0068】
本発明化合物(I)において「飽和環状アミノ基」は、5又は6員の飽和環状アミノ基であり、好適には、1-ピロリジニル基又は1-ピペリジニル基である。
【0069】
本発明化合物(I)において「ハロゲノ飽和環状アミノ基」は、同一又は異なった1~4個の前記「ハロゲン原子」が置換した前記「飽和環状アミノ基」であり、好適には、3,3-ジフルオロ-1-ピロリジニル基である。
【0070】
本発明化合物(I)において「ハロゲノフェニル基」は、同一又は異なった1~5個の前記「ハロゲン原子」が置換したフェニル基であり、好適には、同一又は異なった1~2個の前記「ハロゲン原子」が置換したフェニル基であり、より好適には、2-フルオロフェニル基である。
【0071】
本発明化合物(I)のArにおいて「置換されたフェニル基」の置換基は、好適には、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、シアノC1-C6アルキル基、シアノC3-C6シクロアルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキルチオ基、飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基、フェニル基又はハロゲノフェニル基から選ばれる同一又は異なった1~2個の置換基であり、より好適には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、2,2,2-トリフルオロエチル基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、、トリフルオロメチルチオ基、フェニル基又は2-フルオロフェニル基であり、更により好適には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基又はシアノ基である。
【0072】
本発明化合物(I)において「チエニル基」は、2-チエニル基又は3-チエニル基である。
【0073】
本発明化合物(I)のArにおいて「置換されたチエニル基の置換基」は、好適には前記「ハロゲン原子」であり、より好適には、塩素原子である。
【0074】
本発明化合物(I)の中で、好適な化合物の具体例としては、
ジシクロプロピル({[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)酢酸、
2-シクロプロピル-2-({[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
2-シクロプロピル-2-({[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸、
N-{[4-(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
2-シクロプロピル-2-[(フェニルカルバモイル)アミノ]ブタン酸、
2-シクロプロピル-2-{[(4-フルオロフェニル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸、
N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸、
N-[(4-ブロモフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
N-[(4-ヨードフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、及び、
2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸を挙げることができる。さらに好適な化合物の具体例としては、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
N-[(4-ブロモフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
N-[(4-ヨードフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
(2R)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸、
(2S)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸、及び
2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸を挙げることができる。
【0075】
本発明化合物(I)において「その薬理上許容される塩」とは、医薬として使用することができる塩を示す。化合物では、酸性基または塩基性基を有する場合に、塩基又は酸と反応させることにより、「塩基との塩」又は「酸付加塩」にすることができるので、その塩を示す。
【0076】
化合物の薬理上許容される「塩基との塩」としては、好適には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;N-メチルモルホリン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N-メチルピペリジン塩、ピリジン塩、4-ピロリジノピリジン塩、ピコリン塩のような有機塩基塩類又はグリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩であり、好適には、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である。
【0077】
化合物の薬理上許容される「酸付加塩」としては、好適には、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及び、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩であり、最も好適には、ハロゲン化水素酸塩(特に、塩酸塩)である。
【0078】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩は、大気中に放置されることにより水分を吸収し、水和物になる場合があり、そのような水和物も本発明に包含される。
【0079】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩は、溶媒中に放置されることにより、溶媒和物になる場合があり、そのような溶媒和物も本発明に包含される。
【0080】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩には、それらの結晶も含まれる。本発明の結晶は、その内部構造が三次元的に構成原始(又はその集団)の規則正しい繰り返しでできている固体をいい、そのような規則正しい内部構造を持たない無定形の個体とは区別される。
【0081】
同じ化合物の結晶であっても、結晶化の条件によって、複数の異なる内部構造及び物理化学的性質を有する結晶(結晶多形)が生成することがあるが、本発明の結晶は、これら結晶多形のいずれであってもよく、2以上の結晶多形の混合物であってもよい。
【0082】
本発明の結晶は、大気中に放置しておくことにより、水分を吸収し、付着水がつく場合や通常の大気条件下において25乃至150℃に加熱すること等により、水和物を形成する場合がある。さらに、本発明の結晶は付着残留溶媒又は溶媒和物中に、結晶化時の溶媒を含む場合もある。
【0083】
本明細書においては、本発明の結晶を粉末X線回折のデータに基づき表すことがある。粉末X線回折は、通常、当該分野において用いられる受賞により測定・回折を行えばよく、例えば、実施例に記載の方法により行うことができる。また、一般に、水和物や脱水物は結晶水の着脱によって、その格子定数が変化し、粉末X線回折における回折角(2θ)に変化を与えることがある。また、ピークの強度は、結晶の成長面等の違い(晶癖)等によって変化することがある。従って、本発明の結晶を粉末X線回折のデータに基づき表した場合、粉末X線回折におけるピークの回折角及びX線回折図が一致する結晶のほか、それらから得られる水和物および脱水物も本発明の範囲に包含される。
【0084】
本発明化合物(I)の一形態として、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリン、
N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
N-[(4-ブロモフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
N-[(4-ヨードフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン、
(+)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸、
(-)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸、及び
2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸の結晶を挙げることができる。
【0085】
好ましい具体例として、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔dが7.51、7.33、6.67、6.15、5.32、 5.24、 4.98、 4.79、3.96、及び、 3.59オングストロームに特徴的なピークを示す、N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリンの結晶を挙げることができる。当該結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射において、
図1の粉末X線回折図を示す。
【0086】
尚、
図1および、以下に示す
図2~
図8の粉末X線回折パターンにおいて縦軸は回折強度をカウント/秒(CPS)単位で示し、横軸は回折角度2θ(度)を示している。また、面間隔d(単位:オングストローム)は、式2dsinθ=nλにおいてn=1として算出することができる。
【0087】
さらなる、本発明の好ましい具体例として、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔dが9.52、6.10、5.45、 5.29、 4.94、 4.89、4.75、3.80、3.48、及び、 3.44オングストロームに特徴的なピークを示す、N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリンの結晶を挙げることができる。当該結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射において、
図2の粉末X線回折図を示す。
【0088】
さらなる、本発明の好ましい具体例として、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔dが15.60、6.23、5.68、 5.34、5.20、 4.59、4.53、3.83、 3.37、及び、3.15オングストロームに特徴的なピークを示す、N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリンの結晶を挙げることができる。当該結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射において、
図3の粉末X線回折図を示す。
【0089】
さらなる、本発明の好ましい具体例として、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔dが15.82、 9.42、 6.53、 5.85、 5.48、 5.24、 4.69、4.46、3.58、及び、 3.12オングストロームに特徴的なピークを示す、2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸の結晶を挙げることができる。当該結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射において、
図4の粉末X線回折図を示す。
【0090】
さらなる、本発明の好ましい具体例として、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔dが15.82、 6.50、6.25、 5.39、 4.67、 3.92、 3.86、3.59、3.39、及び、3.16オングストロームに特徴的なピークを示す、N-[(4-ブロモフェニル)カルバモイル]-D-イソバリンの結晶を挙げることができる。当該結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射において、
図5の粉末X線回折図を示す。
【0091】
さらなる、本発明の好ましい具体例として、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔dが16.92、 6.62、 4.99、4.44、 4.30、 4.18、 3.30、 3.21、 3.07、及び、3.02オングストロームに特徴的なピークを示す、N-[(4-ヨードフェニル)カルバモイル]-D-イソバリンの結晶を挙げることができる。当該結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射において、
図6の粉末X線回折図を示す。、
さらなる、本発明の好ましい具体例として、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔dが11.30、 8.35、 7.66、 5.64、 5.46、 5.22、 4.73、 4.50、 4.35、及び、4.02オングストロームに特徴的な主ピークを示す、(+)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸の結晶を挙げることができる。当該結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射において、
図7の粉末X線回折図を示す。
【0092】
さらなる、本発明の好ましい具体例として、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔dが15.66、11.62、 11.30、 8.35、 7.80、 6.84、 5.45、5.22、 4.5、及び、 4.02ングストロームに特徴的なピークを示す、(-)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸の結晶を挙げることができる。当該結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射において、
図8の粉末X線回折図を示す。
【0093】
本発明化合物(I)はカルボキシル基を有するため、そのカルボキシル基を薬理上許容されるプロドラッグに変換した化合物も本発明に包含される。「薬理上許容されるプロドラッグ」とは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により本発明化合物(I)に変換される化合物、すなわち、酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして本発明化合物(I)に変化される化合物、又は、胃酸等により加水分解などを起こして本発明化合物(I)に変化される化合物である。
【0094】
そのようなプロドラッグとしては、本発明化合物(I)のカルボキル基がエステル化、アミド化された化合物(例えば、そのカルボキシ基がエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、硫酸エステル化、グルクロニド化、グリコシド化、ガラクトシド化、メチルアミド化された化合物等である。)等が挙げられる。
【0095】
本発明化合物(I)の薬理上許容されるプロドラッグは公知の方法によって本発明の化合物(I)から容易に製造することができる。また、本発明の化合物のプロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁から198頁に記載されているような、生理的条件で本発明化合物(I)に変化するものも含まれる。
【0096】
本発明化合物(I)は、選択された置換基によっては、幾何異性体や互変異性体を生じる場合があるが、これらの異性体の単離化合物や任意の比率の混合物も本発明に包含される。
【0097】
本発明化合物(I)には、分子内の不斉中心に基づく光学異性体が存在する。特に断りのない限り、本発明の化合物においては、これらの異性体及びこれらの異性体の混合物が全て単一の式、すなわち一般式(I)で示されている。従って、本発明はこれらの異性体及びこれらの異性体の混合物をも全て含むものとする。
【0098】
これらの異性体の混合物は、公知の分割手段により分離することができる。
【0099】
本発明化合物(I)は、化合物を構成する原子の1個以上に、原子同位体の非天然割合も含有し得る。原子同位体としては、例えば、重水素(2H)、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)、又は炭素-14(14C)等が挙げられる。また、前記化合物は、例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)、又は炭素-14(14C)等の放射性同位体で放射性標識され得る。放射性標識された化合物は、治療又は予防剤、研究試薬、例えば、アッセイ試薬、及び診断剤、例えば、インビボ画像診断剤として有用である。本発明の化合物の全ての同位体変異種は、放射性であると否とを問わず、本発明の範囲に包含されるものとする。
【発明の効果】
【0100】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩は、優れたトリプトファナーゼ阻害作用を有し、血中のインドキシル硫酸の低減剤、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の予防剤若しくは治療剤、慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行遅延剤、及び、腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化抑制剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】実施例8で得られた結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【
図2】実施例15で得られた結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【
図3】実施例25で得られた結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【
図4】実施例27で得られた結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【
図5】実施例30で得られた結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【
図6】実施例31で得られた結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【
図7】実施例33で得られた(+)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸の結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【
図8】実施例33で得られた(-)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸の結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0102】
以下に、本発明化合物(I)及び本発明の化合物(I)の製造に使用する原料化合物の代表的な製造方法について説明するが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。
【0103】
製造法1
発明の化合物及びその薬理上許容される塩は、その基本構造あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。
【0104】
その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料から中間体へ至る段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような保護基としては、例えば、ウッツ(P.G.M.Wuts)及びグリーン(T.W.Greene)著、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)に記載の保護基等を挙げることができ、これらの反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。
【0105】
このような方法では、当該保護基を導入して反応を行なったあと、必要に応じて保護基を除去することにより、所望の化合物を得ることができる。また、本発明の化合物のプロドラッグは、上記保護基と同様、原料から中間体へ至る段階で、特定の基を導入、あるいは得られた化合物を用いてさらに反応を行なうことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等の方法を適用することにより行うことができる。
【0106】
[A法]
A法は、本発明化合物(I)を製造する方法である。
【0107】
【0108】
[式中、R1、R2及びArは、上記定義のとおりである。]
【0109】
(A工程)ウレアを形成する工程
本工程は、化合物(II)を、塩基の存在下、化合物(III)と反応させて、本発明化合物(I)を製造する工程である。
【0110】
本工程において、通常、反応温度は0℃-室温であり、反応時間は1-24時間である。
【0111】
本工程に使用する塩基は、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等の3級アミン;炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基の水溶液;又は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液であり、好適には、アルカリ金属水酸化物の水溶液である。
【0112】
本工程に使用する溶媒としては、ジクロロメタン等のハロゲン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトニトリル;又は、それらの混合溶媒が好ましい。
【0113】
本工程は、塩基の非存在下で反応を行うこともできる。例えば、化合物(III)のアセトニトリル懸濁液に、室温にて化合物(II)加えて反応を行う。通常、反応温度は、0℃-80℃程度であり、反応時間は、1時間-24時間程度である。
【0114】
なお、化合物(II)は市販品として入手でき、又は、後記記載の方法により製造することができる。
【0115】
また、化合物(III)は市販品として入手でき、又は、公知の方法(例えば、Tetrahedron: Asymmetry, 2007, 18, 569-623)、若しくは、それに準じた方法により製造することができる。
【0116】
[B法]
B法は、A法で使用される化合物(II)を製造する方法である。
【0117】
【0118】
[式中、Arは、上記定義のとおりである。]
【0119】
(B-1工程)イソシアネート化工程
本工程は、化合物(IV)を、塩基の存在下、又は、非存在下、ホスゲン、トリホスゲン等と反応させてイソシアネート化する工程である。
【0120】
本工程に使用される塩基としては、トリエチルアミン等が好適であり、溶媒としては、通常、トルエン、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、又は、それらの混合溶媒が使用される。
【0121】
本工程において、反応温度は、通常、0℃-100℃であり、反応時間は、通常、1時間-24時間程度である。
【0122】
(B-2工程)Curtius転移によるイソシアネート化工程
化合物(V)のカルボン酸を、塩基の存在下、ジフェニルホスホリルアジドと反応させてアシルアジド化してから、熱分解により化合物(III)を製造する工程である。
【0123】
本工程に使用する溶媒は、トルエン等の芳香族炭化水素系の他にも、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミドのような各種溶媒を用いることができる。
【0124】
本工程において、通常、反応温度は、室温-110℃程度であり、反応時間は、1時間-12時間である。
【0125】
なお、化合物(IV)、及び、(V)は市販品として入手でき、又は、公知の方法(例えば、日本化学会編 第4版 実験化学講座20、及び、22)、若しくは、それに準じた方法により、製造することができる。
【0126】
[C法]
C法は、本発明の化合物(I)を製造する方法であり、A法の別法である。
【0127】
【0128】
[式中、R1、R2及びArは、上記定義のとおりであり、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、t-ブチル基又はベンジル基を示す。]
(C-1工程)ウレアを形成する工程
本工程は、化合物(II)を、カルボン酸部分が保護された化合物(VI)と反応させて、化合物(VII)を得る工程である。
【0129】
本工程に使用される溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル類のほか、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、アセトニトリルのような各種溶媒を用いることができる。
【0130】
本工程において、反応温度は、通常、0℃-70℃程度であり、反応時間は、通常、0.2時間-12時間程度である。
【0131】
なお、化合物(II)は市販品として入手でき、又は、上記記載のB法により製造することができる。
【0132】
また、化合物(VI)は市販品として入手でき、又は、後記記載の方法により製造することができる。
【0133】
(C-2工程)エステルを加水分解する工程
本工程は、化合物(VII)のエステル基を塩基の存在下、溶媒中で加水分解して、本発明化合物(I)を得る工程である。
【0134】
本工程に使用される塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好適であり、使用される溶媒は、水とテトラヒドロフラン/メタノールの混合溶媒等が好適である。
【0135】
本工程において、反応温度は、通常、室温-80℃程度であり、反応時間は、通常、1時間-24時間程度である。
【0136】
本工程において、基Rがベンジル基の場合には、通常、メタノール等のアルコール溶液中で、水素雰囲気下、10%パラジウム/炭素等の触媒の存在下、反応を行うことができる。
【0137】
本工程において、基Rが、t-ブチル基の場合には、ジクロロメタン溶液中で、トリフルオロ酢酸を添加して、反応を行うことができる。
【0138】
[D法]
D法は、C法で使用される化合物(VI)に相当する化合物を製造する方法である。
【0139】
【0140】
[式中、R1、R2及びRは、上記定義のとおりであり、Pcはtert-ブトキシカルボニル基等のアミノ基の保護基を示す。]
(D工程)脱保護基化工程
本工程は、通常のアミノ基の脱保護の条件で反応を行い、化合物(VI)を得る工程である。
【0141】
本工程において、アミノ基の保護基が、tert-ブトキシカルボニル基の場合には、通常、塩化メチレン溶液中で、トリフルオロ酢酸を添加して、反応を行う。
【0142】
本工程において、反応温度は、通常、室温程度であり、反応時間は、通常、1時間程度である。
【0143】
なお、化合物(VIII)は市販品として入手でき、又は、化合物(III)をウッツ(P.G.M.Wuts)及びグリーン(T.W.Greene)著、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)に記載の方法で適切に保護することで、製造することができる。
【0144】
[E法]
E法は、本発明化合物(I-a)を製造する方法であり、A法、C法の別法である。原料化合物(IX)のベンゼン環の4位の置換基が臭素原子である場合、E-1工程、E-2工程、E-3工程、E-4工程のような工程を経て置換することによって、C3-C5飽和環状アミノ基、ハロゲノC3-C5飽和環状アミノ基又はジ(C1-C3アルキル)アミノ基のような基を導入することができる。
【0145】
【0146】
[式中、R1、R2、R及びXは、上記定義のとおりであり、nは1又は2であり、基NRaRbは飽和環状アミノ基、ハロゲノ飽和環状アミノ基又はジ(C1-C3アルキル)アミノ基を示す。]
(E-1工程)ウレアを形成する工程
本工程は、C法C-1工程と同様の条件により、製造を行う工程である。
(E-2工程)環化体を形成する工程
本工程は、化合物(X)を塩基の存在下、分子内で環化させて、化合物(XI)を得る工程である。
【0147】
本工程に使用される塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好適であり、使用される溶媒は、水とテトラヒドロフラン/メタノールの混合溶媒等が好適である。
【0148】
本工程において、反応温度は、通常、室温程度であり、反応時間は、通常、1時間-24時間程度である。
(E-3工程)カップリング反応により化合物(XIII)を製造する工程
本工程は、化合物(XI)と化合物(XII)から、Buchwald-Hartwig Cross-Coupling反応により、化合物(XIII)を製造する工程である。
【0149】
本工程では、触媒、配位子、塩基の存在下、溶媒中で反応を行う。
【0150】
本工程に使用される触媒は、例えば、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシ-1,1’-ビフェニル)[2-(2-アミノエチルフェニル)]パラジウム(II)、酢酸パラジウム又はトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等である。
【0151】
本工程に使用される配位子は、例えば、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル又は2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル等である。
【0152】
本工程に使用される塩基は、例えば、炭酸セシウム、ナトリウム tert-ブトキシド又はリチウムビス(トリメチルシリル)アミド等である。
【0153】
本工程に使用される溶媒は、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類;又は、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類である。
【0154】
本工程において、反応温度は、通常、室温-110℃であり、反応時間は、通常、1時間-24時間程度である。
【0155】
なお、化合物(XII)は、市販品として入手できる。
【0156】
(E-4工程)ヒダントインを加水分解する工程
本工程は、化合物(XIII)を塩基の存在下、溶媒中で加水分解して、本発明化合物(I-a)を得る工程である。
【0157】
本工程に使用される塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好適であり、使用される溶媒は、水とテトラヒドロフラン/メタノールの混合溶媒等が好適である。
【0158】
本工程において、反応温度は、通常、室温-80℃程度であり、反応時間は、通常、1時間-24時間程度である。
【0159】
[F法]
F法は、本発明化合物(I-b)を製造する方法であり、A法、C法の別法である。原料化合物(IX)のベンゼン環の4位の置換基が臭素原子である場合、E-1工程、E-2工程、F-1工程、F-2工程のような工程を経て置換することによって、フェニル基又はハロゲノフェニル基のような基を導入することができる。
【0160】
【0161】
[式中、R1、R2、X及びnは、上記定義のとおりであり、Yはハロゲン原子を示し、mは0、1、2、3、4又は5を示す。]
【0162】
(F-1工程)カップリング反応により化合物(XV)を製造する工程
本工程は、化合物(XI)と化合物(XIV)から、鈴木-宮浦Cross-Coupling反応により、化合物(XV)を製造する工程である。
【0163】
本工程は、触媒、塩基の存在下、溶媒中で反応を行う。
【0164】
本工程に、使用される触媒としては、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(0)、ビス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、クロロ(2-ジシクロヘキシルフォスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)パラジウム(II)等、各種遷移金属および各種配位子からなる触媒が挙げられる。
【0165】
本工程に使用される塩基は、例えば、リン酸カリウム、酢酸カリウム又は炭酸カリウム等である。
【0166】
本工程に使用される溶媒としては、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類と水との混合溶媒が挙げられる。
【0167】
本工程において、反応温度は、室温-100℃である。
【0168】
本工程において、反応時間は、1時間-24時間程度である。
【0169】
なお、化合物(XIV)は、市販品として入手できる。
【0170】
(F-2工程)ヒダントインを加水分解する工程
E法E-4工程と同様の条件により、製造を行う工程である。
【0171】
上記の方法で製造された化合物は、公知の方法、例えば、抽出、沈殿、蒸留、クロマトグラフィー、分別再結晶、再結晶等により単離、精製することができる。
【0172】
また、化合物又は製造の中間体が不斉炭素を有する場合には光学異性体が存在する。これらの光学異性体は、適切な塩と再結晶する分別再結晶(塩分割)やカラムクロマトグラフィー等の常法によって、それぞれの異性体を単離、精製することができる。ラセミ体から光学異性体を分割する方法の参考文献としては、J.Jacquesらの、「Enantiomers,Racemates and Resolution,John Wiley And Sons,Inc.」を挙げることができる。
【0173】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩は、血中のインドキシル硫酸を低減することができる。本発明において、「血中のインドキシル硫酸を低減する」とは、ヒト血中インドキシル硫酸濃度を本発明化合物投与前値に対して低下させることであり、好適には、ヒト血中インドキシル硫酸濃度を本発明化合物投与前値に対して0.1 mg/dL以上の下げ幅で低下させることである。例えばCKD-stage4にある腎臓病患者の血中インドキシル硫酸濃度は平均0.45 mg/dLであるが、CKD-stage3にある腎臓病患者の濃度である0.24 mg/dLまで低下させることが望ましく、CKD-stage2にある腎臓病患者の濃度である0.13 mg/dLまで低下させることがより望ましく、腎臓病を罹患していないヒトのレベルである0.075 mg/dL以下まで低下させることが最も望ましい。CKD-stage5にある透析患者を含む末期腎臓病患者の血中インドキシル硫酸濃度は平均1.30 mg/dLであるが、CKD-stage4にある腎臓病患者の濃度である0.45 mg/dLまで低下させることが望ましく、CKD-stage3にある腎臓病患者の濃度である0.24 mg/dLまで低下させることがより望ましく、CKD-stage2にある腎臓病患者の濃度である0.13 mg/dLまで低下させることが更により望ましく、腎臓病を罹患していないヒトのレベルである0.075 mg/dL以下まで低下させることが最も望ましい(ELLIS-RJ Nephrology 21 170-177 (2016))。血中インドキシル硫酸の濃度は液体クロマトグラフィー(蛍光検出)単独又はそれに続く質量分析計と組み合わせて用いることにより定量できる。
【0174】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩は、腎機能の悪化を抑制することができる。本発明において、「腎機能の悪化を抑制する」とは、アルブミンをはじめ蛋白質の尿中への漏出を低減すること、GFR(Glomerular filtration rate)の低下を抑制すること、又は、腎臓の機能障害を反映する血中および尿中の生化学マーカーの上昇を抑制することを示す。
【0175】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩は、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患を予防若しくは治療することができる。本発明において、「血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患」とは、慢性腎臓病(CKD)、腎性貧血、閉塞性動脈硬化症又は虚血性心疾患であり、特に慢性腎臓病である。
【0176】
本発明において、「予防」とは血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の発症確率を低下させることをいう。血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患がCKDの場合、例えば血中可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータ受容体(suPAR)濃度が4020pg/mLより高い腎機能正常者の血中suPAR濃度が2373pg/mLより低い腎機能正常者に対する将来的なCKD発症確率(3倍以上、HR:3.13:Hayek-SS, N Engl J Med 373: 1916-1925, 2015)を低減することによって示される。CKDの発症は推定GFR:<60mL/分/1.73m2であることで確認することができる。
【0177】
本発明において、「治療」とは、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の病態の進展または進行を抑制すること、又は、病態を改善することをいう。
【0178】
血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患がCKDの場合、「進展または進行を抑制すること」とは、アルブミンを初め蛋白質の尿中への漏出を上昇させないこと、GFRを維持すること、腎臓の機能障害を反映する血中および尿中生化学マーカーの維持もしくは上昇を抑制することをいう。例えばCKD患者の0.3 g/gCrの蛋白尿、100 mg/gCr以上のアルブミン尿を6ヶ月から1年間そのまま維持することで、またCKD患者の30mL/分/1.73m2のeGFRを6ヶ月から1年間そのまま維持することで確認することができる。「病態を改善」とは、CKDの重症度を下のランクにさげることをいう。例えば0.6 g/gCrの尿中アルブミンを0.3 g/gCrに低下させること(CKDの重症度はA3からA2に低下)によって確認することができる。さらに25mL/分/1.73m2のGFRを35mL/分/1.73m2に上昇させること(CKDの重症度はG4からG3bに低下)によっても確認することができる。
【0179】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩は、慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行を遅延させることができる。
【0180】
本発明において、「慢性腎臓病の保存療法」とは、慢性腎臓病と診断された患者において機能の低下した腎臓への負担を軽減することで、診断以降徐々に低下する腎機能をそれ以上低下させないようにすること、もしくは腎機能低下によってもたらされる他臓器への障害を軽減することをいう。
【0181】
本発明において、「慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行を遅延させる」とは、血液透析の導入、腹膜透析の導入、先行的腎移植の実施においてその基準を満たすまでの期間を延長させることをいう。例えば腹膜透析の導入を予定している慢性腎臓病患者の場合は、その導入推奨基準であるGFRが6 mL/min/1.73m2程度に低下するまでの期間を延長することをいう。
【0182】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩は、腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化を抑制することができる。本発明において、「腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化」とは、例えば透析導入前と導入後で1日あたりの尿量が低下することを指し、例えば透析導入前に1日400mL以上あった尿量が導入後に400mL未満になることをいう。残存腎機能の悪化はクレアチニン・クリアランス値やKt/V値{(尿中の尿素濃度)/(血液中の尿素濃度)×(1日の尿量)×7日間}を測定することによっても評価することができる。
【0183】
本発明において、「腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化を抑制する」とは、無尿の状態を回避することを示す。例えば20mL/日の尿量を6ヶ月から1年間そのまま保持し低下させない、あるいは残存腎機能をより保持することを目的として血液透析(HD)の前に腹膜透析(PD)を実施する場合、HDに移行するまでのPD期間をより延長することができるかどうかによって確認することができる。
【0184】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩の投与形態としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤若しくはシロップ剤等による経口投与を挙げることができる。
【0185】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩の経口用の医薬の形態としては、錠剤(口腔内崩壊錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤(スプレー剤を含む)、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、ペースト剤又はエリキシル剤等が挙げられる。これらの形態の医薬は、賦形剤、結合剤、希釈剤、安定化剤、防腐剤、着色剤、溶解補助剤、懸濁化剤、緩衝剤、又は湿潤化剤等の薬学的に許容される添加剤から、必要に応じて適宜選択した添加剤を用いて、常法に従って調製することができる。
【0186】
本発明の製剤の投与量は、症状、年齢、体重などにより異なるが、1日1~数回、成人一人一回当たり、0.1~1000mg、好ましくは1~300mg、である。本発明の製剤は、ヒト以外の哺乳類にも投与することができる。
【0187】
本発明化合物又はその薬理上許容される塩は他の薬剤と併用することが可能である。用いることのできる併用薬としては、例えば、慢性腎臓病患者の薬物療法に使用されるアンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬、球形吸着炭製剤等の循環器系作用薬をはじめ、合併している疾患や原疾患をもとに処方される高尿酸血症治療薬、高脂血症治療薬、糖尿病治療薬、ステロイド・免疫抑制薬、抗血小板薬・抗凝固薬、高リン血症治療薬、赤血球造血刺激因子製剤、鎮痛剤、抗不整脈薬、抗うつ薬、アルツハイマー型認知症治療薬、パーキンソン病薬、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗アレルギー薬、抗菌薬からOTC医薬品まで多くの内服薬が該当する。
【0188】
「アンジオテンシンII受容体拮抗薬」とは、ロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン、イルベサルタン、アジルサルタン等が該当する。
【0189】
「アンジオテンシン変換酵素阻害薬」とは、カプトプリル、エナラプリル、アラセプリル、デラプリル、シラザプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、イミダプリル、テモカプリル、キナプリル、トランドラプリル、ペリンドプリルエルブミン等が該当する。
【0190】
「カルシウム拮抗薬」とは、ニフェジピン、アムロジピン、エホニジピン、シルニジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニルバジピン、バルニジピン、フェロジピン、ベニジピン、マニジピン、アゼルニジピン、アラニジピン、ジルチアゼム等が該当する。
【0191】
「利尿薬」とは、トリクロルメチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、メチクラン、インダバミド、トリパミド、メフルシド、フロセミド、トリアムテレン等が該当する。
【0192】
また、本発明化合物又はその薬理上許容される塩は上述の併用対照の治療薬との配合剤とすることもできる。併用薬の配合割合は任意に設定でき、通常、本発明化合物又はその薬理上許容される塩と併用対象の治療薬の配合比はそれぞれ重量比で通常1:0.0001~200の範囲であり、特に好ましくは1:0.001~10の範囲である。
【0193】
以下、実施例、試験例及び製剤例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0194】
以下、実施例および試験例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0195】
実施例のカラムクロマトグラフィーにおける溶出は、TLC(Thin Layer Chromatography,薄層クロマトグラフィー)による観察下に行われた。TLC観察においては、TLCプレートとしてメルク(Merck)社製のシリカゲル60F254を、展開溶媒としてはカラムクロマトグラフィーで溶出溶媒として用いられた溶媒を、検出法としてUV検出器を採用した。カラムクロマトグラフィーは、昭光サイエンティフィック社の自動クロマトグラフィー装置(Purif-α2)を使用した。溶出溶媒はTLC観察を基に決定した。
【0196】
以下の実施例において、核磁気共鳴(以下、1H NMR)スペクトルは、テトラメチルシランを標準物質として、ケミカルシフト値をδ値(ppm)にて記載した。分裂パターンは一重線をs、二重線をd、三重線をt、四重線をq、多重線をm、ブロードをbrで示した。
【0197】
質量分析(以下、MS)は、API(Atmospheric Pressure Ionization)法で行った。
【0198】
(実施例1)
2-エチル-2-({[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸
【0199】
【0200】
2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 2566-29-2)(0.65g,4.96mmol)の水(10mL)懸濁液に、1Nの水酸化ナトリウム溶液(5.00mL,5.00mmol)、ジクロロメタン(20mL)及び1-イソシアネート-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(CAS Registry Number: 35037-73-1)(2.00g,9.85mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチルを加え、有機層と水層を分離後、水層を希塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣物に酢酸エチル/n-ヘキサンの混合溶媒を加えて生じた固体を、ろ過し、減圧乾燥して、標記化合物498mg(30%)を白色固体として得た。
1H-NMR (500MHz, DMSO-D6) δ: 13.02 (1H, br s), 9.11 (1H, s), 7.44-7.41 (2H, m), 7.18 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.37 (1H, s), 2.25-2.17 (2H, m), 1.73-1.65 (2H, m), 0.71 (6H, t, J = 7.3 Hz).
MS m/z: 335 (M+H)+。
【0201】
(実施例2)
2-シクロプロピル-2-({[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)プロパン酸
【0202】
【0203】
実施例1と同様の方法で、2-アミノ-2-シクロプロピルプロパン酸(CAS Registry Number: 5687-72-9)(0.39g,3.02mmol)、1Nの水酸化ナトリウム溶液(3.00mL,3.00mmol)及び1-イソシアネート-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(CAS Registry Number: 35037-73-1)(0.84g,4.14mmol)から、標記化合物0.43g(43%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.29 (1H, br s), 8.70 (1H, s), 7.42-7.38 (2H, m), 7.18 (2H, d, J = 9.0 Hz), 6.39 (1H, s), 1.25 (3H, s), 1.25-1.17 (1H, m), 0.44-0.34 (4H, m).
MS m/z: 333 (M+H)+。
【0204】
(実施例3)
2-メチル-N-{[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}ロイシン
【0205】
【0206】
2-メチルロイシン(CAS Registry Number: 144-24-1)(100mg,0.69mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(0.83mL,0.83mmol)溶液に、1-イソシアネート-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(CAS Registry Number: 35037-73-1)(280mg,1.38mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で4時間攪拌した。酢酸エチル、水、1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.83mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物199mg(83%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ : 12.93 (1H, br s), 9.00 (1H, s), 7.46-7.41 (2H, m), 7.20 (2H, d, J = 9.0 Hz), 6.52 (1H, s), 2.08 (1H, dd, J = 13.3, 4.7 Hz), 1.66-1.56 (2H, m), 1.47 (3H, s), 0.86 (3H, d, J = 6.3 Hz), 0.83 (3H, d, J = 6.6 Hz).
MS m/z: 349 (M+H)+。
【0207】
(実施例4)
(-)-N-{[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン
【0208】
【0209】
D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)溶液に、1-イソシアネート-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(CAS Registry Number: 35037-73-1)(347mg,1.71mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.02mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物187mg(68%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, br s), 8.87 (1H, s), 7.48-7.44 (2H, m), 7.23-7.22 (2H, m), 6.47 (1H, s), 2.01-1.92 (1H, m), 1.81-1.72 (1H, m), 1.45 (3H, s), 0.81 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 321 (M+H)+.
[α]D
25 -8.12 ° (c 0.5, Methanol)。
【0210】
(実施例5)
ジシクロプロピル({[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)酢酸
【0211】
【0212】
アミノ(ジシクロプロピル)酢酸(CAS Registry Number: 6321-21-7)(100mg,0.64mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(0.77mL,0.77mmol)溶液に、1-イソシアネート-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(CAS Registry Number: 35037-73-1)(262mg,1.29mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で4時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.77mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物143mg(62%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.23 (1H, br s), 8.69 (1H, s), 7.41-7.37 (2H, m), 7.18 (2H, d, J = 9.0 Hz), 6.12 (1H, s), 1.26-1.19 (2H, m), 0.45-0.30 (8H, m).
MS m/z: 359 (M+H)+。
【0213】
(実施例6)
2-エチル-N-{[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}ノルバリン
【0214】
【0215】
2-エチルノルバリン 塩酸塩(CAS Registry Number: 1129277-25-3)(100mg,0.55mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.21mL,1.21mmol)溶液に、1-イソシアネート-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(CAS Registry Number: 35037-73-1)(224mg,1.10mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で2.5時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.66mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物88mg(46%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 13.05 (1H, br s), 9.10 (1H, s), 7.45-7.39 (2H, m), 7.17 (2H, d, J = 9.0 Hz), 6.38 (1H, s), 2.26-2.14 (2H, m), 1.71-1.58 (2H, m), 1.27-1.18 (1H, m), 1.07-0.97 (1H, m), 0.81 (3H, t, J = 7.2 Hz), 0.69 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 349 (M+H)+。
【0216】
(実施例7)
2-シクロプロピル-2-({[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸
【0217】
【0218】
2-アミノ-2-シクロプロピルブタン酸 塩酸塩(CAS Registry Number: 1864016-20-5)(50mg,0.28mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(0.61mL,0.61mmol)溶液に、1-イソシアネート-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(CAS Registry Number: 35037-73-1)(170mg,0.83mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.33mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物59mg(61%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.74 (1H, br s), 8.93 (1H, s), 7.42-7.38 (2H, m), 7.17 (2H, d, J = 9.0 Hz), 6.18 (1H, s), 2.25-2.16 (1H, m), 1.98-1.90 (1H, m), 1.30-1.23 (1H, m), 0.77 (3H, t, J = 7.4 Hz), 0.42-0.27 (4H, m).
MS m/z: 347 (M+H)+。
【0219】
(実施例8)
(-)-N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン
【0220】
【0221】
D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)溶液に、1-(ジフルオロメトキシ)-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 58417-15-5)(316mg,1.71mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で3.5時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.02mL)を加え、有機層と水層を分離後、水層を2Nの塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を、水及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒:メタノール/酢酸エチル=1/10-1/1(V/V)]で精製して、標記化合物166mg(64%)を白色固体として得た。得られた白色固体は結晶であった。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.65 (1H, br s), 8.75 (1H, s), 7.43-7.40 (2H, m), 7.12 (1H, t, J = 74.7 Hz), 7.10-7.06 (2H, m), 6.44 (1H, s), 2.03-1.94 (1H, m), 1.83-1.74 (1H, m), 1.47 (3H, s), 0.83 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 303 (M+H)+.
[α]D
25 -7.89 ° (c 1.0, Methanol)。
【0222】
本結晶について、銅のKα線(λ=1.54オングストローム、走査速度 = 20°/min)の照射で得られた粉末X線回折パターンを
図1に示す。
図1において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度20以上のピークを表1に示す。
【0223】
【0224】
(実施例9)
2-({[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)-2-エチルブタン酸
【0225】
【0226】
2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 2566-29-2)(100mg,0.76mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(0.92mL,0.92mmol)溶液に、1-(ジフルオロメトキシ)-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 58417-15-5)(282mg,1.52mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチル及び水を加え、有機層と水層を分離後、水層を2Nの塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下濃縮した。残渣物を1Nの水酸化ナトリウム溶液に溶かし、不溶物をろ過した。2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物143mg(59%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.97 (1H, br s), 8.94 (1H, s), 7.37-7.32 (2H, m), 7.03 (1H, t, J = 74.7 Hz), 7.02-6.97 (2H, m), 6.84 (1H, s), 2.23-2.15 (2H, m), 1.72-1.63 (2H, m), 0.70 (6H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 317 (M+H)+。
【0227】
(実施例10)
ジシクロプロピル({[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)酢酸
【0228】
【0229】
アミノ(ジシクロプロピル)酢酸(CAS Registry Number: 6321-21-7)(100mg,0.64mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(0.77mL,0.77mmol)溶液に、1-(ジフルオロメトキシ)-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 58417-15-5)(239mg,1.29mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で5時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.77mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体をろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥することで、標記化合物150mg(68%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 8.55 (1H, s), 7.34-7.30 (2H, m), 7.04 (1H, t, J = 74.7 Hz), 7.02-6.98 (2H, m), 6.05 (1H, s), 1.25-1.18 (2H, m), 0.44-0.30 (8H, m).
MS m/z: 341 (M+H)+。
【0230】
(実施例11)
2-シクロプロピル-2-({[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸
【0231】
【0232】
2-アミノ-2-シクロプロピルブタン酸 塩酸塩(CAS Registry Number: 1864016-20-5)(60mg,0.33mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(0.74mL,0.74mmol)溶液に、1-(ジフルオロメトキシ)-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 58417-15-5)(185mg,1.00mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.4 mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物78mg(71%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.70 (1H, br s), 8.79 (1H, s), 7.35-7.31 (2H, m), 7.04 (1H, t, J = 74.7 Hz), 7.02-6.98 (2H, m), 6.12 (1H, s), 2.24-2.15 (1H, m), 1.98-1.89 (1H, m), 1.30-1.23 (1H, m), 0.77 (3H, t, J = 7.4 Hz), 0.42-0.27 (4H, m).
MS m/z: 329 (M+H)+。
【0233】
(実施例12)
2-エチル-({[4-(フルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸
【0234】
【0235】
4-(フルオロメトキシ)アニリン(CAS Registry Number: 1359823-67-8)(500mg,3.54mmol)及びトリエチルアミン(1.19mL,8.50mmol)のトルエン(35.4mL)溶液に、トリホスゲン(547mg,1.84mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。トルエンで不溶物をろ過後、ろ液を減圧下濃縮して、1-(フルオロメトキシ)-4-イソシアネートベンゼンを薄茶色オイルの粗生成物として得た。
【0236】
得られた粗生成物のジクロロメタン(5mL)溶液を、2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 2566-29-2)(200mg,1.52mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.83mL,1.83mmol)溶液に加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.83mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物12mg(3%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 13.02 (1H, br s), 8.86 (1H, s), 7.34-7.30 (2H, m), 6.98-6.94 (2H, m), 6.29 (1H, s), 5.75 (2H, d, J = 55.1 Hz), 2.26-2.17 (2H, m), 1.77-1.65 (2H, m), 0.72 (6H, t, J = 7.2 Hz).
MS m/z: 299 (M+H)+。
【0237】
(実施例13)
N-{[4-(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン
【0238】
【0239】
4-(2,2,2-トリフルオロエチル)アニリン(CAS Registry Number: 131395-17-0)(400mg,2.28mmol)及びトリエチルアミン(764μL,5.48mmol)のトルエン(11.4mL)溶液に、トリホスゲン(352mg,1.19mmol)を加え、室温で20分間攪拌後、70℃で1.5時間攪拌した。室温まで冷却し、トルエンで不溶物をろ過した。ろ液を減圧下濃縮して、1-イソシアネート-4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ベンゼンを薄茶色オイルの粗生成物として得た。
【0240】
得られた粗生成物のジクロロメタン(3mL)溶液を、D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)溶液に加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.02mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物70mg(26%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 8.66 (1H, s), 7.32-7.30 (2H, m), 7.15 (2H, d, J = 8.6 Hz), 6.38 (1H, s), 3.48 (2H, q, J = 11.6 Hz), 1.95-1.86 (1H, m), 1.76-1.67 (1H, m), 1.40 (3H, s), 0.76 (3H, t, J = 7.6 Hz).
MS m/z: 319 (M+H)+。
【0241】
(実施例14)
2-エチル-2-[({4-[(トリフルオロメチル)スルファニル]フェニル}カルバモイル)アミノ]ブタン酸
【0242】
【0243】
4-[(トリフルオロメチル)スルファニル]アニリン(CAS Registry Number: 372-16-7)(400mg,2.07mmol)及びトリエチルアミン(693μL,4.97mmol)のトルエン(10.4mL)溶液に、トリホスゲン(319mg,1.08mmol)を加え、室温で15分間攪拌後、70℃で2時間攪拌した。室温まで冷却し、トルエンで不溶物をろ過した。ろ液を減圧濃縮して、1-イソシアネート-4-[(トリフルオロメチル)スルファニル]ベンゼンを薄茶色オイルの粗生成物として得た。
【0244】
得られた粗生成物のジクロロメタン(3mL)溶液を、2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 2566-29-2)(100mg,0.76mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(0.92mL,0.92mmol)溶液に加え、室温で2.5時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.92mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥することで、標記化合物168mg(63%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 13.08 (1H, br s), 9.31 (1H, s), 7.53-7.46 (4H, m), 6.48 (1H, s), 2.25-2.16 (2H, m), 1.73-1.64 (2H, m), 0.70 (6H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 351 (M+H)+。
【0245】
(実施例15)
(-)-N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリン
【0246】
【0247】
4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロアニリン(CAS Registry Number: 83190-01-6)(400mg,2.26mmol)及びトリエチルアミン(755μL,5.42mmol)のトルエン(11.3mL)溶液に、トリホスゲン(348mg,1.17mmol)を加え、室温で20分間攪拌後、70℃で80分間攪拌した。室温まで冷却し、トルエンで不溶物をろ過した。ろ液を減圧濃縮して、1-(ジフルオロメトキシ)-2-フルオロ-4-イソシアネートベンゼンを薄茶色オイルの粗生成物として得た。
【0248】
得られた粗生成物のジクロロメタン(3mL)溶液を、D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)溶液に加え、室温で3.5時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.02mL)を加え、有機層と水層を分離後、水層を2Nの塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒:メタノール/酢酸エチル=1/10-1/2(V/V)]で精製して、標記化合物49mg(18%)を白色固体として得た。得られた白色固体は結晶であった。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.65 (1H, br s), 8.91 (1H, s), 7.54 (1H, dd, J = 13.5, 2.5 Hz), 7.18 (1H, t, J = 9.0 Hz), 7.06 (1H, t, J = 73.5 Hz), 6.96 (1H, dq, J = 8.9, 1.2 Hz), 6.47 (1H, s), 1.96-1.87 (1H, m), 1.76-1.67 (1H, m), 1.40 (3H, s), 0.75 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 321 (M+H)+.
[α]D
25-8.82 ° (c 1.0, Methanol)。
【0249】
本結晶について、銅のKα線(λ=1.54オングストローム、走査速度 = 20°/min)の照射で得られた粉末X線回折パターンを
図2に示す。
図2において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度30以上のピークを表2に示す。
【0250】
【0251】
(実施例16)
2-({[4-(ジフルオロメトキシ)-2-フルオロフェニル]カルバモイル}アミノ)-2-エチルブタン酸
【0252】
【0253】
4-(ジフルオロメトキシ)-2-フルオロアニリン(CAS Registry Number: 1003865-65-3)(400mg,2.26mmol)及びトリエチルアミン(755μL,5.42mmol)のトルエン(11.3mL)溶液に、トリホスゲン(348mg,1.17mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。トルエンで不溶物をろ過し、ろ液を減圧濃縮して、4-(ジフルオロメトキシ)-2-フルオロ-1-イソシアネートベンゼンを薄黄色オイルの粗生成物として得た。
【0254】
得られた粗生成物のジクロロメタン(3mL)溶液を、2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 2566-29-2)(100mg,0.76mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(0.92mL,0.92mmol)溶液に加え、室温で5時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.92mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物18mg(7%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.87 (1H, br s), 8.76 (1H, d, J = 1.6 Hz), 8.07 (1H, t, J = 9.2 Hz), 7.14 (1H, t, J = 74.1 Hz), 7.14-7.10 (1H, m), 6.92-6.90 (1H, m), 6.87 (1H, s), 2.20-2.11 (2H, m), 1.76-1.67 (2H, m), 0.73 (6H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 335 (M+H)+。
【0255】
(実施例17)
N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-2-フルオロフェニル]カルバモイル}-D-イソバリン
【0256】
【0257】
4-(ジフルオロメトキシ)-2-フルオロアニリン(CAS Registry Number: 1003865-65-3)(400mg,2.26mmol)及びトリエチルアミン(0.755mL,5.42mmol)のトルエン(11.3mL)溶液に、トリホスゲン(348mg,1.17mmol)を加え、70℃で2時間攪拌した。室温まで冷却し、トルエンで不溶物をろ過した。ろ液を減圧濃縮して、4-(ジフルオロメトキシ)-2-フルオロ-1-イソシアネートベンゼンを薄黄色オイルの粗生成物として得た。
【0258】
得られた粗生成物のジクロロメタン(3mL)溶液を、D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)溶液に加え、室温で4時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.02mL)を加え、有機層と水層を分離後、水層を2Nの塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒:メタノール/酢酸エチル=1/10-1/1(V/V)]で精製して、標記化合物89mg(33%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.50 (1H, br s), 8.50 (1H, d, J = 2.3 Hz), 8.08 (1H, t, J = 9.2 Hz), 7.14 (1H, t, J = 74.1 Hz), 7.13 (1H, dd, J = 12.1, 2.7 Hz), 6.93-6.90 (1H, m), 6.88 (1H, s), 1.89-1.82 (1H, m), 1.78-1.69 (1H, m), 1.41 (3H, s), 0.80 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 321 (M+H)+。
【0259】
(実施例18)
N-{[3-クロロ-4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン
【0260】
【0261】
(18a)
ベンジル D-イソバリネート
ベンジル N-(tert-ブトキシカルボニル)-D-イソバリネート(CAS Registry Number: 141345-74-6,Journal of the American Chemical Society, 1992, 114, 4095-4106)(1.98g,6.43mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(4.92mL,64.3mmol)を加えて、室温で50分間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、飽和重曹水を加え、ジクロロメタンで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して、標記化合物1.25g(94%)を無色オイルとして得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 7.36-7.27 (5H, m), 5.11 (2H, s), 1.76-1.73 (1H, m), 1.60-1.54 (1H, m), 1.30 (3H, s), 0.80 (3H, t, J = 7.4 Hz)。
【0262】
(18b)
ベンジル N-{[3-クロロ-4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリネート
3-クロロ-4-(ジフルオロメトキシ)アニリン(200mg,1.03mmol)及びトリエチルアミン(346μL,2.48mmol)のトルエン(5.17mL)溶液に、トリホスゲン(159mg,0.54mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。トルエンで不溶物をろ過し、ろ液を減圧濃縮して、2-クロロ-1-(ジフルオロメトキシ)-4-イソシアネートベンゼンを茶色オイルの粗生成物として得た。
【0263】
得られた粗生成物を、実施例18aで得られたベンジル D-イソバリネート(200mg,0.96mmol)のテトラヒドロフラン(9.65mL)溶液に加え、室温で25分間攪拌した。減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=9/1-1/1(V/V)]で精製して、標記化合物390mg(95%)を薄茶色アモルファスとして得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 7.53 (1H, d, J = 2.3 Hz), 7.32-7.31 (5H, m), 7.09-7.07 (2H, m), 6.42 (1H, t, J = 73.7 Hz), 6.36 (1H, br s), 5.42 (1H, br s), 5.19 (1H, d, J = 12.1 Hz), 5.15 (1H, d, J = 12.1 Hz), 2.26-2.17 (1H, m), 1.89-1.80 (1H, m), 1.61 (3H, s), 0.76 (3H, t, J = 7.4 Hz)。
【0264】
(18c)
N-{[3-クロロ-4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン
実施例18bで得られたベンジル N-{[3-クロロ-4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリネート(390mg,0.91mmol)のメタノール/テトラヒドロフラン(1:1,20mL)溶液に、1Nの水酸化ナトリウム溶液(9.14mL,9.14mmol)を加え、50℃で2.5時間攪拌後、室温で一晩攪拌した。減圧濃縮し、酢酸エチル及び水を加え、有機層と水層を分離後、水層を2Nの塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を、水及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒:メタノール/酢酸エチル=1/10-1/1(V/V)]で精製して、標記化合物80mg(26%)を薄茶色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.67 (1H, br s), 8.97 (1H, s), 7.74 (1H, d, J = 2.3 Hz), 7.29-6.90 (3H, m), 6.54 (1H, s), 1.97-1.88 (1H, m), 1.76-1.67 (1H, m), 1.40 (3H, s), 0.75 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 337, 339 (M+H)+。
【0265】
(実施例19)
N-{[3-シアノ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-D-イソバリン
【0266】
【0267】
トリホスゲン(295mg,0.99mmol)のトルエン(2.97mL)溶液に、5-アミノ-2-(トリフルオロメトキシ)ベンゾニトリル(CAS Registry Number: 1261523-71-0)(300mg,1.48mmol)の1,4-ジオキサン(2.97mL)溶液を加え、100℃で2.5時間攪拌した。室温まで冷却し、トルエンで不溶物をろ過後、減圧濃縮して、5-イソシアネート-2-(トリフルオロメトキシ)ベンゾニトリルを薄茶色オイルの粗生成物として得た。
【0268】
得られた粗生成物のジクロロメタン(3mL)溶液を、D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)及び炭酸水素ナトリウム(143mg,1.71mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)溶液に加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.02mL)を加え、有機層と水層を分離後、水層を2Nの塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒:メタノール/酢酸エチル=1/20-3/2(V/V)]で精製して、標記化合物179mg(61%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.74 (1H, br s), 9.48 (1H, br s), 8.02 (1H, d, J = 2.7 Hz), 7.65 (1H, dd, J = 9.0, 2.7 Hz), 7.50 (1H, dd, J = 9.2, 1.4 Hz), 6.84 (1H, br s), 2.00-1.91 (1H, m), 1.77-1.68 (1H, m), 1.40 (3H, s), 0.73 (3H, t, J = 7.4 Hz)。
【0269】
(実施例20)
2-エチル-2-({[4-(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸
【0270】
【0271】
2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 2566-29-2)(200mg,1.52mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.83mL,1.83mmol)溶液に、1-イソシアネート-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(CAS Registry Number: 1548-13-6)(856mg,4.57mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.83mL)を加え、有機層と水層を分離後、水層を2Nの塩酸で酸性にした。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物364mg(75%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 13.13 (1H, br s), 9.36 (1H, s), 7.56 (4H, s), 6.51 (1H, s), 2.30-2.21 (2H, m), 1.77-1.68 (2H, m), 0.74 (6H, t, J = 7.6 Hz).
MS m/z: 319 (M+H)+。
【0272】
(実施例21)
ジシクロプロピル[(フェニルカルバモイル)アミノ]酢酸
【0273】
【0274】
アミノ(ジシクロプロピル)酢酸(CAS Registry Number: 6321-21-7)(100mg,0.64mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(773μL,0.77mmol)溶液に、イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 103-71-9)(154mg,1.29mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で4.5時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(773μL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物72mg(41%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.18 (1H, br s), 8.46 (1H, s), 7.29-7.27 (2H, m), 7.19-7.14 (2H, m), 6.86-6.82 (1H, m), 6.04 (1H, s), 1.25-1.18 (2H, m), 0.43-0.30 (8H, m).
MS m/z: 275 (M+H)+。
【0275】
(実施例22)
2-シクロプロピル-2-[(フェニルカルバモイル)アミノ]ブタン酸
【0276】
【0277】
2-アミノ-2-シクロプロピルブタン酸 塩酸塩(CAS Registry Number: 1864016-20-5)(53mg,0.30mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(649μL,0.65mmol)溶液に、イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 103-71-9)(105mg,0.89mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で4時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.35mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物42mg(54%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, br s), 8.70 (1H, s), 7.31-7.28 (2H, m), 7.18-7.14 (2H, m), 6.86-6.81 (1H, m), 6.11 (1H, s), 2.23-2.14 (1H, m), 1.99-1.90 (1H, m), 1.30-1.23 (1H, m), 0.77 (3H, t, J = 7.4 Hz), 0.42-0.27 (4H, m).
MS m/z: 263 (M+H)+。
【0278】
(実施例23)
2-シクロプロピル-2-{[(4-フルオロフェニル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸
【0279】
【0280】
2-アミノ-2-シクロプロピルブタン酸 塩酸塩(CAS Registry Number: 1864016-20-5)(56mg,0.31mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(686μL,0.69mmol)溶液に、1-フルオロ-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 1195-45-5)(128mg,0.94mmol)のジクロロメタン(2mL)溶液を加え、室温で4時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.37mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体をろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物57mg(65%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.68 (1H, br s), 8.74 (1H, s), 7.33-7.28 (2H, m), 7.04-6.97 (2H, m), 6.09 (1H, s), 2.24-2.15 (1H, m), 1.98-1.89 (1H, m), 1.30-1.23 (1H, m), 0.77 (3H, t, J = 7.4 Hz), 0.42-0.27 (4H, m).
MS m/z: 281 (M+H)+。
【0281】
(実施例24)
N-[(3-フルオロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン
【0282】
【0283】
D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)溶液に、1-フルオロ-3-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 404-71-7)(234mg,1.71mmol)のジクロロメタン(2mL)溶液を加え、室温で3時間攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.02mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物166mg(77%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.60 (1H, br s), 8.84 (1H, s), 7.40-7.36 (1H, m), 7.22-7.16 (1H, m), 6.94-6.91 (1H, m), 6.68-6.62 (1H, m), 6.44 (1H, s), 1.96-1.87 (1H, m), 1.76-1.67 (1H, m), 1.41 (3H, s), 0.76 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 255 (M+H)+。
【0284】
(実施例25)
(-)-N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン
【0285】
【0286】
D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)溶液に、1-クロロ-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 104-12-1)(262mg,1.71mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で4.5時間攪拌した。酢酸エチル、水を加え、不溶物をろ過した。ろ液を有機層と水層に分離後、水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物177mg(77%)を白色固体として得た。得られた白色固体は結晶であった。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.56 (1H, br s), 8.74 (1H, s), 7.36-7.32 (2H, m), 7.23-7.19 (2H, m), 6.39 (1H, s), 1.96-1.87 (1H, m), 1.76-1.67 (1H, m), 1.40 (3H, s), 0.76 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 271, 273 (M+H)+.
[α]D
25-9.95 ° (c 1.0, Methanol)。
【0287】
本結晶について、銅のKα線(λ=1.54オングストローム、走査速度 = 20°/min)の照射で得られた粉末X線回折パターンを
図3に示す。
図3において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度34以上のピークを表3に示す。
【0288】
【0289】
(実施例26)
N-[(3-クロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン
【0290】
【0291】
D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)溶液に、1-クロロ-3-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 2909-38-8)(262mg,1.71mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で2時間攪拌した。酢酸エチル、水を加え、不溶物をろ過後、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物165mg(71%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.61 (1H, br s), 8.82 (1H, s), 7.62 (1H, t, J = 2.0 Hz), 7.19 (1H, t, J = 8.2 Hz), 7.08-7.05 (1H, m), 6.90-6.87 (1H, m), 6.44 (1H, s), 1.96-1.87 (1H, m), 1.77-1.68 (1H, m), 1.40 (3H, s), 0.76 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 271, 273 (M+H)+。
【0292】
(実施例27)
2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
【0293】
【0294】
(27a)
ベンジル 2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
5-クロロチオフェン-3-カルボン酸(CAS Registry Number: 36157-42-3)(250mg,1.54mmol)及びトリエチルアミン(298μL,2.15mmol)のテトラヒドロフラン(8mL)懸濁液に、ジフェニルホスホリルアジド(508mg,1.85mmol)を加え、室温で7分間攪拌後、N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)を加え、室温で80分間攪拌した。ベンジル 2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 1413936-87-4,Beilstein Journal of Organic Chemistry, 2012, 8, 1265-1270)(408mg,1.85mmol)を加え、70℃で4.5時間攪拌した。室温まで冷却し、飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=9/1-3/1(V/V)]で精製して、標記化合物162mg(28%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 7.36-7.30 (5H, m), 6.83 (1H, d, J = 2.0 Hz), 6.78 (1H, d, J = 2.0 Hz), 6.40 (1H, s), 5.64 (1H, s), 5.16 (2H, s), 2.46-2.37 (2H, m), 1.85-1.76 (2H, m), 0.70 (6H, t, J = 7.4 Hz)。
【0295】
(27b)
2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
実施例27aで得られたベンジル 2-{[(5-クロロチオフェン-3-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸(160mg,0.42mmol)のメタノール/テトラヒドロフラン(1:1,4mL)溶液に、1Nの水酸化ナトリウム溶液(4.20mL,4.20mmol)を加え、室温で一晩攪拌後、50-60℃で10時間攪拌した。減圧濃縮し、ジエチルエーテル及び水を加え、有機層と水層を分離後した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物106mg(87%)を白色固体として得た。得られた白色固体は結晶であった。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 13.02 (1H, s), 9.18 (1H, s), 6.93 (1H, d, J = 2.0 Hz), 6.88 (1H, d, J = 2.0 Hz), 6.28 (1H, s), 2.22-2.13 (2H, m), 1.62-1.71 (2H, m), 1.05 (6H, t, J = 7.0 Hz).
MS m/z: 291, 293 (M+H)+。
【0296】
本結晶について、銅のKα線(λ=1.54オングストローム、走査速度 = 20°/min)の照射で得られた粉末X線回折パターンを
図4に示す。
図4において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度20以上のピークを表4に示す。
【0297】
【0298】
(実施例28)
2-{[(5-クロロチオフェン-2-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
【0299】
【0300】
(28a)
ベンジル 2-{[(5-クロロチオフェン-2-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
5-クロロチオフェン-2-カルボン酸(CAS Registry Number: 24065-33-6)(200mg,1.23mmol)及びトリエチルアミン(239μL,1.72mmol)のトルエン(4.9mL)溶液に、0℃でジフェニルホスホリルアジド(406mg,1.48mmol)を加え、室温で30分間攪拌し、ベンジル 2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 1413936-87-4)(Beilstein Journal of Organic Chemistry, 2012, 8, 1265-1270)(272mg,1.23mmol)を加え、80℃で3.5時間攪拌した。室温まで冷却し、飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=9/1-2/1(V/V)]で精製して、標記化合物342mg(73%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 7.35-7.27 (5H, m), 6.86 (1H, br s), 6.63 (1H, d, J = 3.9 Hz), 6.33 (1H, d, J = 4.3 Hz), 5.87 (1H, s), 5.14 (2H, s), 2.47-2.38 (2H, m), 1.85-1.75 (2H, m), 0.68 (6H, t, J = 7.4 Hz)。
【0301】
(28b)
2-{[(5-クロロチオフェン-2-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
実施例28aで得られたベンジル 2-{[(5-クロロチオフェン-2-イル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸(50mg,0.13mmol)のメタノール/テトラヒドロフラン(2:1,3mL)溶液に、1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.05mL,1.05mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。減圧濃縮し、酢酸エチル及び水を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物7mg(18%)を黒色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 13.15 (1H, br s), 10.01 (1H, s), 6.71 (1H, d, J = 3.9 Hz), 6.47 (1H, s), 6.11 (1H, d, J = 4.3 Hz), 2.21-2.12 (2H, m), 1.71-1.63 (2H, m), 0.68 (6H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 291, 293 (M+H)+。
【0302】
(実施例29)
N-[(3,4-ジクロロフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン
【0303】
【0304】
実施例25と同様の方法で、D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)、1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.02mL,1.02mmol)及び1,2-ジクロロ-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 102-36-3)(321mg,1.71mmol)から、標記化合物105mg(40%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.75 (1H, br s), 9.03 (1H, s), 7.87 (1H, d, J = 2.3 Hz), 7.48 (1H, d, J = 8.6 Hz), 7.20 (1H, dd, J = 8.8, 2.5 Hz), 6.58 (1H, s), 2.04-1.95 (1H, m), 1.83-1.74 (1H, m), 1.48 (3H, s), 0.83 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 305, 307 (M+H)+。
【0305】
(実施例30)
(-)-N-[(4-ブロモフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン
【0306】
【0307】
D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)溶液に、1-ブロモ-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 2493-02-9)(338mg,1.71mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチル及び水を加え、不溶物をろ過した。ろ液を有機層と水層に分離後、水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物228mg(85%)を白色固体として得た。得られた白色固体は結晶であった。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.69 (1H, s), 8.83 (1H, s), 7.42-7.35 (4H, m), 6.49 (1H, s), 2.03-1.94 (1H, m), 1.83-1.76 (1H, m), 1.47 (3H, s), 0.83 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 315, 317 (M+H)+.
[α]D
25-8.70 ° (c 1.0, Methanol)。
【0308】
本結晶について、銅のKα線(λ=1.54オングストローム、走査速度 = 20°/min)の照射で得られた粉末X線回折パターンを
図5に示す。
図5において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度20以上のピークを表5に示す。
【0309】
【0310】
(実施例31)
(-)-N-[(4-ヨードフェニル)カルバモイル]-D-イソバリン
【0311】
【0312】
D-イソバリン(CAS Registry Number: 3059-97-0)(100mg,0.85mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)溶液に、1-ヨード-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 15845-62-2)(418mg,1.71mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.02mL,1.02mmol)を加え、不溶物をろ過した。ろ液を有機層と水層に分離後、水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物193mg(62%)を白色固体として得た。得られた白色固体は結晶であった。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.60 (1H, br s), 8.73 (1H, s), 7.50-7.46 (2H, m), 7.19-7.15 (2H, m), 6.41 (1H, s), 1.95-1.86 (1H, m), 1.75-1.66 (1H, m), 1.39 (3H, s), 0.75 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 363 (M+H)+.
[α]D
25-8.04 ° (c 1.0, Methanol)。
【0313】
本結晶について、銅のKα線(λ=1.54オングストローム、走査速度 = 20°/min)の照射で得られた粉末X線回折パターンを
図6に示す。
図6において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度29以上のピークを表6に示す。
【0314】
【0315】
(実施例32)
2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸
【0316】
【0317】
2-アミノ-2-シクロプロピルブタン酸 モノ塩酸塩(CAS Registry Number: 1864016-20-5)(60mg,0.33mmol)の1Nの水酸化ナトリウム(735μL)溶液に、3-イソシアネートベンゾニトリル(CAS Registry Number: 16413-26-6)(144mg,1.00mmol)のジクロロメタン/テトラヒドロフラン(3:1,4mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。酢酸エチル、水及び1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.4mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びn-ヘキサンで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物22mg(23%)を白色固体として得た。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.79 (1H, s), 9.10 (1H, s), 7.88 (1H, t, J = 1.8 Hz), 7.46 (1H, dq, J = 8.3, 1.2 Hz), 7.39 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.30 (1H, dt, J = 7.6, 1.4 Hz), 6.30 (1H, s), 2.26-2.17 (1H, m), 1.99-1.90 (1H, m), 1.31-1.24 (1H, m), 0.77 (3H, t, J = 7.4 Hz), 0.43-0.29 (4H, m).
MS m/z: 288 (M+H)+。
【0318】
(実施例33)
(+)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸及び(-)-2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸
【0319】
【0320】
日本分光(JASCO)の超臨界CO2クロマトグラフィーシステムを用いて2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-シクロプロピルブタン酸(615 mg,2.14 mmol)の光学分割を行い、以下に示すWaters社のUPC2システムを用いた分析条件下で、3.754分に保持時間を示す(+)体の標記化合物239 mg(39%)を白色固体として得、6.737分に保持時間を示す(-)体の標記化合物245mg(40%)を白色固体として得た。得られた(+)体の標記化合物の白色固体と(-)体の標記化合物の白色固体は、いずれも結晶であった。
【0321】
分析条件:
カラム:Acyon SFC CSP Amylose-c(5μm)250x4.6mmI.D.
溶離液:CO2/エタノール(75/25)
流量:3.0mL/min
温度:35℃
背圧:13.8MPa(2000psi)
背圧:10MPa
検出:UV(220nm)
注入量:5μL(1.0mg/mL)。
【0322】
分取条件:
カラム:Amylose-C(5μm)250x30mmI.D.
溶離液:CO2/エタノール(75/25)
流量:120mL/分
温度:25℃
背圧:10MPa。
【0323】
3.754分に保持時間を示す(+)体:
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.79 (1H, s), 9.10 (1H, s), 7.88 (1H, t, J = 1.8 Hz), 7.46 (1H, dq, J = 8.3, 1.2 Hz), 7.39 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.30 (1H, dt, J = 7.6, 1.4 Hz), 6.30 (1H, s), 2.26-2.17 (1H, m), 1.99-1.90 (1H, m), 1.31-1.24 (1H, m), 0.77 (3H, t, J= 7.4 Hz), 0.43-0.29 (4H, m).
MS m/z: 288 (M+H)+.
[α]D
25+25.81 ° (c 0.5, Methanol)。
【0324】
(+)体の結晶について、銅のKα線(λ=1.54オングストローム、走査速度 = 20°/min)の照射で得られた粉末X線回折パターンを
図7に示す。
図7において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度8以上のピークを表7に示す。
【0325】
【0326】
6.737分に保持時間を示す(-)体:
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.79 (1H, s), 9.10 (1H, s), 7.88 (1H, t, J = 1.8 Hz), 7.46 (1H, dq, J = 8.3, 1.2 Hz), 7.39 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.30 (1H, dt, J = 7.6, 1.4 Hz), 6.30 (1H, s), 2.26-2.17 (1H, m), 1.99-1.90 (1H, m), 1.31-1.24 (1H, m), 0.77 (3H, t, J= 7.4 Hz), 0.43-0.29 (4H, m).
MS m/z: 288 (M+H)+.
[α]D
25-25.46 ° (c 0.5, Methanol)。
【0327】
(-)体の結晶について、銅のKα線(λ=1.54オングストローム、走査速度 = 20°/min)の照射で得られた粉末X線回折パターンを
図8に示す。
図8において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度15以上のピークを表8に示す。
【0328】
【0329】
(実施例34)
{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}(ジシクロプロピル)酢酸
【0330】
【0331】
実施例32と同様の方法で、アミノ(ジシクロプロピル)酢酸(CAS Registry Number: 6321-21-7)(100mg,0.64mmol)、1Nの水酸化ナトリウム溶液(773μL,0.77mmol)及び3-イソシアネートベンゾニトリル(CAS Registry Number: 16413-26-6)(186mg,1.29mmol)から、標記化合物80mg(42%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 8.83 (1H, s), 7.86 (1H, t, J = 1.8 Hz), 7.47-7.43 (1H, m), 7.39 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.30 (1H, dt, J = 7.4, 1.4 Hz), 6.24 (1H, s), 1.26-1.19 (2H, m), 0.45-0.31 (8H, m).
MS m/z: 300 (M+H)+。
【0332】
(実施例35)
{[(4-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}(ジシクロプロピル)酢酸
【0333】
【0334】
実施例32と同様の方法で、アミノ(ジシクロプロピル)酢酸(CAS Registry Number: 6321-21-7)(100mg,0.64mmol)、1Nの水酸化ナトリウム溶液(773μL,0.77mmol)、4-イソシアネートベンゾニトリル(CAS Registry Number: 40465-45-0)(186mg,1.29mmol)から、標記化合物24mg(12%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.33 (1H, s), 9.02 (1H, s), 7.66-7.63 (2H, m), 7.50-7.47 (2H, m), 6.31 (1H, s), 1.29-1.21 (2H, m), 0.48-0.33 (8H, m).
MS m/z: 300 (M+H)+。
【0335】
(実施例36)
2-{[(3-シアノ-5-フルオロフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
【0336】
【0337】
実施例32と同様の方法で、2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 2566-29-2)(100mg,0.76mmol)、1Nの水酸化ナトリウム溶液(915μL,0.92mmol)及び3-フルオロ-5-イソシアネートベンゾニトリル(CAS Registry Number: 1261862-00-3,ACS Chemical Neuroscience, 2013,4, 1217-1228)(238mg,1.47mmol)から、標記化合物20mg(9%)を薄黄色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 13.14 (1H, br s), 9.49 (1H, s), 7.57-7.52 (2H, m), 7.30-7.27 (1H, m), 6.56 (1H, s), 2.24-2.15 (2H, m), 1.73-1.64 (2H, m), 0.70 (6H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 294 (M+H)+。
【0338】
(実施例37)
2-{[(4-クロロ-3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
【0339】
【0340】
実施例32と同様の方法で、2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 2566-29-2)(100mg,0.76mmol)、1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.83mL,1.83mmol)及び2-クロロ-5-イソシアネートベンゾニトリル(CAS Registry Number: 1261672-37-0)(468mg,2.62mmol)から、標記化合物6mg(3%)を薄黄色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 8.18 (1H, br s), 8.18 (1H, br s), 7.48 (1H, d, J = 8.6 Hz), 7.14 (1H, br s), 2.14-2.06 (2H, m), 1.69-1.61 (2H, m), 0.66 (6H, t, J = 7.2 Hz).
MS m/z: 310, 312 (M+H)+。
【0341】
(実施例38)
({[4-(シアノメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)(ジシクロプロピル)酢酸
【0342】
【0343】
実施例32と同様の方法で、アミノ(ジシクロプロピル)酢酸(CAS Registry Number: 6321-21-7)(100mg,0.64mmol)、1Nの水酸化ナトリウム溶液(773μL,0.77mmol)及び(4-イソシアネートフェニル)アセトニトリル(CAS Registry Number: 59513-89-2)(204mg,1.29mmol)から、標記化合物137mg(68%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.21 (1H, br s), 8.55 (1H, s), 7.32-7.30 (2H, m), 7.15 (2H, d, J = 8.6 Hz), 6.07 (1H, s), 3.88 (2H, s), 1.25-1.18 (2H, m), 0.44-0.30 (8H, m).
MS m/z: 314 (M+H)+。
【0344】
(実施例39)
2-({[4-(1-シアノシクロプロピル)フェニル]カルバモイル}アミノ)-2-エチルブタン酸
【0345】
【0346】
トリホスゲン(377mg,1.27mmol)のトルエン(3.79mL)溶液に、1-(4-アミノフェニル)シクロプロパンカルボニトリル(CAS Registry Number: 108858-86-2)(300mg,1.90mmol)の1,4-ジオキサン(3.79mL)溶液を加え、100℃で4時間攪拌した。室温まで冷却し、トルエンで不溶物をろ過後、減圧濃縮して、1-(4-イソシアネートフェニル)シクロプロパンカルボニトリルを薄茶色固体の粗生成物として得た。
【0347】
得られた粗生成物、2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 2566-29-2)(100mg,0.76mmol)、1Nの水酸化ナトリウム溶液(0.92mL,0.92mmol)及び炭酸水素ナトリウム(128mg,1.52mmol)から、実施例19と同様の方法で、標記化合物201mg(84%)を薄黄色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.99 (1H, br s), 8.97 (1H, s), 7.35-7.31 (2H, m), 7.15-7.12 (2H, m), 6.33 (1H, s), 2.23-2.14 (2H, m), 1.72-1.61 (4H, m), 1.35 (2H, dd, J = 8.0, 5.3 Hz), 0.70 (6H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 316 (M+H)+。
【0348】
(実施例40)
2-({[4-(1-シアノエチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)-2-エチルブタン酸
【0349】
【0350】
トリホスゲン(408mg,1.37mmol)のトルエン(4.1mL)溶液に、2-(4-アミノフェニル)プロパンニトリル(CAS Registry Number: 28694-90-8)(300mg,2.05mmol)の1,4-ジオキサン(4.1mL)溶液を加え、100℃で3.5時間攪拌した。室温まで冷却し、トルエンで不溶物をろ過後、減圧濃縮して、1-(4-イソシアネートフェニル)プロパンニトリルを薄茶色オイルの粗生成物として得た。
【0351】
得られた粗生成物、2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 2566-29-2)(100mg,0.76mmol)、1Nの水酸化ナトリウム溶液(915μL,0.92mmol)及び炭酸水素ナトリウム(128mg,1.52mmol)から、実施例19と同様の方法で、標記化合物178mg(77%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 13.00 (1H, br s), 8.97 (1H, s), 7.36-7.33 (2H, m), 7.21-7.18 (2H, m), 6.34 (1H, s), 4.14 (1H, q, J = 7.3 Hz), 2.24-2.15 (2H, m), 1.72-1.63 (2H, m), 1.45 (3H, d, J = 7.4 Hz), 0.70 (6H, t, J = 7.2 Hz).
MS m/z: 304 (M+H)+。
【0352】
(実施例41)
2-[(ビフェニル-4-イルカルバモイル)アミノ]-2-エチルブタン酸
【0353】
【0354】
(41a)
メチル 2-[(ビフェニル-4-イルカルバモイル)アミノ]-2-エチルブタン酸
4-イソシアネートビフェニル(CAS Registry Number: 92-95-5)(200mg,1.02mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(5.12mL)懸濁液に、メチル 2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 70974-26-4)(223mg,1.54mmol)を加え、50℃で8時間攪拌後、室温で一晩攪拌した。水を加え、酢酸エチルで抽出し、抽出液を水及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1-1/1(V/V)]で精製して、標記化合物222mg(64%)を無色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 7.54-7.50 (4H, m), 7.41-7.34 (4H, m), 7.31-7.26 (1H, m), 6.40 (1H, s), 5.74 (1H, s), 3.75 (3H, s), 2.53-2.43 (2H, m), 1.85-1.75 (2H, m), 0.77 (6H, t, J = 7.4 Hz)。
【0355】
(41b)
3-(ビフェニル-4-イル)-5,5-ジエチルイミダゾリジン-2,4-ジオン
実施例41aで得られたメチル 2-[(ビフェニル-4-イルカルバモイル)アミノ]-2-エチルブタン酸(222mg,0.65mmol)のメタノール/テトラヒドロフラン(2:3,5mL)懸濁液に、1Nの水酸化ナトリウム溶液(1.30mL,1.30mmol)を加え、室温で2.5時間攪拌した。1Nの塩酸を加えて酸性にし、減圧濃縮した。水を加え、酢酸エチルで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣に、ジイソプロピルエーテルを加えて生じた固体を、ろ過し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物183mg(91%)を固体として得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 7.65-7.62 (2H, m), 7.56-7.53 (2H, m), 7.44-7.40 (4H, m), 7.36-7.31 (1H, m), 5.19 (1H, br s), 2.02-1.93 (2H, m), 1.77-1.68 (2H, m), 0.97 (6H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 309 (M+H)+。
【0356】
(41c)
2-[(ビフェニル-4-イルカルバモイル)アミノ]-2-エチルブタン酸
実施例41bで得られた3-(ビフェニル-4-イル)-5,5-ジエチルイミダゾリジン-2,4-ジオン(180mg,0.58mmol)のメタノール/テトラヒドロフラン(2:1,6mL)溶液に、5Nの水酸化ナトリウム溶液(1.17mL,5.84mmol)を加え、70℃で13時間攪拌した。室温まで冷却し、減圧下濃縮し、酢酸エチル及び水を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びジイソプロピルエーテルで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物165mg(87%)を無色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 13.02 (1H, br s), 9.00 (1H, s), 7.58-7.56 (2H, m), 7.51-7.48 (2H, m), 7.44-7.37 (4H, m), 7.28-7.24 (1H, m), 6.37 (1H, s), 2.29-2.17 (2H, m), 1.73-1.65 (2H, m), 0.72 (6H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 327 (M+H)+。
【0357】
(実施例42)
2-エチル-2-{[(2’-フルオロビフェニル-4-イル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸
【0358】
【0359】
(42a)
3-(4-ブロモフェニル)-5,5-ジエチルイミダゾリジン-2,4-ジオン
1-ブロモ-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 2493-02-9)(2.18g,11.0mmol)のテトラヒドロフラン(55mL)溶液に、メチル 2-アミノ-2-エチルブタン酸(CAS Registry Number: 70974-26-4)(2.40g,16.5mmol)を加え、70℃で5時間攪拌後、室温で一晩攪拌した。メタノール(15mL)、5Nの水酸化ナトリウム溶液(4.40mL,22.0mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。2Nの塩酸で中和し、減圧濃縮後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して生じた固体を、ろ過し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物3.15g(92%)を無色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 7.57-7.53 (2H, m), 7.28-7.24 (2H, m), 5.34 (1H, br s), 1.98-1.89 (2H, m), 1.75-1.66 (2H, m), 0.93 (6H, t, J = 7.4 Hz)。
【0360】
(42b)
5,5-ジエチル-3-(2’-フルオロビフェニル-4-イル)イミダゾリジン-2,4-ジオン
実施例42aで得られた3-(4-ブロモフェニル)-5,5-ジエチルイミダゾリジン-2,4-ジオン(59mg,0.19mmol)、(2-フルオロフェニル)ボロン酸(CAS Registry Number: 1993-03-9)(39.8mg,0.28mmol)のアセトニトリル/水(5:2,2.7mL)溶液に、炭酸カリウム(65.5mg,0.47mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(11mg,0.01mmol)を加え、窒素雰囲気下、70℃で3時間攪拌した。室温まで冷却し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=9/1-1/2(V/V)]で精製して、標記化合物53mg(86%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 7.63-7.59 (2H, m), 7.46-7.38 (3H, m), 7.33-7.28 (1H, m), 7.21-7.10 (2H, m), 5.22 (1H, br s), 2.02-1.93 (2H, m), 1.77-1.68 (2H, m), 0.97 (6H, t, J = 7.4 Hz)。
【0361】
(42c)
2-エチル-2-{[(2’-フルオロビフェニル-4-イル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸
実施例42bで得られた5,5-ジエチル-3-(2’-フルオロビフェニル-4-イル)イミダゾリジン-2,4-ジオン(53mg,0.16mmol)のメタノール/テトラヒドロフラン(1:1,2mL)溶液に、5Nの水酸化ナトリウム溶液(0.65mL,3.25mmol)を加え、70℃で12時間攪拌した。室温まで冷却後、減圧濃縮し、ジエチルエーテル及び水を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びジイソプロピルエーテルで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物46mg(82%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 13.04 (1H, br s), 9.05 (1H, s), 7.47-7.20 (8H, m), 6.38 (1H, s), 2.26-2.17 (2H, m), 1.74-1.65 (2H, m), 0.72 (6H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 345 (M+H)+。
【0362】
(実施例43)
2-エチル-2-({[4-(ピペリジン-1-イル)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸
【0363】
【0364】
(43a)
2-エチル-2-({[4-(ピペリジン-1-イル)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸
実施例42aで得られた3-(4-ブロモフェニル)-5,5-ジエチルイミダゾリジン-2,4-ジオン(152mg,0.49mmol)、ピペリジン(135μL,1.37mmol)、 クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシ-1,1’-ビフェニル)[2-(2-アミノエチルフェニル)]パラジウム(II) メチル-tert-ブチルエーテル付加物(CAS Registry Number: 1028206-60-1)(19.9mg,0.02mmol)、ナトリウム tert-ブトキシド(141mg,1.47mmol)及び2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル(CAS Registry Number: 787618-22-8)(11.4mg,0.02mmol)の1,4-ジオキサン(4.88mL)懸濁液を、窒素雰囲気下、100℃で5時間攪拌した。室温まで冷却し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=9/1-1/2(V/V)]で精製して、標記化合物143mg(93%)を無色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 7.16-7.12 (2H, m), 6.94-6.90 (2H, m), 5.31 (1H, br s), 3.16-3.13 (4H, m), 1.97-1.88 (2H, m), 1.72-1.63 (6H, m), 1.57-1.51 (2H, m), 0.93 (6H, t, J = 7.4 Hz)。
【0365】
(43b)
2-エチル-2-({[4-(ピペリジン-1-イル)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸
実施例43aで得られた2-エチル-2-({[4-(ピペリジン-1-イル)フェニル]カルバモイル}アミノ)ブタン酸(143mg,0.45mmol)のメタノール/テトラヒドロフラン(1:1,2mL)溶液に、5Nの水酸化ナトリウム溶液(907μL,4.53mmol)を加え、70℃で8.5時間攪拌した。室温まで冷却後、減圧濃縮した。得られた残渣にジエチルエーテル及び水を加え、有機層と水層を分離した。水層を2Nの塩酸で酸性にして生じた固体を、ろ過し、水及びジイソプロピルエーテルで順次洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物119mg(79%)を薄茶色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.90 (1H, br s), 8.56 (1H, s), 7.15 (2H, d, J = 9.0 Hz), 6.77 (2H, d, J = 9.0 Hz), 6.16 (1H, s), 2.96-2.93 (4H, m), 2.22-2.13 (2H, m), 1.71-1.62 (2H, m), 1.60-1.54 (4H, m), 1.48-1.42 (2H, m), 0.70 (6H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 334 (M+H)+。
【0366】
(実施例44)
2-({[4-(3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)フェニル]カルバモイル}アミノ)-2-エチルブタン酸
【0367】
【0368】
(44a)
3-[4-(3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)フェニル]-5,5-ジエチルイミダゾリジン-2,4-ジオン
実施例43aと同様の方法で、実施例42aで得られた3-(4-ブロモフェニル)-5,5-ジエチルイミダゾリジン-2,4-ジオン(152mg,0.49mmol)、3,3-ジフルオロピロリジン塩酸塩(CAS Registry Number: 163457-23-6)(196mg,1.37mmol)、 クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシ-1,1’-ビフェニル)[2-(2-アミノエチルフェニル)]パラジウム(II) メチル-tert-ブチルエーテル付加物(CAS Registry Number: 1028206-60-1)(19.9mg,0.02mmol)、ナトリウム tert-ブトキシド(272mg,2.83mmol)及び2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル(CAS Registry Number: 787618-22-8)(11.4mg,0.02mmol)から、標記化合物117mg(71%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 7.18-7.15 (2H, m), 6.57-6.54 (2H, m), 5.22 (1H, br s), 3.65 (2H, t, J = 13.3 Hz), 3.50 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.52-2.41 (2H, m), 1.98-1.89 (2H, m), 1.73-1.64 (2H, m), 0.93 (6H, t, J = 7.4 Hz)。
【0369】
(44b)
2-({[4-(3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)フェニル]カルバモイル}アミノ)-2-エチルブタン酸
実施例43bと同様の方法で、実施例44aで得られた3-[4-(3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)フェニル]-5,5-ジエチルイミダゾリジン-2,4-ジオン(117mg,0.35mmol)及び5Nの水酸化ナトリウム溶液(694μL,3.47mmol)から、標記化合物60mg(49%)を薄茶色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.92 (1H, br s), 8.56 (1H, s), 7.23-7.19 (2H, m), 6.56-6.52 (2H, m), 6.18 (1H, s), 3.61 (2H, t, J = 13.7 Hz), 3.39 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.57-2.45 (2H, m), 2.26-2.17 (2H, m), 1.75-1.66 (2H, m), 0.74 (6H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 356 (M+H)+。
【0370】
(実施例45)
(+)-N-{[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-L-イソバリン
【0371】
【0372】
実施例4と同様の方法で、L-イソバリン(CAS Registry Number: 595-40-4)(100mg,0.85mmol)、1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)及び1-イソシアネート-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(CAS Registry Number: 35037-73-1)(347mg,1.71mmol)から、標記化合物208mg(71%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, br s), 8.87 (1H, s), 7.48-7.44 (2H, m), 7.23-7.22 (2H, m), 6.47 (1H, s), 2.01-1.92 (1H, m), 1.81-1.72 (1H, m), 1.45 (3H, s), 0.81 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 321 (M+H)+.
[α]D
25+8.67 ° (c 0.5, Methanol)。
【0373】
(実施例46)
(+)-N-{[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]カルバモイル}-L-イソバリン
【0374】
【0375】
実施例4と同様の方法で、L-イソバリン(CAS Registry Number: 595-40-4)(100mg,0.85mmol)、1Nの水酸化ナトリウム(1.02mL,1.02mmol)、及び1-(ジフルオロメトキシ)-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 58417-15-5)(316mg,1.71mmol)から、標記化合物103mg(40%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.65 (1H, br s), 8.75 (1H, s), 7.43-7.40 (2H, m), 7.12 (1H, t, J = 74.7 Hz), 7.10-7.06 (2H, m), 6.44 (1H, s), 2.03-1.94 (1H, m), 1.83-1.74 (1H, m), 1.47 (3H, s), 0.83 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 303 (M+H)+。
[α]D
25+8.11 ° (c 1.0, Methanol)。
【0376】
(実施例47)
(+)-N-{[4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロフェニル]カルバモイル}-L-イソバリン
【0377】
【0378】
4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロアニリン(CAS Registry Number: 83190-01-6)(500mg,2.82mmol)及びトリエチルアミン(944μL,6.77mmol)のトルエン(14.1mL)溶液に、トリホスゲン(436mg,1.47mmol)を加え、室温で2.5時間攪拌した。トルエンで不溶物をろ過後、ろ液を減圧濃縮して、1-(ジフルオロメトキシ)-2-フルオロ-4-イソシアネートベンゼンを薄茶色オイルの粗生成物として得た。
【0379】
実施例4と同様の方法で、得られた粗生成物、L-イソバリン(CAS Registry Number: 595-40-4)(110mg,0.94mmol)、及び1Nの水酸化ナトリウム(1mL,1mmol)から、標記化合物10mg(3%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.65 (1H, br s), 8.91 (1H, s), 7.54 (1H, dd, J = 13.5, 2.5 Hz), 7.18 (1H, t, J = 9.0 Hz), 7.06 (1H, t, J = 73.5 Hz), 6.96 (1H, dq, J = 8.9, 1.2 Hz), 6.47 (1H, s), 1.96-1.87 (1H, m), 1.76-1.67 (1H, m), 1.40 (3H, s), 0.75 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 321 (M+H)+.
[α]D
25+9.05 ° (c 1.0, Methanol)。
【0380】
(実施例48)
(+)-N-[(4-クロロフェニル)カルバモイル]-L-イソバリン
【0381】
【0382】
実施例4と同様の方法で、L-イソバリン(CAS Registry Number: 595-40-4)(200mg,1.71mmol)、1Nの水酸化ナトリウム(2.05mL,2.05mmol)、及び1-クロロ-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 104-12-1)(524mg,3.41mmol)から、標記化合物292mg(63%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.56 (1H, br s), 8.74 (1H, s), 7.36-7.32 (2H, m), 7.23-7.19 (2H, m), 6.39 (1H, s), 1.96-1.87 (1H, m), 1.76-1.67 (1H, m), 1.40 (3H, s), 0.76 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 271, 273 (M+H)+。
[α]D
25+9.26 ° (c 1.0, Methanol)。
【0383】
(実施例49)
(+)-N-[(4-ブロモフェニル)カルバモイル]-L-イソバリン
【0384】
【0385】
実施例4と同様の方法で、L-イソバリン(CAS Registry Number: 595-40-4)(115mg,0.98mmol)、1Nの水酸化ナトリウム(1.18mL,1.18mmol)、及び1-ブロモ-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 2493-02-9)(389mg,1.96mmol)から、標記化合物193mg(62%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.69 (1H, s), 8.83 (1H, s), 7.42-7.35 (4H, m), 6.49 (1H, s), 2.03-1.94 (1H, m), 1.83-1.76 (1H, m), 1.47 (3H, s), 0.83 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 315, 317 (M+H)+.
[α]D
25+9.10 ° (c 1.0, Methanol)。
【0386】
(実施例50)
(+)-N-[(4-ヨードフェニル)カルバモイル]-L-イソバリン
【0387】
【0388】
実施例4と同様の方法で、L-イソバリン(CAS Registry Number: 595-40-4)(115mg,0.98mmol)、1Nの水酸化ナトリウム(1.18mL,1.18mmol)及び1-ヨード-4-イソシアネートベンゼン(CAS Registry Number: 15845-62-2)(481mg,1.96mmol)から、標記化合物194mg(55%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6) δ: 12.60 (1H, br s), 8.73 (1H, s), 7.50-7.46 (2H, m), 7.19-7.15 (2H, m), 6.41 (1H, s), 1.95-1.86 (1H, m), 1.75-1.66 (1H, m), 1.39 (3H, s), 0.75 (3H, t, J = 7.4 Hz).
MS m/z: 363 (M+H)+.
[α]D
25+8.52 ° (c 0.89, Methanol)。
【0389】
(試験例1)トリプトファナーゼ酵素阻害活性
乳酸脱水素酵素(LDH)を用いる方法によって、トリプトファナーゼ阻害活性を評価した。基質をL-トリプトファンとして、トリプトファナーゼと酵素反応させることで生じるピルビン酸をLDHと酵素反応させることで共役する反応時間依存的なNADH減少速度を分光光度計で測定した(Phillips-RS et al., Biochemistry, 23, 6228-6234 (1984))。トリプトファナーゼ存在下で試験化合物未添加時(DMSOのみ)の酵素阻害活性を対照とした。酵素は、Bacteroides tetaiotaomicronのトリプトファナーゼ(Genbank accession number: HC914434.1)を使用した。
【0390】
試験化合物をDMSOで任意の濃度に溶解し(30 mMから30 nMまで10倍公比)、試験化合物溶液を調製した。LDH、NADH及びL-トリプトファンを蒸留水でそれぞれ80 units/mL, 10 mM及び50 mMの濃度になるように調製した。Bacteroidesトリプトファナーゼは30 mg/mLになるように調製した。緩衝液にはカリウム-リン酸緩衝液を用いた。反応液の組成を表9に示す。
【0391】
【0392】
反応液Aを96 well plateに1 wellにつき284.8 μL分注し、試験化合物溶液を最終濃度で1/100になるように1 wellにつき3.2 μLずつ添加した(反応液B)。反応液Bを37℃で30分間インキュベーションした後、L-トリプトファンを最終濃度で10 mMになるように1 wellにつき32 μL添加し(反応液C)、37℃で30分間にわたってNADHの消失速度をモニタするために340 nmの吸光度を測定しつつ酵素反応を行った。NADHの消失速度をもとに化合物のトリプトファナーゼ阻害活性を評価した。また、試験化合物の代わりに次の化合物を同様に試験した。
化合物A:2-エチル-2-[(フェニルカルバモイル)アミノ]ブタン酸
【0393】
【0394】
化合物B:2-{[(3-クロロフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
【0395】
【0396】
化合物C:2-{[(4-クロロフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
【0397】
【0398】
化合物D:2-エチル-2-{[(4-フルオロフェニル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸
【0399】
【0400】
化合物E:2-エチル-2-{[(3-フルオロフェニル)カルバモイル]アミノ}ブタン酸
【0401】
【0402】
化合物F:2-{[(3-シアノフェニル)カルバモイル]アミノ}-2-エチルブタン酸
【0403】
【0404】
化合物G:2-({[4-(シアノメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)-2-エチルブタン酸
【0405】
【0406】
及び、化合物H:2-エチル-2-[(チオフェン-3-イルカルバモイル)アミノ]ブタン酸
【0407】
【0408】
これら試験化合物の阻害活性(IC50, μM)を表10-1及び表10-2に示す。
【0409】
【0410】
【0411】
以上のように、本発明の化合物は、優れたトリプトファナーゼ阻害活性を示した。従って、本発明の化合物は、血中のインドキシル硫酸の低減剤、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の予防剤若しくは治療剤、慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行遅延剤、及び、腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化抑制剤のための医薬として有用である。
【0412】
(試験例2)インドール産生抑制効果
トリプトファナーゼ阻害化合物の生菌からのインドール産生抑制効果を評価するためには以下のような操作によって行うことができる。
【0413】
インドールを産生することが知られている菌株、例えば大腸菌(Eschelicia Coli)の場合はLB培地にて、37℃、嫌気的条件下12~18時間前培養した後、O.D.が約0.3になるようにアッセイ培地(5mM L-Tryptophan/PBS(+)/25mM HEPES (pH8))に懸濁する。Bacteroidesの場合は変法GAM培地にて、37℃、嫌気的条件下12~18時間前培養した後、O.D.が約1.1になるようにアッセイ培地(5mM L-Tryptophan/PBS(+)/25mM HEPES (pH8))に懸濁する。化合物の最終濃度が1μMから10mMになるように調製した上述の生菌懸濁液を200μLずつ96wellプレートに分注し、37℃で2~4時間嫌気的に培養した後、O.D.、ATP濃度(BacTiter-Glo(Promega社)で定量することができる)、培養上清中のインドール濃度(エルリッヒ反応を利用して定量することができる)を測定する。トリプトファナーゼ阻害化合物の生菌からのインドール産生抑制効果は培養上清中のインドール濃度低下度によって評価できる。トリプトファナーゼ阻害作用を介さない作用、例えば殺菌作用や菌の増殖阻害作用によるものかどうかはO.D.の低下、ATP濃度の減少、さらにLevofloxacin等を陽性対照に、一般的に実施されている抗菌活性試験(MIC(最小発育阻止濃度)試験)によって確認することができる。
【0414】
Bacteroidesを用いて、表11に示す実施例化合物について、上述の方法によりインドール産生阻害活性を測定して、インドール産生抑制効果を評価した。結果を表11に示す。
【0415】
【0416】
以上のように、本発明の化合物は、優れたインドール産生阻害活性を示した。従って、本発明の化合物は、血中のインドキシル硫酸の低減剤、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の予防剤若しくは治療剤、慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行遅延剤、及び、腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化抑制剤のための医薬として有用である。
【0417】
(試験例3)マウスにおける血漿中インドキシル硫酸濃度低下作用効果
マウスにおけるトリプトファナーゼ阻害化合物の血漿中インドキシル硫酸濃度低下作用効果を評価するためには以下のような操作によって行うことができる。
【0418】
雄性BALB/cマウスを一晩絶食後、試験化合物投与群は0.5%メチルセルロース(MC)溶液を溶媒として用い、0.01~10mg/mLになるように溶解または懸濁したトリプトファナーゼ化合物を、溶媒対照群は0.5% MC溶液を、それぞれ10mL/kgの容量で強制経口投与する。試験化合物または溶媒投与30分後に、トリプトファナーゼの基質であるL-トリプトファンを1~3g/kgの用量で強制経口投与する。L-トリプトファンは、0.5%トラガカント溶液で懸濁する。L-トリプトファン投与後12時間にわたって経時的に尾静脈からヘマトクリット管を用いて採血する。得られた血液を11,000 rpmで5分間遠心分離することで血漿を回収し、血漿中インドキシル硫酸の濃度を液体クロマトグラフィー(蛍光検出)単独又はそれに続く質量分析計と組み合わせて用いることにより測定する。溶媒対照群の血漿中インドキシル硫酸濃度に対する被験物質投与群の血漿中インドキシル硫酸濃度を、例えばインドキシル硫酸濃度の曲線下面積比を算出することで化合物毎の生体内での効力を比較することができる。
【0419】
以下の表12に示す実施例化合物について、上述の方法により、血漿中インドキシル硫酸濃度を測定し、インドール産生抑制効果を評価した。結果を表12に示す。
【0420】
【0421】
以上のように、本発明の化合物は、優れた血漿中インドキシル硫酸低下作用を示した。従って、本発明の化合物は、血中のインドキシル硫酸の低減剤、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の予防剤若しくは治療剤、慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行遅延剤、及び、腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化抑制剤のための医薬として有用である。
【0422】
(製剤例1)ハ-ドカプセル剤
標準二分式ハ-ドゼラチンカプセルの各々に、100mgの粉末状の実施例1の化合物、150mgのラクト-ス、50mgのセルロ-ス及び6mgのステアリン酸マグネシウムを充填することにより、単位カプセルを製造し、洗浄後、乾燥する。
【0423】
(製剤例2)ソフトカプセル剤
消化性油状物、例えば、大豆油、綿実油又はオリ-ブ油中に入れた、実施例2の化合物の混合物を調製し、正置換ポンプでゼラチン中に注入して、100mgの活性成分を含有するソフトカプセルを得、洗浄後、乾燥する。
【0424】
(製剤例3)錠剤
常法に従って、100mgの実施例3の化合物、0.2mgのコロイド性二酸化珪素、5mgのステアリン酸マグネシウム、275mgの微結晶性セルロ-ス、11mgのデンプン及び98.8mgのラクト-スを用いて製造する。
【0425】
なお、所望により、剤皮を塗布する。
【0426】
(製剤例4)懸濁剤
5mL中に、100mgの微粉化した実施例4の化合物、100mgのナトリウムカルボキシ基メチルセルロ-ス、5mgの安息香酸ナトリウム、1.0gのソルビト-ル溶液(日本薬局方)及び0.025mLのバニリンを含有するように製造する。
【産業上の利用可能性】
【0427】
本発明化合物(I)又はその薬理上許容される塩は、優れたトリプトファナーゼ阻害作用を有し、血中のインドキシル硫酸の低減剤、血中のインドキシル硫酸の増加により引き起こされる疾患の予防剤若しくは治療剤、慢性腎臓病の保存療法期患者の腎代替療法移行遅延剤、及び、腎代替療法移行後の患者の残存腎機能の悪化抑制剤として有用である。