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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】路面情報収集装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/06 20120101AFI20220628BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B60W40/06
B60C19/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019560784
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2018044248
(87)【国際公開番号】W WO2020110304
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】澤藤 和則
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-536638(JP,A)
【文献】特開2008-126942(JP,A)
【文献】特開2017-081380(JP,A)
【文献】特開2007-121274(JP,A)
【文献】特開2018-184157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B60C 1/00 - 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤの内周面に取り付けられる加速度センサにより路面情報を収集する路面情報収集装置において、
前記加速度センサの検出結果を第1サンプリング周期でサンプリングして第1サンプリングデータを取得する第1サンプリング部と、
前記第1サンプリングデータの変化に基づいて前記加速度センサの回転位置を演算する位置演算部と、
前記第1サンプリングデータの変化に基づいて前記タイヤの回転速度を検出する速度演算部と、
前記タイヤの接地部分の裏側位置を含みかつ前記タイヤの回転速度に応じて異なるように予め設定されている第1規定範囲内に、前記加速度センサの回転位置が含まれていることを条件の1つにして作動し、前記加速度センサの検出結果を、前記第1サンプリング周期より短い第2サンプリング周期でサンプリングして、第2サンプリングデータを前記路面情報として取得する第2サンプリング部と、を有する路面情報収集装置。
【請求項2】
前記加速度センサは、複数方向の加速度を検出するための複数の検出軸を有し、
前記第1サンプリング部は、1つの前記検出軸により1方向の加速度のみをサンプリングする一方、前記第2サンプリング部は、前記複数の検出軸により複数方向の加速度をサンプリングする請求項1に記載の路面情報収集装置。
【請求項3】
前記第1サンプリング部にてサンプリングされる加速度の方向は、前記タイヤの回転半径方向か又は前記タイヤの周速方向である請求項2に記載の路面情報収集装置。
【請求項4】
前記加速度センサは、複数方向の加速度を検出するための複数の検出軸を有し、
前記第1サンプリング部は、前記複数の検出軸の全て又は一部複数により複数方向の加速度をサンプリングし、
前記位置演算部は、前記複数方向の加速度のそれぞれの変化に基づいて前記加速度センサの回転位置をそれぞれ演算し、
前記第2サンプリング部は、前記複数方向の加速度のそれぞれの変化に基づく前記加速度センサの回転位置の全てが前記第1規定範囲内に位置していることを条件の1つにして作動し、前記複数の検出軸の全てにより複数方向の加速度をサンプリングする請求項1に記載の路面情報収集装置。
【請求項5】
前記第1サンプリング部にてサンプリングされる加速度の方向は、前記タイヤの回転半径方向と前記タイヤの周速方向との二方向である請求項4に記載の路面情報収集装置。
【請求項6】
記第2サンプリング部は、前記タイヤの回転が停止中でないことを条件の1つにして作動する請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の路面情報収集装置。
【請求項7】
前記タイヤ内の圧力を検出する圧力センサを有し、前記タイヤ内の圧力に基づくタイヤ内情報を前記路面情報と併せて収集する請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の路面情報収集装置。
【請求項8】
前記第1サンプリングデータの変化に基づいて前記車両が走行中か否かを判別する走行判別部を有し、走行中であることを条件にして前記タイヤ内情報が収集される請求項7に記載の路面情報収集装置。
【請求項9】
前記タイヤの回転速度に応じて前記第1サンプリング周期を変更するサンプリング周期決定部を有する請求項1乃至8の何れか1の請求項に記載の路面情報収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両が走行中に路面情報を収集する路面情報収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の路面情報収集装置として、タイヤの内周面に取り付けられる加速度センサを備えて、その加速度センサにて検出される振動や衝撃を路面情報として収集するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-55284号公報(段落[0002],[0003],[0018])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の路面情報収集装置は、電池の消耗が早いため、消費電力を抑えることが可能な技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、車両のタイヤの内周面に取り付けられる加速度センサにより路面情報を収集する路面情報収集装置において、前記加速度センサの検出結果を第1サンプリング周期でサンプリングして第1サンプリングデータを取得する第1サンプリング部と、前記第1サンプリングデータの変化に基づいて前記加速度センサの回転位置を演算する位置演算部と、前記第1サンプリングデータの変化に基づいて前記タイヤの回転速度を検出する速度演算部と、前記タイヤの接地部分の裏側位置を含みかつ前記タイヤの回転速度に応じて異なるように予め設定されている第1規定範囲内に、前記加速度センサの回転位置が含まれていることを条件の1つにして作動し、前記加速度センサの検出結果を、前記第1サンプリング周期より短い第2サンプリング周期でサンプリングして、第2サンプリングデータを前記路面情報として取得する第2サンプリング部と、を有する路面情報収集装置。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の路面情報収集装置の回路図
図2】路面情報収集装置が取り付けられた車両の概念図
図3】加速度センサの検出電圧の変化を示したグラフ
図4】タイヤの角速度と第1サンプリング周期との対応表
図5】サンプリングが行われる位置を示した概念図
図6】路面情報収集装置のブロック図
図7】第2実施形態の路面情報収集装置のブロック図
図8】タイヤの角速度と第1と第2のサンプリング周期との対応表
図9】第3実施形態の路面情報収集装置の回路図
図10】加速度センサの検出電圧の変化を示したグラフ
図11】第4実施形態の路面情報収集装置の回路図
図12】第5実施形態の路面情報収集装置の回路図
図13】路面情報収集装置のブロック図
図14】第6実施形態の路面情報収集装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、図1図6を参照して路面情報収集装置10の実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の路面情報収集装置10は、複数のセンサを制御回路11に接続して備えると共に電源として電池12を有し、全体を樹脂ハウジング(図示せず)でパッケージされている。そして、図2に示すように、路面情報収集装置10は、車両90の各タイヤ92の内周面に固着され、車両本体91に搭載された監視装置93と各路面情報収集装置10とが無線接続される。
【0008】
図1に示すように、制御回路11には、電池12の出力電圧を必要に応じて変圧して各部位に給電する電源回路24が備えられている。なお、電池12に替えて電源としてキャパシタを備えてもよい。また、電池12は、使い切りタイプのものであってもよいし、外部から無線にて充電可能なものであってよい。
【0009】
前述の複数のセンサは、例えば、加速度センサ13と圧力センサ17と温度センサ18とからなる。これらセンサは、検出対象の変化に応じて抵抗値が変化する構造をなし、電源回路24から電圧を受けた状態で使用されて、それぞれの検出対象の大きさに応じた検出電圧を出力する。
【0010】
また、加速度センサ13は、例えば、X軸加速度センサ14,Y軸加速度センサ15,Z軸加速度センサ16を備えた複合タイプであり、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の3方向の加速度をそれぞれ別々に検出することができる。そして、路面情報収集装置10は、タイヤ92の内周面の周方向の任意の1箇所において幅方向中央に配置されると共に、X軸加速度センサ14にてタイヤ92の回転中心C1を向く加速度を検出し、Y軸加速度センサ15にてタイヤ92の周速方向を向く加速度を検出し、さらに、Z軸加速度センサ16にてタイヤ92の回転軸方向の加速度を検出することができるように配置されている。
【0011】
制御回路11は、CPU20,RAM20A,ROM20Bを有する。CPU20の割り込み端子には、インターフェース19Aを介してX軸加速度センサ14の出力が接続されている。そして、車両90が走行することでX軸加速度センサ14が遠心力を受け、その検出電圧が予め設定された基準電圧以上になると、その検出電圧が割り込み信号となり、CPU20が割り込み処理によりROM20Bに記憶された始動用プログラム(図示せず)を実行する。
【0012】
また、始動用プログラムが実行される前迄は、X軸加速度センサ14、インターフェース19A、CPU20以外の部位への電源回路24からの給電は停止されていて、始動用プログラムの実行後にそれら部位に必要に応じて給電が開始される。さらに、CPU20の割り込み端子に割り込み信号が付与されない状態が予め設定された規定時間を超えて継続した場合には、CPU20がROM20Bに記憶されたスリープ用プログラム(図示せず)を実行し、X軸加速度センサ14、インターフェース19A、CPU20以外の部位への電源回路24からの給電が停止される。
【0013】
制御回路11には、第1~第3のA/Dコンバータ21,22,23が備えられている。第1A/Dコンバータ21にはX軸加速度センサ14が接続され、第2A/Dコンバータ22にはX軸加速度センサ14、Y軸加速度センサ15、Z軸加速度センサ16が接続され、さらに、第3A/Dコンバータ23には圧力センサ17と温度センサ18とが接続されている。また、各センサと第1~第3のA/Dコンバータ21,22,23と間にはインターフェース19Bが備えられ、各センサの検出信号が必要に応じて増幅されかつノイズを除去された状態で第1~第3のA/Dコンバータ21,22,23に取り込まれる。そして、第1~第3のA/Dコンバータ21,22,23は各センサの検出電圧をサンプリングして生成したサンプリングデータをバッファ25に出力する。
【0014】
CPU20は、後に詳説するように第1A/Dコンバータ21から出力されるX軸加速度センサ14の出力電圧のサンプリングデータ(以下、これを「第1サンプリングデータ」という)から加速度センサ13の回転位置を演算する。そして、CPU20は、それらの演算結果に基づいて第2A/Dコンバータ21のオン・オフタイミングとを決定する。また、CPU20は、加速度センサ13の回転位置及びタイヤ92の角速度とは無関係に予め設定されたタイミングで第3A/Dコンバータ23をオンオフする。
【0015】
また、CPU20は、第2A/Dコンバータ22からバッファ25に出力される加速度センサ13(X軸加速度センサ14、Y軸加速度センサ15、Z軸加速度センサ16)の検出電圧のサンプリングデータ(以下、これらを「第2サンプリングデータ」という)を、それぞれ例えばFFT処理してスペクトルデータを生成する。そして、CPU20は、スペクトルデータを路面情報として無線回路26に無線出力させる。このとき、無線回路26は、路面情報収集装置10同士を区別するための各路面情報収集装置10毎に識別番号と共に路面情報を無線出力させる。
【0016】
さらに、無線回路26は、第3A/Dコンバータ23からバッファ25に出力される圧力センサ17及び温度センサ18の出力電圧のサンプリングデータ(以下、これらを「第3サンプリングデータ」という)を、タイヤ内情報として前記識別番号と共に無線回路26に無線出力させる。
【0017】
ところで、加速度センサ13にて詳しい路面情報を得るためには、短いサンプリング周期で加速度センサ13の検出結果を多数、サンプリングする必要がある。しかしながら、加速度センサ13の検出結果は、加速度センサ13がタイヤの接地部分の裏側に位置している瞬間にサンプリングされたものだけが路面情報として利用される。このため、加速度センサ13が全回転位置で受ける加速度を、短いサンプリング周期でサンプリングすると、無駄に多くの電力が消費されることになる。これに対し、本実施形態の路面情報収集装置では、以下説明するように、加速度センサ13の検出結果を、第1サンプリング周期とそれより短い第2サンプリング周期とでサンプリングする。そのために、加速度センサ13のX軸加速度センサ14の出力電圧を、第1及び第2の2つのA/Dコンバータ21,22でサンプリングしている。そして、第1A/Dコンバータ21が第1サンプリング周期でサンプリングした第1サンプリングデータの変化に基づいて加速度センサ13の回転位置を演算し、加速度センサ13が、タイヤの接地部分の裏側位置を含む第1規定範囲内に位置していることを条件の1つにして、第2A/Dコンバータ22が第2サンプリング周期で加速度センサ13の検出結果をサンプリングする構成になっている。
【0018】
具体的には、路面情報収集装置10が起動された直後は、第1A/Dコンバータ21は、初期設定の第1サンプリング周期でX軸加速度センサ14の出力電圧をサンプリングする。ここで、例えば、タイヤ92が極めて低い一定速度で回転し、遠心力を「0」と見なすことができるとすると、図3(A)に示すように、横軸を[時間]、縦軸を第1サンプリングデータの値としたグラフは正弦波を描く。このときのグラフの最大と最小のピーク値の差分が、遠心力に相当し、この場合は当然[0]になる。
【0019】
これに対し、タイヤ92の回転速度が上がり、遠心力Fが無視することができな大きさになると、前記グラフは、図3(B)に示すように、正弦波を遠心力F分だけ縦軸方向にオフセットさせた脈波となり、そのオフセットの値が遠心力Fの値となる。これを利用して、CPU20は、第1サンプリングデータから遠心力Fを求め、その遠心力Fから一般的な物理の公式に基づいて角速度ωを演算する。なお、ROM20Bには、加速度センサ13の各軸で検出される遠心力Fを、回転中心方向を向いた加速度αに換算する定数と、タイヤ92の回転中心C1から加速度センサ13までの距離である回転半径r1とが記憶されていている。
【0020】
ところで、タイヤ92の回転速度に拘わらず同じ第1サンプリング周期で第1A/Dコンバータ21がX軸加速度センサ14の出力電圧をサンプリングしていると、タイヤ92が1回転する間にサンプリングされるサンプリングデータの数が大きく変わることになり、高速時には路面情報収集装置10の正確な回転位置の検出が困難になる一方、低速時には必要以上にサンプリングデータが取得されて無駄に電力が使用されることになる。
【0021】
そこで、本実施形態の路面情報収集装置10では、CPU20が、タイヤ92の角速度ωに応じて第1A/Dコンバータ21の第1サンプリング周期を変更する制御を行っている。即ち、図4に示すように、タイヤ92の角速度ωの大きさは、複数の段階に分割し、何れの段階でも、タイヤ92が1回転する間に、予め設定された基準回数に近い回数のサンプリングが行われるように角速度ωの段階毎に第1サンプリング周期S1が定められている。同図4に示された例では、基準回数が24に設定され、タイヤ92に1回転する間に、24回以降かつ24回に近い回数のサンプリングが行われるように第1サンプリング周期S1が設定されている。
【0022】
なお、図4の上から2欄目と3欄目とには、タイヤ92の外径が35[cm]である場合の車速と、タイヤ92の1回転の周期T1が参考の値として表示されている。
【0023】
図5には、タイヤ92と共に回転する加速度センサ13の円軌跡Rが概念的に描かれ、第1A/Dコンバータ21がサンプリングを行った位置の一例が、円軌跡R上に「○」として示されている。このようにタイヤ92が1回転する間に略基準回数のサンプリングが行われることで加速度センサ13の回転位置を検出することができる程度の第1サンプリングデータを取得することができる。
【0024】
ここで、例えば、タイヤ92の回転中心C1に対して車両90の水平前方となる位置を原点P0とし、その原点P0に対し、車両90が前進してタイヤ92が回転する方向(即ち、図2,5の反時計回り方向)の回転角θを加速度センサ13の回転位置とすると、CPU20は、第1サンプリングデータから加速度センサ13の回転位置を、例えば以下のようにして演算する。即ち、CPU20は、前述したように第1サンプリングデータから遠心力Fを求め、角速度ωを演算する。また、第1サンプリングデータの値が遠心力Fより大きな値から遠心力Fより小さい値に変化するポイントを原点P0として求める。そして、角速度ωを積分して原点P0からの回転角を加速度センサ13の回転位置として演算する。
【0025】
また、加速度センサ13は、原点P0から1/4周期(即ち、2π/4)だけ進んだ回転位置でタイヤ92の接地部分の真裏に位置する。これに対し、加速度センサ13がタイヤ92の接地部分の真裏となる回転位置から原点P0側とその反対側とにそれぞれ一定の余裕角θmだけオフセットした回転位置が、サンプリング開始位置P1とサンプリング終了位置P2としてROM20Bに記憶されている。具体的には、本実施形態では、余裕角θmが例えば2π/24(=15°)に設定され、サンプリング開始位置P1が46π/24に設定されると共にサンプリング終了位置P2が50π/24に設定されている。
【0026】
そして、CPU20は、加速度センサ13が、サンプリング開始位置P1からサンプリング終了位置P2までの間の第1規定範囲L1内に位置していることを条件の1つにして第2A/Dコンバータ22をオンして、第2サンプリング周期S2でX軸加速度センサ14,Y軸加速度センサ15,Z軸加速度センサ16の出力電圧をサンプリングして、前述の如く第2サンプリングデータを生成してバッファ25に取り込む。第2A/Dコンバータ22をオンする他の条件として、例えば「第2A/Dコンバータ22によるサンプリングを行ってからタイヤ92が10回転以上回転していること」や「第1サンプリングデータが基準値以上に大きくなったこと」等が挙げられる。
【0027】
第2サンプリング周期S2は、第1サンプリング周期S1に比べて極めて短い値に設定されている。具体的には、第2サンプリング周期S2は、例えば、第2サンプリングデータのデータ数がFFT処理を行うことが可能な数になる一定の値(例えば、1.0×10 -6[s])に設定されている。
【0028】
なお、図4の最下欄には、タイヤ92の角速度の各段階毎に、第1規定範囲L1内で取得可能な、X軸加速度センサ14,Y軸加速度センサ15及びZ軸加速度センサ16のそれぞれのサンプルデータ数N1が示されている。また、図5には、前述の加速度センサ13の円軌跡Rの上に、第2A/Dコンバータ22がサンプリングを行った位置が概念的に縦線「|」として示されている。同図に示すように、「|」同士の間隔は、第1A/Dコンバータ21がサンプリングを行った位置である「○」同士の間隔に比べて極めて短くなる。
【0029】
CPU20が以上の制御を行うことで、路面情報収集装置10全体は、図6のブロック図で示した構成として機能する。即ち、図6のオンオフ制御部38は、電源回路24と前述の始動用プログラム及びスリープ用プログラムを実行しているCPU20とを含んで構成され、節電のために、各部位への給電をオンオフ制御する。また、第1サンプリング部31は、インターフェース19A,19Bと第1A/Dコンバータ21とその第1A/Dコンバータ21を制御しているCPU20とを含んで構成され、第2サンプリング部32は、インターフェース19Bと第2A/Dコンバータ22とその第2A/Dコンバータ22を制御しているCPU20とを含んで構成され、第3サンプリング部33は、インターフェース19Bと第3A/Dコンバータ23とその第3A/Dコンバータ23を制御しているCPU20とを含んで構成される。
【0030】
速度演算部34は、タイヤ92の角速度ωと演算しているときのCPU20を含んで構成され、位置演算部35は、加速度センサ13の回転位置を演算しているときのCPU20を含んで構成される。さらに、サンプリング制御部36は、加速度センサ13の回転位置がサンプリング開始位置P1及びサンプリング終了位置P2になったときに第2A/Dコンバータ22をオンオフするCPU20と、予め設定されたタイミングに基づいて第3A/Dコンバータ23をオンオフするCPU20とを含んで構成される。さらに、サンプリング周期決定部37は、図4に示すように、タイヤ92の角速度ωと第1サンプリング周期とを対応させたデータテーブルと、そのデータテーブルと速度演算部34にて求めたタイヤ92の角速度ωとから第1サンプリング周期を決定するCPU20とを含んで構成されている。また、FFT処理部39は、第2サンプリングデータをFFT処理しているときのCPU20を含んで構成され、無線出力部40は、無線回路26とその無線回路26にデータを無線送信させるCPU20とを含んで構成されている。
【0031】
なお、本実施形態では、汎用プロセッサであるCPU20が始動用プログラム及びスリープ用プログラムを実行することで、速度演算部34等の一部が構成されているが、CPU20等の汎用プロセッサの代わりに、DSP(Digital Signal Processo)等を設けてもよいし、ASIC(Application Specific Integrateed Circuit)等の専用回路を設けてもよい。また、本実施形態では、始動用プログラム及びスリープ用プログラム及びデータテーブルがROM20Bに記憶されていたが、RAM又はそれ以外の記憶媒体に記憶されていてもよく、さらには、RAM,ROMを含む複数種類の記憶媒体を組み合わせたものに記憶されていてもよい。
【0032】
本実施形態の路面情報収集装置10の構成に関する説明は以上である。上述したように本実施形態の路面情報収集装置10では、加速度センサ13が受ける加速度を、第1サンプリング周期S1とそれより短い第2サンプリング周期S2とでサンプリングする。そして、第1サンプリング周期S1でサンプリングした第1サンプリングデータの変化に基づいて加速度センサ13の回転位置を演算し、加速度センサ13が、タイヤ92の接地部分の裏側位置を含む第1規定範囲L1内に位置していることを条件の1つにして、加速度センサ13の検出結果を短い第2サンプリング周期S2でサンプリングして第2サンプリングデータを取得する。これにより、無駄なサンプリングが抑えられ、電力の消費を抑えることができる。また、タイヤ92の回転が停止中でないことを条件の1つにして路面情報とタイヤ内情報とが収集されるので、この点でも電力の消費を抑えることができる。さらに、路面情報を得るための加速度センサ13を加速度センサ13の回転位置の検出にも兼用するので、加速度センサ13の有効利用及び路面情報収集装置10の小型化が図られる。しかも、加速度センサ13は、複数方向の加速度を検出するものであるので、詳細な路面情報を収集することができる。そして、タイヤ92内の圧力に基づくタイヤ内情報を路面情報と併せて収集するので、タイヤ圧やタイヤ内の温度によって加速度センサ13の検出結果が影響を受けることがある場合に、タイヤ内情報を加味して路面状況を正確に解析することができる。
【0033】
[第2実施形態]
本実施形態は、図7図8とに示されている。本実施形態の路面情報収集装置10Aは、タイヤ92の角速度ωに応じてサンプリング周期決定部37が第1と第2のサンプリング周期S1,S2の両方を変更する点が第1実施形態と異なる。具体的には、図8に示すようにタイヤ92の角速度ωが高くなるに従って第2サンプリング周期S2が小さくなるように設定されている。これにより、同図の最下欄に示すように、タイヤ92の角速度ωが大きくなるに従って、第1規定範囲L1内で取得可能なサンプルデータ数N1が大きく減ることを防いでいる。
【0034】
[第3実施形態]
本実施形態は、図9図10とに示されている。本実施形態の路面情報収集装置10Bでは、第1A/Dコンバータ21が、X軸加速度センサ14とY軸加速度センサ15の両方の検出電圧を同じ第1サンプリング周期S1でサンプリングするようになっている。
【0035】
ここで、図10(A)と図10(B)と比較して示すように、略同時にサンプリングしたY軸加速度センサ15の第1サンプリングデータに基づくグラフは、X軸加速度センサ14の第1サンプリングデータに基づくグラフと異なり、遠心力の影響を受けず、加速度センサ13の回転位置に応じて変化する。そこで、本実施形態では、CPU20が位置演算部35(図6参照)として機能するときには、Y軸加速度センサ15の第1サンプリングデータに基づいて加速度センサ13の回転位置を検出するようになっている。
【0036】
具体的には、ROM20Bには、Y軸加速度センサ15の検出電圧と、加速度センサ13の回転位置とを対応させたデータテーブルが記憶されている。そのデータテーブルには、Y軸加速度センサ15の検出電圧が減少中の各検出電圧の値に対する加速度センサ13の回転位置と、Y軸加速度センサ15の検出電圧が増加中の各検出電圧の値に対する加速度センサ13の回転位置とが分けて記憶されている。これに対し、CPU20は、Y軸加速度センサ15の検出電圧の第1サンプリングデータの微分値を演算し、その検出電圧が減少中か増加中かを判別した上で、データテーブルに基づいてY軸加速度センサ15の検出電圧の値から加速度センサ13の回転位置を求めるようになっている。
【0037】
なお、前記第1実施形態のようにX軸加速度センサ14の検出電圧の第1サンプリングデータからも加速度センサ13の回転位置を演算し、X軸加速度センサ14の検出電圧から演算される加速度センサ13の回転位置と、Y軸加速度センサ15の検出電圧から演算される加速度センサ13の回転位置とが、予め設定された許容値の範囲で一致した場合に、何れか一方の回転位置を採用して使用する構成としてもよい。また、原点P0のみをY軸加速度センサ15の検出電圧から求めて、原点P0からの回転角をX軸加速度センサ14の検出電圧の積分によっても求めてもよい。
【0038】
[第4実施形態]
本実施形態の路面情報収集装置10Cは、図11に示されているように、第1A/Dコンバータ21が、Y軸加速度センサ15のみの検出電圧をサンプリングするようになっている。そして、第3実施形態と同様にCPU20が位置演算部35(図6参照)として機能するときにY軸加速度センサ15の第1サンプリングデータに基づいて加速度センサ13の回転位置を検出する。また、CPU20は、速度演算部34、サンプリング周期決定部37(図6参照)として動作せず、第1サンプリング周期は一定の値になっている。
【0039】
[第5実施形態]
本実施形態は、図12図13とに示されている。本実施形態の路面情報収集装置10Dの加速度センサ13は、前述したX軸加速度センサ14のみを備えた構造をなし、タイヤ92の回転中心C1に向いた加速度のみが検出される。また、この路面情報収集装置10Dでは、CPU20が、1つのA/Dコンバータ21Aのサンプリング周期を第1サンプリング周期S1と第2サンプリング周期S2とに切り替えて、図5に示すように、第1規定範囲L1では第2サンプリング周期S2で細かくサンプリングを行う一方、第1規定範囲L1以外では、第1サンプリング周期S1で粗くサンプリングを行う構成になっている。即ち、本実施形態では、図13のブロック図に示された第1サンプリング部31が、第1サンプリング周期S1でサンプリングを行うA/Dコンバータ21Aとそれを制御するCPU20とにを含んで構成され、第2サンプリング部32が、第2サンプリング周期S2でサンプリングを行うA/Dコンバータ21Aとそれを制御するCPU20とにを含んで構成されている。
【0040】
[第6実施形態]
本実施形態は、図14に示されている。本実施形態の路面情報収集装置10Eでは、タイヤ92の角速度ωに応じて異なる補正値を記憶したデータテーブルを有している。そして、サンプリング制御部36は、速度演算部34が検出したタイヤ92の角速度ωに基づいてデータテーブルから補正値を取得し、その補正値を前述のθmに乗じて、タイヤ92の角速度ω毎にサンプリング開始位置P1とサンプリング終了位置P2とを演算する。これにより、タイヤ92の角速度ωが大きくなるに従って第1規定範囲L1が範囲が広くなる制御される。この構成によれば、高速走行時であっても確実にタイヤ92の接地部分の裏側位置に加速度センサ13が位置するときにサンプリングを行うことができると共に、低速走行に無駄なサンプリングを抑えることができる
【0041】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態では、3軸方向の加速度を検出可能なものと、1軸方向の加速度を検出可能なものを例示したが、2軸方向の加速度を検出可能な加速度センサを使用してもよい。
【0042】
(2)前記実施形態の路面情報収集装置10は、圧力センサ17及び温度センサ18とを有していたが、それらの一方又は両方を有していなくもてよい。
【符号の説明】
【0043】
10,10A~10E 各路面情報収集装置
12 電池
13 加速度センサ
14 X軸加速度センサ
15 Y軸加速度センサ
16 Z軸加速度センサ
17 圧力センサ
18 温度センサ
21 第1A/Dコンバータ
22 第2A/Dコンバータ
23 第3A/Dコンバータ
36 サンプリング制御部
37 サンプリング周期決定部
92 タイヤ
L1 第1規定範囲
S1 第1サンプリング周期
S2 第2サンプリング周期
ω 角速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14