(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】CO2膜を含む改質装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/38 20060101AFI20220628BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20220628BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20220628BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C01B3/38
C01B32/50
B01D53/22
B01D71/02 500
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020199490
(22)【出願日】2020-12-01
(62)【分割の表示】P 2017552985の分割
【原出願日】2016-03-31
【審査請求日】2020-12-23
(32)【優先日】2015-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】モーデンスン・ピーダ・ムルゴー
(72)【発明者】
【氏名】ウストベアウ・マーティン
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-519012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0168572(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0047989(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0090125(US,A1)
【文献】米国特許第07938893(US,B2)
【文献】特表2012-511493(JP,A)
【文献】特開2010-235736(JP,A)
【文献】特開2010-189217(JP,A)
【文献】特開2012-066961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-6/34
C01B 32/50-32/55
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応体ガスとしての炭化水素流と、反応生成物としての水素に富んだ合成ガスとを有する反応を行うための反応チャンバを含む改質装置であり、該反応チャンバ内には膜が設けられており、反応チャンバを加熱するための加熱反応器をさらに含む、該改質装置であって、
a. 前記膜が、CO
2を通過させるように配置された二相セラミックカーボネート半透膜である、
b. 前記反応チャンバが、水蒸気メタン改質反応を触媒し、かつ、水性ガスシフト反応を触媒するために配置された触媒材料を含み、および、
c. 前記改質装置が、反応チャンバ内で15~50bargの圧力で水蒸気メタン改質反応を行うように配置されており、
水蒸気改質中の前記改質装置内の温度が800℃未満であ
り、および
前記反応チャンバが、それが加熱反応器によって取り囲まれるように加熱反応器中に配置され、および前記半透膜が、反応チャンバの長手方向軸に沿って延びる内側管として前記反応チャンバ中に配置され、それによって、前記半透膜と前記反応チャンバの内壁との間に空間が形成されている、
ことを特徴とする、上記の改質装置。
【請求項2】
前記加熱反応器が、それに燃料を供給するための入口、任意選択的におよびそれに酸化剤流を供給するためのさらに別の入口、および燃焼ガスを排出するための出口を有する、請求項
1に記載の改質装置。
【請求項3】
前記触媒材料が、前記半透膜と前記反応チャンバの内壁との間の空間に配置されており、
- 前記空間が、反応体ガスとしての炭化水素流をそれに供給するための入口、および反応生成物としての水素に富んだ合成ガスを排出するための出口を有し、および
- 内側管としての前記半透膜の内部空間は、内側拡散チャンバとして働くことができ、該内側拡散チャンバは、拡散チャンバ中に拡散したCO
2を、出口に通して該拡散チャンバから一掃するように配置されたスイープガスを受け入れるための入口を有する、
請求項
1または
2に記載の改質装置。
【請求項4】
前記触媒材料が、内側管としての前記半透膜の内部空間中に配置されており、
- 前記半透膜の前記内部空間が、反応体ガスとしての炭化水素流をそれに供給するための入口、および反応生成物としての水素に富んだ合成ガスを排出するための出口を有し、および
- 前記半透膜と前記反応チャンバの内壁との間の空間は、外側拡散チャンバとして働くことができ、該外側拡散チャンバは、拡散チャンバ内に拡散されたCO
2を、出口に通して該拡散チャンバから一掃するように配置されたスイープガスを受け入れるための入口を有する、
請求項
1または
2に記載の改質装置。
【請求項5】
スイープガスおよび反応体ガスを向流で流すことができるように配置された、請求項
3または
4に記載の改質装置。
【請求項6】
前記半透膜の透過度が、1kmol/m
2/h/atm超である、請求項1~
5のいずれか一つに記載の改質装置。
【請求項7】
前記半透膜が反応チャンバの最下流部のみに設けられている、請求項1~
6のいずれか一つに記載の改質装置。
【請求項8】
前記半透膜が反応チャンバの最下流側の半分のみに設けられている、請求項1~
6のいずれか一つに記載の改質装置。
【請求項9】
前記半透膜が反応チャンバの最下流側の1/3のみに設けられている、請求項1~
6のいずれか一つに記載の改質装置。
【請求項10】
前記半透膜が反応チャンバの最下流側の1/4のみに設けられている、請求項1~
6のいずれか一つに記載の改質装置。
【請求項11】
水蒸気改質中の前記改質装置内の温度が700℃である、請求項1~
10のいずれか一つに記載の改質装置。
【請求項12】
前記改質装置が、燃焼改質器、放射壁改質器(radiant wall reformer)、対流改質器、または自己熱改質器である、請求項1~
11のいずれか一つに記載の改質装置。
【請求項13】
反応体ガスとしての炭化水素流と、反応生成物としての水素に富んだ合成ガスとを有する反応を改質装置内で行うための方法であり、該改質装置が反応チャンバを含み、該反応チャンバが二相セラミックカーボネート半透膜および該反応チャンバを加熱するための加熱反応器を含む、該方法であって、
a. 前記炭化水素流を前記改質装置内に導入し、そして、反応チャンバ内で、水蒸気メタン改質反応を触媒しかつ水性ガスシフト反応を触媒するために配置された触媒材料と接触させること、
b. 反応中、CO
2が前記半透膜を通過すること
、
c. 反応チャンバ内の圧力が15~50bargであること、
水蒸気改質中の前記改質装置内の温度が800℃未満であること、
および
前記反応チャンバが、それが加熱反応器によって取り囲まれるように加熱反応器中に配置され、および前記半透膜が、反応チャンバの長手方向軸に沿って延びる内側管として前記反応チャンバ中に配置され、それによって、前記半透膜と前記反応チャンバの内壁との間に空間が形成されていること、
を特徴とする、上記の方法。
【請求項14】
CO
2が連続的に反応チャンバから除去される、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱反応器が、それに燃料を供給するための入口と、任意選択的におよびそれに酸化剤流を供給するためのさらに別の入口、および燃焼ガスを排出するための出口を有する、請求項
13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒材料が、前記半透膜と前記反応チャンバの内壁との間の空間に配置されており、内側管としての前記半透膜の内部空間は内側拡散チャンバとして働くことができ、スイープガスが入口を介して該内側拡散チャンバ内に入り、その際、該スイープガスが、拡散チャンバ内に拡散されたCO
2を、出口に通して該拡散チャンバから一掃する、請求項
13~15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
前記触媒材料が、内側管としての前記半透膜の内部空間中に配置されており、および前記半透膜と前記反応チャンバの内壁との間の空間は外側拡散チャンバとして働くことができ、スイープガスが入口を介して該外側拡散チャンバ内に入り、その際、該スイープガスが、拡散チャンバ内に拡散されたCO
2を、出口に通して該拡散チャンバから一掃する、請求項
13~15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
前記スイープガスおよび前記反応体ガスを向流で流す、請求項
16または
17に記載の方法。
【請求項19】
水蒸気改質中の前記改質装置内の温度が700℃である、請求項
13~
18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
前記半透膜が反応チャンバの最下流部のみに設けられている、請求項
13~
19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
前記半透膜が反応チャンバの最下流側の半分のみに設けられている、請求項
13~
19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
前記半透膜が反応チャンバの最下流側の1/3のみに設けられている、請求項
13~
19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
前記半透膜が反応チャンバの最下流側の1/4のみに設けられている、請求項
13~
19のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応体ガスとしての炭化水素流と、反応生成物としての水素に富んだ合成ガスとを有する反応を行うための反応チャンバを含む改質装置に関し、その際、該反応チャンバ内に膜が設けられ、前記改質装置は、該反応チャンバを加熱するための加熱反応器をさらに含む。さらに、本発明は、反応体ガスとしての炭化水素流と、反応生成物としての水素に富んだ合成ガスとを有する反応を、改質装置において実施するための方法にも関し、その際、該改質装置は反応チャンバを含み、該反応チャンバは、半透性膜、および加熱反応器を含む。
【0002】
現在、硫黄含有量を低減するために水素が利用される製油所においておよびバレル残油のアップグレードにおいて特に、水素の世界的需要が増加している。所与の製油所内で、水素プラントは、エネルギー入力に関する最大の燃焼炉の1つとして重要な役割を果たすであろう。したがって、水素プラントのエネルギー消費とCO2フットプリントとを削減するために、水素製造の効率を最大にすることが重要である。
【0003】
反応体ガスとしての炭化水素流と、反応生成物としての水素に富んだ合成ガスとを有する反応を行うための反応チャンバを含む改質装置内において、典型的な反応は次を含む。
(1) CH4 + H2O = CO + 3H2
(2) CO + H2O = CO2 + H2
(3) CnHm + nH2O = nCO + (n+1/2m)H2
【0004】
反応(3)は、供給ガスが高級炭化水素を含む場合にのみ起こる。
【0005】
改質反応(1)と水性ガスシフト反応(2)との組み合わせは、次のとおりである。
(4) CH4 + 2H2O = CO2 + 4H2
【0006】
国際公開第2007/142518号パンフレット(特許文献1)は、反応生成物として水素を有する反応を行うための反応装置および方法に関する。反応装置は、反応生成物として水素(H2)を有する反応を行うための反応チャンバを含む。該反応装置は、燃焼チャンバと水素透過膜とを含み、該膜は、反応チャンバと燃焼チャンバとの間に設けられる。燃焼チャンバには、空気などの酸素(O2)を含む流体を燃焼チャンバに供給するための供給チャネルが設けられている。
【0007】
米国特許第8,163,065号明細書(特許文献2)は、二酸化炭素透過膜に関する。該膜は、第1の側および反対側の第2の側を有する本体を含み、そして、該本体は、二酸化炭素を第1の側から第2の側に流すように構成されている。米国特許第8,163,065号明細書(特許文献2)の第10欄第43~第51行には、二酸化炭素膜を水蒸気メタン改質に使用できたことが記載されている。しかしながら、この発明では、システムは低圧運転に制限され得、バイオマス、石油、石炭または木炭などのより炭素に富む燃料の酸素または水蒸気によるガス化は、高温高圧の膜を使用することが好ましいとされる、より高い濃度の二酸化炭素生成物ガスを含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2007/142518号パンフレット
【文献】米国特許第8,163,065号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的の一つは、炭化水素反応体ガスから水素の収率を高めるための改質装置および方法を提供することである。本発明の別の目的の一つは、改質装置および水素製造方法の運転コストを低減することである。本発明の別の目的の一つは、水素製造プラントの設備投資を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、反応体ガスとしての炭化水素流と、反応生成物としての水素に富んだ合成ガスとを有する反応を行うための反応チャンバを含む改質装置に関する。膜は反応チャンバ内に設けられ、そして、改質装置は、反応チャンバを加熱するための加熱反応器をさらに含む。該膜は、CO2を通過させるように配置された半透膜である。反応チャンバは、水蒸気メタン改質反応を触媒し、かつ、水性ガスシフト反応を触媒するように配置された触媒材料を含む。改質装置は、反応チャンバ内で約15~約50bargの圧力で水蒸気メタン改質反応を行うように配置されている。半透膜は、二酸化炭素にそこを通過させ、かつ、反応の他の成分、すなわち、水素、COがそこを通過するのを阻害するように配置される。
【0011】
当業者であれば、水蒸気メタン改質反応を触媒するようにかつ水性ガスシフト反応を触媒するように配置される適切な触媒材料をどのように選択するかについての知識を具えているであろう。例としてのみであるが、そのような触媒材料は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウムのような酸化物からなるセラミック担体を有するニッケルベースの水蒸気改質触媒であってもよい。触媒はまた、活性相としてルテニウムおよび/またはレニウムも含むことができる。
【0012】
膜材料は、任意の適切な膜材料、有利には二相セラミックカーボネート膜であってよい。例としては、SDC(Ce0.8Sm0.2O1.9)、LSCF(La0.6Sr0.4Co0.8Fe0.2O3-σ)、またはLCGFA(La0.85Ce0.1Ga0.3Fe0.6Al0.05O3-σ)、またはLi/Na/Kカーボネートの混合物のカーボネート相がセラミック相であることができる。二相セラミック-カーボネート膜は、CO2が膜を通って輸送される非多孔質膜である。CO2は、膜中で酸素イオンと反応し、次いで、カーボネート相中でCO2欠乏側に拡散することができる。次いで、酸素イオンは、セラミック酸化物中でCO2に富む側に戻される。これら膜は、漏れ止めが確保され、そしてさらに高温運転(最高1000℃まで)で使用できる場合、CO2に対する絶対選択性を備える。
【0013】
典型的な改質装置は、改質装置が不用意に大きくなるのを避けるために、15~50bargのような中圧で運転される。得られた水素リッチガスが中圧で生産(output)される場合、水素に富んだ合成ガスを加圧するための別個の圧縮機の使用は不必要である。しかしながら、改質器内のこの圧力は、反応の観点から不利である。改質器に水素透過膜を使用することはよく知られている。しかしながら、この場合、CO2リッチガスは、典型的には、中圧、例えば、30bargで送出され、一方、水素H2は低圧、例えば、1barとなる。
【0014】
本発明に従い、反応チャンバ内で半透膜を使用し、この膜が、CO2が通過できるように配置される場合は、水素に富んだ合成ガスを、反応チャンバ内の圧力に対応する中圧で生産することができる一方で、CO2は約1barで提供される。従って、圧縮機を使用せずに中圧で水素に富んだ合成ガスを生産することができる。
【0015】
触媒材料が、水蒸気メタン改質反応および水性ガスシフト反応の両方を触媒するように配置されている場合、水蒸気メタン改質および水性ガスシフトの両方を反応チャンバ内で行うことができる。水蒸気メタン改質反応と水性ガスシフト反応との組み合わせは、(4) CH4 + 2H2O = CO2 + 4H2である。改質装置内で既に一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO2)が除去されており、そして、触媒材料が水蒸気メタン改質反応および水性ガスシフト反応の両方を触媒するように配置されている場合、別個の水性ガスシフトユニットおよび/または圧力スイング吸着ユニットは省略し得るし、または少なくとも小型化し得る。さらに、一酸化炭素および/または二酸化炭素の含有量がほとんど、あるいは、全くない高純度水素を有する生成物が得られる。
【0016】
CO2がCO2膜を通過して改質装置から出るとき、反応(4)は生成物に向かってシフトし(反応の右側)、そしてそれにより、類似の水素収率を維持しつつ、CO2が反応チャンバ内に留まる状況と比較して改質装置内の温度を低下させることができる。反応(4)が生成物に向かってシフトするため、全てのCOも除去され、CH4スリップは最小化され得る。反応温度を低下させることができることに加えて、水素を製造するプラント内の水性ガスシフトのための別個のユニットを、大幅に小型化できるか、または省略さえできるという点が別の利点である。
【0017】
総じて、同じ条件で操業されているが膜を用いていない反応装置と比較して、反応チャンバ内にCO2膜を有する反応装置では、消費された炭化水素反応体ガス当たりの水素収率もまた増加する。さらに、CO2は、比較的純粋な、場合により貴重な製品として送り出されるか、またはそのような製品に比較的容易に変換され得る。メタン改質は、高エネルギー入力を必要とする強い吸熱反応であり、典型的には、高いCO2フットプリントを結果として招く。CO2フットプリントは、炭化水素供給物流中のC原子がCO2生成物中に収集されず(これは従来ではNH3プラントで行われる)、下流のC含有生成物の一部にも収集されず、煙突に排出される水素プラントにおいて特に大きい。改質装置内の膜でCO2を除去することにより、必要な改質温度が比較的低いことによる必要な熱入力の大幅な減少と、CO2排出量の固有の減少とが容易になる。さらに、炭化水素供給物流中のC原子をCO2フットプリントの豊富な生成物中に収集することは、水素プラントからのCO2フットプリントの実質的なさらなる減少をもたらす。
【0018】
本発明は、反応チャンバを1つだけ有する改質装置に限定されないことは明らかであり、それに代えて、任意の適切な数の反応チャンバが改質装置内に存在してもよい。
【0019】
一実施形態では、膜は内側拡散チャンバを画定し、内側拡散チャンバは、拡散チャンバ内に拡散したCO2を拡散チャンバの出口に通してそこから一掃するように配置されたスイープガスを受け入れる入口を有する。例としてのみであるが、該スイープガスはN2またはH2Oであってもよい。例としてのみであるが、膜は、反応チャンバ内に内側管として内部配置してよく、そうして、本発明の改質装置の操業中にCO2が内側管の外側から内側管内に拡散するようにしてもよい。
【0020】
別の実施形態において、膜が内側反応チャンバおよび外側拡散チャンバを画定し、該外側拡散チャンバは、外側拡散チャンバ中に拡散したCO2を、該拡散チャンバに通しておよび出口に通して該外側拡散チャンバから一掃するように配置されたスイープガスを受け入れるための入口を有する。膜は、内側管として内部配置することができ、これはその際に触媒材料を収容し、そして、外側拡散チャンバは、膜によって形成された内側管と反応チャンバとの間の空間によって画定される。膜によって形成される内側管の直径は、水素に富んだ合成ガスの生成に影響を及ぼす。膜の直径または内側管の直径を大きくすることは、水素に富んだ合成ガスの生成を増大させる。
【0021】
一実施形態では、改質装置は、スイープガスと反応ガスとを向流で流すように配置されている。スイープガスが反応体ガス流に対して向流で流れるとき、スイープガスが反応体ガス流と並流で流れる場合と比較して、水素に富んだ合成ガスの生成が増大することが計算によって示されている(
図5参照)。これは、スイープガスが反応ガス流と並流で流れるときの、スイープガスのCO
2による飽和に起因する。このような飽和は、向流で回避される。
一実施形態では、CO
2膜の透過度(permeance)は、約1kmol/m
2/h/atmを超え、好ましくは約3kmol/m
2/atmを超え、より好ましくは約8kmol/m
2/h/atmを超える。CO
2膜の透過度は、水素に富んだ合成ガスの生成に重要な影響を及ぼし、少なくとも約2kmol/m
2/h/atmまでである。
【0022】
一実施形態では、膜は、反応チャンバの最下流部にのみに、例えば反応チャンバの最下流側の半分に、反応チャンバの最下流側の1/3にまたは最下流側の1/4にのみ設けられる。特に、反応ガスと並流にあるスイープガスの場合には、反応チャンバの上流部分からCO2を集中的に除去すると水素に富んだ合成ガスの生成を減少させることが、シミュレーションによって明らかとなった。これは、この部分でのCO2の除去が、水性ガスシフト反応を“CO2 + H2”側にシフトさせ(反応(4)を参照)、その結果、水が除去されて、それにより水蒸気改質反応におけるメタン転化の可能性が減少するからである(反応(1)参照)。反応チャンバの最下流側の半分にのみ、例えば、反応チャンバの最下流側の1/3または最下流側の1/4にのみ、CO2膜を設ける設計を行うことが有利であることが分かった。計算により、このような設計は、高い透過値(permeance values)のために、反応チャンバの全長に亘って膜を有する類似の反応チャンバと同じ効率を有することが示されている。
【0023】
一実施形態では、水蒸気改質中の改質装置内の温度は、約800℃未満、好ましくは約700℃である。水蒸気改質中の改質装置の運転温度を、例えば、950℃から約800℃未満にまで低下させた場合、例えば、約700℃である場合には、いくつかの利点が達成可能である。
- 加熱反応器によって提供するべき熱は減少する。加熱反応器が燃焼反応器(fired reactor)である場合、燃焼強度は低められる。
- 加熱反応器からの流出物を冷却するための廃熱セクションの寸法は、加熱反応器によって提供される熱に対する低減された要求のために減少する。
- 反応チャンバの材料に対する要求は減少し、これは、現在の反応チャンバと比較して、反応チャンバのより薄い壁および/またはより安価なタイプの材料を可能にする。
【0024】
一実施形態では、改質装置は、燃焼改質器、放射壁改質器(radiant wall reformer)、対流改質器、例えば、熱交換改質器または管状バヨネット改質器、または自己熱改質器である。自己熱改質器の場合、加熱反応器と反応チャンバは1つのチャンバに統合される。
【0025】
本発明の別の態様は、反応体ガスとしての炭化水素流と、反応生成物としての水素に富んだ合成ガス反応とを有する反応を改質装置内で実施する方法に関し、その際、該改質装置は反応チャンバを含み、該反応チャンバは、半透膜、および前記反応チャンバを加熱するための加熱反応器を含む。炭化水素流を、改質装置中へ導入し、反応チャンバ内で、水蒸気メタン改質反応を触媒するように配置され、かつ、水性ガスシフト反応を触媒するように配置された触媒材料と接触させる。反応中、CO2は半該透膜を通過する。反応チャンバ内の圧力は約15bargと約50bargとの間である。例としてのみであるが、反応チャンバ内の圧力は35bargである。
【0026】
一実施形態では、CO2は反応チャンバから連続的に除去される。一実施形態では、触媒材料は、反応チャンバ内の水性ガスシフト反応も触媒する。
【0027】
一実施形態では、膜は内側拡散チャンバを画定し、スイープガスは入口を介してこの内側拡散チャンバに入り、そこで、スイープガスが、拡散チャンバ中に拡散したCO2を出口を介して拡散チャンバから一掃する。例としてのみであるが、膜を内側管として反応チャンバ内に内部配置してよく、そうして本発明の改質装置の運転中に、CO2が内側管の外側から内側管内に拡散するようにしてもよい。
【0028】
一実施形態では、スイープガスおよび反応体ガスは向流で流れる。計算では、スイープガス流が反応体ガスと並流で流れる場合と比較して、スイープガスが反応体ガス流と向流で流れるときは水素に富んだ合成ガスの生成が増大することが示されている(
図5参照)。これは、スイープガスが反応体ガス流と並流で流れるときのスイープガスのCO
2による飽和に起因する。このような飽和は、向流で回避される。
【0029】
一実施形態では、水蒸気改質中の改質装置内の温度は、約800℃未満、好ましくは約700℃である。水蒸気改質中の改質装置の運転温度が、例えば、950℃から約800℃未満にまで低下された場合、例えば、約700℃である場合には、いくつかの利点が達成可能である。
- 加熱反応器によって提供するべき熱は減少する。加熱反応器が燃焼反応器(fired reactor)である場合、燃焼強度は低められる。
- 加熱反応器からの流出物を冷却するための廃熱セクションの寸法は、加熱反応器によって提供される熱に対する低減された要求のために減少する。
- 反応チャンバの材料に対する要求は減少し、これは、現在の反応チャンバと比較して、反応チャンバのより薄い壁および/またはより安価なタイプの材料を可能にする。
【0030】
“中圧”(medium pressure)”という語は、“低圧”(low pressure)という語の通常の意味と、“高圧”(high pressure)という語の通常の意味との間の圧力を意味することを意味し、“低圧”という語は、典型的には0~5bargの圧力を意味し、そして“高圧”という語は、典型的には約100bargまたはそれ以上の圧力を意味する。したがって、“中圧”は5barg~100bargとなる。
【0031】
“barg”という語は、大気圧に対してゼロ基準された圧力ゲージを示し、したがって大気圧を超える圧力を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図3a】
図3aは、本発明による改質装置の例示的な反応チャンバの概略図である。
【
図3b】
図3bは、本発明による改質装置の例示的な反応チャンバの概略図である。
【
図3c】
図3cは、本発明による改質装置の例示的な反応チャンバの概略図である。
【
図3d】
図3dは、本発明による改質装置の例示的な反応チャンバの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の反応チャンバ内の膜の効率の関数としての本発明の反応チャンバの一実施形態内の反応器温度を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の反応チャンバの一実施形態における膜のCO
2透過度の関数としてのH
2生成の増加を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図は、本発明の例示的な実施形態のみを示し、本発明を限定するものとして見なすべきではない。図の全体にわたり、同じ符号は同じ特徴を示すことを意味する。さらに、本発明の改質装置の配向は、
図2および
図3a~
図3dに示す配向に限定されないことに留意すべきである。したがって、改質装置の垂直方向の向きの代わりに、水平方向であってもよい。さらに、供給原料流は、必要に応じて、改質装置の上側の代わりにその下側で改質装置内に投入することができる。
【0034】
図1は、供給原料精製ユニット10、改質器20、水性ガスシフトユニット30および圧力スイング吸着ユニット40を含む水素プラント50の概略図である。
【0035】
供給原料流1は供給原料精製ユニット10に投入される。供給原料精製ユニット10は、硫黄化合物および/または塩素化合物を除去するために、および/または炭化水素供給原料流中のジオレフィンを含むオレフィンを飽和させるために配置される。供給原料流は、例えば、天然ガス/メタンCH4のような炭化水素流である。反応生成物2は水素(H2)である。
【0036】
水蒸気メタン改質を実施する際に、より安定でマイルドな運転条件を改質装置に提供するために、供給原料中の全ての高級炭化水素の水蒸気改質のための予備改質ユニット(
図1には図示せず)が存在してもよい。予備改質器を用いると、改質装置の反応チャンバ内での高級炭化水素からの炭素形成の危険性が低減され、最大平均流束および温度などの運転パラメータを最適化することができる。さらに、予備改質された炭化水素/水蒸気混合物を、予熱コイルでのコーキングの危険性なしに、高温(典型的には625~650℃)に予熱することができるため、熱統合および熱回収を改善することができる。
【0037】
改質器20において水蒸気改質が行われる。運転中、反応体流または供給流は、水蒸気改質器の反応チャンバに供給される。
【0038】
改質器20は、水蒸気メタン改質反応を実施するための1つまたは2つ以上の反応チャンバ、例えば改質器管を有する改質装置である。水蒸気メタン改質反応は吸熱性であるため、熱を供給する必要があり、そのために、1つまたは2つ以上の反応チャンバは、該1つまたは2つ以上の反応チャンバを加熱するための加熱反応器内に配置される。熱を提供するために、燃料4が加熱反応器に投入される。酸素または大気のような酸化剤流は、燃料4と共にまたは別個の投入部を介して、加熱反応器に投入してよい。
【0039】
改質器は、例えば、頂部燃焼改質器又は底部燃焼改質器のような燃焼改質器、放射壁改質器、対流改質器、熱交換改質器またはバヨネット改質器であってもよい。
【0040】
PSA40からのオフガス流3を、改質器20に投入してもよい。オフガス流3は、典型的には、CO
2、H
2およびCH
4を含み、その燃料価を使用するために、改質器20の加熱反応器にリサイクルされる。
図1では、流3および流4が1つの流れ5に混合されている。しかしながら、流3および流4を、加熱反応器への別々の投入部に投入することも考えられる。
改質装置内の触媒材料は、水蒸気メタン改質に加えて水性ガスシフトを行うように配置されている。改質装置内で触媒材料によって行われる水性ガスシフト反応が十分である場合、別個の水性ガスシフトユニットを用いることなく、または少なくともその規模を低減して行うことができる。しかしながら、別法として、別個の水性ガスシフトユニット30がプラント50内に存在してもよい。改質器20内の触媒が水性ガスシフトをも実行するように配置されている場合、水性ガスシフトユニット30は、従来の水性ガスシフト装置よりも小さくてもよい。
【0041】
供給原料流1がメタンCH4であり、改質器20内で部分的な水性ガスシフト反応のみが行われる場合、改質器20からの流れは、CO、CO2およびH2を含む。反応チャンバ内のガス中の大部分のCOが転化される完全な水性ガスシフト反応の場合、改質器からの流出物は主として二酸化炭素CO2および水素H2を含む。
【0042】
水性ガスシフトユニット30からの流れ(または別個の水性ガスシフトユニットのない水素プラント50の場合、改質器および水性ガスシフト複合ユニット20からの流れ)は、主に二酸化炭素CO2および水素H2を含む。
【0043】
水性ガスシフトユニット30からの流れ(または別個の水性ガスシフトユニットのない水素プラント50の場合、改質器および水性ガスシフト複合ユニット20からの流れ)は、水素2から二酸化炭素を分離するために配置された圧力スイング吸着(PSA)ユニット40中に投入される。二酸化炭素は、PSAユニット40から除去され、その一部は温度制御のために改質器2の加熱反応器に流れ3としてリサイクルされる。
【0044】
図1は水素プラントを示しているが、本発明は水素プラントに限定されないことが強調される。例えば、本発明は、アンモニアプラントにおいても有利である。なぜなら、アンモニアプラントは典型的には高額なCO
2除去ユニットを含むが、このようなユニットは、本発明の改質装置を備えたプラントでは、無くともよいか、または少なくとも規模をかなり小さくすることができるからである。
【0045】
図2は、改質装置20の一例の概略図である。改質装置20は、水蒸気メタン改質装置であり、反応チャンバ22および周囲の加熱反応器24を含む。反応チャンバ22は触媒材料26を含む。反応チャンバ22は、
図2では単一のユニットとして示されているが、反応チャンバ22は、単一のユニットの代わりに複数の反応管であってもよい。反応体ガスとしての炭化水素流1が反応チャンバ22中に投入され、反応生成物7として水素に富んだ合成ガスが排出される。水素に富んだ合成ガス7は典型的にはH
2およびCO
2を含む。反応チャンバ22内で水性ガスシフト反応の一部が行われる場合または全く行われない場合には、水素に富んだ合成ガス7は一酸化炭素COも含み得る。水素に富んだ合成ガスは、さらなる成分を含んでいてもよい。反応チャンバ22は、少なくともその長さの大部分に沿って加熱反応器24によって取り囲まれている。
図2aの加熱反応器24は、反応チャンバを直接加熱するかまたは加熱反応器24の外壁の加熱によって加熱するためのバーナ(
図2aには図示せず)を含む。バーナは、反応チャンバに投入された燃料5(
図1参照)を使用し、燃焼からの流出ガスは、排出流8として排出される。あるいはまた、加熱反応器24は、対流または高温ガスとの熱交換によって反応チャンバ22を加熱することができる。改質装置20内の膜は、
図2には示されていなく、膜は
図3a~3dに示されている。
【0046】
図3a~
図3dは、本発明による改質装置の例示的な反応チャンバの概略図である。反応チャンバの相対的な寸法形状は、
図3a~3dでは縮尺通りではないことに留意すべきである。代わりに、
図3a~3dの寸法形状は、その特徴を最も明確に示すために変更されている。
【0047】
図3aは、本発明の改質装置20の例示的な反応チャンバ22の概略図である。本発明の改質装置の反応チャンバは、複数の反応チャンバのうちの1つ、例えば、複数の水蒸気改質管のうちの1つであってよい。
図3aに示す実施形態は、スイープガスの並流を有する内側拡散チャンバである。
【0048】
反応チャンバ22は、反応チャンバ22の長手方向軸(
図3aには図示せず)の全てに沿って延びる膜25を含む。
図3aに示すように、膜25は、反応チャンバ内の内側管として配置され、それにより、本発明の改質装置の運転中、CO
2は、
図3aの水平矢印によって示されるように、内側管の外側から内側管内に拡散することになる。したがって、膜25は内側拡散チャンバ28を画定する。内側拡散チャンバ28を取り囲む反応チャンバ22は、水蒸気メタン改質反応および水性ガスシフト反応の両方を触媒するために配置された触媒材料26を含む。従って、触媒材料26は、膜25と反応22の内壁との間の空間に閉じ込められる。反応チャンバ22の長手方向軸に垂直な断面において、この空間は環状空間である。
【0049】
内側拡散チャンバ28は、拡散チャンバ内に拡散されたCO2を、拡散チャンバ28に通しておよび出口7’に通して拡散チャンバ28から一掃するように配置された、スイープガスを導入するための入口1’を有する。例としてのみであるが、スイープガスはN2またはH2Oであってもよい。しかしながら、スイープガスは任意の適切なガスであってもよい。膜25によって形成される内側管の直径は、水素に富んだ合成ガスの生成に影響を与える。膜の直径または内側管の直径を大きくすると、水素に富んだ合成ガス(シンガス)の生成は増加する。さらに、反応チャンバ22は、炭化水素流の供給流、例えば、天然ガスCH4およびH2Oのための入口1、および水素に富んだ合成ガス(シンガス)を排出するための出口7を含む。
【0050】
図3bは、本発明による改質装置20の例示的な反応チャンバ22’の概略図である。本発明の改質装置の反応チャンバ22’は、複数の反応チャンバのうちの1つ、例えば、複数の水蒸気改質管のうちの1つであってよい。
図3bに示す実施形態は、スイープガスの並流を有する外側拡散チャンバである。
【0051】
反応チャンバ22’は、反応チャンバ22’の長手方向軸(
図3bには図示せず)の全てに沿って延びる膜25’を含む。
【0052】
図3bに示すように、膜25’は、反応チャンバ内の内側管として配置される。膜25’によって閉じ込められた反応チャンバ22’の内側管は、水蒸気メタン改質反応および水性ガスシフト反応の両方を触媒するために配置された触媒材料26’を含む。従って、
図3aに示される実施形態とは対照的に、膜25’によって閉じ込められた反応チャンバ22’の内側管は、反応チャンバ22’の反応ゾーンである一方、反応チャンバ22’の長手方向軸に沿って膜25’と反応チャンバ22’の内壁との間に画定された空間は拡散チャンバ28’を構成する。
【0053】
炭化水素流、例えば、天然ガスCH
4およびH
2Oを導入するための入口1は、膜25’によって形成された内側管への入口であり、水素に富んだ合成ガス(シンガス)を抜き出すための出口7も該内側管からの出口である。というのも、
図3bの実施形態では、
図3bの水平矢印によって示されるように、内側管と反応チャンバ22’の内部との間の拡散チャンバ28’内に、内側管の内側からCO
2が拡散するからである。
【0054】
従って、膜25’は、外側拡散チャンバ28’を画定し、外側拡散チャンバ28’は、拡散チャンバ内に拡散されたCO
2を、拡散チャンバ28’に通っておよび出口7’に通して拡散チャンバ28’から一掃するように配置されたスイープガスを受け入れるための入口1’を有する。例としてのみであるが、スイープガスはN
2またはH
2Oであってもよい。膜25’によって形成された内側管の直径は、水素に富んだ合成ガスの生成に影響を及ぼす。膜の直径または内側管の直径を大きくすると、水素に富んだ合成ガス(シンガス)の生成は増加する。
図3cは、本発明による改質装置の例示的な反応チャンバ22’’の概略図である。この場合もまた、本発明の改質装置20の反応チャンバ22’’は、複数の反応チャンバのうちの1つ、例えば、複数の水蒸気改質器管のうちの1つであってよい。
図3aおよび
図3bの実施形態のように、反応チャンバ22’’は、反応チャンバ22’’の長手方向軸(
図3cには図示せず)の全てに沿って延びる膜25’’を備える。
図3cに示す実施形態は、スイープガスの向流を有する内側拡散チャンバである。
【0055】
図3cに示されているように、膜25’’は、本発明の改質装置の運転中に、水平矢印に示されるようにCO
2が内側管の外側から内側管内に拡散するように、反応チャンバ内に内側管として配置される。従って、膜25’’は内側拡散チャンバ28’’を画定する。内側拡散チャンバ28’’を取り囲む反応チャンバ22’’は、水蒸気メタン改質反応および水性ガスシフト反応の両方を触媒するために配置された触媒材料26’’を含む。従って、触媒材料26’’は、膜25’’と反応22’’の内壁との間の空間に閉じ込められる。反応チャンバ22’’の長手方向軸に垂直な断面において、触媒材料26’’を有するこの空間は環状空間である。
【0056】
内側拡散チャンバ28’’は、拡散チャンバに拡散されたCO2を、出口7’’に通して拡散チャンバ28’’から一掃するように配置された、スイープガスを流入させる入口1’’を有する。一例としてのみであるが、スイープガスはN2またはH2Oであってもよい。反応チャンバ22’’’は、さらに、炭化水素流の供給流、例えば、天然ガスCH4およびH2Oのための入口1、および水素に富んだ合成ガス(シンガス)を排出するための出口7を含む。
【0057】
図3bおよび
図3dに示す実施形態の違いは、
図3bの実施形態では、スイープガスおよび反応体ガスが並流で流れる一方で、スイープガスおよび反応体ガスは、
図3cに示す実施形態では向流に流れる。
【0058】
図3dは、本発明による改質装置の例示的な反応チャンバ22’’’の概略図である。この場合もまた、本発明の改質装置20の反応チャンバ22’’’は、複数の反応チャンバのうちの1つ、例えば、複数の水蒸気改質管のうちの1つであってよい。反応チャンバ22’’’は、反応チャンバ22’’’の長手方向軸(
図3dには図示せず)の全てに沿って延びる膜25’’’を含む。
図3dに示す実施形態は、スイープガスの向流を有する外側拡散チャンバである。
【0059】
膜25’’’によって閉じ込められた反応チャンバ22’’’の内側管は、水蒸気メタン改質反応および水性ガスシフト反応の両方を触媒するために配置された触媒材料26’’’を含む。したがって、膜25’’’によって閉じ込められた反応チャンバ22’’’の内側管は、反応チャンバ22’’’の反応ゾーンである一方で、反応チャンバ22’’’の長手方向軸に沿って膜25’’’と反応チャンバ22’’’の内壁との間に画定された空間は、拡散チャンバ28’’’を構成する。
【0060】
したがって、膜25’’’は、外側拡散チャンバ28’’’を画定し、外側拡散チャンバ28’’’は、拡散チャンバ内に拡散されたCO
2を、外側拡散チャンバ28を通り、そして出口7’’’に通して外側拡散チャンバ28’’’から一掃するように配置されたスイープガスを受け入れる入口1’’’を有する。例としてのみであるが、スイープガスはN
2またはH
2Oであってもよい。反応チャンバ22’’’は、さらに、炭化水素流の供給流、例えば、天然ガスCH
4およびH
2Oのための入口1、および水素に富んだ合成ガス(シンガス)を排出するための出口7を含む。
図3dの実施形態では、
図3dの水平矢印によって示されるように、CO
2が膜25’’’によって画定された反応ゾーンまたは内側管の内側から、内側管と反応チャンバ22’’’の内側との間に画定された外側拡散チャンバ28’’’内に拡散する。
【0061】
図3bおよび
図3dに示す実施形態の違いは、
図3bの実施形態では、スイープガスおよび反応体ガスが並流で流れる一方で、スイープガスおよび反応ガスは、
図3dに示された実施形態においては向流に流れる。
【0062】
図4は、本発明の反応チャンバ内の膜の効率の関数として、本発明の反応チャンバ内の反応器温度を示すグラフである。
図4のグラフは、反応チャンバからの出口温度を、慣用の改質器からの典型的な出口温度である950℃から、生成物ガスからCO
2を連続的に除去するが、なおも同量の水素を生成する効果的な膜を用いて操業した本発明の改質器での700℃未満の温度までどのように低下し得るかのシミュレーション結果を示す。膜効率は任意単位([a.u.])で示されている。
【0063】
図5は、本発明の反応チャンバにおける膜のCO
2透過度の関数としてのH
2生成の増加を示すグラフである。
図5は、類似の条件で操業されるが、膜を備えていない反応チャンバと比較して、CO
2膜を用いた改質装置の反応チャンバでは水素生成収率を増加させることができることを示す。
図5はまた、膜が反応チャンバの最下流側の3分の1にのみ設けられる場合の水素生成収率の増加の計算を示す。シミュレーションは、反応チャンバの上流部分からのCO
2の集中的な除去が、特に反応体ガスと並流のスイープガスの場合には、水素に富んだ合成ガスの生成を減少させるに至ることを明らかにしている。これは、この部分でのCO
2除去が水性ガスシフト反応を“CO
2 + H
2”側(反応(2)および(4)を参照)にシフトさせ、その結果、水を除去し、それにより水蒸気改質反応におけるメタン転化の可能性を減少させるためである(反応(1)および(3)参照)。
【0064】
図5は、膜が反応チャンバの最下流側の3分の1に設けられている設計が、7.5kmol/m
2/h/atm超の透過度値では、反応チャンバの全長に亘って膜を有する類似の反応チャンバと同じ効率を有することを示している。これは、CO
2膜の費用が高くなり得るという点でコストを考慮する上で重要である。
【0065】
最後に、高い透過度(permeance)を有する膜材料を使用するときにスイープガス流を増加させると、水素生成がさらに増加することが計算によって示されている。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
反応ガスとしての炭化水素流と、反応生成物としての水素に富んだ合成ガスとを有する反応を行うための反応チャンバを含む改質装置であり、該反応チャンバ内には膜が設けられており、反応チャンバを加熱するための加熱反応器をさらに含む、該改質装置であって、
a. 前記膜が、CO
2
を通過させるように配置された半透膜である、
b. 前記反応チャンバが、水蒸気メタン改質反応を触媒し、かつ、水性ガスシフト反応を触媒するために配置された触媒材料を含み、および、
c. 前記改質装置が、反応チャンバ内で約15~約50bargの圧力で水蒸気メタン改質反応を行うように配置されている、
ことを特徴とする、上記の改質装置。
2.
前記膜が内側拡散チャンバを画定し、該内側拡散チャンバは、拡散チャンバ中に拡散したCO
2
を、出口に通して該拡散チャンバから一掃するように配置されたスイープガスを受け入れるための入口を有する、前記1に記載の改質装置。
3.
前記膜が内側反応チャンバおよび外側拡散チャンバを画定し、該外側拡散チャンバは、拡散チャンバ内に拡散されたCO
2
を、出口に通して該拡散チャンバから一掃するように配置されたスイープガスを受け入れるための入口を有する、前記1に記載の改質装置。
4.
スイープガスおよび反応体ガスを向流で流すことができるように配置された、前記2または3に記載の改質装置。
5.
前記CO
2
膜の透過度が、約1kmol/m
2
/h/atm超、好ましくは、約3kmol/m
2
/h/atm超、さらに好ましくは、約8kmol/m
2
/h/atm超である、前記1~4のいずれか一つに記載の改質装置。
6.
膜が反応チャンバの最下流部のみに、例えば反応チャンバの最下流側の半分のみに、反応器チャンバの最下流側の1/3のみにまたは最下流側の1/4のみに設けられている、前記1~5のいずれか一つに記載の改質装置。
7.
水蒸気改質中の前記改質装置内の温度が、約800℃未満、好ましくは約700℃である、前記1~6のいずれか一つに記載の改質装置。
8.
前記改質装置が、燃焼改質器、放射壁改質器(radiant wall reformer)、対流改質器、例えば、熱交換改質器または管状バヨネット改質器、または自己熱改質器である、前記1~7のいずれか一つに記載の改質装置。
9.
反応ガスとしての炭化水素流と、反応生成物としての水素に富んだ合成ガスとを有する反応を改質装置内で行うための方法であり、該改質装置が反応チャンバを含み、該反応チャンバが半透膜および該反応チャンバを加熱するための加熱反応器を含む、該方法であって、
a. 前記炭化水素流を前記改質装置内に導入し、そして、反応チャンバ内で、水蒸気メタン改質反応を触媒しかつ水性ガスシフト反応を触媒するために配置された触媒材料と接触させること、
b. 反応中、CO
2
が半透膜を通過すること、および
c. 反応チャンバ内の圧力が約15~約50bargであること、
を特徴とする、上記の方法。
10.
CO
2
が連続的に反応チャンバから除去される、前記9に記載の方法。
11.
前記膜が内側拡散チャンバを画定し、そして、スイープガスが入口を介して該内側拡散チャンバ内に入り、その際、該スイープガスが、拡散チャンバ内に拡散されたCO
2
を、出口に通して該拡散チャンバから一掃する、前記9また10に記載の方法。
12.
前記スイープガスおよび前記反応体ガスを向流で流す、前記11に記載の方法。
13.
水蒸気改質中の前記改質装置内の温度が、約800℃未満、好ましくは約700℃である、前記9~12のいずれか一つに記載の方法。