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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】介助装置における回動連結構造
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20220628BHJP
   A47K 17/02 20060101ALI20220628BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A61G5/10
A47K17/02 A
A61G5/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019109201
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020199141
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】飛川 哲生
(72)【発明者】
【氏名】細谷 秀靖
(72)【発明者】
【氏名】庄子 怜子
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-019805(JP,A)
【文献】特開2017-042503(JP,A)
【文献】特開2019-055147(JP,A)
【文献】特開2017-012347(JP,A)
【文献】特開2013-002149(JP,A)
【文献】登録実用新案第3221490(JP,U)
【文献】特開2016-131824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/10,5/14,7/053
A47K 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介助者が着座される座部の近傍に配設される介助装置における回動連結構造であって、
固定部と回動保持部とを有する連結ブラケットと、
前記連結ブラケットの固定部に固定された第1部材と、
介助部を有すると共に前記連結ブラケットの前記回動保持部に回動可能に保持されて、前記座部に着座された被介助者を該介助部でもって介助する使用位置と、該使用位置から所定角度回動された待避位置と、を選択的にとり得るようにされた第2部材と、
前記第2部材の前記使用位置と前記待避位置との間での回動を、該使用位置または該待避位置の少なくとも一方の位置でロックしておくためのロック機構と、
を備え、
前記ロック機構が、前記第2部材のうち前記回動保持部に保持されている部位の外周面に形成された第1係止部と、前記連結ブラケットに揺動可能に保持された揺動部材と、該揺動部材を所定方向へ向けて付勢する付勢手段と、を有し、
前記揺動部材は、前記第2部材の回動がロックされるべきロック位置において、前記第1係止部に対して係脱される第2係止部と、手動操作される操作部と、を有し、
前記付勢手段は、前記第2係止部が前記第1係止部に対して係合される方向に前記揺動部材を付勢しており、
前記ロック位置において、前記操作部を操作して前記付勢手段に抗して前記揺動部材を揺動させることにより、前記第1係止部に対する前記第2係止部の係合が解除されて、前記第2部材が前記使用位置と前記待避位置との間で回動可能とされる、
ことを特徴とする介助装置における回動連結構造。
【請求項2】
前記第1係止部が、係止溝として形成され、
前記第2係止部が前記係止溝に対して嵌合されることにより、前記第2部材の回動がロックされる、
ことを特徴とする請求項1に記載の介助装置における回動連結構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記回動保持部には、前記ロック位置において前記第1係止部が位置する部位において、前記第2係止部が貫通可能な貫通孔が形成されている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の介助装置における回動連結構造。
【請求項4】
前記第2部材は、前記介助部を有する本体部と、該本体部に固定されて前記回動保持部に保持される回動部位を構成すると共に前記第1係止部が形成された軸部材と、を有している、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の介助装置における回動連結構造。
【請求項5】
前記第2部材の外周面に、周方向に間隔をあけて第1ストッパ部と第2ストッパ部とが形成され、
前記回動保持部の内周面に、周方向に間隔をあけて第1段差部と第2段差部とが形成され、
前記第2部材を所定方向に回動させて前記待避位置になったときに、前記第1ストッパ部が前記第1段差部に周方向から当接することにより該第2部材の該待避位置以上の回動が規制され、
前記第2部材を前記所定方向とは反対方向に回動させて前記使用位置となったときに、前記第2ストッパ部が前記第2段差部に周方向から当接することにより該第2部材の該使用位置それ以上の回動が規制される、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の介助装置における回動連結構造。
【請求項6】
前記使用位置と前記待避位置との他方の位置が、前記ロック機構によってはロックされないアンロック位置とされ、
前記第2部材の外周面には、該第2部材を前記アンロック位置に向けて回動させたときに、該アンロック位置において前記第2係止部が周方向から当接されて該第2部材のそれ以上の回動を規制する係止段部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の介助装置における回動連結構造。
【請求項7】
前記使用位置と前記待避位置との他方の位置が、前記ロック機構によってはロックされないアンロック位置とされ、
前記第2部材の外周面には、前記アンロック位置において前記第2係止部の先端面が当接される位置決め面が形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の介助装置における回動連結構造。
【請求項8】
前記固定部と前記回動保持部と前記揺動部材とはそれぞれ、前記第2部材の回動中心となる回動軸線方向に延びる形状とされ、
前記固定部と前記回動保持部と前記揺動部材とは、前記回動軸線方向の各端面同士が互いに略面一となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の介助装置における回動連結構造。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の回動連結構造を有している、ことを特徴とする介助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定位置で回動をロックできるようにした介助装置における回動連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、障がい者や高齢者などの被介助者が、着座式便器(洋式便器)に着座した場合の介助装置が開示されている。この特許文献1のものでは、支柱(2)に対して支持軸(12)を中心に回動可能に保持された肘載せ部(25)が、着座式便器に着座された被介助者の前方に位置される使用位置と、使用位置から90度上方に向けて回動された待避位置と、を選択的にとり得るようになっている。そして、待避位置でもって肘載せ部(25)が使用位置へ向けて回動されるのを規制するロック機構を設けたものとなっている。
【0003】
特許文献1における上記ロック機構は、リンク(14)の一端部を、肘載せ部(25)に対してピン(13)でもって回動可能に連結し、リンク14の他端部に設けたピン(16)を、支柱(2)に固定された案内部材(15)に形成された長孔(23)に摺動可能に嵌合させてある。肘載せ部(25)の回動に応じて、ピン(16)が長孔(23)内を摺動される。そして、肘載せ部(25)がロックされる位置(待避位置)では、案内部材15に揺動可能に設けた解除レバー(18)の係止部(20)が、ピン(16)の摺動を規制することによって、肘載せ部(25)が使用位置へ向けて回動されるのを規制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-19805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1に記載のものでは、肘載せ部(25)の回動をロックする機構が、リンク(14)や長孔を有する案内部材(15)を有して、肘載せ部(25)の回動中心となる支持軸(12)から大きく離間した位置にまで長く延びるように配設する必要があることから、相当に大型とならざるを得ないものである。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その第1の目的は、介助装置を構成する回動部材を所定の回動位置でもってロックできるようにしつつ、全体として小型化できるようにした介助装置における回動連結構造を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、上記回動連結構造を有する介助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第1の目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、
被介助者が着座される座部の近傍に配設される介助装置における回動連結構造であって、
固定部と回動保持部とを有する連結ブラケットと、
前記連結ブラケットの固定部に固定された第1部材と、
介助部を有すると共に前記連結ブラケットの前記回動保持部に回動可能に保持されて、前記座部に着座された被介助者を該介助部でもって介助する使用位置と、該使用位置から所定角度回動された待避位置と、を選択的にとり得るようにされた第2部材と、
前記第2部材の前記使用位置と前記待避位置との間での回動を、該使用位置または該待避位置の少なくとも一方の位置でロックしておくためのロック機構と、
を備え、
前記ロック機構が、前記第2部材のうち前記回動保持部に保持されている部位の外周面に形成された第1係止部と、前記連結ブラケットに揺動可能に保持された揺動部材と、該揺動部材を所定方向へ向けて付勢する付勢手段と、を有し、
前記揺動部材は、前記第2部材の回動がロックされるべきロック位置において、前記第1係止部に対して係脱される第2係止部と、手動操作される操作部と、を有し、
前記付勢手段は、前記第2係止部が前記第1係止部に対して係合される方向に前記揺動部材を付勢しており、
前記ロック位置において、前記操作部を操作して前記付勢手段に抗して前記揺動部材を揺動させることにより、前記第1係止部に対する前記第2係止部の係合が解除されて、前記第2部材が前記使用位置と前記待避位置との間で回動可能とされる、
ようにしてある。
【0008】
上記解決手法によれば、第2部材は、連結ブラケットを介して第1部材に回動可能に連結される。そして、第2部材のうち連結ブラケットによって回動可能に保持されている部位に第1係止部を形成する一方、この第1係止部に係脱される第2係止部を有する揺動部材を上記連結ブラケットに保持させるようにしてあるので、ロック機能を有する回動連結構造部分を全体として大幅に小型化することができる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。
【0010】
前記第1係止部が、係止溝として形成され、
前記第2係止部が前記係止溝に対して嵌合されることにより、前記第2部材の回動がロックされる、
ようにすることができる。この場合、係止溝でもって第1係止部を構成することができる。そして、第1係止部としての係止溝に対して、揺動レバーに形成された第2係止部が嵌合されることによりロックされるが、係止溝は回動方向両側に係止段部を構成する一対の内壁面を有することになるので、第2部材の両方向のロックを第2係止部でもって行うことができる。
【0011】
前記回動保持部には、前記ロック位置において前記第1係止部が位置する部位において、前記第2係止部が貫通可能な貫通孔が形成されている、ようにすることができる。この場合、第1係止部や揺動部材の第2係止部を、回動保持部の長さ範囲内に位置させることができ、小型化の上でより一層好ましいものとなる。
【0012】
前記第2部材は、前記介助部を有する本体部と、該本体部に固定されて前記回動保持部に保持される回動部位を構成すると共に前記第1係止部が形成された軸部材と、を有している、ようにすることができる。この場合、回動される部位を別途軸部材で構成して、スムーズな回動の確保や、第1係止部の形成を容易に行う等の上で好ましいものとなる。
【0013】
前記第2部材の外周面に、周方向に間隔をあけて第1ストッパ部と第2ストッパ部とが形成され、
前記回動保持部の内周面に、周方向に間隔をあけて第1段差部と第2段差部とが形成され、
前記第2部材を所定方向に回動させて前記待避位置になったときに、前記第1ストッパ部が前記第1段差部に周方向から当接することにより該第2部材の該待避位置以上の回動が規制され、
前記第2部材を前記所定方向とは反対方向に回動させて前記使用位置となったときに、前記第2ストッパ部が前記第2段差部に周方向から当接することにより該第2部材の該使用位置以上の回動が規制される、
ようにすることができる。この場合、回動保持部と第2部材とを有効に利用して、第2部材を所定角度範囲でのみ回動可能に規制することができる。
【0014】
前記使用位置と前記待避位置との他方の位置が、前記ロック機構によってはロックされないアンロック位置とされ、
前記第2部材の外周面には、該第2部材を前記アンロック位置に向けて回動させたときに、該アンロック位置において前記第2係止部が周方向から当接されて該第2部材のそれ以上の回動を規制する係止段部が形成されている、
ようにすることができる。第2部材がアンロック位置を超えて回動されてしまう事態を、第2係止部を有効に利用して強固に規制する上で好ましいものとなる。特に、アンロック位置で被介助者等から大きな外力を受けた場合に、アンロック位置側から所定回動角度を超えて第2部材が回動されてしまう事態を確実に防止する上で好ましいものとなる。
【0015】
前記使用位置と前記待避位置との他方の位置が、前記ロック機構によってはロックされないアンロック位置とされ、
前記第2部材の外周面には、前記アンロック位置において前記第2係止部の先端面が当接される位置決め面が形成されている、
ようにすることができる。この場合、第2係止部の先端面と位置決め面との当接によって、第2部材をアンロック位置でもって安定して保持させることができる。
【0016】
前記固定部と前記回動保持部と前記揺動部材とはそれぞれ、前記第2部材の回動中心となる回動軸線方向に延びる形状とされ、
前記固定部と前記回動保持部と前記揺動部材とは、前記回動軸線方向の各端面同士が互いに略面一となるように設定されている、
ようにすることができる。この場合、外観上の見栄えが向上され、また各端面に大きな突起物等が存在しないようにして安全対策の上でも好ましいものとなる。
【0017】
前記第2の目的を達成するため、本発明における介助装置にあっては、前述した回動連結構造を有するものとなっている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、介助装置におけるロック機能を有する回動連結構造を、全体として大幅に小型化することができる。また、小型化された回動連結構造を有する介助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態を示すもので、着座式便器に対して設置した場合の正面図。
図2図1の右側面図。
図3図2の状態から側方フレーム部を前傾させた状態で、着座式便器に着座した被介助者を保持している状態を示す側面図。
図4】揺動角度変更機構部分を示す要部側面図。
図5】揺動角度変更機構部分を示す要部側面断面図。
図6】係合部材付近の詳細を示す要部側面断面図。
図7図6のX7-X7線相当断面図。
図8】支承部材に設けられたクッション部材の詳細を示す断面図。
図9図8のクッション部材が、所定角度範囲で揺動可能であることを示すもので、図8に対応した断面図。
図10図8に示すクッション部材を、支承部材への取付面となる側から見た図。
図11】前方アーム部が上下方向に延びる待避位置にあるときに、ロック機構によって使用位置へ向けての揺動をロックしている状態を示す断面図。
図12】前方アーム部が使用位置とされたときの状態を示すもので、図11に対応した断面図。
図13】前方アーム部のうちロック機構に関連する要部を示す斜視図。
図14】前方アーム部をロックするロック機構を示す要部斜視図。
図15】本発明の第2の実施形態を示すもので、図5に対応した側面図。
図16】本発明の第3の実施形態を示すもので、図5に対応した側面図。
図17】本発明の第4の実施形態を示す斜視図。
図18】本発明の第5の実施形態を示す斜視図。
図19】本発明の第6の実施形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図3は本発明による介助装置Kの一例を示すものである。図1図3では、介助装置Kが、着座式便器1に対して配設した状態を示すものとなっている。
【0021】
介助装置Kは、大別して、ベース部材10と、第1部材としての左右一対の側方フレーム部20と、第2部材としての左右一対の前方アーム部30と、後方フレーム部40と、揺動連結機構50と、を有する。側方フレーム部20と前方アーム部30とによって、支承部材が構成される。
【0022】
ベース部材10は、上下方向に延びる左右一対の縦棒状部材11と、左右方向に延びて左右一対の縦棒状部材の上端部同士を連結する横棒状部材12と、縦棒状部材11の下端に連結された載置板部13と、を有して、全体的に門型形状とされている。左右一対の縦棒状部材11の間で横棒状部材12の下方となる空間に、着座式便器1の後部が配設される。ベース部材10は、着座式便器1の構造(フラッシュバルブやロータンク)に影響されない床置き型とされている。なお、ベース部材10(の載置板部13)は、着座式便器1の近傍に配設すればよく、着座式便器1に対して固定したり、床面に対して固定しておくことができる。
【0023】
側方フレーム部20は、左右一対設けられて、パイプ材を曲げ加工することにより形成されている。なお、以下で説明するパイプ材は、例えばSUS等の金属製の芯材と合成樹脂の被覆材からなるものであるが、これに限るものではない。各側方フレーム部20は、大別して、前後方向に延びる上フレーム部21と、上フレーム部21の前端から一旦下方へ延びた後に後方へ延びる下フレーム部22と、を有する。そして、下フレーム部22の後端部が、後述するように、揺動連結機構50を介して縦棒状部材11に対して揺動可能に取付けられている。
【0024】
左右一対の側方フレーム部20のうち、上フレーム部21の後端部同士が、水平状態で左右方向に延びる後方フレーム部40によって連結されている。実施形態では、側方フレーム部20と後方フレーム部40とは、同一のパイプ材によって一体的に形成されている。左右一対の側方フレーム部20が後方フレーム部40によって連結されることにより全体として剛性が向上され、また、一方の側方フレーム部20を揺動させることにより、これに連動して他方の側方フレーム部20も揺動されることになる。
【0025】
揺動連結機構50およびこれに関連する揺動角度変更機構60について、図4図5をも参照しつつ説明する。まず、揺動連結機構50は、ベース部10における縦棒状部材11に固定された連結ブラケット51を有する。この連結ブラケット51に対して、側方フレーム部20(における下フレーム部22の後端部)が、連結部52によって上下方向に揺動可能に連結されている。なお、連結部52は、例えばねじ付きの連結ピンとこれに螺合されるナットによって構成する等、適宜の手法により構成することができる。
【0026】
側方フレーム部20の揺動ストローク端を構成するため、連結ブラケット51には、板状の上ストッパ部53とピン状の下ストッパ部54とが形成されている。各ストッパ部53と54とは、連結部52を中心として略45度の角度をなすように設定されている。側方フレーム部20は、連結部52を中心にして揺動されることにより、その前下がりの角度(前傾角度)が変更可能とされている。ただし、下フレーム部22の後端部が上下のストッパ部53あるいは54に当接することにより、このストッパ部53、54を超える以上の揺動は規制される。なお、下フレーム部22が下側のストッパ部54に当接した状態では、上フレーム部21が水平状態で前後方向に延びる基本姿勢状態とされる。
【0027】
側方フレーム部20の揺動角度を変更するための揺動角度変更機構60が、一方の側方フレーム部20に対してのみ設けられている。揺動角度変更機構60は、図4図5に示すように、連結ブラケット51に一体化された係止部材61を有する。係止部材61は、例えばSUS等の金属や合成樹脂によって形成されて、固定具62によって連結ブラケット51に固定されている。
【0028】
係止部材61は、連結部52を中心とする円弧状の面を有して、この円弧状の面にはその周方向に沿って、等角度刻みで複数の係止凹部63が形成されている。隣り合う係止凹部63の間には、係止凸部64が位置されている。
【0029】
図6図7に示すように、側方フレーム部20における下フレーム部22の後端部内には、係合部材65が摺動可能に保持されている。この係合部材65は、板状とされて、下フレーム部22の内面に対して摺動される本体部65aと、本体部65aから後方(下フレーム部22の奥側)に向けて延設された延設部65bと、を有する。延設部65bには、係合部材65の摺動方向に延びる長孔状のガイド孔65cが形成されている。そして、本体部65aからは、係止部材61に向けて延びる係合突起部65dが形成されている。係合部材65の摺動に応じて、係合突起部65dが係止凹部63に対して嵌合(係止)、離脱(係止解除)可能とされている。
【0030】
下フレーム部22には、上記ガイド孔65cを貫通するガイドピン66が固定されている。係合部材65は、ガイド孔65c内をガイドピン66が摺動する範囲において変位可能とされている。図6図7では、係合部材65が下フレーム部22からもっとも突出された係止位置での状態が示される。ガイドピン66はガイド孔65cに対してほぼがたつきなく貫通しており、板状の係合部材65が下フレーム部22の周方向に回動してしまう事態が規制される。
【0031】
下フレーム部22内には、付勢手段としてのコイルばねからなるリターンスプリング67が配設されている。このリターンスプリング67は、ガイドピン66と本体部65aとの間に位置されて、延設部65bを取り巻くように配設されている。このリターンスプリング67によって、係合部材65は、下フレーム部22から突出する方向(係止凹部64に嵌合される方向)へ常時付勢されている。
【0032】
下フレーム部22のうち上下方向に延びる部位には、操作部材68が上下方向にスライド可能に保持されている。操作部材68は、側方フレーム部20のうち上下方向に延びる部位に対してスライド可能に嵌合された筒部68aと、筒部68aに一体化された操作部68bと、を有する。筒部68aに一体化されたガイドピン69が、側方フレーム部20に形成された上下方向に短く延びるガイド孔70内にスライド可能に嵌合されている。
【0033】
上記ガイドピン69と係合部材65における延設部65bとが、下フレーム部22内に配設された連結ワイヤ71によって連結されている。これにより、操作部材68の操作部68bを把持して上方へスライドさせることにより、係合部材65がリターンスプリング67に抗して下フレーム部22内に引き込まれる係止解除方向へと変位される。
【0034】
前記複数の係止凸部64のうち、上側の側面は、先端に向かうにつれて徐々に下方に向かう傾斜面64aとされている。これに対して、係止凸部64のうち下側の側面は、ほぼ直角に切り立った形状とされている(傾斜面の形成なし)。
【0035】
いま、側方フレーム部20が図4図5の状態よりも若干前下がりの状態で、かつ係合部材65の係合突起部65dが係止凹部63に嵌合、係止されている状態を想定する。この状態において、側方フレーム部20を前下がりの方向(図4図5反時計方向)へ揺動させようとする大きな外力を作用させたとしても、係止凸部64によってその揺動が強固に規制される。
【0036】
一方、側方フレーム部20を前上がりの方向(図4図5時計方向)へ揺動させようとする適度な外力を作用させたときは、係合部材65の係合突起部65dが係止凸部64の傾斜面64aに沿いつつ係止凸部64を乗り越えることが可能となっている。このように、本実施形態では、側方フレーム部20の前下がり方向の揺動は強固に規制される一方、前上がり方向の揺動は許容するように設定されている。
【0037】
次に、側方フレーム部20と前方アーム部30との関係について説明する。まず、前方アーム部30は、パイプ材を曲げ加工することにより略L字状に形成されている。すなわち、前方アーム部30は、側方フレーム部20における上フレーム部21に沿う回動部31と、回動部31から略90度折曲されて延びる本体部32と、を有する。本体部32が、後述するように、前方アーム部30が使用位置とされた際に、着座式便器1に着座された被介助者が前倒れするのを防止する介助部となっている。前方アーム部30は、左右の側方フレーム部20に対してそれぞれ設けられている。
【0038】
回動部31が、上フレーム部21に対して回動可能に取付けられている。これにより、前方アーム部30は、本体部32が水平方向に延びる使用位置(図1図2において実線で示す位置)と、その先端部が上方を向いた待避位置(図1図2において一点鎖線で示す位置)とを選択的にとり得るようになっている。そして、前方アーム部30は、後述するロック機構90によって、待避位置でもってその揺動がロック可能とされている。
【0039】
ベース部材10における左右一対の縦棒状部材11同士の間隔は、汎用性等の観点から、着座式便器1の幅に比してかなり大きく設定されている。このため、左右一対の側方フレーム部20は、図1に示す正面視において、上方に向かうにつれて徐々に幅が狭くなるように若干傾斜されている。また、左右一対の縦棒状部材11には、着座式便器1との間の隙間を埋める隙間調整部材14が取付けられている。
【0040】
ここで、左右一対の本体部32には、クッション部材80が取付けられている(図1図3参照)。このクッション部材80の取付構造について、図8図10を参照しつつ説明する。
【0041】
まず、クッション部材80は、例えばアルミニウム合金や合成樹脂によって形成された基板81と、基板81の一面側を覆うようにこれに一体化された弾性部材(ゴムやウレタン等の弾性を有する部材)82と、を有する。基板81は、円弧状に湾曲された湾曲部81aと、湾曲部81aの各端部から延びる一対のフランジ部81bと、を有する。なお、基板81は、例えば合成樹脂を射出成形することにより形成することができる。
【0042】
上記湾曲部81aは、180度を超える大きさに湾曲されていて、その開口幅は、本体部32の外径よりも小さくされている。湾曲部81aを弾性変形させてその開口幅を広げた状態で、本体部32に嵌合させることにより、クッション部材80の本体部32に対する取付が行われる。クッション部材80における弾性部材82が、着座式便器1に着座された被介助者Pに臨むように配設される。
【0043】
基板81は、本体部32に対して、所定角度だけ揺動可能とされる。すなわち、本体部32には、ボルトからなるガイドピン83が固定されて、その一部が本体部32の外面から突出されている。一方、基板81の湾曲部81aの内面には、その周方向に延びるガイド孔81cが形成されている。上記ガイドピン83が、ガイド孔81c内に突出されている。ガイドピン83がガイド孔81c内で動き得る範囲でもって、クッション部材80が本体部32に対して揺動可能である。図9には、揺動ストローク端にある状態のクッション部材80が2点鎖線でもって示される。なお、ガイドピン83がガイド孔81c内に突出していることから、クッション部材80が本体部32の軸方向へ変位することが規制される。
【0044】
本体部32に取付けられたクッション部材80(の弾性部材82)によって、被介助者の上半身が柔らかく受け止められて、被介助者に痛み等を与えることが防止される。側方フレーム部20の揺動角度変更や被介助者の体格の相違等に応じて、本体部32に取付けたクッション部材80が適宜揺動されて、弾性部材82を常に支承に好ましい姿勢状態とすることができる。
【0045】
後方フレーム部40に対しても、図8図9に示すのと同様にしてクッション部材80が取付けられている。後方フレーム部40に取付けられたクッション部材80は、上下方向に揺動可能である。被介助者が後方フレーム部40にもたれかかった際には、後方フレーム部40に取付けられたクッション部材80によって、被介助者の上半身が柔らかく受け止められて、被介助者に痛み等を与えることが防止される。また、後方フレーム部40へのもたれ角度の変更や被介助者の体格の相違等に応じて、後方フレーム部40に取付けたクッション部材80が適宜揺動されて、弾性部材82を常に支承に好ましい姿勢状態とすることができる。
【0046】
さらに、側方フレーム部20のうち、上フレーム部21(より具体的には上フレーム部21に嵌合された後述する連結ブラケット100)にもクッション部材80が取付けられている(図11図12参照)。ただし、上フレーム部21用のクッション部材80は、上下方向に揺動しない固定式とされている。これにより、被介助者が横倒れしそうなときに、上フレーム部21に取付けられたクッション部材80によって柔らかく受け止められる。
【0047】
次に、前方アーム部30を使用位置と待避位置との少なく一方でロックしておくためのロック機構90に着目しつつ、前方アーム部30の側方フレーム部20に対する取付について、図11図14を参照しつつ説明する。なお、実施形態では、待避位置がロックが行われるロック位置とされ、使用位置がロックされないアンロック位置とされている。
【0048】
まず、前方アーム部30における回動部31の後端部は、軸状の連結部材33によって構成されている(図13参照)。この連結部材33は、例えばアルミニウム合金を押し出し成形することによって形成されて、ボルト等の固定具34によって、パイプ材からなる回動部31に固定されている。
【0049】
上記連結部材33の断面形状が、図11図12に示される。この連結部材33は、その断面形状が示すように、第1係止部としての係止溝33aと、それぞれ係止段部からなる第1ストッパ部33bと第2ストッパ部33cを有する形状とされている。
【0050】
前方アーム部30(の回動部31)と側方フレーム部20(の上フレーム部21)とは、連結ブラケット100を利用して連結されている。すなわち、連結ブラケット100は、前方アーム部30の回動部31が回動可能に嵌合される回動保持部としての第1筒部101と、側方フレーム部20の上フレーム部21が嵌合される固定部としての第2筒部102と、を有する。
【0051】
連結ブラケット100は、第2筒部102の部分で、第1部材100Aと第2部材100Bとの2つ割り構造とされている。そして、上フレーム部21を貫通するボルト103とナット104とによって、2つの部材100Aと100Bとが締結されている。また、ボルト103とナット104とによって、上フレーム部21と連結ブラケット100とが一体化される。
【0052】
連結ブラケット100には、揺動部材としての揺動レバー110がピン部材111によって揺動可能に取付けられている。揺動レバー110の一端部が、突起状の第2係止部としての係止部110aとされている。この第2係止部110aは、第1筒部101に形成された貫通孔101cを貫通した状態で、前記連結部材33の係止溝33aに対して嵌合(ロック)可能とされている。そして、揺動レバー110は、付勢手段としてのスプリング112によって、係止部110aが係止溝33aに対して嵌合する方向に付勢されている。実施形態では、スプリング112は、板ばねによって構成されて、揺動レバー110と連結ブラケット100との間に介在されている。
【0053】
揺動レバー110は、手動操作される操作部110bを有する。この操作部110bを図11中時計方向に操作することにより、係止部110aの係止溝33aに対する嵌合が解除される(ロック解除)。
【0054】
なお、第1筒部101に形成された貫通孔101cは、実施形態では第1筒部101の軸方向全長に渡って延びるスリットの形態とされているが、これに限定されるものではない。具体的には、貫通孔101cは、その長手方向(連結部材33の軸方向)の少なくとも一端部が閉じた形状とすることもできる(両端部がそれぞれ閉じられた形状としてもよく、いずれか一方の端部のみが閉じられた形状でもよい)。
【0055】
連結ブラケット100における第1筒部101の内面には、係止段部からなる周方向に間隔をあけて第1段差部101aと第2段差部101bとが形成されている。図11に示すように、前方アーム部30を使用位置から待避位置へ向けて回動させて待避位置とされたとき、第1段差部101aに対して連結部材33の第1ストッパ部33bが当接されて、待避位置を超えて前方アーム部30がさらに回動されてしまう事態が規制される。この待避位置のとき、揺動レバー110の第2係止部110aに対して、係止段部ともなる係止溝33aの一方側の内壁面が周方向から当接されて、待避位置を超えて前方アーム部30がさらに回動されてしまう事態がより強固に規制されると共に、回動規制のために連結ブラケット100に加わる負荷を分散するという点でも好ましいものとなる。
【0056】
前方アーム部30を待避位置から使用位置へ向けて回動させて使用位置とされたとき、図12に示すように、第2段差部101bに対して連結部材33の第2ストッパ部33cが当接されて、使用位置を超えて前方アーム部30がさらに回動されてしまう事態が規制される。この使用位置のとき、揺動レバー110の第2係止部110aに対して、係止段部となる第1ストッパ部33bが周方向から当接されて、使用位置を超えて前方アーム部30がさらに回動されてしまう事態がより強固に規制されると共に、回動規制のために連結ブラケット100に加わる負荷を分散するという点でも好ましいものとなる。
【0057】
図11に示すロック位置にある前方アーム部30を、待避位置から使用位置へと変更するには、揺動レバー110の操作部110bを操作して、その係止部110aを連結部材33の係止溝33aから離脱させることにより行えばよい。
【0058】
係止部110aの先端面は略平坦面とされている。また、連結部材33の外周面のうち所定位置が、略平坦面からなる位置決め面33dとされている。アンロック位置となる使用位置に対応した図12において、係止部110aの先端面が連結部材33の位置決め面33dに当接された状態とされて、スプリング112付勢力と相俟って前方アーム部30が安定して使用位置に保持される。ただし、使用位置にある前方アーム部30に対して、待避位置へ向けての適度な外力を付与することにより、揺動レバー110を操作することなく前方アーム部30を待避位置とすることが容易である。
【0059】
アンロック位置となる使用位置において前方アーム部30を安定して保持させるため、係止部110aの先端面と位置決め面33dとの形状を次のように設定することもできる。すなわち、係止部110aの先端面と位置決め面33dとの一方をわずかに凸とされた凸面とし、他方を略平坦面あるいはわずかに凹とされた凹面としてもよい。
【0060】
連結部材33の外周面には、図12に示すアンロック位置において、揺動レバー110の係止部110aが、第1ストッパ部33bに当接される。係止部110aが第1ストッパ部33bに当接することによって、連結部材33が図12中反時計方向に回動されることが規制される。すなわち、連結部材33は、係止部110aをも利用して、アンロック位置を超えて、ロック位置へ向かうのとは反対方向に回動されてしまう事態がより強固に規制される。換言すれば、上記第1ストッパ部33bは、連結ブラケット100に形成された第1段差101aに対する当接と、係止部110aに対する当接とによって、連結部材33(前方アーム部30)の両方向への回動を規制する2つの係止段部の機能を有するものとなっている。
【0061】
連結ブラケット100は、連結部材33に対してその軸方向に変位するのが規制されている。すなわち、図示を略すが、連結部材33の先端部には、連結ブラケット100の側面が当接される規制部材が取付けられて、連結ブラケット100の一端面が連結部材33から抜けでることが規制されている。また、連結ブラケット100の他端面がパイプ材からなる回動部31の端面に当接されている。
【0062】
ここで、連結ブラケット100(の第1筒部101、第2筒部102)と、揺動レバー110とは、図14に示すように、連結部材33の軸線方向の各端面同士が面一となるように設定されている。これにより、外観上の見栄えが向上され、また各端面に大きな突起物等が存在しないようにして安全対策の上でも好ましいものとなる。
【0063】
待避位置にある前方アーム部30を、介助者や被介助者が手摺りとして利用した場合、係止溝33aと係止部110aとには大きな外力が作用することも考えられる。この場合、係止溝33aや係止部110aを、連結部材33の軸線方向に適切な長さに設定することにより、上記外力に十分に抗して、前方アーム部30を確実に待避位置にロックしておくことができる。このように、係止溝33aの長さやこれに対応した係止部110aの長さ設定という手法により、ロック位置でのロック強さを容易に設定することができる。
【0064】
次に、着座式便器1に対して配設された介助装置Kの使用法について説明する。まず、使用前の状態では、前方アーム部30が待避位置とされて(図1図2において一点鎖線で示す状態)、着座式便器1の前方が大きく開かれた状態とされる。また、側方フレーム部20は、前傾しない基本姿勢状態(例えば図2に示す状態)とされる。この状態で、被介助者Pは、介助者の介助を得つつ着座式便器1の座部1aに着座される。
【0065】
座部1aに被介助者Pが着座した後、前方アーム部30が使用位置とされる。使用位置では、前方アーム部30のうち本体部32(に取付けられたクッション部材80)が、被介助者Pの上半身の前面部直前に位置される(図3参照)。これにより、被介助者Pの上半身が前倒れしようとした際に前方アーム部30によって支承されて、被介助者Pが前倒れしてしまうことが防止される。
【0066】
座部1aに着座された被介助者Pの上半身が後方へ向けて倒れようとした際には、後方フレーム部40によって支承されて、上半身が後方へ倒れてしまうことが防止される。また、左右一対の側方フレーム部20によって、座部1aに着座された被介助者Pの横倒れが防止される。
【0067】
用便(特に大便)を促すためには、被介助者Pは少なからず前かがみになる状態が好ましいものである。このときは、介助者は操作部材68を操作して、揺動角度変更機構60の係止作用を解除して、側方フレーム部20(およびこれに一体の前方アーム部30および後方フレーム部40)を所望の前傾角度まで前傾させればよい。所望の前傾角度となった後に、操作部材68の操作を解除することにより、その位置で側方フレーム部20の揺動が規制される。
【0068】
側方フレーム部20を、基本姿勢状態から20度程度前傾させたときの状態が、図3に示される。被介助者Pは、前かがみの状態で前方アーム部30に支承されることになる。被介助者Pが前かがみになることで、特に大便を促すのに好ましい姿勢となり、また、被介助者Pの上半身の後方に大きな空間が形成されることから、介助者は、用便後の尻ふき等の後始末を容易に行うことができる。
【0069】
使用位置にある前方アーム部30は、待避位置へ向けての揺動をロックされていないことから、介助者あるいは腕が自由になる被介助者Pは、スムーズに前方アーム部30を待避位置とすることができる。特に、被介助者Pが腕を使える場合は、被介助者Pの意思でもって前方アーム部30を待避位置へとスムーズに揺動操作することが可能となり、拘束されているという感覚を被介助者Pに与えてしまうことを防止あるいは抑制する上でも好ましいものとなる。
【0070】
側方フレーム部20が図3に示すように前傾されている場合は、被介助者Pがその意思により体重を後方フレーム部40に預けることにより、揺動角度変更機構60の係止が自動的に解除されて(係止凸部64における傾斜面64aの作用)、側方フレーム部20の前傾角度を小さくする方向へ動かすことができ、図2に示すような基本姿勢状態へと復帰させることもできる。被介助者P自身の意思に基づいて、側方フレーム部20の前傾角度を容易に小さくできるということは、拘束されているという感覚を被介助者Pに与えてしまうことを防止あるいは抑制する上でも好ましいものとなる。また、前傾させ過ぎることにより被介助者Pが前かがみ姿勢を維持するのが苦しい場合等でも、被介助者Pが望む好ましい前傾角度へとすみやかに戻すことができる。
【0071】
用便を終えた後は、側方フレーム部20が前傾しない基本姿勢状態(図2に示す状態)とされ、また前方アーム部30が待避位置とされる(例えば図1に示す状態)。この後、被介助者Pは、介助者の介助を得つつ着座式便器1から離れる。
【0072】
待避位置にある前方アーム部30は、その回動が規制されたロック状態とされている。これにより、被介助者が着座式便器1に着座しようとする際に、待避位置にある前方アーム部30が不用意に使用位置となって被介助者が着座しようとする動きを阻害してしまう事態が確実に防止される。また、被介助者や介助車が、ロックされている前方アーム部30を手摺りとして利用することが可能である。
【0073】
図15は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、前記実施形態と同一構成要素には同一符号を付してある(このことは、以下の第3の実施形態以下についても同じ)。本実施形態は、揺動角度変更機構の変形例を示すものである。すなわち、本実施形態における揺動角度変更機構60B(前記実施形態における揺動角度変更機構60に対応)においては、係合部材72(前記実施形態における係合部材65対応)が円柱状とされている。この係合部材72は、筒状のガイド部材73を介して、下フレーム部22に対して摺動可能に嵌合されている。
【0074】
係止部材74(前記実施形態における係止部材61に対応)が、板材を円弧状とした形態とされている。この係止部材74には、連結部52を中心として等角度間隔で係止孔74a(前記実施形態における係止凹部63対応)が形成されている。なお、下ストッパ部54B(前記実施形態におけるピン状の下ストッパ部54対応)が、板状とされている。
【0075】
係合部材72の先端部に形成された係合突起部72aのうち、下側の面が傾斜面72bとされている。この傾斜面72bは、前記実施形態における係止凸部64における傾斜面64aに対応している。すなわち、係合突起部72aが係止孔74aに嵌合(係止)されている状態で、側方フレーム部20(前方アーム部30)が前下がり方向へ揺動するのを強固に規制する。一方、側方フレーム部20(前方アーム部30)を前上がり方向へ揺動させる適度の外力を付与した際には、傾斜面72bが係止孔74aの内周縁部に沿って当該係止孔74aから抜け出すことが可能とされる(前上がり方向への揺動は許容)。
【0076】
図16は、本発明の第3の実施形態を示すもので、第2の実施形態の変形例となる。本実施形態では、係合部材72B(72対応)に形成された係合突起部72aが傾斜面72bを有しないものとされている。これにより、側方フレーム部20は、前下がり方向と前上がり方向の両方向について強固に係止されることになる(両方向共に、係止解除には操作部材68を操作することが必要)。
【0077】
図17は、本発明の第4の実施形態を示すものである。本実施形態では、ベース部材10D(ベース部材10対応)を、着座式便器1の後方に位置する壁面に固定するようにしてある。すなわち、ベース部材10Dは、上記壁面への取付部となる左右一対の取付板部121と、各取付板部121から前方へ延びる左右一対の棒状部材122と、左右一対の棒状部材122の先端部同士を連結する連結棒状部材123と、を有するものとなっている。また、本実施形態では、各クッション部材80がそれぞれ、揺動しない固定式とされている。
【0078】
図18は、本発明の第5の実施形態を示すものである。本実施形態では、ベース部材10Eが、実質的に、着座式便器1の後方に位置する壁面に固定される取付板部131によって形成されている。また、側方フレーム部20と前方アーム部30とからなる支承部材が、被介助者の左方側についてのみ配設されるものとなっている。支承部材を右方側についてのみ有するようにすることもでき(図18に示す構造のものと左右対称形状)、また左右一対の支承部材を個々独立して設けることもできる。
【0079】
さらに、図18に示す実施形態では、前方アーム部30は、図中一点鎖線で示す待避位置では、下方に向けて回動された姿勢とされる。また、使用位置がロックが行われるロック位置とされ、待避位置がアンロック位置とされている。なお、本実施形態でも、待避位置にある前方アーム部30を、第1の実施形態と同様に上方に向けて回動された姿勢とすることもできる。この場合、待避位置にある前方アーム部30を手摺りとして利用するには、待避位置をロック位置とすればよい。
【0080】
図19は、本発明の第6の実施形態を示すもので、図18に示す実施形態の変形例ともなる。本実施形態では、前方アーム部30の回動部位やロック機構90を、側方フレーム部20のうち上下方向に延びる部位に設けてある。前方アーム部30は、上下方向に延びる軸線を中心に回動されて、図中一点鎖線で示す待避位置では、前方に向けて回動された姿勢とされる(前方アーム部30の本体部32が、使用位置でも待避位置でも略水平に延びる状態とされる)。本実施形態においては、使用位置がロック位置とされる一方、待避位置がアンロック位置とされている。なお、待避位置にある前方アーム部30を手摺りとして利用するには、待避位置もロック位置とすればよい。
【0081】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。前方アーム部30を、左右一対の側方フレーム部20のうちいずれか一方の側方フレーム部20に対してのみ設けるようにしてもよい。本体部32あるいは後方フレーム部40に設けるクッション部材80の少なくとも一方は、揺動しない固定式であってもよく、また本体部32や後方フレーム部40の全周を覆う形状とすることもできる。
【0082】
揺動角度変更機構60を、左右一対の側方フレーム部20のうち一方の側方フレーム部20にのみ設けることもでき(係止、係止解除の利便性向上)、また両方の側方フレーム部20に設けることもできる(より確実な係止作用の確保)。側方フレーム部20を、左右一対設けることなく、左右いずれか一方のみ設けるようにしてもよい。支承部材がその揺動ストローク端の間でとりえる揺動角度として、実施形態では段階式に複数としたが、連続可変式に変更できるようにしてもよい。
【0083】
ロック機構90による前方アーム部30の回動ロックを、待避位置と使用位置との両方の位置で行うようにしてもよく、また使用位置でのみロックするようにしてもよい。
【0084】
第1係止部は、係止溝33aという溝形態ではなく、係止段部の形態とすることもできる。具体的には、ロック位置を示す図11において、係止溝33aの周方向両側の内壁面のうち、第2ストッパ部33c側の内壁面のみを構成する係止段部の形態とすることもできる。
【0085】
側方フレーム部20および後方フレーム部40は、適宜の構造を採択することができ、例えば面を形成(面状に形成)するように構成することができる。面を形成するように構成する場合、板材のみによって構成することができ、また板材とパイプ材との組み合わせによって構成することもできる。そして、用いる板材としては、金属板やプラスチック板(特に繊維強化プラスチック板)を用いることができ、多孔板を用いることもできる。
【0086】
回動部材となる第2部材(実施形態における前方アーム部30対応)としては、座部に着座された被介助者の近傍に位置されて被介助者の介助を行う機能を有するものであれば、例えば特許文献1に記載の肘載せ部等、適宜のものを選択することができる。同様に、第2部材(実施形態における側方フレーム部20対応)も、第1部材が回動可能に連結されるものであれば、適宜のものを選択できる。
【0087】
係止溝33aおよびこれに対応した係止部110aは、第1筒部101の直近でその端面の外側に位置させることもできる。この場合、係止部110aを、第1筒部101の一方の端面側にのみ位置させることができ、両方の端面側にそれぞれ位置させることもできる。
【0088】
本発明が適用される座部を有する機器としては、着座式便器に限らず、例えば、休憩用の固定椅子や観賞位置にある固定椅子等、適宜のものを含むものである。揺動連結機構50は、実施形態のものに限らず適宜の構造のものを採択することができ、同様に、揺動角度変更機構60やロック機構90も実施形態のものに限らず適宜の構造のものを採択することができる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、ロック機能付きの回動連結構造を有する介助装置として好適である。
【符号の説明】
【0090】
P:被介助者
K:介助装置
1:着座式便器
1a:座部
10:ベース部材
10D:ベース部材(図17
10E:ベース部材(図18図19
20:側方フレーム部(第1部材)
30:前方アーム部(第2部材)
31:回動部
32:本体部
33:連結部材
33a:係止溝(第1係止部)
33b:第1ストッパ部(係止段部)
33c:第2ストッパ部(係止段部)
33d:位置決め面
90:ロック機構
100:連結ブラケット
101:第1筒部(回動保持部)
101a:第1段差部(係止段部)
101b:第2段差部(係止段部)
101c:貫通孔
102:第2筒部(固定部)
110:揺動レバー(揺動部材)
110a:係止部(第2係止部)
110b:操作部
111:ピン部材
112:スプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19