(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】MRIのための灌流ファントム並びにファントムのMR画像の有効性を確認するための装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220628BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20220628BHJP
G01R 33/563 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/055 382
G01N24/00 100A
G01R33/563
(21)【出願番号】P 2018545814
(86)(22)【出願日】2017-02-23
(86)【国際出願番号】 EP2017054254
(87)【国際公開番号】W WO2017148805
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-19
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518306872
【氏名又は名称】ゴールド・スタンダード・ファントムス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GOLD STANDARD PHANTOMS LIMITED
【住所又は居所原語表記】UCL Institute of Cognitive Neuroscience Alexandra House, 17-19 Queen Square, London Greater London WC1N 3AZ, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】ゴレイ、ザヴィエル
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー-テイラー、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ハンプシャー、トム
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-208387(JP,A)
【文献】特開2001-187039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
G01R 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファントムで使用するための灌流チャンバであって、多孔質材料を含有する防水筐体を含み、
前記多孔質材料は、前記多孔質材料中の小孔と管状通路との間に流路を画定
し、
前記管状通路は、前記多孔質材料中を入口側から出口側に向かって途中まで延びる管状通路の第1の集合を形成し、
前記多孔質材料中を前記出口側から前記入口側に向かって途中まで延びる管状通路の第2の集合であって、前記管状通路の前記第1の集合からオフセットされている管状通路の第2の集合をさらに含む、
灌流チャンバ。
【請求項2】
前記筐体は、アクリル樹脂で形成される、請求項
1に記載の灌流チャンバ。
【請求項3】
円筒形であり、且つ灌流液が一方の端面から反対の端面へ前記多孔質材料を通って流れることができるように配置される、請求項1
又は2に記載の灌流チャンバ。
【請求項4】
ラベリングチャンバを含み、灌流液は、前記多孔質材料に到達する前に前記ラベリングチャンバを通過する、請求項1~
3の何れか一項に記載の灌流チャンバ。
【請求項5】
前記ラベリングチャンバは、混入が行われた静水で実質的に満たされ、且つチューブを含み、前記チューブ内において、灌流液は、前記多孔質材料に向かって前記ラベリングチャンバを通過することができる、請求項
4に記載の灌流チャンバ。
【請求項6】
ファントムで使用するための灌流チャンバであって、多孔質材料を含有する防水筐体を含み、
前記多孔質材料は、前記多孔質材料中の小孔と管状通路との間に流路を画定し、また、前記多孔質材料は、焼結高密度ポリエチレン又は焼結ポリプロピレンである
、灌流チャンバ。
【請求項7】
MRIスキャナで使用するためのファントムであって、灌流液が流れることができる閉鎖系を含み、
前記閉鎖系は、前記系、請求項1~
6のいずれか一項に記載の灌流チャンバ、及びリザーバを通して灌流液を移動させるためのポンプ機構を含む、ファントム。
【請求項8】
請求項
7に記載のファントムであって、
前記リザーバは、入口及び出口であって、それらの間を灌流液が流れることができる、入口及び出口を有する防水筐体を含み、
灌流液は、前記入口と前記出口との間において、前記入口と前記出口との間の距離より長い蛇行経路に沿って流れるように案内される、ファントム。
【請求項9】
MRIスキャナで使用するためのファントムであって、灌流液が流れることができる系を含み、
前記系は、前記系を通して灌流液を移動させるためのポンプと、請求項1~
6の何れか一項に記載の灌流チャンバと、殺菌装置とを含み、
前記殺菌装置は、前記灌流液に照射するためのUVランプを含む、ファントム。
【請求項10】
前記系は、閉鎖系である、請求項
9に記載のファントム。
【請求項11】
前記灌流液を含み、前記灌流液は、蒸留水であって、その緩和時間を変更するために添加物
であるCuSO4が混入されている、請求項
9又は
10に記載のファントム。
【請求項12】
請求項
7~11のいずれか一項に記載のファントムの画像の有効性を確認するための装置であって、
画像化されるファントムに連結される1つ又は複数のセンサであって、前記ファントムの動作状態に関連付けられるパラメータを測定するように構成された1つ又は複数のセンサと、
制御/ロギングシステムであって、
画像化システムによる前記ファントムの画像化中にセンサデータを収集し、且つそれを入力としてコンピュータモデルに渡すことと、
前記画像データを、前記コンピュータモデルを用いて生成された参照画像データと比較することと、
前記比較に応じて合格スコア又は不合格スコアを返すことと
を行うように構成された制御/ロギングシステムと
を含む装置。
【請求項13】
前記センサは、前記ファントム内の流体の温度、前記ファントム内の流体の圧力、及び前記ファントム内の流体の流量の1つ又は複数を検出及び測定するように構成される、請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
前記画像化システムの付近に設置されたトランシーバボックスを含み、センサデータは、無線接続を介して前記トランシーバボックスに送信され、且つ有線接続を用いて前記トランシーバボックスから前記制御/ロギングシステムに渡される、請求項
12又は
13に記載の装置。
【請求項15】
前記制御/ロギングシステムは、そのタイムクロックを前記画像化システムのタイムクロックと同期させるように構成される、請求項
12~14の何れか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記同期は、前記画像化システムから同期信号を受信することを含む、請求項
15に記載の装置。
【請求項17】
前記同期は、参照時刻ソースを提供するためにインターネットベースのタイムサーバを使用することを含む、請求項
15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファントム(phantom)で使用するための灌流チャンバ(perfusion chamber)、ファントムで使用するためのリザーバ(reservoir)、MRIスキャナのボア内で使用するためのポンプ機構(pump mechanism)、MRIスキャナで使用するためのファントム、スキャニング装置を校正するための方法、ファントムの画像の有効性を確認する(validating)ための装置、ファントムの画像の有効性を確認するためのシステム、及びファントムの画像の有効性を確認するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲的画像化技術の開発は、過去数十年間にわたる医療分野での最も目覚ましい進歩の1つである。正確且つ適時な診断を可能な限り安全な方法で実現することの重要性を考えると、この進化のペースは今後も続く可能性が高い。大きい前進は、20世紀後半の磁気共鳴画像法(MRI)の導入であり、それにより、侵襲的な方法を使用せずに又は患者を電離放射線に曝さずに患者の体内の詳細な画像を撮影することが可能となった。MRIは、体内でのプロトン(proton)の回転特性を周囲物質のマーカとして利用する。身体を強い磁場内に置くと、プロトンが整列する。その後、電波のパルスが発せられ、それがプロトンを妨害して強制的に列を乱す。各パルス後、プロトンが「緩和して(relax)」その整列状態に戻り、放射線を発し、スキャナがこれを検出できる。プロトンが再整列する速度は、その際に発せられる放射線に影響を与え、そのようにして組織内の周囲物質に関する情報を提供し、これを用いて詳細な画像を構築できる。
【0003】
MRIは、高解像度の解剖学的画像を提供することにおいて有効であるが、この方法は、当初(及びそのほとんどの部分について依然として)、身体の物理的構造及び物質に関する情報を収集するためにのみ用いられ、器官の機能を画像化するためには使用できなかった。この目的のために、陽電子放出断層撮影法(PET)等の高額な技術が一般的に使用される。PETは、15O(酸素の同位体)等の放射性トレーサを体内に注入することによって動作する。放射性物質が崩壊すると、陽電子が放出されて検出され得る。このようにして脳組織への血液拡散を画像化し、血流がより多く、特に代謝的に活性な領域を示すために使用できる。これは、(構造だけでなく)脳の活動を画像化するのに有効な方法であるが、外的物質の導入を伴い、それを患者の肝臓及び腎臓によって濾過しなければならない。これは、特に腎臓又は肝臓の慢性的な問題を抱える患者において困難を生じ得る。
【0004】
血液スピンラベリング(ASL)は、灌流、すなわち器官への栄養動脈血の送達によってMRI信号の計量を可能にすることにより、MRIを利用して脳活動を画像化する非侵襲的方法を提供する。ASLもPETと同様に動作するが、放射性トレーサではなく内因性物質のマーカが使用され、それによって患者へのリスクが大幅に軽減される。この方法は、撮像平面の真下のスライス内で高周波の反転パルスを用いてプロトンの磁化を反転させることによって動作する。磁気によってタグ付けされた血液が撮像平面内へ移動し、画像化される。マーカが存在しない比較画像が撮影される。これらの画像の差は、特定の時間中のある画像内の各区域への血液の流れを表す。このような方法を臨床診療に導入することは、痴呆症等の治療においてきわめて価値が高いが、現時点では必要な標準が設定されていない。
【0005】
医療用イメージングは、従来、定量的ではなく定性的な診断解釈に焦点を当ててきた。これには、画像内のパターンを認識し、これらを様々な生理学的状態に関連付けることができる、訓練を受けた放射線技師が必要となる。定量的な医療用イメージングにより、画像撮影システムは、特定の生理学的パラメータを測定及び定量化できる科学的装置となる。結果の解釈における主観性が低下するが、医療現場では、スキャニング装置を国際標準に合わせて校正して、画像から得られる測定値が確実に生理学的特性の現実的な測定を提供するようにすることが非常に重要である。この理由から、医療用イメージングは、依然として主に定性的解釈に基づいている。
【0006】
結果を適正に校正するために、生存している対象の体内の状態を、画像化される特性に関して可能な限り密接に再現するファントムが使用され得る。ファントム内で測定される特性の実際の値がわかっているため、ファントムを撮影した画像を用いてスキャナを校正することにより、実際の対象の画像が撮影されたときにこの特性の正確な測定を行うことができる。例えば、国際公開第2014/140547号公報は、コントラストイメージングの用途で使用される灌流ファントムを記載している。このファントムは、灌流液(perfusate)がそれらの間を流れる4つの別々のチャンバを含み、心臓の心室及び大動脈を表す。
【0007】
このようなファントムが知られており、且つ個々のMRIスキャナの応用を試験するための研究目的で使用されているが、医学的に認められている標準に従ってこれらのスキャナを校正できるシステムは、依然として設計されていない。特に、ASLは、比較的新しい画像化技術であるため、ASLのためのMRIマシンで使用されるように設計されたファントムは、たとえ研究用のものでも非常に少なく、臨床使用に適していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、ファントムで使用するための灌流チャンバであって、多孔質材料を含有する防水筐体を含み、多孔質材料は、多孔質材料中の小孔と管状通路との間に流路を画定する、灌流チャンバが提供される。
【0009】
国全体でMRIマシンを校正して、医療環境に適用可能な標準を満たすことができるようにするために使用可能なファントムが提供される。これにより、定量的な医療用イメージングを臨床環境に広く適用することが初めて可能となるであろう。その設計及び様々な環境で使用される構成要素により、本願のファントムは、軽量であり、且つ製造及び輸送が容易である。
【0010】
このような灌流チャンバは、脳内で発生するような動脈から毛細血管床への血液の流れをシミュレートするのに特に適しており、多孔質材料自体と、その中の小孔との間の経路が、毛細血管床及び動脈の管状通路をシミュレートする役割を果たす。
【0011】
ある実施形態において、管状通路は、多孔質材料中を入口側から出口側に向かって途中まで延びる管状通路の第1の集合を形成する。
【0012】
ある実施形態において、灌流チャンバは、多孔質材料中を出口側から入口側に向かって途中まで延びる管状通路の第2の集合であって、管状通路の第1の集合からオフセットされている管状通路の第2の集合を含む。入口側から延びる通路の第1の集合は動脈を表し、及び出口側から延びる通路の第2の集合は静脈を表し、それにより、灌流液は、毛細血管床に流入し、流出する血液と同様の方法で第1の通路を通って多孔質材料中に流入し、小孔によって形成される経路を通り、通路の第2の集合を通って出るように流れる。
【0013】
ある実施形態において、筐体は、アクリル樹脂で形成される。アクリル樹脂は、それが軽量であり、成形しやすく、且つ(例えば、ファントムがMRIスキャナで使用される状況で)スキャナのボア内の強い電磁場によって影響を受けないため、特に好適である。
【0014】
ある実施形態において、チャンバは、円筒形であり、且つ灌流液が一方の端面から反対の端面へ多孔質材料を通って流れることができるように配置される。
【0015】
ある実施形態において、灌流チャンバは、ラベリングチャンバを含み、灌流液は、多孔質材料に到達する前にラベリングチャンバを通過する。灌流液は、それがラベリングチャンバを通る際、例えばスライス内の灌流液の磁化を反転させることによってタグ付けでき、その後、灌流液が多孔質材料に到達するため、タグ付けされた血液又は体液がASL中に毛細血管床へ流れることを再現できる。
【0016】
ある実施形態において、ラベリングチャンバは、混入が行われた静水で実質的に満たされ、且つチューブを含み、チューブ内において、灌流液は、多孔質材料に向かってラベリングチャンバを通過することができる。
【0017】
ある実施形態において、多孔質材料は、焼結高密度ポリエチレン又は焼結ポリプロピレンである。焼結高密度ポリエチレンは、容易且つ安価に生産及び成形されて、灌流チャンバ内に設置するためのブロック若しくはディスク又は多孔質材料を形成できる。生成され得る空隙の位置、大きさ及び形状はまた、チャンバが使用され、灌流液がその中を流れるときの毛細血管床内の流体の流れとの良好な適合をもたらす。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、ファントムで使用するためのリザーバであって、入口及び出口であって、それらの間を灌流液が流れることができる、入口及び出口を有する防水筐体を含み、灌流液は、入口と出口との間において、入口と出口との間の距離より長い蛇行経路に沿って流れるように案内される、リザーバが提供される。この構成により、灌流液は、リザーバ内において、任意のタグ付けされた流体の縦磁化が灌流チャンバへ再び入る前に緩和して再び平衡状態に戻るのに十分な時間にわたって保持され得る。蛇行経路の長さは、リザーバ内に留まる時間を調整するために(例えば、灌流液の異なる流量又は場合により異なる種類に適合するように)容易に適応され得る。
【0019】
ある実施形態において、リザーバは、外側筐体内に固定された複数のチューブを含み、このチューブは、リザーバの中心に向かう方向に直径が減少し、且つ灌流液がリザーバを通して入口から出口へ移動する際、灌流液がチューブの壁の上及び下を流れることができるように固定される。
【0020】
ある実施形態において、チューブは、防水筐体と縦軸を共有する。
【0021】
ある実施形態において、チューブは、リザーバの中心に向かう方向に高さも減少する。灌流液は、したがって、1つのチューブの最上部を越えて且つ下方に向かって次のチューブ内に流れることができ、流体がチャンバ内を移動することを促進し得る滝効果を提供する。
【0022】
本発明の第3の態様によれば、ファントムで使用するための殺菌装置であって、UV光に対して透過性である防水容器であって、その周囲でファントム内において灌流液が流れることができる、防水容器を含み、防水容器は、灌流液が容器の周囲を通過する際、灌流液に照射するためのUVランプを格納する、殺菌装置が提供される。UVを灌流液に照射すると、流体内の微生物のDNAが破壊され、藻類及び他の種の増生の防止を促進することができ、それによってファントムがより長持ちする。
【0023】
ある実施形態において、ランプは、250~300nmの波長の放射を発するUVC LEDランプである。UVC放射は、DNAを破壊するのに特に有効である。ソリッドステートであるため、LEDは、MRIスキャナ内で使用するのに理想的であり、なぜなら、それは電磁場によってほとんど影響を受けず、効率が高く、且つバッテリから電源供給できるからである。それに対して、フィラメント式UVCランプは、より高い電圧を必要とし、磁性材料を使用することから、MRIスキャナでの使用に適さない。
【0024】
ある実施形態において、防水容器は、石英ガラスで形成される。石英ガラスは、強度が高く且つUVC波長に対して完全に透過性であり、それにより、最大限のUV曝露量が、通過する灌流液に到達することを可能にする。
【0025】
ある実施形態において、防水容器は、灌流液が流れる外側容器内に固定される。
【0026】
本発明の第4の態様によれば、MRIスキャナのボア内で使用するためのポンプ機構であって、圧電ポンプ、ポンプ駆動回路及びフィルタを格納する遮蔽エンクロージャ(enclosure)を含み、フィルタは、遮蔽2心ケーブルを介してポンプ駆動回路及びアースに、且つ非遮蔽2心ケーブルを介してポンプに接続される、ポンプ機構が提供される。フィルタ及び遮蔽ケーブルの動作は、パワーアンプと圧電ポンプとの間でケーブルに誘導されるあらゆる高周波電流をブロックし、これらの電流をケーブルシールドにシャントする。
【0027】
ある実施形態において、圧電ポンプは、ダイアフラムポンプである。
【0028】
例では、ポンプ駆動回路は、マイクロコントローラ、デジタル-アナログ変換器、及び圧電ダイアフラムポンプの動作に適した電圧と電流とを生成するパワーアンプ回路を含む。
【0029】
本発明の第5の態様によれば、MRIスキャナで使用するためのファントムであって、灌流液が流れることができる閉鎖系を含み、閉鎖系は、その系、灌流チャンバ及びリザーバを通して灌流液を移動させるためのポンプ機構を含む、ファントムが提供される。
【0030】
ある実施形態において、灌流チャンバは、前述のような灌流チャンバである。
【0031】
ある実施形態において、リザーバは、前述のようなリザーバである。
【0032】
ある実施形態において、ファントムは、前述のような殺菌装置を含む。
【0033】
ある実施形態において、ポンプ機構は、前述のような圧電ポンプを含む。
【0034】
ある実施形態において、ファントムは、灌流液を含み、この灌流液は、蒸留水である。灌流液のNMR緩和時間(relaxation time)は、好ましくは、人の血液のものと同程度であり、例えば3.0Tで1600~1700msである。CuSO4が、灌流液のNMR T1を1600~1700msとするのに十分な量で添加され得る。これは、3Tの磁場における動脈血のNMR緩和時間と同程度であり、そのため、スキャナ内の実際の対象をよりよく表現する。硫化銅の量は、灌流液の種類の違い又はスキャナの強度の違いに合わせて調整できる。
【0035】
ある実施形態において、ファントムは灌流液を含み、この灌流液は、蒸留水又は他の液体である。実施形態において、前記液体のスピン-格子緩和時間又はT1とも呼ばれるNMR縦緩和時間は、添加物の使用を通して調整できる。実施形態において、このような添加物は、CuSO4であり得る。
【0036】
本発明の第6の態様によれば、MRIスキャナで使用するためのファントムであって、灌流液が流れることができる閉鎖系を含み、この系は、その系を通して灌流液を移動させるためのポンプと、灌流チャンバと、殺菌装置とを含み、殺菌装置は、灌流液に照射するためのUVランプを含む、ファントムが提供される。閉鎖系を提供することは、ファントムが無菌状態で充填されると、灌流液が系内に留まり、異物が導入される機会を低減させることを意味する。加えて、閉鎖系を提供することは、気泡と、したがってMR画像のアーチファクトとを引き起こし得る空気の灌流液中への溶解も防止する。
【0037】
ある実施形態において、殺菌装置は、UV光に対して透過性である防水容器であって、その周囲でファントム内において灌流液が流れることができる、防水容器を含み、防水容器は、灌流液が容器の周囲を通過する際、灌流液に照射するためのUVランプを格納する。
【0038】
ある実施形態において、灌流チャンバは、前述のような灌流チャンバである。
【0039】
ある実施形態において、ファントムは、前述のようなリザーバを含む。
【0040】
ある実施形態において、殺菌装置は、前述のような滅菌装置である。
【0041】
ある実施形態において、ポンプ機構は、前述のようなポンプ機構である。
【0042】
実施形態において、ファントムは、灌流液を含み、この灌流液は、蒸留水である。灌流液のNMR緩和時間は、好ましくは1600~1700msである。CuSO4が、灌流液のNMR緩和時間を1600~1700msとするのに十分な量で添加され得る。
【0043】
本発明の第7の態様によれば、スキャニング装置を校正するための方法であって、中央サーバにおいて、スキャニング装置で撮影されたファントムの画像を遠隔イメージングセンタから受信するステップと、その画像を参照画像と比較して、スキャナ内のファントムの位置及び向きを特定するステップと、特定された位置及び向きを用いてファントムのシミュレーション画像を生成し、且つシミュレーション画像を、アップロードされたデータと比較して校正結果を生成するステップと、校正結果を、校正結果に応じてイメージングセンタで装置の校正を実行するためにイメージングセンタに転送するステップとを含む方法が提供される。試験済みのソフトウェアを用いて(及び標準化且つ試験されてもいるファントムを提供することによって)中央集中的に結果を分析することは、校正プロセスを実行するスキャナが、これらの機械が適合しなければならない厳しい標準を考えても医療環境での使用に適していることを認証できることを意味する。
【0044】
実施形態において、中央サーバで画像及び関連する画像メタデータが受信される。画像は、オリジナルのDICOM画像フォーマット等、何れの適当な又は好都合なフォーマットでもあり得るが、メタデータは、DICOMヘッダデータに類似していることが好ましいであろう。例えば、灌流液の温度等、幾つかの追加の情報がファントムから報告され得る。
【0045】
ある実施形態において、方法は、医療装置が校正されていることを校正結果が示すまでこの方法を繰り返すステップを含む。
【0046】
ある実施形態において、装置が校正されていると特定されると、方法は、イメージングセンタに証明書を転送するステップを含む。
【0047】
本発明の第8の態様によれば、ファントムで使用するための灌流チャンバであって、浸透性材料であって、その中に管状通路を有する浸透性材料を含有する防水筐体を含む灌流チャンバが提供される。
【0048】
ある実施形態において、灌流チャンバは、浸透性材料であって、その中に1つ又は複数の管状通路を有する浸透性材料の概して固体の本体を含む。液体が筐体内に導入されると、これは、優先的に最初に通路内に且つそれに沿って流れるが、概して固体であるが浸透性である材料中にも灌流する。本明細書に記載されている本発明の多数の態様において、浸透性材料は、多孔質である。多孔性は、浸透性を実現できる1つの方法を表すが、唯一の方法ではない。多孔性以外に浸透性を提供する材料の他の形態には、透析チューブ、繊維性材料又は膜が含まれる。適切な場合、本発明の他の態様の1つ又は複数について優先的な特徴を提供する前述の実施形態の何れにも、本発明のこの第8の態様が提供され得る。
【0049】
本発明の第9の態様によれば、ファントムで使用するための灌流チャンバであって、多孔質材料を含み、多孔質材料は、多孔質材料中の小孔と管状通路との間に流路を画定する、灌流チャンバが提供される。
【0050】
本発明の第10の態様によれば、ファントムの画像の有効性を確認するための装置であって、画像化されるファントムに連結される1つ又は複数のセンサであって、ファントムの動作状態に関連付けられるパラメータを測定するように構成された1つ又は複数のセンサと、制御/ロギングシステム(control/logging system)であって、画像化システム(imaging system)によるファントムの画像化中にセンサデータを収集し、且つこれを入力としてコンピュータモデルに渡すことと、画像データを、コンピュータモデルを用いて生成された参照画像データと比較することと、比較に応じて合格(pass)スコア又は不合格(fail)スコアを返すこととを行うように構成された制御/ロギングシステムとを含む装置が提供される。
【0051】
実施形態において、センサは、ファントム内の流体の温度、ファントム内の流体の圧力、及びファントム内の流体の流量の1つ又は複数を検出及び測定するように構成される。
【0052】
実施形態において、装置は、画像化システムの付近に設置されたトランシーバボックスを含み、センサデータは、無線接続を介してトランシーバボックスに送信され、且つ有線接続を用いてトランシーバボックスから制御/ロギングシステムに渡される。
【0053】
実施形態において、無線接続は、Bluetooth(登録商標)接続であり、及び有線接続は、1つ又は複数の光ファイバを含む。
【0054】
実施形態において、制御/ロギングシステムは、そのタイムクロックを画像化システムのタイムクロックと同期させるように構成される。
【0055】
実施形態において、同期は、画像化システムから同期信号を受信することを含む。
【0056】
実施形態において、同期は、参照時刻ソースを提供するために、インターネットベースのタイムサーバを使用することを含む。
【0057】
実施形態において、所定の閾値レベルは、ISO標準に基づく。
【0058】
本発明の第11の態様によれば、ファントムの画像の有効性を確認するためのシステムであって、画像化システムと、画像化されるファントムと、画像化されるファントムに連結される1つ又は複数のセンサであって、ファントムの動作状態に関連付けられるパラメータを測定するように構成された1つ又は複数のセンサと、制御/ロギングシステムであって、画像化システムによるファントムの画像化中にセンサデータを収集し、且つこれを入力としてコンピュータモデルに渡すことと、画像データを、コンピュータモデルを用いて生成された参照画像データと比較することと、比較に応じて合格スコア又は不合格スコアを返すこととを行うように構成された制御/ロギングシステムとを含むシステムが提供される。
【0059】
本発明の第12の態様によれば、ファントムの画像の有効性を確認するための方法であって、(i)ファントムの動作状態に関連付けられるパラメータを測定するためにセンサをファントムに連結するステップと、(ii)ファントム及びセンサを画像化システムの画像化体積(imaging volume)内に設置するステップと、(iii)センサデータの収集と、画像化システムを用いたファントムの画像化とを同時に行うステップと、(iv)センサデータをコンピュータモデルへの入力として使用して参照画像データを生成するステップと、(v)画像データを参照画像データと比較するステップと、(vi)比較に応じて合格スコア又は不合格スコアを返すステップとを含む方法が提供される。
【0060】
実施形態において、方法は、ステップ(vi)において不合格スコアが返される場合、画像化システムへの調整を行い、且つステップ(ii)~(vi)を繰り返すステップを含む。
【0061】
実施形態において、方法は、合格スコアが返されるまで、不合格スコアが返されるたびにファントムへの調整を行い、且つステップ(ii)~(vi)を繰り返すステップを含む。
【0062】
実施形態において、方法は、センサデータを用いて、ファントムが、画像化時間の少なくとも指定された割合にわたり、指定された状態範囲内で動作していたことをチェックし、且つファントムが指定された状態範囲内で動作していなかった場合に不合格スコアを返すステップを含む。
【0063】
実施形態において、画像化時間の割合は、画像化期間の全体である。
【0064】
実施形態において、方法は、比較段階前に画像データ及び参照データの向きを一致させるステップを含む。
【0065】
実施形態において、ファントム上のマーカは、向きを一致させるために使用される。
【0066】
本発明の第13の態様によれば、前述の方法を実行するように構成されたコンピュータプログラムが提供される。
【0067】
ここで、下記の添付の図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】灌流チャンバ、リザーバ及びポンプを含むファントムを示す。
【
図3】流れジオメトリを最適化するための手順を示すフローチャートである。
【
図4B】半径方向及び円周方向の通路の空間の測定方法を示す。
【
図5】タグ付け中の灌流チャンバ内の流れのパーティクルシミュレーションを示す。
【
図6A】灌流チャンバを通して流れる流体のCFDシミュレーションで使用するために計算された速度場を示す。
【
図6B】灌流チャンバ内を移動するラベリングされた灌流液のユニットを表す、シミュレーションによるパーティクルを示す。
【
図6C】灌流チャンバ内を移動するラベリングされた灌流液のユニットを表す、シミュレーションによるパーティクルを示す。
【
図6D】灌流チャンバ内を移動するラベリングされた灌流液のユニットを表す、シミュレーションによるパーティクルを示す。
【
図7C】タグ付け後の灌流液の磁化の経時変化を示す。
【
図11】画像の有効性確認のためのシステムを示す。
【
図12】画像の有効性確認プロセスのフローチャートを示す。
【
図13】画像の有効性確認プロセスのより詳細なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1は、MRIスキャナで使用されるファントム1の例を示す。ファントムは、使用時に灌流液が流れる灌流チャンバ2と、ポンプ3とを含む。ファントムは、リザーバ4、UV-C照射チャンバ5、及び気泡除去装置、並びに/又は他の補助的構成要素も含み得る。灌流チャンバ2は、毛細血管床内等の体内の灌流を再現するように設計され、ASLによる脳の画像化で使用するためのMRIスキャナを試験するのに特に適している。この系は、閉鎖系として機能し、それにより、灌流液は、ポンプから流出し、一連のチューブを介して系の構成要素のすべてを通して流れる。灌流液がすべての構成要素を通過すると、それはポンプに戻り、再び系内に案内される。
図1は、灌流チャンバ2を示し、その中に灌流液が入口6から流入して、チャンバの一部を形成する浸透性媒質7を通り、且つ出口8を通して再び出る。この例において、材料の浸透性は、多孔質材料の使用を通して実現されるが、同じく必要な浸透性を提供するために使用できる材料7のための他の形態又は構造も使用できる。例えば、多孔質材料の代わりに線維状材料を使用でき、この線維状材料では、線維要素の半圧縮構造は、個々の要素間に空間が設けられ、幾分かの圧力で媒質7に液体が送り込まれると、ある程度の浸透性を実現する。
【0070】
以下の説明では、媒質7が多孔質材料によって提供される例について述べる。しかしながら、前述の指摘内容から、これは、浸透性を実現する排他的な手段と解釈されないものとする。
【0071】
灌流チャンバ自体及びそれに対する可能な変更形態が以下でより詳細に説明される。流体がチャンバから出ると、それは、チューブ9を通って流れてポンプに戻り、そこで、圧電ポンプを駆動する高電圧アンプ10を能動的に冷却する熱交換器11を通り、チューブ12を通ってリザーバ4へ案内される。
【0072】
リザーバを通って移動し、吐出チューブ13から出た後、灌流液は、ポンプ3に到達する。灌流チャンバに戻る前に、灌流液は、流量計14(任意選択的に光学流量計)を通り、これは、デジタルアナログ変換器及び高電圧アンプを介してポンプに接続されたマイクロコントローラ36に常にフィードバックを提供する。マイクロコントローラ36は、比例-積分-微分(PID)アルゴリズムを実行して系内の流れの閉ループ制御を提供する。ファントム内の流量が所望の量より小さい又は大きい場合、ポンプへの駆動波形の振幅を調整して、流量をその最適値にすることができる。流量計の後、灌流液がUV処理チャンバ5を通過し、これは、通過する灌流液を処理して、系内の生物の増生を防止する。圧電ポンプ(又は複数の圧電ポンプ)、関連する電子機器、殺菌用UV LED、及び流量計の1つ又は複数を、スキャナのボア内の強力な電磁場に対する有効な遮蔽を提供するエンクロージャ16内に格納できる。エンクロージャは、アルミニウムで形成され得る。
【0073】
灌流チャンバ2及びポンプ3は、PVC等のシート状材料に固定して、それが保護ケース内で運搬できるようにすることが可能である。図中に示される要素2~14の特定の順番は変えることができる。例えば、
図1は、灌流液が灌流チャンバから冷却ブロックを通ってリザーバへ流れてから、ポンプ(この例では、流量を制御するための流量計及び灌流液を処理するためのUVチャンバも含む)を通って流れることを示す。代替的な実施形態において、灌流液は、ポンプからリザーバに直接流れ、その後、灌流チャンバへ流れることができる。しかしながら、図の実施形態は、より有効な灌流チャンバであり、なぜなら、流体がポンプを通過する直前にリザーバ内を通過する際、問題となり得る気泡がポンプ内で生成されることが防止されるからである。系の部品は、相互に取外し及び再取付け可能であり得、それによって故障又は異常が発生したときの運搬及び/又は個別の交換が容易となる。
【0074】
使用時、ファントムは、灌流液で実質的に満たされる(及び完全に満たされて系内に空気が存在しないようにし得る)。この目的のための流体の好適な選択肢は、蒸留水に硫化銅(CuSO4)を添加したものである。理想的には、流体のNMR緩和時間を、3Tの磁場における動脈血のNMR緩和時間(約1664ms)と同じ又は同程度にするために十分な硫化銅を添加すべきである。硫化銅の量は、使用される特定のスキャナに応じて調整できるが、製造の目的のために、すべてのファントム内の灌流液について同じ組成を使用することが有利であり得る。理想的には、充填プロセスは、無菌で行い、細菌及び他の微生物の侵入を防止すべきである。
【0075】
系の構成要素間のチューブ又は流路の長さ、大きさ及び向きは様々であり得るが、全体的な構造は、運搬及びMRIスキャナ内の使用を容易にするためにかなり小型であることが好ましい。
図1に示されるものと同様の筐体の形態のリザーバがない場合、チューブの長さを調整して、灌流チャンバのパス間の流動時間を調整することができる。換言すれば、チューブの長さの延長部分がリザーバ自体として機能することができる。
【0076】
灌流チャンバは、
図2A及び2Bに詳細に示されている。チャンバ2は、2つの異なるセクションからなり、これらは流体接触していない。好ましくは、チャンバ2は、全体として防水筐体を画定し、その中に2つの異なるセクションが形成される。チャンバ2は、入口6及び出口8と、多孔質材料を取り囲む壁(典型的には円筒形)を含み、これらのすべてが流体の流れの方向を決定又は画定する役割を果たす。
【0077】
2つのセクションの第1のものは、ラベリングチャンバ16であり、これは、混入が行われた実質的な静水で満たすことができる。この水は、流入チューブを取り囲む磁気環境が確実に均一になるようにするために必要である。水は、最適な信号のためのT1及びT2緩和時間を制御するために混入が行われ、灌流液と共にタグ付けされないように静的である。ラベリング部分は、必ずしも混入が行われた水で満たす必要はない。例えば、アガロース等のゲルで満たすこともできる。
【0078】
第2のチャンバ又はセクション17は、多孔質材料7を含み、使用時に灌流液がそれを通って流れる(送出される)。MRIスキャナ内部にあるときに画像化されるのは第2のチャンバであり、体内(及び特に脳内)の組織を通る流体の流れを可能な限り密接に再現することが意図されるのはこの部分である。そのようにするために、使用される特定の材料及び材料中に提供される流れの通路が慎重に選択されなければならない。
【0079】
多孔質材料7は、焼結高密度ポリエチレン(HDPE)であり得、好ましくは高い空隙容積(20%~90%、より好ましくは40%~80%、最も好ましくは約60%)を有し、平均空隙径は10~50マイクロメートルである。当然のことながら、空隙の形状は球形でなくてもよく、その場合、上述の直径は、空隙を横切る最も大きい距離に対応し得る。流入する灌流液は、流入チューブ及び多孔質材料への流体の流れを、多孔質ブロックを通して提供される管状経路の端を形成する特定の明確な場所に制限する入口プレート18を介して第2のチャンバに入る。これらは、空隙を接続することによって提供される流路に追加される。入口及び出口プレートは、流れが正確な場所を通ることができるようにする穴を有する非多孔質材料から形成され得る。ある実施形態において、これらは、通路と一致するように穴が開けられたアクリル樹脂で形成できる。また、入口又は出口プレート及び対応する通路をなくすこともできる。したがって、入口又は出口側は、流体がそれを通って材料に入るか又はそれから出ることができる多孔質ブロックの端のみを含むことになる。
【0080】
通路は、多孔質材料中に提供されて、動脈を通る流れ又は動脈及び静脈を再現する。好ましくは、多数の狭い通路19が、材料を通り、第2のチャンバの入口プレートから出口プレート20に向かって、灌流チャンバの中心軸21に実質的に平行な方向に延びるように提供される。通路19は、多孔質材料のブロックを完全に通るように延びていなくてもよく、一般にチャンバ内の半分まで延びる。灌流液は、これらの通路を通ってチャンバ内に入り、空隙を通して多孔質材料中へ外側に拡散する。通路は、多孔質材料に穴を開けることによって提供でき、その直径は0.5~2mmであり得る(及び好ましくは、その直径は約1mmである)。中心軸に実質的に平行な方向の狭い通路(19)に代わるものも使用され得る。例えば、分岐する通路を使用できる。
【0081】
これらの通路(及び後述の出口プレートから延びる追加の通路)は、それらが長い連続面(通路の縁端に隣接する空隙の効果は別とする)から形成されるという点で管状であり得る。実施形態において、通路の縦軸に垂直な方向に取られた断面は、通路の長さに沿って実質的に変化しなくてもよい(ただし、他の実施形態では、管状通路は、長さに沿って幅が変化し得る)。通路は、実質的に直線であり得、また、これらが灌流チャンバの中心縦軸(この中心軸は、
図2Aで線21として示されている)に概して平行な方向に延びるように配置されていなくてもよい。実施形態において、通路は、円形の断面を有する。通路の断面の直径は、多孔質材料中の空隙間に提供される経路の平均直径より大きいことができる。経路の直径は、何れかの地点で経路の片側から別の側へ、経路を通る流れに垂直な方向に測定された最大値を指し得る。これは、1つの空隙又は小孔の平均大きさより大幅に大きいことはない。
【0082】
加えて、同様の通路は、出口プレート20から入口プレート18に向かって、チャンバの中心軸21に実質的に平行な方向に延び得る(ただし、これは必須ではない)。この通路の第2の集合は、第1の通路からオフセットされ得、再び入口プレートの表面まで完全に延びていなくてもよく、実質的に半分まで延びる。空隙を通って多孔質材料に染み込む灌流液は、通路の第2の集合内へ進み、このルートを介して出口プレートに向かって移動し得る。通路の第1の集合は、体の一部(すなわち脳)内への動脈の流れを再現することが意図され、第2の集合は、同じ領域から流出する静脈を表すことが意図される。通路の何れの集合も多孔質ブロック全体を通して延びていないため、灌流液は、毛細血管床を通る血液と同様の方法で空隙を通って染み込まざるを得ない。通路の第2の集合(及び実際には第1の集合)は、単純に1本の通路、例えば多孔質ブロックが円筒として形成された場合の多孔質ブロックの縦軸に沿って延びる1本の通路であり得る。1本の通路が使用される場合、これは、一般により広いことができ、その直径は1~4mmであり得る。
図2Aは、1本の戻り通路(図中では番号37で示される)を有する実施形態を示す。
【0083】
ある実施形態において、多孔質ブロックは、相互に近付けて設置された焼結HDPE(又は他の多孔質材料)の幾つかのディスク又はプレートから構成される(
図2Bに示される通り)。これらは円筒形であり得、これは、灌流チャンバ内の流れの状態が確実に均一となることを促進する。チャンバの円筒形の形状はまた、それが適合しなければならないスキャナの円筒形のボアのため、及びそれによって人間の頭部により近似するために有利である。ディスクは、相互に確実に圧迫して、それらの間の漏れを完全に防止すべきであり、同様の理由により、チャンバの外側筐体内に密に嵌るべきである。ロッドは、これを支持でき、ディスクの集合を通るように設置して、これらを所定の位置に保持することができる。隣接するプレートを通って延びる通路が心合わせされることが重要であり、1つ又は複数のロッド(及び好ましくは、幾つかが構造全体を通して離間されている)も、通路を整列させることを確実にし得る。このように積み重ねたディスクを用いて多孔質ブロックを製作することは、調整可能で組立容易な設計を提供する。多孔質ブロックは、全体として、3Dプリンティング等の方法を用いて、又はより大きいブロックから切り出すか若しくはより大きいブロックとして形成することによっても形成できる。積み重ねた多数のプレートではなく1つのブロックを使用することには、プレート間の不要な漏出が起こり得ないという利点があるが、より大きいブロックを製作又は切断することは、製造上より困難であり得、3Dプリンティングの使用は、製造後に空隙又は小孔内に粉末が捕集されることにつながり得、それは理想的ではない。スタック内の各ディスクの厚さは約4~30mmであり得、形成後のディスクを通して通路を穴開けして所望の形状にするためにCNCルータが使用され得る。多孔質HDPEは、鋭利な一枚刃カービンツール(single fluted carbine tooling)を備える高速スピンドルを用いて正確に機械加工できる。送給及び切断速度は、他の発泡材料の場合のそれらと同様である。材料の脆さから、真空ホールドダウン等の分散型固定方式(distributed fixturing technique)が推奨される。代替的に、各ディスクは、金型中で直接焼結でき、それによって何れの機械加工/さらなる加工も不要となる。
【0084】
焼結材料の浸透性を試験して、灌流チャンバで使用するための正しい特徴が存在するか否かを特定するために、アクリルチューブ、校正済みの流量計、小型ポンプ、及び差圧マノメータを含む小型チャンバを使用することができる。流体が多孔質材料のサンプルの入ったチャンバ内を通るようにすることにより、異なる流速についてサンプルを通した圧力差を測定できる。ファントム自体内で使用されるものと同様のマイクロコントローラは、流量計によって測定された流量をPIDコントローラへの入力として使用することにより、安定した流量を保持する。測定された圧力差は、供試材料の浸透性を示す。
【0085】
灌流チャンバ内にある気泡は、すべて取得される画像に影響を与える可能性があり、なぜなら、空気及び水の磁化率が異なり、水は、多孔質媒質内の磁場の均一性及び信号に対して深刻な影響を有するからである。加えて、多孔質媒質内の空気は、灌流液を移動させ得、それによって多孔質構造内の灌流液の体積が変化する。これは、ファントムを用いて臨床環境でスキャナを校正する際に重要であり、なぜなら、灌流の空間分布は、シミュレーションによって予想されるものと一致しないからである。多孔質材料が使用中に確実に十分に濡れている(気泡がない)ようにするために、多孔質ブロック又はディスクを使用前に完全に覆って、それと同時にそれに(例えば、ディスクを真空チャンバ内に置かれた容器で完全に覆われるようにすることによって)真空をかけることができる。好ましくは、真空は、可能な限り完全真空に近付けられる。-0.9バールの真空は良好な結果をもたらす。このプロセス中、ステッピングモータ及びタイミングプーリの系を用いて材料を攪拌し、空気をより有効に排出することができる。多孔質材料は、(水平又は垂直の向きで)攪拌され、且つ中心軸の周囲で回転され得、回転は複数の方向であり得、例えば、多孔質ブロック又は多孔質ディスクは、最初に時計回りに、その後、反時計回りに回転させることにより、材料からの最大の空気除去を実現し得る。回転は、そのプロセス中に多孔質材料の表面により大きい気泡が形成され、回転は、特にこれらをうまく分離することを促進し得る。
【0086】
上述の技術は、材料中の気泡を最少化するのに有効であることがわかっている。したがって、処理されたディスク又はブロックは、何れもさらなるいかなる気泡も捕捉しないように完全に覆われるようにしながら、チャンバ本体内に装填されるべきである。代替的に、プロセスは、多孔質ディスク又はブロックが灌流チャンバ及び/又はファントム内のその場にある状態で実行できる。加えて、焼結されたプラスチックを処理して、それが気泡の排出を促進するような実質的に親水性の状態にすることができる。
【0087】
何れのチャンバも、防水性があり、軽量であり、MRIスキャナ内の強力な電磁場に曝されるのに適したアクリル樹脂で形成され得る。チャンバを形成するために何れの適当なポリマーも使用され得、ある実施形態において、チャンバは、異なる材料の混合物で形成され得る。筐体は、端部が円形のシートで閉じられた管の形態であり得る。この種のアクリルケースは、(例えば、CNCルータを用いて)容易に成形され、その結果、最終製品を大量に安価で製造できる。適当なポリマーを使用すれば、射出成型又はレジンキャストを用いて製造環境内でチャンバを生産できる。
【0088】
この例において、流入チューブは、ラベリングチャンバの中心を通って多孔質ブロックを含むチャンバまで延び、出口チューブは、筐体の上側から上部分に沿って延在する。スキャン中、灌流液は、ラベリングチャンバ内で高周波パルスに曝され、これが(ASLスキャン中に対象のタグ付け平面内で発生するように)灌流液の磁化を反転させる。これは、磁化反転された流体のスライスを生成するために、(CASL手順と同様に)連続的に又は個々のバーストで行うことができる。磁化流体が第2のチャンバを通過し、多孔質材料を通過するとき、画像が撮影される。磁化反転されていない灌流液でコントロール画像も撮影され、2つの間の違いが最終画像を提供する。
【0089】
灌流チャンバのための最適なジオメトリ(geometry)の生成は、コンピュータ化された最適化手順によって実現される。
図3は、このプロセスのフローチャートである。簡単に言えば、ブロック22では、灌流チャンバのジオメトリ、多孔質材料の浸透性、及び入力流量を表す入力パラメータの初期値を選択し、初期の流れジオメトリ(flow geometry)を設定する。23では、このジオメトリを処理して、提供されたパラメータの様々な初期値を入力として使用する数値流体力学(CFD)シミュレーションに適したメッシュを作成する。24では、流れジオメトリを入力として用いて流体の流れを計算し、その後、ブロッホ方程式のパーティクル(particle)シミュレーションを解いて、過渡的な流体磁化情報を求める(25)。出力を定量化し、使用して、入力パラメータが調整される繰返し手順によって灌流チャンバのジオメトリを最適化する。
【0090】
より詳細には、チャンバの初期の幾何学的設計は、最適化されるパラメータの集合に関する常識的なデータを用いて選択される。これらのパラメータには、多孔質材料の長さに応じた動脈又は通路の長さ(入口通路の長さを多孔質ブロックの長さで割ったものであり、
図4Aにおいて距離L
Aで示される)、通路の半径、多孔質ブロックの長さと比較した出口通路、すなわち「静脈」の長さ、灌流液の流入速度、通路の半径方向の間隔、並びに
図4Bに示されている通路の半径方向の間隔及び通路の円周方向の間隔(それぞれL
R及びL
C)が含まれ得る。通路の半径方向及び円周方向の間隔は、円筒形又は管状の灌流チャンバの場合に関連があるが、長方形のチャンバ等の異なる形状のチャンバについては、通路間の距離も水平及び垂直の距離としてパラメータ化できる。
【0091】
各通路の半径は、チャンバの中心からの通路の距離と共に変化し得る。円筒形のチャンバが使用される実施形態において、各通路の半径を特定するために多項式によるパラメータ化が使用され、すなわち、R=R
0+R
1×iであり、式中、iは、環の番号と等しく(中央の通路は、0番であり、
図4Bに示されるように中央通路の外側の環の番号は大きくなる)、R
0は、0次の通路半径(0.5~2mmに固定)、及びR
1は、1次通路半径(同様に0.5~2mmに固定)である。したがって、中央の通路の半径は0.5~2mmであり、この外側の環については1~4mmである。
【0092】
この多項式によるパラメータ化は、変化する血管半径をパラメータ化するために考えられる方法の一例にすぎない。実際、1つの好ましい例において、すべての動脈血管の最適な半径は0.5mmであると特定された。製造上の制約から、何れの場合にも、これは典型的な最低許容値である。1つの例において、血管又は通路を、それらが中央から離れるにつれてより厚くなるようにすることもできる。一般に、パラメータ化により、より多様な幾何学的構成を探索するための最適化が可能である。
【0093】
ジオメトリは、結果として得られる灌流がASL灌流モデル文献、例えばその前文が参照により本願に援用される最近のASL“White Paper”:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26510993において規定されている主要パラメータと同程度であるように最適化される。これらは、
・画像化体積内の灌流速度(CBF)
・動脈通過時間(灌流液がラベリング領域から画像化体積内のボクセルに到達する時間)
・ラベリング領域内の灌流液の速度
・FOVカバレッジ
・パルス式ASLのボーラス長さ
・ラベリング領域の磁気均一性
である。
【0094】
モデルは、流れジオメトリに以下の制限を加え得る:流体の分布が多孔質材料全体で均一であること、入口から多孔質材料までの移動時間が最短であること。また、その設計の製造が可能な限り単純であり、灌流チャンバの構成に影響を与えるようなエラーが製造中に入り込む可能性を低くすることも好ましい。下表は、入力パラメータの選択範囲の例を示す。これらの範囲は、最適化手順中に各パラメータに関する入力として使用できる値の範囲に対応する。一般に、これらは、対象の体内(脳若しくは他の動脈、静脈、及び毛細血管床を含む器官、又は血液若しくは他の流体がその中を流れ得る組織内等)のこれらのパラメータに関して予想される最大値及び最小値に対応する。入口プレートから延びる通路の第1の集合は、したがって、動脈内の流れを再現する流れを生成することに対応する大きさであり、第2の集合は、静脈内の流れに対応する。多孔質材料の小孔の大きさ又は少なくとも浸透性は、好ましくは毛細血管床又は組織内の、それらを通って流れる血液又は流体に関する値に対応すべきである。多孔質材料は、シミュレーションにおいて巨視的に扱われ得る。特に、材料の各種のパラメータ(浸透性等)を測定し、CFDモデリングのための入力として使用できる。
【0095】
【0096】
ジオメトリを作ることにより、様々な境界条件が規定され(チャンバの縁端における流体に関するゼロ速度の要求事項等)、これを入口流量と共にCFDシミュレーションへの入力として使用する。CFDシミュレーションは、規定された境界条件を用いて層流のナビエ・ストークス方程式を解くことを伴う。シミュレーションの結果として、密度及び粘性が一定の単相流に関する速度場が得られる。より複雑なモデリングを行うこともできるが、上述のような単純なモデルは、良好な結果を提供し、更新及び保守がより簡単であることがわかる。しかしながら、流体の何れかの1つ又は複数における異なる密度、流体温度及び粘性、又は流体内で発生し得る乱流の考慮を導入することができる。
【0097】
流体の流れの特性を正確にシミュレートするために、液体は、パーティクルの集合としてモデル化され、その各々が流体の単位体積を表す。水の体積のラグランジュ表現を使用することにより、磁場及び速度場(異なる地点での流れの速度)が経時的に流体のパーティクルの位置及び磁化に与える影響を追跡できる。パーティクルは、MRIスキャナ内の主要な一定磁場を表すベクトル量B
0によって表される場の強さ及び方向を有する磁場に曝される。タグ付け中、パーティクルは、磁化を反転させるために印加される高周波場を表す磁場B
1にさらに曝される。パーティクルの位置は、時間ステップごとに入力速度場を用いて更新される。シミュレーションの実行中、B
0方向に沿ったパーティクルの磁化ベクトルの成分は、T
1緩和(水平緩和時間)に関して式M
t+Δt=M
t+((1-M
t)×Δt)/T
1に従って回復(recover)し、式中、M
t+Δtは、時間t+Δtにおけるパーティクルの磁化ベクトルの成分であり、M
tは、時間tにおけるパーティクルの磁化ベクトルの成分であり、Δtは、時間ステップの大きさである。流体にタグ付けする効果をシミュレートするために、ASL手順中のラベリング期間と均等なシミュレーションにおける短時間中、ある平面又はスライスにおける(そのスライス内のすべての流体の)完全反転と近似させることによって水平磁化が反転される(タグ付け効率に応じて完全又は部分反転)。その後、ラベリングされた流体は、それがシミュレーションによる灌流チャンバを通って移動する際に緩和する。
図5は、シミュレーションにおける流体パーティクルのタグ付けの効果を示す。流体は、当初、それが入口チューブを通して多孔質材料に入るときにAにおいて完全に緩和される。磁化は、入口で反転し(画像Bの色の変化)、流体の色は、それが灌流チャンバを通って移動する際にゆっくりとその当初の色に戻る(流体の緩和を示す)。
【0098】
図6Aは、計算された速度場(各地点での流体の速度の大きさは、様々な矢印の太さ又は大きさによって表される)を示し、
図6B~6Dは、それらが速度場及び磁気効果に曝されているときのモデルパーティクルの経時的な移動を示す。
【0099】
したがって、灌流媒質の多孔性を考慮し、モデルの出力を灌流チャンバの浸透性を含む所望の特性と比較できる。一般に、モデルの結果と流れの所望の特性との差を定量的に測定できる各種の費用関数を定義することが有益である。したがって、これらの費用関数を、最小化された最適化関数と組み合わせることができる。最小化プロセス中、費用関数の最小値は、多数回にわたって入力パラメータを変化させ、最適化関数を計算することによって求められる。軸が、異なる入力パラメータを表すパラメータ空間において、各地点での最適化関数を表す関数を定義できる。最小値を求めるために勾配降下法(gradient descent)を使用でき、それは、モデルが動作される各地点からの最も急峻な勾配(より低い値に向かう最適化関数内の最大の変化)をそのような最小値に到達するまで追跡することによる。例えば、ルンゲクッタ法等の他の最適化方法も同様に又は代わりに使用され得る。パラメータ最適化のための上述の方法は、様々な用途についてよく知られており、このような手法を使用する際の局所的最小値を回避するための方法も知られている。
【0100】
例としてのみ、最適なジオメトリに関する幾つかの適切な値を以下に提供する。
【0101】
【0102】
校正試験は、取得された画像データを参照標準と比較することにより、スキャナが正しく校正されたか否かを特定する。校正手順は、後により詳細に説明される。
【0103】
リザーバの構成が
図7A及び7Bに示されている。先に簡単に述べたように、灌流液は、灌流チャンバから出た後及び系内で再循環される前にしばらくこのリザーバ内に保持される。リザーバの特定の構造により、灌流チャンバのパス間の時間を慎重に制御でき、また、磁気が除去されてからラベリングチャンバに入るようにするのに十分な時間が灌流液に与えられる。一般に、リザーバは、流体のための曲がった、すなわち蛇行する経路を提供する。提供される経路の長さは、流体がリザーバ内を通過するのにかかる時間に比例する。好ましくは、体内の血液の流れを再現するために約300~500ml/minの灌流液の流量を使用する場合、リザーバチャンバ内に留まる時間は、灌流液の完全に緩和した磁化を確立できるように少なくとも30秒間とすべきである(灌流液のラベリングされたボーラスには、灌流チャンバ内に再び流れる前に、その平衡磁化に戻るのに十分な時間がなければならない)。
【0104】
図7Cは、タグ付け後の時間に関する灌流液の磁化の変化を示す。リザーバ内の灌流液の滞留時間は、好ましくは、ファントム上で行われた前回のASL測定からの残留タグが、灌流液がリザーバを出るときに全く存在しないようにするために、水平緩和時間定数T1の5倍より長くすべきである。これを念頭に、リザーバの大きさも重量及びコストを削減するために最小にとどめるべきである。リザーバの幾つかの考えられる構成について以下に説明する。保持時間は、好ましくは、可能な限り短くして、一方で緩和するのに十分な時間が灌流液に与えられるようにすべきである。
【0105】
単純な実施形態が
図7Aに示されている。ここで、流体は単純にチャンバ内を前後に流れ、これは、多くの中実の壁26によって案内される。実施形態において、第1の集合と実質的に垂直な向きの壁の第2の集合をリザーバ内に配置して、構造を多くの「ストリーム」に分けることができ、水は、その中を流れることができる。これは、リザーバ内での流体の側方流動を防止するのに役立ち得、側方流動は、流体の混合に役立つ可能性があるが、リザーバ内の流体の流動時間を制御しにくくする。入口チューブを、異なるストリームの各々まで延びる多数の入口に分割することができる。したがって、灌流液は、入口からリザーバ内で特定のストリームを通って出口へ流れる。
図7Aに示される実施形態において、出口は、リザーバの入口とは反対側に配置され、またリザーバの底部から延びる(ただし、これは、入口管と等しく上から延ばすこともできる)。
【0106】
リザーバは円筒形であり得、それにより、液体経路27の、入口直後の部分は、リザーバの外側の管状壁から外側チューブの内側に設置された内側チューブまで延びる。したがって、リザーバは、徐々に小さくなり入れ子状に設置されるアクリル樹脂(又は運搬できるように十分に軽く、防水性のある何れかの材料)の多数のリング又はチューブから形成できる。出口チューブは、リザーバの底部において円筒形の中心から延び得る。
【0107】
上述のリザーバと同様のある実施形態が
図7Bに示されており、流体経路の壁を形成するチューブはまた、チャンバの中央に向かってより短くなる。このため、流体の流れの方向が上方向からリザーバの底部に向かう下方向へ変わるたびに、流体は、壁の1つの最上部を越えて且つ下方に向かって経路の次の部分内へ流れる。リザーバは、円筒形でなくてもよく、その中に一連の壁を設置して灌流液のための蛇行経路を提供できる正方形又は長方形等の他の何れの形状でもあり得る。リングの数及びしたがって流体のために提供される経路の幅は、流体をリザーバ内に必要な時間だけ保持するために、流体が辿る経路の長さを最適化し、それと同時にリザーバの重量及び大きさを最小限にするように選択されるべきである。理論上、蛇行経路を有さない単純なタンクをリザーバとして使用できるが、その効果は大幅に低く、なぜなら、流体が移動しなければならないことがあり得る最小距離が、出口から入口への最短の経路のみと等しいからである。流体がリザーバ内を移動する実際の距離は、制御も大幅に困難である。校正目的のために医療現場で用いるように意図されるこのような系では、可変値の制御が特に重要である。リザーバの大きさは、水平緩和時間の少なくとも5倍の滞留時間が得られるように十分な水を保持できるものでなければならない。一例として、蒸留水が400ml/sの流量で使用される場合、リザーバは、提供された蛇行経路を流体全部が辿ると考えると、一度に約200mlの水を収容できる必要がある。現実には、乱流及び他の影響の可能性並びにリザーバ内で構造物が占める体積から、容積は、より大きくする必要があり得る(及び必要な容積は、使用される灌流液の流量及び種類に応じて変化する)。
【0108】
ポンプ機構は、
図1においてその場で示されており、前述のように、ポンプ自体は、UVチャンバ、冷却ブロック、流量計、及びコントローラ/ドライバボードと遮蔽エンクロージャを共有し得る。好ましくは、エンクロージャは、その中の要素をMRIスキャナのボア内の強力な電磁場から有効に遮蔽できるアルミニウム又は銅等の遮蔽金属で形成される。何れの適当な遮蔽金属も使用できる。ポンプは、チャンバのボア内に配置される可能性があり、したがってスキャナの使用中にボアの内部の厳しい環境に耐えられなければならない。これは、圧電ポンプ(例えば、Nitto Kohki Europe Ltd.から入手可能なもの)、遮蔽エンクロージャ、及びポンプと共に使用される電子機器の特定の構成を用いて実現される。
【0109】
ポンプ内の圧電要素に電圧を印加することによって要素が移動し、それが次に流体をポンプ内に流し、所望の量でそれから出るように押しやるダイアフラムを移動させる。印加される電圧は、流量計及びマイクロコントローラを用いて調整し、ポンプによって提供される流量を所望のレベルに保つことができる。用途の違いにより、ファントムを流れる所望の流量を調整できるが、一般に、対象の体内の血液の流れを再現するために350~450ml/min(及び好ましくは約400ml/min)の流量を使用すべきである。しかしながら、理解されるように、より高い又はより低い流量を使用することもできる。
【0110】
脳を画像化するためのスキャナの校正に使用するために、画像化体積自体内の灌流速度は、人の脳内でより低い(白質)及びより高い(灰白質)灌流の測定が可能になるように約20~80ml/min/100gとすべきである。ラベリング領域内の灌流液の速度は約25~30cm/sとすべきであり、これは、成人の心臓周期での平均血液速度と同程度である。ポンプシステムに関する構成要素(遮蔽エンクロージャ内の要素、アンプ、及びパワーモジュール)の何れかの複数を使用できる。特に、2つ以上の圧電ダイアフラムポンプの使用が望ましいことがあり得る。
【0111】
コントローラ/ドライバボード上のマイクロコントローラは、流量計からの入力を受け取り、この入力に応じてポンプの電圧を調整して、所望の流量を維持する。マイクロコントローラは、「エラー」、すなわち流量計によって示される流量と所望の流量との間の差を、ポンプへの電圧入力を調整することによって最小限にするために、PIDアルゴリズムでファームウェアを実行できる。このようなアルゴリズムは従来のものであり、当業者であればわかるであろう。
【0112】
冷却ブロックは、単純にポンプエンクロージャ内のチャンバを含むことができ、灌流流体又は灌流流体の一部がそれを通って分岐されて、ポンプを支持するために使用される各種の電気構成要素(特にパワーアンプ)を冷却する。明らかに、チャンバ自体を十分に密閉して、水が電子機器に到達しないようにする必要がある。灌流流体の温度のわずかな上昇は重大ではなく、システム全体の能力に影響を与えないはずであるが、静的であるか又は冷却ブロックを通して送出されるかの何れかの異なる流体を格納する、主要な系に流体通路によって接続されていない別の冷却システムを含めることが可能である。代替的に、MRIボア内で使用するのに適した電子機器を冷却するための何れの既知の方法でも使用できる。
【0113】
ポンプ自体は、
図8に示されており、圧電ポンプ要素3自体をポンプパワーアンプ10、パワーアンプのための接地ケーブル29、遮蔽されたπ型フィルタ30、及びポンプへの非遮蔽2心ケーブル31と共に含むことができる。構成要素のこの特定の構成により、ポンプをMRIボア内で使用し、その際に強力な電磁場がポンプの動作に干渉しないようにすることができる。π型フィルタは、図に示されているように接続された直列のコンデンサとインダクタとを含む。コンデンサ及びインダクタの値は、MRIスキャナの動作の周波数(これは、典型的に、3Tスキャナについて約128MHzである)において、インダクタのインピーダンスが高く、コンデンサについてそれが非常に低くなるように慎重に選択される(例えば、これらの値は、それぞれ3500~4000nH及び450~500pFである)。これは、圧電ポンプ及びパワーアンプへのRF電流の流れを有効にブロックし、その代わりにこれらをケーブルシールドに、且つその後、アースにシャントする。
【0114】
圧電ポンプにはバイポーラ駆動電圧が必要であり、これは、バイポーラ電源を用いて提供できる。しかしながら、これらの電圧を生成するために一般的に使用されるDC-DC変換器は、フェライトを含み、それにより、強力な磁場のため、MRIスキャナのボアで使用するには不適となる。MRI適合ポンプにおいて適当な駆動電圧を提供するために、+/-150V DCを提供でき、フェライト構成要素を含まない単一電源駆動回路をポンプへの電圧源として使用できる。しかしながら、これは、バイポーラ回路を用いて電源供給されたポンプのものに匹敵する機能性を提供しないことがあり得る。代替として、リニアブリッジアンプ、チャージポンプ、空心インダクタを用いるブーストコンバータ、又は圧電変圧器の1つ又は複数をポンプ回路内に含めて、単一電源駆動回路の性能を改善することができる。リニアブリッジアンプは、2つのリニアアンプからなり、その各々が負荷のそれぞれの側を駆動する。2つのアンプの入力波形は相互に逆位相であり、それにより、ブリッジアンプは、電源レールの電圧振幅を二倍にし、また負荷を通して正及び負の電圧を提供できる。これは、+150Vのレールのみが必要となるという利点を提供する。
【0115】
代替的に、別の電源モジュールをスキャナの外部に配置してポンプに電圧を供給できる。電源モジュールは、1つ又は複数のバッテリ(11.1V 3Sリチウムポリマーバッテリが好適な選択肢である)、及び必要な電圧+/-150Vを生成してポンプを駆動できる1つ又は複数の高出力DC-DCコンバータを含むことができる。電源は、DC-DCコンバータへの電源をソフトスイッチする(soft-switch)こともできる。スキャナ付近の磁場がポンプの機能性に影響を与えないようにし、且つスキャナに近いことによってこの機能が低下するか又は影響を受けたときに電源モジュールを移動できるようにするために、保護及びモニタリング回路を含めることができる。多心遮蔽ケーブルで電源モジュールをポンプに接続することができ、ケーブルトラップを含めることは、ポンプの使用中に強力な電磁場からの干渉を軽減させるのに役立つ可能性がある。ケーブルトラップは、例えば、ポンプモジュール端の付近(ケーブルの端から10~50cm)の遮蔽ケーブル上に配置され得る。好ましくは、ケーブルに遮蔽コネクタ(レモ(Lemo)コネクタ等)も使用すべきである。
【0116】
図9は、UVチャンバをより詳細に示す。設計は、かなり単純であり、灌流液が流れるチャンバ32を含む(一般に、遮蔽エンクロージャの内側にポンプ用電子部品と共に配置される)。チャンバは、好ましくは、製造しやすいようにアクリル樹脂で形成され、任意の方法で成形できる(ただし、管状エンクロージャの場合、提供される乱流をより少なくし得る)。チャンバは、ポンプ用電子部品を格納する遮蔽エンクロージャ内に配置され得、冷却ブロックを提供するために使用されるものと同じであるか又は別であり得るが、UVチャンバをポンプ用電子部品と共に配置することにより、より効率的なレイアウトが得られる。チャンバは、空間を含むことができ、それにより灌流液内に捕捉されたすべてのガスを排出することができる。このようにして、UVチャンバは、細菌を死滅させるための殺菌装置と気泡除去装置との両方としての役割を果たすことができる。
【0117】
放射(これは、かなり低パワーであり得る)を生成するUV-C LED 33は、チャンバ内へ延びる防水エンクロージャ34内に配置される。生成される波長は、約250~300nmの波長、又は細菌のDNAを破壊するのに有効な放射の何れかの波長を有するべきである。防水エンクロージャの少なくとも一部は、LEDによって生成される波長の放射に対して実質的に透過性であるべきであり、石英ガラスで形成され得る。UV(及び特にUVC)に対して少なくとも部分的に透過性である他の材料を使用し得るが、石英ガラスは、UVCに対して特に透過性が高いため、ここでは特に良好な選択肢である。LEDは、プリント回路基板35上に実装でき、これは、機械的支持手段を提供することに加え、定電流調整器(20mAの定電流が適当であろう)を含んで、正しい電流をLEDに提供できる。灌流液がチャンバを通って流れると、それに対して、灌流液内の生物のDNA内の核酸を破壊することによって殺菌剤として機能するUV-C放射が照射される。したがって、ファントム内での藻類及び細菌の増生が防止される。ポンプに電源供給するバッテリを用いて、UV-C LEDを動作させることができ、又は別の電源を提供することもできる。上述のものと同様の構成の殺菌装置として水銀電球を使用できるが、水銀電球は、高い電圧を必要とし、壊れやすく、そのフィラメントが使用中のスキャナに起因する振動による影響を受けやすく、それによって電球の寿命が短縮される傾向があるため、MRIスキャナでの使用には適さないようである。
【0118】
スイミングプール等において藻類の増生を減少させるために同様のシステムが使用されているが、このようなシステムは、これまで医療用イメージングの分野、特に灌流液を清潔に保ち、殺菌性添加物の必要性を低減させるためにファントムで使用されたことはなかった。ファントム内の細菌増生の問題が考慮されたことは今回が初めてであり、なぜなら、広く普及し且つ長期的に使用できる校正のためのファントムがこれまで開発されていなかったからである。
【0119】
物理的ファントムに前述の流れモデリング手順を組み合わせたものを用いて、病院等の臨床環境におけるMRIスキャナのための均一な校正システムを提供できる。システムを他の用途のスキャナの校正に使用することも可能であることがわかる。最適化されたファントムのシミュレーション画像が生成されると、これらは「グラウンドトゥルース(ground truth)」を表すことができ、標準を提供できる。異なるMRIマシンで同じファントム(又は実質的に同じファントム)を撮影した画像をこの標準と比較することができる。校正試験に不合格となることは、特定のMRIマシンが定量的な医療用イメージングで使用するのに適さないことを示し得る。
【0120】
1つの例において、校正試験に不合格となった場合、マシンは、画像が一致するように調整される。このようにして、医療現場では初めて、校正済みのMRIスキャナで撮影された実際の対象の画像を、脳の異なる部分の血液の流れの体積流量等の特性に関する定量的な値を特定するために使用できる。
【0121】
適正に標準化された校正システムを提供するために、国際標準まで追跡可能な参照データ又は参照標準を用いたオンラインサービスを提供できる。このサービスは、クラウドベースであり得、それによって病院及びクリニック又はイメージングセンタは、それらが認証を得ようとするMRIマシンで撮影された同じファントムのデータをアップロードできる。その後、このデータを、後に詳細に説明するように中央集中的に処理でき、自らのマシンに調整が必要か否か、又はその方法に関する指示が使用者に提供される。
【0122】
図10は、このタイプのシステムを用いた校正方法の一例を示す。使用者には、データのアップロードを容易にし、場合により画像を取得し、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)フォーマット(又は他の何れかのフォーマット)であり得るデータを、関連するメタデータと共にアップロードし、校正することにおいて従うべきステップのチェックリストを提供するために、ウェブベースのインタフェースを提供できる。使用者は、システムに安全にアクセスするために、例えばウェブサイトからログインを求められることもあり得る。高解像度の解剖学的参照画像(又は場合により複数の参照画像)と1つ又は複数のASL画像とが、校正が必要なMRIスキャナで撮影される。収集されたデータがサーバにアップロードされ、そこで、これが登録されて、参照「デジタルファントム」(又は参照画像)との比較により、ファントムの向き及び位置が特定される。参照データは、静的であるか又はオンザフライで動的に作成され得る。ファントムの流れジオメトリの最適化を扱った項で上述したように、シミュレーションによるASL画像が作成される。しかしながら、このとき、アップロードされた画像中のMRIスキャナ内でのファントムの向き及び位置は、シミュレーション画像を確実に実際のデータと直接比較できるようにするために使用される。シミューション画像を生成する際、特定の状態を再現することにより、ハードウェア及び各イメージングセンタで使用される具体的なASLパルスシーケンスにおける違いも必要に応じて考慮することができる。
【0123】
シミュレーション画像が生成されると、これを実際の画像と比較して(依然としてサーバ上にある)、校正結果を自動的に生成できる。これらは、イメージングセンタ内のスキャナが定量的ASL情報を提供するのに適しているか否か、又は調整が必要となるか否かを示す。校正の結果は、ウェブベースのインタフェース上に表示され、イメージングセンタに送信されるか、又はイメージングセンタのスタッフのメンバーがサーバからダウンロードできる。校正結果は、校正が完了しなかった場合、スキャナを調整する方法についての助言も提供し得る。この助言は、実際の画像とシミュレーション画像との間の比較から得られた情報に基づき得る。必要に応じて、このプロセスは、多数回にわたって繰り返すことができる。スキャナからのアップロードは、サーバに接続されたスキャナで自動的に行うことができる。スキャナからの自動アップロードには、ローカルネットワーク上の追加のハードウェア又はソフトウェアのインストールが必要となり得る。
【0124】
グラウンドトゥルースを表すために使用されるモデルは、中央集中レポジトリの通常のメンテナンスの一環としてアップロード及び改善できる。このようなシステムは容易に拡張可能であり、エンドユーザ側でいかなるアクションも起こすことなく、すべての改善が、参加しているすべての場所において即座に実装される。校正結果に加えて、校正済みのマシンを用いて撮影された実際の、例えば人の対象の画像を中央サーバにアップロードし、分析して、有益な統計学的(及び他の)情報をセンタ及びマシンメーカに提供することができる。データ及び校正結果は、後日、システムを通して分析及び/又は見直すこともでき、これは、一般的な問題を特定するのに役立ち得る。システムは、スキャナで撮影された画像を入力でき、校正結果を出力として提供できるパイプラインとして完全自動化できる。
【0125】
クラウドベースのシステムを用いて、アップロードされた画像を「グラウンドトゥルース」のコンピュータシミュレーションと比較することによってスキャニング装置を校正するというアイディアは、ASLイメージングのための試験以外の用途にも適用でき、この使用に限定する必要はない。例えば、同じ原理は、定量的CAベースの灌流、拡散型イメージング(拡散テンソルイメージング及びトラクトグラフィ等)、又は代謝及び生理学的イメージング(その例は、超偏極MRI及びグルコースを用いたMRIである)のためのファントムの設計及びスキャナの校正で使用するのに適当であり得る。医療用としては、すべての機器がISO標準を満たす必要があり、これを念頭に置いて、校正済みのスキャナが使用に適していることを確認するために校正エンジンを設計する必要がある。
【0126】
特にISO 17025が試験及び校正機関に適用される。これらの機関は、その業務を提供する能力があると認められるために、この標準に基づく認証を受けなければならない。これは、標準が厳格に遵守され、且つ遵守されなければならない医療環境において特に重要である。ISO 17025には、実行される校正の信頼性に関する技術的標準が含まれる。
【0127】
以下の項では、特定の標準を確保できる校正プロセスのさらなる詳細を提供する。スキャナによって撮影された画像は、コンピュータモデリングを用いて生成された参照画像と比較してチェックされ、これらを認証できるか否かが特定される。画像が認証できる場合、画像化システムは、容認可能なレベルの精度に校正されたと考えられる。画像化システムは、MRIマシンであり得、プロセスは、前述のようなASL画像を認証するためのものであり得るが、説明はより一般的であり、他のイメージングマシン及び方法にも当てはめることができる。
【0128】
MRIスキャナ(又は他のスキャニング装置)の認証及び校正が必要な厳しい標準に適合するのに十分に正確であるようにするために、グラウンドトゥルースモデルを用いて生成される参照画像を、ファントムを撮影した画像に、有効な比較ができるような方法で関連付ける必要がある。以下の説明は、スキャニング装置を特定の標準に合わせて校正するための一般的な方法に関する。灌流ファントム及び拡散ファントムを撮影したMRI画像へのこの方法の応用については別途説明するが、有効性確認の方法は、他の種類のファントム及びスキャニング装置に適用可能である。
【0129】
グラウンドトゥルースデータセットは、灌流ファントムの場合について上述したCFDシミュレーションを介して生成され得、この場合、ファントムの動作条件(温度、流量又は圧力等)を表すパラメータがモデルのための入力として使用される。これらは、特定の値に固定されるのではなく、スキャン全体を通したファントムの動作状態をモニタすることにより、変化を考慮するように調整できる。これは、ファントム内の流体の温度、圧力及び流量等、コンピュータモデルへの入力として使用されることになる物理パラメータの値を測定及び報告するためにファントムに連結された各種のセンサを用いて実現される。
【0130】
他の種類のファントム(拡散ファントム等)についても、モデリング条件と入力値(及びセンサ)とを必要に応じて特定の状況に合わせることにより、同じプロセスに従うことができる。センサデータが収集されると、これを、シミュレーション画像を生成するコンピュータモデルへの入力として使用できる。これらは、スキャナの種類及び使用されるファントムの種類に応じて、ASL又は他の画像化方法を用いて生成される画像を表し得る。
【0131】
他の種類の画像化機器も同様の方法を用いて校正できる。例えば、PET画像を再生するために、関係する特定の造影剤から受信されることが予想される信号は、造影剤を表すパーティクルを含むCFDシミュレーションを用いて再生でき、ファントムは、ファントムを通して流される放射性トレーサによって発せられる光子を検出するPETカメラを用いて画像化される。
【0132】
参照画像は、制御された条件下で(例えば、校正され、取得及びデータ処理のすべての面の有効性が確認されたスキャナを使用して)ファントムを画像化することによっても生成できる。何れの場合にも、グラウンドトゥルースデータセットは、任意の特定の時間におけるファントムの「真実」、すなわち実際の物理的状態を有効に表すはずである。したがって、任意の特定の時間において、グラウンドトゥルースのデータセットから、適正に校正され、機能していればスキャナが示すはずであるものを示す画像を生成できる。その後、これらの画像を、同時に撮影されたスキャンと比較して、スキャナの調整を行う必要があるか否を特定できる。幾つかの状況では、画像間の違いは、スキャナがどのような異常を示しているかに関する手がかりも提供し得、どのような調整を行うべきかに関する助言を使用者に対して(例えばコンピュータスクリーン上で)提供し得る。
【0133】
校正プロセスが確実に正確な結果を提供するようにするために、任意の特定の時間におけるファントムの動作状態(operating state)がわかることが重要である。また、スキャナを用いて撮影される画像は、この既知の動作条件(operating conditions)の集合に適正に対応するようなタイミングにされることも重要である。これを実現するために、1つ又は複数の感知装置(
図1に示される流量計等)をファントムに連結して、その動作状態に関連付けられる各種の物理的パラメータをモニタし得る。これにより、画像取得中にファントムの実際の動作状態を追跡して、シミュレーションが、スキャナを用いて撮影される画像の見え方に影響を与える可能性のあるパラメータの正しい入力値を確実に使用することができるようにすることができる。例えば、流体の経時的温度変化は、モデルへの入力として使用され得、これは、流れの特性及びしたがってシミュレーション画像の見え方に影響を与える。「動作状態」という用語は、ファントム内の物理的パラメータの値を表すために使用され、温度、圧力及び流量が測定される場合、特定の時間における動作状態がこれらのパラメータの値によって表される。動作状態は、ファントムの異なる部分における温度、圧力及び流量の幾つかの値によっても説明され得る。動作状態は、時間が経つと変化し得、この変化はセンサによって認識及び記録される。
【0134】
動作状態を定義するためにモニタ及び使用され得るパラメータの幾つかの例は、ファントム中を通過する流体のバルク流量、ファントム内の流体の圧力、ファントム内の流体のpH、流体内の溶液中の溶解化合物(グルコース、ナトリウム、カリウム、又は乳酸塩等)の濃度、及びファントム内の流体の温度である。これらの測定は、スキャニングマシンを用いたファントムの1つ又は複数の画像の取得と同時に行うことができる。スキャンは、一般に5~30分間続き、画像取得中、スキャン全体を通したファントムの物理的な動作状態をモニタし、それに関する情報を継続的に更新するために、センサを用いてある間隔で測定が行われる。測定間隔は短く、ほぼ継続的なモニタを実現することが好ましい。好ましいサンプリングレートはセンサの性質によって異なるが、一般に、センサからの測定値は、少なくとも10秒に1回、より好ましくは少なくとも1秒に1回、及びさらにより好ましくは少なくとも1秒に10回収集及び記録されることが好ましい。例えば、1秒間を表す各データブロック内の平均値を計算することにより、特定の期間にわたるセンサの測定値を平均することにより、平滑化を実現できる。
【0135】
上述のようにセンサからのデータをモニタすることにより、使用者は、校正プロセス中、ファントムが予定通りに(これは厳しい限度内であり得る)動作していることを常に確認でき、これが確実に当てはまるように任意の時点でその動作状態を調整できることになる。例えば、ISO標準に適合するために、ファントムは、特定の条件下で動作する必要があり得、感知機器の使用により、これが確実に当てはまるようにすることができる。
【0136】
センサによって得られた測定値を、動作条件が許容範囲から逸脱している場合に調整するためのフィードバックとして使用できるようにするために、制御システムが含まれ得る。流量の許容範囲は、所望の値の1%以内であり得る。流量の測定は、実質的に連続的に行い、その後、コントローラに記録され且つ/又は渡され、これは、各測定について、流量に関する関連する値が許容範囲内にあるか否かを特定する。許容範囲内にない場合、コントローラは、ポンプの駆動信号の振幅を増大又は減少させて、流量を所望の範囲内に戻すように機能できる。それより高い及び低いと流量を減少又は増大させる信号が送信される値は、例えば、ISO標準によって明示されているものより狭い範囲を表し得る。これにより、実際の値が測定期間中の何れかの時点で明示された範囲から逸脱する機会が低減される。
【0137】
代替的に、所望の流量は、特定の値に固定され得、コントローラは、それがこの値に確実に留まるようにするためにそれを調整するように適応され得る(測定された流量が固定値より低い又は高いことに応じて、ポンプへの駆動信号の振幅を増大又は減少させる)。所望の流量を特定の値又は範囲に固定することは、実施形態において、スキャニングマシンから遠隔的にオンラインでアクセス可能なユーザインタフェースによって実行され得る。
【0138】
流量測定の例を上で述べたが、他のパラメータを所望の値又は所望の範囲内に保持するために、ファントムの動作への同様の調整を行い得る。幾つかのパラメータは、同時に制御され得る。ファントムの温度は、加熱又は冷却ステムによってコントローラからの信号に応じて昇降され得る。加熱システムは、ファントム内の流体を加熱する直接加熱素子を使用するか、又はその後、ファントムを通して循環する流体を加熱(若しくは冷却)し得る。圧力は、システム内の流れの抵抗を、例えばバルブを閉じることによって増大させることにより制御され得る。
【0139】
フィードバック機構を一切必要とせずに(又はフィードバック機構に追加して)ファントムの温度を適正に制御するために、1つ又は複数の相変化材料(PCM)の特性を利用することが可能であり得る。これらの材料は、相を変化させる際にエネルギーを放出又は吸収し、その際に一定の温度を保持する。この相変化期間は、ある場合には数時間継続する可能性があり(使用される材料の種類による)、これは、一般に、MRIスキャナ等の画像化システム内でスキャンを記録するのにかかる時間より長い。幾つかの材料、例えば幾つかの有機ポリマーは、ほぼ典型的な人の体温で液体から固体に相変化し、したがってこの非常に精密な温度に長時間留まり得る。これらの材料が固化を始めても、これらは最大で数時間にわたり、相変化プロセスが完了するまで同じ温度のままであり得る。スキャンルームの外でファントムをこのような材料中に入れて、材料をその相変化温度にすることかでき、そこでファントムをスキャナ内に運ぶことができる。その後、ファントム内の流体は、スキャン中にわたって一定の温度に留まるはずである。これが確実に当てはまるようにするために、温度を終始モニタすることもできる。
【0140】
ファントムからの動作データ(時間に関する流量、温度及び/又は圧力の測定値)を中央レポジトリに送信し、記録できる。このデータストアは、オンライン(例えば、クラウド内)であるか、又はスキャナの付近に設置されるか、又はその両方であり得る。動作データは、メタデータの役割を果たし、同時にスキャナで撮影されたファントムの画像に関連付けられる。ファントムの製造番号等の他のメタデータ及びセンサの校正に関するデータも含めることができる。ファントム自体、例えばオンボードセンサの校正は、定期的に(例えば、毎年)実行すべきである。したがって、メタデータを用いて、校正が無効になったか否かを特定できる。これが当てはまる場合、センサによる測定は無視され、画像の有効性確認ステージの結果は不合格となる。
【0141】
図11は、画像の有効性確認のためのシステムの例をスキャン中に見えるように示す。このシステムは、制御/ロギングシステム36を含み、これは、センサ37及び試験される画像化システム38に連結される。センサと制御/ロギングシステムとの間の通信リンクは無線であり得、例えばトランシーバボックス40までBluetooth(登録商標)接続39を介し得、それからスキャニングルームの外に配置され得る制御/ロギングシステムまで光ファイバ41等の他の種類の接続を介し得る。これにより、スキャナ自体内で複雑な配線が不要となる。Bluetooth(登録商標)接続はまた、スキャナの動作に干渉せず、同様に、スキャナの動作も、ファントムに連結されたセンサ(又は複数のセンサ)からトランシーバボックスへのデータの送信に干渉しない。当然のことながら、データは、センサから制御/ロギングシステムへ、これら2つが相互に十分に近ければBluetooth(登録商標)を介して直接渡され得る。これが可能であるか否かは、MRIスキャンルームのレイアウト及び特徴、並びにスキャナのボアと制御/ロギングシステムとの間の視線内に適当な大きさの導波路を含むことに依存する。同様に、光ファイバ接続をセンサに直接接続して、センサデータを制御/ロギングシステムに直接搬送できる。
【0142】
制御/ロギングシステムとファントムとの間の接続42により、制御/ロギングシステムは、情報をファントムに送信して、その動作状態を調整することができる。例えば、制御/ロギングシステムは、ファントム内の流体の流量に関するセンサデータを受信して記録し得、このデータを処理して、流量が所望の値より低いか否かを特定し得る。このような場合、制御/ロギングシステムは、ポンプ回路と通信して、ポンプへの駆動信号の振幅を増大させ得、それが次に、前述のように流量を増やす。
【0143】
制御/ロギングシステムと画像化システムとの間の接続43も提供される。これらは、コントロールセンタ及び画像化システムのタイムクロックの同期を可能にする。この同期は、スキャナが制御/ロギングシステムに送信する同期信号によって実現され得、又はインターネットベースのタイムサーバを用いて参照時間ソースを提供し、有効性確認プロセスの前又はプロセス全体を通してそれに両方のクロックを同期させ得る。代替的に、制御/ロギングシステムは、スキャナにその時間を問い合わせ、制御/ロギングシステムの時間を、それらが同期されるように調整し得る。これは、単純にボタン(ハードウェア又はソフトウェアで実装される)を伴い得、使用者は、スキャニング開始時にこれを押して同期を開始できる。これにより、前述のように、ファントムから受信されて参照画像を生成するために使用されるセンサデータは、スキャン中にファントムの実際の動作状態を確実に表すものとなる。
【0144】
図12は、画像の有効性確認を実現できる基本的な方法を示すフローチャートを提供する。ステップ44では、ファントムを画像化システム内にセットする。ステップ45では、画像化システム及び制御/ロギングシステムのクロックを同期させ、その後、ステップ46では、制御/ロギングシステムがファントムの動作状態を所望の状態に(又は所望の状態範囲内に)調整する。ファントムの動作状態の調整には、前述のようなフィードバックが含まれ得、センサデータを使用して、特定の物理的パラメータが所望の値範囲内にあるか否かを特定し、そうでなければ値を増減させるためのあるアクションを取る。ステップ47では、画像化システムを用いてファントムのスキャンを実行する。画像取得と同時にセンサデータも取得され、制御/ロギングシステムに送信されて、そこで記録及び処理される。ステップ48では、画像及びセンサデータを照合する。センサデータをチェックし(又はファントムの動作状態が画像取得中にすでに制御されている場合に再チェックし得る)、ファントムがあるべき状態で動作していたことを確認する。チェックでは、ファントムが、スキャン期間の全体を通して対象となる人又は動物を有効に表すために必要である、特定の求められる限度内で動作していたか否かが特定される。これが当てはまらないことが判明した場合、不合格信号が返され、スキャン中に取得された画像データは、校正プロセスを実行するために使用されない。この時点でデータを保存又は廃棄でき、ファントムを技術的な問題についてチェックしてから、スキャンを再び実行することができる。
【0145】
ファントムがスキャン中にわたって又はスキャン時間の少なくとも指定された割合にわたって所望の通りに動作した場合、測定されたセンサデータは、モデリングを通してグラウンドトゥルースデータセットを生成又は選択するために使用できる。グラウンドトゥルースデータセットは、正しく動作しているスキャナにとって見えるべき状態にファントムを表す参照画像を生成するために使用できる。参照画像の見え方は、使用される画像化方法に依存する。
【0146】
ステップ49では、参照画像を取得されたスキャンと比較して、これらの2つが十分に類似しているか否かを特定する。比較は、画像内の関心対象領域内のデータとグラウンドトゥルースデータセットとを比較するt-テスト等の統計的試験によるものであり得る。画像が十分に類似していなければ、スキャナは正しく動作しておらず、校正は不合格である。その後、スキャナを慎重にチェックして、不良の原因を特定しなければならない。画像及び収集されたデータはすでに記録されており、スキャナの診断を支援するために使用できる。このようにして、上述のシステムにより、特定の標準で動作していない画像化システムが、それらが誤った医療的診断につながる可能性のある状況で医療担当者によって使用されるという事態が確実になくなる。
【0147】
図13は、画像の有効性確認プロセスのより詳細なフローチャートを示し、これには画像処理のさらなる詳細が含まれる。フローチャートは、MRIスキャナの校正のためにASLを用いて灌流ファントムを画像化する場合を示す。
【0148】
ステップ50では、スキャナから実験的画像を取得し、その間にタイムセンサを用いてファントムが正しく動作していたことを確認する。前述のように、これは、スキャン中に常に又はスキャン時間の少なくとも指定された割合にわたり、測定された数量が所望の範囲内に入るか否かをチェックすることによって行われる。画像内の信号対ノイズ比もチェックし得、SNRが指定された範囲(又は値)に含まれない(又はそれを超える)場合、その画像データを拒絶する。メタデータを収集してチェックし、ファントムの校正が有効であることを確認する。メタデータは、収集されたセンサデータ及びファントムに関する他のメタデータ、例えば製造番号等を含み得る。特定のファントムは、製造番号が、それが容認可能なモデルでないか又は古すぎることを示した場合、有効性確認は不合格となり、そのファントムはこの方法で使用から除外され得る(may be cleared for use with the method)。ステップ51では、MRIシーケンスパラメータ、ファントムのフローボリュームの幾何学モデル、及びファントム内の材料の浸透性等の物理的流体力学パラメータと共にセンサデータをモデリングのための入力値として使用する。モデルの出力は、グラウンドトゥルースデータセットであり、これは、スキャナからの画像との比較を行うために使用される。グラウンドトゥルースデータセットから生成される参照画像は、有効な比較を行うために、スキャンデータに関して正しい向きでなければならない。これは、実際のファントム上又は画像化システムのスキャニング体積内にある、スキャンされた画像の方法において認識され、画像を整合させるための剛体又は非剛体位置合わせを用いて参照画像中の既知の位置と関連付けることができる1つ又は複数のマーカを用いて実現され得る。
【0149】
ボックス55は、スキャナを用いて撮影された画像を参照画像と比較できるプロセスの幾つかの詳細を示す。より正確な結果を得るために、幾つかのスキャンを取り、多くの比較画像を提供することができる。各スキャンは、それぞれのスキャン中に収集されたセンサデータに基づく、それ自体に関連する参照画像を有する。図の例では、少なくとも3つの再現画像及び参照画像が生成され、比較ステージで比較される。これにより、バイアス(3つの値の平均が参照値とどの程度離れているか)及び正確さ(3つの値の平方偏差を取ることによる)を評価できる。4つ以上の再現スキャンを取ることができ、したがって結果の精度が高まるが、必要な時間及び処理パワーも増大する。医療環境での使用のために容認可能な標準に合わせて、画像化システムの適正な校正の有効性を確認するために必要な再現の数は、ISOの要求事項に依存し得る。
【0150】
画像データが収集され、関連する参照画像が生成されると、参照画像とファントムのスキャン画像との間の差を示すバイアス推定値を画像内の多数の関心対象領域について計算できる。画像内の関心対象領域は予め決定され得、例えば大きいばらつきが予想される領域に対応し得る。ステップ52では、バイアス値をチェックして、測定されたバイアスが一致限界(limit of agreement)内(スキャナが正しく校正されていれば、バイアス測定値が95%の確率に入ると予想される範囲内)であるか否かを判断する。これが当てはまることが判明した場合、合格の値が返され、方法はステップ53に進む。バイアスは、測定値が得られた値の範囲にわたってチェックされる。実施形態において、校正プロセスの結果、バイアス測定値の何れかが一致限界から外れた場合、機器は校正に不合格となる。これらの限界を決定するために、毎回要求される具体的な校正標準及び使用されるモデル又は器具の種類に応じて、異なるパーセンテージの値を使用し得る。
【0151】
ステップ53では、バイアス値の一貫性をチェックする。バイアス測定値のばらつきが大きいことは、参照画像とスキャンデータとの間の容認できない差を示し、これによって不合格スコアが返され、画像は有効性確認に不合格となる。バイアス測定値のばらつきにより、プロセスが追加のステージに進むことにもなり得、そこでさらに評価が行われる(例えば、スキャニング、モデリング及び/又はバイアス決定ステージを繰り返す)。合格スコアを返すには、バイアス結果がどの程度類似している必要があるかという点である程度の自由裁量範囲があり得る。例えば、最高値と最低値との間の差(範囲)が所定の閾値より低いことが求められ得る。
【0152】
バイアスが試験値範囲を通してかなり一定していることが判明した場合、ステップ54では正確さをチェックする。正確さ(すなわち、同じ条件下で取られた測定値の均一性)が一致限界内(95%の信頼区間内)であれば、画像の有効性は確認され、スキャナは、許容レベルに校正されたとみなされる。これは、医療現場での使用にとって許容されるレベルであり得る。
【0153】
以下では、有効性を確認される画像が灌流ファントムのMRI画像である場合の有効性確認システムのより具体的な例を提供する。ファントムは、上で詳細に説明したものと同じ又は同様であり得る。ここで、ファントム内の流体のバルク流量及び温度がモニタされる。1つ又は複数の流量計がファントム内に取り付けられ、ファントムが動作しているときに流体が通過する通路の何れかに沿って接続され得、それにより、流体は、流量計を通過し、流量を記録できる。温度測定は、流体が流れる通路内に延びる1つ又は複数の温度計によって行われる。このようにして、流体は、温度計の周囲(又は温度計を格納する防水容器の周囲)を通過し、流体温度をより正確に測定する。幾つかの流量計及び温度計を同じファントムで流体の流路に沿った異なる地点において使用し得る。収集される測定データは、データロギングシステム(又は
図11の制御/ロギングシステム)に渡される。ファントムに連結された測定機器とデータロギングシステムとの間の接続は、一般的に上述したように、測定機器とマグネットルームのコーナのトランシーバボックスとの間のBluetooth(登録商標)接続によるものであり得る。その後、データは、光ファイバケーブルを介してマグネットルームから出てデータロギングシステムへ送信され得る。
【0154】
データロギングシステムは、そのシステムクロックをMRIスキャナのものと同期させて、毎回の画像取得時にファントム内の正確な状態が確実にわかるように構成される。それは、ファントムを異なる条件下で動作させて複数の画像を撮影することであり得る(例えば、幾つかの温度範囲又は流量範囲が試験され得る)。これにより、正確な校正を行うために、MRIスキャナの機能をある範囲の値について試験することができる。スキャン画像が取得されると、これらを、CFDシミュレーションを用いて生成された参照画像と比較して、MRIが正確な画像を生成していることを確認できる。これが当てはまらないことが判明した場合、不合格スコアが制御/ロギングシステムによって返され、シミュレーション画像及び取得された画像が許容誤差範囲内で一致するまで、MRIスキャナを調整及び試験することができる。制御/ロギングシステムはまた、スキャンの開始時間を制御して、確実にパラメータの動作状態が所望の状態であるときに画像が撮影されるようにし得る。代替的に、スキャンの開始時間は、センサからのデータに基づいて手作業で制御することもできる。
【0155】
同様の方法を用いて、MRIスキャナで撮影された拡散ファントムの画像の有効性を確認することができる。これらの画像は、体内の微細構造(例えば、白質神経束等)内の水又は他の流体の拡散を定量化するために使用され得る。その場合、拡散ファントムが使用され、その中で組織内の拡散速度を正確に再現できる。拡散は温度依存性が高く、その結果、この場合、温度を適正にモニタ及び管理することが特に重要である。ファントム内の流体の温度を測定するために、非導電性のMRI適合温度計が1つ又は複数の位置でファントム内に埋め込まれ、例えばファントム血管中に仕込まれる。ファントム内でのファントムの温度を上昇又は低下は、ファントムの周囲に加熱された(又は冷却された)流体を循環させて、温度を所望の範囲又は値まで上昇又は低下させることによって実現できる。データロギングは、灌流ファントムの場合において上で説明したロギングシステムと同様に機能し、再び、データロギングシステムは、そのクロックをMRIスキャンのものと同期させて、画像取得中のファントムの状態が確実にわかるように構成される。
【0156】
本発明の実施形態が、特に図示されている例に関して説明された。しかしながら、本発明の範囲内で上述の例に対する変更形態及び改良形態がなされ得ることが理解されるであろう。