IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イー−コンヴァート ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許-発電機 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】発電機
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/12 20060101AFI20220628BHJP
   H01G 4/33 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H01G4/12 720
H01G4/33 102
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018555529
(86)(22)【出願日】2017-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 UA2017000038
(87)【国際公開番号】W WO2017184102
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-04-06
(31)【優先権主張番号】A201604279
(32)【優先日】2016-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】UA
(73)【特許権者】
【識別番号】319003150
【氏名又は名称】イー-コンヴァート ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】E-CONVERT GMBH
【住所又は居所原語表記】Vuerfels 94 51427 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】シュミンスキー, ゲンリク ゲンリコヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ヘートマン, オレクサンダー イヴァノヴィッチ
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-021265(JP,A)
【文献】特開平03-145108(JP,A)
【文献】特開平08-124781(JP,A)
【文献】特開平06-163310(JP,A)
【文献】特開2009-263166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/12
H01G 4/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体の層で分離された+-両方の導電性プレートの梱包体を備えた筐体から成る発電機であって、前記梱包体における全ての層は互いに緊密に密着しており、前記導電性プレートは自由電子密度が異なる異種導体、すなわち2つの異なる金属から成っており、これには例えば、アンチモン‐ビスマス、鉄‐ニッケル、チタン‐アルミニウムと、さらに、クロメル‐アルメル、クロメル‐コペルのような様々な合金と、鉄‐コペル、アンチモン‐アルメル、クロメル‐ビスマスのような鉄‐合金の組み合わせが含まれ、これと共に、プレートの前記梱包体は、1層の強誘電材料と2枚の異種の導電性プレートとから成る少なくとも1つの単位セルを含み、前記1層の強誘電材料と2枚の異種の前記導電性プレートは、前記導電性プレート、前記強誘電材料、最初のものとは異なる導電性プレート、の順序で配置されており、前記梱包体が1つ以上の単位セルを含んでいる場合には、前記単位セルは電気エネルギー源に直列または並列に接続しているか、あるいは、直列と並列の組み合わせ(いくつかの単位セルは直列に接続し、いくつかの単位セルは並列に接続する)にて電気エネルギー源に接続しており、亜硝酸ナトリウム、チタン酸バリウムベース、ニオブ酸リチウムベース、ニオブ酸カリウムベース、チタン酸鉛ベースの半導体セラミックなどのような強誘電半導体を強誘電材料として使用していることを特徴とする、強誘電体の層で分離された+-両方の導電性プレートの梱包体を備えた筐体から成る発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気工学に関し、発電に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
広く使用されている従来の動的発電機の他に、それほど広く使用されていない、化学反応エネルギー、熱エネルギー、磁場エネルギーなどを用いた移動式の細部を搭載していない静止デバイスも存在する。
【0003】
活性誘導体(強誘電体とエレクトレット)の内部エネルギーを使用して発電するデバイスがある(2008年9月10日に公開された発明特許(特許文献1)を参照)。
【0004】
電力を生成するこのデバイスは、+-両方のプレートの梱包体を備えた筐体から成る。これらのプレートは強誘電材料層によって分離されており、又、強誘電材料層の他の部分から分離されたチャージプレートを装備している。ここで、チャージプレートはポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、チタン酸カルシウム、ガラスのような双極性エレクトレットから成り、また、安定化単結晶強誘電体は、チタン酸バリウム、フッ化ポリビニリデン、硫酸トリグリシン、酒石酸ナトリウムカリウム、リン酸二水素カリウム、ニオブ酸リチウム、アンモニウムftorberilatなどを強誘電材料として使用している。これと共に、プレートの梱包体は、1つのエレクトレット、2枚の強誘電材料のプレート、2枚の金属プレートから成る、少なくとも1つの基本セルを含み、同時に、これらのプレートは全て互いに密着しており、次の順序で配列されている。金属プレート、強誘電材料、エレクトレット、強誘電材料、金属プレート。梱包体内に1つ以上の基本セルが存在する場合、基本セルは、後続の基本セルの各々が導電部分の同様の電荷によって先行の基本セルと結合する形で配列されている。
【0005】
上記デバイスを良好に動作させるためには、自発的に分極する強誘電材料の順序付けされた分極化が必要である。本デバイスにおいて、このような分極は、エレクトレットにて呈されたプレートを充電することにより生成された一定した電磁場の影響下にて発生する。
【0006】
記載したデバイスの主な欠点は、エレクトレットの寿命が短いこと、動作工程中における安定性が低いこと、ならびに、エレクトレットの製造が複雑なこと、そして、当然ながら価格が高いことである。
【0007】
静止発電機が知られており(2009年12月1日に公開された発明特許(特許文献2)を参照)、この発明特許ではエレクトレットの使用は排除され、自発的に分極する強誘電材料の分極化の順序付けが、自由電子密度が大きく異なった種々の導体から成る金属プレートで作成された一定した電磁場により実施される。
【0008】
静止発電機は、+-両方の金属プレートの梱包体を備えた筐体を含む。これらのプレートは安定化単結晶強誘電体の層により分離されている。梱包体内の全ての層は互いに密接に接触している。金属プレートは、自由電子密度が大きく異なった異種導体から成る。異種導体とは、すなわち、2種の異なる金属であり、例えば、アンチモン‐ビスマス、鉄‐ニッケル、チタン‐アルミニウム、さらに、クロメル‐アルメル、クロメル‐コペルのような様々な合金、または、鉄‐コペル、アンチモン‐アルメル、クロメル‐ビスマスのような金属‐合金の組み合わせである。これと共に、プレートの梱包体は、1層の強誘電材料と2枚の異種の導電性プレートとから成る少なくとも1つの基本セルを含む。1層の強誘電材料と2枚の異種の導電性プレートは次の順序で配置されている。導電性プレート、強誘電材料、最初のものとは異なる導電性プレート。梱包体が1つ以上の単位セルを含んでいる場合には、これらの単位セルは直列または並列に電気エネルギー源に接続しているか、あるいは、直列と並列の組み合わせ(いくつかの単位セルは直列に接続し、いくつかの単位セルは並列に接続する)にて電気エネルギー源に接続している。
【0009】
この静止発電機の欠点は、単位セルの高い内部電気抵抗のために固有電力が低いことである。高い内部抵抗は強誘電材料を使用することによって起こり、この強誘電材料は、その性質上、固有電気抵抗が最大1016Ohm・cmの際立った絶縁体である。
【0010】
上記の静止発電機を試作品として選択する。この試作品と本請求項に係る発電機は、以下の共通の特徴を持つ。
安定化単結晶強誘電体の層で分離された+-両方の導電性プレートの梱包体を備えた筐体であり、梱包体内の全ての層は互いに緊密に密接している。
プレートの梱包体は少なくとも1つの単位セルを含み、この単位セルは、1層ずつ、強誘電材料と、自由電子密度が大きく異なる異種導体から成る2枚の金属プレートとから成り、これらは次の順序で配置されている。導電性プレート、強誘電材料、最初の物とは異なる導電性プレート。
単位セルは直列または並列に電気エネルギー源に接続しているか、あるいは、直列と並列の組み合わせ(いくつかの単位セルは直列に接続し、いくつかの単位セルは並列に接続する)にて電気エネルギー源に接続している。
【0011】
半導体特性を備えた強誘電材料も存在することが知られており、いわゆる「強誘電体‐半導体」が、導体と絶縁体の間の中間位置を固有電気抵抗(10-2~107Ohm・cm)の値で占めている。これには、例えば、亜硝酸ナトリウム(NaNO)、および、ニオブ酸リチウムベース、ニオブ酸カリウムベース、チタン酸鉛ベース、チタン酸バリウムベースの半導体セラミック材料、その他多数がある(非特許文献1を参照)。
【0012】
特に、強誘電材料のチタン酸バリウムBaTiOは、1012Ohm・cmより高い固有電気抵抗を有する誘電体であるが、これを、強制回復の手段により(2001年1月27日に公開された特許文献3を参照)、またはその原子価を抑制することにより(非特許文献2を参照)、10~103Ohm・cmの固有抵抗を有する強誘電半導体にすることが可能である。
【0013】
チタン酸バリウムベースの半導体セラミックを入手するためには、ドープを行う。チタンTi4+イオンは、イオンW6+Sb5+、Nb5+、Ta5+などで代用され、バリウムイオンBa2+はMn4+、La3+、Nd3+、Y3+、Gd3+などで代用される。ドーピング元素濃度は典型的に0.3原子パーセント未満である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】ウクライナ番号84117、IPC(2006)H01M 6/00;H01G 4/00
【文献】ウクライナ番号85360、IPC(2006)H01G 4/12;H01G 4/008;H01G 4/018
【文献】ロシア特許2162457、IPC(7)C04B35/468、C04B35/64
【非特許文献】
【0015】
【文献】V.M.Fridkin Ferroelectric semiconductors.-M.:Nauka,1976.-408p.V.V.Ivanov,A.A.Bogomolov,Ferroelectric semiconductors.Kalinin.Kalinin University Press,1978.96p.
【文献】Solid-state chemistry and modern micro-and nanotechnology VI International Conference.Kislovodsk Stavropol:NCSTU,2006.510p.the sol-gel method for producing semiconductor barium titanate doped with lanthanum oxide Bal-XLaXTi03 and tungsten oxide BaTil-XWX03(x=0.001,0.002).G.G.Emello,T.A.Shichkova
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の基本的な目的は、使用する物質の内部エネルギーを利用する手段により電力を生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は以下の発電機において解決される。すなわち、安定化単結晶強誘電体の層で分離された、+-両方の導電性プレートの梱包体を備えた筐体から成る発電機である。梱包体内の全ての層は互いに緊密に密着しており、プレートの梱包体は少なくとも1つの単位セルを含む。この単位セルは、一層ずつ、1つの強誘電材料と、自由電子密度が大きく異なる異種導体から成る2枚の金属プレートとで構成され、これらは以下の順序で配置されている。導電性プレート、強誘電材料、最初のものとは異なる導電性プレート。単位セルは、直列または並列に電気エネルギー源に接続しているか、あるいは、直列と並列の組み合わせ(いくつかの単位セルは直列に接続し、いくつかの単位セルは並列に接続する)にて電気エネルギー源に接続している。これは、強誘電材料の安定化単結晶が強誘電半導体の安定化単結晶で代用されるという事実により可能になるものであり、強誘電半導体の安定化単結晶には、例えば、亜硝酸ナトリウム、さらに、チタン酸バリウムベース、ニオブ酸リチウムベース、ニオブ酸カリウムベース、チタン酸鉛ベースの半導体セラミックなどがあり、これらは電源に接続されると、単位セルの内部電気抵抗を低下させ、固有電力を増加させる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本請求項に係るデバイスにおける新規の特徴は、強誘電材料の安定化単結晶を強誘電半導体の安定化単結晶で代用できることであり、強誘電半導体の安定化単結晶には、亜硝酸ナトリウム、さらに、チタン酸バリウムベース、ニオブ酸リチウムベース、ニオブ酸カリウムベース、チタン酸鉛ベースの半導体セラミックなどがあり、これらは電源に接続されると、単位セルの内部電気抵抗を低下させ、固有電力を増加させる。
【0019】
本請求項に係る既存の差異のセット間における因果関係と、達成できる技術的結果は以下のとおりである。
電気抵抗が107Ohm・cm未満の強誘電半導体を、固有電気抵抗が最大1016Ohm・cmの際立った誘電体である強誘電材料の代用としてアクティブな単位セルとして用いることで、単位セルの内部電気抵抗を低下させ、単位セルの同じ集電体の対においてより大きな固有電流を得ることができる。
【0020】
定電位差における固有電流の増加は、単位セルの固有電力の、試作品に対する2倍以上の自然な増加につながる。
単位セルの固有電力の増加により、本請求項に係る発電機の実際の使用の技術的および経済的両方での可能性が拡大する。
【0021】
図1に、少なくとも1つの単位セルで構成された発電機を示す。この発電機は筐体1で構成され、筐体1の内部には、異なる自由電子密度を持つ異種導体から成る1対の導体2が配置されており、これら導体2の間には強誘電半導体3が設けられ、導体2は絶縁体4を通って電源に接続される。
【0022】
上記発電機素子の製造に用いる強誘電半導体の例として、以下のチタン酸バリウムベースの半導体セラミックが挙げられる:
チタン酸バリウム:原子密度0.220%、固有抵抗6470Ohm・cmのニオブ(Nb)でドープされている;
チタン酸バリウム:濃度0.125原子%、固有抵抗883,500Ohm・cmのランタン(La)でドープされている。
固有抵抗2710000000Ohm・cmのチタン酸バリウムを用いて試作品による基準サンプルを作成する。
【0023】
1対の異種導体に鉄‐ニッケルを用いる。発電機は少なくとも1つの単位セルで構成される。単位セルは、表面1dmの防着性ベースコート上に連続真空蒸着させて製造される。
【0024】
厚さ9~10ミクロンの導体層が形成され、厚さ1ミクロン未満の強誘電半導体の層が形成されて、連続した無孔の均一なコーティングが得られる。
【実施例1】
【0025】
チタン酸バリウムの試作品によって単位セル基準サンプルを作成する。
【0026】
ポリメチルで処理した研磨済みのポリテトラフルオロエチレンのベースコート上に表面面積1dmのパターンを配置し、9~10ミクロンの厚さの鉄の層を噴霧する。パターンを除去してから、別のチタン酸バリウム層を噴霧して、厚さ最大1ミクロンの連続した均一の無孔コーティングを得る。
【0027】
次に、再びパターンを配置し、厚さ9~10ミクロンのニッケル層を噴霧する。パターンを除去し、真空カップを用いてベースコートから仕上げ要素を分離させる。ジエチルエーテルポリメチルシロキサンを用いて鉄表面層からトレースを除去し、残留しているジエチルエーテルを乾燥空気を吹き付けて除去する。次に、鉄製のバインディングポストとニッケル製のバインディングポストとの間に単位セルを配置する。これにより得られた発電機を電源に接続する。
【実施例2】
【0028】
ニオブでドープしたチタン酸バリウムの単位セルを作成する。
【0029】
単位セルを実施例1で述べた技術により作成する。ここでは、チタン酸バリウムの代わりに、ニオブでドープしたチタン酸バリウムを用いる。
【実施例3】
【0030】
単位セルを実施例1で述べた技術により作成する。ここでは、チタン酸バリウムの代わりに、ランタンでドープしたチタン酸バリウムを用いる。
【0031】
表1は、チタン酸バリウム製の試作品による基準サンプルと比較した場合の、強誘電材料半導体からの1000Ohmの外部負荷がかかった状態の1つの単位セルの電力(mW)、電圧(V)、電流(mA)間の関係を示す。
【0032】
我々は、1つの単位セルの一部である各強誘電半導体の作業期間を研究した。-20~+110℃の温度範囲で、単位セルを18000時間にわたり連続動作させた。
【表1】
【0033】
この表からわかるように、強誘電半導体を使用した場合では、電力が劇的に増加する。ニオブ(Nb)でドープしたチタン酸バリウムを使用した場合には、単位セルの電力が試作品と比較して2,088倍増加している。ランタン(La)でドープしたチタン酸バリウムを使用した場合には、発電機の単位セルの電力が試作品と比較して1,869倍増加している。本請求項に係る発電機は、その実用的な用途によれば、試作品よりも著しい利点を有する。
図1