(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】フライバックスイッチング電源
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
H02M3/28 P
(21)【出願番号】P 2019547120
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(86)【国際出願番号】 CN2018075024
(87)【国際公開番号】W WO2018161749
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-01-05
(31)【優先権主張番号】201710142831.6
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513236840
【氏名又は名称】▲広▼州金▲昇▼▲陽▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 保均
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05844787(US,A)
【文献】特開2009-055745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0033698(US,A1)
【文献】特開2014-143911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライバックスイッチング電源であって、
トランス、第1スイッチトランジスタ、第2スイッチトランジスタ、第2コンデンサ、及び、第1ダイオードを含み、
前記第1スイッチトランジスタ及び前記第2スイッチトランジスタは、共にNチャネル電界効果トランジスタであり、
前記トランスは、第1の一次側巻線、第2の一次側巻線、及び、二次側巻線を含み、
該二次側巻線のドット無し端子は、前記第2スイッチトランジスタのドレインに接続され、前記第2スイッチトランジスタのソースは、前記第2コンデンサの一端に接続されて正出力を形成し、前記二次側巻線のドット付き端子は、前記第2コンデンサの他端に接続されて負出力を形成し、
前記第1の一次側巻線のドット付き端子と前記第1ダイオードのカソードとの双方に、入力直流電源の正端子が接続され、前記第1の一次側巻線のドット無し端子は、前記第1スイッチトランジスタのドレインに接続され、
前記第1ダイオードのアノードは、前記第2の一次側巻線のドット無し端子に接続され、前記第1スイッチトランジスタのソースは、前記第2の一次側巻線のドット付き端子に接続されると共に、前記入力直流電源の負端子にも接続され、
前記第1スイッチトランジスタのゲートは、一次側制御信号に接続され、
前記第1の一次側巻線及び前記第2の一次側巻線は、バイファイラー巻きであり、
更に、当該フライバックスイッチング電源は、第1コンデンサを含み、該第1コンデンサの一端が、前記第1の一次側巻線のドット無し端子に接続されると共に、前記第1コンデンサの他端が、前記第2の一次側巻線のドット無し端子に接続され、
前記第2スイッチトランジスタのゲートは、二次側制御信号に接続され
、
当該フライバックスイッチング電源は、電源投入時の前記第1コンデンサへの充電と、励起とを行い、
前記第1コンデンサを充電するとき、前記第1ダイオードは逆バイアスのために動作せず、前記第1スイッチトランジスタは前記一次側制御信号を受信しないため開回路となり、前記入力直流電源は前記第1の一次側巻線を介して前記第1コンデンサを充電し、該充電の電流が前記第2の一次側巻線を通って前記入力直流電源の負端子へ戻り、
励起するとき、前記第1スイッチトランジスタは前記一次側制御信号を正常に受信してオンとなり、前記第1ダイオードは逆バイアス状態にあり、2つの励起電流が発生し、該2つの励起電流のうち一方の電流は、前記入力直流電源の正端子から、前記第1の一次側巻線のドット付き端子を通って入り、前記第1の一次側巻線のドット無し端子から出て、前記第1スイッチトランジスタのドレインを通って入り、前記第1スイッチトランジスタのソースを通って出て、前記入力直流電源の負端子へ戻り、前記2つの励起電流のうち他方の電流は、前記第1コンデンサの一端から、前記第1スイッチトランジスタのドレインを通って入り、前記第1スイッチトランジスタのソースから出て、前記第2の一次側巻線のドット付き端子を通って入り、前記第2の一次側巻線のドット無し端子を通って出て、前記第1コンデンサの他端へ戻ることを特徴とするフライバックスイッチング電源。
【請求項2】
フライバックスイッチング電源であって、
トランス、第1スイッチトランジスタ、第2スイッチトランジスタ、第2コンデンサ、及び、第1ダイオードを含み、
前記第1スイッチトランジスタ及び前記第2スイッチトランジスタは、共にNチャネル電界効果トランジスタであり、
前記トランスは、第1の一次側巻線、第2の一次側巻線、及び、二次側巻線を含み、
該二次側巻線のドット無し端子は、前記第2スイッチトランジスタのドレインに接続され、前記第2スイッチトランジスタのソースは、前記第2コンデンサの一端に接続されて正出力を形成し、前記二次側巻線のドット付き端子は、前記第2コンデンサの他端に接続されて負出力を形成し、
前記第1スイッチトランジスタのドレインと前記第2の一次側巻線のドット無し端子との双方に、入力直流電源の正端子が接続され、前記第1スイッチトランジスタのソースは、前記第1の一次側巻線のドット付き端子に接続され、
前記第2の一次側巻線のドット付き端子は、前記第1ダイオードのカソードに接続され、前記第1の一次側巻線のドット無し端子は、前記第1ダイオードのアノードに接続されると共に、前記入力直流電源の負端子にも接続され、
前記第1スイッチトランジスタのゲートは、一次側制御信号に接続され、
前記第1の一次側巻線及び前記第2の一次側巻線は、バイファイラー巻きであり、
更に、当該フライバックスイッチング電源は、第1コンデンサを含み、該第1コンデンサの一端が、前記第1の一次側巻線のドット付き端子に接続されると共に、前記第1コンデンサの他端が、前記第2の一次側巻線のドット付き端子に接続され、
前記第2スイッチトランジスタのゲートは、二次側制御信号に接続され
、
当該フライバックスイッチング電源は、電源投入時の前記第1コンデンサへの充電と、励起とを行い、
前記第1コンデンサを充電するとき、前記第1ダイオードは逆バイアスのために動作せず、前記第1スイッチトランジスタは前記一次側制御信号を受信しないため開回路となり、前記入力直流電源は前記第2の一次側巻線を介して前記第1コンデンサを充電し、該充電の電流が前記第1の一次側巻線を通って前記入力直流電源の負端子へ戻り、
励起するとき、前記第1スイッチトランジスタは前記一次側制御信号を正常に受信してオンとなり、前記第1ダイオードは逆バイアス状態にあり、2つの励起電流が発生し、該2つの励起電流のうち一方の電流は、前記入力直流電源の正端子から、前記第1スイッチトランジスタのドレインを通って入り、前記第1スイッチトランジスタのソースから出て、前記第1の一次側巻線のドット付き端子を通って入り、前記第1の一次側巻線のドット無し端子を通って出て、前記入力直流電源の負端子へ戻り、前記2つの励起電流のうち他方の電流は、前記第1コンデンサの他端から、前記第2の一次側巻線のドット付き端子を通って入り、前記第2の一次側巻線のドット無し端子から出て、前記第1スイッチトランジスタのドレインを通って入り、前記第1スイッチトランジスタのソースを通って出て、前記コンデンサの一端へ戻ることを特徴とするフライバックスイッチング電源。
【請求項3】
フライバックスイッチング電源であって、
トランス、第1スイッチトランジスタ、第2スイッチトランジスタ、第2コンデンサ、及び、第1ダイオードを含み、
前記第1スイッチトランジスタが、Pチャネル電界効果トランジスタであると共に、前記第2スイッチトランジスタが、Nチャネル電界効果トランジスタであり、
前記トランスは、第1の一次側巻線、第2の一次側巻線、及び、二次側巻線を含み、
該二次側巻線のドット無し端子は、前記第2スイッチトランジスタのドレインに接続され、前記第2スイッチトランジスタのソースは、前記第2コンデンサの一端に接続されて正出力を形成し、前記二次側巻線のドット付き端子は、前記第2コンデンサの他端に接続されて負出力を形成し、
前記第1の一次側巻線のドット無し端子と前記第1ダイオードのアノードとの双方に、入力直流電源の負端子が接続され、前記第1の一次側巻線のドット付き端子は、前記第1スイッチトランジスタのドレインに接続され、
前記第1ダイオードのカソードは、前記第2の一次側巻線のドット付き端子に接続され、前記第1スイッチトランジスタのソースは、前記第2の一次側巻線のドット無し端子に接続されると共に、前記入力直流電源の正端子にも接続され、
前記第1スイッチトランジスタのゲートは、一次側制御信号に接続され、
前記第1の一次側巻線及び前記第2の一次側巻線は、バイファイラー巻きであり、
更に、当該フライバックスイッチング電源は、第1コンデンサを含み、該第1コンデンサの一端が、前記第1の一次側巻線のドット付き端子に接続されると共に、前記第1コンデンサの他端が、前記第2の一次側巻線のドット付き端子に接続され、
前記第2スイッチトランジスタのゲートは、二次側制御信号に接続され
、
当該フライバックスイッチング電源は、電源投入時の前記第1コンデンサへの充電と、励起とを行い、
前記第1コンデンサを充電するとき、前記第1ダイオードは逆バイアスのために動作せず、前記第1スイッチトランジスタは前記一次側制御信号を受信しないため開回路となり、前記入力直流電源は前記第2の一次側巻線を介して前記第1コンデンサを充電し、該充電の電流が前記第1の一次側巻線を通って前記入力直流電源の負端子へ戻り、
励起するとき、前記第1スイッチトランジスタは前記一次側制御信号を正常に受信してオンとなり、前記第1ダイオードは逆バイアス状態にあり、2つの励起電流が発生し、該2つの励起電流のうち一方の電流は、前記入力直流電源の正端子から、前記第1スイッチトランジスタのソースを通って入り、前記第1スイッチトランジスタのドレインを通って出て、前記第1の一次側巻線のドット付き端子を通って入り、前記第1の一次側巻線のドット無し端子から出て、前記入力直流電源の負端子へ戻り、前記2つの励起電流のうち他方の電流は、前記第1コンデンサの他端から、前記第2の一次側巻線のドット付き端子を通って入り、前記第2の一次側巻線のドット無し端子を通って出て、前記第1スイッチトランジスタのソースを通って入り、前記第1スイッチトランジスタのドレインから出て、前記第1コンデンサの一端へ戻ることを特徴とするフライバックスイッチング電源。
【請求項4】
フライバックスイッチング電源であって、
トランス、第1スイッチトランジスタ、第2スイッチトランジスタ、第2コンデンサ、及び、第1ダイオードを含み、
前記第1スイッチトランジスタが、Pチャネル電界効果トランジスタであると共に、前記第2スイッチトランジスタが、Nチャネル電界効果トランジスタであり、
前記トランスは、第1の一次側巻線、第2の一次側巻線、及び、二次側巻線を含み、
該二次側巻線のドット無し端子は、前記第2スイッチトランジスタのドレインに接続され、前記第2スイッチトランジスタのソースは、前記第2コンデンサの一端に接続されて正出力を形成し、前記二次側巻線のドット付き端子は、前記第2コンデンサの他端に接続されて負出力を形成し、
前記第1スイッチトランジスタのドレインと前記第2の一次側巻線のドット付き端子との双方に、入力直流電源の負端子が接続され、前記第1スイッチトランジスタのソースは、前記第1の一次側巻線のドット無し端子に接続され、
前記第2の一次側巻線のドット無し端子は、前記第1ダイオードのアノードに接続され、前記第1の一次側巻線のドット付き端子は、前記第1ダイオードのカソードに接続されると共に、前記入力直流電源の正端子にも接続され、
前記第1スイッチトランジスタのゲートは、一次側制御信号に接続され、
前記第1の一次側巻線及び前記第2の一次側巻線は、バイファイラー巻きであり、
更に、当該フライバックスイッチング電源は、第1コンデンサを含み、該第1コンデンサの一端が、前記第1の一次側巻線のドット無し端子に接続されると共に、前記第1コンデンサの他端が、前記第2の一次側巻線のドット無し端子に接続され、
前記第2スイッチトランジスタのゲートは、二次側制御信号に接続され
、
当該フライバックスイッチング電源は、電源投入時の前記第1コンデンサへの充電と、励起とを行い、
前記第1コンデンサを充電するとき、前記第1ダイオードは逆バイアスのために動作せず、前記第1スイッチトランジスタは前記一次側制御信号を受信しないため開回路となり、前記入力直流電源は前記第1の一次側巻線を介して前記第1コンデンサを充電し、該充電の電流が前記第2の一次側巻線を通って前記入力直流電源の負端子へ戻り、
励起するとき、前記第1スイッチトランジスタは前記一次側制御信号を正常に受信してオンとなり、前記第1ダイオードは逆バイアス状態にあり、2つの励起電流が発生し、該2つの励起電流のうち一方の電流は、前記入力直流電源の正端子から、前記第1の一次側巻線のドット付き端子を通って入り、前記第1の一次側巻線のドット無し端子を通って出て、前記第1スイッチトランジスタのソースを通って入り、前記第1スイッチトランジスタのドレインから出て、前記入力直流電源の負端子へ戻り、前記2つの励起電流のうち他方の電流は、前記第1コンデンサの一端から、前記第1スイッチトランジスタのソースを通って入り、前記第1スイッチトランジスタのドレインを通って出て、前記第2の一次側巻線のドット付き端子を通って入り、前記第2の一次側巻線のドット無し端子から出て、前記コンデンサの他端へ戻ることを特徴とするフライバックスイッチング電源。
【請求項5】
前記二次側制御信号は、前記正出力と前記負出力との間の電圧により制御されるPWM信号であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフライバックスイッチング電源。
【請求項6】
前記一次側制御信号のデューティサイクルは、固定であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフライバックスイッチング電源。
【請求項7】
前記一次側制御信号のデューティサイクルは、二次側の実際の出力電力のm倍に応じて提供されると共に、前記デューティサイクルは、最大デューティサイクルに達するまで増大しないことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフライバックスイッチング電源。
【請求項8】
プリント基板配線時の、前記第1の一次側巻線と前記第2の一次側巻線との励起電流の物理的経路の方向が、反対であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフライバックスイッチング電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源の分野に関するものであり、特にフライバックスイッチング電源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、スイッチング電源が広く使用されている。入力電力が75W未満で力率(PF)の要求がないアプリケーションの場合、フライバックスイッチング電源には魅力的な利点があり、それは単純な回路トポロジ及び広い入力電圧範囲である。部品点数が少ないため、回路の信頼性が比較的高く、フライバックスイッチング電源は広く使用されている。便宜上、多くの文書において、フライバックスイッチング電源は、フライバックスイッチング電源、フライバック電源、及びフライバックコンバータとも呼ばれている。日本及び台湾では、フライバックコンバータ、フライバックスイッチング電源、及びフライバック電源とも呼ばれる。
図0にAC/DCコンバータの一般的なトポロジが示されている。その図の原型は、チャン シンヂゥー博士により書かれた図書番号ISBN978-7-5083-9015-4の「スイッチング電源電力コンバータのトポロジと設計」の60頁からのものである。それは、整流器ブリッジ101、フィルタ回路200、及び基本的なフライバックトポロジユニット回路300から成り、符号300のものは主電力段とも呼ばれる。実用的な回路には、感圧式、NTCサーミスタ、電磁障害(EMI)、及び整流器ブリッジの前にあるその他の保護回路も提供され、フライバックスイッチング電源の電磁適合性が使用要件を満たすことを保証する。フライバックスイッチング電源では、変換効率を高めるために、一次側巻線と二次側巻線との間の漏れインダクタンスを最小にすることが必要である。加えて、一次側の主電源スイッチトランジスタによってもたらされる耐電圧も低下する。消磁及び吸収にRCDネットワークを使用するフライバックスイッチング電源の場合、RCDの損失も減少する。注:RCD吸収は、抵抗、コンデンサ、及びダイオードで構成される吸収回路を示している。中国の文献は国際文献と同じである。通常、文字「R」は抵抗の符号に使用され、その抵抗を表している。文字「C」はコンデンサの符号に使用され、そのコンデンサを表している。文字「D」はダイオードの符号に使用され、そのダイオードを表している。抵抗とコンデンサとは並列に接続され、更にダイオードと直列に接続されて、RCDネットワークを形成している。
【0003】
整流器ブリッジ101がない場合、200及び300は、DC/DCスイッチング電源又はコンバータを構成することができる。直流により提供されるため、力率についての要件はなく、電力は75Wを超える場合がある。実際、低電圧DC/DCスイッチング電源でのフライバックトポロジの使用は、主流ではない。これは、入力電流が不連続でリップルが比較的大きいためであり、それまでの電源装置に対して比較的高い要件を有している。出力電流も不連続であり、リップルが大きく、後続のフィルタコンデンサの容量に対する要件が比較的高くなる。特に入力電圧が比較的低い場合は、励起電流が大きくなるので、表皮効果の損失を低減するために、一次側巻線を複数の素線でバイファイラー巻きする必要がある。一次側巻線のインダクタンスも比較的低く、スケルトンのワイヤケーシングを左から右にタイル状に完全に巻くには、算出された巻数が不十分であることがよくある。動作電圧が比較的高い場合、一次側巻線は、サンドイッチ直列接続方式を採用することがある。低動作電圧では、直列接続によりインダクタンスが過度に大きくなり、サンドイッチ並列接続方式を使用する必要がある。2つの一次側巻線が同じ層にないため、2つの一次側巻線間に漏れインダクタンスが存在する。その結果、損失が発生し、これによりスイッチング電源の効率が低下して、次のような問題が生じる。
【0004】
励起中、漏れインダクタンスにより、誘起された電圧差には漏れインダクタンスの電圧差があり、無視できない損失を引き起こし、それは次の方法で理解しやすくなる場合がある。並列に接続された2つの一次側巻線について、巻数の差が1の場合、この巻きの巻き間短絡が存在することに相当するが、短絡は、並列に接続された2つの一次側巻線の直流内部抵抗を使用して形成される。相対的に、その損失は実際の巻き間短絡ほど大きくない。消磁中、つまり、二次側の整流ダイオードが導通しているときは、出力フィルタコンデンサが継続的に充電される。この場合、一次側は反射電圧を誘起し、並列に接続された2つの一次側巻線が等しくない電圧を誘起する。巻線の内部抵抗が小さいため、等しくない電圧によってもたらされる電流が小さくなくなり、損失及び比較的大きな電磁障害が引き起こされる。減磁に三次巻線が使用されている場合、並列に接続されている2つの一次側巻線のうち、三次巻線とバイファイラー巻きされているのは何れであるか?並列に接続された2つの一次側巻線と夫々バイファイラー巻きされ、次に並列に接続されて「三次巻線」を形成する、2つの三次巻線のみを使用することができる。プロセスは複雑であり、2つの巻線による並列接続によって形成された三次巻線も等しくない電圧を誘起し、損失及び大きな電磁障害を引き起こす。実際、三次巻線による一般的な減磁の場合、その利点は非破壊的な減磁であり、効率は比較的高くなるが、三次巻線の線径の選択も問題である。比較的小さい線径が選択され、一次側巻線と並列な巻線は比較的手がかかり、細いワイヤは簡単に引き離される。一次側巻線と同じ線径を選択すると、コストが高くなる。三次巻線はフライバックスイッチング電源を消磁し、「3巻線がフライバックスイッチング電源を吸収する」とも言われる。
【0005】
フライバックスイッチング電源には、まだ1つの欠点があり、スイッチング電源の帯域幅が不十分、つまりループ応答が不十分である。動作周波数が65KHzの一般的なスイッチング電源の場合、その帯域幅は通常わずか数百Hz、普通は400Hz未満である。1KHzを達成するには、設計エンジニアに優れた設計経験、優れた回路基板設計レベル、及び優れたデバッグスキルが必要となる。動作周波数が280~330kHzのスイッチング電源の場合、その帯域幅は通常1~2KHzのみである。10kHzを達成することも非常に困難である。これは、フライバックスイッチング電源の固有の動作特性によって決まる。オプトカプラは、出力端の電圧変化を検出し、次のような実装についての一次側のデューティサイクルを決定する。効率損失を考慮した後、単位時間内の一次側励起のエネルギーは、同じ期間の二次側によるエネルギー出力に等しくなる。但し、負荷のジャンプ周波数が増大すると、システムの制御ループが同期を維持できなくなる。これは、プリンタや自動ドア等のフライバックスイッチング電源が、帯域幅が必要な場合に低電圧DC/DCスイッチング電源でほとんど見られないことの、重要な理由でもある。
【0006】
並列接続された2つの一次側巻線は、低電圧DC/DCスイッチング電源に適用される。低電圧DC/DCスイッチング電源は、通常、入力電圧が48V未満のスイッチング電源を示している。鉄道用電源等の一部の用途の低電圧DC/DCスイッチング電源は、DC160Vまで動作可能である。
【発明の概要】
【0007】
これを考慮して、既存の低電圧フライバックスイッチング電源の欠点を克服するために、本発明はフライバックスイッチング電源を提供する。一次側巻線は、2つの独立した一次側巻線を並列接続せずに使用できる。すなわち、一次側巻線と二次側巻線との間の漏れインダクタンスは、比較的大きくなってもよく、消磁に三次巻線を使用しない。更に、変換効率は低下せず、励起及び消磁中の損失は低減され、帯域幅は増大し、ループ応答は良好になる。
【0008】
本発明の目的は、以下の方法で達成される。
フライバックスイッチング電源であって、トランス、第1スイッチトランジスタ、第2スイッチトランジスタ、第2コンデンサ、及び、第1ダイオードを含み、前記第1及び第2スイッチトランジスタは、共にNチャネル電界効果トランジスタであり、前記トランスは、第1の一次側巻線、第2の一次側巻線、及び、二次側巻線を含み、該二次側巻線のドット無し端子は、前記第2スイッチトランジスタのドレインに接続され、前記第2スイッチトランジスタのソースは、前記第2コンデンサの一端に接続されて、正出力を形成し、前記二次側巻線のドット付き端子は、前記第2コンデンサの他端に接続されて、負出力を形成し、前記第1の一次側巻線のドット付き端子と前記第1ダイオードのカソードとの双方に、入力直流電源の正端子が接続され、前記第1の一次側巻線のドット無し端子は、前記第1スイッチトランジスタのドレインに接続され、前記第1ダイオードのアノードは、前記第2の一次側巻線のドット無し端子に接続され、前記第1スイッチトランジスタのソースは、前記第2の一次側巻線のドット付き端子に接続されると共に、その接続点が前記入力直流電源の負端子にも接続され、前記第1スイッチトランジスタのゲートは、一次側制御信号に接続され、前記第1の一次側巻線及び前記第2の一次側巻線は、バイファイラー巻きであり、更に第1コンデンサが含まれており、該第1コンデンサの一端が、前記第1の一次側巻線のドット無し端子に接続されると共に、前記第1コンデンサの他端が、前記第2の一次側巻線のドット無し端子に接続され、前記第2スイッチトランジスタのゲートは、二次側制御信号に接続される。
【0009】
好ましくは、前記二次側制御信号は、前記正出力と前記負出力との間の電圧により制御されるPWM信号である。
【0010】
本発明は、更に、解決策1と同等の解決策を提供し、この同等の解決策は解決策2である。本発明の目的は、更に以下の方法で達成される。
フライバックスイッチング電源であって、トランス、第1スイッチトランジスタ、第2スイッチトランジスタ、第2コンデンサ、及び、第1ダイオードを含み、前記第1及び第2スイッチトランジスタは、共にNチャネル電界効果トランジスタであり、前記トランスは、第1の一次側巻線、第2の一次側巻線、及び、二次側巻線を含み、該二次側巻線のドット無し端子は、前記第2スイッチトランジスタのドレインに接続され、前記第2スイッチトランジスタのソースは、前記第2コンデンサの一端に接続されて、正出力を形成し、前記二次側巻線のドット付き端子は、前記第2コンデンサの他端に接続されて、負出力を形成し、前記第1スイッチトランジスタのドレインと前記第2の一次側巻線のドット無し端子との双方に、入力直流電源の正端子が接続され、前記第1スイッチトランジスタのソースは、前記第1の一次側巻線のドット付き端子に接続され、前記第2の一次側巻線のドット付き端子は、前記第1ダイオードのカソードに接続され、前記第1の一次側巻線のドット無し端子は、前記第1ダイオードのアノードに接続されると共に、その接続点が前記入力直流電源の負端子にも接続され、前記第1スイッチトランジスタのゲートは、一次側制御信号に接続され、前記第1の一次側巻線及び前記第2の一次側巻線は、バイファイラー巻きであり、更に第1コンデンサが含まれており、該第1コンデンサの一端が、前記第1の一次側巻線のドット付き端子に接続されると共に、前記第1コンデンサの他端が、前記第2の一次側巻線のドット付き端子に接続され、前記第2スイッチトランジスタのゲートは、二次側制御信号に接続される。
【0011】
好ましくは、前記二次側制御信号は、前記正出力と前記負出力との間の電圧により制御されるPWM信号である。
【0012】
更に、本発明は、第1スイッチトランジスタとしてPチャネル電界効果トランジスタを使用する、技術的解決策を提供する。解決策1に基づくと、電源、ダイオード、及びドット付き端子の極性を逆にする必要があり、出力整流部の極性を逆にする必要はない。そして、解決策3が得られる。
フライバックスイッチング電源であって、トランス、第1スイッチトランジスタ、第2スイッチトランジスタ、第2コンデンサ、及び、第1ダイオードを含み、前記第1スイッチトランジスタが、Pチャネル電界効果トランジスタであると共に、前記第2スイッチトランジスタが、Nチャネル電界効果トランジスタであり、前記トランスは、第1の一次側巻線、第2の一次側巻線、及び、二次側巻線を含み、該二次側巻線のドット無し端子は、前記第2スイッチトランジスタのドレインに接続され、前記第2スイッチトランジスタのソースは、前記第2コンデンサの一端に接続されて、正出力を形成し、前記二次側巻線のドット付き端子は、前記第2コンデンサの他端に接続されて、負出力を形成し、前記第1の一次側巻線のドット無し端子と前記第1ダイオードのアノードとの双方に、入力直流電源の負端子が接続され、前記第1の一次側巻線のドット付き端子は、前記第1スイッチトランジスタのドレインに接続され、前記第1ダイオードのカソードは、前記第2の一次側巻線のドット付き端子に接続され、前記第1スイッチトランジスタのソースは、前記第2の一次側巻線のドット無し端子に接続されると共に、その接続点が前記入力直流電源の正端子にも接続され、前記第1スイッチトランジスタのゲートは、一次側制御信号に接続され、前記第1の一次側巻線及び前記第2の一次側巻線は、バイファイラー巻きであり、更に、第1コンデンサが含まれており、該第1コンデンサの一端が、前記第1の一次側巻線のドット付き端子に接続されると共に、前記第1コンデンサの他端が、前記第2の一次側巻線のドット付き端子に接続され、前記第2スイッチトランジスタのゲートは、二次側制御信号に接続される。
【0013】
好ましくは、前記二次側制御信号は、前記正出力と前記負出力との間の電圧により制御されるPWM信号である。
【0014】
更に、本発明は、解決策3と同等の解決策を提供し、その解決策は、解決策2の第1スイッチトランジスタとして、Pチャネル電界効果トランジスタを使用する技術的解決策である。解決策2に基づくと、電源、ダイオード、及びドット付き端子の極性を逆にする必要があり、出力整流部の極性を逆にする必要はない。そして、解決策4が得られる。本発明の目的は、更に以下の方法で達成される。
フライバックスイッチング電源であって、トランス、第1スイッチトランジスタ、第2スイッチトランジスタ、第2コンデンサ、及び、第1ダイオードを含み、前記第1スイッチトランジスタが、Pチャネル電界効果トランジスタであると共に、前記第2スイッチトランジスタが、Nチャネル電界効果トランジスタであり、前記トランスは、第1の一次側巻線、第2の一次側巻線、及び、二次側巻線を含み、該二次側巻線のドット無し端子は、前記第2スイッチトランジスタのドレインに接続され、前記第2スイッチトランジスタのソースは、前記第2コンデンサの一端に接続されて、正出力を形成し、前記二次側巻線のドット付き端子は、前記第2コンデンサの他端に接続されて、負出力を形成し、前記第1スイッチトランジスタのドレインと前記第2の一次側巻線のドット付き端子との双方に、入力直流電源の負端子が接続され、前記第1スイッチトランジスタのソースは、前記第1の一次側巻線のドット無し端子に接続され、前記第2の一次側巻線のドット無し端子は、前記第1ダイオードのアノードに接続され、前記第1の一次側巻線のドット付き端子は、前記第1ダイオードのカソードに接続されると共に、その接続点が前記入力直流電源の正端子にも接続され、前記第1スイッチトランジスタのゲートは、一次側制御信号に接続され、前記第1の一次側巻線及び前記第2の一次側巻線は、バイファイラー巻きであり、更に第1コンデンサが含まれており、該第1コンデンサの一端が、前記第1の一次側巻線のドット無し端子に接続されると共に、前記第1コンデンサの他端が、前記第2の一次側巻線のドット無し端子に接続され、前記第2スイッチトランジスタのゲートは、二次側制御信号に接続される。
【0015】
好ましくは、前記二次側制御信号は、前記正出力と前記負出力との間の電圧により制御されるPWM信号である。
【0016】
上述した4つの解決策の改善及びその好ましい解決策として、前記一次側制御信号のデューティサイクルが固定される。
【0017】
好ましくは、前記一次側制御信号のデューティサイクルは、二次側の実際の出力電力のm倍に従って提供され、そのデューティサイクルは、最大デューティサイクルに達するまで増大しない。
【0018】
好ましくは、プリント基板配線中の、前記第1の一次側巻線と前記第2の一次側巻線との励起電流の物理的経路の方向が、反対になっている。
【0019】
動作原理は、実施形態を参照して詳細に説明される。本発明の有益な効果は、一次側と二次側との巻線間の漏れインダクタンスを比較的大きくすることができること、一次側でなおバイファイラー巻線を使用すること、変換効率が高いこと、EMI性能が良好であること、及び、帯域幅が比較的良いことである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図0】交流から直流への変換に既存のフライバックスイッチング電源を使用する原理図である。
【
図1】本発明のフライバックスイッチング電源の解決策1に対応する第1の実施形態の原理図である。
【
図1-1】第1の実施形態において電源投入中にコンデンサC1を充電している概略図である。
【
図1-2】第1の実施形態において電源投入後にコンデンサC1の充電が完了した後の電圧極性の概略図である。
【
図1-3】第1の実施形態においてQ1の飽和導通中に励起電流41及び42の2つの経路が生成される概略図である。
【
図1-4】第1の実施形態においてQ1の切断中にフリーホイーリング電流43及び消磁電流44が生成される概略図である。
【
図1-5a】第1の実施形態において第1のモードで動作するQ2の波形グラフである。
【
図1-5b】第1の実施形態において第2のモードで動作するQ2の波形グラフである。
【
図1-5c】第1の実施形態において第3のモードで動作するQ2の波形グラフである。
【
図1-6】第1の実施形態における
図1の二次側整流回路での等価原理図である。
【
図2】本発明のフライバックスイッチング電源の解決策2に対応する第2の実施形態の原理図である。
【
図2-1】本発明において二次側整流回路にPチャネル電界効果トランジスタを使用した原理図である。
【
図2-2】本発明において二次側整流回路にPチャネル電界効果トランジスタを使用した等価原理図である。
【
図3】本発明のフライバックスイッチング電源の解決策3に対応する第3の実施形態の原理図である。
【
図4】本発明のフライバックスイッチング電源の解決策4に対応する第4の実施形態の原理図である
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るフライバックスイッチ電源の本質の図である。フライバックスイッチ電源は、トランスB、第1スイッチトランジスタQ1、第2スイッチトランジスタQ2、及び、第1ダイオードD1を含み、第1スイッチトランジスタQ1と第2スイッチトランジスタQ2との双方は、Nチャネル電界効果トランジスタである。トランスBは、第1の一次側巻線N
P1、第2の一次側巻線N
P2、及び、二次側巻線N
Sを含んでいる。二次側巻線N
Sのドット無し端子は、第2スイッチトランジスタQ2のドレインdに接続され、第2スイッチトランジスタQ2のソースsは、第2コンデンサC2の一端と、図におけるV
outの+端である正出力側とに接続されている。二次側巻線N
Sのドット付き端子は、第2コンデンサC2の他端と、図におけるV
outの-端である負出力側とに接続されている。入力直流電源U
DCの正端子+は、第1の一次側巻線N
P1のドット付き端子と、第1ダイオードD1のカソードとの双方に接続され、第1の一次側巻線N
P1のドット無し端子は、第1スイッチトランジスタQ1のドレインdに接続されている。第1ダイオードD1のアノードは、第2の一次側巻線N
P2のドット無し端子に接続され、第1スイッチトランジスタQ1のソースsは、第2の一次側巻線N
P2のドット付き端子に接続され、その接続点は入力直流電源U
DCの負端子-へも接続されている。第1スイッチトランジスタQ1のゲートgは、一次側制御信号へ接続されている。第1の一次側巻線N
P1及び第2の一次側巻線N
P2は、バイファイラー巻きであり、そこには第1コンデンサC1も含まれている。第1コンデンサC1の一端は、第1の一次側巻線N
P1のドット無し端子と接続され、第1コンデンサC1の他端は、第2の一次側巻線N
P2のドット無し端子と接続され、第2スイッチトランジスタQ2のゲートgは、二次側制御信号へ接続されている。二次側制御信号は、正出力と負出力との間の電圧によって制御されるPWM信号である。
【0022】
ドット付き端子:図における巻線に黒点でマークされた端部である。
ドット無し端子:図における巻線に黒点でマークされていない端部である。
一次側制御信号:PWMパルス幅変調信号や、PFMパルス周波数変調信号といったものを含む様々な矩形波である。
二次側制御信号:正出力と負出力との間の電圧によって制御されるPWM信号であり、PWMパルス幅変調信号や、PFMパルス周波数変調信号といったものを含む様々な矩形波の全てが、PWM信号として参照される。
トランスB:第1の一次側巻線NP1及び第2の一次側巻線NP2の磁性コアは、図において点線で接続されており、これは、それらがトランス上で巻かれていること、同じ磁性コアを共有していること、トランスが独立したトランスではないこと、及び、図における描画方法がパターン並びに単純な接続関係を明確にするために使用されているに過ぎないことを示している。
【0023】
図1において、Nチャネル電界効果トランジスタQ1のソースは、第2の一次側巻線N
P2のドット付き端子に接続され、その接続点は入力直流電源U
DCの負端子-へも接続されている。すなわち、電界効果トランジスタQ1のソースは、入力直流電源U
DCの負端子-へ接続されているものの、スイッチング電源の分野では、基本トポロジの動作原理の分析中に不要な要素が取り除かれるので、これは実際の用途には直接的に存在しない。実際の用途では、様々な制御方針を実施するために、電界効果トランジスタのソースが、電流検出抵抗や電流相互インダクタに接続され、平均電流やピーク電流が検出される。電流検出抵抗や電流相互インダクタを介してソースに接続することは、ソースに接続することと等価であり、これは当技術分野では一般的な技術であり、この適用は業界のデフォルト規則に準拠している。電流相互インダクタが使用される場合、電流相互インダクタは、電界効果トランジスタのドレイン、第1の一次側巻線のドット付き端子又はドット無し端子といった、励磁回路内のどこにでも現れる可能性があり、又、電流相互インダクタは、一次側が一巻きであると共に二次側が複数巻きのコイルである従来の磁性コア型相互インダクタに加えて、ホールセンサであってもよい。
【0024】
動作原理:
図1を参照して、第1コンデンサC1(検討の便宜上、本教本の基準に従うと、以降では第1コンデンサC1がコンデンサC1やC1のように呼ばれ、これは他のデバイスにも当てはまり、例えば、入力直流電源が直流電源や電源のように呼ばれる。)が存在しない場合、回路の一次側部分は、三次巻線により消磁されるフライバックスイッチング電源であり、第2の一次側巻線N
P2は、消磁専用の「三次巻線」となる。しかしながら、コンデンサC1が本発明に追加された後は、回路の動作原理が従来技術のそれとは全く異なるものとなる。
【0025】
図1の回路に電源が投入されると、D1は逆バイアスのために動作せず、Q1は一次側制御信号が受信されないため開回路に相当する。そして、直流電源U
DCは、第1の一次側巻線N
P1を介してC1を充電する。同時に、電流は、第2の一次側巻線N
P2を通って、直流電源U
DCの負端子へ戻る。
図1-1に示すように、C1を充電する電流の方向は2つの矢印で示されており、N
P1においてドット付き端子からドット無し端子へと流れる電流、及び、N
P2においてドット無し端子からドット付き端子へと流れる電流である。N
P1及びN
P2はバイファイラー巻きであり、2つの充電電流は大きさが等しく、発生する磁束は反対であって、完全に相殺されている。すなわち、電源投入時に、直流電源U
DCは、トランスBの2つの巻線を介してC1を充電する。2つの巻線は相互インダクタンス効果により相殺され、機能しないので、C1は、N
P1及びN
P2の直流内部抵抗を介して直流電源U
DCと並列に接続されることと等価であり、そしてC
1は、電源フィルタリング及びデカップリングの機能を依然として実行する。
【0026】
時間が経過するにつれて、C1の端部電圧はU
DCの電圧に等しくなり、
図1-2に示されるように、左側が正で右側が負になる。
【0027】
Q1が一次側制御信号を正常に受信する場合、一周期を例にとると、Q1のゲートがハイレベルのとき、Q1は飽和して導通し、その内部抵抗がオン状態の内部抵抗R
ds(ON)と等しくなる。検討の便宜上、この場合は、
図1-3に示すように、配線である直接導通として考えられる。D1は逆バイアス状態にあり、作用に関わっていない。この場合は、
図1-3に符号41、42で示すように、2つの励起電流が発生する。
【0028】
電流41:直流電源UDCの正端子から、第1の一次側巻線NP1のドット付き端子を通って入り、NP1のドット無し端子から出て、Q1のドレインを通って入り、Q1のソースを通って出て、直流電源UDCの負端子へ戻る。
電流42:コンデンサC1の左側の正端子から、Q1のドレインを通って入り、Q1のソースから出て、次に第2の一次側巻線NP2のドット付き端子を通って入り、NP2のドット無し端子を通って出て、コンデンサC1の右側の負端子へ戻る。
【0029】
便宜上、直流電源UDCの負端子は接地と呼ばれる。C1の左側の正端子が、飽和して導通したQ1を介して直流電源UDCの負端子と接続されている、つまり接地されているため、C1の右側の負端子の電圧は、およそ-UDCとなる。この励起過程において、容量不足によりC1の端部電圧が降下する傾向、すなわち、C1の右側の負端子の電圧が上昇する傾向にあり、その絶対値がUDCよりも小さい場合、励起過程では、Q1が飽和して導通し第1の一次側巻線NP1を励磁すると、ドット付き端子が正電圧を誘起すると共に、ドット無し端子が負電圧を誘起し、その大きさはNP1の両端に印加される電圧に等しく、そしてUDCに等しい。この場合、NP1及びNP2はバイファイラー巻きであるため、NP2の両端も誘起し、ドット付き端子が正電圧を誘起すると共に、ドット無し端子が負電圧を誘起し、その大きさはUDCに等しく、その電圧は直接C1を充電する。これはフォワードプロセスであるため、容量不足によってC1の端部電圧が降下することはない。上述したように、電源UDCはトランスBの2つの巻線を介してC1を充電し、2つの巻線は相互インダクタンス効果により相殺されて機能しないため、C1がNP1及びNP2の直流内部抵抗を介して電源UDCと並列に接続されるのと等価であり、電源UDCは、極めて低い直流内部抵抗を用いることでC1へ電気エネルギーを直接補充し、C1の端部電圧が安定して維持される。
【0030】
励起電流41及び42は、平行関係にあることが分かる。NP1及びNP2が、どちらもUDCに等しい同じインダクタンス及び同じ励起電圧を有するため、41と42とは完全に等しくなる。励起過程では、二次側巻線NSも、巻数比に応じた誘起電圧を発生する。誘起電圧は次の通りであり、ドット付き端子が正電圧を誘起すると共に、ドット無し端子が負電圧を誘起し、その大きさはUDCに巻数比nをかけた値に等しく、すなわち、NSは正の下部と負の上部とを有する電圧を誘起する。この電圧は、C2の端部電圧と直列に接続され、Q2の両端に印加される。Q2は逆バイアスであって、伝導されていない。この場合、二次側はゼロ負荷に相当し、出力がない。
【0031】
励起過程において、電流41及び42は、直線的に上向きに増加する。電流の方向は次の通りであり、インダクタにおいて電流がドット付き端子からドット無し端子へと流れる。電磁適合性が使用要件を満たすことを確実にするために、それは配線の間扱い難いものとなる。
図1-3の41及び42を観察すると、41は時計回りの電流方向にあり、42は反時計回りの方向にある。回路基板の配線中に、2つの電流のうちの一方が時計回り方向で、もう一方が反時計回り方向であることが確実にされれば、励起中に発生する磁束を、比較的遠い場所から観察した場合に相殺することができる。この場合、本発明のフライバックスイッチング電源のEMI性能は、非常に良好になる。
【0032】
Q1のゲートがハイレベルからローレベルに変化すると、Q1も飽和して導通した状態から切断状態へ変化する。インダクタにおける電流は、急激には変化しない。この場合はQ1が既に切断されていても、電流41及び42がドット付き端子からドット無し端子へなお流れる。一次側の電流ループが遮断されているため、磁性コア内のエネルギーは、二次側のドット付き端子からドット無し端子へと流れる。
図1-4を参照すると、ドット付き端子からドット無し端子へ流れる電流が、二次側巻線N
Sに現れる。
図1-4に符号43で示すように、電流の初期の大きさ=(Q1の切断時点の41と42との合計)/巻数比nとなる。電流が存在するか否かは、Q2が同期して導通状態にあるか否かに依存する。Q2は、説明の便宜上D2として示される整流ダイオードと置き換えられる。その場合、D2の導通は受動的であり、その導通の全期間はT
Dとして示される。T
Dは変数である。インダクタンス電圧の電圧-時間バランスの法則によれば、Q1の励起時間が変化するとT
Dも変化する。D2の総導通期間T
Dは、仮定の変数である。
【0033】
Q2のゲートgは二次側制御信号に接続され、二次側制御信号は正出力と負出力との間の電圧によって制御されるPWM信号であるため、複数の動作モードが得られる。
【0034】
第1の動作モードでは、Q2及びD2が同期して導通され、動作期間がT
Dに等しい。これは、出力同期整流方式のフライバックスイッチング電源であり、帯域幅は変わらない。このモードは、従来の同期整流動作モードと似ているが、異なる点もある。従来の同期整流では、同期整流管内のボディダイオードが仮想の整流ダイオードD2と同じ方向であるが、本発明では、
図1を参照すると、技術的解決策の接続に従い、Q2のボディダイオードがD2の方向と反対方向にある。
【0035】
第2の動作モードでは、Q2がTD時間においてTDよりも短い時間導通され、Vout電圧によって制御されるスイッチングモードである。出力電圧が標準値より低い場合、次の期間又は数期間後に、Q2の導通時間が増大する。出力電圧が標準値より高い場合、次の期間又は数期間後に、Q2の導通時間が減少する。すなわち、本発明では、特別な回路構成により、一次側がD1を介してロスのない減磁を実現している。このようにして、Q1を過剰励起状態にすることができる。トランスBは、フライバックスイッチング電源においてインダクタとして動作する。Q1はトランスBに蓄えられる十分なエネルギーを有し、Q2の導通のデューティサイクルは、二次側出力電圧Voutによって直接制御することができる。
【0036】
このようにして、極めて短い制御遅延で二次側制御が実行される。二次側制御は、ほとんどリアルタイムモードである。出力電圧が標準値より高い、すなわち負荷が軽くなると、次の期間又は数期間後にQ2の導通時間が短くなる。これにより、出力電圧が低下する。出力電圧が標準値より低い、すなわち負荷が重くなると、次の期間又は数期間後にQ2の導通時間が増大し、Q2は、NSを介してトランスBから出力端へより多くのエネルギーを放出するため、出力電圧が急速に上昇して標準値に達する。
【0037】
すなわち、一次側制御信号のデューティサイクルは、二次側の実際の出力電力のm倍に応じて与えられる。実際の実行では、蓄積されたエネルギーが励起電流の二乗に比例するため、励起電流がデューティサイクルに直線的に比例する。すなわち、mが1.1のとき、実際の蓄積エネルギーは1.1の二乗、つまり1.21である。換言すれば、21%のエネルギーが、出力端の負荷の急激な変化に対処するために確保されている。100%のエネルギーが、出力端の急激な負荷変化、すなわち出力電力の2倍の変化に対処するために確保されている場合、mは約1.41倍であればよく、つまり元のデューティサイクルは0.1である。この場合、(一次側の励磁エネルギー×効率)=同じ期間に二次側が出力するエネルギーである。そして、本発明のデューティサイクルは、0.141に従って機能する必要がある。当然のことながら、mは1より大きい値である。mが2のときその二乗は4であり、蓄積エネルギーが4となり、そして実際の出力は1のみであり、これは300%のエネルギー蓄積を確保することに等しい。
【0038】
更にまた、Q2がT
D時間においてT
Dより短い時間導通され、3つの動作モードも存在する。
1)第1のモードでは、Q2及びT
Dが同期して導通され、その波形図が
図1-5aに示されており、すなわち、出力整流用のスイッチトランジスタQ2は、仮想ダイオードD2と同期して導通するが、予め切断することも可能である。U
gs1はQ1のゲート制御信号であり、i
Q1はQ1のドレイン電流であって、それは励起電流41及び42の合計でもあり、U
gs2はQ2のゲート制御信号であり、i
Q2はQ2のドレイン電流であって、フィルタコンデンサ及び負荷への電源電流でもあり、i
D1はD1の減磁電流であり、そのエネルギーはU
DCによって回収される。i
Q2とi
D1とは、完全な減磁電流を形成する。
【0039】
2)第2のモードでは、Q2がT
Dの途中で導通され、その波形図が
図1-5bに示されており、すなわち、出力整流用のスイッチトランジスタQ2は、仮想ダイオードD2の中程で導通し、遅延して導通するが、予め切断することもできる。U
gs1はQ1のゲート制御信号であり、i
Q1はQ1のドレイン電流であって、それは励起電流41及び42の合計でもあり、U
gs2はQ2のゲート制御信号であり、i
Q2はQ2のドレイン電流であって、フィルタコンデンサ及び負荷への電源電流でもあり、i
D1はD1の減磁電流であって、2つのセグメントに分けられ、そのエネルギーはU
DCによって回収される。i
Q2とi
D1の2つのセグメントとは、完全な減磁電流を形成する。
【0040】
3)第3のモードでは、Q2及びT
Dが同期して終了し、その波形図が
図1-5cに示されており、すなわち、出力整流用のスイッチトランジスタQ2は、仮想ダイオードD2と同期して切断される。U
gs1はQ1のゲート制御信号であり、i
Q1はQ1のドレイン電流であって、それは励起電流41及び42の合計でもあり、U
gs2はQ2のゲート制御信号であり、i
Q2はQ2のドレイン電流であって、フィルタコンデンサ及び負荷への電源電流でもあり、i
D1はD1の減磁電流であり、そのエネルギーはU
DCによって回収される。i
Q2とi
D1とは、完全な減磁電流を形成する。このモードではQ2の電流が比較的小さいため、出力電力は小さく、このモードは軽負荷モードに適している。
【0041】
もちろん、最適な制御を実現するために、上記3つのモードにおける負荷変動に応じて自由に切り替えられる、二次側制御専用のICを設計することも可能である。
【0042】
従来のフライバックスイッチング電源装置の出力端は、一次側巻線の電源が切断されているときにエネルギーを得ているので、この名前が付与されており、出力電圧はループ制御回路に依存し、フライバックトランス(例えば、
図0及び
図1のような直列図におけるトランス)の二次側に対する一次側の巻数比とは無関係である。エネルギー伝達の過程において、トランスBは、電圧変換の機能を実行しないものの、磁性コアのフリーホイーリング機能を実行し、バックブーストコンバータの絶縁型である。従って、トランスBは、フライバックトランスと呼ばれることが多い。
【0043】
本発明では、出力電圧もQ2の二次側制御信号によって制御され、二次側制御信号は、正出力と負出力との間の電圧によって制御されるPWM信号であり、それは実際には非常に特別な二次側制御モードである。ほとんどの場合、Q2の導通はTDよりも短い。負荷電流が急激に大きくなった場合にのみ、TDと全く同じ動作時間を持つことができる。但し、大電流が流れても負荷電流が安定し続けると、一次側のQ1のデューティサイクルが増大し、それでも豊富なエネルギーが二次側へ供給され、負荷が再び急激に変化したときに、エネルギーが迅速に二次側へ放出されることが保証される。
【0044】
一次側巻線及び二次側巻線は、通常はバイファイラー巻きにできないため、必ず漏れインダクタンスがある。一次側巻線の磁化インダクタンスに蓄えられたエネルギーは、Q1が切断された後、トランスBを介して二次側巻線N
S及び出力端へ伝達されるが、漏れインダクタンスのエネルギーは伝達されず、Q1管の両端に過電圧を引き起こしてQ1管を損傷させる。本発明の漏れインダクタンスを消磁するための回路は、D1と第2の二次側巻線N
P2とから成る。この回路は、Q2が事前に切断されていて後に導通されていない場合、同時にQ2を消磁する。その動作原理は、以下の通りである。第1の一次側巻線N
P1及び第2の一次側巻線N
P2はバイファイラー巻きであり、2つの巻線間の漏れインダクタンスはゼロである。Q1が切断された瞬間及びそれ以降は、漏れインダクタンスのエネルギーが二次側へ伝達されず、第2の一次側巻線N
P2における漏れインダクタンスの電気エネルギーの電流方向は、励起中の方向と同じであり、電流はドット付き端子からドット無し端子へ、すなわち、
図1-4における下から上へ流れ、D1がスイッチオンされ、電気エネルギーが直流電源U
DCによって吸収されて、符号44により示される漏れインダクタンス消磁電流を形成する。
【0045】
第1の一次側巻線NP1における漏れインダクタンスの電気エネルギーは、漏れインダクタンスなしで第2の一次側巻線NP2に結合される。消磁がD1で実施されるため、符号44で示される漏れインダクタンス消磁電流も形成される。Q2が事前に切断されて後に導通しない場合の減磁もこれと同様であり、検討は再度行われない。
【0046】
明らかではあるが、出力電圧Voutを巻数比nで割ることで、二次側巻線NSが導通したときに一次側に形成される「反射電圧」が得られる。良好な消磁のためには、反射電圧を直流電源UDCの値よりも大きくすることはできない。このようにすることで、この回路はうまく機能することができる。電流41と42とは同じであるため、第1の一次側巻線と第2の一次側巻線との線径は同じであり、従って巻き上げに好都合である。本明細書に記載される線径が同じであるということは、それらが同じ仕様のリッツワイヤであること、異なる色を有することができること、すなわち、それらが撚り線によって撚られることを含んでいる。識別を容易にするために、リッツ線を含む同じ仕様の線材は、異なる色を有していてもよい。動作周波数が高くなるにつれて、高周波電流がエナメル線の表面をより流れ易くなる。この場合、リッツ線でこの問題を解決できる。確かに、異なる2色のエナメル線が、リッツ線の製造に最初に使用されている。直接巻線を行った後、第1の一次側巻線と第2の一次側巻線とを色分けする、或いは、2つの巻線の線径及び素線数を異ならせることにより、本発明の目的を達成する。
【0047】
この回路には非常に多くのバリエーションがあり、それらを特許請求の範囲で完全に保護することは難しい。例えば、
図1に関して、Q2とN
Sとは直列に接続されているため、それらの位置が入れ替わっても完全に動作可能である。すなわち、
図1の二次側は、
図1-6の二次側整流回路に置き換えられても、本発明の目的が達成される。直列回路での位置の交換は、同等の置き換えと見なされる。
【0048】
図1-6を参照すると、二次側整流回路の他の接続関係は次の通りであり、二次側巻線N
Sのドット無し端子は、第2コンデンサC2の一端に接続されて、図におけるV
outの+端である正出力を形成する。二次側巻線N
Sのドット付き端子は、第2スイッチトランジスタQ2のソースsに接続され、第2スイッチトランジスタQ2のドレインdは、第2コンデンサC2の他端に接続されて、図におけるV
outの-端子である負出力を形成する。これで
図1の二次側整流回路を置き換えることによって、本発明の目的がまた達成される。
【0049】
従来の3巻線吸収フライバックスイッチング電源と比較して、本発明は、主に以下のものを含む多くの違いを有することが分かり、従来の3巻線吸収フライバックスイッチング電源の「三次巻線」は、励起には関与せず、消磁にのみ関与する。本発明では、三次巻線が存在せず、2つの一次側巻線の双方が励起に関与し、消磁については、第2の一次側巻線NP2が漏れインダクタンスの消磁に関与し、これによって漏れインダクタンスエネルギーの無損失吸収を達成している。漏れインダクタンスエネルギーの無損失吸収が実現されるため、一次側及び二次側の漏れインダクタンスが大きくなることが許容され、スイッチング電源の変換効率に影響を与えず、高効率が達成され、本発明では、励磁にも関与する第2の一次側巻線NP2が消磁巻線であり、一次側巻線の電流密度を改善し、スイッチング電源の電力密度を高める。直流電源UDCの供給源は、交流電力の整流後に、電解コンデンサフィルタリング又はバレーフィル回路フィルタリングによって得ることができる。更に、本発明では、トランスBの磁性コアにより多くのエネルギーを供給し、出力の必要に応じて二次側のQ2を整流して、二次側の制御を実現しているため、帯域幅が良好になる。
【0050】
従って、従来技術と比較して、本発明の有益な効果は、一次側巻線と二次側巻線との間の漏れインダクタンスを比較的大きくすることができること、依然として一次側でバイファイラー巻線を使用していること、変換効率が高いこと、EMI性能が良好であること、そして帯域幅が比較的良好であることである。
【0051】
(第2の実施形態)
更に、本発明は、解決策2に対応する、第1の実施形態と同等の解決策を提供する。
図2を参照すると、フライバックスイッチング電源は、トランスB、第1のスイッチトランジスタQ1、第2のスイッチトランジスタQ2、第2コンデンサC2、及び第1ダイオードD1を含み、第1のスイッチトランジスタQ1及び第2のスイッチトランジスタQ2は共にNチャネル電界効果トランジスタであり、トランスBは、第1の一次側巻線N
P1、第2の一次側巻線N
P2、及び二次側巻線N
Sを含んでいる。二次側巻線N
Sのドット無し端子は、第2スイッチトランジスタQ2のドレインdに接続され、第2スイッチトランジスタQ2のソースsは、第2コンデンサC2の一端に接続されて、図におけるV
outの+端である正出力を形成する。二次側巻線N
Sのドット付き端子は、第2コンデンサC2の他端に接続されて、図におけるV
outの-端である負出力を形成する。入力直流電源U
DCの正端子+は、第1スイッチトランジスタQ1のドレインdと、第2の一次側巻線N
P2のドット無し端子との双方に接続され、第1スイッチトランジスタQ1のソースsは、第1の一次側巻線N
P1のドット付き端子に接続される。第2の一次側巻線N
P2のドット付き端子は、第1ダイオードD1のカソードに接続され、第1の一次側巻線N
P1のドット無し端子は、第1ダイオードD1のアノードに接続され、この接続点は入力直流電源U
DCの負端子-にも接続されている。第1スイッチトランジスタQ1のゲートgは、一次側制御信号に接続されている。第1の一次側巻線N
P1及び第2の一次側巻線N
P2は、バイファイラー巻きであり、更に第1コンデンサC1が含まれており、第1コンデンサC1の一端が第1の一次側巻線N
P1のドット付き端子に接続され、第1コンデンサC1の他端が第2の一次側巻線N
P2のドット付き端子に接続され、そして、第2スイッチトランジスタQ2のゲートgは、二次側制御信号に接続されている。二次側制御信号は、正出力と負出力との間の電圧によって制御されるPWM信号である。
【0052】
実際、第2の実施形態は、第1の実施形態と同等の変形であり、第1の実施形態の
図1に基づくと、2つの励磁回路の直列に接続したデバイスの位置を同時に上下で入れ替えており、換言すれば、N
P1とQ1との位置を入れ替え、同時にD1とN
P2との位置も入れ替え、C1は依然として直列に接続された2つのデバイスの接続点の間に接続され、そして第2の実施形態の
図2の回路が獲得される。Q1のソース電圧は可変であるため、この回路はフローティング駆動であり、そのコストは比較的高くなるはずであって、この回路は通常は使用されない。
【0053】
その動作原理の簡単な説明は、以下の通りである。
図2を参照して、回路に電源が投入されると、D1は逆バイアスのために機能せず、Q1は一次側制御信号を受信しないため機能せず、これは開回路と等価であり、直流電源U
DCがN
P2を介してC1を充電する。同時に、電流がN
P1を通って直流電源U
DCの負端子へ戻る。又、電源投入中は、直流電源U
DCがトランスBの2つの巻線を介してC1を充電する。これら2つの巻線は、相互インダクタンス効果のために相殺されて動作せず、これはC1がN
P2及びN
P1の直流内部抵抗を介して直流電源U
DCと並列に接続されていることと同等であり、C1は依然として電源フィルタリング及びデカップリングの機能を実行する。
【0054】
時間が経過すると、C1の端部電圧がUDCの電圧と等しくなり、右側が正で左側が負になる。
Q1が飽和して導通しているとき、その内部抵抗はオン状態の内部抵抗Rds(ON)に等しく、上述したように配線と見なされる。この場合、2つの励起電流が発生する。
【0055】
第1の電流:直流電源UDCの正端子から、Q1のドレインを通って入り、Q1のソースから出て、次に第1の一次側巻線NP1のドット付き端子を通って入り、NP1のドット無し端子を通って出て、そして直流電源UDCの負端子へ戻る。
第2の電流:コンデンサC1の右側の正端子から、第2の一次側巻線NP2のドット付き端子を通って入り、NP2のドット無し端子から出て、Q1のドレインを通って入り、Q1のソースを通って出て、そしてコンデンサC1の左側の負端子へ戻る。
【0056】
便宜上、ここでは直流電源UDCの負端子が接地されていると仮定し、接地として言及する。C1の左側の負端子が、飽和して導通したQ1を介して直流電源UDCの正端子に接続されているため、C1の右側の正端子の電圧は、接地に対してUDCの約2倍である。この励起過程において、C1の端部電圧の容量が足りない場合、すなわちC1の右側の正端子の電圧が降下する傾向にある場合、C1の両端の絶対値はUDCより小さくなり、次に励起過程において、Q1が飽和して導通することで第1の一次側巻線NP1が励磁されると、ドット付き端子が正電圧を誘起すると共に、ドット無し端子が負電圧を誘起し、その大きさはNP1の両端に印加される電圧に等しく、UDCと等しい。この場合、NP1とNP2とがバイファイラー巻きであるため、NP2の両端も誘起し、ドット付き端子が正電圧を誘起すると共に、ドット無し端子が負電圧を誘起し、その大きさがUDCに等しく、この電圧が直接C1を充電する。これはフォワードプロセスであるため、容量不足によってC1の端部電圧が降下することはない。上述したように、直流電源UDCはトランスBの2つの巻線を通してC1を充電し、2つの巻線が相互インダクタンス効果により相殺されて機能しないため、C1がNP1及びNP2の直流内部抵抗を介して直流電源UDCと並列に接続されているのと同等であり、直流電源UDCは、極めて低い直流内部抵抗を用いることによって、C1に電気エネルギーを直接補充し、その端部電圧を安定して維持させる。
【0057】
第1及び第2の励起電流は、平行関係にあることが分かる。NP1及びNP2が、同じインダクタンスと、どちらもUDCに等しい同じ励起電圧とを有するため、2つの電流は完全に等しくなる。励起過程では、二次側巻線NSも、巻数比に応じた誘起電圧を発生する。ドット付き端子が正電圧を誘起すると共に、ドット無し端子が負電圧を誘起し、その大きさがUDCに巻数比nをかけた値に等しくなり、つまり、NSは正の下部と負の上部とを有する電圧を誘起する。この電圧は、C2の端部電圧に直列に接続され、Q2の両端に印加される。Q2は逆バイアスであり、導通していない。この場合、二次側はゼロ負荷に相当し、出力がない。
【0058】
励起過程において、第1及び第2の励起電流は、直線的に上向きに増大する。電流の方向は次の通りであり、インダクタにおいてドット付き端子からドット無し端子へと電流が流れる。
【0059】
Q1が切断されていると、インダクタ内の電流は急激には変化できない。磁性コア内のエネルギーは、二次側でドット付き端子からドット無し端子へ流れ、ドット付き端子からドット無し端子へ流れる電流は、二次側巻線N
Sに現れ、その電流はいつか導通するQ2を用いてコンデンサC2を充電し、V
outは電圧を確立するか、又は継続的にエネルギーを出力し、このプロセスも消磁の部分的なプロセスである。Q2が導通していないときは、減磁電流はD1を介して減磁を実行する。その作業工程は、
図1-5a、
図1-5b、及び
図1-5cと同じである。
【0060】
第2の実施形態は、第1の実施形態の変形であって、動作原理は同等であり、本発明の目的も達成される。Nチャネル電界効果トランジスタを使用する技術的解決策は、Pチャネル電界効果トランジスタを使用することによっても実現することができる。Pチャネル電界効果トランジスタは、低い動作電圧で比較的低コストである。この場合、第1の実施形態に基づいて、電源、ダイオード、及びドット付き端子の極性を反転させる必要があり、出力整流部の極性を反転させる必要がないので、以下のような第3の実施形態が得られる。
【0061】
ここでは、まず、Pチャネル電界効果トランジスタを用いて、二次側整流回路を実現することについて説明する。
図2-1を参照して、二次側整流回路は、第2スイッチトランジスタQ2がPチャネル電界効果トランジスタであり、二次側巻線N
Sのドット無し端子が第2スイッチトランジスタQ2のソースsに接続され、第2スイッチトランジスタQ2のドレインdが第2コンデンサC2の一端に接続されて、図中のV
outの+端である正出力を形成し、二次側巻線N
Sのドット付き端子が第2コンデンサC2の他端に接続されて、図中のV
outの-端である負出力を形成している。
【0062】
例えば、
図2-1に関して、Q2とN
Sとが直列に接続されているため、それらの位置を入れ替えても、それらは完全に動作可能である。直列回路における位置の入れ替えは、次のような二次側整流回路を得るための等価的な置き換えとして考えられる。
【0063】
図2-2を参照すると、二次側整流回路の別の接続関係において、二次側整流回路は、第2スイッチトランジスタQ2がPチャネル電界効果トランジスタであり、二次側巻線N
Sのドット無し端子が第2コンデンサC2の一端に接続されて、図中のV
outの+端である正出力を形成している。二次側巻線N
Sのドット付き端子は第2スイッチトランジスタQ2のドレインdに接続され、第2スイッチトランジスタQ2のソースsが第2コンデンサC2の他端に接続されて、図中のV
outの-端である負出力を形成している。
図1及び
図2の二次側整流回路をそれと置き換えることによっても、本発明の目的が達成される。
【0064】
(第3の実施形態)
図3を参照して、前述した解決策3も同様に、フライバックスイッチング電源は、トランスB、第1スイッチトランジスタQ1、第2スイッチトランジスタQ2、第2コンデンサC2、及び第1ダイオードD1を含み、第1スイッチトランジスタQ1がPチャネル電界効果トランジスタであり、第2スイッチトランジスタQ2がNチャネル電界効果トランジスタであり、トランスBは、第1の一次側巻線N
P1、第2の一次側巻線N
P2、及び二次側巻線N
Sを含んでいる。二次側巻線N
Sのドット無し端子は、第2スイッチトランジスタQ2のドレインdに接続され、第2スイッチトランジスタQ2のソースsは、第2コンデンサC2の一端に接続されて、図中のV
outの+端である正出力を形成している。二次側巻線N
Sのドット付き端子は、第2コンデンサC2の他端に接続されて、図中のV
outの-端である負出力を形成している。入力直流電源U
DCの負端子-は、第1の一次側巻線N
P1のドット無し端子と、第1ダイオードD1のアノードとの双方に接続され、第1の一次側巻線N
P1のドット付き端子は、第1スイッチトランジスタQ1のドレインdに接続される。第1ダイオードD1のカソードは、第2の一次側巻線N
P2のドット付き端子に接続され、第1スイッチトランジスタQ1のソースsは、第2の一次側巻線N
P2のドット無し端子に接続され、その接続点は入力直流電源U
DCの正端子+にも接続されている。第1スイッチトランジスタQ1のゲートgは、一次側制御信号に接続されている。第1の一次側巻線N
P1及び第2の一次側巻線N
P2は、バイファイラー巻きであり、更に第1のコンデンサC1が含まれており、第1コンデンサC1の一端が第1の一次側巻線N
P1のドット付き端子に接続され、第1コンデンサC1の他端が第2の一次側巻線N
P2のドット付き端子に接続され、第2スイッチトランジスタQ2のゲートgが二次側制御信号に接続されている。二次側制御信号は、正出力と負出力との間の電圧によって制御されるPWM信号である。
【0065】
図1と
図3とを比較すると、直流電源U
DCと、ダイオードD1と、第1の一次側巻線N
P1及び第2の一次側巻線N
P2のドット付き端子との極性を反転し、更に第1の実施形態のQ1として、N型トランジスタをP型トランジスタで置き換えることで、第3の実施形態が得られることが分かる。出力整流部の二次側整流回路を変更する必要はなく、そのままにしておくことに留意されたい。確かに、二次側整流回路が
図1-6、
図2-1、及び
図2-2の解決策を使用した場合に、本発明の目的を達成することができる。
図3では、入力直流電源U
DCの正端子が接地され、負電源動作のスイッチング電源に属しており、Pチャネル電界効果トランジスタ自体も負レベルで駆動され、これが的確に適合している。
従って、その動作原理は第1の実施形態と同様であり、ここでは詳細な説明は繰り返さないが、本発明の目的も達成される。
【0066】
(第4の実施形態)
更に、本発明は、第3の実施形態と同等の解決策を提供する。
図4を参照すると、
図4は、解決策2のQ1としてPチャネル電界効果トランジスタを使用した技術的解決策を示している。解決策2に基づくと、電源、ダイオード、及びドット付き端子の極性を逆にする必要があり、出力整流部の極性は逆にする必要がない。その後に解決策4が得られ、フライバックスイッチング電源は、トランスB、第1スイッチトランジスタQ1、第2スイッチトランジスタQ2、第2コンデンサC2、及び第1ダイオードD1を含み、第1スイッチトランジスタQ1がPチャネル電界効果トランジスタであり、第2スイッチトランジスタQ2がNチャネル電界効果トランジスタであり、トランスBは、第1の一次側巻線N
P1、第2の一次側巻線N
P2、及び二次側巻線N
Sを含んでいる。二次側巻線N
Sのドット無し端子は、第2スイッチトランジスタQ2のドレインdに接続され、第2スイッチトランジスタQ2のソースsは、第2コンデンサC2の一端に接続されて、図中のV
outの+端である正出力を形成している。二次側巻線N
Sのドット付き端子は、第2コンデンサC2の他端に接続されて、図中のV
outの-端である負出力を形成している。入力直流電源U
DCの負端子-は、第1スイッチトランジスタQ1のドレインdと、第2の一次側巻線N
P2のドット付き端子との双方に接続され、第1スイッチトランジスタQ1のソースsは、第1の一次側巻線N
P1のドット無し端子と接続される。第2の一次側巻線N
P2のドット無し端子は、第1のダイオードD1のアノードに接続され、第1の一次側巻線N
P1のドット付き端子は、第1のダイオードD1のカソードに接続され、この接続点は入力直流電源U
DCの正端子+にも接続される。第1スイッチトランジスタQ1のゲートgは、一次側制御信号に接続されている。第1の一次側巻線N
P1及び第2の一次側巻線N
P2は、バイファイラー巻きであり、更に第1コンデンサC1が含まれており、第1コンデンサC1の一端が第1の一次側巻線N
P1のドット無し端子に接続され、第1コンデンサC1の他端が第2の一次側巻線N
P2のドット無し端子に接続され、第2スイッチトランジスタQ2のゲートgは、二次側制御信号に接続されている。二次側制御信号は、正出力と負出力との間の電圧によって制御されるPWM信号である。
【0067】
図4の第4の実施形態は、第3の実施形態の変形例であり、第3の実施形態の
図3に基づくと、2つの励磁回路の直列に接続されたデバイスの位置を入れ替えており、換言すれば、N
P1とQ1との位置を入れ替え、同時にD1とN
P2との位置も入れ替え、更に直列に接続された2つの一次側巻線N
P1とN
P2との間に依然としてC1が接続され、そして第4の実施形態の
図4の回路が得られる。Q1のソース電圧は可変であるため、この回路はフローティング駆動であり、そのコストは比較的高いはずであって、この回路は通常は使用されない。
【0068】
図2と
図4とを比較すると、直流電源U
DCと、ダイオードD1と、第1の一次側巻線N
P1及び第2の一次側巻線N
P2のドット付き端子との極性を反転し、更に
図2における第2の実施形態のQ1として、N型トランジスタをP型トランジスタに置き換えることで、第4の実施形態を得られることが分かる。出力整流部の二次側整流回路を変更する必要はなく、そのままであることに留意されたい。確かに、二次側整流回路が
図1-6、
図2-1、及び
図2-2の解決策を使用する場合は、発明の目的を達成することができる。
図4において、入力直流電源U
DCの正端子は接地であり、負電源動作のスイッチング電源に属し、Pチャネル電界効果トランジスタ自体も負レベルで駆動されており、これが的確に適合している。
従って、その動作原理は第2の実施形態の動作原理と同じであり、ここでは詳細を再度説明しないが、本発明の目的も達成される。
【0069】
更に、本発明は大きな利点を有している。二次側に出力の経路が複数ある場合、各経路は出力電圧を使用して整流管Q2a、Q2B、Q2C等を独立して制御するため、各出力の電圧調整率は互いに影響せず、各経路で高精度の出力電圧と良好な帯域幅とが達成される。
【0070】
なお、本発明の一次側回路には、
図1、
図2、
図3、及び
図4の4つの事例が含まれる。二次側整流回路には、
図1、
図2、
図2-1、及び
図2-2の4つの事例が含まれる。一次側回路のいずれか1つと二次側整流回路のいずれか1つとを、任意に選択して組み合わせることができ、それらの全てが本発明の目的を達成することができる。上述していない実施形態については、本明細書において1つずつ詳細に説明していない。
【0071】
上述した説明は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、上記の好ましい実施形態が、本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。当業者にとって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、出力の電圧調整を達成するために制御ループを追加するといった、多くの改善及び修正を行うこともでき、これは明らかに従来技術により得られたものである。別シンボルのスイッチトランジスタQ1の使用、二次側出力へのマルチパス出力の追加、フィルタリングのためのπ型フィルタの使用といった、改善及び修正も、本発明の保護範囲と見なされるべきである。その実施形態は本明細書に記載されておらず、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に従うべきものである。
【符号の説明】
【0072】
B:トランス、Q1:第1スイッチトランジスタ、Q2:第2スイッチトランジスタ、C1:第1コンデンサ、C2:第2コンデンサ、D1:第1ダイオード、NP1:第1の一次側巻線、NP2:第2の一次側巻線、NS:二次側巻線、UDC:入力直流電源