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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】高純度顆粒α相炭化珪素粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/977 20170101AFI20220628BHJP
   B01J 27/24 20060101ALI20220628BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C01B32/977
B01J27/24 M
C30B29/36 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020198969
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2021084858
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0155884
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】304039548
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ヨム,ミ レ
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ソン イル
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1627371(KR,B1)
【文献】特開2009-173501(JP,A)
【文献】国際公開第2018/224438(WO,A1)
【文献】特開平09-048605(JP,A)
【文献】特開平10-120411(JP,A)
【文献】特開2007-045689(JP,A)
【文献】特開平05-024818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
B01J 21/00-38/74
C30B 29/36
C04B 35/565
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
I)液状の珪素化合物及び炭素化合物を含む出発原料をゾルゲル工程で反応させることにより、二酸化珪素網目構造内に炭素化合物が分散されているゲルを製造する段階と、
II)前記ゲルを1次熱処理して前記炭素化合物を熱分解することにより、ナノサイズの炭素粒子を含む二酸化珪素-カーボン複合体を製造する段階と、
III)前記二酸化珪素-カーボン複合体を前記1次熱処理より高温で2次熱処理してα相炭化珪素粉末を得る段階とを含み、
前記ゾルゲル工程は、液状の前記珪素化合物及び液状の前記炭素化合物を400~2000rpmの速度で撹拌し、
前記1次熱処理は、前記ゲルを2~5℃/minの昇温速度で1100~1250℃まで加熱して二酸化珪素-カーボン複合体を製造する、高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項2】
前記珪素化合物は、オルト珪酸トラエチル(tetraethyl orthosilicate、TEOS)、オルト珪酸テトラメチル(tetramethyl orthosilicate、TMOS)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含む、請求項1に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項3】
前記炭素化合物は、フェノール樹脂、蔗糖、麦芽糖(maltose)、フラン、乳糖(lactose)、ポリイミド(polyimide)、キシレン(xylene)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含む、請求項1に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項4】
前記出発原料において珪素原子と炭素原子のモル比(C/Si)は、1:1.6~3.0である、請求項1に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項5】
前記ゾルゲル工程は、前記出発原料を溶媒に投入し、触媒剤を添加してから撹拌する、請求項1に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項6】
前記触媒剤は、
シュウ酸、マレイン酸、硝酸、塩酸、アクリル酸、トルエンスルホン酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含む酸(acid)、又は、
アルカリ金属の水酸化物、アンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含む塩基(base)を含む、請求項5に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項7】
前記撹拌は、25~60℃の温度で遂行する、請求項に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項8】
前記ゲルを1次熱処理するに先立ち、前記ゲルを乾燥する段階をさらに含む、請求項1に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項9】
前記二酸化珪素-カーボン複合体に含まれた炭素粒子の平均粒度は5nm以下である、請求項1に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項10】
前記二酸化珪素-カーボン複合体を2次熱処理するに先立ち、前記二酸化珪素-カーボン複合体を300μm以下の大きさに分級する段階をさらに含む、請求項1に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項11】
前記2次熱処理は、前記二酸化珪素-カーボン複合体を5~15℃/minの昇温速度で2000~2100℃まで加熱してα相炭化珪素粉末を得る、請求項1に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項12】
追加的な原料の投入がないことを特徴とする、請求項1に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【請求項13】
記α相炭化珪素粉末は、平均粒度が70~500μmであり、d 90/d 5以下である粒度分布を有し、純度が99.9995重量%以上である、請求項1に記載の高純度α相炭化珪素粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二酸化珪素-カーボン複合体を用いた高純度顆粒α相炭化珪素粉末の製造方法に関するもので、より詳しくは液状の珪素化合物及び炭素化合物を出発原料として使用してゾルゲル工程で二酸化珪素網目構造内に炭素化合物が均質に分散されたゲルを製造した後、前記ゲルの内部の炭素化合物が移動しないように乾燥させ、これを熱処理して前記炭素化合物を熱分解することにより、大きさが5nm以下の炭素粒子が均一に分布された二酸化珪素-カーボン複合体を製造し、製造された二酸化珪素-カーボン複合体を用いて熱炭素還元反応によって炭化珪素を製造する。より詳しくは二酸化珪素-カーボン複合体内の炭素/珪素のモル比、熱処理温度及び維持時間の調節によって平均粒度を調節することができる高純度顆粒α相炭化珪素粉末の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、電力半導体市場で半導体の小型化及び電力損失の最小化のために大きなバンドギャップと高い絶縁破壊特性を有する材料の必要性が高まっており、現在、珪素電力用半導体素子の代わりをする炭化珪素電力半導体の需要が急増しており、それによる炭化珪素単結晶生産のための投資が増えており、炭化珪素単結晶市場の規模も急速に大きくなっている。
【0003】
電力半導体用炭化珪素単結晶を製造するために、Si溶液でSiC単結晶を成長させるLPE(liquid phase epitaxy)方法、CVD法及びPVT(physical vapor transport)方法などの多様な単結晶成長工程技術が開発されているが、現在まではPVT(physical vapor transport)方法で欠陷を最小化した8インチ炭化珪素単結晶ウエハーが商用化されている。PVT方法による炭化珪素単結晶成長工程では原料として使われる炭化珪素粉末の大きさ及び純度だけではなく粉末の充填密度などのさまざまな粉末特性が炭化珪素単結晶の特性及び成長速度を決定する重要な要因と知られているが、単結晶の成長に使われる炭化珪素粉末の特性についての情報及び市場はオープンされずに単結晶及びウエハー生産業で独自的に生産され、炭化珪素原料粉末は内在化している実情である。
【0004】
代表的な炭化珪素顆粒粉末の製造方法としてアチソン(Acheson)法が広く適用されている。アチソン法は工程が単純で低価の出発原料を使うから大量の炭化珪素粉末を経済的に製造することができる利点があるが、製造された炭化珪素の純度が99.99%以下であり、炭化珪素塊(ingot)として製造されるので炭化珪素塊を粉砕する粉末化工程が要求され、工程中に不純物の流入の機会を提供することになって酸洗のような追加的な精製工程を遂行しなければならない。よって、前記アチソン法で製造された炭化珪素粉末は純度が高くなくて炭化珪素単結晶製造用原料として適用するのには限界がある。
【0005】
米国登録特許第5,863,325号(特許文献1)では、前記工程で製造された炭化珪素粉末の金属不純物は数ppmの高純度炭化珪素顆粒粉末が合成されており、前記製造された炭化珪素粉末を単結晶原料として使うための最適化した熱処理工程が報告されたことがある。前記特許文献1の発明では、1800℃でβ相の炭化珪素粉末を製造した後、1900~2100℃の温度で3~6回の熱サイクル処理を実施して粉末の粒度を200μm級に成長させたが、熱処理時間と熱処理工程時の多くのサイクルが繰り返される複雑な工程が欠点として指摘される。
【0006】
また、米国登録特許公報第6,627,169号(特許文献2)では、熱炭素還元工程の際に発生するCO気体の量を測定して炭化珪素粉末の平均粒度を調節する技術が報告されたことがあるが、一般的に知られた単結晶成長用に要求される炭化珪素粉末の大きさに及ぶことができなかった。
【0007】
また、韓国登録特許第10-1678622号(特許文献3)では、二酸化珪素-カーボン多孔質複合体を形成した後、金属の珪素を添加した後、1200~1400℃の温度で1次加熱した後、~1800℃の温度で最終熱処理を実施する方法が提案されている。
【0008】
また、韓国公開特許第10-2015-0123114(特許文献4)では、炭素源と珪素源の混合物から炭化工程(800~1100℃)及び合成工程(~1900℃)を経て微粒の炭化珪素粉末を形成した後、炭素源をさらに混合する工程を実施し、2100~2200℃温度で熱処理を実施することにより、1~300μmの大きさを有するα相又はβ相の炭化珪素粉末を提供する方法が提案されている。
【0009】
前述した従来方法によれば、炭化珪素顆粒粉末を製造するのに繰り返される熱処理及び原料の追加的な混合などの過程が要求されて経済的な製造が難しいという問題があるので、高純度α相炭化珪素顆粒粉末を経済的に製造することができる工程改善が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国登録特許第5,863,325号公報
【文献】米国登録特許第6,627,169号公報
【文献】韓国登録特許第10-1678622号公報
【文献】韓国公開特許第10-2015-0123114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述した従来の炭化珪素顆粒粉末の製造方法で指摘された問題点である高純度出発原料の使用、複雑な製造工程、顆粒粉末の収率及び純度の改善必要性などを解決することを本発明が解決しようとする課題とする。
【0012】
また、本発明の他の目的は、前記方法で製造された高純度顆粒α相炭化珪素粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した課題の解決のために、本発明は、I)液状の珪素化合物及び炭素化合物を含む出発原料をゾルゲル工程で反応させることにより、二酸化珪素網目構造内に炭素化合物が分散されているゲルを製造する段階と、II)前記ゲルを1次熱処理して前記炭素化合物を熱分解することにより、ナノサイズの炭素粒子を含む二酸化珪素-カーボン複合体を製造する段階と、III)前記二酸化珪素-カーボン複合体を前記1次熱処理より高温で2次熱処理して顆粒α相炭化珪素粉末を得る段階とを含む、高純度顆粒α相炭化珪素粉末の製造方法を提供する。
【0014】
前記珪素化合物は、オルト珪酸トラエチル(tetraethyl orthosilicate、TEOS)、オルト珪酸テトラメチル(tetramethyl orthosilicate、TMOS)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含むことができる。
【0015】
前記炭素化合物は、フェノール樹脂、蔗糖(sucros)、麦芽糖(maltose)、フラン(franc)、乳糖(lactose)、ポリイミド(polyimide)、キシレン(xylene)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含むことができる。
【0016】
前記出発原料において珪素原子と炭素原子のモル比(C/Si)は1:1.6~3.0であることができる。
【0017】
前記ゾルゲル工程は、前記出発原料を溶媒に投入し、触媒剤を添加してから撹拌することができる。
【0018】
前記触媒剤は、シュウ酸、マレイン酸、硝酸、塩酸、アクリル酸、トルエンスルホン酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含む酸(acid)と、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア水、ヘキサメチレンテトラアミン及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含む塩基(base)とを含むことができる。
【0019】
前記撹拌は、400~2000rpmの速度及び25~60℃の温度で遂行することができる。
【0020】
前記ゲルを1次熱処理するに先立ち、前記ゲルを乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0021】
前記1次熱処理は、前記ゲルを2~5℃/minの昇温速度で1100~1250℃まで加熱して二酸化珪素-カーボン複合体を製造することができる。
【0022】
前記二酸化珪素-カーボン複合体に含まれた炭素粒子の平均粒度は5nm以下であることができる。
【0023】
前記二酸化珪素-カーボン複合体を2次熱処理するに先立ち、前記二酸化珪素-カーボン複合体を300μm以下の大きさに分級する段階をさらに含むことができる。
【0024】
前記2次熱処理は、前記二酸化珪素-カーボン複合体を5~15℃/minの昇温速度で2000~2100℃まで加熱して顆粒α相炭化珪素粉末を得ることができる。
【0025】
前記製造方法は、追加的な原料の投入がないことができる。
【0026】
前記顆粒α相炭化珪素粉末は、平均粒度が70~500μm、粒度分布(d90/d10)が5以下、純度が99.9995重量%以上であることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の製造方法によれば、平均粒度が70~500μmであり、粒度分布(d90/d10)が5以下であって粒度が均一であり、金属不純物の含量が10ppm以下の高純度顆粒α相炭化珪素粉末を複雑な熱処理工程及び追加原料の混合工程なしに簡素化した工程で製造することができるから経済性及び収率を高めることができる。
【0028】
また、本発明の製造方法によれば、二酸化珪素-カーボン複合体の製造に使われる珪素源と炭素源の組成変化及び熱処理温度及び維持時間によって炭化珪素粉末の大きさ、粒度及び純度を効果的に制御することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及び利点は添付図面に基づく以下の好適な実施例によって易しく理解可能であろう。しかし、本発明はここで説明する実施例に限定されず、他の形態に具体化することもできる。むしろ、ここで紹介する実施例は開示の内容が徹底的で完全になるように、かつ通常の技術者に本発明の思想が充分に伝達されるようにするために提供するものである。
【0030】
各図の説明において類似の参照符号を類似の構成要素に付けた。添付図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して示すものである。第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使うことができるが、前記構成要素は前記用語に限定されてはいけない。前記用語は一構成要素を他の構成要素と区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない範疇内で第1構成要素は第2構成要素と名付けることができ、同様に第2構成要素も第1構成要素と名付けることができる。単数の表現は文脈上明らかに他に指示しない限り、複数の表現を含む。
【0031】
本明細書で、“含む”又は“有する”などの用語は明細書上に記載した特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分“上に”あると言う場合、これは他の部分の“すぐ上に”ある場合だけではなく、その中間に他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“下に”あると言う場合、これは他の部分の“すぐ下に”ある場合だけではなく、その中間に他の部分がある場合も含む。
【0032】
他に明示しない限り、本明細書で使用した成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表現する全ての数字、値及び/又は表現は、このような数字が本質的に他のものの中でこのような値を得るのに発生する測定の多様な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合に“約”という用語で修飾されるものと理解されなければならない。また、以下の記載で数値範囲を開示する場合、このような範囲は連続的であり、他に指示しない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指示する場合、他に指示しない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0033】
本発明は液状の珪素化合物及び炭素化合物を原料として使用して製造したもので、炭素化合物の熱分解によって生成されたナノサイズの炭素粒子が均一に分布されている二酸化珪素-カーボン(SiO-C)複合体及びその製造方法に関するものである。
【0034】
また、本発明は、前述した二酸化珪素-カーボン(SiO-C)複合体を特定の加熱温度で熱処理工程で熱炭素還元反応させて製造した高純度顆粒α相炭化珪素粉末及びその製造方法に関するものである。
【0035】
本発明が特徴とするナノサイズ炭素が均一に分布された二酸化珪素-カーボン(SiO-C)複合体の製造方法と、高純度顆粒α相炭化珪素粉末の製造方法を一連の製造段階で示せば次のようである。
【0036】
I)液状の珪素化合物及び炭素化合物を含む出発原料をゾルゲル工程で加水分解反応及びゲル化反応させることにより、二酸化珪素網目構造内に炭素化合物が均質に分散されているゲルを製造する段階と、
II)前記ゲルを乾燥し、乾燥されたゲルを2~5℃/minの昇温速度で1100~1250℃まで加熱して1次熱処理することにより、前記炭素化合物が熱分解して生成されたナノサイズの炭素粒子が均一に分布されている二酸化珪素-カーボン複合体を製造する段階と、
III)前記二酸化珪素-カーボン複合体を不活性雰囲気又は真空雰囲気で5~15℃/minの昇温速度で2000~2100℃温度まで加熱する2次熱処理工程で熱炭素還元反応させて顆粒α相炭化珪素粉末を得る段階。
【0037】
以下、本発明を一具現例に基づいてより詳細に説明する。
【0038】
本発明の前記I)段階では、液状の珪素化合物及び炭素化合物を出発原料として使い、これらの出発原料を混合した後、触媒剤を添加して珪素化合物を加水分解させるゾルゲル工程によって二酸化珪素網目構造内に炭素化合物が均一に分散されたゲルを製造する段階を経る。
本発明の好適な具現例によれば、前記液状の珪素化合物としては、全てのシリコンアルコキシド類及びポリエチルシリケートの中で選択される1種以上を使うことができる。具体的に、前記珪素化合物は、オルト珪酸トラエチル(tetraethyl orthosilicate、TEOS)、オルト珪酸テトラメチル(tetramethyl orthosilicate、TMOS)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含むことができる。
【0039】
本発明の好適な具現例によれば、前記炭素化合物としては、有機炭素化合物であるフェノール樹脂類及び多糖類(sucrose)の中で選択される1種以上を使うことができる。具体的に、前記炭素化合物は、フェノール樹脂、蔗糖(sucrose)、麦芽糖(maltose)、フラン(franc)、乳糖(lactose)、ポリイミド(polyimide)、キシレン(xylene)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含むことができる。
【0040】
本発明の好適な具現例によれば、前記出発原料において珪素原子と炭素原子のモル比(C/Si)は1:1.6~3.0であることができる。前記炭素原子のモル比が増加するほど、製造された炭化珪素粉末の粒度は微細に減少する傾向を現す。一方、炭素原子のモル比が1.6未満であれば炭化珪素合成の際に合成収率が急激に減少することがあり、3.0を超えれば過量の炭素が炭化珪素への相変化を抑制し、β相炭化珪素粉末の相変化による顆粒のα相炭化珪素粉末の生成が難しく、よって製造された炭化珪素粉末の粒度が小さく、粒度分布(d90/d10)が広くなることがある。
【0041】
前記出発原料の混合では、通常の撹拌方法で400~2000rpmの速度で常温(25℃)~60℃で撹拌して均質な液状ゾル(sol)を製造することができる。
【0042】
本発明の好適な具現例によれば、前記出発原料の混合過程で通常の撹拌速度より高い速度で撹拌することが特徴的である。これは、前記炭素化合物が含んでいる炭素源の大きさを小さくて均質にして二酸化珪素網目構造に均質に分布させるためである。
【0043】
本発明の好適な具現例によれば、前記出発原料の溶解に使われる溶媒は、水、アルコール又はアルコール水溶液であり、前記溶媒は、前記珪素化合物1モルに対して10モル以下、好ましくは1~5モルの範囲で使うことができる。具体的に、前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、メタノール水溶液又はエタノール水溶液を使うことができる。また、出発原料の均一な混合と不純物混入の防止のために、全ての容器及び装置に金属及び金属化合物の流入の少ないテフロンをコートして使用することによって混合することができる。
【0044】
本発明の好適な具現例によれば、前記出発原料を混合して撹拌するとき、珪素化合物の加水分解反応及びゲル化反応の触媒剤として酸又は塩基水溶液を添加し、前記酸又は塩基水溶液は前記珪素化合物内の珪素元素(Si)に対して酸又は塩基のモル比が0.2以下、具体的には0.01~0.2モルであり、水のモル比が10以下、具体的には1~10モルになるように酸又は塩基と水を混合したものであることができる。
【0045】
本発明の好適な具現例によれば、前記珪素化合物の加水分解及びゲル化反応に使われる触媒剤としての酸は、シュウ酸、マレイン酸、硝酸、塩酸、アクリル酸、トルエンスルホン酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含むことができ、塩基はアルカリ金属の水酸化物(代表的に、水酸化ナトリウム)、アンモニア水、ヘキサメチレンテトラアミン及びこれらの組合せからなる群から選択されるものを含むことができる。
【0046】
本発明の前記II)段階では、前記ゲルを乾燥し、乾燥されたゲルを1100~1250℃で一定時間熱処理することにより、前記炭素化合物の熱分解によって生成されたナノサイズの炭素粒子が均一に分布されている二酸化珪素-カーボン複合体を製造する段階を経る。
【0047】
本発明の好適な具現例によれば、前記ゲルを蒸溜水に浸漬してアルコール成分を希釈した後、オーブンなどで40~80℃の温度で乾燥させ、乾燥されたゲルを不活性雰囲気又は真空雰囲気で昇温速度2~5℃/minで1100~1250℃まで昇温させ、0.5~3時間の間に1次熱処理することにより、ナノサイズの炭素粒子が均質に分布された二酸化珪素-カーボン(SiO-C)複合体を製造することができる。
【0048】
以上で説明した製造方法によって製造された二酸化珪素-カーボン(SiO-C)複合体は二酸化珪素網目構造の間に5nm以下の炭素粒子が均一に分布されているものであることができる。このように製造された二酸化珪素-カーボン複合体は本発明による高純度顆粒α相炭化珪素粉末の製造のための原料として好ましく使われることができる。
【0049】
一方、本発明の好適な具現例によれば、前記二酸化珪素-カーボン複合体を高純度顆粒α相炭化珪素粉末のための原料として使うに先立ち、一定の大きさに分級することができる。これは最終的に得られる顆粒α相炭化珪素粉末の粒度分布(d90/d10)を均一にするためであり、例えば、前記二酸化珪素-カーボン複合体を300μm以下の大きさに分級し、これを後述する2次熱処理の対象とすることができる。
【0050】
本発明の前記III)段階は前記二酸化珪素-カーボン複合体を不活性雰囲気又は真空雰囲気で5~15℃/minの昇温速度で2000~2100℃まで加熱して2次熱処理する工程で、熱炭素還元反応によって高純度顆粒のα相炭化珪素粉末を製造する段階である。
【0051】
本発明の好適な具現例によれば、前記二酸化珪素-カーボン複合体を高純度真空炉、例えば高純度黒鉛真空炉に高充填率で装入した後、アルゴン不活性雰囲気又は真空(10-1Torr以下)雰囲気で2次熱処理工程を遂行するにあたり、熱処理温度と維持時間を変化させることにより、狭い粒度分布を有する高純度顆粒α相炭化珪素粉末を多様な平均粒度に調節して製造することができる。
【0052】
本発明の好適な具現例によれば、顆粒のα相炭化珪素粉末製造のための2次熱処理工程は、不活性雰囲気又は真空雰囲気で5~15℃/minの昇温速度で2000~2100℃まで加熱し、10分~5時間維持しながら熱処理する工程を遂行して高純度炭化珪素顆粒粉末を製造することができる。
【0053】
本発明の好適な具現例によれば、前記方法で製造された炭化珪素粉末は平均粒度70~500μmの大きさを有し、粒度分布(d90/d10)は5以下の均一な粒度を有し、不純物含量が10ppm以下であり、純度が99.9995重量%以上であることができる。
【0054】
本発明によれば、ゾルゲル工程によって二酸化珪素網目構造内に炭素化合物が均質に分散されたゲルを製造し、このように製造されたゲルを乾燥及び熱処理することにより、熱分解によって生成されたナノサイズの炭素粒子が均一に分布されている二酸化珪素-炭素複合体を製造することができ、これを用いて高純度顆粒α相炭化珪素粉末を製造することができる。
【0055】
本発明によれば、出発原料の組成変化と熱処理工程の温度及び加熱時間の調節などによって高純度顆粒のα相炭化珪素粉末の大きさを効果的に制御することができる。
【0056】
本発明によれば、高純度顆粒α相炭化珪素粉末を合成するために、追加的な出発原料の投入工程を排除し、反復的な熱サイクルを有しない簡単な熱処理工程で熱炭素還元反応を進行させて最大500μmサイズの高純度の顆粒α相炭化珪素粉末を製造することができるので、炭化珪素粉末製造工程の信頼性を向上させ、製造された炭化珪素粉末は高い経済性を有し、単結晶成長工程に幅広く適用することができる。
【0057】
したがって、本発明は工程上有利であり、超高純度炭化珪素粉末の製造コストを低めることができるから、従来のPVT(physical vapor transport)方法による電力半導体製造用炭化珪素単結晶ウエハーの製造コストを低めることができる経済的な効果がある。
【0058】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明が実施例によって限定されるものではない。
【0059】
実施例1~3
高純度の顆粒α相炭化珪素粉末を製造するために、液状珪素化合物としては、金属不純物含量が20ppm以下のオルト珪酸トラエチル(TEOS、tetraethyl orthosilicate)を使い、炭素化合物としては金属不純物含量が100ppm級の固状フェノールレジン(ノボラックタイプ)を使った。前記TEOS及びフェノールレジンは、熱処理後の残留炭素量を考慮して、珪素原子と炭素原子のモル比が1:1.6~3.0になるようにそれぞれ測量して準備した。
【0060】
具体的に、表1に示す含量比で炭素化合物と珪素化合物を混合して撹拌した。すなわち、炭素化合物であるフェノールレジンを珪素化合物1モルに対して4モルのエタノールに溶解させた後、珪素化合物であるTEOSを添加し、2000rpmの撹拌速度で常温で充分に混合して撹拌した。充分に混合された出発原料溶液に、珪素化合物の珪素元素(Si)に対して硝酸0.07モルと水2モルが混合された硝酸水溶液を添加し、常温でゲルになるまで撹拌した。
【0061】
フェノールレジンが均質に分散されたゲルを高純度蒸溜水に浸漬してアルコール成分を低め、前記ゲルを約80℃で約24時間乾燥させた。乾燥されたゲルを高純度黒鉛るつぼに入れて石英反応炉に装入した後、窒素ガス雰囲気で5℃/minの速度で1200℃まで昇温し、0.5時間の間に1次熱処理することによって二酸化珪素-炭素(SiO-C)複合体を製造した。前記製造された二酸化珪素-炭素複合体内の熱分解された炭素の大きさは2nm以下であり、二酸化珪素-炭素複合体は300μm以下の大きさに分級して顆粒α相炭化珪素粉末製造のための熱処理過程に使った。
前記分給された二酸化珪素-炭素複合体を高純度黒鉛るつぼに60%の充填率で入れて高純度黒鉛真空炉(graphite furnace)に装入し、真空雰囲気(10-2torr)で10℃/minの昇温速度で2000℃まで加熱した後、3時間の間に2次熱処理することによって顆粒のα相炭化珪素粉末を製造した。
【0062】
前記実施例1~3で製造した二酸化珪素-炭素複合体として顆粒α相炭化珪素粉末の特性は下記の表1にまとめて示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例4~5
前記実施例1と同様な方法で二酸化珪素-炭素複合体を製造し、炭素原子/珪素原子のモル比は2.3に固定した。
【0065】
二酸化珪素-炭素複合体を高純度黒鉛るつぼに60%の充填率で入れて高純度黒鉛真空炉(graphite furnace)に装入し、真空雰囲気(10-2torr)で2次熱処理するにあたり、昇温速度を10℃/minにして2100℃温度まで加熱し、維持時間をそれぞれ1時間、3時間に調節することにより、高純度の顆粒α相炭化珪素粉末を合成した。
【0066】
前記実施例4~5で製造した顆粒α相炭化珪素粉末の特性は下記表2にまとめて示す。
【0067】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明による顆粒α相炭化珪素粉末はPVT方法による炭化珪素単結晶製造工程の原料のための原料として適用可能である。