(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】ロボットを制御する方法
(51)【国際特許分類】
B25J 9/10 20060101AFI20220628BHJP
G05B 19/4093 20060101ALI20220628BHJP
G05B 19/4097 20060101ALI20220628BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B25J9/10 A
G05B19/4093 H
G05B19/4097 C
G05B19/4155 V
(21)【出願番号】P 2020096739
(22)【出願日】2020-06-03
(62)【分割の表示】P 2015103640の分割
【原出願日】2015-05-21
【審査請求日】2020-06-29
(32)【優先日】2014-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514079114
【氏名又は名称】ファナック アメリカ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】イ サン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】ラクスミ マスナー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シャープ
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-191186(JP,A)
【文献】特開2005-108144(JP,A)
【文献】特開2006-48244(JP,A)
【文献】特開2009-20846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
G05B 19/42 - 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを制御する方法であって、
ユーザープログラムを起動して前記ロボットを第1の連続的なプログラムされた経路に沿って運動させることによって、実際の工具中心点の位置を表す第1軌跡を生成するステップと、
前記第1の連続的なプログラムされた経路と前記第1軌跡との間の経路のずれを演算するステップと、
前記ユーザープログラムを演算された経路のずれの量だけ調節することによって、補正済みのユーザープログラムを生成するステップと、
実際の工具中心点の位置を表す前記第1軌跡をメモリ装置に保存するステップと、
前記補正済みのユーザープログラムを起動して前記ロボットを第2の連続的なプログラムされた経路に沿って運動させることによって、実際の工具中心点の位置を表す第2軌跡を生成するステップと、
前記第1の連続的なプログラムされた経路、前記第1軌跡及び前記第2軌跡を表示するステップと、
ユーザーが前記第2軌跡は満足なものでないと判断した場合に、前記第2軌跡を調節し、調節された前記第2軌跡を表示するステップと、
を含み、
ユーザーが所望の連続的な経路を、前記第2軌跡から、軌跡の外観に基づいて選択するようにした、方法。
【請求項2】
ユーザーが容認可能な所望の連続的な経路を選択するまでに、
前記ユーザープログラムを演算された経路のずれの量だけ調節して補正済みのユーザープログラムを生成するステップと、
前記補正済みのユーザープログラムを起動して前記ロボットを第2の連続的なプログラムされた経路に沿って運動させることによって実際の工具中心点の位置を表す第2軌跡を生成
して表示するステップと、
が前記ユーザーによって繰り返し実行させられることを可能にするステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の連続的なプログラムされた経路は、標準的な幾何学的形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の連続的なプログラムされた経路は、CADデータによって定義されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ユーザープログラムを演算された経路のずれの量だけ調節することは、プロセスの速度、許容誤差、及び向きのうちの1つを自動的に調節している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ロボットを制御する方法であって、
経路学習制御プログラムを実行するロボットコントローラによって、ロボットを第1の連続的なプログラムされた経路に沿って運動させるステップであって、前記ロボットが被加工品に対する動作を実行することなく運動する、ステップと、
前記第1の連続的なプログラムされた経路に沿った前記ロボットの実際の運動を記録するステップと、
ユーザーが前記第1の連続的なプログラムされた経路は満足なものでないと判断した場合に、前記第1の連続的なプログラムされた経路を反復的に調節することによって1つ又は複数の修正済みの連続的なプログラムされた経路を生成するステップと、
前記経路学習制御プログラムを実行する前記ロボットコントローラによって、前記ロボットを前記1つ又は複数の修正済みの連続的なプログラムされた経路に沿って運動させるステップであって、前記ロボットが前記被加工品に対する動作を実行することなく運動する、ステップと、
前記1つ又は複数の修正済みの連続的なプログラムされた経路に沿った前記ロボットの実際の運動を記録するステップと、
前記第1の連続的なプログラムされた経路及び前記1つ又は複数の修正済みの連続的なプログラムされた経路に沿った前記ロボットの記録済みの実際の運動の複数の軌跡を表示するステップと、
前記1つ又は複数の修正済みの連続的なプログラムされた経路の複数の軌跡のうちの1つを、前記軌跡の外観に基づいてユーザーが所望の連続的な経路として選択できるようにするステップと、
前記ロボットコントローラによって前記ロボットを前記所望の連続的な経路に沿って運動させるステップであって、前記ロボットが前記被加工品に対する前記動作を実行しながら運動する、ステップと、を含む方法。
【請求項7】
前記第1の連続的なプログラムされた経路は、標準的な幾何学的形状である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の連続的なプログラムされた経路は、CADデータによって定義されている、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
表示される軌跡の少なくとも1つは、所望の連続的な経路を更に含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の連続的なプログラムされた経路を反復的に調節することは、プロセスの速度、許容誤差、及び向きのうちの1つを自動的に調節している、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してロボットシステムに関し、より具体的にはロボット切削工具の動作のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラマブルコントローラは、複数の保存された制御プログラムに従って、ロボットなどの精巧な産業機器を動作させるものである。それぞれのプログラムが実行されると、プログラマブルコントローラ又はロボットコントローラが、1つ又は複数の検知装置(例えば、位置エンコーダ、温度センサ、又は圧力センサ)からの信号を評価することによって制御対象の機械の状態を検査すると共に、手続型のフレームワーク(procedural framework)、センサ信号、並びに必要に応じて更に複雑な処理に基づいて(例えば、サーボモーターの出力電圧を制御するか又は個々のコンポーネントにエネルギーを供給/遮断することによって)機械を稼働することになる。
【0003】
一般に、プログラマブルコントローラは、従来の要素の集合体によって表されるコンピュータベースの制御ユニットと称される。また、制御ユニットは、処理プログラム、指令位置、及びシステムパラメータのユーザー入力を促進するために1つ又は複数のユーザーインタフェースをサポートしている。このようなユーザーインタフェースは、プログラマが適切なペンダントボタン又はスイッチを起動することによって一連の所望のイベントを通じてロボットをリードすることを可能にする教示ペンダント(TP:Teach Pendant)を含むことがあり、且つ、シミュレーションの実行又は教示ペンダントとの組合せによる実際の試験の実行のために必要な一連の機能的ステップ及び位置的ステップが記述されうるオフラインPCシミュレーション装置を含むことがある。
【0004】
処理プログラムを確立する際には、ロボットとロボットによる作業の対象であるワークとの間の物理的又は幾何学的な関係を確立する必要がある。従来の教示ペンダントシステムを使用して物理的又は幾何学的な座標点をロボットの作業領域(working envelope)内に正確に確立するために、ユーザーは、通常、適切なペンダントボタン又はスイッチを起動することによって、ロボットを手動で操作し、且つ、座標点及び運動を物理的に教示している。基本的に、ユーザーは、教示された位置を確立するために、又は一連のステップを教示するために、ロボットを手動で運動させる必要がある。切削動作に関して言うと、ユーザーは、ロボット切削工具を手動で運動させることによってロボット切削工具に連続的な経路を通過させている。連続的な経路は、標準的な幾何学的形状(例えば、円又は矩形)の形態であってもよいし、CADデータによって定義された形状であってもよい。
【0005】
同様に、プログラム検証(program verification)プログラム及びプログラム修正学習(program touch-up learning)プログラムは、通常、プログラムされたステップを通じてロボットをリードするか又は動かすことをユーザーに要求するものである。このような学習プログラムの使用中は、センサが、ロボットと関連する位置及び運動データを記録している。また、センサは、工具中心点(TCP:Tool Center Point)の実際の位置データだけでなく、所望の位置からの位置変動又は位置ずれも記録している。プログラミング、プログラム検証、及びプログラム修正は、反復的に実行される場合があり、且つ、多大な時間を要する場合がある。
【0006】
但し、このような反復的なシステムは、学習プログラムのプログラムされた精度及びTPの正確な動作に依存している。プログラムされた運動が不正確であったり、切削対象である材料が切削動作の影響を受けたりする場合には、プログラムされた運動からの位置変動又は位置ずれの計測値が既定値以下であったとしても、自動的且つ反復的な位置ずれの補正が、望ましくない切削動作又は容認できない切削動作を結果的にもたらすことがある。
【0007】
ロボットの連続的な経路の改善を反復的に試みることが公知になっている。例えば、ロボットの経路を追跡すると共に、経路の補正用のフィードバックをロボットコントローラに提供するために、外部センサが使用されることがある。但し、これらの外部センサは、ロボットの費用を増大させ、余分な機器を追加し、且つ、その複雑性を増大させる。また、従来の方法は、ロボットの経路を補正するために、加速及び減速のプロファイルのようなコマンドパラメータを調節している。この調節の方法では、補正がプログラムされた曲線に沿って実行されるにすぎないので、柔軟性及び自由度が制限される。最後に、従来の方法は、サーボコマンドの監視及び調節に基づく閉ループサーボ制御を伴うものであった。但し、この方法は、大きなデータ記憶容量、特に、データの維持のためのバッファを必要とするものであり、やはりデータの量がモデルの影響を受けやすくなって好ましくない結果を招来することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、ロボット切削工具の経路学習の視覚化を向上させるための、従来技術の欠点を克服する、システム及び方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、本発明と調和し且つ合致する状況において、ロボットの作業領域内の座標点の視覚化を向上させる方法が見出された。
【0010】
この方法の一実施形態において、ユーザーは、ユーザープログラムを起動してロボットを第1の連続的なプログラムされた経路に沿って運動させることによって、実際のツール中心点の位置を表す第1軌跡を生成している。第1の連続的なプログラムされた経路と第1軌跡との間の経路のずれが演算されている。ユーザープログラムが演算された経路のずれの量だけ調節されることによって、補正済みのユーザープログラムが生成されている。実際のツール中心点の位置を表す第1軌跡が、メモリ装置に保存されている。補正済みのユーザープログラムを起動してロボットを第2の連続的なプログラムされた経路に沿って運動させることによって、実際のツール中心点の位置を表す第2軌跡が生成されている。次いで、第1軌跡及び第2軌跡が表示されている。
【0011】
別の実施形態においては、経路学習制御プログラムを実行するロボットコントローラによって、ロボットを第1の連続的なプログラムされた経路に沿って運動させている。ロボットは、被加工品に対する動作を実行することなく運動している。第1の連続的なプログラムされた経路に沿ったロボットの実際の運動が記録されている。第1の連続的なプログラムされた経路が反復的に調節されることによって、1つ又は複数の修正済みの連続的なプログラムされた経路が生成されている。経路学習制御プログラムを実行するロボットコントローラによって、1つ又は複数の修正済みの連続的なプログラムされた経路に沿ってロボットを運動させている。ロボットは、被加工品に対する動作を実行することなく運動している。1つ又は複数の修正済みの連続的なプログラムされた経路に沿ったロボットの実際の運動が記録されている。第1の連続的なプログラムされた経路及び1つ又は複数の修正済みの連続的なプログラムされた経路に沿ったロボットの記録済みの実際の運動の軌跡が表示されている。ユーザーは、第1のプログラムされた連続的な経路及び1つ又は複数の修正済みの連続的なプログラムされた経路の軌跡のうちの1つを所望の連続的な経路として選択することを許可されている。ロボットは、ロボットコントローラによって、被加工品に対する動作を実行しながら所望の連続的な経路に沿って運動している。
【0012】
本発明の上記の利点が、以下の詳細な説明から、特に、以下の図面に照らして検討することによって、当業者にとり容易に明らかなものとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態によるロボットシステムの描画図である。
【
図2】本発明を内蔵したロボットシステムの概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による経路学習制御のための方法の概略フロー図である。
【
図4】本発明の一実施形態による例示的な切削動作のための反復的な経路学習プログラムのグラフィカル表示である。
【
図5】本発明の一実施形態に従ってユーザーが補正済みの切削経路プログラムを視覚的に選択するのを可能にする例示的な制御画面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明及び添付図面には、本発明の種々の実施形態が記述され図示されている。これらの説明及び図面は、当業者による本発明の実施及び使用を可能にするのに役立つものであり、本発明の範囲をなんらかの方式で制限することを意図したものではない。
【0015】
図1を参照して、多軸ロボットアーム12と、ワーク品目16を切削する切削工具14と、を含むロボット工具10について説明する。非限定的な例として、ワーク品目16は、プラスチック又は金属のシート、管状のフレーム、又はこれらに類似したものであってもよいし、ロボット工具10による作業の対象となるように意図された任意の他の品目であってもよい。ロボット工具10は、ワーク品目16に対して任意の動作を実行しうる。但し、本発明は、連続的な経路に沿って切削動作を実行する切削工具14をロボット工具10が含んでいる特定の用途を有している。切削動作は、標準的な幾何学的形状(例えば、円形又は矩形)の形態で行われてもよいし、コンピュータプログラムによって定義された所望の形状又はパターンで実行されてもよく、例えば、CADデータによって実行されてもよい。
【0016】
図2は、本発明を内蔵したシステム60を示している。システム60は、複数のタイプのデータオブジェクト66を保存するための記憶装置64を有する少なくとも1つのプログラマブルコントローラ62を含んでいる。本明細書において使用されている「コントローラ」は、
記憶装置64上に保存された指令の形態を有するソフトウェア又はソフトウェアプログラムを実行するように構成されたコンピュータプロセッサを含むものとして定義されている。記憶装置64は、任意の適切なメモリタイプ又はその組合せであってよい。また、本明細書において使用されている「記憶装置」は、ソフトウェア又はソフトウェアプログラムのみならず、データセット、表、アルゴリズム、及びその他の情報が保存されうる非一時的(non-transitory)且つ有形のコンピュータ可読の記憶媒体を含むものとして定義されている。コントローラは、ソフトウェア又はソフトウェアプログラムを実行する目的のために記憶装置と電気的に通信しうる。
【0017】
データオブジェクト66のタイプは、限定されないものの、システム変数、ユーザープログラム変数、ユーザーTPプログラム、学習プログラム、エラーログ、システム設定、構成及び現在の状態、及びシステム変数を含んでいる。これらのタイプのデータオブジェクト66は、異なるフォーマットで記述されているだけでなく、異なるプログラミング言語によって記述されている。例えば、フォーマットは、エラーログ、システム変数、及びユーザーTPプログラムによって異なることがある。
【0018】
プログラマブルコントローラ62は、ユーザーがデータ若しくはプログラムをコントローラ62に入力するのを可能にするため、又はその内部に保存されたデータにアクセスするためのユーザーインタフェース68を含みうる。ユーザーインタフェース68は、ユーザー及び教示ペンダント72に対して情報を表示するためのディスプレイ70を含みうる。一実施形態において、ディスプレイ70は、教示ペンダント72の一部として構成されている。
【0019】
プログラマブルコントローラ62は、ロボットコントローラである場合があり、このような場合には、コントローラ62は、様々なタスクを能動的に実行するためにロボット工具10に結合されている。本発明がロボットコントローラに限定されるものではないことを理解されたい。非限定的な例として、プログラマブルコントローラ62は、受動型のコントローラである場合があり、例えば、既定の状態を監視する監視装置である場合がある。センサ74は、ロボット工具10の位置ずれ及び/又は位置変動を監視しており、例えば、軌跡のエラー、経路のずれ、及びこれらに類似したものを監視している。センサ74は、TCP位置を決定するためにエンコーダのフィードバックデータを記録しうる。
【0020】
プログラマブルコントローラ62の動作の監視を支援するために、少なくとも1つのリモートコンピュータ76が、好ましくは、機能的ネットワーク78を介してプログラマブルコントローラ62に結合されている。リモートコンピュータ76は、プログラマブルコントローラ62と同じ室内又は建物内に配置されてもよいし、完全に別個の建物内に配置されてもよい。この完全に別個の建物は、コントローラ62と同一の地理的な領域に配置されてもよいし、そうでなくてもよい。ネットワーク78は、コントローラのローカルネットワーク又は広域ネットワークであってもよいし、装置間の直接的なリンクであってもよい。
【0021】
1つ又は複数の第2ユーザーインタフェース80が、リモートコンピュータ76に結合されている。1つ又は複数の第2ユーザーインタフェース80は、アクセス対象である所望のデータに関する情報を入力するためのシミュレーションコンピュータのようなリモートコンピュータ装置を含みうる。また、リモートコンピュータ76は、プログラマブルコントローラ62とのデータのやり取りを促進するためにユーザーインタフェース80及びネットワーク78と通信するデータ交換促進装置82を含みうる。
【0022】
ロボット工具10のフル稼働に先立って、プログラマブルコントローラ62は、所望の手続型のフレームワークに基づいて動作するように、ユーザーによって適切にプログラムされなければならない。ロボット工具10の動作を適切にプログラムする1つの方法によれば、ユーザーは、ロボット工具10が所望の動作を実行できるように、ワーク品目16に対する動作を、教示ペンダントを使用してプログラマブルコントローラ62に「教示」する必要がある。
図3及び
図4を参照して、例示的なプロセス学習プロセスについて説明する。この学習プロセスによれば、先ず、ステップ110において、ロボット工具10による切削対象であるマスタ形状がユーザーによって定義されている。ステップ110で定義されるマスタ形状は、連続的な経路に沿って切削工具14を運動させることによって実現される、例えば、円形又は矩形のような標準的な幾何学的形状の形態を有することができる。或いは、その代わりに、マスタ形状は、CADデータによって定義されてもよい。ステップ112において、切削工具14を含むロボット工具10は、所望の経路200(
図4)に沿って運動することによって、切削済みのマスタ形状を実現している。具体的には、プログラマブルコントローラ62は、プログラムを実行してロボット工具10を所望の連続的な経路200に沿って運動させることによって、切削済みのマスタ形状を実現している。但し、ステップ112において、ロボット工具10は、ワーク品目16に対しては如何なる動作も実行していない。その代わりに、ステップ112の間に、切削工具14の実際のTCP経路202がエンコーダデータから記録されている。
【0023】
ステップ114において、所望の連続的な経路200と実際のTCP経路202とが比較され、経路のずれが識別される。一実施形態において、経路のずれは、任意の運動ラインのための定義された経路データから隣接するTCP位置までの最短距離のうちの最大値を判定することによって算出されている。別の例として、実際のTCP経路202に沿って与えられた任意の点について、実際のTCP経路202と所望の連続的な経路200との間のオフセットの量を識別するオフセットベクトル204が算出されてもよい。ステップ114で識別されたずれ及び変動は、プログラマブルコントローラ62によって実行される所望の経路プログラムを補正し、それにより補正済みのプログラムを生成するのに使用されうる。また、所望の経路プログラムは、プロセスの速度、許容誤差(tolerance)、向き(orientation)、又はこれらに類似したものに対する変更を実現するために、自動又は手動で調節されてもよい。これらの調節のそれぞれが、補正済みのプログラムによって実現される実際のTCP位置に対して影響を及ぼすことがある。次いで、ステップ116において、補正済みのプログラムが、プログラマブルコントローラ62によって起動されている。先程と同様に、ロボット工具10は、補正済みのプログラムがステップ116で実行されているときには、ワーク品目16に対して如何なる動作も実行していない。その代わりに、補正済みのプログラムが実行されており、第2の実際のTCP経路がエンコーダデータから記録されている。実際のTCP経路は、プロットされ且つ教示ペンダント72若しくはディスプレイ70においてユーザーに表示されるか、又はプロットされ且つ教示ペンダント72及びディスプレイ70の両方においてユーザーに表示される。加えて、ステップ112からのTCP位置208と補正済みの所望の経路200に沿った補正済みのTCP位置210との間の差に相当する経路補正ベクトル206が識別されうる。
【0024】
ステップ118において、ユーザーは実際のTCP経路を検討している。ユーザーの検討は、教示ペンダント72又はディスプレイ70における視覚的な検討、並びに変動及びずれの既定の許容誤差との比較の組合せでありうる。ディスプレイに基づいて又は他の方法で、許容誤差が満足されているとユーザーが視覚的に判定した場合には、ステップ120において、補正済みのプログラムと関連する学習済みのデータが記録される。次いで、ステップ122において、学習済みのデータが製造中に利用されることになる。
【0025】
但し、実際のTCP経路がユーザーにとって満足なものでない場合には、付加的な学習の反復124が行われうる。具体的には、補正済みのプログラムが再度調節されることによって、切削工具14が所望の経路200のより近くを進むことを可能にする修正された補正済みのプログラムが生成されることになる。具体的には、ステップ114が繰り返されることによって、経路のずれが補正されるようにTP教示位置データが調節されることになる。ステップ116が繰り返されることによって、修正された補正済みのプログラムが起動されると共に、エンコーダデータからのTCPプロットが教示ペンダント又は別のディスプレイにグラフィカルに表示されることになり、また、プロットを検討するためにステップ118が繰り返されることによって、ユーザーは修正された補正済みのプログラムを容認又は拒絶できるようになる。許容誤差が満足されるか又はユーザーがプロットを手動で選択するまで、更なる反復が行われることになる。
【0026】
例えば、
図5に示されているように、ユーザーは、切削動作のいくつかの反復300を実行しうる。TP又は別のディスプレイは、反復的な補正済みのプログラムによって指令されたTCPの実際の運動のプロット又は軌跡302を表示しうる。具体的には、それぞれのプロット又は軌跡302は、実際の
TCP経路304のグラフィカルな表示を含みうる。加えて、オーバーレイ軌跡306は、実際のTCP経路304に対する比較のために、所望のTCP経路を表示しうる。反復の都度、ユーザーには、検討及び選択のために、先行する反復のプロット又は軌跡が提供されうることを理解されたい。従って、TP又はプログラマブルコントローラは、ユーザーが生産レベルのプログラムとなる特定の反復を表す軌跡をステップ120で選択するまで、軌跡情報を含むそれぞれの反復と関連するデータを保存している。このように、ユーザーは、TP学習プログラムの以前の反復を再度実行しなくても、TP学習プログラムの以前の反復の際に生成された軌跡の一部又は全部から選択を実行しうる。
【0027】
重要なのは、本発明が、既定の数学的な許容誤差レベルを超えないずれの単純な削除に依存していないということである。その代わりに、プログラムされた経路のそれぞれを所望の経路と比較して視覚的に検討する機会がユーザーに提供されている。更に、ユーザーは、反復的な補正済みプログラムのうちのいずれかによって生成された軌跡のいずれかを、主観的な基準及び客観的な基準の両方に基づいて選択できるようになる。このような選択には、外観のみに基づく選択も含まれる。反復的な補正済みプログラムの視覚的な選択を含む主観的な尺度を利用する機能は、特に、切削動作に適している。その理由は、いくつかの用途においては、数学的なずれよりも、切削された連続的な経路の外観のほうが重要な場合があるからである。更に、視覚的な検査及び主観的な基準によれば、ユーザーは、多大な時間を要する再プログラミングを行う必要なく、或いは、数多くの反復を行う必要なく、不適切に又は不正確にプログラムされた切削動作を補正することができるであろう。最後に、切削動作の適用対象であるいくつかの材料は、切削動作自体の影響を受けうるので、プログラムされた精度の他にも、切削動作に影響を及ぼす材料の運動、収縮、及び延伸等が引き起こされる場合がある。本発明によれば、有利なことに、ユーザーは、学習プログラムのプログラムされた精度を調節してプロセスの速度、向き、又はこれらに類似したものを含む要素を調節できるだけでなく、切削動作に対する任意の調節の効果及び結果的に得られる切削部の外観の任意の変化を視覚的に検討及び検査できるようになる。その結果、切削動作が、速度、精度、及び再現性のみならず、外観についても最適化されうる。
【0028】
本発明の例示の目的のために特定の代表的な実施形態及び詳細について説明してきたが、添付した特許請求の範囲に更に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更が実施されうることが当業者にとって明らかであろう。