IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】ポリマーを架橋する方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20220628BHJP
   C08K 5/3432 20060101ALI20220628BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K5/3432
C08J3/24 Z CEW
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019521833
(86)(22)【出願日】2017-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2017076478
(87)【国際公開番号】W WO2018077668
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】16196235.2
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボスソロ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】オルダーニ, クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】マンゾーニ, クラウディア
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-089754(JP,A)
【文献】特表2018-514627(JP,A)
【文献】特表2007-515514(JP,A)
【文献】特表2014-516369(JP,A)
【文献】特表2001-522401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリマー[ポリマー(XPL)]を製造する方法であって、
- 少なくとも1つの-SOX基(ここで、Xは、FまたはClである)を有し、ここで、前記-SO X基の量が、少なくとも0.01meq/gであり、かつ、最大で1meq/gである、少なくとも1つのポリマー[ポリマー(I)]と;
- 少なくとも1つの塩基性化合物[塩基(B)]と;
- 少なくとも1つのピリジニウム塩[塩(P)]であって、式(P1)~(P-12):
(式中、
- 互いに等しいかまたは異なるJおよびJ’のそれぞれは、独立して出現ごとに、C-R(ここで、Rは、HもしくはC~C12炭化水素基である)またはNであり;
- Eは、Nまたは式C-R°の基であり;
- Zは、1~12個の炭素原子を含む二価の炭化水素基であり;
- Wは、結合であるか、または1~12個の炭素原子を含む二価の炭化水素基および1~12個の炭素原子を含む二価のフルオロカーボン基からなる群から選択される架橋基であり;
- 式(P-11)および(P-12)において記号:
で略記される基は、芳香族単核環または多核環であって、前記環内に1つまたは複数の追加の窒素原子、任意選択的に四級化窒素原子を含み得る、ピリジニウム型芳香環に縮合された芳香族単核環または多核環を示し;
- 互いに等しいかまたは異なるR 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R10 、R11 、R12 、R13 、R14 、R15 、R16 、R17 、R18 、R19 、R20 、R21 、R22 、R23 、R24 、R25 、R26 、R27 、R28 H、29 、R30 、R31 、R32 、R33 、R34 、R35 、R36 およびR°のそれぞれは、独立して出現ごとに、-Hまたは式:
(式中、互いに等しいかまたは異なるRおよびRは、独立して、Hまたは炭化水素C~C基である)
の基[基(アルファ-H)]であり;
- 互いに等しいかまたは異なるYは、独立して、N、O、Sおよびハロゲンから選択される1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含み得るC~C12炭化水素基であり;
- A(m-)は、m価を有するアニオンであり;
但し、
(i)塩(P)が式(P-1)のものである場合、R 、R およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(ii)塩(P)が式(P-2)のものである場合、R およびR は、基(アルファ-H)であり;
(iii)塩(P)が式(P-3)のものである場合、R 、R 、R およびR の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(iv)塩(P)が式(P-4)のものである場合、R 、R10 、R11 、R12 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(v)塩(P)が式(P-5)のものである場合、R13 、R14 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(vi)塩(P)が式(P-6)のものである場合、R15 、R16 、R17 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(vii)塩(P)が式(P-7)のものである場合、R18 、R19 、R20 、R21 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(viii)塩(P)が式(P-8)のものである場合、R22 、R23 、R24 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(ix)塩(P)が式(P-9)のものである場合、R25 、R26 、R27 およびR28 の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(x)塩(P)が式(P-10)のものである場合、R29 、R30 、R31 、R32 およびR28 の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(xi)塩(P)が式(P-11)のものである場合、R33 、R34 およびR28 の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(xii)塩(P)が式(P-12)のものである場合、R35 、R36 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)である)
のいずれかに従う少なくとも1つのピリジニウム塩[塩(P)]と
を反応させる工程を含む方法。
【請求項2】
ポリマー(I)中の前記-SOX基(ここで、Xは、FまたはClである)の量は、少なくとも0.0meq/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリマー(I)は、少なくとも1つの-SOX基(ここで、Xは、FまたはClである)を含有する少なくとも1つのエチレン性不飽和フッ素化モノマー(以下ではモノマー(A))に由来する繰り返し単位と、-SOX基(ここで、Xは、FまたはClである)を含まない少なくとも1つのエチレン性不飽和フッ素化モノマー(以下ではモノマー(B))に由来する繰り返し単位とを含むポリマーからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
モノマー(A)は、
- 式:CF=CF(CFSOX(ここで、Xは、FまたはClであり、式中、pは、0~10の整数である)のハロゲン化スルホニルフルオロオレフィン;
- 式:CF=CF-O-(CFSOX(ここで、Xは、FまたはClであり式中、mは、1~10の整数である)のハロゲン化スルホニルフルオロビニルエーテル;
- 式:CF=CF-(OCFCF(RF1))-O-CF(CF(RF2))SOX(ここで、Xは、FまたはClであり、式中、wは、0~2の整数であり、互いに等しいかまたは異なるRF1およびRF2は、独立して、F、Clまたは1つもしくは複数のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC~C10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;R F1は、-CFであり、yは、1であり、およびRF2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;
- 式CF=CF-Ar-SOX(ここで、Xは、FまたはClであり、式中、Arは、C~C15の芳香族またはヘテロ芳香族基である)のハロゲン化スルホニル芳香族フルオロオレフィン
からなる群から選択され;および/または
モノマー(B)は、
- テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのC~Cパーフルオロオレフィン;
- トリフルオロエチレン(TrFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、ペンタフルオロプロピレンおよびヘキサフルオロイソブチレンなどのC~C水素含有フルオロオレフィン;
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびブロモトリフルオロエチレンなどのC~Cクロロ、および/またはブロモ、および/またはヨード含有フルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)のフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFORO1(式中、RO1は、1つまたは複数のエーテル基を有するC~C12フルオロ-オキシアルキル、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルである)のフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cまたは-C-O-CFのような1つもしくは複数のエーテル基を有するC~Cフルオロオキシアルキル)のフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテル;
- 式:
(式中、互いに等しいかまたは異なるRf3、Rf4、Rf5およびRf6のそれぞれは、独立して、フッ素原子、1つまたは複数の酸素原子を任意選択的に含むC~Cフルオロ(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFである)
のフルオロジオキソール
からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポリマー(I)は、
(1)テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位であって、ポリマー(I)の総モルに対して一般的に25~99.9モル%の量である、繰り返し単位;
(2)少なくとも1つのモノマーであって、
(j)式:CF=CF-O-(CFSOX(ここで、Xは、FまたはClであり、式中、mは、1~10の整数である)のハロゲン化スルホニルフルオロビニルエーテル;
(jj)式:CF=CF-(OCFCF(RF1))-O-CF(CF(RF2))SOX(ここで、Xは、FまたはClであり、式中、wは、0~2の整数であり、互いに等しいかまたは異なるRF1およびRF2は、独立して、F、Clまたは1つもしくは複数のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC~C10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;R F1は、-CFであり、yは、1であり、およびRF2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;
(jjj)それらの混合物
からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーに由来する繰り返し単位であって、ポリマー(I)の総モルに対して一般的に0.1~30モル%の量である繰り返し単位;ならびに
(3)任意選択的に、TFEと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位であって、一般的に、式CF=CFOR’f1(式中、R’f1は、C~Cパーフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)のヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル;式CF=CFOR’O1(式中、R’O1は、1つまたは複数のエーテル基を有するC~C12パーフルオロ-オキシアルキルである)のパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;および式CF=CFOCFOR’f2(式中、R’f2は、C~Cパーフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cまたは-C-O-CFのような1つもしくは複数のエーテル基を有するC~Cパーフルオロオキシアルキルである)のパーフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテルからなる群から選択され、ポリマー(I)の総モルに対して一般的に0~45モル%の量である繰り返し単位
から本質的になるフッ素化ポリマーから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー(I)は、
(1)TFEに由来する45~79.9モル%の繰り返し単位;
(2)上述の通りの前記-SOX基含有モノマー(2)に由来する0.1~10モル%の繰り返し単位;
(3)上述の通りのTFEと異なる前記フッ素化モノマー(3)に由来する20~45モル%の繰り返し単位
から本質的になる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー(I)は、
(1)TFEに由来する55~95モル%の繰り返し単位;
(2)前記-SOX基含有モノマー(2)に由来する5~30モル%の繰り返し単位;
(3)TFEと異なる前記フッ素化モノマー(3)に由来する0~15モル%の繰り返し単位
から本質的になる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
塩(P)は、式(Px-1)~(Px-9):
を有する化合物からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ポリマー(I)は、ポリマー(I)の100重量部当たり少なくとも0.1重量部(phr)の量の塩(P)と反応され、および/またはポリマー(I)は、ポリマー(I)の100重量部当たり最大で20重量部の量の塩(P)と反応される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記塩基(B)は、1つもしくは2つ以上の有機塩基、1つもしくは2つ以上の無機塩基または有機塩基と無機塩基との混合物であり、無機塩基[塩基(IB)]は
)二価の金属酸化物;
ii)金属の水酸化物;
(iii)3よりも高いpKを有する弱酸の金属塩;および
有機塩[塩(OB)]は
j)非芳香族アミンまたはアミドであって、一般式(B1m)または(B1d):
bm-[C(O)]-NR (B1m)
N-[C(O)]t’-Rdm-[C(O)]t’’-NR (B1d)
(式中、
- 互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるt、t’およびt’’のそれぞれは、ゼロまたは1であり;
- Rのそれぞれは、独立して、HまたはC~C12炭化水素基であり;
- Rbmは、1~30個の炭素原子を有する一価の炭化水素非芳香族基であり;
- R は、1~30個の炭素原子を有する二価の炭化水素非芳香族基である)
に従う非芳香族アミンまたはアミド;および
(jj)脂環式第二級または第三級アミンであって、一般式(B2m)または(B2d):
(式中、
- Cyは、少なくとも4つの炭素原子を含み、1つまたは2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を任意選択的に含み、かつ1つまたは複数のカテナリー窒素原子を任意選択的に含む二価の脂肪族基であって、それに結合されている窒素原子と環を形成する二価の脂肪族基を表し;
- Cy’は、少なくとも5つの炭素原子を含み、1つまたは2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を任意選択的に含み、かつ1つまたは複数のカテナリー窒素原子を任意選択的に含む三価の脂肪族基であって、それに結合されている窒素原子と環を形成する三価の脂肪族基を表す)
に従う脂環式第二級または第三級アミン;
(jjj)芳香族アミンまたはアミドであって、一般式(B3):
Ar-{[C(O)]-NR (B3)
(式中、
- 互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるtは、ゼロまたは1であり;
- wは、1~4の整数であり;
- Rのそれぞれは、独立して、HまたはC~C12炭化水素基であり;
- Arは、SおよびOからなる群から選択される1つまたは2つ以上のカテナリーヘテロ原子を場合により含む単核または多核芳香族基である)
に従う芳香族アミンまたはアミド;
(jv)ヘテロ芳香環に含まれた少なくとも1つの窒素原子を含むヘテロ芳香族アミン;
(v)式(B4)または(B5):
(式中、
- 互いに等しいかまたは異なるR、R、R、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、HまたはC~C12炭化水素基である)
のグアニジン誘導体、ならびに前記グアニジン(B4)および(B5)の対応する塩;
(vj)金属アルコキシレー
らなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)間の反応は、固体相中、溶融相中または液相中で実施され、ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)を「前記固体相中」で反応させることは、塩基(B)と、塩(P)と、ポリマー(I)とが、前記成分の全てが固体状態である条件で反応されることを意味し、ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)を「前記溶融相中」で反応させることは、塩基(B)および塩(P)が、ポリマー(I)が溶融状態にある状態でポリマー(I)と反応されることを意味し、かつポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)を「液相中」で反応させることは、塩基(B)および塩(P)が液相中に含まれ、前記液相がポリマー(I)と接触および反応されることを意味し、ポリマー(I)は、前記液相中に溶解形態、分散形態または固体/懸濁形態で存在し得る、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
対応する-SOM基(ここで、Mは、Hまたはカチオン(例えば、金属カチオンもしくはアンモニウムカチオン)である)を提供するように、ポリマー(I)またはポリマー(XPL)の-SOX基の少なくとも一部分を加水分解する工程をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
架橋ポリマー(XLP)であって、式(XPL):
-SO-C(R)(R)-py-C(R)(R)-SO- 式(XPL)
(式中、
- 互いに等しいかまたは異なるRおよびRは、独立して、Hまたは炭化水素C~C基であり、
- pyは、以下の式(PXPL-1)~(PXPL-12):
(式中、
- 互いに等しいかまたは異なるJおよびJ’のそれぞれは、独立して出現ごとに、C-R(ここで、Rは、HもしくはC~C12炭化水素基である)またはNであり;
- Eは、Nまたは遊離価C-を有するC原子であり;
- Zは、1~12個の炭素原子を含む二価の炭化水素基であり;
- Wは、結合であるか、または1~12個の炭素原子を含む二価の炭化水素基、および1~12個の炭素原子を含む二価のフルオロカーボン基からなる群から選択される架橋基であり;
- 互いに等しいかまたは異なるYは、独立して、N、O、Sおよびハロゲンから選択される1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含み得るC ~C 12 炭化水素基であり;
- A (m-) は、m価を有するアニオンであり;
- 式(PXPL-11)および(PXPL-12)において記号:
で略記される基は、芳香族単核環または多核環であって、前記環内に1つまたは複数の追加の窒素原子、任意選択的に四級化された窒素原子を含み得る、ピリジニウム型芳香環に縮合された芳香族単核環または多核環を示し;および
- 基Eを含む式(PXPL-1)~(PXPL-12)のそれぞれにおいて、適切な場合、遊離価は、式(XPL)の-C(R)(R)-SO-基に共有結合されるか、または-Hもしくは式[基(アルファ-H)]:
(式中、互いに等しいかまたは異なるRおよびRは、独立して、Hまたは炭化水素C~C基であり、但し、少なくとも2つの遊離価は、式(XPL)の-C(R)(R)-SO-基に共有結合されている)
の基に共有結合されるかのいずれかである)
のいずれかの基である)
の架橋基を介して互いに共有結合されたポリマー鎖を含み、
-SO X基(ここで、Xは、FまたはClである)、または-SO M基(ここで、Mは、Hまたはカチオンである)をさらに含む、
架橋ポリマー(XLP)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月28日出願の欧州特許出願公開第16196235.2号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、特定のピリジニウム塩と、スルホニル基を含む特定のポリマーとの反応により、スルホン酸基を有する架橋ポリマーを調製する方法、それらから得られる特定の架橋性ポリマー、それらから得られる架橋ポリマーを含む賦形品、特に膜に関する。
【背景技術】
【0003】
スルホン酸官能基を含有するポリマー、具体的にはスルホン酸官能基を含有するフッ素化ポリマーは、それらのイオン伝導特性のために、電解セルおよび燃料電池などの電気化学デバイスのための電解質膜の製造に幅広く使用されている。顕著な例は、例えば、水素を燃料として、および酸素または空気を酸化剤として用いるプロトン交換膜(PEM)燃料電池である。
【0004】
スルホン酸官能基を含有するフッ素化ポリマーは、スルホン酸基の存在のために親水性フッ素化表面を提供することも知られている。
【0005】
電解質膜に高いプロトン輸送能力を付与するために、または親水性フッ素化表面において水と効率的に相互作用させるために、多数のスルホン酸基を有するポリマーが必要とされるが、それらのポリマーは、それらから得られる物品の持続時間への結果的な負の影響と共に機械および物理抵抗が一般に低下する。
【0006】
スルホン酸官能基を含有するフッ素化ポリマーから製造される膜の物理抵抗を向上させるための架橋の使用が以前に開示されている。例えば、欧州特許出願公開第1238999A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)11/09/2002および欧州特許出願公開第1239000A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)11/09/2002は、テトラフルオロエチレンに由来するモノマー単位と、スルホニル基-SOFを含有するフッ素化モノマー単位と、式(I):RC=CH-(CF)m-CH=CR(式中、m=2~10であり、互いに等しいかまたは異なるR、R、R、Rは、HまたはC~Cアルキル基である)のビス-オレフィンに由来する0.01モル%~5モル%のモノマー単位とを含む架橋性フッ素化スルホン酸ポリマーを含む親水性膜を開示している。その膜は、フッ素化スルホン酸ポリマーの架橋によって得られ、その架橋は、ポリマーの主鎖を含む。この膜は、電気化学セルにおけるイオン伝導性膜および濾過膜としての使用の両方に好適である。
【0007】
フッ化スルホニル官能基前駆物質乃至スルホン酸官能基を含むフッ素化ポリマーの架橋も既に記載されている。米国特許第6733914号明細書(ION POWER,INC.)11/05/2004は、-SOF官能基を含むフッ素化ポリマーをアンモニアで処理した後、残存する-SOF官能基を強塩基で加水分解し、その後、加熱処理をすることによって得られる以下の構造:
を有する架橋ポリマーを含むイオン交換膜を開示している。しかしながら、得られる架橋基は、膜の吸水能力に対して制限的な作用を有する。
【0008】
国際公開第2007/142885A号パンフレット(E.I.DU PONT DE NEMOURS)13/12/2007および国際公開第2007/142886A号パンフレット(E.I.DU PONT DE NEMOURS)13/12/2007は、-SOF官能基の反応を伴うフッ素化ポリマーの架橋を同様に開示している。具体的には、これらの文献は、95%~5%の-SOX官能基(X=ハロゲン)と、5%~95%の、求核化合物Yと反応している-SOX官能基とを含むポリマーの、-SOX官能基と架橋を形成する可能性がある架橋性化合物との架橋を開示している。したがって、架橋性化合物は、フッ素化ポリマー中に残存する-SOX官能基と反応する。SOF(または-SOX)官能基と架橋型化合物との間の架橋反応は、結果として生成する架橋ポリマーから適切に除去する必要があるフッ化水素(またはHX)の形成を導くことがあることに留意されたい。
【0009】
さらに、架橋フッ素化ポリマーを含む得られる膜は、加水分解および酸性化処理を施して、架橋型化合物と反応していない-SOX官能基およびイオン伝導性酸-SOHの形態での求核化合物Yと反応した-SOX官能基を変換する必要がある。
【0010】
国際公開第2012/136688号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS IT)11/10/2012は、スルホン酸官能基を含む架橋フッ素化ポリマーを調製するプロセスであって、-SOM官能基(ここで、Mは、Hまたはアルカリ金属である)を有するフッ素化ポリマー(P)を、式R(X)(式中、Rは、結合、O、S、Nから選択されるか、またはRは、芳香族基もしくは脂肪族基であり、鎖状、環式、分岐であり、任意選択的に置換および/もしくはフッ素化され、任意選択的にヘテロ原子を含み;nは、2以上の整数であり;およびXは、-NH、-NHR(ここで、Rは、C~C20アルキル、-Si(Rであり、Rは、C~Cアルキル、-OH、-SOW(ここで、Wは、OH、F、Cl、Br、Iである)である)からなる群から選択される官能基である)の少なくとも1つのポリアミン架橋剤と反応させて、-SOMとポリアミン剤のアミン基との間の共有結合の形成を促進する工程を含むプロセスに関する。
【0011】
上の記載によれば、ポリマーのイオン伝導能力および親水性に影響を及ぼすことなく、スルホン酸官能基を含むフッ素化ポリマーを架橋することにより、向上した物理抵抗および機械抵抗を有する物品、具体的には膜を提供する必要性が依然として存在することが明らかになる。
【発明の概要】
【0012】
本出願人は、ここで、-SOX基(ここで、Xは、ClまたはFである)を含むポリマーを特定のピリジニウム塩および特定の塩基と反応させて、前述の技術的な問題を解決するのに効果的である架橋ポリマーを提供することにより、架橋ポリマーを製造することが可能であることを見出した。
【0013】
したがって、架橋ポリマー[ポリマー(XPL)]を製造する方法は、本発明の第一の目的であり、前記方法は、
- 少なくとも1つの-SOX基(ここで、Xは、F、Clである)を有する少なくとも1つのポリマー[ポリマー(I)]と;
- 少なくとも1つの塩基性化合物[塩基(B)]と;
- 少なくとも1つのピリジニウム塩[塩(P)]であって、式(P1)~(12):
(式中、
- 互いに等しいかまたは異なるJおよびJ’のそれぞれは、独立して出現ごとに、C-R(ここで、Rは、HもしくはC~C12炭化水素基である)またはNであり;
- Eは、Nまたは式C-R°の基であり;
- Zは、1~12個の炭素原子を含む二価の炭化水素基であり;
- Wは、結合であるか、または1~12個の炭素原子を含む二価の炭化水素基(好ましくは1~6つの炭素原子を含む二価の脂肪族基)および1~12個の炭素原子を含む二価のフルオロカーボン基(好ましくは1~6つの炭素原子を含む二価のパーフルオロ脂肪族基)からなる群から選択される架橋基であり;
- 式(P-11)および(P-12)において記号:
で略記される基は、芳香族単核環または多核環であって、環内に1つまたは複数の追加の窒素原子、任意選択的に四級化窒素原子を含み得る、ピリジニウム型芳香環に縮合された芳香族単核環または多核環を示し;
- 互いに等しいかまたは異なるR 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R10 、R11 、R12 、R13 、R14 、R15 、R16 、R17 、R18 、R19 、R20 、R21 、R22 、R23 、R24 、R25 、R26 、R27 、R28 H、29 、R30 、R31 、R32 、R33 、R34 、R35 、R36 およびR°のそれぞれは、独立して出現ごとに、-Hまたは式:
(式中、互いに等しいかまたは異なるRおよびRは、独立して、Hまたは炭化水素C~C基である)
の基[基(アルファ-H)]であり;
- 互いに等しいかまたは異なるYは、独立して、酸素またはとりわけ脂肪族基もしくは芳香族基であり得、N、O、Sおよびハロゲンから選択される1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を含み得るC~C12炭化水素基であり;
- A(m-)は、m価のアニオンであり;
但し、
(i)塩(P)が式(P-1)のものである場合、R 、R およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(ii)塩(P)が式(P-2)のものである場合、R およびR は、基(アルファ-H)であり;
(iii)塩(P)が式(P-3)のものである場合、R 、R 、R およびR の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(iv)塩(P)が式(P-4)のものである場合、R 、R10 、R11 、R12 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(v)塩(P)が式(P-5)のものである場合、R13 、R14 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(vi)塩(P)が式(P-6)のものである場合、R15 、R16 、R17 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(vii)塩(P)が式(P-7)のものである場合、R18 、R19 、R20 、R21 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(viii)塩(P)が式(P-8)のものである場合、R22 、R23 、R24 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(ix)塩(P)が式(P-9)のものである場合、R25 、R26 、R27 およびR28 の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(x)塩(P)が式(P-10)のものである場合、R29 、R30 、R31 、R32 およびR28 の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(xi)塩(P)が式(P-11)のものである場合、R33 、R34 およびR28 の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり;
(xii)塩(P)が式(P-12)のものである場合、R35 、R36 およびR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)である)
のいずれかに従う少なくとも1つのピリジニウム塩[塩(P)]と
を反応させる工程を含む。
【0014】
基アルファ-Hは、少なくとも1つの水素原子を伴い、ピリジニウム環のsp-混成炭素(環状炭素)に共有結合している中心炭素原子を含み、環状炭素がピリジニウム環の四級化窒素に対してオルト位またはパラ位にあるため、基アルファ-Hの水素原子は、特定の条件下において、対応するカルバニオンを生成するのに好適な反応性を有する。
【0015】
本出願人は、驚くべきことに、環-四級化ピリジニウム型窒素を含み、および前記環-四級化ピリジニウム型窒素に対してオルト位またはパラ位に前記反応性水素原子を含む少なくとも2つの基を有する式(P-1)~(P-12)のいずれかの塩(P)が、上に詳述するように塩基性化合物と組み合わされた場合、スルホニルクロリド基またはスルホニルフロリド基を有するポリマーの架橋に有効な架橋剤であることを見出した。さらに具体的には、架橋は、効果的に進んで、向上した化学抵抗および機械的性能を有するポリマーをもたらすことが証明されている。
【0016】
この理論に束縛されるものではないが、本出願人は、芳香環に対してアルファ位に少なくとも1つの水素原子を含む前記オルト位またはパラ位の基が、酸性特性を伴い、塩基(B)の存在下において、対応するカルバニオンを生成し、そのように形成したカルバニオンが、(P)-SO-C(R)(R)-py-C(R)(R)-SO-(P)(式中、RおよびRは、上述の意味を有し、「py」は、塩(P)において上で詳述したピリジニウム塩様基のいずれかを表す)のように図式化できるポリマー鎖(P)間の共有結合を形成するようにスルホニル基と反応するのに十分な反応性/求核性を有し、三次元の架橋ネットワークをもたらすと考えている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ポリマー(I)
ポリマー(I)は、少なくとも1つのSOX基(ここで、Xは、F、Clである)を含む。
【0018】
ポリマー(I)中の-SOX基(ここで、Xは、FまたはClである)の量は、一般的に少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.05、より好ましくは少なくとも0.1meq/gである。ポリマー(I)に含まれる前記-SOX基の最大量による実質的な制限はない。ポリマー(I)中の前記-SOX基が、本明細書により意図される架橋を実現する目的に対して機能するのみである場合、またはそうでなければ前記-SOX基が硬化部位としてのみ有用である場合、-SOX基の量は、一般的に最大で1meq/g、好ましくは最大で0.8meq/g、より好ましくは最大で0.5meq/gであり得ることが一般的に理解される。他方で、前記-SOX基が架橋ポリマー(XPL)への追加の特性/化学的性質、例えばイオン交換能力の付与をそれらの加水分解に依存するようにさらに意図される場合、-SOX基の量は、一般的に最大で5meq/g、好ましくは最大で4meq/g、より好ましくは最大で3meq/gであり得る。
【0019】
ポリマー(I)は、前記-SOX基に加えて、1つまたは2つ以上の-SOM基(ここで、Mは、Hまたはカチオン(例えば、金属カチオンもしくはアンモニウムカチオン)である)を同時に含むことが可能である。それにもかかわらず、ポリマー(I)は、ポリマー(I)中の-SOMおよび-SOX基の総数に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%の-SOX基を含むことが一般的に理解される。
【0020】
一般的には、ポリマー(I)は、-SOX官能性モノマー(以下ではモノマー(X))に由来する繰り返し単位に共有結合するペンダント基として前記-SOX基を含む。
【0021】
ポリマー(I)は、上に詳述したように1つもしくは2つ以上のモノマー(X)に由来する繰り返し単位から本質的になり得、または1つもしくは2つ以上のモノマー(X)に由来する繰り返し単位と、モノマー(X)と異なる1つもしくは2つ以上の追加のモノマーに由来する繰り返し単位とを含むコポリマーであり得る。
【0022】
好ましい実施形態によれば、ポリマー(I)は、フッ素化ポリマー[ポリマー(FI)]である。
【0023】
一般的に、ポリマー(FI)の-SOX基は、式-SOFの基である。
【0024】
少なくとも1つの-SOX基を含む好適なポリマー(FI)は、少なくとも1つの-SOX基(ここで、Xは、FまたはClである)を含有する少なくとも1つのエチレン性不飽和フッ素化モノマー(以下ではモノマー(A))に由来する繰り返し単位と;-SOX基(ここで、Xは、FまたはClである)を含まない少なくとも1つのエチレン性不飽和フッ素化モノマー(以下ではモノマー(B))に由来する繰り返し単位とを含むこれらのポリマーである。
【0025】
「少なくとも1つのモノマー」という句は、1つまたは2つ以上のそれぞれのタイプのモノマーがポリマーに存在し得ることを示すためにタイプ(A)および(B)の両方のモノマーに関して本明細書で使用される。以下では、モノマーという用語は、所与のタイプの1つおよび2つ以上のモノマーの両方を意味するために用いられる。
【0026】
好適なモノマー(A)の非限定的な例は、
- 式:CF=CF(CFSOX(ここで、Xは、FまたはClであり、好ましくはFであり、式中、pは、0~10、好ましくは1~6の整数であり、より好ましくは、pは、2または3に等しい)のハロゲン化スルホニルフルオロオレフィン;
- 式:CF=CF-O-(CFSOX(ここで、Xは、FまたはClであり、好ましくはFであり、式中、mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは、2に等しい)のハロゲン化スルホニルフルオロビニルエーテル;
- 式:CF=CF-(OCFCF(RF1))-O-CF(CF(RF2))SO
(ここで、Xは、FまたはClであり、好ましくはFであり、式中、wは、0~2の整数であり、互いに等しいかまたは異なるRF1およびRF2は、独立して、F、Clまたは1つもしくは複数のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC~C10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは、1であり、RF1は、-CFであり、yは、1であり、およびRF2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;
- 式CF=CF-Ar-SOX(ここで、Xは、FまたはClであり、好ましくはFであり、式中、Arは、C~C15の芳香族またはヘテロ芳香族基である)のハロゲン化スルホニル芳香族フルオロオレフィン
である。
【0027】
好ましくは、モノマー(A)は、式CF=CF-O-(CF-SOF(式中、mは、1~6、好ましくは2~4の整数である)のスルホニルフルオリドフルオロビニルエーテルの群から選択される。
【0028】
より好ましくは、モノマー(A)は、CF=CFOCFCF-SOF(パーフルオロ-5-スルホニルフルオリド-3-オキサ-1-ペンテン)である。
【0029】
タイプ(B)の好適なエチレン性不飽和フッ素化モノマーの非限定的な例は、
- テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのC~Cパーフルオロオレフィン;
- トリフルオロエチレン(TrFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、ペンタフルオロプロピレンおよびヘキサフルオロイソブチレンなどのC~C水素含有フルオロオレフィン;
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびブロモトリフルオロエチレンなどのC~Cクロロ、および/またはブロモ、および/またはヨード含有フルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)のフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFORO1(式中、RO1は、1つまたは複数のエーテル基を有するC~C12フルオロ-オキシアルキル、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルである)のフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cであるか、または-C-O-CFのような1つもしくは複数のエーテル基を有するC~Cフルオロオキシアルキルである)のフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテル;
- 式:
(式中、Rf3、Rf4、Rf5およびRf6のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、フッ素原子;1つまたは複数の酸素原子を任意選択的に含むC~Cフルオロ(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFである)のフルオロジオキソール
である。
【0030】
好ましくは、モノマー(B)は、
- C~Cペルフルオロオレフィン、好ましくはテトラフルオロエチレン(TFE)および/またはヘキサフルオロプロピレン(HFP);
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)および/またはブロモトリフルオロエチレンのようなクロロ、および/またはブロモ、および/またはヨード含有C~Cフルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)のフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFORO1(式中、RO1は、1つまたは複数のエーテル基を有するC~C12フルオロオキシアルキル、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルである)のフロオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- それらの混合物
のうちから選択される。
【0031】
より好ましくは、少なくとも1つのモノマー(B)は、TFEである。
【0032】
ポリマー(I)は、少なくとも1つの-SOF官能基を含むフッ素化ポリマーであり、少なくとも1つのフッ化スルホニル官能基を含有する少なくとも1つのエチレン性不飽和フッ素化モノマー(A)および少なくとも1つのエチレン性不飽和フッ素化モノマー(B)に由来する繰り返し単位から本質的になることが好ましい。
【0033】
末端基、不純物、欠陥および限定量(繰り返し単位の総モルに対して1モル%未満)での他の擬似単位は、それがポリマーの特性にほぼ影響を与えることなく、上述の繰り返し単位に加えて好ましいポリマー中に存在し得る。
【0034】
好ましいポリマー(I)は、
(1)テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位であって、ポリマー(I)の総モルに対して一般的に25~99.9モル%、好ましくは40~99.5モル%の量である、繰り返し単位;
(2)(j)~(jjj)からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーに由来する繰り返し単位であって、
(j)式:CF=CF-O-(CFSOX(ここで、Xは、FまたはClであり、好ましくはFであり、式中、mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは、2に等しい)のハロゲン化スルホニルフルオロビニルエーテル;
(jj)式:CF=CF-(OCFCF(RF1))-O-CF(CF(RF2))SO
(ここで、Xは、FまたはClであり、好ましくはFであり、式中、wは、0~2の整数であり、互いに等しいかまたは異なるRF1およびRF2は、独立して、F、Clまたは1つもしくは複数のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC~C10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは、1であり、RF1は、-CFであり、yは、1であり、およびRF2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;
(jjj)それらの混合物
からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーに由来する繰り返し単位であって、ポリマー(I)の総モルに対して一般的に0.1~30モル%、好ましくは0.5~20モル%の量である、繰り返し単位;
(3)任意選択的に、TFEと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマー、好ましくは過フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位であって、一般的に式CF=CFOR’f1(式中、R’f1は、C~Cパーフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)のヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル;式CF=CFOR’O1(式中、R’O1は、1つまたは複数のエーテル基を有するC~C12パーフルオロ-オキシアルキルである)のパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;および式CF=CFOCFOR’f2(式中、R’f2は、C~Cパーフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cまたは-C-O-CFのような1つまたは複数のエーテル基を有するC~Cパーフルオロオキシアルキルである)のパーフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテルからなる群から選択され、ポリマー(I)の総モルに対して一般的に0~45モル%、好ましくは0~40モル%の量である、繰り返し単位
から本質的になるフッ素化ポリマーから選択される。
【0035】
ポリマー(I)における前記-SOX基が、本明細書によって意図される架橋を実現する目的に対して機能するのみである実施形態に関して、好ましいポリマー(I)は、一般的に、
(1)TFEに由来する45~79.9モル%、好ましくは55~69.5モル%の繰り返し単位;
(2)上述の通りの-SOX基含有モノマー(2)に由来する0.1~10モル%、好ましくは0.5~5モル%の繰り返し単位;
(3)上述の通りのTFEと異なるフッ素化モノマー(3)に由来する20~45モル%、好ましくは30~40モル%の繰り返し単位
から本質的になる。
【0036】
ポリマー(I)における前記-SOX基が架橋ポリマー(XPL)への追加の特性/化学的性質、例えばイオン交換能力の付与をそれらの加水分解に依存するようにさらに意図される実施形態に関して、ポリマー(I)は、一般的に、
(1)TFEに由来する55~95モル%、好ましくは70~92モル%の繰り返し単位;
(2)上述の通りの-SOX基含有モノマー(2)に由来する5~30モル%、好ましくは8~20モル%の繰り返し単位;
(3)上述の通りのTFEと異なるフッ素化モノマー(3)に由来する0~15モル%、好ましくは0~10モル%の繰り返し単位
から本質的になる。
【0037】
少なくとも1つの-SOF官能基を含むフッ素化ポリマーは、当技術分野で公知の任意の重合法により調製され得る。そのようなポリマーの好適な製造方法は、例えば、米国特許第4,940,525号明細書(THE DOW CHEMICAL COMPANY)10/07/1990、欧州特許出願公開第1323751A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)02/07/2003、欧州特許出願公開第1172382A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)16/11/2002に記載されているものである。
【0038】
少なくとも1つの-SOF官能を含むフッ素化ポリマーは、任意選択的に、完全にフッ素化された構造を提供するために極性鎖末端基を除去するため、例えばフッ素元素で処理され得る。
【0039】
本発明の方法では、ポリマー(I)は、いずれの物理的形状でも提供され得る。
【0040】
第一の実施形態によると、ポリマー(I)は、固体形態、例えば粉末、ペレット、顆粒、スラブまたは賦形品の形態、例えば本質的に二次元賦形品の形態下において、例えばフィルムまたはシートで提供され得る。
【0041】
実用上の観点から、いかなる賦形品も三次元であるため、とりわけ3つの特性的寸法(「長さ」、「幅」および「高さ」/「厚さ」)により特徴付けることができる。しかし、いくつかの賦形品は、1つまたは2つのそれらの特性的寸法が他の2つまたは3番目の寸法よりもそれぞれかなり短いようなものである。
【0042】
詳細には、本発明の目的上、本質的に二次元の賦形品は、その特性的寸法の1つ(「厚さ-高さ」)が他の2つの寸法(「幅」および「長さ」)よりもかなり短い賦形品を意味することを意図する。本明細書では、「かなり短い」という用語は、一般的に「5倍超短い」および好ましくは「10倍超短い」と理解されたい。
【0043】
ポリマー(I)は、とりわけフィルムの形態またはシートの形態で提供され得る。
【0044】
第二の実施形態によると、ポリマー(I)は、好適な溶相に溶解または分散状態でポリマー(I)を含む液体組成物の形態で提供され得る。「溶解される」という用語は、ポリマー(I)の「真」の溶液を示すことが意図される。「分散状態」という用語は、ポリマー(I)のコロイド懸濁液であって、それにより一般的に500nm未満の平均粒径のポリマー(I)の粒子が、かき乱されない状態に放置された場合、沈降現象を起こすことなく安定に懸濁されるコロイド懸濁液を意味することが本明細書により意図される。
【0045】
この液体組成物は、少なくとも1つの-SOX基を含む少なくとも1つのモノマー(X)および任意選択的にモノマー(X)と異なる1つまたは2つ以上の追加のモノマーを水相で乳化重合することによって提供され得る。
【0046】
この場合、液体組成物は、ポリマー(I)と、本質的に水からなる液体媒体とを含むことになる。液体媒体は、助剤、添加剤および追加の原料を、重合に使用した原料の結果として、とりわけ例えばそのコロイド安定性を向上させるために乳化重合した液体組成物に添加するか、または乳化重合した液体組成物中に事前に含有させるかのいずれかで追加的に含み得る。
【0047】
一般的に、液体組成物は、1つまたは2つ以上の界面活性剤を含み得る。
【0048】
別の方法として、有利には、液体組成物は、ポリマー(I)が好適な温度条件下において液体媒体と接触する溶解プロセスによって調製され得る。
【0049】
通常、ポリマー(I)を含む液体組成物は、水を含む液体媒体を含む。一般的に、液体組成物は、液体媒体として水または水/アルコールの混合物を含み、任意選択的に追加の成分および/または添加剤を含む。
【0050】
特に水/アルコールの混合物として使用可能な好適なアルコールは、とりわけ、メタノール、エタノール、プロピルアルコール(即ちイソプロパノール、n-プロパノール)、エチレングリコール、ジエチレングリコールである。
【0051】
使用可能な他の液体媒体は、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、酢酸エチルのようなエステル類、アセトニトリルのようなニトリル類、ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドのようなアミド類、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンのようなピロリドン類等の極性非プロトン性有機溶媒である。
【0052】
一般に、その液体媒体が水または水とアルコールとの混合物、好ましくは水とプロピルアルコールとの混合物である液体組成物で良好な結果が得られている。
【0053】
液体組成物は、オートクレーブ中で40℃~300℃の温度において水または水とアルコールとの混合物にポリマー(I)を接触させることによって有利に調製可能である。
【0054】
塩(P)
式(P-1)の好ましい塩(P)は、式(P-1-a)~(P-1-e):
(式中、
- RおよびRは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、RおよびRは、Hであり;
- Yは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり;
- 互いに等しいかまたは異なるRおよびRのそれぞれは、HまたはC~C12炭化水素基であり;
- Aおよびmは、上に定義されたような意味を有する)
のいずれかに従う塩である。
【0055】
より好ましくは、式(P-1)の塩(P)は、式(P-1-g)~(P-1-p):
(式中、Aおよびmは、上に詳述されたような意味を有する)
を有する塩である。
【0056】
式(P-2)の好ましい塩(P)は、式(P-2-a):
(式中、
- RおよびRは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、RおよびRは、Hであり;
- Yは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり;
- 互いに等しいかまたは異なるRおよびRのそれぞれは、HまたはC~C12炭化水素基であり;
- Aおよびmは、上に定義されたような意味を有する)
に従う塩である。
【0057】
より好ましくは、式(P-2)の塩(P)は、式(P-2-b):
(式中、Aおよびmは、上に詳述されたような意味を有する)
を有する塩である。
【0058】
式(P-3)の好ましい塩(P)は、式(P-3-a):
(式中、
- RおよびRは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、RおよびRは、Hであり;
- Yは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり;
- Aおよびmは、上に定義されたような意味を有する)
に従う塩である。
【0059】
より好ましくは、式(P-3)の塩(P)は、式(P-3-b):
(式中、Aおよびmは、上に詳述されたような意味を有する)
を有する塩である。
【0060】
式(P-4)の好ましい塩(P)は、式(P-4-a):
(式中、
- RおよびRは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、RおよびRは、Hであり;
- wは、1~12、好ましくは1~6の整数であり、最も好ましくは3に等しく;
- Aおよびmは、上に定義されたような意味を有する)
に従う塩である。
【0061】
より好ましくは、式(P-4)の塩(P)は、式(P-4-b)または(P-4-c):
(式中、Aおよびmは、上に詳述されたような意味を有し、w=3である)
を有する塩である。
【0062】
式(P-5)の好ましい塩(P)は、式(P-5-a):
(式中、
- RおよびRは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、RおよびRは、Hであり;
- Yは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり;
- Aおよびmは、上に定義されたような意味を有する)
に従う塩である。
【0063】
より好ましくは、式(P-5)の塩(P)は、式(P-5-b)または(P-5-c):
(式中、Aおよびmは、上に詳述されたような意味を有する)
を有する塩である。
【0064】
式(P-11)の好ましい塩(P)は、式(P-11-a):
(式中、
- RおよびRは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、RおよびRは、Hであり;
- Yは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり;
- Aおよびmは、上に定義されたような意味を有する)
に従う塩である。
【0065】
より好ましくは、式(P-11)の塩(P)は、式(P-11-b):
(式中、Aおよびmは、上に詳述されたような意味を有する)
を有する塩である。
【0066】
式(P-12)の好ましい塩(P)は、式(P-12-a):
(式中、
- RおよびRは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、RおよびRは、Hであり;
- Yは、上に定義されたような意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり;
- Aおよびmは、上に定義されたような意味を有する)
に従う塩である。
【0067】
より好ましくは、式(P-12)の塩(P)は、式(P-12-b):
(式中、Aおよびmは、上に詳述されたような意味を有する)
を有する塩である。
【0068】
式(P-1)~(P-12)におけるアニオンAの選択は、特に決定的に重要であるわけではないが、それにもかかわらず、アリールスルホネート、特にトシレート(p-トルエンスルホネート)、フッ素を含まないアルキルスルホネート、例えばメシレート(メタンスルホネート)およびフッ素含有(とりわけ過フッ素化)アルキルスルホネート、例えばトリフレート(トリフルオロメタンスルホネート)など、C~C(フルオロ)アルキル鎖を有する(フルオロアルキルスルホネート;ハライド(ヨージド、ブロミド、クロリド)からなる群から選択されるアニオンが、合成上の観点からそれらの即座の入手可能性のために特に好ましいことが理解される。
【0069】
まとめて、本発明の組成物に特に有用であることが分かった例示的な化合物は、式(Px-1)~(Px-9)を有する下に列挙される化合物である。
【0070】
他方で、提供される比較データから明らかになるように、式(P1)~(P11)の環-四級化ピリジウニム(pyridiunim)塩の特有の構造上の特徴を有することができない化合物は、フルオロエラストマーの架橋に有効ではない。環-四級化ピリジニウム型窒素に対してオルト位またはパラ位に少なくとも2つの基を有することができず、したがって塩(P)と異なりかつ無効である化合物の例は、式(Px-10c)~(Px-13c)のものである。
【0071】
本発明の方法では、ポリマー(I)は、ポリマー(I)の100重量部当たり少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも1重量部(phr)の量の塩(P)と反応する。
【0072】
本発明の方法では、ポリマー(I)は、ポリマー(I)の100重量部当たり最大で20、好ましくは最大で15、より好ましくは最大で10重量部の量の塩(P)と反応する。
【0073】
塩基(B)
本発明の方法に使用されるのに好適な塩基(B)は、特に限定されない。1つもしくは2つ以上の有機塩基、1つもしくは2つ以上の無機塩基または有機塩基と無機塩基との混合物(B)を使用することができる。
【0074】
無機塩基[塩基(IB)]のうち、とりわけ、
i)二価の金属酸化物、特にアルカリ土類金属の酸化物またはZn、Mg、Pb、Caの酸化物、具体的にはMgO、PbOおよびZnOなど;
ii)金属の水酸化物、特に一価および二価の金属の水酸化物、具体的にはアルカリおよびアルカリ土類金属の水酸化物、特にNaOH、KOH、Ca(OH)、Sr(OH)およびBa(OH)からなる群から選択される水酸化物;
(iii)3よりも高いpKを有する弱酸の金属塩、特に炭酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩および亜リン酸塩からなる群から選択される弱酸の金属塩;特に炭酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩および亜リン酸塩のNa、K、Ca、Sr、Ba塩
を挙げることができる。
【0075】
無機塩基のうち、NaOHが特に有効であることが分かった。
【0076】
有機塩基[塩基(OB)]のうち、とりわけ、
(j)非芳香族アミンまたはアミドであって、一般式(B1m)または(B1d):
bm-[C(O)]-NR (B1m)
N-[C(O)]t’-Rdm-[C(O)]t’’-NR (B1d)
(式中、
- 互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるt、t’およびt’’のそれぞれは、ゼロまたは1であり;
- Rのそれぞれは、独立して、HまたはC~C12炭化水素基であり;
- Rbmは、1~30個の炭素原子を有する一価の炭化水素非芳香族基であり;
- Rbmは、1~30個の炭素原子を有する二価の炭化水素非芳香族基である)
に従う非芳香族アミンまたはアミド;および
(jj)脂環式第二級または第三級アミンであって、一般式(B2m)または(B2d):
(式中、
- Cyは、少なくとも4つの炭素原子を含み、1つまたは2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を任意選択的に含み、かつ1つまたは複数のカテナリー窒素原子を任意選択的に含む二価の脂肪族基であって、それに結合されている窒素原子と環を形成する二価の脂肪族基を表し;
- Cy’は、少なくとも5つの炭素原子を含み、1つまたは2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を任意選択的に含み、かつ1つまたは複数のカテナリー窒素原子を任意選択的に含む三価の脂肪族基であって、それに結合されている窒素原子と環を形成する三価の脂肪族基を表す)
に従う脂環式第二級または第三級アミン;
(jjj)芳香族アミンまたはアミドであって、一般式(B3):
Ar-{[C(O)]-NR (B3)
(式中、
- 互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるtは、ゼロまたは1であり;
- wは、1~4の整数であり;
- Rのそれぞれは、独立して、HまたはC~C12炭化水素基であり;
- Arは、SおよびOからなる群から選択される1つまたは2つ以上のカテナリーヘテロ原子を場合により含む単核または多核芳香族基である)
に従う芳香族アミンまたはアミド;
(jv)ヘテロ芳香環に含まれた少なくとも1つの窒素原子を含むヘテロ芳香族アミン、特にピリジン誘導体;
(v)式(B4)または(B5):
(式中、
- 互いに等しいかまたは異なるR、R、R、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、HまたはC~C12炭化水素基ならびに前記グアニジン(B4)および(B5)の対応する塩、特に対応するN-四級化ハロゲン化水素塩(好ましくは塩酸塩)である)
のグアニジン誘導体;
(vj)金属アルコキシレート、好ましくは脂肪族アルコールのアルコキシレート
を挙げることができる。
【0077】
式(B1m)および(B1d)の塩基のうち、
- Rbmが、1つまたは2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を任意選択的に含む、6~30個の炭素原子を有する一価の脂肪族鎖状基であり;および
- Rdmが、1つもしくは2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を任意選択的に含む、6~30個の炭素原子を有する二価の脂肪族鎖状基であるものが特に好ましい。
【0078】
前記非芳香族アミンまたはアミドのうち、
- 式CH(CH17-NHのオクタデシルアミン;
- 式HN-C(O)-(CH11-CH=CH-(CHCHのエルカアミド;
- 式HN-C(O)-(CH-CH=CH-(CHCHのオレアミド;
- 式HN-(CH-NHのヘキサメチレンジアミン;
- N,N-ジメチルオクチルアミン;
- N,N-ジメチルドデシルアミン;
- トリエチルアミン;
- トリオクチルアミン;
- トリヘキシルアミン
を特に挙げることができる。
【0079】
前記脂環式第二級または第三級アミンのうち、下式の1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)を挙げることができる。
【0080】
式(B-4)の前記グアニジン誘導体の例示的実施形態は、とりわけ、グアニジン塩酸塩およびジ-o-トリルグアニジンである。
【0081】
前記金属アルコキシレートの例示的実施形態は、とりわけ、カリウムterブチレート(potassium terbutylate)、ナトリウムエチレートおよびナトリウムメチレートである。
【0082】
前記ヘテロ芳香族アミンの例示的実施形態は、とりわけ、トリメチルピリジン異性体である。
【0083】
塩基(B)の量は、使用される塩基(B)の性質および塩基性を考慮に入れて当業者によって調整されるであろう。
【0084】
それにもかかわらず、本発明の方法では、ポリマー(I)の100重量部当たり少なくとも3部、好ましくは5部の量で塩基(B)を使用することが理解される。塩基(B)の量の上限は、得られる化合物に過剰量の塩基(B)の装入を回避するために最適化されることになるが、それにもかかわらず、ポリマー(I)の100重量部当たり最大で20部、好ましくは最大で15部、最も好ましくは最大で12部の量の塩基(B)が一般的に推奨される。
【0085】
本発明の方法では、塩基(B)と塩(P)とは、ポリマー(I)と接触する前に予備工程で混合され得、その結果、塩(P)の対応するカルバニオンを生成する。
【0086】
一般的に、塩基(B)と塩(P)とが予備工程で混合される場合、前記予備工程は、水性媒体、即ち主な成分として水を含む液体媒体中で起こる。
【0087】
反応ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)
本発明の方法では、ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)を一緒に反応させる。
【0088】
ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)間の反応は、固体相中、溶融相中または液相中で実施できる。
【0089】
ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)を固体相中で混合し、適切な温度で加熱することは、架橋の生成に効果的である。
【0090】
少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも70℃の温度でポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)を加熱する場合、固体相での反応は、より速い速度で進行することになると一般的に理解される。速くて完全な架橋を実現するために、150℃を超える温度を固体相の混合物に適用し得る。
【0091】
溶融相中または液相中での反応は、架橋ポリマーを提供するのに同様に効果的である。
【0092】
「溶融相」でポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)を反応させることは、塩基(B)および塩(P)が、ポリマー(I)が溶融状態にある状態でポリマー(I)と反応されることを意味すると本明細書により理解される。
【0093】
この反応は、スタティックミキサーおよび押出機をはじめとする任意の好適な混合装置において、ポリマー(I)の融点を超える温度で実施できる。
【0094】
「液相中において」ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)を反応させることは、塩基(B)および塩(P)が液相中に含まれ、それらがポリマー(I)と接触および反応されることを意味すると本明細書により理解される。ポリマー(I)は、前記液相中に溶解された形態(即ち液相において「真」の溶液を形成)において、分散形態(即ち安定分散したコロイド粒子の形態下)において、または固体/懸濁した形態(即ち液相において固体形態下、例えば前記液相に浸漬したフィルム/シートのように)で存在し得る。
【0095】
一般的に、ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)の反応を可能にする好ましい液相は、主な成分として水を含む。
【0096】
一方、少量の有機溶媒が存在し得、液相は、本質的に水からなり、溶媒は、水性の性質を不利に変えないように、好ましくは制限量で、例えば液相の総重量に対して1重量%未満の量で存在することが一般的に理解される。
【0097】
液相においてポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)を反応させる場合、温度は、一般的に10~90℃、好ましくは20~85℃から構成される。
【0098】
本発明の方法では、ポリマー(I)の-SOF基の少なくとも一部分が塩基(B)および塩(P)と反応し、架橋ポリマーをもたらす。
【0099】
当業者であれば、ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)の反応を通して架橋の効果を確実にするのに最も適切な条件を選択できるだろう。
【0100】
それでも、本発明の方法の特定の実施形態では、ポリマー(I)の-SOF基の少なくとも一部分が、塩基(B)および塩(P)と反応せずに、その反応から取得される架橋ポリマー中に未反応のまま存在することになる。
【0101】
ポリマー(I)の-SOF基の当量に対して不足量の塩(P)を添加することは、本発明の架橋ポリマーを製造する方法が、(残存する)-SOX基(ここで、Xは、FまたはClである)を含む架橋ポリマー(XPL)をもたらすことを確実にすることになる実施形態である。
【0102】
本発明の方法は、対応する-SOM基(ここで、Mは、Hまたはカチオン(例えば、金属カチオンもしくはアンモニウムカチオン)である)を提供するために、ポリマー(I)またはポリマー(XPL)の-SOX基の少なくとも一部分(即ち少なくとも一部分の残存する未反応の-SOX基)を加水分解する工程をさらに含み得る。
【0103】
-SOX基の一部分の加水分解は、ポリマー(I)の-SOX基の別の部分と基(B)および塩(P)との反応と同時に起こり得、またはその後に架橋ポリマー(XPL)で起こり得、このポリマー(XPL)は、塩基(B)および塩(P)と反応していない-SOX基を含む。
【0104】
ポリマー(I)またはポリマー(XPL)の-SOX基の一部分の加水分解は、とりわけ、上に詳述した塩基(B)との反応により、上で詳述した塩(P)のカルボアニオンを生成するのに必要な化学理論量を超える量の塩基(B)の添加によって実現され得る。
【0105】
別の方法として、ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)の反応が完了すると、さらなる量の塩基(B)または塩基(B)と異なる塩基を加え得る。
【0106】
本発明の方法が、ポリマー(I)またはポリマー(XPL)の-SOX基の一部分を加水分解する工程を含む場合、架橋ポリマー(XPL)は、一般的に架橋した-SO-基および-SOH基を含む材料として回収される。
【0107】
架橋ポリマー
前述の通り、ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)の反応の結果として架橋ポリマー[ポリマー(XLP)]が得られる。
【0108】
ポリマー(XLP)は、本発明の別の目的である。
【0109】
架橋ポリマー(XLP)は、式(XPL):
-SO-C(R)(R)-py-C(R)(R)-SO- 式(XPL)
(式中、
- 互いに等しいかまたは異なるRおよびRは、独立して、Hまたは炭化水素C~C基であり;
- pyは、以下の式(PXPL-1)~(PXPL-12):
(式中、
- 互いに等しいかまたは異なるJおよびJ’のそれぞれは、独立して出現ごとに、C-R(ここで、Rは、HもしくはC~C12炭化水素基である)またはNであり;
- Eは、Nまたは遊離価C-を有するC原子であり;
- Zは、1~12個の炭素原子を含む二価の炭化水素基であり;
- Wは、結合であるか、または1~12個の炭素原子を含む二価の炭化水素基(好ましくは1~6つの炭素原子を含む二価の脂肪族基)および1~12個の炭素原子を含む二価のフルオロカーボン基(好ましくは1~6つの炭素原子を含む二価のパーフルオロ脂肪族基)からなる群から選択される架橋基であり;
- 式(PXPL-11)および(PXPL-12)において記号:
で略記される基は、芳香族単核または多核環であって、環内に1つまたは複数の追加の窒素原子、任意選択的に四級化された窒素原子を含み得る、ピリジニウム型芳香環に縮合された芳香族単核または多核環を示し;および
- 基Eを含む式(PXPL-1)~(PXPL-12)のそれぞれにおいて、適切な場合、遊離価は、式(XPL)の-C(R)(R)-SO-基に共有結合するか、または-Hもしくは式[基(アルファ-H)]:
(式中、互いに等しいかまたは異なるRaおよびRbは、独立して、Hまたは炭化水素C~C基であり、但し、少なくとも2つの遊離価は、式(XPL)の-C(R)(R)-SO-基に共有結合されている)
の基に共有結合されるかのいずれかである)
のいずれかの基である)
の架橋基を介して互いに共有結合されたポリマー鎖を含む。
【0110】
さらに、加えて、ポリマー(XPL)は、-SOX基(ここで、Xは、FまたはClである)を含み得、または-SOM基(ここで、Mは、Hまたはカチオン(例えば、金属カチオンもしくはアンモニウムカチオン)である)を含み得る。
【0111】
方法が、液相中でポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)を反応させる工程を含む場合、ポリマー(I)は、溶解された形態であるかまたは分散形態であり、ポリマー(XPL)は、液体組成物の形態で得られる。液相は、上に開示した特徴を全て有する。
【0112】
含浸、キャスト法、コーティング、例えばローラーコーティング、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ディップコーティング、吹付けコーティングなどの当技術分野で公知の任意の従来法を用いて、上に詳述したように溶解形態または分散形態でポリマー(XPL)を含む液体組成物から賦形品を取得し得る。
【0113】
ポリマー(XPL)を含む液体組成物は、塗膜形成層の状態において、不活性な非多孔質支持体上にキャストされ、通常、乾燥工程後に支持体から除去され、架橋ポリマー(XPL)からなる通常フィルム状の物品が得られる。一般的な支持体は、例えば、架橋ポリマー(XPL)のフィルムがそれから除去され得る、ガラス、金属またはポリマー材料で作られたプレート、ベルトまたは布帛である。
【0114】
別の方法として、ポリマー(XPL)を含む液体組成物は、複合物品、即ち架橋フッ素化ポリマーに加えて、支持体、好ましくは多孔質支持体を含む物品の製造に用いることができる。複合物品の注目すべき例は、例えば、複合膜、布帛、繊維である。複合膜は、電解セルにおけるイオン伝導性膜として、または濾過もしくは限外濾過用途向けの膜としての両方で使用することができる。
【0115】
前記複合物品は、好適な多孔質支持体上に、ポリマー(XPL)を含む液体組成物をキャストまたはコーティングすることによって製造できる。あるいは、それらは、含浸プロセスにより、ポリマー(XPL)を含む液体組成物を用いて製造できる。
【0116】
そのような含浸プロセスは、ポリマーポリマー(XPL)を含む液体組成物を多孔質支持体に含浸させる工程を含む。
【0117】
多孔質支持体の選択は、特に限定されない。複合物品の使用条件で一般に不活性である多孔質支持体が一般に好ましいであろう。
【0118】
複合物品の製造に好適な多孔質不活性材料のうち、布帛、繊維、無機材料、織りまたは不織ポリオレフィン膜およびフッ素化ポリマー多孔質支持体を挙げることができる。
【0119】
この物品がイオン伝導性膜または濾過膜である場合、それらの高い化学慣性のために、フッ素化ポリマーの多孔質支持体が一般に好ましい。二軸延伸PTFE多孔質支持体(他にePTFE膜としても知られる)は、とりわけ好ましい支持体である。これらの支持体は、とりわけ、商品名GORE-TEX(登録商標)、TETRATEX(登録商標)で商業的に入手可能である。
【0120】
含浸は、液体組成物を含む含浸容器中に多孔質支持体を浸漬することによって実施することができるか、またはそれは、多孔質支持体の各面に同時にもしくはその後のコーティング工程においてのいずれかで、キャスト法、コーティング、吹付け、はけ塗りなどの公知のコーティング技術によって好適な量の液体組成物を塗布することによって行うことができる。それにもかかわらず、液体組成物を含む容器に浸漬することによる含浸は、最良の結果を提供する技術であることが一般に理解される。
【0121】
方法が、ポリマー(I)、塩基(B)および塩(P)を液相中で反応させる工程を含む場合、ポリマー(I)は、好ましくは、前記液相に浸漬した本質的に二次元の賦形品として液相中で固体形態であり、ポリマー(XPL)は、本質的に二次元の賦形品の形態で取得され、それは、膜として使用できる。
【0122】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0123】
ここで、本発明が以下の実施例に関連して説明され、その目的は、単に例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0124】
調製実施例1-式(Px-1)の1,2,4,6-テトラメチル-ピリジニウムp-トルエンスルホネート
温度計、冷却器および攪拌を備えた3つ口丸底フラスコにCHCl(85ml)およびメチル-p-トルエンスルホネート(25.50g)を装入した。次に、2,4,6トリメチルピリジン(16.59g)を室温で滴加した。反応物を50℃で攪拌し、22時間後にそれを完了させた。液相を真空下での蒸発によって除去し、白色粉末を得、それを攪拌下においてジエチルエーテル(50ml)に分散させた。液相を濾去し、39.13gの純生成物を93%収率で白色粉末として回収した(融点161℃;1%減量:266℃)。
H NMR(溶媒DO,TMS基準):+7.70ppm(d;2H;オルト-H;p-トルエンスルホネート);+7.55(s;2H;メタ-H;1,2,4,6-テトラメチル-ピリジニウム);+7.39(d;H;メタ-H;p-トルエンスルホネート);+4.0(s;3H;NCH;1,2,4,6-テトラメチル-ピリジニウム);+2.74(s;6H;オルト-CH3;1,2,4,6-テトラメチル-ピリジニウム);2.53(s;3H;パラ-CH;1,2,4,6-テトラメチル-ピリジニウム);+2.44ppm(s;3H;パラ-CH;p-トルエンスルホネート)。
【0125】
調製実施例2-式(Px-4)の1,2,6-トリメチル-ピリジニウムp-トルエンスルホネート
温度計、冷却器および攪拌を備えた3つ口丸底フラスコにCHCl(163ml)およびメチル-p-トルエンスルホネート(52.14g)を装入した。次に、2,6ジメチルピリジン(30g)を室温で滴加した。反応物を50℃で攪拌し、23時間後にそれを完了させた。液相を真空下での蒸発によって除去し、白色粉末を得、それを攪拌下においてジエチルエーテル(200ml)に分散させた。液相を濾去し、58.06gの純生成物を71%収率で白色粉末として回収した(融点157.6℃;1%減量:256℃)。
H NMR(溶媒DO,TMS基準):+8.14ppm(t;1H;パラ-H;1,2,6-トリメチル-ピリジニウム);+7.66ppm(m;4H;オルト-H;p-トルエンスルホネートおよびメタ-H;1,2,6-トリメチル-ピリジニウム);+7.33(d;2H;メタ-H;p-トルエンスルホネート);+4.00(s;3H;NCH;1,2,6-トリメチル-ピリジニウム);+2.74(s;6H;オルト-CH;1,2,6-トリメチル-ピリジニウム);+2.38ppm(s;3H;パラ-CH;p-トルエンスルホネート)。
【0126】
調製実施例3-式(Px-8)の1,1’,4,4’-テトラメチル-2,2’-ジピリジニウムp-トルエンスルホネート
温度計、冷却器および攪拌を備えた3つ口丸底フラスコにCHCN(15ml)およびメチル-p-トルエンスルホネート(9.03g)を装入した。次に、4,4’-ジメチル-2,2’-ジピリジル(2.50g)を室温で滴加した。反応物を85℃で攪拌し、20時間後にそれを完了させた。液相を真空下での蒸発によって除去し、淡いピンク色の粉末を得、それを攪拌下においてCHCl(50ml)に分散させた。液相を濾去し、7.05gの純生成物を93%収率で白色粉末として回収した(融点216.03℃ 分解;1%減量:216.03℃)。
H NMR(溶媒DO,TMS基準):+8.94ppm(m;2H;オルト-H;1,1’,4,4’-テトラメチル-2,2’-ジピリジニウム);+8.12ppm(m;4H;メタ-H;1,1’,4,4’-テトラメチル-2,2’-ジピリジニウム);+7.66ppm(d;4H;オルト-H;p-トルエンスルホネート);+7.36(d;4H;メタ-H;p-トルエンスルホネート);+4.10(s;6H;NCH;1,1’,4,4’-テトラメチル-2,2’-ジピリジニウム);+2.74(s;6H;パラ-CH3;1,1’,4,4’-テトラメチル-2,2’-ジピリジニウム);+2.40ppm(s;6H;パラ-CH;p-トルエンスルホネート)。
【0127】
比較の調製実施例4-式(Px-11c)の1,4-ジメチル-ピリジニウムp-トルエンスルホネート
温度計、冷却器および攪拌を備えた3つ口丸底フラスコにCHCl(85ml)およびメチル-p-トルエンスルホネート(44g)を装入した。次に、4-メチル-ピリジン(20g)を室温で滴加した。反応物を50℃で攪拌し、24時間後にそれを完了させた。液相を真空下での蒸発によって除去し、白色粉末を得、それを攪拌下においてジエチルエーテル(150ml)に分散させた。液相を濾去し、58gの純生成物を96.7%収率で白色粉末として回収した(融点154℃;1%減量:280℃)。
H NMR(溶媒DO,TMS基準):+8.52ppm(d;2H;オルト-H;1,4-ジメチル-ピリジニウム);+7.80ppm(d;2H;メタ-H;1,4-ジメチル-ピリジニウム);+7.67ppm(d;2H;オルト-H;p-トルエンスルホネート);+7.36ppm(d;2H;メタ-H;p-トルエンスルホネート);+4.27ppm(s;3H;NCH;1,4-ジメチル-ピリジニウム);+2.62ppm(s;3H;パラ-CH;1,4-ジメチル-ピリジニウム);+2.40ppm(s;3H;パラ-CH;p-トルエンスルホネート)。
【0128】
調製実施例5:TFE-SFVEコポリマー(以下アイオノマー-1)の調製
5リットルのオートクレーブ中に以下の試薬:
- 2.6リットルの脱塩水;
- 式CF=CF-O-CFCF-SOF(SFVE)を有するモノマー145g;
- CFClO(CFCF(CF)O)(CFO)CFCOOK(平均M=521、n/m比=10)の5重量%の水溶液720g
を装入した。
【0129】
650rpmで攪拌されるオートクレーブを55℃に加熱した。反応を開始するために、27g/Lの過硫酸カリウムの水性溶液を66mLの量で加えた。次に、圧力を、テトラフルオロエチレン(TFE)を供給することによって8バール(絶対)の設定値に維持した。
【0130】
40gのテトラフルオロエチレンを反応器で消費したら、オートクレーブに40gのTFEを供給するごとに40gのモノマーSFVEを加えた。
【0131】
撹拌を中断し、オートクレーブを冷却し、TFEをベントして内部圧力を低下させることにより、300分後に反応を停止した。反応器に供給したTFEの合計量は、800gであった。
【0132】
ラテックスを次に凍結および解凍することによって凝固させ、回収されたポリマーを水で洗浄し、80℃で48時間乾燥させた。
【0133】
ポリマーの当量(EW)は、公知の方法に従ってFTIRによって測定し、671g/モルであることが分かった。
【0134】
調製実施例6:TFE-MVE-SFVEターポリマー(以下FFKM-1)の調製
630rpmで動作する機械撹拌機を備えた5リットルの反応器に3.1リットルの脱塩水および式:CFClO(CF-CF(CF)O)(CFO)CFCOOH(式中、n/m=10であり、600の平均分子量を有する)の酸性末端基を有する7.4mlのパーフルオロポリオキシアルキレンと、1.9mlの30%v/vNHOH水溶液と、17.4mlの脱塩水と、n/m=20の、450の平均分子量を有する式:CFO(CFCF(CF)O)(CFO)CFの4.3mlのGALDEN(登録商標)D02パーフルオロポリエーテルとを混合することによって予め得られた31mlのマイクロエマルションを導入した。
【0135】
次いで、連鎖移動剤として1,4-ジヨードパーフルオロブタン(C)2.5gを導入し、反応器を加熱し、80℃の設定値温度に維持し;次に3.2gのSFVEと、テトラフルオロエチレン(TFE)(33.2モル%)とパーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)(66.8モル%)との混合物とを添加し、最終圧力21バール(2.1MPa)に達した。開始剤としての1.55gの過硫酸アンモニウム(APS)を次に導入した。TFE(57.5モル%)およびMVE(42.5モル%)の混合気体を合計1350gまで連続的に供給することにより、圧力を21バールの設定値に維持し、61.6gのSFVEを重合開始から変換が各5%増加するごとに20回に分けて反応器に供給した。次に、反応器を冷却し、ベントし、ラテックスを回収した。凝固剤として硝酸を用いてラテックスを凝固させ、ポリマーを水相から分離し、脱イオン水で洗浄し、120℃の対流式乾燥機内で24時間乾燥させた。
【0136】
得られるポリマーの組成は、NMR分析から以下のようにTFE59.8モル%、MVE38.8モル%、SFVE1.4モル%であることが判明し、また121℃でのムーニー粘度は、53MUであると判明した。
【0137】
調製実施例7:TFE-MVE-SFVEターポリマー(以下FFKM-2)の調製
反応器に1,4-ジヨードパーフルオロブタン(C)を全く導入せず、またTFE(33.2モル%)、MVE(66.0モル%)およびエチレン(E)(0.8モル%)の混合物を添加し、21バール(2.1MPa)の圧力に達したことを除いて、調製実施例6で詳述した手順を繰り返した。
【0138】
得られるポリマーの組成は、NMR分析から以下のようにTFE59.7モル%、MVE38.8モル%、VEFS1.5モル%であることが判明し、また121℃でのムーニー粘度は、51MUであると判明した。
【0139】
フィルムの架橋
実施例8:式(Px-4)のピリジニウム塩でのアイオノマー1のフィルムの架橋
8.1 アイオノマー1からのフィルムの調製
調製実施例5で詳述したように得た10gに等しい量のTFE-SFVEコポリマー(アイオノマー-1)を、圧力を印加しないで、加熱プレスのプレート間で圧縮しながら200℃で10分間加熱した後、ガス抜きをして(1分、200℃、10秒毎に圧力を1絶対バールから3絶対バールに切換える)、最後に同じ温度、2絶対バールの圧力で10分間加圧した。冷却後、150μmの平均厚を有する膜を取得した。
【0140】
8.2 フィルムの架橋
調製実施例2で詳述したように調製した式(Px-4)のピリジニウム塩2.4gを、脱塩水(50g)が入ったガラス容器内において室温で撹拌しながら溶かした後、NaOH(0.7g)をゆっくりとこの溶液に加えて、温度を80℃まで上昇させた。2時間後、上に詳述したように得たフィルムの試験片(4.7g)を80℃で8時間浸した後、試験片を脱塩水中で入念に濯ぎ、希釈したHNO、脱塩水で洗浄し、ベントオーブン内において100℃で8時間、乾燥させた。
【0141】
比較例9C:アイオノマー1のフィルムと式(Px-11c)のピリジニウム塩との反応
同じ手順を繰り返したが、調製実施例4で詳述したように取得した式(Px-11c)のピリジニウム塩を2.3g用い、ピリジニウム塩を、同じフィルムであるが4.5gの重量の試験片と接触させた。
【0142】
フィルムのキャラクタリゼーション
FT-IR分光法
FT-IR分光法により、フィルムにおけるポリマー構造中のピリジニウム塩の存在を確認した。実施例8から得たフィルムでは、IRスペクトルにおいて芳香族C-H結合に起因すると考えられる1600および1650cm-1でのバンドの存在を検出し、化学結合したピリジニウム型の部分がポリマー構造に含まれることを示す。
【0143】
引張特性の応力-ひずみ測定
下位区分8.1で詳述したように調製したアイオノマー-1の本来のフィルム、下位区分8.2に従って回収した実施例8からの架橋ポリマーのフィルムおよび比較例9Cから得た比較のフィルムの引張特性をASTM D 633Type Vに従って測定した。
【0144】
データを以下の表に要約した。
【0145】
【0146】
上に要約したデータは、実施例8におけるように、少なくとも2つの反応性水素原子を有するピリジウム塩での架橋が、架橋前の基準材料に対して機械的特性を実質的に改善するのに効果的であることをよく実証している。比較の「モノ」置換したピリジニウム塩との反応は、三次元ネットワークを実現しないことを示し、このような改善に効果がなかったが、加水分解のみが機械的特性の僅かな増大を示す。
【0147】
実施例11-FFKM-1、式(Px-1)の塩(P)およびMgOの化合物の調製
調製実施例1において詳述したように調製した式(Px-1)のピリジニウム塩(1.83重量部)、酸化マグネシウム(7重量部)を100重量部のFFKM-1に添加し、混合物を2本ロールミルで混練した。
【0148】
実施例12-FFKM-2、式(Px-1)の塩(P)およびMgOの化合物の調製
調製実施例1において詳述したように調製した式(Px-1)のピリジニウム塩(1.83重量部)、酸化マグネシウム(7重量部)を100重量部のFFKM-2に添加し、混合物を2本ロールミルで混練した。
【0149】
実施例13-FFKM-1、式(Px-4)の塩(P)およびMgOの化合物の調製
調製実施例2において詳述したように調製した式(Px-4)のピリジニウム塩(2.33重量部)、酸化マグネシウム(7重量部)を100重量部のFFKM-1に添加し、混合物を2本ロールミルで混練した。
【0150】
実施例14
調製実施例2において詳述したように調製した式(Px-4)の塩のピリジニウム塩(2.33重量部)、酸化マグネシウム(7重量部)を100重量部のFFKM-2に添加し、混合物を2本ロールミルで混練した。
【0151】
パーフルオロエラストマー(Ex11~Ex14)の硬化挙動のキャラクタリゼーション
硬化挙動は、次の特性:
=最小トルク(lb×in)
=最大トルク(lb×in)
ΔM=M-M(lb×in)
を測定することにより、170℃での移動ダイレオメーター(MDR)によって特性化した。
【0152】
パーフルオロエラストマーの硬化の結果を表1に示す。
【0153】
【0154】
上に示すMDRデータは、トルク値の著しい増大により、実際の架橋が、-SOF基を含むパーフルオロエラストマーとの組み合わせでピリジニウム塩を使用することにより実現したことを明らかに実証する。