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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】タキサン粒子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/337 20060101AFI20220628BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220628BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220628BHJP
   A61J 3/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A61K31/337
A61K9/14
A61K9/10
A61P35/00
A61J3/02
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020146459
(22)【出願日】2020-09-01
(62)【分割の表示】P 2017560744の分割
【原出願日】2016-06-06
(65)【公開番号】P2020203913
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】62/171,060
(32)【優先日】2015-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/171,008
(32)【優先日】2015-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/171,001
(32)【優先日】2015-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509103370
【氏名又は名称】クリティテック・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】バルテゾール,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ファージング,ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】シッテナウアー,ジェイク
(72)【発明者】
【氏名】エスピノーサ,ジャーナ
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,サムエル
(72)【発明者】
【氏名】マクロ―リー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ジュリア,ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,マーク,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】クラップ,ギャリ―,イー.
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-506070(JP,A)
【文献】Journal of Controlled Release,2008年,Vol.125,No.2,pp.96-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00-9/72
A61P 35/00
A61J 3/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パクリタキセル又はドセタキセル粒子を作製する方法であって、
(a)少なくとも1種類の溶媒と、パクリタキセル又はドセタキセルを含む少なくとも1種類の溶質とを含む溶液をノズル注入口に導入し(i)、加圧チャンバを画定する容器の注入口に圧縮流体を導入する(ii)段階と、
(b)前記溶液をノズルオリフィスから前記加圧チャンバ内に移動させて噴霧液滴の出力流を生じさせる段階であって、前記ノズルオリフィスが、前記出力流内に位置する音響エネルギー源から2mm~20mmの位置にあり、前記移動時に、前記音響エネルギー源から10%~100%の振幅を有する音響エネルギーが発生し、前記ノズルオリフィスの直径が20μm~125μmである段階と、
(c)前記噴霧液滴と前記圧縮流体とを接触させて前記噴霧液滴から前記溶媒を枯渇させ、パクリタキセル又はドセタキセル粒子を生じさせる段階と
を含み、段階(a)、(b)および(c)を前記圧縮流体の超臨界温度および圧力下で実施する、方法。
【請求項2】
(d)段階(c)で生じた前記パクリタキセル又はドセタキセル粒子と貧溶媒とを接触させて前記パクリタキセル又はドセタキセル粒子から前記溶媒をさらに枯渇させる段階であって、前記貧溶媒の超臨界温度および圧力下で実施する、段階
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液が前記ノズルを通る流速が、約0.5mL/分~約30mL/分の範囲である、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記音響エネルギー源が、音響ホーン、音響プローブまたは音響プレートのうちの1つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記音響エネルギー源の周波数が約18kH~約22kHzまたは約20kHzである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(e)前記加圧チャンバの出口から複数のパクリタキセル又はドセタキセル粒子を受け取る段階と、
(f)捕集装置内で前記複数のパクリタキセル又はドセタキセル粒子を捕集する段階と
をさらに含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒が、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトニトリルおよびその適切な組合せからなる群より選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記圧縮流体が超臨界二酸化炭素である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記貧溶媒が超臨界二酸化炭素である、請求項2~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物がパクリタキセルであり、前記溶媒がアセトンを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物がドセタキセルであり、前記溶媒がエタノールを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
31.1℃~約60℃、約1071psi(約7384kPa)~約1800psi(約12410kPa)で実施する、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本願は、2015年6月4日に出願された米国仮特許出願第62/171060号、2015年6月4日に出願された米国仮特許出願第62/171001号、および2015年6月4日に出願された米国仮特許出願第62/171008号の優先権を主張するものであり、上記の出願はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
溶解速度は、薬物の吸収およびバイオアベイラビリティの速度および程度を求める際に重要なパラメータとなる。水溶解度が低いことおよびin vivoの溶解性に乏しいことが、多くの薬物のin vivoバイオアベイラビリティの限定要因となっている。このため、in vitroの溶解速度が薬物開発の重要な要素の1つであると考えられており、難溶性薬物の溶解速度を増大させる方法および組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
第一の態様では、本発明は、少なくとも95重量%のタキサンまたはその薬学的に許容される塩を含む粒子を含み、粒子が以下の特徴:
(i)約0.050g/cm3~約0.15g/cm3の平均かさ密度および/または;
(ii)少なくとも18m2/g、20m2/g、25m2/g、30m2/g、32m2/g、34m2/gもしくは35m2/gの比表面積(SSA)
のうちの一方または両方を有する、組成物を提供する。
【0004】
一実施形態では、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、タキサジエン、バッカチンIII、タクスキニンA、ブレビフォリオールおよびタキススピンDまたはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される。別の実施形態では、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセルおよびカバジタキセルまたはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0005】
さらなる実施形態では、タキサンは、パクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩であり、粒子は、約0.050g/cm3~約0.12g/cm3または約0.060g/cm3~約0.11g/cm3の平均かさ密度を有する。パクリタキセル粒子は、少なくとも18m2/g、20m2/g、25m2/g、30m2/g、32m2/g、34m2/gまたは35m2/gの比表面積(SSA)を有し得る。パクリタキセル粒子は、約22m2/g~約40m2/g、25m2/g~約40m2/g、30m2/g~約40m2/gまたは約35m2/g~約40m2/gのSSAを有し得る。パクリタキセル粒子は、約0.060g/cm3~約0.11g/cm3のかさ密度および約22m2/g~約40m2/gのSSAを有し得る。別の実施形態では、パクリタキセルの少なくとも40%(w/w)が、75RPMで稼働するUSP IIのパドル法の装置内で37℃、pH7.0の50%メタノール/50%水((v/v))溶液に30分以内に溶解する。
【0006】
一実施形態では、タキサンはドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩であり、粒子は、約0.050g/cm3~約0.12g/cm3または約0.06g/cm3~約0.1g/cm3の平均かさ密度を有する。ドセタキセル粒子は、少なくとも18m2/g、20m2/g、25m2/g、30m2/g、35m2/g、40m2/gまたは42m2/gのSSAを有し得る。ドセタキセル粒子は、約40m2/g~約50m2/gまたは約43m2/g~約46m2/gのSSAを有し得る。ドセタキセル粒子は、約0.06g/cm3~約0.1g/cm3のかさ密度および約40m2/g~約50m2/gのSSAを有し得る。さらなる実施形態では、ドセタキセルの少なくとも20%(w/w)が、75RPMで稼働するUSP IIのパドル法の装置内で37℃、pH7.0の15%メタノール/85%水(v/v)溶液に30分以内に溶解する。
【0007】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも95重量%のパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩を含む粒子を含み、粒子が少なくとも12m2/gの比表面積(SSA)を有する、組成物を提供する。パクリタキセル粒子は、少なくとも12m2/g、15m2/g、20m2/g、25m2/g、30m2/g、32m2/g、34m2/gまたは35m2/gのSSAを有し得る。一実施形態では、パクリタキセルの少なくとも40%(w/w)が、75RPMで稼働するUSP IIのパドル法の装置内で37℃、pH7.0の50%メタノール/50%水(v/v)溶液に30分以内に溶解する。
【0008】
別の態様では、本発明は、少なくとも95重量%のパクリタキセルを含む粒子を含み、パクリタキセルの少なくとも40%(w/w)が、75RPMで稼働するUSP IIのパドル法の装置内で50%メタノール/50%水(v/v)溶液に30分以内に溶解する、組成物を提供する。本発明はほかにも、少なくとも95重量%のドセタキセルを含み、ドセタキセルの少なくとも20%(w/w)が、75RPMで稼働するUSP IIのパドル法の装置内で37℃、pH7.0の15%メタノール/85%水(v/v)溶液に30分以内に溶解する、組成物を提供する。
【0009】
本発明の組成物は、平均粒子径が約0.4μm~約1.2μmまたは約0.6μm~約1.0μmの粒子を含み得る。粒子は、コートされておらず、ポリマー、タンパク質、ポリエトキシ化ヒマシ油ならびにモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドとポリエチレングリコールのモノエステルおよびジエステルとからなるポリエチレングリコールグリセリドを含まないものであり得る。組成物はさらに、薬学的に許容される水性担体をさらに含む懸濁液に組み込み得る。組成物は、ポリソルベート、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マンニトールおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される1つまたは複数の成分をさらに含み得る。組成物は、化合物を少なくとも96重量%、97重量%、98重量%、99重量%または100重量%含み得る。
【0010】
本発明はさらに、腫瘍を治療する方法であって、腫瘍を有する対象に腫瘍の治療に有効な量の本発明の任意の実施形態または諸実施形態の組合せによる組成物を投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、腫瘍は、乳房腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、骨腫瘍、胃腫瘍および膵臓腫瘍からなる群より選択され得る。別の実施形態では、組成物を腹腔内への灌流またはボーラス投与などによって腹腔内投与する。一実施形態では、腹膜腔から腹水を除去した後に腹腔内投与を開始する。別の実施形態では、対象はヒト対象である。
【0011】
本発明はさらに、化合物粒子を作製する方法であって、
(a)少なくとも1種類の溶媒と、目的化合物を含む少なくとも1種類の溶質とを含む溶液をノズル注入口に導入し(i)、加圧チャンバを画定する容器の注入口に圧縮流体を導入する(ii)段階;
(b)溶液をノズルオリフィスから加圧チャンバ内に移動させて噴霧液滴の出力流を生じさせる段階であって、ノズルオリフィスが、出力流内に位置する音響エネルギー源から2mm~20mmの位置にあり、移動時に、10%~100%の振幅を有する音響エネルギーが音響エネルギー源から発生し、ノズルオリフィスの直径が20μm~125μmである段階;ならびに
(c)噴霧液滴と圧縮流体を接触させて噴霧液滴から溶媒を枯渇させ、化合物粒子を生じさせる段階
を含み、段階(a)、(b)および(c)を圧縮流体の超臨界温度および圧力下で実施する、方法を提供する。
【0012】
一実施形態では、この方法は、
(d)段階(c)で生じた噴霧液滴と貧溶媒とを接触させて化合物粒子から溶媒をさらに枯渇させる段階であって、貧溶媒の超臨界温度および圧力下で実施する段階
をさらに含む。
【0013】
一実施形態では、ノズルを通過する溶液の流速は約0.5mL/分~約30mL/分の範囲である。さらなる実施形態では、音響エネルギー源は、音響ホーン、音響プローブまたは音響プレートのうちの1つを含む。別の実施形態では、音響エネルギー源は、周波数が約18kHx~約22kHzまたは約20kHzである。
【0014】
この方法は、
(e)加圧チャンバの出口から複数の粒子を受け取る段階;および
(f)捕集装置内で複数の粒子を捕集する段階
をさらに含み得る。
【0015】
一実施形態では、化合物はタキサンである。化合物がタキサンである、請求項30~35のいずれか1項の方法。例示的なタキサンとしては、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、タキサジエン、バッカチンIII、タクスキニンA、ブレビフォリオールおよびタキススピンDまたはその薬学的に許容される塩を挙げることができる。特定の実施形態では、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセルおよびカバジタキセルまたはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される。一実施形態では、溶媒は、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトニトリルおよびその適切な組合せからなる群より選択される。種々の実施形態では、圧縮流体および/または貧溶媒は超臨界二酸化炭素であり得る。一実施形態では、化合物はパクリタキセルであり、溶媒はアセトンを含む。別の実施形態では、化合物はドセタキセルであり、溶媒はエタノールを含む。さらなる実施形態では、この方法を31.1℃~約60℃、約1071psi(約7384kPa)~約1800psi(約12410kPa)で実施する。
【0016】
本発明はこのほか、本発明の任意の実施形態または諸実施形態の組合せの方法によって調製される化合物粒子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の例示的パクリタキセル粒子の電子顕微鏡像である。
図2】未加工パクリタキセル粒子の電子顕微鏡像である。
図3】一実施形態例によるノズルアセンブリ例の断面図である。
図4】一実施形態例による別のノズルアセンブリ例の断面図である。
図5】一実施形態例による粒子捕集装置の斜視図である。
図6】一実施形態例による粒子捕集装置の上面図である。
図7】一実施形態例による粒子捕集装置の断面図である。
図8】一実施形態例による粒子捕集装置の別の断面図である。
図9】一実施形態例による粒子捕集装置の別の断面図である。
図10】一実施形態例による支持フレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
引用される参考文献はいずれも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、複数形の指示対象を包含する。本明細書で使用される「および(ならびに」は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、「または(もしくは、あるいは)」と互換的に使用される。本発明の任意の態様の実施形態はいずれも、文脈上そうでないことが明らかでない限り、組み合わせて用いることができる。
【0019】
本明細書で使用される「約」は、記載される数値の±5%を意味する。
【0020】
一態様では、本発明は、少なくとも95重量%のタキサンまたはその薬学的に許容される塩を含む粒子を含み、粒子が以下の特徴:
(i)約0.050g/cm3~約0.15g/cm3の平均かさ密度および/または
(ii)少なくとも18m2/g、20m2/g、25m2/g、30m2/g、32m2/g、34m2/gもしくは35m2/gの比表面積(SSA)
のうちの一方または両方を有する、組成物を提供する。
【0021】
本発明者らは予想外にも、本明細書に記載される新規な粒子作製法を用いて、約0.050g/cm3~約0.15g/cm3の平均かさ密度および/または少なくとも18m2/gの比表面積(SSA)を有する記載のタキサン粒子を含む、組成物を作製することができた。のちの実施例に示すように、タキサン粒子の比表面積を増大させ、かさ密度を減少させることにより、未加工タキサンおよび比較用の粉砕タキサン製品に比して溶解速度が有意に増大する。溶解は固体/液体界面でのみ起こる。このため、比表面積が増大すると、溶解溶媒と接している粒子の表面の分子数が増加することによって溶解速度が増大する。かさ密度は粉末のマクロ構造および粒子間間隙を考慮に入れたものである。かさ密度に関与するパラメータとしては、粒子径分布、粒子の形状および粒子同士の親和性(すなわち、凝集)が挙げられる。かさ密度の小さい粉末ほど溶解速度が速くなる。これは、溶解溶媒が、格子間または粒子間の間隙により容易に浸透することが可能になり、粒子の表面との接触が増えるためである。このため、比表面積の増大およびかさ密度の減少のそれぞれによって、本発明のタキサン粒子の溶解速度が未処理または未加工の原料および比較用の粉砕タキサン製品に比して有意に増大する。これにより、例えば腫瘍治療への本発明のタキサン粒子の使用が大幅に改善される。
【0022】
本明細書で使用される「比表面積」とは、ブルナウアー・エメット・テラー(「BET」)等温式(すなわち、BET SSA)によって測定されるパクリタキセル単位質量当たりのパクリタキセル粒子の総表面積のことである。当業者に理解されるように、「タキサン粒子」には凝集タキサン粒子と非凝集タキサン粒子の両方が含まれる。それは、SSAが1グラム当たりで求められるため、組成物中の凝集タキサン粒子と非凝集タキサン粒子の両方が考慮されるからである。BET比表面積試験法は、米国薬局方および欧州薬局方の両方に記載されている公定書収載の方法の1つである。
【0023】
本明細書で使用されるタキサン粒子のかさ密度とは、組成物中の粒子全体の質量を、メスシリンダーに注入したときにその粒子が占める総体積で割った商のことである。総体積には、粒子の体積、粒子間空隙の体積および内部細孔の体積が含まれる。
【0024】
タキサンとは、タキサジエン核を含み水に極めて難溶性のジテルペノイドの一種のことである。本発明のタキサン粒子は、特に限定されないが、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、タキサジエン、バッカチンIII、タクスキニンA、ブレビフォリオールおよびタキススピンD、その組合せまたはその薬学的に許容される塩を含めた任意の適切なタキサンであり得る。一実施形態では、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセルおよびカバジタキセルまたはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0025】
「タキサン粒子」は、添加された添加剤を含まないタキサンの粒子を指す。タキサン粒子は、タキサンと少なくとも1つの添加された添加剤とを含む粒子である「タキサンを含有する粒子」とは異なるものである。本発明のタキサン粒子は、ポリマー添加剤もロウ添加剤もタンパク質添加剤も含まず、固体の添加剤の中に包埋も含有も封入もカプセル化もされていないものである。ただし、本発明のタキサン粒子は、タキサン調製の過程で通常みられる不純物および副生成物を含有し得る。そうであっても、タキサン粒子はタキサンを少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%含み、このことは、タキサン粒子が実質的に純粋なタキサンからなるか、これより実質的になるものであることを意味する。一実施形態では、タキサン粒子はコーティングされておらず、ポリマー、タンパク質、ポリエトキシ化ヒマシ油ならびにモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドとポリエチレングリコールのモノエステルおよびジエステルとからなるポリエチレングリコールグリセリドを含まない。
【0026】
本発明の組成物は、平均粒子径が約0.2μm~約5μm、約0.4μm~約3μmまたは約0.5μm~約1.4μmの範囲内にある。さらなる実施形態では、組成物は平均粒子径が約0.4μm~約1.2μmである。別の実施形態では、平均粒子径は、約0.4μm~約1.2μmまたは約0.6μm~約1.0μmである。
【0027】
一実施形態では、タキサンはパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩であり、粒子は約0.050g/cm3~約0.12g/cm3の平均かさ密度を有する。別の実施形態では、パクリタキセル粒子は約0.060g/cm3~約0.11g/cm3の平均かさ密度を有する。
【0028】
さらなる実施形態では、タキサンはパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩であり、パクリタキセル粒子は少なくとも18m2/gの比表面積(SSA)を有する。種々のさらなる実施形態では、パクリタキセル粒子は、少なくとも20m2/g、25m2/g、30m2/g、32m2/g、34m2/gまたは35m2/gのSSAを有する。さらなる実施形態では、パクリタキセル粒子は、約22m2/g~約40m2/g、約25m2/g~約40m2/g、約30m2/g~約40m2/gまたは約35m2/g~約40m2/gのSSAを有する。
【0029】
好ましい一実施形態では、パクリタキセル粒子は、約0.050g/cm3~約0.12g/cm3の平均かさ密度および少なくとも30m2/gのSSAを有する。別の好ましい実施形態では、パクリタキセル粒子は、約0.050g/cm3~約0.12g/cm3の平均かさ密度および少なくとも35m2/gのSSAを有する。1つでは、パクリタキセル粒子は、約0.050g/cm3~約0.12g/cm3の平均かさ密度および約30m2/g~約40m2/gのSSAを有する。別の好ましい実施形態では、パクリタキセル粒子は、約0.060g/cm3~約0.11g/cm3の平均かさ密度および約30m2/g~約40m2/gのSSAを有する。別の好ましい実施形態では、パクリタキセル粒子は、約0.060g/cm3~約0.11g/cm3の平均かさ密度および少なくとも30m2/gのSSAを有する。さらなる実施形態では、パクリタキセル粒子は、約0.060g/cm3~約0.11g/cm3の平均かさ密度および少なくとも35m2/gのSSAを有する。上記の種々の実施形態は、のちの実施例に例示されるものである。
【0030】
上記のいずれの種々の実施形態でも、パクリタキセル粒子は、パクリタキセル粒子1個当たり少なくとも4.16×10-13グラムのパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩を含み得る。
【0031】
別の実施形態では、組成物のパクリタキセル粒子中のパクリタキセルの少なくとも40%(w/w)が、75RPMで稼働するUSP IIのパドル法の装置内で、50%メタノール/50%水(v/v)溶液に30分以内に溶解する。pH7を用い、タキサンの溶解度はpHによる影響を受けない。別の実施形態では、37℃で溶解試験を実施する。
【0032】
別の実施形態では、タキサンはドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩であり、ドセタキセル粒子は約0.050g/cm3~約0.12g/cm3の平均かさ密度を有する。さらなる実施形態では、ドセタキセル粒子の平均かさ密度は約0.06g/cm3~約0.1g/cm3である。
【0033】
別の実施形態では、タキサンはドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩であり、ドセタキセル粒子は少なくとも18m2/gのSSAを有する。種々のさらなる実施形態では、ドセタキセル粒子は、少なくとも20m2/g、25m2/g、30m2/g、35m2/g、40m2/gまたは42m2/gのSSAを有する。さらなる実施形態では、ドセタキセル粒子は、約40m2/g~約50m2/gのSSAを有する。別の実施形態では、ドセタキセル粒子は、約43m2/g~約46m2/gのSSAを有する。
【0034】
好ましい一実施形態では、ドセタキセル粒子は、約0.050g/cm3~約0.12g/cm3の平均かさ密度および少なくとも30m2/gのSSAを有する。別の好ましい実施形態では、ドセタキセル粒子は、約0.050g/cm3~約0.12g/cm3の平均かさ密度および少なくとも35m2/gのSSAを有する。さらなる好ましい実施形態では、ドセタキセル粒子は、約0.050g/cm3~約0.12g/cm3の平均かさ密度および少なくとも40m2/gのSSAを有する。好ましい一実施形態では、ドセタキセル粒子は、約0.050g/cm3~約0.12g/cm3の平均かさ密度および約40m2/g~約50m2/gのSSAを有する。別の好ましい実施形態では、ドセタキセル粒子の平均かさ密度は約0.06g/cm3~約0.1g/cm3であり、SSAは約40m2/g~約50m2/gである。上記の種々の実施形態は、のちの実施例に例示されるものである。
【0035】
上記のいずれの種々の実施形態でも、ドセタキセル粒子は、ドセタキセル粒子1個当たり少なくとも4.16×10-13グラムのドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩を含み得る。
【0036】
別の実施形態では、ドセタキセルの少なくとも20%(w/w)が、75RPMで稼働するUSP IIのパドル法の装置内で、15%メタノール/85%水(v/v)溶液に30分以内に溶解する。タキサンの溶解度がpHによる影響を受けない中性pHを用いた。別の実施形態では、37℃で溶解試験を実施する。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも95重量%のパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩を含む粒子を含む組成物であって、粒子の比表面積(SSA)が少なくとも12m2/gである、組成物を提供する。種々の実施形態では、パクリタキセル粒子は、少なくとも12m2/g、13m2/g、14m2/g、15m2/g、16m2/g、17m2/g、18m2/g、19m2/g、20m2/g、21m2/g、22m2/g、23m2/g、24m2/g、25m2/g、26m2/g、27m2/g、28m2/g、29m2/g、30m2/g、31m2/g、32m2/g、33m2/g、34m2/g、35m2/g、36m2/g、37m2/g、38m2/g、39m2/gまたは40m2/gのSSAを有する。種々のさらなる実施形態では、パクリタキセル粒子は、約12m2/g~約40m2/g、約14m2/g~約40m2/g、約15m2/g~約40m2/g、約16m2/g~約40m2/g、約17m2/g~約40m2/g、約18m2/g~約40m2/g、約19m2/g~約40m2/g、約20m2/g~約40m2/g、約22m2/g~約40m2/g、約26m2/g~約40m2/g、約30m2/g~約40m2/g、約20m2/g~約29m2/g、約20m2/g~約28m2/g、約20m2/g~約26.2m2/g、約22m2/g~約29m2/g、約22m2/g~約28m2/g、約22m2/g~約26.2m2/g、約32m2/g~約39m2/g、約32m2/g~約38.5m2/g、約32m2/g~約35m2/g、約35m2/g~約40m2/gおよび約35m2/g~約38.5m2/gのSSAを有する。他の実施形態では、パクリタキセル粒子は、
(a)16m2/g~31m2/gもしくは32m2/g~40m2/g;
(b)16m2/g~30m2/gもしくは32m2/g~40m2/g;
(c)16m2/g~29m2/gもしくは32m2/g~40m2/g;
(d)17m2/g~31m2/gもしくは32m2/g~40m2/g;
(e)17m2/g~30m2/gもしくは32m2/g~40m2/g;
(f)17m2/g~29m2/gもしくは32m2/g~40m2/g;
(g)16m2/g~31m2/gもしくは33m2/g~40m2/g;
(h)16m2/g~30m2/gもしくは33m2/g~40m2/g;
(i)16m2/g~29m2/gもしくは33m2/g~40m2/g;
(j)17m2/g~31m2/gもしくは33m2/g~40m2/g;
(k)17m2/g~30m2/gもしくは33m2/g~40m2/g;
(l)17m2/g~29m2/gもしくは33m2/g~40m2/g;
(m)16m2/g~31m2/gもしくは32m2/g以上;
(h)17m2/g~31m2/gもしくは32m2/g以上;
(i)16m2/g~30m2/gもしくは32m2/g以上;
(j)17m2/g~30m2/gもしくは32m2/g以上;
(k)16m2/g~29m2/gもしくは32m2/g以上;
(l)17m2/g~29m2/gもしくは32m2/g以上;
(m)16m2/g~31m2/gもしくは33m2/g以上;
(n)17m2/g~31m2/gもしくは33m2/g以上;
(o)16m2/g~30m2/gもしくは33m2/g以上;
(p)17m2/g~30m2/gもしくは33m2/g以上;
(q)16m2/g~29m2/gもしくは33m2/g以上;または
(r)17m2/g~29m2/gもしくは33m2/g以上
のSSAを有する。
【0038】
別の実施形態では、組成物のパクリタキセル粒子中のパクリタキセルの少なくとも40%(w/w)が、75RPMで稼働するUSP IIのパドル法の装置内で、50%メタノール/50%水(v/v)溶液に30分以内に溶解する。pH7を用い、タキサンの溶解度はpHによる影響を受けない。別の実施形態では、37℃で溶解試験を実施する。
【0039】
別の態様では、本発明は、少なくとも95重量%のパクリタキセルを含む粒子を含み、パクリタキセルの少なくとも40%(w/w)が、75RPMで稼働するUSP IIのパドル法の装置内で、50%メタノール/50%水(v/v)溶液に30分以内に溶解する、組成物を提供する。pH7を用い、タキサンの溶解度はpHによる影響を受けない。別の実施形態では、37℃で溶解試験を実施する。
【0040】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも95重量%のドセタキセルを含み、ドセタキセルの少なくとも20%(w/w)が、75RPMで稼働するUSP IIのパドル法の装置内で、15%メタノール/85%水(v/v)溶液に30分以内に溶解する、組成物を提供する。pH7を用い、タキサンの溶解度はpHによる影響を受けない。別の実施形態では、37℃で溶解試験を実施する。
【0041】
さらなる実施形態では、組成物は、薬学的に許容される水性担体をさらに含む、懸濁液を含む。本発明の懸濁液は、タキサン粒子と液体担体とを含む。液体担体は水性であり得る。懸濁液は、パクリタキセルが含まれる固体添加剤を含まず、GELUCIRE(登録商標)(モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドとポリエチレングリコールのモノエステルおよびジエステルとからなるポリエチレングリコールグリセリド)およびクレモフォール(登録商標)(ポリエトキシ化ヒマシ油)を含まない。
【0042】
パクリタキセル粒子は、添加された添加剤を含まないが、懸濁液の液体担体は、水のほか任意選択で、緩衝剤、浸透圧調整剤、保存剤、粘滑剤、粘度調整剤、浸透圧剤、界面活性剤、抗酸化剤、アルカリ化剤、酸性化剤、消泡剤および着色剤からなる群より選択される1つまたは複数の添加剤を含み得る。例えば、懸濁液は、タキサン粒子と、水と、緩衝剤と、塩とを含み得る。この懸濁液は、任意選択で界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、懸濁液は、水と、水に懸濁させたタキサン粒子と、緩衝剤とから実質的になるか、これよりなるものである。懸濁液は、浸透圧塩をさらに含有し得る。
【0043】
懸濁液は1つまたは複数の界面活性剤を含み得る。適切な界面活性剤としては、例として、特に限定されないがポリソルベート、ラウリル硫酸、アセチル化モノグリセリド、ジアセチル化モノグリセリドおよびポロキサマーが挙げられる。
【0044】
懸濁液は1つまたは複数の浸透圧調整剤を含み得る。適切な浸透圧調整剤としては、例として、特に限定されないが1つまたは複数の無機塩、電解質、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムおよびアルカリ土類金属塩、例えばアルカリ土類金属無機塩、例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩など、マンニトール、デキストロース、グリセリン、プロピレングリコールならびにその混合物が挙げられる。
【0045】
特に腹腔内(IP)投与に適した一実施形態では、懸濁液をIP腔の液体(1つまたは複数)に対して高浸透圧性(高張性)、低浸透圧性(低張性)または等浸透圧性(等張性)に製剤化し得る。いくつかの実施形態では、懸濁液は、IP腔の液体に対して等張性であり得る。このような実施形態では、懸濁液の重量オスモル濃度は約200~約380mOsm/kg、約240~約340mOsm/kg、約280~約300mOsm/kgまたは約290mOsm/kgの範囲であり得る。
【0046】
懸濁液は1つまたは複数の緩衝剤を含み得る。適切な緩衝剤としては、例として、特に限定されないが二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム塩酸、水酸化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス-(ヒドロキシメチル)メタンおよび炭酸水素ナトリウムをはじめとする当業者に公知の緩衝剤が挙げられる。腹腔内に使用するには、緩衝剤を用いてpHを所望の範囲に調整することが多い。通常、約5~9、5~8、6~7.4、6.5~7.5または6.9~7.4のpHが望ましい。
【0047】
懸濁液は1つまたは複数の粘滑剤を含み得る。粘滑剤とは、腹膜およびその中の臓器を裏打ちする膜などの粘膜の上に鎮静作用のある薄膜を形成する薬剤のことである。粘滑剤は、軽度の疼痛および炎症を緩和し得るものであり、粘膜保護剤と呼ばれることもある。適切な粘滑剤としては、本明細書に記載される別のポリマー性粘滑剤とともに用いる場合、約0.2~約2.5%の範囲のセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメチルセルロースなど;約0.01%のゼラチン;約0.05~約1%のグリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80およびプロピレングリコールなども含めた約0.05~約1%のポリオール;約0.1~約4%のポリビニルアルコール;約0.1~約2%のポビドン;ならびに約0.1%のデキストラン70が挙げられる。
【0048】
懸濁液は、pHを調整するための1つまたは複数のアルカリ化剤を含み得る。本明細書で使用される「アルカリ化剤」という用語は、アルカリ性の媒体を得るのに使用する化合物を意味するものとする。このような化合物としては、例として、特に限定されないがアンモニア溶液、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムをはじめとする当業者に公知のアルカリ化剤が挙げられる。
【0049】
懸濁液は、pHを調整するための1つまたは複数の酸性化剤を含み得る。本明細書で使用される「酸性化剤」という用語は、酸性の媒体を得るのに使用する化合物を意味するものとする。このような化合物としては、例として、特に限定されないが酢酸、アミノ酸、クエン酸、硝酸、フマル酸をはじめとするαヒドロキシ酸、塩酸、アスコルビン酸および硝酸をはじめとする当業者に公知の酸性化剤が挙げられる。
【0050】
懸濁液は1つまたは複数の消泡剤を含み得る。本明細書で使用される「消泡剤」という用語は、充填組成物の表面に形成される泡を防止したり、その量を減少させたりする1つまたは複数の化合物を意味するものとする。適切な消泡剤としては、例として、特に限定されないがジメチコン、SIMETHICONE(登録商標)、オクトキシノールをはじめとする当業者に公知の消泡剤が挙げられる。
【0051】
懸濁液は、懸濁液の粘度を増大または低下させる1つまたは複数の粘度調整剤を含み得る。適切な粘度調整剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチセルロース(methycellulose)、マンニトールおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0052】
懸濁液は1つまたは複数の浸透圧剤、例えば腹膜透析に使用する浸透圧剤などを含み得る。適切な浸透圧剤としては、イコデキストリン(グルコースポリマー)、塩化ナトリウム、塩化カリウムのほか、緩衝剤としても使用される塩が挙げられる。
【0053】
本明細書で使用されるタキサンの「薬学的に許容される塩」とは、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の中毒、刺激、アレルギー反応などを引き起こさずに患者の組織に接触させて使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に相応し、その意図する使用に効果的なタキサンの塩および可能な場合は双性イオン形態のタキサンのことである。「塩」という用語は、タキサンの比較的無毒な無機酸付加塩および有機酸付加塩を指す。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩およびラウリルスルホン酸塩などが挙げられる。上記の塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属をベースとするカチオンのほか、特に限定されないがアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含めた無毒性のアンモニウム、第四級アンモニウムカチオンおよびアミンカチオンを含み得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれるBerge S.M.ら,「Pharmaceutical Salts」,J.Pharm.Sci.,1977;66:1-19を参照されたい)。
【0054】
一実施形態では、組成物は、懸濁液(すなわち、薬学的に許容される担体と任意の他の成分とを含む)のタキサンの剤形を、意図する使用に適すると主治医が考える用量で含む。任意の適切な剤形を使用してよく、種々の非限定的な実施形態では、剤形は、約0.01mg/(kg体重・日)~約50mg/(kg体重・日)にするのに適したものである。種々のさらなる実施形態では、剤形は、約0.01mg/(kg体重・日)~約45mg/(kg体重・日)、約0.01mg/(kg体重・日)~約40mg/(kg体重・日)、約0.01mg/(kg体重・日)~約35mg/(kg体重・日)、約0.01mg/(kg体重・日)~約30mg/(kg体重・日)、約0.01mg/(kg体重・日)~約25mg/(kg体重・日)、約0.01mg/(kg体重・日)~約20mg/(kg体重・日)、約0.01mg/(kg体重・日)~約15mg/(kg体重・日)、約0.01mg/(kg体重・日)~約10mg/(kg体重・日)、約0.01mg/(kg体重・日)~約5mg/(kg体重・日)または約0.01mg/(kg体重・日)~約1mg/(kg体重・日)にするのに適したものである。懸濁液は、そのまま投与しても、あるいは投与前に希釈剤、例えば任意選択で緩衝剤と1つまたは複数の他の添加剤とを含む注射用生理食塩水で希釈してもよい。例えば、懸濁液と希釈剤との体積比は、1:1~1:100(v/v)をはじめとする適切な比の範囲内であり得る。
【0055】
別の態様では、本発明は、腫瘍を治療する方法であって、腫瘍を有する対象に腫瘍の治療に有効な量の本発明の任意の実施形態または諸実施形態の組合せの組成物または懸濁液を投与することを含む、方法を提供する。本発明者らは予想外にも、本明細書に記載される新規な粒子作製法を用いて、約0.050g/cm3~約0.15g/cm3の平均かさ密度および/または少なくとも18m2/gの比表面積(SSA)を有する記載のタキサン粒子を含む、組成物を作製することができた。比表面積の増大およびかさ密度の減少のそれぞれによって、本発明のタキサン粒子の溶解速度が未処理または未加工の原料および比較用の粉砕タキサン製品に比して有意に増大する。これにより、例えば腫瘍治療への本発明のタキサン粒子の使用が大幅に改善される。
【0056】
本明細書で使用される「腫瘍」には、良性腫瘍、前悪性腫瘍、未だ転移していない悪性腫瘍および既に転移した悪性腫瘍が含まれる。
【0057】
本発明の方法は、特に限定されないが、乳房腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、骨腫瘍、胃腫瘍および膵臓腫瘍を含めた腫瘍であって、タキサン治療に感受性の腫瘍の治療に用いることができる。非限定的な一実施形態では、腫瘍は腹膜内腔の全体または一部分に存在する。
【0058】
対象は、特に限定されないが、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシなどを含めた対象であって、腫瘍を有する任意の適切な対象であり得る。
【0059】
本明細書で使用される「治療する」または「治療」は、(a)障害の重症度の軽減;(b)治療する障害(1つまたは複数)に特徴的な症状の発現の抑制または予防;(c)治療する障害(1つまたは複数)に特徴的な症状の悪化の抑制;(d)以前に障害(1つまたは複数)を有していた患者の障害(1つまたは複数)の再発の抑制または予防;および(e)以前に障害(1つまたは複数)の症状がみられた患者の症状の再発の抑制または予防のうちの1つまたは複数のものを達成することを意味する。
【0060】
上記の用途に有効な量は、特に限定されないが、タキサンの性質(比活性など)、投与経路、障害の段階および重症度、対象の体重および全般的健康状態ならびに処方医師の判断を含めた因子に左右される。実際に投与する本発明の懸濁組成物の量は、医師が上記の関連する状況を考慮に入れて決定するものであることが理解されよう。非限定的な一実施形態では、有効な量は、0.01mg/(kg体重・日)~約50mg/(kg体重・日)となる量である。
【0061】
組成物は、特に限定されないが、経口投与、経肺投与、腹腔内投与、皮下注射、筋肉内注射または任意の他の形態の注射を含めた経路であって、担当する医療関係者が所与の対象のあらゆる因子を考慮に入れて最も適切であると考える任意の適切な経路で投与し得る。一実施形態では、例えば腫瘍が(少なくとも部分的に)腹膜腔内に位置する場合、組成物または懸濁液を腹腔内に投与する。この実施形態では、組成物または懸濁液を例えば、腹膜腔内への灌流またはボーラス投与によって投与し得る。さらなる実施形態では、腹膜腔から腹水を除去した後に投与を開始し得る。
【0062】
投与期間とは、組成物または懸濁液中のある用量のタキサン粒子を投与する期間のことである。投与期間は全用量を投与する単一期間であってよく、あるいは投与期間を2つ以上の期間に分割し、それぞれの期間に一部の用量を投与してもよい。
【0063】
投与後期間とは、前の投与期間の終了後から始まり、次の投与期間の開始後に終わる期間のことである。投与後期間の長さは、パクリタキセルに対する対象の臨床奏効によって異なり得る。投与後期間は懸濁液を投与しない。投与後期間は、少なくとも7日、少なくとも14日、少なくとも21日、少なくとも28日、少なくとも35日、少なくとも60日もしくは少なくとも90日またはそれ以上継続し得る。投与後期間は1対象に対して一定に維持してよく、あるいは1対象に2種類以上の異なる投与後期間を用いてもよい。
【0064】
投与サイクルには投与期間と投与後期間が含まれる。したがって、投与サイクルの期間の長さは投与期間と投与後期間の合計となる。投与サイクルは1対象に対して一定に維持してよく、あるいは1対象に2種類以上の異なる投与サイクルを用いてもよい。
【0065】
一実施形態では、投与を2回以上実施し、各投与の間隔を少なくとも21日の期間空ける。
【0066】
別の態様では、本発明は、化合物粒子を作製する方法であって、
(a)少なくとも1種類の溶媒と、目的化合物を含む少なくとも1種類の溶質とを含む溶液をノズル注入口に導入し(i)、加圧チャンバを画定する容器の注入口に圧縮流体を導入する(ii)段階;
(b)溶液をノズルオリフィスから加圧チャンバ内に移動させて噴霧液滴の出力流を生じさせる段階であって、ノズルオリフィスが、出力流内に位置する音響エネルギー源から2mm~20mmの位置にあり、移動時に、音響エネルギー源を用いて発生させ得る総出力の10%~100%の振幅を有する音響エネルギーが音響エネルギー源から発生し、ノズルオリフィスの直径が20μm~125μmである段階;
(c)噴霧液滴と圧縮流体とを接触させて噴霧液滴から溶媒を枯渇させ、化合物粒子を生じさせる段階;
を含み、段階(a)、(b)および(c)を圧縮流体の超臨界温度および圧力下で実施する、方法を提供する。
【0067】
本発明の方法では、少なくとも1つの目的化合物(特に限定されないが、タキサンなどの活性医薬品成分を含む)を分散させた溶媒を含む溶液と圧縮流体とを圧縮流体の超臨界条件下で接触させて圧縮流体の溶媒を枯渇させ、化合物を微小な粒子として沈殿させる。
【0068】
本発明の方法は、圧縮流体をしかるべき溶媒と組み合わせて使用し、化合物をサイズ分布が狭い微粒子として再現可能に沈殿させて、米国特許第5,833,891号;同第5,874,029号;同第6,113,795号;および同第8,778,181号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている方法などに大幅な改善をもたらすものである。本発明の方法は、かさ密度、SSAおよび溶解特性が大幅に改善され、ひいては治療利益が大幅に改善された本発明の粒子を作製することが可能なものである。この方法によってこのような大幅な改善がもたらされるのは、少なくとも部分的には、ノズル外部にありノズルオリフィスから記載の距離にある音響エネルギー源を用いることにより、収束-発散ノズルを用いて音響エネルギーを発生させる米国特許第5,833,891号および同第5,874,029号に開示されている方法に比して、音響エネルギーが大幅に増大し、ノズルを出る溶媒-溶質流の破壊が促進されることによる。
【0069】
一実施形態では、この方法は、
(d)段階(c)で生じた噴霧液滴と貧溶媒とを接触させて化合物粒子から溶媒をさらに枯渇させる段階であって、貧溶媒の超臨界温度および圧力下で実施する段階
をさらに含む。
【0070】
本発明の方法では、溶媒に溶解した溶質の出力流中に直接位置する音響エネルギー源を用いる。音響エネルギーの発生源には、特に限定されないが音響ホーン、音響プローブまたは音響プレートを含めた本発明の方法に適合する任意の適切な発生源を使用し得る。種々の実施形態では、ノズルオリフィスは、音響エネルギー源から約2mm~約20mm、約2mm~約18mm、約2mm~約16mm、約2mm~約14mm、約2mm~約12mm、約2mm~約10mm、約2mm~約8mm、約2mm~約6mm、約2mm~約4mm、約4mm~約20mm、約4mm~約18mm、約4mm~約16mm、約4mm~約14mm、約4mm~約12mm、約4mm~約10mm、約4mm~約8mm、約4mm~約6mm、約6mm~約20mm、約6mm~約18mm、約6mm~約16mm、約6mm~約14mm、約6mm~約12mm、約6mm~約10mm、約6mm~約8mm、約8mm~約20mm、約8mm~約18mm、約8mm~約16mm、約8mm~約14mm、約8mm~約12mm、約8mm~約10mm、約10mm~約20mm、約10mm~約18mm、約10mm~約16mm、約10mm~約14mm、約10mm~約12mm、約12mm~約20mm、約12mm~約18mm、約12mm~約16mm、約12mm~約14mm、約14mm~約20mm、約14mm~約18mm、約14mm~約16mm、約16mm~約20mm、約16mm~約18mmおよび約18mm~約20mmの位置にある。
【0071】
図面を参照すると、図3に示されるさらなる実施形態では、ノズルアセンブリ100は、加圧チャンバ104を画定する容器102を備えている。容器102は遠位端106と近位端108とを備えている。ノズルアセンブリ100はさらに、加圧チャンバ104の注入口110と容器102の近位端108とを備えている。ノズルアセンブリ100はさらに、加圧チャンバ104の内部に位置するノズル112を備えている。図3に示されるように、ノズル112は、加圧チャンバ104の注入口110と流体連通している注入管114を備えている。さらに、ノズル112は出口開口部116を備えている。さらに、図3に示されるように、ノズル112は、容器102の近位端108とノズル112の出口開口部116との間の距離118を変化させるよう調節可能になっている。図3に示されるように、ノズル112はさらに、容器の縦軸122とノズルの縦軸124との間の角度120を変化させるよう調節可能になっている。さらに、ノズルアセンブリ100は、容器102の遠位端106に加圧チャンバ104の出口126を備えている。
【0072】
ノズルアセンブリ100はさらに、第一のリザーバ128と第二のリザーバ130とを備えていてよい。第一のリザーバ128には溶媒が供給され、第二のリザーバ130には貧溶媒が供給され得る。加圧チャンバ104の注入口110は第一のリザーバ128と流体連通していてよく、加圧チャンバ104の第二の注入口132は第二のリザーバ130と流体連通していてよい。1つの例では、第一のリザーバ128がノズル112の注入管114と流体連通しているため、溶媒がノズル112を通って加圧チャンバ104に入る。これ以外の例も考えられる。
【0073】
ノズル112の出口開口部116は、ノズル112内に渦が生じて溶媒が乱流によりノズル112から出るよう複数の隆起部を備えていてよい。別の例では、ノズル112は、溶媒が乱流によりノズル112から出るようノズル112の内部に多孔性フリットを備えていてよい。また別の例では、ノズル112の出口開口部116は、溶媒が乱流によりノズル112から出るよう直径が小さくなっていてよい(のちにさらに詳細に述べる)。乱流を生じさせる上記の種々の実施形態は、加圧チャンバ104内での溶媒と貧溶媒の混合を補助し得るものである。さらに、ノズル112の注入管114は、約1.5875mm~約6.35mmの範囲の内径を有し得る。
【0074】
1つの例では、ノズル112の角度およびノズル112の垂直位置をともに使用者が手動で調節し得る。例えば、ノズル112は、容器102の近位端108とノズル112の出口開口部116との間の距離118を変化させるよう調節することができる垂直方向の支持体上に位置していてよい。さらに、ノズル112を手動で回転させて、容器の縦軸122とノズルの縦軸124との間の角度120を調節し得る。
【0075】
別の例では、ノズルアセンブリ100は、ノズル112に連結されたモータを備えていてよい。種々の例では、モータは、容器102の近位端108とノズル112の出口開口部116との間の距離118を変化させ、かつ/または容器の縦軸122とノズルの縦軸124との間の角度120を変化させるよう設計されていてよい。このようなモータは、電力によって作動する電気モータであっても、あるいはガス系燃料または太陽光発電などのいくつかの異なるエネルギー源によって作動するものであってもよい。モータは、作動時にその回転方向に応じて容器102の近位端108とノズル112の出口開口部116との間の距離118が増減するようノズル112に直接または間接的に連結されていてよい。モータは、容器102の近位端108とノズル112の出口開口部116との間の距離118を調節し、かつ/または容器の縦軸122とノズルの縦軸124との間の角度120を調節する一連のギアに連結されていてよく、あるいはモータは、容器102の近位端108とノズル112の出口開口部116との間の距離118を調節し、かつ/または容器の縦軸122とノズルの縦軸124との間の角度120を調節する滑車システムに連結されていてよい。これ以外の構成も可能である。
【0076】
別の例では、ノズル112アセンブリはノズル112に連結されたアクチュエータを備えていてよく、この場合、アクチュエータが容器120の近位端108とノズル112の出口開口部116との間の距離118を変化させ、かつ/または容器の縦軸122とノズルの縦軸124との間の角度120を変化させる。このようなアクチュエータは、連動システムを介して電気モータの回転運動を直線移動に変換する電気モータを備えた電気機械アクチュエータであり得る。ほかにも可能性のあるアクチュエータとして、例えば油圧アクチュエータ、空気圧式アクチュエータ、圧電アクチュエータ、リニアモータまたは伸縮型リニアアクチュエータなどが考えられる。
【0077】
1つの例では、図3および4に示されるように、ノズルアセンブリはさらに、ノズル112の出口開口部116に近接した位置にある音響エネルギー源134を備えている。1つの例では、音響エネルギー源134は、加圧チャンバ104の内部に伸長している音響プローブを備えていてよい。別の例では、音響エネルギー源134は、加圧チャンバ104内に位置する音響表面を備えていてよい。音響エネルギー源134から生じた音波によって加圧チャンバ104内の液体が粉砕され、これにより溶媒と貧溶媒溶液との混合が促進されて、加圧チャンバ104の内部に粒子が生じる。1つの例では、音響エネルギー源134は、ノズルの縦軸124に対して45度の角度の位置にある。これ以外の角度も考えられる。1つの例では、音響エネルギー源134は、ノズル112の出口開口部116と音響エネルギー源134との間の距離を変化させるよう調節可能なものであり得る。さらに、音響エネルギー源134は、音響エネルギー源134とノズルの縦軸124との間の角度を変化させるよう調節可能なものであり得る。
【0078】
音響エネルギーの発生源には、特に限定されないが音響ホーン、音響プローブまたは音響プレートを含めた本発明の方法に適合する任意の適切な発生源を使用し得る。種々のさらなる実施形態では、音響エネルギー源を用いて発生させ得る総出力の約1%~約100%の振幅を有する音響エネルギーが音響エネルギー源から発生する。当業者であれば、本明細書の教示を踏まえ、用いる特定の総出力を有するしかるべき音響エネルギー源を決定することができる。一実施形態では、音響エネルギー源は、総出力が約500~約900ワットであり、種々のさらなる実施形態では、その総出力は約600~約800ワット、約650~750ワットまたは約700ワットである。
【0079】
種々のさらなる実施形態では、音響エネルギー源から、音響エネルギー源を用いて発生させ得る総出力の約5%~約100%、約10%~約100%、20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約1%~約90%、約5%~約90%、約10%~約90%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、約1%~約80%、約5%~約80%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、約1%~約70%、約5%~約70%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、約50%~約70%、約60%~約70%、約1%~約60%、約5%~約60%、約10%~約60%、約20%~約60%、約30%~約60%、約40%~約60%、約50%~約60%、約1%~約50%、約5%~約50%、約10%~約50%、約20%~約50%、約30%~約50%、約40%~約50%、約1%~約40%、約5%~約40%、約10%~約40%、約20%~約40%、約30%~約40%、約1%~約30%、約5%~約30%、約10%~約30%、約20%~約30%、約1%~約20%、約5%~約20%、約10%~約20%、約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または約100%の出力で音響エネルギーが発生する。種々の実施形態では、音響エネルギー源から、音響エネルギー源を用いて発生させ得る総出力の約1%~80%、20~80%、30~70%、40~60%または約60%の出力で音響エネルギーが発生する。当業者であれば、本明細書の教示を踏まえ、音響エネルギー源で用いるしかるべき周波数を決定することができる。一実施形態では、音響エネルギー源で約18~約22kHzの周波数を用いる。種々の他の実施形態では、音響エネルギー源で約19~約21kHz、約19.5~約20.5の周波数または約20kHzの周波数を用いる。
【0080】
種々のさらなる実施形態では、ノズルオリフィスは、直径が約20μm~約125μm、約20μm~約115μm、約20μm~約100μm、約20μm~約90μm、約20μm~約80μm、約20μm~約70μm、約20μm~約60μm、約20μm~約50μm、約20μm~約40μm、約20μm~約30μm、約30μm~約125μm、約30μm~約115μm、約30μm~約100μm、約30μm~約90μm、約30μm~約80μm、約30μm~約70μm、約30μm~約60μm、約30μm~約50μm、約30μm~約40μm、約40μm~約125μm、約40μm~約115μm、約40μm~約100μm、約40μm~約90μm、約40μm~約80μm、約40μm~約70μm、約40μm~約60μm、約40μm~約50μm、約50μm~約125μm、約50μm~約115μm、約50μm~約100μm、約50μm~約90μm、約50μm~約80μm、約50μm~約70μm、約50μm~約60μm、約60μm~約125μm、約60μm~約115μm、約60μm~約100μm、約60μm~約90μm、約60μm~約80μm、約60μm~約70μm、約70μm~約125μm、約70μm~約115μm、約70μm~約100μm、約70μm~約90μm、約70μm~約80μm、約80μm~約125μm、約80μm~約115μm、約80μm~約100μm、約80μm~約90μm、約90μm~約125μm、約90μm~約115μm、約90μm~約100μm、約100μm~約125μm、約100μm~約115μm、約115μm~約125μm、約20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、115μmまたは約120μmである。ノズルは、この方法に使用する溶媒および圧縮流体の両方に対して不活性である。
【0081】
さらなる例では、このシステムは、それぞれが容器の縦軸とノズルの縦軸との間の角度および/またはノズルオリフィスと音響エネルギー源との間の距離が異なる位置にある、複数のノズルを備えていてよい。複数のノズルのうち、所与のSSAを有する特定の種類の粒子を作製する所与の作製工程に所与のノズルを選択し得る。
【0082】
任意の適切な溶媒および溶質を使用してよく、このような溶質および溶媒の例が米国特許第5,833,891号および同第5,874,029号に開示されている。非限定的な一実施形態では、溶質/化合物は、本明細書に記載されるものを含めたタキサンを含む。他の種々の非限定的な実施形態では、溶媒は、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトニトリルおよびその適切な組合せを含み得る。一実施形態では、溶質/化合物はパクリタキセルであり、溶媒はアセトンである。別の実施形態では、溶質/化合物はドセタキセルであり、溶媒はエタノールである。溶媒は、溶液全体の少なくとも約80重量%、85重量%または90重量%を占めるべきである。
【0083】
圧縮流体は、用いる条件下で超臨界流体を形成することが可能であり、粒子を形成する溶質は、圧縮流体に難溶性または不溶性である。当業者に公知のように、超臨界流体とは、臨界点を超える温度および圧力下にある任意の物質のことであり、この場合、明確な液相および気相は存在しない。本発明の方法の段階(a)、(b)および(c)は、これらの処理段階において圧縮流体が超臨界流体として存在するよう圧縮流体の超臨界温度および圧力下で実施する。
【0084】
圧縮流体は、溶媒としての役割を果たし得るほか、粒子中の不必要な成分を除去するのに使用し得る。本発明の方法には任意の適切な圧縮流体を使用してよく、このような圧縮流体の例が米国特許第5833891号および同第5874029号に開示されている。非限定的な一実施形態では、超臨界流体を形成する適切な圧縮流体および/または貧溶媒は、二酸化炭素、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、亜酸化窒素、キセノン、六フッ化硫黄およびトリフルオロメタンを含み得る。段階(d)に記載されるさらなる溶媒枯渇を引き起こすための貧溶媒は、上で定義される圧縮流体であり、段階(a)~(c)に使用する圧縮流体と同じものであっても異なるものであってもよい。一実施形態では、段階(d)に使用する貧溶媒は、段階(a)~(c)に使用する圧縮流体と同じものである。好ましい実施形態では、圧縮流体と貧溶媒はともに超臨界二酸化炭素である。
【0085】
いずれの場合も、圧縮流体および貧溶媒は実質的に溶媒と混和可能なものであるべきであり、沈殿させる化合物は実質的に圧縮流体に不溶性のものであるべきである、すなわち、化合物は、選択する溶媒/圧縮流体接触条件下で、圧縮流体または貧溶媒に約5重量%以下が溶解し、好ましくは実質的に完全に不溶性である。
【0086】
本発明の方法に用いる超臨界条件は通常、超臨界流体の臨界温度の1倍~約1.4倍または1倍~約1.2倍、圧縮流体の超臨界圧力の1倍~約7倍または1倍~約2倍の範囲内にある。
【0087】
所与の圧縮流体または貧溶媒の臨界温度および臨界圧力の決定は、当業者のレベル内に十分収まるものである。一実施形態では、圧縮流体と貧溶媒はともに超臨界二酸化炭素であり、臨界温度は最低で31.1℃、最高で約60℃であり、臨界圧力は最低で1071psi(約7384kPa)、最大で約1800psi(約12410kPa)である。別の実施形態では、圧縮流体と貧溶媒はともに超臨界二酸化炭素であり、臨界温度は最低で35℃、最高で約55℃、臨界圧力は最低で1070psi(約7377kPa)、最高で約1500psi(約10342kPa)である。当業者には、具体的な臨界温度および臨界圧力が処理過程の段階によって異なり得ることが理解されよう。
【0088】
特に限定されないが、米国特許第5,833,891号および同第5,874,029に開示されているものを含めた任意の適切な加圧チャンバを使用し得る。噴霧液滴と圧縮流体とを接触させて液滴から溶媒を枯渇させ、液滴と貧溶媒とを接触させて液滴から溶媒をさらに枯渇させて、化合物の粒子を生じさせる段階も同様に、特に限定されないが、米国特許第5,833,891号および同第5,874,029号に開示されているものを含めた任意の適切な条件下で実施することができる。
【0089】
生産量を最適化するため、流速を可能な限り速く、ただしノズルオリフィスを含めた装置の圧力限界を下回るよう、調節することができる。一実施形態では、ノズルを通る溶液の流速は約0.5mL/分~約30mL/分の範囲である。種々のさらなる実施形態では、流速は、約0.5mL/分~約25mL/分、0.5mL/分~約20mL/分、0.5mL/分~約15mL/分、0.5mL/分~約10mL/分、0.5mL/分~約4mL/分、約1mL/分~約30mL/分、約1mL/分~約25mL/分、約1mL/分~約20mL/分、1mL/分~約15mL/分、約1mL/分~約10mL/分、約2mL/分~約30mL/分、約2mL/分~約25mL/分、約2mL/分~約20mL/分、約2mL/分~約15mL/分または約2mL/分~約10mL/分である。流速を受ける薬物の溶液は任意の適切な濃度、例えば約1mg/ml~約80mg/mlなどであり得る。
【0090】
一実施形態では、この方法は、加圧チャンバの出口から複数の粒子を受け取ることおよび捕集装置内で複数の粒子を捕集することをさらに含む。
【0091】
図面を参照すると、図5に示されるこのような実施形態では、本発明は、チャンバ204を画定する容器202を備えた捕集装置200を含む。容器202は遠位端206と近位端208とを備えている。容器202の外径は約152.4mm~約914.4mmの範囲であり得る。捕集装置200はさらに、容器202の近位端208から伸長している入口210を備えている。入口210はチャンバ204と流体連通している。入口210は、外径の範囲が約12.7mm~約101.6mmであり得る。さらに、捕集装置200は、容器202の近位端208から伸長している出口212を備えている。図7および8に示されるように、出口212はチャンバ204と流体連通しており、出口212は、チャンバ204と出口212との間に位置する多孔性材料214を備えている。出口の外径は約12.7mm~約50.8mmの範囲であり得る。
【0092】
図5~9に示されるように、捕集装置200はさらに、遠位端218と近位端220とを有する試料採取管216を備えていてよい。試料採取管216の外径は約6.35mm~約25.4mmの範囲であり得る。図7および8に示されるように、試料採取管216の近位端220は容器202の近位端208から伸長しており、試料採取管216の遠位端218はチャンバ204内に伸長している。試料採取管216は、ほかの粒子が形成されている粒子作製工程の間にチャンバ204から少量の粒子試料を取り出すよう設計されていてよい。特に、試料採取管216は、処理中、操作者がチャンバ204を開けたり試料採取管216を捕集装置200の残りの部分から取り外したりせずに少量の粒子試料を取り出すことを可能にする、試料採取器を備えていてよい。これにより、操作者が工程を続行しながら少量の粒子試料を試験し、製品が仕様の範囲内にあることを確認することが可能になる。例えば、試料に関して粒子径または残留溶媒の分析を実施し得る。測定した仕様が所望の仕様と合致しない場合、望ましくない特性を有する製品のバッチ全体が作製される前に、粒子形成工程の操作パラメータを適切に調節してその状況を補正し得る。
【0093】
チャンバ204と出口212の間に位置する多孔性材料214は、様々な形態をとり得る。1つの例では、多孔性材料214は、フリット、メッシュ、布からなる群より選択される。1つの具体例として、多孔性材料214は高効率粒子捕集(HEPA)フィルタを含み得る。HEPAフィルタの1つの例は、ガラス繊維からなる直径約0.5マイクロメートル~約2.0マイクロメートルの繊維がランダムに配置されたマットを備え得る。別の例では、多孔性材料214は、遠位端222と近位端224とを有する焼結フィルタを含む。このような例では、容器202の近位端208から焼結フィルタの近位端224が伸長して出口212と連結され、焼結フィルタの遠位端222がチャンバ204内に伸長している。このような焼結フィルタは、例として、多孔性のステンレス鋼フィルタカートリッジを備えたものであり得る。これ以外の多孔性材料も考えられる。
【0094】
入口210は、粒子ろ過システムの出口と入口210とを連結する接続機構を備えていてよい。1つの例では、接続機構は1つまたは複数のサニタリー継手を含む。別の例では、接続機構は、粒子ろ過システムの出口と入口210との間にねじ式連結部を含む。また別の例では、接続機構は1つまたは複数の圧縮継手を含む。接続機構の例はこれ以外にも考えられる。
【0095】
さらに、図9に示されるように、捕集装置200はさらに、容器202のチャンバ204内に位置する捕集インサート226およびチャンバ204の内壁230と捕集インサート226との間に位置する支持フレーム228を備えていてよい。捕集インサート226は、例として、プラスチック袋であり得る。図10に示されるように、支持フレーム228は、遠位リング232、近位リング234、遠位リング232と近位リング234とを連結する1つまたは複数の支持脚236および近位リング234に近接した位置にあるガスケット238を備えていてよい。1つの例では、ガスケット238はネオプレンガスケットを含み得る。容器202は、粒子捕集終了時に取り外して捕集インサート226に触れることが可能な取外し可能な蓋240を備えていてよい。このような例では、捕集インサート226は、捕集インサート226の上端が支持フレーム228の上部に折り重なり、蓋が閉じた位置にあるときにガスケット238と取外し可能な蓋240との間で密閉されるように容器202のチャンバ204内に位置し得る。これ以外の配置も考えられる。
【0096】
方法の1つの具体例では、アセトンでパクリタキセルの65mg/ml溶液を調製する。加圧チャンバ内にノズルと音響プローブを約8mm離して配置する。沈殿したパクリタキセルナノ粒子を捕集するため、約100nmの穴を有するステンレス鋼メッシュフィルタを加圧チャンバに取り付ける。製造装置の加圧チャンバに超臨界二酸化炭素を入れ、約37℃、流速18kg/時で約1200psi(約8273kPa)にする。音響プローブを周波数20kHzで最大出力の60%の振幅に調節する。パクリタキセルを含有するアセトン溶液を流速2mL/分で約60分間、ノズルから送り込む。次いで、混合物をステンレス鋼メッシュフィルタに送り込み、沈殿したパクリタキセルの凝集物および粒子を超臨界二酸化炭素から捕集する。パクリタキセルのナノ粒子の入ったフィルタを開け、生じた生成物をフィルタから回収する。
【0097】
方法の1つの具体例では、エタノールでドセタキセルの79.32mg/ml溶液を調製する。加圧チャンバ内にノズルと音響プローブを約9mm離して配置する。沈殿したドセタキセルナノ粒子を捕集するため、約100nmの穴を有するステンレス鋼メッシュフィルタを加圧チャンバに取り付ける。製造装置の加圧チャンバに超臨界二酸化炭素を入れ、約38℃、流速63slpm(標準リットル/分)で約1200psi(約8273kPa)にする。音響プローブを周波数20kHzで総出力の60%に調節する。ドセタキセルを含有するエタノール溶液を流速2mL/分で約95分間、薬物溶液がなくなるまでノズルから送り込む。次いで、混合物をステンレス鋼メッシュフィルタに送り込み、沈殿したドセタキセルの凝集物および粒子を超臨界二酸化炭素から捕集する。ドセタキセルのナノ粒子の入ったフィルタを開け、生じた生成物をフィルタから回収する。
【0098】
さらに、上記のシステムは、さらに大きい粒子作製システムの構成要素であってよい。このような粒子作製システムは、1つまたは複数の上記のようなノズルアセンブリ、各ノズルのオリフィスに近接した位置にある音響エネルギー源、1つまたは複数のノズルアセンブリと連通した1つまたは複数の粒子ろ過システムおよび1つまたは複数の粒子ろ過システムと連通した1つまたは複数の粒子捕集装置を備えていてよい。1つの例では、1つまたは複数の粒子ろ過システムは、少なくとも1つの高圧収集フィルタシステムと、その収集フィルタの下流に直列した少なくとも1つの低圧捕集フィルタシステムとを備えた直列粒子ろ過システムを含む。このような例では、粒子作製システムは、少なくとも2つの粒子収集フィルタと、2つの粒子捕集フィルタと、2つの捕集装置とを備え得る。
【0099】
別の態様では、本発明は、本発明の任意の実施形態または諸実施形態の組合せの方法によって調製される化合物粒子を提供する。
【0100】
実施例
材料および方法
Phyton Biotech社(ブリティッシュコロンビア州、カナダ)からロット番号がそれぞれFP2-15004およびDT7-14025の未加工のパクリタキセルおよびドセタキセルを購入した。ともに未加工形態で特徴を明らかにした。Deco-PBM-V-0.41ミル(Deco社)を用いて両薬の粉砕を実施した。粉砕条件は両化合物とも以下の通りであった:
ボールサイズ=5mm
RPM=600
処理時間=60分
室温。
【0101】
パクリタキセル粒子の調製
アセトンでパクリタキセルの65mg/ml溶液を調製した。晶析チャンバ内にBETE MicroWhirl(登録商標)フォグノズル(BETE Fog Nozzle社)と音響プローブ(Qsonica社、型番Q700)を約8mm離して配置した。沈殿したパクリタキセルナノ粒子を捕集するため、約100nmの穴を有するステンレス鋼メッシュフィルタを晶析チャンバに取り付けた。製造装置の晶析チャンバに超臨界二酸化炭素を入れ、約38℃、流速24kg/時で約1200psi(約8273kPa)にした。音響プローブを周波数20kHzで総出力の60%に調節した。パクリタキセルを含有するアセトン溶液を流速4.5mL/分で約36時間、ノズルから送り込んだ。作製されたパクリタキセルナノ粒子は、別個に3回実施した平均で、個数加重平均径が0.81μm、標準偏差が0.74μmであった。
【0102】
ドセタキセル粒子の調製
エタノールでドセタキセルの79.32mg/ml溶液を調製した。加圧チャンバ内にノズルと音響プローブを約9mm離して配置した。沈殿したドセタキセルナノ粒子を捕集するため、約100nmの穴を有するステンレス鋼メッシュフィルタを加圧チャンバに取り付けた。製造装置の加圧チャンバに超臨界二酸化炭素を入れ、約38℃、流速68slpmで約1200psi(約8273kPa)にした。音響プローブを周波数20kHzで総出力の60%に調節した。ドセタキセルを含有するエタノール溶液を流速2mL/分で約95分間、ノズルから送り込む。次いで、混合物をステンレス鋼メッシュフィルタに送り込み、沈殿したドセタキセルの凝集物および粒子を超臨界二酸化炭素から捕集した。ドセタキセルのナノ粒子の入ったフィルタを開け、生じた生成物をフィルタから回収した。
【0103】
作製されたドセタキセルナノ粒子は、エタノールで別個に3回実施した平均で、個数加重平均径が0.82μm、標準偏差が0.66μmであった。
【0104】
粒子径解析
光遮蔽法およびレーザー回折法の両方により粒子径を解析した。光遮蔽法にはParticle Sizing Systems AccuSizer 780 SISシステムを用い、レーザー回折法にはShimadzu SALD-7101を用いた。水に溶かした0.10%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を分散剤に用いてパクリタキセルナノ粒子を解析した。isopar Gを分散剤に用いてドセタキセルナノ粒子を解析した。
【0105】
約4mgのパクリタキセル粒子を入れたガラスバイアルにろ過済みの分散剤を約7mL加えることによりパクリタキセル懸濁液を調製した。バイアルを約10秒間ボルテックスした後、超音波浴で約1分間、超音波処理した。試料が既に懸濁していれば、パクリタキセル懸濁液と0.1%SDS溶液の1:1溶液を作製し、10秒間ボルテックスし、超音波浴で1分間、超音波処理した。
【0106】
約4mgのドセタキセル粒子を入れたプラスチックバイアルにろ過済みの分散剤を約7mL加えることによりドセタキセル懸濁液を調製した。バイアルを約10秒間ボルテックスした後、超音波浴で約2分間、超音波処理した。この懸濁液をレーザー回折解析に用いた。パーティクルフリーの125mLプラスチックボトルに未使用の懸濁液を注入し、次いで、これにろ過済みの分散剤を入れて約100mLにした。懸濁液を約10秒間ボルテックスした後、超音波浴で約2分間、超音波処理した。この希釈懸濁液を光遮蔽解析に用いた。
【0107】
最初にバックグラウンド試験を実施した後、AccuSizer 780 SISで粒子を解析した。蠕動ポンプを用いてリザーバから0.22μm Milliporeフィルタに通してボトル内に送り込むことにより、新たなパーティクルフリーのプラスチックボトルをブランク懸濁溶液で満たした。バックグラウンド解析を実施して、1mL当たりの粒子カウント数が1mL当たり100個未満であることを確認した。溶液の濃度に応じて5~100μLの少量のパクリタキセル懸濁液をバックグラウンド試験からピペットでプラスチックボトルに入れ、約100mLの分散剤で満たし、解析を実施した。カウント数をモニターし、解析全体を通じて1mL当たりの粒子カウント数が6000~8000に達し、かつ/または維持されるようパクリタキセル溶液を加えた。解析終了後、バックグラウンドデータを除外し、カウント数が4に満たない測定値をすべて除外した。
【0108】
SALD-7101にバッチセルを用いて粒子を解析するため、Manual Measurementを選択して解析を開始した。屈折率は1.5~1.7に設定した。バッチセルに刻まれた線をわずかに越えるまでろ過済みの分散剤を満たした。ブランク測定を実施した。必要に応じて、全般的には1mL未満、溶液の濃度によっては100μLまでの少量のAPI(パクリタキセルまたはドセタキセル)懸濁液を吸光度単位0.15~0.2の許容される吸光度に達するまでピペットでバッチセルに入れた。測定を実行し、得られたグラフのうち最も信頼度の高いものを選択し、バックグラウンドを自動で考慮に入れた。
【0109】
BET解析
200~300mgの質量既知の分析物を30mLの試料管に加えた。次いで、充填した試料管をPorous Materials社のSORPTOMETER(登録商標)、BET-202Aモデルに装填した。次いで、BETWIN(登録商標)ソフトウェアパッケージを用いて自動試験を実施した後、各試料の表面積を算出した。
【0110】
かさ密度分析物
パクリタキセルまたはドセタキセルの粒子調製物をプラスチック秤量用漏斗から風袋を測定した10mLメスシリンダーに室温で加えた。薬物の質量を0.1mgの位まで測定し、体積を0.1mLの位まで測定し、密度を算出した。
【0111】
溶解試験
パクリタキセル
約50mgの原料(すなわち、未加工パクリタキセル、粉砕パクリタキセルまたはパクリタキセル粒子)と約1.5グラムの1mmガラスビーズをバイアル内で約1時間転がすことによってビーズを原料で覆った。ビーズをステンレス鋼メッシュ容器に移し、37℃、pH7、50/50(v/v)のメタノール/水溶媒の入った溶解浴および75rpmで稼働するUSP装置II(パドル)に入れた。10分後、20分後、30分後、60分後および90分後、5mL量を取り出し、0.22μmフィルタでろ過し、U(V/V)is分光光度計を用いて227nmで分析した。試料の吸光度値を溶解溶媒で調製した標準溶液のものと比較して、溶解した原料の量を求めた。
【0112】
ドセタキセル
約50mgの原料(すなわち、未加工ドセタキセル、粉砕ドセタキセルまたはドセタキセル粒子)を37℃、pH7、15/85(v/v)のメタノール/水溶媒の入った溶解浴および75rpmで稼働するUSP装置II(パドル)に直接入れた。5分後、15分後、30分後、60分後、120分後および225分後、5mL量を取り出し、0.22μmフィルタでろ過し、UV/VIS分光光度計を用いて232nmで分析した。試料の吸光度値を溶解溶媒で調製した標準溶液のものと比較して、溶解した原料の量を求めた。
【0113】
結果
上記のプロトコルおよびその変形形態(すなわち、ノズル、フィルタ、音響エネルギー源、流速などを変えたもの)を用いて作製した粒子のBET表面積は、22~39m2/gの範囲であった。図1に、本発明の方法を用いて作製した例示的粒子を示す。比較により、未加工パクリタキセルのBET表面積は7.25m2/gと測定され(図2)、米国特許第5833891号および同第5874029号の方法に従って作製したパクリタキセル粒子は11.3~15.58m2/gの範囲であった。本発明の方法を用いて得られた例示的粒子径を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
未加工薬、粉砕薬物粒子および本発明の方法によって作製した薬物粒子のかさ密度、SSAおよび溶解速度に関する比較試験(上記の通りに実施したもの)を下の表2および3に記載する。パクリタキセル原料およびドセタキセル原料の溶解経時変化全体をそれぞれ表4および5に記載する。
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
図1
図2
図3
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図10