IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィの特許一覧

特許70962653D印刷装置用のプリンタユニット及び方法
<>
  • 特許-3D印刷装置用のプリンタユニット及び方法 図1a
  • 特許-3D印刷装置用のプリンタユニット及び方法 図1b
  • 特許-3D印刷装置用のプリンタユニット及び方法 図1c
  • 特許-3D印刷装置用のプリンタユニット及び方法 図2a
  • 特許-3D印刷装置用のプリンタユニット及び方法 図2b
  • 特許-3D印刷装置用のプリンタユニット及び方法 図2c
  • 特許-3D印刷装置用のプリンタユニット及び方法 図2d
  • 特許-3D印刷装置用のプリンタユニット及び方法 図3
  • 特許-3D印刷装置用のプリンタユニット及び方法 図4
  • 特許-3D印刷装置用のプリンタユニット及び方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】3D印刷装置用のプリンタユニット及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/209 20170101AFI20220628BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20220628BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20220628BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220628BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220628BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220628BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/118
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019550708
(86)(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018055324
(87)【国際公開番号】W WO2018166827
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】17160716.1
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】ケテラレイ ヘンドリク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】サング ぺテル テイン ショエ コング
(72)【発明者】
【氏名】クロエス ハンス
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0271871(US,A1)
【文献】特表2003-502184(JP,A)
【文献】中国実用新案第204955426(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第105711093(CN,A)
【文献】中国実用新案第205467414(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷材料の堆積のための、3D印刷装置用のプリンタユニットであって、
ノズルを含むプリンタヘッドであって、前記ノズルが、前記ノズルに供給される印刷材料の少なくとも1つのフィラメントを、垂直方向に、及び下に存在する材料上に堆積させるように構成されており、
前記プリンタヘッドが、少なくとも1つの弾性手段によって、前記プリンタユニット内に前記垂直方向で弾性的に吊り下げられていることにより、前記印刷材料の堆積の間の、前記プリンタヘッドの垂直移動を可能にし、
平衡状態にある吊り下げ式前記プリンタヘッドが、堆積の前に、前記下に存在する材料の上方に垂直距離で位置決め可能であり、
堆積の間、前記少なくとも1つの弾性手段が、前記下に存在する材料上の前記印刷材料からの、前記ノズルに対する垂直力によって、バイアスされるように構成されており、それにより、前記プリンタヘッドが、前記プリンタヘッドの平衡状態から、前記下に存在する材料からの所望の垂直距離における位置へと移動する、プリンタヘッドを備える、プリンタユニットであって、
前記プリンタユニットは、前記プリンタヘッドの前記垂直移動を少なくとも部分的に妨げるように構成されている、第1のアクチュエータを更に備える、プリンタユニット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの弾性手段が、少なくとも1つのバネを含む、請求項1に記載のプリンタユニット。
【請求項3】
前記弾性手段の力定数を制御するように構成されている、第1の制御ユニットを更に備える、請求項1又は2に記載のプリンタユニット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの弾性手段の力定数が、
前記印刷材料の粘度、
前記下に存在する材料のトポグラフィ、及び
前記印刷材料の前記堆積の流量のうちの少なくとも1つの、関数として決定される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプリンタユニット。
【請求項5】
前記第1のアクチュエータが、前記プリンタヘッドの前記垂直移動を阻止するように構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプリンタユニット。
【請求項6】
前記第1のアクチュエータが、電磁気、油圧、及び空気圧のうちの少なくとも1つによって動作可能である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプリンタユニット。
【請求項7】
前記第1のアクチュエータが、少なくとも1つの減衰手段を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のプリンタユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプリンタユニットと、
前記プリンタユニットを垂直方向に変位させるように構成されている、第2のアクチュエータと、
を備える、3D印刷装置。
【請求項9】
複数の印刷ヘッドを更に備える、請求項8に記載の3D印刷装置。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプリンタユニットと、
水平面内に配置されているビルドプレートと、を備え、
前記ノズルが、前記ビルドプレート上に、印刷材料の1つ以上のフィラメントを堆積させるように構成されている、
3D印刷構成。
【請求項11】
前記ビルドプレートを加熱するように構成されている、少なくとも1つの加熱ユニットを更に備える、請求項10に記載の3D印刷構成。
【請求項12】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプリンタユニットを準備するステップと、
下に存在する材料上に印刷材料を堆積させる前に、平衡位置にある前記吊り下げ式プリンタヘッドを、前記下に存在する材料の上方に垂直距離で位置決めするステップと、
前記ノズルによって、前記下に存在する材料上に、前記ノズルに供給される印刷材料の少なくとも1つのフィラメントを堆積させるステップであって、前記少なくとも1つの弾性手段が、前記下に存在する材料上の前記印刷材料からの、前記ノズルに対する垂直力によって、バイアスされるように構成されており、それにより、前記プリンタヘッドが、前記プリンタヘッドの平衡状態から、前記下に存在する材料からの所望の垂直距離における位置へと移動する、ステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、3D印刷の分野に関する。より具体的には、本発明は、3D印刷装置用のプリンタユニット、及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3D印刷と称される場合もある、付加製造とは、3次元の物体を合成するために使用されるプロセスを指す。3D印刷は、急速に人気が高まりつつあるが、これは、所望の物品を形成するために、組み立て又は成形技術を必要とすることなく、ラピッドプロトタイピングを実行する、その能力のためである。
【0003】
3D印刷装置を使用することにより、物品又は物体は、多くの場合コンピュータモデルによって制御されている、いくつもの印刷ステップにおいて、3次元で構築されてもよい。例えば、物体のスライスされた3Dモデルが提供されてもよく、各スライスは、個別の印刷ステップにおいて、3D印刷装置によって再現される。
【0004】
最も広く使用されている3D印刷プロセスのうちの1つは、融解フィラメント製造(Fused Filament Fabrication;FFF)である。FFFプリンタは、多くの場合、熱可塑性フィラメントを使用し、熱可塑性フィラメントは、その溶融状態でプリンタのノズルから射出される。次に、材料は、一層ずつ定置されて、3次元の物体を作り出す。FFFプリンタは、比較的高速であり、様々な種類の物体を(比較的複雑な構造を有するものであっても)印刷するために使用されることができる。
【0005】
3D印刷の間、下に存在する材料に対する、印刷材料の適正な付着をもたらすこと、並びに、堆積された印刷材料の層が、予測可能な層厚及び層幅を有することが望ましい。結果として、堆積された層は、比較的平滑で均質な表面として提供され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在のFFFプリンタヘッドは、典型的には、堅固に(機械的に/垂直に固定されて)取り付けられていることにより、印刷材料の層の上述の有利な特性を提供することが、困難となっている点に留意されたい。この点を克服するために、一部の先行技術の構成は、関節運動可能なロボットアームを備える構成を提供することによって、印刷の間の多用性の向上を示唆している。しかしながら、これらの種類の構成は、比較的複雑で、及び/又はエラーを起こしがちであり、その結果として、印刷の間に、精度の低下をもたらす恐れがある。
【0007】
それゆえ、予測可能な層厚及び層幅を有する、印刷材料の1つ以上の層を堆積させることにより、比較的平滑で均質な層表面を結果的にもたらすことが可能な、代替的ソリューションが関心の対象となっている。
【0008】
本発明の目的は、上記の問題を軽減して、予測可能な層厚及び層幅を有する、印刷材料の1つ以上の層を堆積させることにより、比較的平滑で均質な層表面を結果的にもたらすことが可能な、プリンタユニット及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的及び他の目的は、独立請求項における特徴を有する、プリンタユニット及び方法を提供することによって達成される。従属請求項において、好ましい実施形態が定義される。
【0010】
それゆえ、本発明の第1の態様によれば、印刷材料の堆積のための、3D印刷装置用のプリンタユニットが提供される。プリンタユニットは、ノズルを含むプリンタヘッドを備える。ノズルは、ノズルに供給される印刷材料の少なくとも1つのフィラメントを、垂直方向に、及び下に存在する材料上に堆積させるように構成されている。プリンタヘッドは、少なくとも1つの弾性手段によって、プリンタユニット内に垂直方向で弾性的に吊り下げられていることにより、印刷材料の堆積の間の、プリンタヘッドの垂直移動を可能にする。平衡状態にある吊り下げ式プリンタヘッドは、堆積の前に、下に存在する材料の上方に垂直距離で位置決め可能である。堆積の間、少なくとも1つの弾性手段は、下に存在する材料上の印刷材料からの、ノズルに対する垂直力によって、バイアスされるように構成されており、それにより、プリンタヘッドは、その平衡状態から、下に存在する材料からの所望の垂直距離における位置へと移動する。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、3D印刷の方法が提供される。方法は、本発明の第1の態様によるプリンタユニットを準備するステップを含む。方法は、下に存在する材料上に印刷材料を堆積させる前に、平衡位置にある吊り下げ式プリンタヘッドを、下に存在する材料の上方に垂直距離で位置決めするステップを更に含む。方法は、ノズルによって、下に存在する材料上に、ノズルに供給される印刷材料の少なくとも1つのフィラメントを堆積させるステップを更に含み、少なくとも1つの弾性手段が、下に存在する材料上の印刷材料からの、ノズルに対する垂直力によって、バイアスされるように構成されており、それにより、プリンタヘッドが、その平衡状態から、下に存在する材料からの所望の垂直距離における位置へと移動する。
【0012】
それゆえ、本発明は、比較的大きい面積にわたって平滑である、均質な表面を生成するべく、印刷材料を堆積させるように構成されている、3D印刷装置用のプリンタユニットを提供するという着想に基づく。ノズルは、垂直方向で弾性的に取り付けられており、この移動の自由度により、ノズルは、下に存在する材料(例えば、ビルドプレート又は以前に堆積された印刷材料)の起伏に追従することが可能となる。それゆえ、本発明は、下に存在する材料が不均一なトポグラフィの場合であっても、ノズルと下に存在する材料との間の距離を、比較的一定に維持してもよく、このことは、印刷材料が、下に存在する材料に付着して、予測された層厚及び層幅を得ることを確実にする。比較的大きい面積を有するビルドプレートは、多くの場合、隆起、波打ちなどの、不規則性を含む恐れがあり、このことは特に、ビルドプレートが加熱される場合に当てはまり得る点に留意されたい。本発明は、それゆえ、下に存在する材料として、ビルドプレート上に堆積される印刷材料が、平滑で均質な層として提供され得るという点で、非常に有利である。
【0013】
現在のFFFプリンタヘッドは、通常は堅固に取り付けられており、例えば、下に存在する材料の非平坦性に追従するために、ノズルが垂直方向に移動する能力を、全く有さない点が理解されるであろう。比較的小さい3D印刷装置及び/又は3D印刷構成に関しては、このことは必ずしも必要ではないが、これは、印刷ベッドアセンブリが小さく、比較的可撓性であることにより、ノズルがビルドプレートに押し当たる際に、ビルドプレートが、ノズルから離れる方向に受動的に屈曲することが可能となるためである。しかしながら、比較的大きい3D印刷装置及び/又は3D印刷構成は、多くの場合、ビルドプレートの著しい重量を考慮するべく、より一層堅固に構築されており、それゆえ、ビルドプレートは、いずれかの起伏がノズルによって衝突される際に、ノズルから離れる方向に屈曲することが必ずしも可能ではない。結果として、得られる表面仕上げは、ノズルからビルドプレートまでの距離が一貫していないことにより、劣悪になる恐れがある。その一方で、本発明は、ノズルが垂直方向で弾性的に取り付けられており、下に存在する材料の起伏にノズルが追従することを可能にして、改善された表面仕上げをもたらすことにより、この問題を克服する。
【0014】
本発明の第1の態様のプリンタユニットの上述の利点はまた、本発明の第2の態様による方法に関しても有効である点が理解されるであろう。
【0015】
本発明のプリンタユニットは、ノズルを含むプリンタヘッドを備える。ノズルは、ノズルに供給される印刷材料の少なくとも1つのフィラメントを、垂直方向に、及び下に存在する材料上に堆積させるように構成されている。用語「下に存在する材料」とは、本明細書では、ビルドプレート(プラットフォーム)、以前に堆積された1つ以上の印刷材料の層などを意味する。
【0016】
プリンタヘッドは、少なくとも1つの弾性手段によって、プリンタユニット内に垂直方向で弾性的に吊り下げられている。用語「弾性的に吊り下げられている」とは、本明細書では、プリンタユニットが、弾性的な方式で、取り付けられること、配置されることなどを意味する。用語「弾性手段」とは、本明細書では、1つ以上のバネ、コイル、ゴムバンド、空気ピストン、磁気デバイス、空気圧/油圧シリンダなどを意味する。
【0017】
平衡状態にある吊り下げ式プリンタヘッドは、堆積の前に、下に存在する材料の上方に垂直距離で位置決め可能である。用語「平衡状態」とは、本明細書では、垂直方向における、吊り下げ式プリンタヘッドの力平衡を意味する。堆積の間、少なくとも1つの弾性手段は、下に存在する材料上の印刷材料からの、ノズルに対する垂直力によって、バイアスされるように構成されており、それにより、プリンタヘッドは、その平衡状態から、下に存在する材料からの所望の垂直距離における位置へと移動する。換言すれば、印刷材料の非ゼロ粘度により、印刷材料は、下に存在する材料に対して下向きの力を加える。更には、印刷材料の力は、バネを垂直方向で上向きにバイアスし、それにより、ノズルを垂直方向で上向きに押す。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの弾性手段は、少なくとも1つのバネを含む。本実施形態は、バネが、下向きに加えられる力を一定に維持し、それにより、ノズルと、下に存在する材料との間に比較的一定の距離を維持する、簡便なやり方を提供するという点で有利である。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、プリンタヘッドは、弾性手段の力定数を制御するように構成されている、第1の制御ユニットを更に含む。それゆえ、第1の制御ユニットは、印刷の間の弾性手段の力定数を適合させてもよい。本実施形態は、第1の制御ユニットが、印刷の間の弾性手段の弾性を効率的に適合させることにより、更に平滑な、及び/又はより均質な、印刷材料の表面に寄与し得るという点で有利である。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの弾性手段の力定数は、印刷材料の粘度、下に存在する材料のトポグラフィ、及び印刷材料の堆積の流量のうちの少なくとも1つの、関数として決定される。換言すれば、弾性手段の力定数は、印刷材料の粘度、下に存在する材料のトポグラフィ、及び印刷材料の堆積の流量のうちの1つ以上に基づいて決定されてもよい。その結果として、力定数は、使用される異なる印刷材料、下に存在する材料の変化、及び/又は堆積の流量を補償し得る。本実施形態は、堆積される層の平滑性が、更に高い程度まで達成され得るという点で有利である。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、プリンタユニットは、プリンタヘッドの垂直移動を少なくとも部分的に妨げるように構成されている、第1のアクチュエータを更に備えてもよい。それゆえ、第1のアクチュエータは、必要とされる場合にプリンタヘッドの垂直移動を制限するように構成されてもよい。更には、本発明の一実施形態によれば、第1のアクチュエータは、プリンタヘッドの垂直移動を阻止するように構成されてもよい。本実施形態は、プリンタヘッドの垂直移動を妨げることによって、又は、移動を阻止することにより垂直移動をオプションにすることによって、プリンタユニットが、印刷の間に、更に一層用途が広くなるという点で有利である。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、第1のアクチュエータは、電磁気、油圧、及び空気圧のうちの少なくとも1つによって動作可能である。更には、第1のアクチュエータは、本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの減衰手段を含んでもよい。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のうちのいずれか1つによるプリンタユニットと、プリンタユニットを垂直方向に変位させるように構成されている第2のアクチュエータとを備える、3D印刷装置が提供され得る。それゆえ、この実施形態では、弾性的に吊り下げられているプリンタヘッドを備えるプリンタユニットは、ステッパモータ又はサーボモータのような、(電動)アクチュエータが更に装備されてもよい。本実施形態は、アクチュエータが、プリンタユニットを垂直に(すなわち、上下に)正確に移動させ得る点で有利である。結果として、プリンタヘッドの高さ位置を能動的に制御する可能性が有効となり、下に存在する材料とノズルとの間の距離が、能動的に制御されてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、3D印刷装置は、複数のプリンタヘッドを更に備えてもよい。用語「複数のプリンタヘッド」とは、本明細書では、3D印刷装置が、装置上に取り付けられている少なくとも2つのプリンタヘッドを有すること、又は、装置上に取り付けられているプリンタヘッドが、別のプリンタヘッドと交換され得ることのいずれかを意味する。プリンタユニットを垂直方向に変位させる第2のアクチュエータの可能性は、複数のプリンタヘッドを備える3D印刷装置に関して特に有用であるが、これは、各プリンタヘッドが、ノズル及び/又はプリンタヘッドに関する独自の個別の平準化較正、並びに/あるいは、ビルドプレートからノズルまでの高さに関する独自の個別の補正を有し得るためである点が理解されるであろう。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、3D印刷構成が提供される。3D印刷構成は、前述の実施形態のうちのいずれか1つによるプリンタユニットと、水平面内に配置されているビルドプレートとを備え、ノズルは、ビルドプレート上に、印刷材料の少なくとも1つのフィラメントを堆積させるように構成されている。隆起、波打ち、突起などの不規則性が、ビルドプレート表面上で頻繁に生じている場合がある点に留意されたい。それゆえ、本発明は、下に存在する材料として、ビルドプレート上に堆積される印刷材料が、平滑で均質な層として提供され得るという点で、それゆえ非常に有利である。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、ビルドプレートを加熱するように構成されている、少なくとも1つの加熱ユニットが設けられてもよい。本実施形態は、加熱ユニットが、ビルドプレート上に堆積された印刷材料の、より良好な付着をもたらすという点で有利である。更には、加熱されたビルドプレートは、加熱されていないビルドプレートと比較して、(不均一な)熱膨張による、平坦性の歪みの影響を受けやすい恐れがあるため、下に存在する材料の起伏にもかかわらず、平滑な層をノズルが提供することを可能にする本発明の可能性は、更に重要性が高いものとなる。
【0027】
以下の詳細な開示、図面、及び添付の請求項を検討することにより、本発明の更なる目的、特徴、及び利点が明らかとなるであろう。当業者は、以下で説明される実施形態以外の実施形態を作り出すために、本発明の種々の特徴が組み合わせられることができる点を理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
次に、本発明のこの態様及び他の態様が、本発明の実施形態を示す添付図面を参照して、より詳細に説明される。
図1a】本発明の例示的実施形態による3D印刷装置用のプリンタユニットの概略図である。
図1b】本発明の例示的実施形態による3D印刷装置用のプリンタユニットの概略図である。
図1c】本発明の例示的実施形態による3D印刷装置用のプリンタユニットの概略図である。
図2a】本発明の例示的実施形態による3D印刷装置用のプリンタユニットの概略図である。
図2b】本発明の例示的実施形態による3D印刷装置用のプリンタユニットの概略図である。
図2c】本発明の例示的実施形態による3D印刷装置用のプリンタユニットの概略図である。
図2d】本発明の例示的実施形態による3D印刷装置用のプリンタユニットの概略図である。
図3】本発明の例示的実施形態による3D印刷装置の概略図である。
図4】本発明の一実施形態による3D印刷構成の概略図である。
図5】本発明の例示的実施形態による方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1aは、3D印刷装置用のプリンタユニット100の概略図を示す。プリンタユニット100は、追加的な要素、特徴などを備え得る点が理解されるであろう。しかしながら、これらは、理解を深めるために図1aでは省略されている。プリンタユニット100は、ノズル110を含むプリンタヘッドを備え、ノズルは、ノズル110に供給される印刷材料の少なくとも1つのフィラメント115を、垂直方向に、及び下に存在する材料上に堆積させるように構成されている。下に存在する材料は、僅かに起伏を有するビルドプレート130として例示されているが、代替的には、(以前に堆積された)印刷材料の少なくとも1つの層を構成してもよい。ビルドプレート130は、ビルドプレート130の曲がりを最小限に抑えるために、通常はビルドプレート130のサイズに比例した数箇所で、支持及び平準化されてもよい点に留意されたい。平準化の後、ある程度の非平坦性が、ビルドプレート130に残っている場合が多い。このことは、ノズル110とビルドプレート130との間の距離の変化を引き起こし、更には、表面の外観の変化を生じさせる場合がある。
【0030】
印刷材料は、テーパ状ノズル110の底部から押し出される。印刷材料の層の比較的平滑な表面を作り出すことが可能となるように、印刷材料の第1の層は、通常、0.1~0.2mmの比較的小さい層厚で印刷される。ノズル110と下に存在する材料130との間の距離は、比較的平滑な表面を作り出すために、良好に制御される必要がある点が理解されるであろう。ノズル110は、ヒータによって加熱されてもよく、それにより、印刷材料が容易に流れることが可能なレベルに、温度が保たれる。図1aでは、印刷材料のフィラメント115の堆積は、左から右への、すなわちx軸に沿った、ノズル110の移動の方向で提供されている。個々のフィラメント115は、プリンタユニット100によって、互いに積み重ねて堆積されてもよく、又はあるいは、フィラメント115が1つ以上の層を構成するように、隣接配置されてもよい点が理解されるであろう。
【0031】
プリンタヘッドは、1つ以上の弾性手段120によって、プリンタユニット100内に垂直方向(z)で弾性的に吊り下げられている。図1aでは、弾性手段は、バネ120として例示されているが、代替的には、他の形態を取ってもよい。弾性手段120は、印刷材料の堆積の間の、プリンタヘッドの垂直移動を可能にする。
【0032】
図1bは、弾性的に吊り下げられているプリンタヘッドが、その平衡状態にあることを示す。ノズル110に対するバネ120の配置は、例示目的のために、及び/又は理解を深めるために、単に例として与えられているに過ぎない点に留意されたい。この場合、プリンタヘッド100からの(負のz方向の)下向きの力Fは、バネ120からの(z方向の)上向きの垂直力Fによって、F+F=0となるように平衡化されている。印刷材料の堆積の前、伸長されている(バイアスされている)バネ120は、長さlを有するが、その一方で、バイアスされていないバネ120の長さは、l<lである。それにより、ノズル110の先端は、下に存在する材料130の上方に、垂直距離Δzで位置決め可能である。バネ120は、圧縮又は延伸された状態で取り付けられることが可能である点が理解されるであろう。
【0033】
図1cは、印刷ユニット100のノズル110からの印刷材料の堆積の間の、プリンタヘッドを示す。バネ120は、下に存在する材料130上の印刷材料からの、ノズル110及び/又はプリンタヘッドに対する上向きの(すなわち、z方向の)垂直力Fによって、F+F+F=0となるように更にバイアスされている。この場合、伸長されている(バイアスされている)バネ120は、長さlを有し、l<lである。力Fは、プリンタヘッドの、その図1bの平衡状態から、下に存在する材料130からのz方向での所望の垂直距離Δzにおける位置への、移動をもたらす。これにより、プリンタヘッドは、下に存在する材料130が起伏を有し、不規則であり、及び/又は非平坦である場合であっても、下に存在する材料130(例えば、ビルドプレート)に簡便に追従して、比較的平滑な印刷材料の表面を作り出してもよい。
【0034】
プリンタユニット100は、弾性手段120の力定数(k)を制御するように構成されている、第1の制御ユニット(図示せず)を備えてもよい。力定数は、印刷材料の粘度の関数として決定されてもよい。それゆえ、印刷材料が、例えば、比較的厚い(高粘度の)場合、又はあるいは、比較的薄い(低粘度の)場合には、それに応じて力定数が決定(設定)されてもよい。更には、力定数は、下に存在する材料130のトポグラフィの関数として決定されてもよい。例えば、下に存在する材料130(例えば、ビルドプレート)が、比較的平坦である場合、又はあるいは、比較的起伏を有し、不規則であり、凹みを有し、損傷を受けているなどの場合には、それに応じて力定数が決定(設定)されてもよい。
【0035】
プリンタユニット100は、弾性手段120に結合されている、(図2b~図2dに例示される)第1のアクチュエータを備えてもよい。第1のアクチュエータは、プリンタヘッドの垂直移動を少なくとも部分的に妨げるように構成されてもよい。例えば、第1のアクチュエータは、プリンタヘッドの垂直移動を(完全に)阻止するように構成されてもよい。第1のアクチュエータは、例えば電磁気及び/又は空気圧によって、動作可能であってもよい点が理解されるであろう。第1のアクチュエータは、1つ以上の減衰手段(例えば、1つ以上のダンパ)を更に含んでもよい。例えば、ダンパは、垂直方向でのプリンタヘッドの負の速度に比例する、力F(図示せず)を生成するように構成されてもよい。
【0036】
図2aは、本発明の例示的実施形態による、プリンタユニット100の概略図である。この場合、印刷材料170は、フィーダ180によってノズル110に供給される。バネの形態の弾性手段120は、キャリッジ185、及びフィーダ180のハウジング190に結合されている。キャリッジ185とハウジング190との間には、垂直方向に移動することが可能な固定具200(例えば、ガイドレール)が設けられている。それゆえ、ノズル110、フィーダ180、及びハウジング190として例示されている、プリンタヘッド105は、バネ120によって、プリンタユニット100内に垂直方向で弾性的に吊り下げられていることにより、印刷材料170の堆積の間の、プリンタヘッド105の垂直移動を可能にする。
【0037】
図2bは、図2aで例示されたものと同様の、プリンタユニット100の概略図である。しかしながら、この場合、第1のアクチュエータ210が、バネ120の一方の端部、及びキャリッジ185に結合されており、すなわち、第1のアクチュエータ210は、バネ120と直列に結合されている。第1のアクチュエータ210は、これにより、プリンタヘッド105の垂直移動を少なくとも部分的に妨げるように構成されている。例えば、第1のアクチュエータ210は、能動インピーダンス制御のための手段を構成してもよい。
【0038】
図2cでは、プリンタユニット100の更に別の概略図が例示される。この場合、第1のアクチュエータ220が、ハウジング190とキャリッジ185との間に結合され、バネ120と並列に結合されている。この例示的実施形態では、第1のアクチュエータ220は、プリンタヘッド105の垂直移動を減衰及び/又は中断させるための、能動ダンパ及び/又は制動機を構成してもよい。
【0039】
図2dは、図2a~図2cで例示されたものと同様の、プリンタユニット100の更に別の概略図である。この場合、キャリッジ185は、ステープルとして形成されており、バネ120が、ステープル形状のキャリッジ185の第1のフランジと、ハウジング190との間に結合され、第1のアクチュエータ230が、ハウジング190と、ステープル形状のキャリッジ185の第2のフランジとの間に結合されている。
【0040】
図3は、本発明の一実施形態による、3D印刷装置300の概略図である。3D印刷装置300は、図1a~図1c及び/又は図2によるプリンタユニット100を備える。更には、3D印刷装置300は、プリンタユニット100を垂直方向(z方向)に変位させるように構成されている、第2のアクチュエータ310を備える。より具体的には、第2のアクチュエータ310は、プッシュロッド320に作用するように構成されているモータを備え、プッシュロッドが次に、プリンタユニット100を下向き又は上向きに移動させてもよい。第2の(電動)アクチュエータ310は、ステッパモータ又はサーボモータであってもよい。図示のような3D印刷装置300は、プリンタユニット100の移動を、垂直方向(すなわち、上下)で正確に制御し得る。結果として、プリンタヘッドの高さ位置を能動的に制御する可能性が有効となり、下に存在する材料とノズル110との間の距離が、能動的に制御されてもよい。
【0041】
図示されていないが、図3の3D印刷装置300は、複数のプリンタヘッド、すなわち、装置上に取り付けられている少なくとも2つのプリンタヘッド、又は交換可能なプリンタヘッドのセットを更に備えてもよい。
【0042】
図4は、本発明の一実施形態による、3D印刷構成400の概略図である。3D印刷構成400は、前述の実施形態のうちのいずれか1つによるプリンタユニットと、水平面内に配置されているビルドプレート130とを備え、ノズル110は、ビルドプレート130上に、印刷材料の1つ以上のフィラメントを堆積させるように構成されている。更には、3D印刷構成400は、ビルドプレート130上に堆積される印刷材料のより良好な付着のために、ビルドプレート130を加熱するように構成されている、(概略的に示される)加熱ユニット410を備える。
【0043】
図5は、本発明の例示的実施形態による方法500の概略図である。方法は、本発明の第1の態様によるプリンタユニットを準備するステップ510を含む。方法は、下に存在する材料上に印刷材料を堆積させる前に、平衡位置にある吊り下げ式プリンタヘッドを、下に存在する材料の上方に位置決めするステップ520を更に含む。方法は、ノズルによって、下に存在する材料上に、ノズルに供給される印刷材料の少なくとも1つのフィラメントを堆積させるステップ530を更に含み、少なくとも1つの弾性手段が、下に存在する材料上の印刷材料からの、ノズルに対する垂直力によって、バイアスされるように構成されており、それにより、プリンタヘッドが、平衡状態から、下に存在する材料からの所望の垂直距離における位置へと移動する。
【0044】
当業者は、本発明が、上述の好ましい実施形態に決して限定されるものではないことを、理解するものである。むしろ、多くの修正形態及び変形形態が、添付の請求項の範囲内で可能である。例えば、図は、本発明の実施形態によるプリンタユニットの、単なる概略図に過ぎないことが理解されるであろう。それゆえ、ノズル110、バネ120などの、プリンタユニット100のいずれの要素/構成要素も、図示及び/又は説明されたものとは異なる寸法、形状、及び/又はサイズを有してもよい。例えば、ノズル110及び/又はバネ120は、図に例示されるものよりも大きくてもよく、又は小さくてもよい。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5