(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】腫瘍処置誘導性の経口胃腸粘膜炎の予防および/または処置における使用のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/63 20060101AFI20220628BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20220628BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20220628BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220628BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220628BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220628BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220628BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A61K36/63
A61K31/047
A61K31/198
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/42
A61K9/08
A61P1/04
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020528508
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2018070594
(87)【国際公開番号】W WO2019025366
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】520039238
【氏名又は名称】ムコサ イノバティオンズ,エセ エレ
【氏名又は名称原語表記】MUCOSA INNOVATIONS,S.L.
【住所又は居所原語表記】C/Araquil,11 28023 MADRID(ES)
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ビラボア,デボラ
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-519279(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208582(WO,A1)
【文献】REPORTS OF PRACTICAL ONCOLOGY AND RADIOTHERAPY,2017年,Vol.22,p.71-76
【文献】Alternative Medicine Review,Vol.12, No.4,2007年,p.331-342
【文献】日本緩和医療薬学雑誌,2015年,Vol.8,p.83-89
【文献】耳鼻咽喉科展望,2017年,Vol.60:2,p.95-103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍処置誘導性の経口胃腸粘膜炎の予防および/または処置における使用のための、オリーブオイル、トリメチルグリシン、およびキシリトールを含む組成物。
【請求項2】
組成物が、0.1重量%~5重量%のオリーブオイル、好ましくは0.2重量%~4重量%、およびより好ましくは0.2重量%~2.5重量%を含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
組成物が、0.1重量%~10重量%のトリメチルグリシン、好ましくは1.5重量%~6重量%、およびより好ましくは2重量%~4重量%を含む、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
組成物が、1重量%~50重量%のキシリトール、好ましくは1重量%~30重量%、およびより好ましくは1重量%~15重量%を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
組成物が、酸化防止剤を含み、好ましくはヒドロキシチロソール、チロソール、オレウロペイン、およびそれらの混合物、好ましくはヒドロキシチロソール、チロソール、およびオレウロペインからなる群より好ましくは選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
組成物が、任意のフッ素供給源を含まない、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
組成物が、液状投薬形態、好ましくは水性の液状投薬形態にある、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
組成物が、無機成分補給効果剤、粘性-制御剤、湿潤剤、保存剤、着色剤、pH調整剤、甘味剤、タンパク質分解酵素、乳化剤、研磨剤、精油、瘢痕形成剤、芳香剤、酸化防止剤、動物性または植物性のゼラチン、腑形剤、およびそれらの混合物からなる群より選択されるさらなる成分を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
組成物が、瘢痕形成剤、酸化防止剤、緩衝液、保存剤、湿潤剤、および溶媒;ならびに必要に応じてレオロジー剤および/または乳化剤を含む、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
甘味剤、着色剤、芳香剤、精油、研磨剤、タンパク質分解酵素、無機成分補給効果剤、またはその組み合わせを含む、請求項8または9に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
組成物が、任意の芳香剤、精油、研磨剤、タンパク質分解酵素、フッ素供給源を含まない、請求項8または9に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
組成物が、腫瘍処置誘導性の経口胃腸粘膜炎、好ましくは重篤な程度の腫瘍処置誘導性の経口胃腸粘膜炎の処置における使用のためである、請求項11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
組成物が、腫瘍処置誘導性の経口胃腸粘膜炎の予防における使用のためであり、そしてこれが各腫瘍処置の前後に投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
組成物が、任意のさらなる活性成分を含まない、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
腫瘍処置誘導性の経口胃腸粘膜炎が、口腔、舌、唇、咽頭、食道、胃、腸、直腸、肛門、鼻、鼻道、副鼻腔、咽喉、声帯、喉頭
からなる群より選択される1つ以上の部位に影響する、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガン治療およびその副作用の分野に言及し、特に腫瘍処置誘導性の経口胃腸(orogastrointestinal)粘膜炎の予防および/または処置における使用のための組成物に言及する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍処置誘導性の経口胃腸粘膜炎は、ガン治療の重篤なおよび衰弱性の副作用として認識される消化管のガン治療毒性に関連される粘膜傷害である。消化管の粘膜はまた、この毒性についての標的である。従って、本発明において、腫瘍処置誘導性の経口胃腸粘膜炎(OTIOMと略称される)は、ガン治療により誘導される、消化管および気道を含む気道消化管の粘膜傷害である。
【0003】
OTIOMの同義語は、「経口胃腸腫瘍粘膜炎」、「腫瘍粘膜炎」、「胃腸粘膜炎」であり、また歴史的に「口腔粘膜炎」と呼ばれ、ある著者らにより「粘膜炎」と略され、後者は非悪性の、致死的ではない局所的な唾液分泌低下関連性の胃炎または粘膜炎との混同に導く(以下を参照のこと)。
【0004】
OTIOMは現在、ガン治療の単独で最も重篤なおよびより懸念される合併症である。これは、しばしば、予期しない処置の中断および化学療法用量の減少に導き、これは局所領域での腫瘍制御を低減し、一方で化学療法耐性細胞集団の再増殖に導き得る腫瘍増殖を許容する。その病的状態は、もはや軽視できず、潜在的に、ガン生存率の減少、敗血症、およびさらにガン処置の間の致死的転帰に導く。
【0005】
気道消化管を形成する全ての管、空洞、および器官は、共通の特徴である粘膜境界を共有する。OTIOMは、歴史的に考えられたような、上皮のみではなく、粘膜および下部結合組織の全体の障害によって主に特徴づけられる。
【0006】
OTIOMは、数例を挙げると、口内潰瘍、栄養摂取を非耐容性にさせ得る疼痛、嘔吐、下痢、直腸出血、および腹部痙攣を伴って、典型的に生じる。これは自己制御されるが、出現の際、患者をより多くの病状を生じやすいままにする。これは消化管において生じることが多いが、放射線照射後の直腸炎もまた、OTIOMの兆候を考慮される。ガン治療に関連する粘膜傷害は、膣ならびにさらに気管支および肺のような身体中の他の粘膜間の、他の粘膜境界において生じ得る。
【0007】
OTIOMの発症は、固形腫瘍またはリンパ腫について全ての化学療法の51%に達する。幹細胞または造血細胞移植の前に高い投薬量の化学療法を伴う患者において、このパーセンテージは75~80%に上昇する。頭部および頸部のガンについて処置される患者は症例のほぼ100%において、OTIOMを発症し、その29~66%は重篤な形態にある。口腔ガンについて放射線療法を伴う患者において、OTIOMは、症例の90~100%において発症する。OTIOMは、それゆえ、気道消化管粘膜の破壊または損傷の発生により特徴づけられる重篤な合併症である。最初の段階で、これは粘膜の紅斑または赤みとして出現し得、偽膜病変は、粘膜がその深さ全体に潰瘍を形成されるまで、多かれ少なかれ拡張され除々に融合される。この段階で、かなりの痛みを伴う大量の出血は、正常な消化管機能を損なう。
【0008】
最初の段階で、OTIOMは通常、口腔の粘膜における病変として出現し、古くから口粘膜の診断を創出した。同じタイプの病変が、同時に全消化管に沿って生じ得る。しかし、消化管の内部器官における粘膜の最初の病変の診断の困難さは、粘膜境界のより重篤な破壊が、非耐容性の下痢に、さらに肛門を介する可視的な出血を伴って進行するまで遅延される。
【0009】
1969年、腸の最も一般的な疾患のうちの1つ、すなわちクローン病の口腔併発が記載された。より最近になって、非特許文献1は、消化管の多くの疾患は、直腸におけるよりも、口腔において診断することが、それが容易に直接的に試みられるために容易であったことを説明した。同様に、口腔粘膜炎は、OTIOMの口腔における発現であり、一方胃腸粘膜炎は消化管における発現であるが、両者は同じ臨床的状態である。
【0010】
OTIOMに関する最も大きな困難の1つは、粘膜障害の重篤度を正確に、客観的に、および再現性のある方法で記載し得ることにある。残念なことに、今日利用可能な多くの評価基準にもかかわらず、系統的に立証されるデータを生成するために、普遍的に受容される最も信頼できる基準についての必要性がなお存在する。
【0011】
非特許文献2である世界保健機関(WHO)からの発表時の刊行物において、ガン治療の毒性作用を評定することについての提言が見出される。WHOは、広範に多様な兆候および症状をまとめ、そしてそれらを0~4に評定する(非参考文献2の表1を参照のこと、その胃腸部分が以下の表1において抜粋される)。
【0012】
【0013】
この文献は、多くの人に刺激を与え、そして一例が表2において示され、これはOTIOMにより影響された被験体において残念なことに生じ得る複数の経口胃腸粘膜事象のうちの主要な2つ:口腔粘膜炎および下痢を概要する。
【0014】
【0015】
評定3および4は、重篤な口腔粘膜炎であると考慮され、そして本発明の情況においてもまた、重篤なOTIOMとして考慮される。
【0016】
より近年になって、OTIOMの症状の重篤度に対する毒性の由来の関係に関して、通常、放射線療法と付随する化学療法は、病変の重篤度を増大することが受容される。新しい分割放射線療法はより良好な局所的制御を有するかもしれないが、より急性の重篤な口腔粘膜炎を伴うかもしれない(病変の迅速な発症)。より最近になって、IMRTを用いた立体配座放射線療法は、急性の口腔粘膜炎のリスクを評定3まで減少するようである。それにもかかわらず、OTIOMの症状を回避するための全ての試みは、今日までにまだ成功していないようである。
【0017】
OTIOMの重篤な形態は、入院が必要とされ得、麻酔性鎮痛薬が必要とされ得、抗腫瘍性処置、非経口的栄養摂取の準最適な送達を導き得、そして敗血症、脱水、または他の合併症からの病的状態および死亡率と関連される。
【0018】
OTIOMの現在の管理は未だ、症状的にのみ、ほとんどガン専門医およびガン専門看護師により管理される。大部分の症例は病院において見られ、そして何度もの入院を必要とする。これらの患者は、歯医者により経過観察されることも、代わりに彼らが唾液分泌減退の症例において、水分遮断性の胃炎または粘膜炎を診ることもない。
【0019】
OTIOMの管理は、主に、疼痛の排除または軽減にある。脱水の予防を通じて栄養補給を提供すること、または感染および/または敗血症の可能性がある場合および予防の場合はいつでも、口腔衛生評価とともに水分補給および栄養不良の予防を提供すること、ならびに消化管の出血を対処することは、急性症状の間の最も重要なアプローチである。非特許文献4は、OTIOM(本明細書中でガン治療に続発する粘膜炎をいう)の管理のための臨床診察ガイドラインを記載する。当該ガイドラインは、疼痛を制御するために使用されるリドカイン、フェンタニル、オピオイド、およびモルヒネのような薬物を記載し;OTIOMの処置について、特に潰瘍化の存在下で、クロルヘキシジン口内洗浄液の使用を推奨せず;ならびに日常的な基準でOTIOMを予防するための、抗生物質またはアシクロビルの使用を推奨しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【文献】Dupuyら、口腔クローン病:9つの症例の臨床的特徴および長期経過観察。Arch Dermatol 1999;135:439-442
【文献】WHO、ガン処置の結果を報告するための手引き。ジュネーブ:WHOオフセット刊行物、1979
【文献】Koningら、2007、化学療法は子どもにおける腸のアミノ酸取り込みを影響しない。Pediatric Research 62;1995-199
【文献】Lallaら 2014、ガン治療に続発する粘膜炎の管理についてのMASCC/ISOO臨床治験ガイドライン、Cancer 120(10)、1453-1461
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記の症候性制御はさておき、OTIOMの予防または処置のいずれかを行うための任意の首尾よいアプローチを支持する、文献における臨床的証拠がないことを考えると、明確な治療承諾はない。
【0022】
それゆえ、OTIOMの予防および/または処置における使用のための組成物を提供する必要性が、当該分野の技術水準においてなお存在する。驚くべきことに、本発明の著者らはこのような使用のための組成物を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の局面は、OTIOMの予防および/または処置における使用のための、オリーブオイル、トリメチルグリシン、およびキシリトールを含む組成物に言及する。
【0024】
本発明の第2の局面は、OTIOMの予防および/または処置のための、薬剤の調製のための、オリーブオイル、トリメチルグリシン、およびキシリトールを含む組成物の使用に言及する。
【0025】
本発明の第3の局面は、OTIOMを、その必要がある被験体において、処置する方法に言及し、オリーブオイル、トリメチルグリシン、およびキシリトールを含む組成物の治療的に有効な量を被験体に投与する工程を包含する。
【0026】
本発明の第4の局面は、被験体においてOTIOMを予防する方法に言及し、オリーブオイル、トリメチルグリシン、およびキシリトールを含む組成物の予防的に有効な量を被験体に投与する工程を包含する。
【0027】
本発明の第5の局面は、以下を含む組成物に言及する:
-オリーブオイル、
-トリメチルグリシン、
-キシリトール、ならびに
-ヒドロキシチロソールおよび/またはチロソールおよび/またはオレウロペイン。
【0028】
本発明の他の目的、特徴、利点、および局面は、以下の記載および添付の請求の範囲から当業者に明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書中で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限りはそれらの対応する複数形を包含する。そうでないことを定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の文脈における特定用語の意味の理解を容易にし、そして明確にするために、以下の定義、ならびに本発明の異なる局面の全ての実施態様に適用可能な、特定のおよび好ましいその実施態様が、提供される。
【0030】
OTIOMは、ガン治療によって誘導される経口胃腸粘膜炎に言及される。上述で説明されるように、OTIOMは、ガン治療によって誘導される、消化管および気道を含む気道消化管の粘膜損傷である。従って、特定の実施態様において、OTIOMは、消化管および/または気道に影響する。別の特定の実施態様において、OTIOMは、口腔、舌、唇、咽頭、食道、胃、腸、直腸、肛門、鼻、鼻道、副鼻腔、咽喉、声帯、および喉頭からなる群より選択される1つ以上の部位に影響する。より詳細には、それゆえ、OTIOMは、口腔、唇、舌、食道、胃、腸、直腸、肛門、およびそれらの組み合わせに、より好ましくは口腔に影響する。別の特定の実施態様において、経口胃腸粘膜炎を誘導する腫瘍処置は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、幹細胞移植、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。これらの用語は、当業者に周知である。好ましくは、腫瘍処置は化学療法および/または放射線療法である。
【0031】
背景の節において述べられたように、ある著者らは、ガン治療の急性または亜急性の毒性作用の評定についてのWHOの提言に従って、OTIOMの評定を分類した。Konradは、OTIOMの主な疾患:口腔粘膜炎および下痢の程度を分類した(表2を参照のこと、上記)。従って、本発明において、表2において示される評定付けは、OTIOMの評定付けであると考慮され、ならびに評定3および4は重篤なOTIOMとして考慮される。
【0032】
OTIOMは、インプラント歯科学の分野において一般に考察されるいわゆるインプラント周囲炎またはインプラント周囲粘膜炎(インプラントの欠損に最も悪評高い因果関係を有し、そしてしばしば無症候性である歯科インプラントの周囲の支持骨の慢性疾患である)と混同されるべきではない。
【0033】
同様に、OTIOMは口腔環境において生じる、嚥下困難および口内乾燥症と混同されるべきではない。多くの状態は、ガンを伴う患者における嚥下困難および口内乾燥症の原因であるかもしれない。頭部および頸部の外科手術および放射線照射は、これらの2つの慢性口腔合併症についての明らかな原因であるが、神経学的異常、年齢、変性状態、シェーグレン症候群、糖尿病、および多剤投与はまた、これらの2つの症状を説明する一般的な診断であり、そしてその患者がガンを有することを必ずしも暗示しない。
【0034】
嚥下困難は、ガン患者における衰弱性の、抑圧性の、および潜在的に致死的な合併症であり、過少報告される傾向があり、そして本質的に筋肉の状態に起因する嚥下障害として記載される。嚥下困難は、腫瘍、ガン切除、化学療法、および放射線療法の直接的影響のような多くの因子、ならびに上皮増殖因子受容体阻害剤のような最新の治療に関連される。
【0035】
口内乾燥症はまた、ドライマウス症候群および口内灼熱症候群と呼ばれ、唾液の量または質が損なわれる場合に診断される(唾液分泌減退)。一般的集団における口内乾燥症の有病率は22~26%であり、混成腫瘍学的集団において50~55%である。これは、腺の柔組織および腺房の組織学における変化を伴う唾液腺の正常な機能の変化に原因を有する。病因は、通常、多剤併用または口内を乾燥する薬物の摂取である。さらに、頭部および頸部のガン患者において、口内乾燥症は、唾液腺への不可逆的な障害に起因する放射線療法の非常に一般的な合併症であり、この群の患者の93%において慢性の副作用として残存する。外科的手術はまた、ドライマウス症候群を生じさせ得る。従って、口内乾燥症は、腫瘍患者の全ての群によって経験される最も一般的な合併症の1つである。しかし、このいくらか慢性の、目立たない兆候の認識は、多くの腫瘍治療者および患者にとって重要でなく、他の兆候をより重要に見なす。口内乾燥症は生活の質に有意に影響するが、患者の生存に対する挑戦ではない。多くの患者は、減少されたまたは不十分な唾液機能を耐え、そしてそれに慣れる。事実、50%の口内乾燥症患者は任意の兆候を示さず、そして口内における乾燥に未だ気付くことなく、口内乾燥が、それ自身、兆候または症状を伴って明らかになる前に、唾液流量の最大50%が喪失され得るということに科学的により関連する。
【0036】
口内乾燥症は、多くの慢性咽頭痛、ならびに胃炎または粘膜炎として分類される兆候および症状(非特異的胃炎-粘膜炎)の集団を引き起こし得、後者は、湿潤の喪失の非悪性の、非致死的な局所的唾液障害の兆候であり、舌亀裂、味覚障害(欠失または変化された味)、口腔の痛み、入れ歯の装着の不全のような兆候および症状の集団を伴い、一般的に慢性的経過を伴って口内を純粋に影響する。口腔粘膜は無損傷に見え、口腔粘膜および舌のくすんだもしくは和らいだ赤み、平面性もしくは平滑性を伴うか、または対照的に「舌炎」ともまた呼ばれる舌からの多くの皺および繊毛を伴い、白色苔舌を伴うかもしくは伴わない。
【0037】
平滑性の持続的な欠損に起因して、粗面化は口腔炎症を、特に付け心地の悪い、不十分なまたは老朽化した義歯と接触する位置において、引き起こす。この状況において、カンジダ症またはカンジダによる感染は重ねられ得る。このいわゆるカンジダ粘膜炎またはカンジダ胃炎は、抗菌剤で首尾よく処置され、そしてほとんどの場合において無症候性である。
【0038】
非特異的胃炎-粘膜炎の全てのこれらの臨床的状況は、局所的であり、非悪性であり、および決して患者の生命への挑戦ではない。それらは、歯科医院で歯科医により診断され、そして唾液流動を刺激すること、および/もしくは既存の摩減した粗面化修復物を研磨することを介して、または高度に研磨された材料および十分な設計を伴った新規な義歯または修復物の供給を介して、処置される。
【0039】
口内乾燥症およびこの口内乾燥症が関連する胃炎-粘膜炎は、一般的に、慢性経過を有し、そしてそれらがどのように存続しても、それらはOTIOMの発症も、下痢も、嘔吐も、肛門出血も、消化管および気道のいずれの潰瘍化も導くことはない。それらは入院も、非経口栄養摂取も、静脈内オピオイドも、先進的な医療サポートも必要とせず、いずれの場合においても、それらは死亡に関連しない。
【0040】
「予防」は、重篤なOTIOMの不在、すなわち、評定3および4におけるOTIOMの不在をいう。従って、本発明の予防で、被験体は、被験体に流動食のみを必要とさせる、または口腔栄養吸収を完全に妨げさせる(すなわち、チューブまたは非経口栄養摂取のみによる栄養摂取を余儀なくさせる)口腔潰瘍を有しない。さらに、被験体は治療または水分補給を必要とする非寛容性の下痢を有しない。さらに、予防は、軽度および中程度のOTIOM(評定1および2、または評定2)の出現の減少をいい、本発明の組成物を使用しない被験体に比較される(実施例1を参照のこと)。
【0041】
「予防的に有効な量」は、重篤なOTIOMの症状を排除するために有効である量をいう。
【0042】
「処置」は、全ての評定のOTIOMの症状の低減および/または症状の持続時間の低減をいう。好ましくは、これはOTIOMの症状および持続時間の低減をいう。
【0043】
「治療的に有効な量」は、全ての評定のOTIOMの症状および/または症状の持続時間を低減するために有効である量をいう。
【0044】
第1の局面において、本発明は、OTIOMの予防および/または処置における使用のためのオリーブオイル、トリメチルグリシン(TMG)、およびキシリトールを含む組成物(以後、本発明の組成物という)に言及する。
【0045】
オリーブオイル、TMG、およびキシリトールを含む組成物は、当該分野の技術水準において既に公知であり、例えば米国特許第8,540,970号 B2を参照のこと。特に、米国特許第8,540,970号の組成物は、口内乾燥症の処置のために使用され得る。しかし、上記のように、口内乾燥症、および口内乾燥症誘導性の胃炎-粘膜炎は、OTIOMとは完全に異なる状態であり、そして口内乾燥症はOTIOMの発症に導かない。さらに、OTIOMの発生についての危険因子は、腫瘍関連性、処置関連性、および患者関連性の、その中でも特に潜在的な遺伝的素因として分類され得る。口内乾燥症はこれらの分類のいずれにおいても生じない(Epsteinら、2012、Cancer、「ガンおよびガン治療の口腔合併症」)。
【0046】
さらに、当該分野の技術水準において、適正な唾液機能がOTIOMを発生から予防することも、唾液流量を維持される患者はOTIOMの危険性がないことも、示唆するものはなにもない。事実、OTIOMを伴う患者は口内の任意の刺激に耐容せず、そして唾液分泌促進薬の、その最適な代表的な、ピロカルピンの使用は、OTIOMを予防または処理する際において有益な効果を何ら示さなかった(Lallaら、2014)。
【0047】
従って、当該分野における専門家は、これらの、特に評定3または4のOTIOMを伴う患者の全身倦怠感を考慮して、そして固形物のみでなく液体物に対する全体的な非耐容性(患者が嚥下しないようにガーゼで彼らの口内から唾液を取り除かなければいけない程)は、このタイプの患者に唾液分泌促進を勧める気になれないでいる。
【0048】
従って、オリーブオイル、TMG、およびキシリトールを含む組成物が、特に口内乾燥症の処置における使用について、既に記載されていたとしても、当業者は、OTIOMの予防および/または処置のために、このような組成物を使用する動機付けをされていない。
【0049】
本発明の組成物の異なる成分に関して、これらのいずれも個々に、本発明において規定されるような、OTIOMの予防および/または処置と関連付けられていない。オリーブオイルは、十分に記載され、および国際的に重視される地中海料理の主要な成分である。オリーブオイル「自体」が、OTIOMを予防するために有効であるとして、地中海諸国における幅広いおよび十分なオリーブオイルの摂取を考慮すると、OTIOMの予防は、この地理的地域においてほとんど一般的でなく、存在しないであろう。しかし、かなり確定的なデータが、地中海諸国に住在し、そして地中海料理に習う人々は、主に心臓血管変性において健康上の利益を享受し、しかしまた特に低度の乳がんおよび結腸ガンの形状でガンに関する利益を享受することを実証した場合であっても、これは事実ではない。
【0050】
さらに、評定3の口腔粘膜において、蜂蜜単独の使用と、オリーブオイル-プロポリス抽出物および蜜蝋と混合した蜂蜜の使用との間に有意な差異はなかったことが示されたのに対し、評定2の粘膜炎において、蜂蜜単独について証明された回復時間を減少するにおける有効性は、蜂蜜が、オリーブオイル-プロポリス抽出物および蜜蝋と混合された場合、減少された(Abdulrhmanら、Pediatric Hematology and Oncology(2012)29、285-292、「化学療法誘導性の口腔粘膜炎の処置における蜂蜜、ならびに蜂蜜、蜜蝋、およびオリーブオイル-プロポリス抽出物の混合物:無作為に制御されたパイロット試験」)。従って、オリーブオイルは化学療法誘導性の口腔粘膜炎の処置において有益であるように見えない。
【0051】
キシリトールは、これがほとんどの口腔細菌によって発酵性ではないので、有効な抗齲蝕物質であることが証明されている。これはまた、消化微生物叢を変化しないことが証明されている。OTIOMを伴う患者が本発明の組成物の投与で得られる即時的な健康上の安全性および救済と、キシリトールとの関連を支持する証拠は何もない。
【0052】
TMGは、米国特許第6,156,293号において皮膚および頭部乾燥の改善と関連されたが、ガン治療関連性の粘膜障害または経口胃腸粘膜炎の腫瘍化の改善とは関連されなかった。
【0053】
驚くべきことに、本発明の組成物は、オリーブオイル、TMG、およびキシリトールを含み、OTIOMの予防および/または処置に有用である。
【0054】
TMGは、浸透圧保護的作用を有し、そして界面活性作用を有しない。これは、コカミドロプロピルベタイン(CAPB)(これは口腔衛生品において一般に使用される界面活性作用を伴う界面活性剤の1つである)と混同されるべきでない。本発明の組成物において、特に患者の群が粘膜障害に対する挑戦を含み、および界面活性剤がこのような場合において全体的に有害であることを考慮すると、全ての界面活性剤は排除される。従って、特定の実施態様において、本発明の組成物は、本発明の実施態様のいずれか1つに従って、任意の界面活性剤を含まない。従って、本発明の組成物は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、CAPB、または口腔衛生品において一般に使用される界面活性剤を含まず、好ましくは本発明の組成物は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、またはCAPBを含まない。同様に、以前の実施態様のいずれか1つに従う好ましい実施態様において、アルコールは口内を乾燥し、および疼痛を増すので、本発明の組成物はアルコールを含まない。
【0055】
前述の実施態様のいずれか1つに従う特定の実施態様において、本発明の組成物は、0.1重量%~5重量%のオリーブオイル、好ましくは0.2重量%~4重量%のオリーブオイル、およびより好ましくは0.2重量%~2.5重量%のオリーブオイルを含む。実施例において示されるように、これらの範囲内のある量のオリーブオイルを含む組成物は、OTIOMの予防および処置において非常に効果的である。
【0056】
本発明において与えられる全てのパーセンテージは、そうでないと言及しない限り、重量/組成物の総重量(w/w)において与えられる。
【0057】
以前の実施態様のいずれか1つに従う特定の実施態様において、本発明の組成物は、0.1重量%~10重量%のTMG、好ましくは1.5重量%~6重量%、およびより好ましくは2重量%~4重量%を含む。
【0058】
以前の実施態様のいずれか1つに従う特定の実施態様において、本発明の組成物は、1重量%~50重量%のキシリトール、好ましくは1%~30%、およびより好ましくは1%~15%、ならびにさらにより好ましくは10%を含む。
【0059】
好ましい実施態様において、本発明の組成物は、0.2重量%~4重量%のオリーブオイル、1.5重量%~6重量%のTMG、および1重量%~30重量%のキシリトールを含む。
【0060】
別の好ましい実施態様において、本発明の組成物は、0.2重量%~2.5重量%のオリーブオイル、2重量%~4重量%のTMG、および1重量%~15重量%のキシリトールを含む。
【0061】
実施例において示されるように、上述で規定される範囲内のオリーブオイル、TMG、およびキシリトールのある量を含む組成物は、OTIOMの予防および処置において非常に効果的である。
【0062】
別の好ましい実施態様において、本発明の組成物は、実施例において記載される処方物(処方物1~6)のいずれか1つにおいて規定される量のオリーブオイル、TMG、およびキシリトールを含む。
【0063】
以前の実施態様のいずれか1つに従う特定の実施態様において、オリーブオイルはエキストラバージンオリーブオイルである。別の特定の実施態様において、組成物は、精油以外の任意の他の植物性オイルを含まない。同様に、低品質の油、例えば、パルマオイルの使用は、これらのオイルの使用が、近年、ヒト口腔ガンの転移の非常に有意な増加および大きさと関連されているので、回避される。
【0064】
以前の実施態様のいずれか1つに従う特定の実施態様において、組成物は、酸化防止剤、好ましくは天然の酸化防止剤を含む。詳細には、酸化防止剤は、酢酸トコフェロール、ビタミンC、ヒドロキシチロソール、チロソール、オレウロペイン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0065】
興味深いことに、ヒドロキシチロソール、チロソール、およびオレウロペインは、オリーブオイルの抗炎症性、抗菌性、および抗酸化性の活性を高め、そして組成物を安定化し得るようである(すなわち、特に被験体が重篤なOTIOMを罹患する場合に、処方物を被験体によってより耐容性にさせるさらなる保存剤の必要性を減少するか、またはさらには排除する)。従って、好ましい実施態様において、組成物は、ヒドロキシチロソールおよび/またはチロソールおよび/またはオレウロペインを含み、好ましくは、組成物は、ヒドロキシチロソール、チロソール、およびオレウロペインを含む。これらの3つの酸化防止剤は、オリーブの実の抽出物を使用して提供され得る。
【0066】
これらの酸化防止剤を含む組成物の例は、本発明の処方物5および6であり、それゆえ、これらは好ましい。
【0067】
以前に記載される実施態様のいずれかに従う別の特定の実施態様において、組成物は、フッ素供給源を含まない。このように、組成物は嚥下され得、すなわち、被験体への禁忌を何ら伴わずに、口腔から離れた消化管の他の部分に到達する。フッ素供給源を含まない処方物の例は、本発明の処方物5および6であり、それゆえ、これらは、OTIOM、特に評定3および4のOTIOMの処置のために、特に好ましい。
【0068】
以前の実施態様のいずれか1つに従う別の特定の実施態様において、本発明の組成物はさらに、無機成分補給効果剤、粘性-制御剤、湿潤剤、保存剤、着色剤、pH調整剤、甘味剤、タンパク質分解酵素、乳化剤、研磨剤、精油、瘢痕形成剤、芳香剤、酸化防止剤、動物性または植物性のゼラチン、腑形剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される1つ以上の成分を含む。
【0069】
好ましくは、以前の実施態様のいずれか1つに従う本発明の組成物は、瘢痕形成剤、酸化防止剤、緩衝液、保存剤、湿潤剤、および溶媒(好ましくは水);ならびに必要に応じてレオロジー剤および/または乳化剤を含む。この段落において開示される実施態様のいずれか1つに従う特定の実施態様において、組成物は、甘味剤、着色剤、芳香剤、精油、研磨剤、タンパク質分解酵素、無機成分補給効果剤、またはその組み合わせを含む。
【0070】
以前の実施態様のいずれかに従う別の好ましい実施態様において、本発明の組成物は、芳香剤または精油のいずれも含まない。この実施態様は、患者による耐容性を促進するために、OTIOM、好ましくは重篤なOTIOMの処置の場合において特に好ましい。
【0071】
以前の実施態様のいずれかに従う別の好ましい実施態様において、本発明の組成物は、研磨剤、フッ素供給源、タンパク質分解酵素のいずれも含まない。この実施態様は、患者による耐容性を促進するために、OTIOM、好ましくは重篤なOTIOMの処置の場合において特に好ましい。
【0072】
従って、以前の実施態様のいずれかに従うより好ましい実施態様において、本発明の組成物は、芳香剤、精油、研磨剤、フッ素供給源、タンパク質分解酵素のいずれも含まない。この組成物は、OTIOM、好ましくは重篤なOTIOMの処置のために好ましくは使用される。
【0073】
本発明の組成物のこれらのさらなる成分は、一般に当業者に公知であり、そして当該化合物の制限されない例が以下に与えられる。以前の実施態様のいずれか1つに従う特定の実施態様において、これらの化合物は以下に与えられる例から選択される。
【0074】
無機成分補給効果剤は、再石灰化を許容するイオン、特に任意の適切な供給源(フッ素供給源)からのフッ素、任意の適切な供給源からのカルシウム、ならびにリン酸または無機成分補給効果能を有し、そして歯を硬化し得る他のイオンを提供する。無機成分補給効果剤は、フッ化物アニオン、リン酸アニオン、カルシウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。上述の中で特に以下が例として引用される:フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フッ化アミン(ヘキサデシルアミンヒドロフルオリド、ビス-(ヒドロキシエチル)アミノプロピル-Nヒドロキシエチル-オクタデシルアミンジヒドロフルオリド、N-N’,N’-トリ(ポリオキシエチレン)-N-ヘキサデシル-プロピレンジアミンジヒドロフルオリド、またはオクタデセニルアミンヒドロフルオリド)、リン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、クエン酸三カリウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、および炭酸カルシウム。フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フッ化アミンはフッ素供給源である。従って、組成物がフッ素供給源を含まないが、無機成分補給効果剤を含むそれらの実施態様において、無機成分補給効果剤はフッ素供給源ではない。
【0075】
当該分野の技術水準において公知の任意のレオロジー剤は、粘性-制御剤として使用され得る。特に、レオロジー剤は、アラビアゴム、トラガカントゴム、キサンタンゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カーボポール型ポリマー、ペクチン、ムチン、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0076】
当該分野の技術水準において公知の任意の湿潤剤は、本発明の組成物において使用され得る。特に、湿潤剤は、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、およびそれらの混合物からなる群より選択され得、好ましくはグリセリンであり得る。
【0077】
本発明の組成物において使用され得る保存剤の中で特に、安息香酸ナトリウム、安息香酸、ソルビン酸カリウム、ジアゾリジニル尿素、イミダゾリニル尿素、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、およびそれらの混合物が好ましい。
【0078】
当該分野の技術水準の任意の着色剤が、本発明の組成物において使用され得る。特に、着色剤は、C.I.75810、二酸化チタニウム、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0079】
本発明の組成物において、当該分野の技術水準において公知の任意のpH-調整剤(また緩衝液と呼ばれる)が使用され得る。特に、pH-調製剤は、乳酸、乳酸エステル、クエン酸、クエン酸エステル、リンゴ酸およびそれらの塩、水酸化ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0080】
当該分野の技術水準において公知の任意の甘味料が、本発明の組成物において使用され得る。特に、甘味料は、マルチトール、イソマルチトール、マニトール、ラクチトール、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、シクラメート、ソーマチン、スクラロース、ステビアリバウディアナ(estevia rebaudiana)、ネオヘスペリジン DC、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0081】
例えば、パパインのようなタンパク質分解酵素はまた、本発明の組成物に組み込まれ得る。これは、粘膜障害病変が存在する場合、これが残屑の清浄を促進し、そして粘膜の破壊を促進する原因であった死細胞を減少するので、有用であり得る。
【0082】
当該分野において公知の任意の適切な乳化剤は、本発明の組成物において使用され得る。特に、乳化剤は、ポリエチレングリコール(PEG)40水素化ヒマシオイル、レシチン、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0083】
軽度の研磨剤がまた、本発明の組成物において使用され得、好ましくは低研磨シリカであり得、特に水和化シリカ(例えば、Syloid 244、Zeodent 163、Zeodent 623)からなる群より選択され得る。
【0084】
上記のように、本発明の組成物は、パセリシードオイルおよび/またはシトロンオイルのような精油を取り込み得る。
【0085】
当該分野の技術水準において公知の任意の瘢痕形成剤が、本発明の組成物において使用され得、特に、アラントイン、D-パンテノール、パントテン酸カルシウム、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0086】
本発明の組成物は、ウシゼラチン、魚類ゼラチン、藻類ゼラチン、およびそれらの混合物のような、動物性および/または植物性のゼラチンを含み得る。
【0087】
本発明の組成物はまた、例えば、シトロンまたはミント抽出物のような芳香剤を含み得る。
【0088】
最後に、適切な腑形剤が、それらが意図される処方物に従って本発明の組成物に添加される。従って、蜜蝋、ガム基礎剤、カルナバワックス、またはセラックなどが使用され得る。
【0089】
以前の実施態様のいずれかに従う別の特定の実施態様において、本発明の組成物は任意のさらなる活性成分を含まない。特に、ピロカルピン、ペントキシフィリン、シクロスポリン、顆粒-マクロファージ-コロニー-刺激因子、抗インターロイキン-6抗体、アシクロビル、抗細菌剤、クロロヘキシジン、メサラジン、オルサラジン、サクラルフェート、5-アセチルサリチル酸、ミソプロストール、またはそれらの混合物を含まない。より詳細には、組成物は、蜂蜜および/またはプロポリスを含まない。
【0090】
所望される形態/処方によれば、組成物は、所望される感覚刺激性およびレオロジーの形態を提供するのに必要な全てのそれらの成分を含み得る。
【0091】
好ましくは、本発明の組成物は、中性pH(6と7.5との間)を有する。さらに液状および柔性の調製物の場合において、水が溶媒として使用される。
【0092】
OTIOMの処置の間、水溶液が好ましく、および乳化剤の必要性は減少される。従って、本発明の第1の局面の実施態様のいずれか1つに従う好ましい実施態様において、組成物は水溶液であり、そしてこれは乳化剤を含まない。
【0093】
特定の実施態様において、本発明の組成物は、溶液(例えば、口洗浄液)、噴霧液、ゲル、シロップ、歯磨き粉、チューインガム、舐めることが可能なカプセル、舐めることが可能なトローチ剤、口蓋シート、錠剤、甘味物、含浸性口腔スワブ、含浸性口腔ガーゼ、粘膜吸収(sucking)錠剤、アプリケーターを用いるか、または用いない、局所用溶液、局所用軟膏として処方される。
【0094】
溶液、噴霧液、ゲル、およびシロップは、液状投与形態として、本発明において考慮される。以前の実施態様のいずれか1つに従う好ましい実施態様において、本発明の組成物は、水性の液状投薬形態として処方される。
【0095】
一般的に、スワブおよびガーゼと同様に、本発明の組成物の溶液で含浸される任意の適切な支持体が、口内、喉、鼻、または肛門における局所的適用のために使用され得る。同様に、本発明の組成物の単一用量形態(例えば、適切な小袋またはブリスター)が使用され得、これは使用の前に必要に応じて冷却され得、疼痛からのより迅速なおよびより効果的な緩和が達成される。好ましくは、組成物の液状投薬形態は、これが消化管全体の粘膜に対して作用するように摂取される。
【0096】
任意の場合において、当業者は、本発明の処方物を、OTIOMの予防および/または処置のための簡素な使用を許容する任意の適切な形態において処方する。
【0097】
本発明の組成物は、ガンが診断された後できる限り早く、および理想的には腫瘍処置を開始する少なくとも24時間前に、毎日使用される場合、OTIOMを予防することが証明された(実施例1を参照のこと)。プロトコルは、ガン処置の全期間に沿って継続されるべきである。被験体が既にOTIOMの症状を有する場合、評定3および4に進行するのを防ぐために、本発明の組成物は、OTIOMの発症または診断後の最初の24時間以内に、好ましくは適用される。
【0098】
本発明の組成物は、OTIOMを処置するために提供された。処置組成物は、OTIOM症状の期間に沿って毎日、そして兆候および症状の停止後少なくとも2週間、使用されるべきである(実施例2を参照のこと)。直腸または前立腺の放射線照射が与えられる場合、本発明の組成物は肛門に局所的に適用される。
【0099】
OTIOMの処置について好ましい投与プロトコルは、本発明の組成物を、アプリケーターを用いて、または用いないで、優しく口を開けながら、そして過剰分を嚥下しながら、粘膜全体にこれを広げながら適用することであり、口内のみでなく消化管全体において、粘膜と組成物との接触が生じる。好ましくは、組成物は、フッ素の任意の供給源を含まず、このことは被験体が重篤なOTIOMを有する場合特に好ましい。
【0100】
好ましくは、投薬量は、1適用あたり2.5~5mlであり、ティースプーンに等しい。好ましくは、これは一日に少なくとも3回、より好ましくは、少なくとも6回、およびさらにより好ましくは一日に最大10回適用される。従って、好ましい実施態様において、組成物は、一日あたり3~10回の間で投与される。
【0101】
以前の実施態様のいずれか1つに従う本発明の好ましい実施態様において、組成物は液状投薬形態、好ましくは水性液状投薬形態、およびより好ましくは水溶液または水性ゲルである。このように、これは、罹患された領域に容易に適用され得、およびさらに嚥下され得る。
【0102】
本発明の第1の局面の実施態様のいずれか1つに従う本発明の特定の実施態様において、投与プロトコルは、実施例1または実施例2において記載されるプロトコルである。
【0103】
本発明の第2の局面は、OTIOMの予防および/または処置のための薬剤の調製のための、オリーブオイル、トリメチルグリシン、およびキシリトールを含有する組成物の使用に言及する。本発明の第1の局面について記載された本発明の組成物の特定のおよび好ましい実施態様は、本発明の第2の局面に適用可能である。
【0104】
本発明の第3の局面は、その必要がある被験体においてOTIOMを処置する方法に言及し、オリーブオイル、TMG、およびキシリトールを含む組成物の治療的に有効な量を被験体に投与する工程を包含する。本発明の第1の局面について記載された本発明の組成物の特定のおよび好ましい実施態様は、本発明の第3の局面に適用可能である。
【0105】
本発明の第3の局面の特定の実施態様において、その必要がある被験体においてOTIOMを処置する方法は、本発明の第1の局面の任意の実施態様において規定されるように、本発明の組成物の治療的に有効な量を被験体に投与する工程を包含し、被験体への当該投与は、最初の兆候および症状が出現するとすぐに行使される。これは毎日、一日少なくとも3回、好ましくは少なくとも6回与えられる。好ましくは、これは一日当たり10回より多くは投与されない。従って、特定の実施態様において、組成物は一日当たり3~10回、好ましくは一日当たり6~10回投与される。以前の実施態様のいずれか1つに従う好ましい実施態様において、投薬量は1適用あたり2.5~5mlであり、ティースプーンに等しい。組成物は、アプリケーターを用いて、または用いないで投与され、優しく口を開けながら、過剰分を嚥下しながら、粘膜全体にこれを広げる。
【0106】
本発明の第3の局面の以前の実施態様のいずれか1つに従う好ましい実施態様において、組成物は液状投薬形態として、より好ましくは水性液状投薬形態として、およびさらにより好ましくは水溶液として処方される。以前の実施態様のいずれか1つに従う好ましい実施態様において、組成物は任意のフッ素供給源を含まない。より好ましくは、これはヒドロキシチロソール、チロソール、およびオレウロペインを含む。そしてさらにより好ましくは、組成物は処方物5または6のうちの1つである。
【0107】
好ましい実施態様において、本発明の組成物の投与のプロトコルは、実施例2において記載されるようである。
【0108】
好ましくは、本発明の組成物の投与は、ガン処置の全期間に沿って、およびより好ましくはガン処置の終了後少なくとも2週間以上の間、投与される。
【0109】
本発明の第4の局面は、被験体においてOTIOMを予防する方法に言及し、これはオリーブオイル、TMG、およびキシリトールを含む組成物の予防的に有効な量を被験体に投与する工程を包含する。被験体への当該投与は、ガンと診断された後、およびガン治療を開始する時が判明した後、できる限り早く、そして腫瘍処置を開始する少なくとも24時間前に行使される。組成物は、ガン処置の全期間、好ましくは治療周期の合間も停止することなく、投与されるべきである。被験体が既にOTIOMの症状を有する場合、評定3および4に進行するのを防ぐために、本発明の組成物は、OTIOMの発症または診断後の最初の24時間以内に好ましくは適用される。
【0110】
好ましくは水性液状投薬形態、より好ましくは水溶液が、2.5~5mlの本発明の組成物の局所適用を伴って、口腔粘膜に適用される。これは、毎日、一日数回、ガン治療レジュメが開始される少なくとも24時間前に開始される。好ましい実施態様において、投与のプロトコルは実施例1において記載されるようであり、そこに記載される処方物に制限されない。
【0111】
本発明の第5の局面は、オリーブオイル、TMG、およびキシリトールを含む組成物に言及し、本発明の第1の局面において記載される本発明の組成物の実施態様のいずれか1つに従う。詳細には、これはヒドロキシチロソール、チロソール、オレウロペイン、およびそれらの混合物(すなわち、ヒドロキシチロソールおよび/またはチロソールおよび/またはオレウロペイン)からなる群より選択される酸化防止剤を含む組成物に言及する。好ましくは、これはヒドロキシチロソール、チロソール、およびオレウロペインを含む。
【0112】
別の特定の実施態様において、組成物はフッ素の供給源を含まない。
【0113】
これらの酸化防止剤を含み、フッ素供給源を有しない組成物の例は、本発明の処方物5および6であり、それゆえ、これらは本発明の第5の局面の好ましい実施態様である。
【実施例】
【0114】
本発明の範囲を制限することなく本発明を説明するために供する本発明の特定の実施態様は、以下に詳細に記載される。
【0115】
[実施例1]
OTIOMの予防の研究
1.1.-被験体
異なるガンを診断され(表3)、および異なる腫瘍処置(外科手術、化学-放射線療法、放射線療法、またはそれらの組み合わせ)を受けた(表4)、12歳~95歳の54人の患者(男性26人および女性28人)を研究に含めた。
【0116】
【0117】
【0118】
1.2.-試験対象患者基準および試験除外患者基準
試験対象患者
外科的手術を伴うか、または伴わずに、化学療法および/または放射線療法のような腫瘍処置を必要とする、ガンを診断された患者。良好な口腔衛生習慣を有し、および与えられたプロトコルに従って試験物質を使用する意志を有する患者。
試験除外患者
試験対象患者基準を満たさなかったそれらの患者はこの研究から除外した。
【0119】
1.3.-研究設計
・ガンを診断された54人の患者のうちの38人は、研究の始まりの前に腫瘍処置を何ら受けずに開始した。これらの患者に、腫瘍処置を開始する少なくとも24時間前に、防御組成物を有する試験物質を使用することを求めた。この患者の群は、すなわち、試験群であった。
・他の16人の患者は、本発明の組成物を有する試験物質を使用しなかった。この群は、すなわち、コントロール群であった。
【0120】
構成されたプロトコル:
-夕食後、組成物(処方物1)で歯を磨く。
-歯磨きの前または後に組成物(処方物2)で漱ぐ(患者選択)。
-歯磨きの合間、患者が痛みまたは不快を感じた場合はいつでも、組成物(処方物3)または組成物(処方物4)を適用する。
-全ての化学療法または放射線療法のセッションの前後に、小さじを用いて2.5~5mlの投薬量(ティースプーンに等しい)で口腔内に組成物(処方物5)を適用する。舌、唇で、または穏やかな口内動作により、口腔粘膜全体に組成物を広げ、過剰分を嚥下して消化管における組成物の作用を許容することによる適用。
【0121】
このプロトコルを、ガン処置の全期間の間、継続した。腫瘍処置の終了時に、試験群およびコントロール群は、OTIOMの発症、または未発症を報告した。OTIOMが出現した場合はいつでも、患者は、WHO分類のとおり、彼/彼女のガン専門医により診断されたその程度を報告した。
【0122】
1.4-使用した処方物
処方物1:歯磨き粉
【0123】
【0124】
処方物2:水溶液(口内洗浄液として)
【0125】
【0126】
処方物3:水性ゲル
【0127】
【0128】
処方物4:水性噴霧液
【0129】
【0130】
処方物5:水性ゲル
【0131】
【0132】
1.5.-結果
試験群の38人の患者うちの一人は、個人的な理由のためにプロトコルに従わなかったことを表明した。またコントロール群の16人の患者のうちの一人は、プロトコルを中断したことを表明した。両名の患者をデータ解析から除外した。
【0133】
試験群の37人の患者についての結果は以下のようであった(表5)。
【0134】
【0135】
コントロール群の15人の患者についての結果は以下のようであった(表6)。
【0136】
【0137】
コントロール群および試験群から報告されたOTIOMの数および評定における差異は統計学的に有意であった(p<0.0001)。
【0138】
試験群対コントロール群からの、軽度および中程度のOTIOM(評定1および2)を報告した患者の数における差異は、統計学的に有意であった(p<0.0409)。評定2のOTIOMについての当該差異はまた、統計学的に有意であった(p<0.01)。
試験群対コントロール群からの、重篤なOTIOM(評定3および4)を報告した患者の数における差異は、統計学的に有意であった(p<0.0409)。
本発明の組成物の嚥下の結果として、研究した患者のいずれも胃腸の副作用を発生しなかった。また、どの患者においても処置に対する過敏性反応は観察されなかった。
【0139】
1.6.-結論
本発明の組成物の使用は、症例の73%において、任意のOTIOMを予防する(すなわち、OTIOM評定0)(p<0.0001)。
本発明の組成物の使用は、症例の100%において、重篤なおよび致死的なOTIOM(評定3および4)を予防する(p<0.0409)。
本発明の組成物の使用は、軽度および中程度のOTIOM(評定1および2)の出現を減少する(p<0.0409)。
【0140】
[実施例2]
OTIOMの処置の研究
2.1.-被験体
異なるガンを診断され(表7)、および異なる腫瘍処置(外科的手術、化学-放射線療法、放射線療法、またはそれらの組み合わせ)を受けた(表8)、45歳~88歳の20人の患者(男性8人および女性12人)を研究に含めた。
【0141】
【0142】
【0143】
2.2-試験対象患者基準および試験除外患者基準
試験対象患者
ガンを診断され、外科的手術を伴うか、または外科手術を伴わずに、化学療法および/または放射線療法のような腫瘍処置を受け、以前の処置周期において粘膜炎を発生し、そして最新の周期における粘膜炎の発生に気付いている患者。
口腔衛生の評価をガン専門チームによって指導され、正常な口腔衛生の程度から歯ブラシの禁止まで様々であった。
試験除外患者
研究を開始する前に試験物質を使用した患者は、参加を認めなかった。
試験対象患者基準を満たさなかったそれらの患者を、研究から除外した。
【0144】
2.3-研究設計
一旦、ガン専門チームが経口胃腸粘膜炎を検出すると、患者および看護師に、以下から構成されるプロトコルに従った試験物質の使用を指導した:
1.全ての化学療法または放射線療法のセッションの前に、2.5~5ml(ティースプーンに等しい)の組成物(処方物5)を、小さじを用いて口腔に適用する。舌、唇、および穏やかな口内動作で溶液を口腔粘膜全体に広げ、そして消化管における溶液の作用を許容するために過剰分を嚥下する。
2.セッションの日々の間、不快感を生じた場合はいつでも、または不快感がなくても、一日当り少なくとも3回、組成物(処方物5)を適用する。
3.セッションでない日々の間、一日少なくとも3回、組成物(処方物5)を適用する。
4.就寝前に組成物(処方物5)を適用する。夜間患者が目覚めた場合、別途適用を行う。
5.食後、組成物(処方物6)で漱ぎ、過剰な残屑および食品残余物ならびに唾を取り除く。
【0145】
全周期の間、このプロトコルに従うべきであり、ならびに周期が終了した後さらに2週間、維持されるべきであり、そして最初の兆候または症状が出現すると直ぐにプロトコルを開始するべきである。
以前の周期と、最新の周期との間のOTIOMの持続時間の比較を行った。
全ての患者に、彼らが以前の周期において経験したことに基づいて、彼らが次の処置に直面する予測される彼らの不安な気持ちに関する短い質問票を埋めるように求めた。回答を、0(不安なし)、1(中程度に不安)、および2(非常に不安)として評定した。患者に、処置を開始する前と、処置の周期終了後2週間経ってから、同じ質問をした。結果を比較した(以下の表11の参照のこと)。
【0146】
2.4.-処方物
処方物5(上述の通り):
【0147】
【0148】
処方物6:水性噴霧液
【0149】
【0150】
2.5.-結果
患者の一人は、個人的な理由のためにプロトコルの不履行を知らせたので、彼をデータ解析から除外した。
残りの患者は、彼らが以前の周期の間に発生したOTIOMと比較して、症状の軽減および持続時間の減少を経験したので、即時改善を判断した。
多くの著者らにより記載される累積される毒性作用に起因して、数人の患者は以前の周期におけるよりも高い程度の粘膜炎を最新の周期において経験していた(本発明の組成物の使用を開始する前)(表9を参照のこと)。
【0151】
【0152】
OTIOMを伴う持続時間における比較を、以前の周期(本発明の組成物を投与せず)と、最新の周期(本発明の組成物を投与する)との間で、両方の周期において同じ程度の粘膜炎を発生したそれらの患者においてのみ行った。
発生したOTIOMの評定による、および全体として以前の周期と最新の周期との間の持続時間における差異を、表10に挙げる。全ての評定の差異は、統計学的に有意である(p=0.01)。
【0153】
【0154】
本発明の組成物の嚥下の結果として、研究した患者のいずれも、胃腸の副作用を生じなかった。また、処置に対する過敏性反応は、いずれの患者においても観察されなかった。
本発明の組成物で処置したOTIOM症状と、当該組成物で処置しなかったOTIOMの以前の症状との間で、全ての患者は、回復時間の有意な減少から利益を得た。
次の処置を予測し不安な患者に関して、本発明の著者らは、2.3節の最終段落において説明したように、処置の次の周期に彼らが直面する場合に彼らがどれほどの不安を感じるかについて簡単な質問を採り入れた。
重要な数の患者が、新しい周期の毒性作用を我慢することはできない不安な気持ちから逃れてガン処置を離脱するので、不安は重大な問題である。患者が不安感を和らげば、おそらく、彼らは次の処置周期のための心構えができ、それゆえ、遅延はより減少し、そしてセカンドライン処置選択の必要性はより少なくなる。本発明の著者らは結果に満足した。表11において示されるように、本発明の組成物を使用した後の患者は、今後の処置をより気楽に感じた。差異は統計学的に有意であった(p=0.05)
【0155】
【0156】
研究の完了後、本発明の著者らは、おそらく、以前に悪心、口内潰瘍、嘔吐、飲食不能、またはさらに出血性下痢を経験した場合においてさえ、現在は本発明の組成物が、それらのいずれも被らないように彼らを補助してくれると感じたという事実に基づいて、次の処置周期に対する大部分の患者のより良好な傾向を見出した。
【0157】
2.6.-結論
OTIOMの持続時間は、全ての症例において、すなわち、任意の程度の粘膜炎を伴う患者に適用した場合、本発明の組成物の使用とともに減少した。差異は統計学的に有効であった(p=0.01)。全ての患者は、本発明の組成物を使用した後、今後の処置に対してより自信のある態度を有した。
【0158】
[実施例3]
予防の比較研究
3.1.-被験体
異なるガン診断および異なる腫瘍処置を伴う25歳~78歳の60人の患者(男性27人および女性33人)を本研究に含めた。
【0159】
3.2.-試験対象患者基準および試験除外患者基準
試験対象患者
ガンを診断され、腫瘍処置を必要とし、まだ処置を開始していない患者。プロトコルに従う意思を有し、および良好な口腔衛生を有する患者。
試験除外患者
試験対象患者基準を満たさなかった患者。さらに、研究を開始する前に試験物質を使用した患者は参加を認めなかった。
【0160】
3.3.-研究設計
20人の患者の3つの無作為な群をそれぞれ作製した。
群1:オリーブオイル、TMG、およびキシリトールを含む組成物。
群2:オリーブオイルを含むが、TMGもキシリトールも含まない組成物。
群3:キシリトールおよびTMGを含むが、オリーブオイルを含まない組成物。
【0161】
以下からなるプロトコル:
-食後に指定された組成物で歯を磨く。
-患者が痛みまたは不快を感じた場合はいつでも、歯磨きの合間に指定された組成物を適用する。
-全ての化学療法または放射線療法のセッションの前後に指定された組成物を適用する。
このプロトコルを、全てのガン処置の間継続した。
腫瘍処置の終了時に、これらの3つの群は、OTIOMの発症および評定を報告した。
【0162】
3.4.-処方物
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
3.5.-結果および結論
群1、2、および3の結果を表12において示す。
【0167】
【0168】
群1は、本発明の組成物(オリーブオイル、キシリトール、およびTMGを含む)を使用し、75%の症例において、OTIOMを発症せず、評定0と評価された。対照的に、群2は、オリーブオイルのみを有する組成物を使用し、評定0を伴う15%の患者を有し、群3は、キシリトールおよびTMGを有する組成物を使用し、評定0を伴う20%の患者を有した。つまり、群2および3の患者の、それぞれ、15%および20%のみが、OTIOMを発症しなかった。
さらに、本発明の組成物を使用すること(群1)は、100%の症例において、重篤なおよび致死的なOTIOM(評定3および4)を予防し、他の2つの群と統計学的に有意な差異を示す(群2とp=0.01、および群3とp=0.03)。対照的に、群2および群3において、25%および35%の症例が、それぞれ、重篤なおよび致死的なOTIOM(評定3および4)を示した。
【0169】
[実施例4]
処置の比較研究
4.1.-被験体
異なるガンを診断され、および腫瘍処置が異なる28歳~89歳の60人の患者(女性37人および男性23人)を、研究に含めた。
【0170】
4.2.-試験対象患者基準および試験除外患者基準
試験対象患者
ガンを診断され、化学療法および/または放射線療法のような腫瘍処置を受け、以前の処置周期において粘膜炎を発生し、そして最新の周期における粘膜炎の発症に気付いていた患者。
試験除外患者
研究を開始する前に試験物質を使用した患者は、参加を認めなかった。
試験対象患者基準を満たさなかった患者を、研究から除外した。
【0171】
4.3.-研究設計
20人の患者の3つの無作為な群をそれぞれ作製した。
群1:オリーブオイル、TMG、およびキシリトールを含む組成物。
群2:オリーブオイルを含むが、TMGもキシリトールも含まない組成物。
群3:キシリトールおよびTMGを含むが、オリーブオイルを含まない組成物。
【0172】
以下からなるプロトコル:
-食後に指定された組成物で歯を磨く。
-患者が痛みまたは不快を感じた場合はいつでも、歯磨きの合間に指定された組成物を適用する。
-全ての化学療法または放射線療法のセッションの前後に指定された組成物を適用する。
このプロトコルを、兆候または症状が出現すると直ぐに開始し、そして全周期の間追従し、そして周期の終了後さらに2週間、維持した。
以前の周期と最新の周期との間のOTIOMの持続時間の比較を行った。
【0173】
4.4.-処方物
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
4.5.-結果
最新の周期の粘膜炎の程度と、以前の周期の程度とを比較することにより、治療の有効性を評価し得る。
多くの著者らにより記載される、累積される毒性作用に起因して、患者は以前の周期におけるよりも高い程度の粘膜炎をその後の周期において経験する。すなわち、処置の成功は、患者が以前の周期におけるのと同じ程度を経験する場合である。
【0178】
【0179】
表13において示されるように、群1における75%の患者は、以前の周期におけるのと同じ程度の粘膜炎を経験した(すなわち、首尾よい処置)のに対し、群2の20%および群3の35%のみが、以前の周期におけるのと同じ程度を有した。
群1と群2との間の差異は統計学的に有効であり(p<0.01)、ならびに群1と群3との間の差異も同様であった(p<0.01)。群2と3との間に差異は見られなかった。
【0180】
[実施例5]
直腸炎の処置の研究
5.1.-目的、被験体、および処方物
直腸炎は、直腸を影響するOTIOMであり、直腸ガン患者におけるのみでなく、最も一般的に前立腺ガンにおける、粘膜のガン処置毒性の後期副作用の1つであり、放射線療法が腹部骨盤領域において高用量で適用される場合に最も頻度の高い合併症である。放射線照射直腸炎は、泌尿器科および婦人科または消化器科の装置において、ガンの放射線療法の用量依存性の毒性作用として、骨盤領域の放射後随時出現し、ならびに5~20%のこの群の患者を影響し得る。
【0181】
化学療法の後期副作用としての直腸粘膜の毒性はまた、しぶりおよび下痢、その後の便秘の症状の形態において報告されている。
出血は、直腸炎の最も重篤な形態であり、鉄摂取を必要とし得、そしてガンの再発または新規なガン疾患を伴った異なる診断を呼び入れる。
より侵攻性の症状において、出血は、貧血、従って輸血に導き得るが、これは一般に数回の臨床的症状後に減少される。
下痢は、粘液排出または/および腹部不快感を付随する。
【0182】
本研究の目的は、直腸ガン処置後に直腸炎を伴った患者において、キシリトール、オリーブオイル、およびTMGを含む組成物(すなわち、本発明の組成物)と、上記の活性成分のいずれも有しないプラシーボ組成物との臨床的有効性を比較することであった。
研究を行うために、20人の患者を研究に含め、そして2つの群に無作為に分けた。2つの異なる組成物を試験した:
組成物A(本発明)、0.5% オリーブオイル、4.0% TMG、および10% キシリトールを含む。
組成物B(プラシーボ)、組成物Aと同じ腑形剤を含むが、いずれの活性成分も含まない。
【0183】
5.2.-試験対象患者基準および試験除外患者基準
試験対象患者
腫瘍処置に起因する直腸炎を診断され、そして直腸の不快感/疼痛および直腸しぶりを示す患者を、研究に含めた。
試験除外患者
試験対象患者基準を満たさなかった患者を、研究から除外した。
【0184】
5.3.-研究設計
研究を交差し、従って全員が無作為に指定された両方の組成物を使用した。
片方の組成物および次の組成物の投与の間、1週間のウォッシュアウトがあった。
試験物質を患者の番号で識別した白色チューブ中に梱包した。内容物は密閉した封筒中に維持し、そしてデータ処理のためにのみ開封した。
【0185】
【0186】
全ての症状を100mm長のVAS(視覚的アナログ尺度)により評価した。
直腸不快感/疼痛および直腸しぶりを報告するVAS値を、4つの異なる日にて、全ての患者について得た:
・0日目:研究の開始時。
・8日目:最初の処置期間後。
・15日目:ウォッシュアウト期間後。
・22日目:第2の処置期間後。
全ての症例において、5mlを投薬するアプリケーターを用いて液体ゲルとして試験物質を直腸に適用した。患者はまる一週間、毎晩就寝前に5ml適用した。
【0187】
5.4.-結果および結論
研究において、2つの群があったが、結果を表す際、群は考慮に入れなかった。20人の患者の結果を表14および表15において示す。
【0188】
直腸不快感/疼痛
本発明の組成物またはプラシーボ組成物を使用した後に得られた平均の結果を表14において示す。
【0189】
【0190】
直腸しぶり
本発明の組成物またはプラシーボ組成物を使用した後に得られた平均の結果を表15において示す。
【0191】
【0192】
表14および15において示すように、1週間一日1回直腸に適用した場合、男性20人の群において、本発明の組成物は、プラシーボ組成物と比較して、直腸不快感/疼痛(p<0.000)および直腸しぶり(p=0.003)を有意に軽減する。
【0193】
[実施例6]
直腸炎の処置の比較研究
6.1.-目的、被験体、および処方物
研究の目的は、直腸ガン処置後に直腸炎を伴った患者において、キシリトール、オリーブオイル、およびTMGを活性成分として含む組成物と、オリーブオイルのみを活性成分として含む組成物との臨床的有効性を比較することであった。
研究の目的のために、9人の患者を研究に受け入れた。患者を2つの群に無作為に分けた(一方の群は4人の患者、および他方の群は5人の患者を伴った)。
2つの異なる組成物を試験した。
組成物A(本発明)、0.5% オリーブオイル、4.0% TMG、および10% キシリトールを含む。
組成物B(オリーブオイル)、0.5% オリーブオイルを含むが、TMGおよびキシリトールは含まない。
【0194】
6.2.-試験対象患者基準および試験除外患者基準
試験対象患者
腫瘍処置に起因する直腸炎を診断され、直腸不快感/疼痛および直腸しぶりを被る患者を研究に含めた。
試験除外患者
試験対象患者基準を満たさなかったそれらの患者を、研究から除外した。
【0195】
6.3.-研究設計
研究設計は、全員が、無作為に指定された両方の組成物を使用し、そして両方の組成物を交差設計において一方と他方との間に7日間ウォッシュアウト期間を伴って続けて使用することであった。
試験物質を患者の番号で識別した白色チューブ中に梱包した。内容物は密閉した封筒中に維持し、そしてデータ処理のためにのみ開封した。
【0196】
【0197】
全ての症状を100mm長のVAS(視覚的アナログ尺度)により評価した。
直腸不快感/疼痛および直腸しぶりから得られたVAS値を、4つの異なる日にて、全ての患者について得た:
・0日目:研究の開始時。
・8日目:最初の処置期間後。
・15日目:ウォッシュアウト期間後。
・22日目:第2の処置期間後。
全ての症例において、5mlを投薬するアプリケーターを用いて液体ゲルとして試験物質を直腸に適用した。患者はまる一週間、毎晩就寝前に5ml適用した。
【0198】
6.4.-結果および結論
研究において、2つの群があったが、結果を表す際は、群は考慮に入れなかった。
【0199】
直腸不快感/疼痛
本発明の組成物またはオリーブオイル組成物を使用した後の平均の結果を表16において示す。
【0200】
【0201】
直腸しぶり
本発明の組成物またはオリーブオイル組成物を使用した後に得られた平均の結果を表17において示す。
【0202】
【0203】
表16および17において示すように、1週間一日1回直腸に適用した場合、男性9人の群において、本発明の組成物は、活性成分として0.5%のオリーブオイルのみを含む組成物と比較して、直腸不快感/疼痛(p<0.000)および直腸しぶり(p<0.000)を有意に軽減する。