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特許7096244反復的治療計画のためのグラフィックユーザインターフェース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】反復的治療計画のためのグラフィックユーザインターフェース
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20220628BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20220628BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20220628BHJP
   A61N 5/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61B17/00 700
A61B18/18 100
A61N5/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019522431
(86)(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2017076661
(87)【国際公開番号】W WO2018077709
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2019-12-10
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】16196215.4
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イゾラ アルフォンソ アガティノ
(72)【発明者】
【氏名】オウトヴァスト ギョーム レオポルド テオドルス フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】センデン デイヴ
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-509644(JP,A)
【文献】特表2015-516256(JP,A)
【文献】国際公開第2015/090459(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/00 - 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療領域内の標的構造のアブレーション治療処置のための治療計画を生成するシステムであって、治療目標を表す最適化目標及び制約に基づいて治療計画を発生するシステムであり、該システムが、
ユーザに対し、第1目標及び制約に基づいて生成された第1治療計画に対応する前記治療領域内の線量分布を視覚化し、
前記線量分布内の線量値を指定する第1ユーザ入力及び前記治療領域内の少なくとも1つの位置を前記線量値に対する標的位置として指定する第2ユーザ入力を受信し、
前記第1目標及び制約並びに前記第1及び第2ユーザ入力に基づいて第2目標及び制約を決定し、
前記第2目標及び制約に基づいて第2治療計画を生成するための計画ユニットを有し、
前記計画ユニットは、前記第1目標及び制約に少なくとも1つの追加の目標及び/又は制約を追加することにより前記第2目標及び制約を生成すると共に、前記少なくとも1つの追加の目標及び/又は制約を前記第1及び第2ユーザ入力に基づいて決定し、
前記少なくとも1つの追加の目標及び/又は制約が、前記第2ユーザ入力で指定された標的位置に供給される線量に対する要件に対応し、
前記計画ユニットが、前記要件を、前記第1ユーザ入力で指定された線量値と前記第2ユーザ入力で指定された標的位置に前記線量分布に従って割り当てられた線量値との間の比較に基づいて、最大線量要件及び最小線量要件から選択し、
前記計画ユニットは、前記指定された線量値が前記指定された少なくとも1つの位置に前記線量分布に従って割り当てられた線量値より小さい場合に、前記最大線量要件を選択し、
前記計画ユニットは、前記指定された線量値が前記指定された少なくとも1つの位置に前記線量分布に従って割り当てられた線量値より大きい場合に、前記最小線量要件を選択する、システム。
【請求項2】
前記計画ユニットが、前記治療領域の画像内で前記線量分布をグラフィック的に視覚化するグラフィックユーザインターフェースを提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1ユーザ入力は前記治療領域における或る位置の選択を有する一方、前記指定された線量値は前記線量分布に従って該位置に割り当てられた線量値に対応し、前記第2ユーザ入力は前記治療領域における前記少なくとも1つの位置の選択を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1ユーザ入力は前記治療領域における複数の位置を有する領域の選択を含む一方、前記指定された線量値は前記線量分布に従って前記複数の位置に割り当てられた線量値から導出される値に対応し、前記第2ユーザ入力は前記治療領域における前記少なくとも1つの位置の選択を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記計画ユニットは、各目的関数が前記第1目標のうちの1つに対応する当該目的関数の加重和を含む第1費用関数を最小にすることにより前記第1治療計画を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記計画ユニットは、前記第1目標及び制約に少なくとも1つの追加の目標及び/又は制約を追加することにより前記第2目標及び制約を生成すると共に、前記少なくとも1つの追加の目標及び/又は制約を前記第1及び第2ユーザ入力に基づいて決定し、
前記計画ユニットが、前記第1費用関数に前記少なくとも1つの追加の目標に対応する目的関数を追加することにより生成された第2費用関数を最小にすることにより前記第2治療計画を生成する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの追加の目標に対応する目的関数に、前記第1費用関数における目的関数の重みのうちの最大値以上の重みが付加される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記アブレーション治療処置が一時的小線源治療処置を有し、前記治療計画が該一時的小線源治療処置のための停留時間を指定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
治療領域内の標的構造のアブレーション治療処置のための治療計画を生成する方法であって、前記治療計画は治療目標を表す最適化目標及び制約に基づいて発生され、当該方法が、
ユーザに対し、第1目標及び制約に基づいて生成された第1治療計画に対応する前記治療領域内の線量分布を視覚化するステップと、
前記線量分布内の線量値を指定する第1ユーザ入力及び前記治療領域内の少なくとも1つの位置を前記線量値に対する標的位置として指定する第2ユーザ入力を受信するステップと、
前記第1目標及び制約並びに前記第1及び第2ユーザ入力に基づいて第2目標及び制約を決定するステップと、
前記第2目標及び制約に基づいて第2治療計画を生成するステップと、を有し、
前記第1目標及び制約に少なくとも1つの追加の目標及び/又は制約を追加することにより前記第2目標及び制約を生成すると共に、前記少なくとも1つの追加の目標及び/又は制約を前記第1及び第2ユーザ入力に基づいて決定し、
前記少なくとも1つの追加の目標及び/又は制約が、前記第2ユーザ入力で指定された標的位置に供給される線量に対する要件に対応し、
前記要件を、前記第1ユーザ入力で指定された線量値と前記第2ユーザ入力で指定された標的位置に前記線量分布に従って割り当てられた線量値との間の比較に基づいて、最大線量要件及び最小線量要件から選択し、
前記指定された線量値が前記指定された少なくとも1つの位置に前記線量分布に従って割り当てられた線量値より小さい場合に、前記最大線量要件を選択し、
前記指定された線量値が前記指定された少なくとも1つの位置に前記線量分布に従って割り当てられた線量値より大きい場合に、前記最小線量要件を選択する、方法。
【請求項10】
アブレーション治療処理のための治療計画を生成するシステムの処理ユニットにおいて実行可能なコンピュータプログラムであって、前記処理ユニットにおいて実行された場合に該処理ユニットに請求項9に記載の治療計画を生成する方法を実行させるプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くはアブレーション治療処置のユーザ誘導型の反復的計画に関する。更に詳細には、本発明は治療領域内の標的構造のアブレーション治療処置のための治療計画を生成するシステム、方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
アブレーション治療(小線源治療(brachytherapy))において、患者の身体内の腫瘍等の標的構造は、癌細胞の成長を制御し又は癌細胞を死滅させるために放射性若しくは電磁的放射線又は超音波により治療される。同時に、当該治療は周囲の健康な構造(通常、リスク臓器とも称される)に供給される放射線線量又は加熱量が可能な限り低くなるように施される。
【0003】
1つの例示的アブレーション治療手順は、所謂、一時的小線源治療(temporary brachytherapy)であり、該治療においては、特に腫瘍細胞に定められた放射線線量を供給すべく、定められた短期間(通常、停留時間と称される)にわたり治療領域内に1以上の放射性放射源を配置するためにアプリケータが用いられる
【0004】
アブレーション治療処置を制御するための治療パラメータは、計画システムで生成される治療計画において定義される。治療計画を決定するために、計画システムにおいて、所謂、逆方向計画手順を実行することができる。このような手順においては、標的構造及び周囲のリスク臓器が識別され、治療目標が指定される。このような治療目標は、満たされるべき当該患者の特定の領域に供給される線量に関する要件、及び/又は満たされるべき特定の領域に供給される線量に関する制約を指定することができる目標を含む。次いで、指定された治療目標を満たす治療計画を見つけるために最適化処理が実行される。
【0005】
最終治療計画を見つける一方法に従い、操作者誘導反復最適化手順が計画システムにおいて実行される。この手順において、治療計画の自動最適化が幾つかの最適化サイクルにおいてなされ、各最適化サイクルの後に、当該計画システムの操作者(典型的には、医師)は各サイクルにおいて計算された治療計画を見直し、この治療計画から生じる線量分布に満足であるかをチェックする。これが当てはまらない場合、操作者は所望の線量分布を達成するために最適化問題を修正することができ、当該治療計画の次の自動最適化を該修正された最適化問題に基づいて実行することができる。
【0006】
上記治療計画の自動最適化は、前記目的及び制約に基づいて作成される最適化問題を解くことを含む。典型的な計画システムにおいて、該最適化問題は個々の目的関数(各目的関数は1つの目標を表す)の加重和である費用関数の最小化に対応する。更に、前記制約が満たされることが確認される。典型的な目的関数は、標的構造の特定の領域に供給されるべき最少線量及びリスク臓器に供給される最大線量に関係し、対応する目的関数は、これらの線量要件が満たされる場合に(大域的)最小値を有するように構成される。
【0007】
このようなシステムにおいて1つの最適化サイクルで生成された治療計画を適応させるために、一般的に線量要件自体は修正することはできない。これらの要件は、通常、当該最適化手順の開始時に(即ち、第1最適化サイクル前に)既に所望の線量分布に対応するよう設定されるからである。代わりに、ユーザは典型的に費用関数における個々の目的関数の重みを修正する。例えば、ユーザが過度に高い放射線線量又は加熱量がリスク臓器に供給されると判定した場合、該ユーザは当該関連するリスク臓器に関する最大線量要件を表す個別の目的関数の重みを増加させることができる。
【0008】
米国特許出願公開第2007/0201614号公報は、放射線治療の線量供給を最適化するシステム及び手順を開示している。放射線ビームにおけるビームレット(小線束)の適切な重みを決定するために、全ての関連する臓器及び輪郭に関する項を有する総括的目的関数が最小化される。これらの項は該目的関数に重要な係数を用いて含まされる。最初に、斯かる重要な係数は以前の経験に従ってデフォルト値に設定され、後に最適化処理の一部として変更することができる。該目的関数を最小化することによりビームレット重みを計算したら、対応する線量分布マップが発生され、ユーザには該計画された線量分布が満足のゆくものであるかを示す機会が与えられる。これが当てはまらない場合、ユーザは当該重要なパラメータを変更するように促され、新たなビームレット重みが該変更された重要パラメータに基づいて決定される。
【0009】
個々の目的関数の項に割り当てられた重み又は重要パラメータを修正することにより、ユーザは次の最適化サイクルにおいて計算される線量分布に間接的にしか影響を与えることができない。従って、所望の線量分布に近い線量分布は、通常、試行錯誤的方法での反復的修正によってしか得ることができない。このことは、しばしば、非常に時間の掛かるものであり、不満足な結果にもつながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような背景に鑑み、本発明の目的は、治療計画を生成するために解決されるべき最適化問題の一層容易で一層直感的修正を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1態様において、本発明は治療領域内の標的構造のアブレーション治療処置のための治療計画を生成するシステムを提案する。該システムは、治療目標を表す最適化目標及び/又は制約に基づいて治療計画を発生するよう構成される。更に、該システムは計画ユニットを有し、該計画ユニットは、(i)ユーザに対し、第1目標及び/又は制約に基づいて生成された第1治療計画に対応する前記治療領域内の線量分布を視覚化し、(ii)前記線量分布内の或る線量値を指定する第1ユーザ入力及び前記治療領域内の少なくとも1つの位置を前記線量値に対する標的位置として指定する第2ユーザ入力を受信し、(iii)前記第1目標及び/又は制約並びに前記第1及び第2ユーザ入力に基づいて第2目標及び/又は制約を決定し、(iv)前記第2目標及び/又は制約に基づいて第2治療計画を生成するよう構成される。
【0012】
或る治療計画から生じる線量分布を検討(吟味)する場合、ユーザは、該線量分布が満足のゆくものであるかを判定するために、典型的に、該線量分布の異なる領域の線量値を互いに比較する。当該線量分布内の或る線量値を指定すると共に、該治療領域内の少なくとも1つの位置を該線量値に対する標的位置として指定することにより、ユーザは或る線量値を1つの領域から他の領域へと実効的に移転することができる。従って、ユーザは当該線量分布を前記第1及び第2ユーザ入力により自身の判定過程における自身の結論(所見)に直接的に適合させることができる。更に、前記第2目標及び/又は制約は特に前記ユーザ入力に基づいて決定され、第2治療計画が該第2目標及び/又は制約に基づいて生成されるので、当該治療計画をユーザによる線量分布の操作に従って自動的に適合させることができる。かくして、ユーザは適合化された治療計画の生成を容易且つ直感的に制御することが可能となる。
【0013】
適用されるアブレーション治療方式に依存して、当該線量分布は、特に、当該アブレーション治療処置において治療領域に供給される放射線線量又は加熱量の分布に対応し得る。更に、当該治療計画において指定される治療パラメータは、適用されるアブレーション治療方式に依存して変化し得ると共に、各々の場合において、適用されたアブレーション治療方式に関連した可変治療パラメータを指定することができる。
【0014】
本発明の一実施態様において、前記アブレーション治療処置は、特に、一時的(時間的)小線源治療処置を有する。この場合、前記治療計画は該一時的小線源治療処置のための停留時間(dwell time)を指定することができる。更に、前記線量分布は、1以上の放射性放射線源により当該小線源治療処置の間に供給される放射線線量に対応し得る。
【0015】
本発明の一実施態様において、前記計画ユニットは、前記治療領域の画像内で前記線量分布をグラフィック的に視覚化するグラフィックユーザインターフェースを提供するように構成される。この実施態様は、特に容易な線量分布の調査及び特に容易なユーザ入力を可能にする。特に、ユーザは、コンピュータマウス又はトラックパッド等のグラフィックユーザインターフェースと一緒に使用するよう構成された入力手段を用いて、前記第1及び第2ユーザ入力を含むドラッグアンドドロップ操作により線量値を“移転”することができる。
【0016】
本発明の関連する一実施態様において、前記第1ユーザ入力は前記治療領域における或る位置の選択を有する一方、前記指定された線量値は前記線量分布に従って割り当てられた線量値に対応し、前記第2ユーザ入力は前記治療領域における前記少なくとも1つの位置の選択を有する。この点に関し、ユーザは当該治療領域の1つの位置を前記指定された線量値のための標的(目標)位置として選択することができる。同様に、ユーザは複数の位置を有する領域を前記指定された線量値のための標的位置として選択することができる。
【0017】
本発明の関連する他の実施態様において、前記第1ユーザ入力は前記治療領域における複数の位置を有する領域の選択を含む一方、前記指定された線量値は前記線量分布に従って該複数の位置に割り当てられた線量値から導出される値に対応し、前記第2ユーザ入力は前記治療領域における前記少なくとも1つの位置の選択を有する。これにより、ユーザは特定のソース領域に割り当てられた線量を他の位置又は標的領域に実効的に移転することができる。前記指定された線量値は、前記ソース領域において前記複数の位置に割り当てられた線量値から導出される適切な統計的値、特には、これら線量値の平均値に対応し得る。
【0018】
本発明の他の実施態様において、前記計画ユニットは、前記第1目標及び/又は制約に少なくとも1つの追加の目標及び/又は制約を追加することにより前記第2目標及び/又は制約を生成すると共に、前記少なくとも1つの追加の目標及び/又は制約を前記第1及び第2ユーザ入力に基づいて決定するよう構成される。この実施態様は、治療計画を計算するための計算アルゴリズム内へのユーザ入力の相対的に容易な導入を可能にする。特に、このユーザ入力を導入する方法は、例えば前記第1目標及び/又は制約の適応化等の他の方法と比較して少ない複雑さしか伴わない。
【0019】
本発明の関連する一実施態様において、前記少なくとも1つの追加の目標及び/又は制約は、前記指定された少なくとも1つの位置に供給される線量に対する要件に対応する。これにより、新たに生成される治療計画から生じる線量分布が前記指定された位置又は標的領域に対するユーザの要求を満たすことを保証することができる。
【0020】
この点に関し、前記追加の目標又は制約は、前記指定された少なくとも1つの位置に供給される線量が前記ユーザにより指定された線量値に一致するという要件に対応し得る。本発明の一代替実施態様は、前記計画ユニットが前記要件を前記指定された線量値と前記指定された少なくとも1つの位置に前記線量分布に従って割り当てられた線量値との間の比較に基づいて最大線量要件及び最小線量要件から選択するよう構成されることを含む。特に、前記計画ユニットは、前記指定された線量値が前記指定された少なくとも1つの位置に前記線量分布に従って割り当てられた線量値より大きい場合に前記最大線量要件を選択するように構成することができる。更に、前記計画ユニットは、特に、前記指定された線量値が前記指定された少なくとも1つの位置に前記線量分布に従って割り当てられた線量値より小さい場合に前記最小線量要件を選択するように構成することができる。
【0021】
本発明の一実施態様において、前記計画ユニットは、各々が前記第1目標のうちの1つに対応する複数の目的関数(objective functions)の加重和を含む第1費用関数(cost function)を最小にすることにより前記第1治療計画を生成するよう構成される。この実施態様において、より高い重みを持つ目的関数に対応する目標は、より高い確率で満たされる。更に、前記費用関数は、前記制約を制約は必ず満たされるというように考慮して最小化することができる。
【0022】
前記第2治療計画を生成するために、前記第1目標及び/又は制約に前記ユーザ入力に基づいて決定された他の制約を追加することが一般的に好ましい。この場合、第2治療計画は、前記前記第1費用関数を該追加の制約を考慮に入れて最小化することにより生成することができる。これにより、ユーザの要求が満たされることが保証され得る。
【0023】
しかしながら、前記第1目標及び/又は制約に前記ユーザ入力に基づいて決定された目標を追加することも同様に可能である。従って、本発明の他の実施態様は、前記計画ユニットが、前記第1費用関数に前記ユーザ入力に基づいて決定された前記少なくとも1つの追加の目標に対応する目的関数を追加することにより生成された第2費用関数を最小にすることにより前記第2治療計画を生成するように構成されることを含む。
【0024】
本発明の関連する実施態様は、前記目的関数に前記第1費用関数における目的関数の重みのうちの最大値以上の重みが付加されることを含む。これにより、新たに生成される治療計画が前記ユーザ入力から生じる目標を高い確率で満たすことが保証される。
【0025】
他の態様において、本発明は治療領域内の標的構造のアブレーション治療処置のための治療計画を生成する方法であって、前記治療計画が治療目標を表す最適化目標及び/又は制約に基づいて発生される方法を提案する。該方法は、(i)ユーザに対し、第1目標及び/又は制約に基づいて生成された第1治療計画に対応する前記治療領域内の線量分布を視覚化するステップ、(ii)前記線量分布内の或る線量値を指定する第1ユーザ入力及び前記治療領域内の少なくとも1つの位置を前記線量値に対する標的位置として指定する第2ユーザ入力を受信するステップ、(iii)前記第1目標及び/又は制約並びに前記第1及び第2ユーザ入力に基づいて第2目標及び/又は制約を決定するステップ、及び(iv)前記第2目標及び/又は制約に基づいて第2治療計画を生成するステップを有する。
【0026】
更なる態様において、本発明はアブレーション治療処理のための治療計画を生成するシステムの処理ユニットにおいて実行可能なコンピュータプログラムを提案し、該コンピュータプログラムは、前記処理ユニットにおいて実行された場合に該処理ユニットに患者のための治療計画を生成する前記方法を実行させるプログラムコード手段を有する。
【0027】
尚、請求項1のシステム、請求項14の方法及び請求項15のコンピュータプログラムは、特に従属請求項に記載されるような、同様の及び/又は同一の好ましい実施態様を有すると理解されるべきである。
【0028】
また、本発明の好ましい実施態様は、従属請求項又は上記実施態様の対応する独立請求項との如何なる組み合わせとすることもできると理解されるべきである。
【0029】
本発明の上記及び他の態様は、後述する実施態様から明らかとなり、斯かる実施態様を参照して解説される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、治療計画を生成するための計画ユニットを含むアブレーション治療システムを概略的且つ例示的に示す。
図2図2は、治療領域の画像における線量分布の視覚化を概略的且つ例示的に示す。
図3図3は、線量分布の視覚化における線量値の指示情報を概略的且つ例示的に示す。
図4A図4Aは、線量分布の視覚化における第1位置の選択を概略的且つ例示的に示す。
図4B図4Bは、第1位置に割り当てられた線量値の第2位置への移転を概略的且つ例示的に示す。
図5図5は、他の線量分布の視覚化を概略的且つ例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、人又は動物の患者身体内の標的構造にアブレーション治療処置を施すシステムの一実施態様を概略的且つ例示的に示す。当該標的構造は、特には、身体の特定の領域内の腫瘍であり得る。以下に参照される一例示的実施態様において、当該システムは一時的小線源治療システムとして構成され、該システムは高線量率(HDR)小線源治療又は他の形態の一時的小線源治療を施すように構成することができる。このようなシステムにおいて、標的構造は1以上の放射線源により照射され、これら放射線源は治療領域内の標的構造の近傍に一時的に配置される。この治療は、1回で又は複数分割照射(即ち、放射線源(又は複数の放射線源)が治療領域内に数回配置される)で施すことができる。
【0032】
この実施態様において、当該システムは放射線源(又は複数の放射線源)を治療領域に供給するためのアプリケータ1を有する。当該放射線源は、特には、標的構造を治療するための電離放射性放射線を放出する放射性粒子を含むことができる。アプリケータ1は、放射線源(又は複数の放射線源)を受け入れる1以上のカテーテルを含む。該カテーテルを介して、上記放射線源を治療領域に供給すると共に、定められた位置(停留位置とも称される)に定められた期間(停留時間とも称される)にわたり保持することができる。図1に示された実施態様において、当該放射線源はアプリケータ1内にアフターローダ装置2から遠隔的に供給される。他の実施態様において、当該放射線源は同様にしてアプリケータ1に手動で供給することができる。
【0033】
更に、当該システムは、患者身体内の治療領域の画像を取得するように構成された撮像装置3を有する。好ましくは、該撮像装置3は治療領域の三次元画像を発生するように構成される。この目的のため、該撮像装置3は当業者により既知の適切な撮像方式を採用することができる。該撮像装置3により採用される例示的撮像方式は、コンピュータトモグラフィ(CT)、超音波撮像又は磁気共鳴撮像(MRI)を含む。原理的に、該撮像装置3がX線撮像、超音波撮像又は他の撮像技術により当該治療領域の二次元画像を取得するように構成されることも可能である。これら画像に基づいて、治療領域の解剖学的構造を調べることができ、アプリケータ1が治療領域内で位置決めされる間において画像が取得される際に、前記放射線源(又は複数の放射線源)及びアプリケータ1の標的構造及びリスク臓器に対する相対位置を決定することができる。
【0034】
治療は、特に停留時間を含む関連する治療パラメータを指定すると共に計画ユニット4により生成される治療計画に従って施される。計画ユニット4は処理ユニットを有するコンピュータ装置(例えば、パーソナルコンピュータ等の)として構成することができ、前記処理ユニットは放射線治療処置の実行を制御するための治療計画を生成する治療計画ソフトウェアを実行する。計画ユニット4は、前記撮像装置3により取得された画像を受信するための適切なインターフェースを有する。更に、計画ユニット4はユーザ(例えば、医師であり得る)と対話するためのユーザインターフェースを有するか又は斯かるユーザインターフェースに結合される。該ユーザインターフェースは、特に、表示ユニット5及び入力装置6を有することができる。入力装置6は、特に、表示ユニット5上に提示されるグラフィックユーザインターフェース内でナビゲーションすることを可能にする。この目的のために、入力装置6は、特に、例えばコンピュータマウス、トラックパッド又はトラックボール等のポインティング装置を有することができる。同様に、表示ユニット5は入力装置6としても機能するタッチ感知性モニタを有することもできる。
【0035】
当該システムにおいて実際の放射線治療を開始する前に、治療領域における1以上の適切な停留位置が計画ユニット4の位置決めモジュール7において決定され、アプリケータ1が、放射線源が該アプリケータ1内に挿入される際に前記決定された停留位置(又は複数の停留位置)に配置されるように、該治療領域内で位置決めされる。当該停留位置(又は複数の停留位置)は、当該標的構造及びリスク臓器の位置に基づいて発見的決定手順を適用することにより決定することができる。このような手順の既知の例は、所謂k平均クラスタリング法及び所謂重心ボロノイ分割を含む。標的構造及びリスク臓器の位置は、撮像装置3により取得された治療領域の画像を用いて決定することができる。斯かる画像において、標的構造及びリスク臓器は該標的構造及びリスク臓器の輪郭を決定するために線描画することができ、当該位置は該決定された輪郭に基づいて決定することができる。前記標的構造及びリスク臓器の線描画は、当業者により既知の手動、半自動及び自動手順を用いて行うことができる。
【0036】
標的構造及びリスク臓器に対する上記停留位置の配置に基づいて、当該治療計画は計画ユニット4の計画モジュール8において以下に更に詳細に説明するように決定される。該治療計画は、特に、当該治療領域が放射線源(又は、複数の放射線源)により照射される停留時間を定める。アプリケータ1を当該治療領域内に位置決めすると共に当該放射線源(又は複数の放射線源)の停留位置に対する治療計画を決定したら、該放射線源はアプリケータ1内へと供給されると共に該治療計画に従ってアプリケータ1内の定位置に保持される。
【0037】
当該治療計画は患者に対する臨床的処方に基づいて生成され、該臨床的処方は特に治療の間において標的構造に供給されるべき放射線線量を指定することができる。更に、リスク臓器に対して供給されるべき最大放射線線量も指定することができる。このことは、当該患者に対する処方において及び/又は当該治療に関する一般的規則において実施することができる。更に、当該治療計画は当該治療領域の画像(以下では、計画用画像とも称される)から決定される標的構造及びリスク臓器の位置に基づいて生成される。該計画用画像は、前記停留位置が決定される際に基づいた前記画像に対応し得る。同様に、当該治療領域の他の画像を用いることもできる。
【0038】
当該治療目標に基づいて一群の目標及び/又は制約が決定され、これら目標及び制約を少なくとも略満たすような最終的治療計画が生成される。この目的のために、上記目標及び制約に基づいて最適化問題が作成され、この最適化問題が幾つかのステップを有するユーザ誘導反復最適化手順において少なくともほとんど解決される。各ステップにおいて、計画モジュール8は当該最適化問題の解を近似することにより予備的治療計画を自動的に計算する。次いで、計画モジュール8は、この治療計画に対応する線量分布を決定し、該線量分布を計画ユニット4のユーザに対して視覚化する。該ユーザは該線量分布を吟味し、該線量分布により満足されるか否かを決定する。ユーザが或るステップにおいて満足された場合、このステップにおいて計算された治療計画が最終的治療計画として使用される。ユーザが満足されなかった場合、当該最適化問題は、ユーザにより吟味の結果として指定された変更に従って修正される。次いで、計画モジュール8は次のステップにおいて新たな予備的治療計画を計算する。
【0039】
各治療計画の結果として治療領域に供給される特定の線量分布が得られ、該線量分布は当該治療領域における放射線線量値の空間分布に対応する。かくして、当該計画は前記計画用画像の画像ボリュームに対してなされるので、該線量分布は線量値を治療領域の各ボクセルに割り当てる。
【0040】
目標は、当該線量分布が満たすべき要件に対応する。可能な目標は、特に、当該治療領域内の特定の位置又は領域への最大及び最小放射線線量の供給を含む。最小線量要件は、通常、標的構造に関するものである。従って、標的構造の1以上の位置又は領域に供給されるべき最小放射線線量を特に指定することができる。最大線量要件は、通常、リスク臓器に関するものである。これに関しては、リスク臓器の1以上の位置又は領域に供給されるべき最大放射線線量を特に指定することができる。更に、例えば治療ボリュームの特定の領域(通常は、標的構造の或る領域である)への均一な線量分布の供給等の他の目標を定めることもできる。
【0041】
制約は、一般的に、目標と同じ要件に対応する。しかしながら、目標として実施化される要件は厳密に満たされる必要はないが、線量分布は制約として実施化される要件に違反してはならない。
【0042】
特定の患者に対して指定された目標及び制約に基づいて治療計画を自動的に生成するために、計画モジュール8は費用関数Fを適切な最適化アルゴリズムを用いて最小化することができる。該費用関数Fは一連の別個の目的関数Fを有することができ、ここで、各目的関数Fは1つの目標を表す。一実施態様において、費用関数Fは特に目的関数Fの加重和に対応する。即ち、
【数1】
であり、ここで、τは決定されるべき治療パラメータ(即ち、本例では停留時間)の組を示し、パラメータwは目的関数Fの重みを示す。重み付け(加重)により、より高い重みを有する目標は、より低い重みを有する目標より一層高い可能性で満足される(斯様な目標が互いに対立する場合)。従って、当該重みは治療の成功に対する当該目標の重要性に従って選択される。
【0043】
一例として、特定のボリュームVに対する最大/最小放射線線量を表す目的関数は、
【数2】
により示すことができ、ここで、最大線量が指定される場合f(di,dk)=H(di-dk)であり、最小線量が指定される場合f(di,dk)=H(dk-di)である。また、Δviはボクセルiの体積を示し、di=di(τ)は放射線パラメータτが使用される場合にボクセルiに供給される放射線線量であり、dkはボリュームVに供給されるべき最大/最小放射線線量であり、Hは、
【数3】
により定義されるヘヴィサイドの階段関数である。
【0044】
制約は関数C(τ)により表すことができ、かくして、計画モジュール8は前述した関数F(τ)を最小化することができると同時に、
【数4】
が満たされることを保証することができる。例えば、最大線量要件に対応する制約のための対応する関数CはC=dk-diとすることができる一方、最小線量要件に対応する制約のための対応する関数CはC=di-dkとすることができる。上記制約が満たされるように当該最適化問題を(おおよそ)解くために、例えば既知のラグランジュの未定乗数法を適用することができる。
【0045】
当該治療パラメータを目的関数が(略)最小化されると共に制約が満たされるように決定するために、計画モジュール8により如何なる好適な最適化アルゴリズムを使用することもできる。一例示的実施化例において、計画モジュール8は、P.E. Gill他による“User's guide for NPSOL 5.0: A Fortran package for nonlinear programming”, Technical Report SOL 86-6, Revised 2001に記載されたNPSOLアルゴリズムを用いることができる。しかしながら、当業者により既知の任意の他の好適なアルゴリズムを同様に使用することができる。
【0046】
このようにして、計画モジュール8は前述したユーザ誘導最適化手順の各ステップにおいて治療計画を計算することができる。更に、前述したように、ユーザが生成された治療計画から生じる線量分布に満足しない場合、当該最適化問題は該ユーザにより指定された変更に従って修正される。この点に関して、計画モジュール8は各ステップにおいて生成された治療計画に対応する線量分布を決定し、該線量分布をユーザに対し視覚化する。この目的のために、前記計画用画像を計画モジュール8の制御の下で表示ユニット5に表示することができ、該計画用画像には線量分布のグラフィック表示を重ねることができる。
【0047】
特に、前記線量分布に対応する線量値を所定の線量間隔に従って視覚化することができ、そのグラフィック表現は間隔間境界の等線量曲線を含むことができる。例示として、このようなグラフィック表現が図2に図示されており、該図は標的構造23を含む治療領域22の画像21を示している。画像21には特定の線量間隔の間の境界の等線量曲線が重ねられ、1つの等線量曲線には符号24が付されている。
【0048】
上記等線量曲線に加えて又は代えて、該線量分布のグラフィック表現は同一の間隔からの線量値を持つ領域(以下では、等線量領域と称される)の半透明な着色又は陰影を含むことができる。
【0049】
当該画像及び上述した線量分布の表現を含むグラフィックユーザインターフェースにおいて、ユーザは好ましくは入力装置6を操作することによりカーソルの動きを制御することができるものとする。線量分布を更に詳細に検討するために、ユーザは当該画像上でカーソルを動かすことができ、グラフィックユーザインターフェースは該カーソルが通過する位置又はボクセルに割り当てられた線量値を表示することができる。この目的のために、図3に示されるように線量値を示す指示情報31を当該画像上に重ねることができ、又は該線量値は当該グラフィックユーザインターフェースにおいて当該画像の隣に明示することができる。該図はカーソル(符号32が付されている)も示し、該カーソルは明示された線量値が割り当てられた箇所に位置されている。更に、カーソルが通過しているボクセルが属する等線量領域33は、図3に同様に示されるようにオプションとして強調することができる(該図において、該等線量領域は陰影が付けられている)。これにより、線量分布をユーザに対して更に明瞭化することができる。
【0050】
ユーザが当該線量分布に満足しない場合、該ユーザは新たな治療計画の計算を開始することができ、その結果、グラフィックユーザインターフェースに修正された線量分布が得られる。特に、ユーザは現在の線量分布に従って特定の線量値が割り当てられた第1位置又はボクセルを選択することができる。該選択は、この位置にカーソルをナビゲーションすると共に、該カーソルが関連する箇所に位置された際に例えばマウス釦のクリック等の所定の入力操作を実行することにより行うことができる。該第1位置が選択されると、割り当てられた線量値が、例えば前述したような態様でグラフィックユーザインターフェースに明示され、該選択された第1位置がグラフィックユーザインターフェースにおいて強調され得る。選択された位置が強調されると共に割り当てられた線量値が明示された斯かる状況が、図4Aに例示的に示されている。この図において、当該強調は×印を用いて示されている。しかしながら、斯かる強調は任意の他の好適な方法で行うことができる。
【0051】
第1位置の選択により、割り当てられた線量値が捕捉される。ここで、ユーザは当該線量値が次の最適化ステップのための目標線量値として割り当てられようとしている第2位置を選択することができる。図4Bにおいて、該第2位置には符号42が付されている。このように、ユーザは第1位置に割り当てられた線量値を第2位置に目標線量値として移転させることができる。これを達成するために、ユーザはカーソルを第2位置へとナビゲートし、次いで、この位置を所定の入力操作を実行することにより選択することができる。当該グラフィックユーザインターフェースにおいて、この移転は、例えば第1位置及び第2位置を接続する矢印により視覚化することができる。このような矢印41が図4Bに例示的に示されている。
【0052】
このようにして、ユーザは線量分布を直接的に且つ容易に操作することができる。特に、ユーザは線量値を或る位置から他の位置へ移転させることができる。この点に関し、ユーザは、典型的に、当該線量分布が満足のゆくものであるか否かを判定するために該線量分布の異なる領域の線量値を比較する(絶対線量値をチェックするというより)ことができる。上述したように線量値を移転させることにより、ユーザは線量分布を当該判定過程における該ユーザの決定(即ち、“第2位置における線量値が第1位置における線量値と比較して低/高過ぎる”という結論)に直接適合させることができる。このことは、線量分布の直感的な操作を可能にする。
【0053】
ユーザ入力に応答して、計画モジュール8は好ましくは当該治療計画を決定するための最適化問題を、第2位置における線量値が、次の最適化ステップにおいて計算される治療計画に従って、指定された目標線量値(即ち、ユーザにより指定された値)に近付くように修正するものとする。この目的のために、計画モジュール8は、現最適化サイクルにおいて治療計画を計算するために使用された制約及び目標の組に、対応する制約又は目標を追加する。
【0054】
これに関し、計画モジュールは、好ましくは、この組に対し、ユーザにより指定された線量値が第2位置に割り当てられた現在の線量値より小さいか又は大きいかに依存して該第2位置に対する最大又は最小線量要件に対応した制約を追加するものとする。このことは、計画モジュール8においてユーザにより指定された線量値を現在の線量値と比較することにより決定される。更に詳細には、ユーザにより指定された線量値が現線量値より小さい場合、計画モジュール8は第2位置に対する最大線量要件に対応した制約を追加する。このことは、計画モジュール8が制約関数(零以上でなければならない)のリストに制約関数C=df-diを追加することを意味し、ここで、dは計算されるべき治療計画による第2位置の線量値に対応し、dは前述したユーザにより指定された第1位置における線量値に対応する。ユーザにより指定された線量値が現線量値より大きい場合、計画モジュール8は第2位置に対する最小線量要件に対応した制約を追加する。従って、計画モジュール8は制約関数のリストに制約関数C=d-dを追加する。
【0055】
このような制約を追加することにより、計画モジュール8は当該線量値が指定された目標線量値に近付くことを保証することができる。原理的に、第2位置の線量値がユーザにより指定された線量値に等しくなることを要求する制約を追加することも可能であろう。しかしながら、このような制約は、結果として、最適化アルゴリズムにより解くことができない最適化問題を生じ得る。従って、最大又は最小線量要件に対応する制約の追加が好ましい。
【0056】
代替実施態様において、計画モジュール8は目標及び制約の組に最大又は最小線量要件に対応する目標を追加することができる。この場合、ユーザによりなされた修正は、幾らかの確率で実現することができない。しかしながら、この場合において最適化に対する可能性のある解の“探索空間”は一層大きくなり、かくして、最適化アルゴリズムは幾つかの状況では一層良好な総合的解を生成することができる。
【0057】
この代替実施態様において、ユーザにより指定された線量値が現線量値より小さい場合、計画モジュール8は、特に、第2位置に対する最大線量要件に対応する目標を追加することができる。このように、該計画モジュールは最小化されるべき費用関数に、
【数5】
なる形態の目的関数を追加する。ユーザにより指定された線量値が現線量値より大きい場合、計画モジュール8は、特に、第2位置に対する最小線量要件に対応する目標を追加することができる。このように、計画モジュール8は費用関数に、
【数6】
なる形態の目的関数を追加する。
【0058】
代替例として、計画モジュール8は第2位置の線量値がユーザにより指定された線量値に等しいことを要求する目標を追加することができる。このような目標は、費用関数に、
【数7】
なる形態の目的関数を追加することにより実施化することができる。
【0059】
対応する制約の追加の場合におけるのと同様に、このような目標は最適化問題の可能性のある解の“空間”を制限する。しかしながら、目標は必ずしも満たされる必要はないので、この実施態様において当該最適化問題はいずれにせよ依然として解くことが可能である。
【0060】
費用関数における追加された目標の重みは、ユーザにより指定することができる。代替例として、計画モジュール8が重みを自動的に選択することもできる。特に、計画モジュール8は、費用関数に既に含まれた目的関数の重みを評価することができ、これら重みの中の最大の重みを新たな目的関数のために選択することができる。これにより、追加された目標が高い確率で満たされることが保証される。
【0061】
上述した制約又は目標を追加することにより最適化問題を修正したら、当該最適化手順は次の最適化ステップに進む。この最適化ステップにおいて、該修正された最適化問題は新たな予備的治療計画を生成するために自動的に解かれ、該新たな治療計画に対応する線量分布が前述したように表示ユニット5に表示される。ユーザによりなされた修正から生じる当該線量分布の変化を示すために、前に指定された第1位置を含む等線量領域を、前述したように強調表示することができる。新たな線量分布において、この等線量領域はユーザにより以前に指定された第2位置も含まなければならない。これが図5に例示的に示されており、該図は図4A及び図4Bに示された線量値の移転の可能性のある結果も示している。
【0062】
上述した方法により、ユーザは線量値を第1位置から特定の第2位置へ移転することができる。ユーザが複数の第2位置の線量値に満足しない場合、同様のことを1つの最適化ステップにおいて複数の第1及び第2位置に関して実施することができる。更に、計画モジュール8は、線量値の第1位置から連続した標的領域を形成する複数の第2位置への変換を可能にするよう構成することもできる。この場合、当該計画モジュールにより前記制約及び目標の組に追加された制約及び目標は、該標的領域に含まれる全てのボクセルに関するものである。
【0063】
標的領域を指定するために、如何なる好適な入力手順を用いることもできる。例えば、標的領域を示し且つ選択するために特定の形状を持つ拡大カーソルを設けることができ、又は標的領域を当該領域の輪郭に沿ってカーソルを移動させることにより手動で輪郭描写することができる。
【0064】
更に、ユーザが複数の第1位置を有するソース領域を指定すると共に該複数の第1位置の線量値から導出される線量値を第2位置及び/又は標的領域に移転することも可能である。前記ソース領域は、前述したのと同様にして指定することができる。前記の導出される線量値は、前記複数の位置の線量値から適切な方法で計算することができる。特に、該導出される線量値は、当該複数の位置の線量値から計算される適切な統計的値に対応することができる。例えば、該導出される線量値は、個々の線量値の最大値、最小値又は平均値に対応することができる。標的領域が指定される場合、ソース領域における該複数の位置の線量値の平均及び分散を推定することも同様に可能である。この場合、該平均は標的線量値に対応することができ、計画モジュール8は標的領域の各位置が該決定された平均に対応する線量値を有することを要求する目標を追加することができる。このような目標は、標的領域における各位置に関して前述したように費用関数に対応する目的関数を追加することにより実施化することができる。更に、計画モジュール8は、標的領域における線量値の分散がソース領域における線量値の分散を超えないことを要求する制約を追加することができる。かくして、治療計画の新たなバージョンから生じる線量分布においては前記平均から逸脱する標的領域内の線量値が一般的に起こり得るが、該線量値の分散はソース領域における線量値のものを超えることはないであろう。これにより、標的領域内で、ソース領域における線量分布に統計的に類似した線量分布を生成することが可能となる。
【0065】
上述した実施態様は一時的小線源治療のための治療計画の生成に関するものであるが、上述した手順を、例えばHIFU、RF及びマイクロ波治療並びにレーザアブレーション等の他のアブレーション治療方式に適用することも同様に可能である。これらの治療方式は一時的小線源治療とは、計画処理において放射線線量分布の代わりに加熱量分布が決定される点で相違する。更に、治療パラメータも相違し、エネルギが治療領域に供給される期間並びに放射線又は超音波ビームのパワー及び周波数を含み得る。このように、上述した手順は、関連する治療パラメータが停留時間の代わりに最適化されると共にユーザにより放射線線量分布の代わりに加熱量分布が決定及び操作される場合に、これらの治療方式にも適用することができる。
【0066】
尚、開示された実施態様に対する他の変形例は、当業者によれば、請求項に記載された本発明を実施するに際して図面、本開示及び添付請求項の精査から理解し、実施することができる。
【0067】
また、請求項において“有する”なる文言は他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。
【0068】
また、単一のユニット又は装置は、請求項に記載された幾つかの項目の機能を満たすことができる。また、特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせを有利に使用することができないということを示すものではない。
【0069】
また、コンピュータプログラムは、光記憶媒体又は他のハードウェアと一緒に若しくは他のハードウェアの一部として供給される固体媒体等の適切な媒体により記憶/分配することができるのみならず、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介して等のように他の形態で分配することもできる。
【0070】
また、請求項における如何なる符号も、当該範囲を限定するものと見なしてはならない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5