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▶ ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】ゲータイト顔料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 49/02 20060101AFI20220628BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20220628BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220628BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C01G49/02 A
C09D11/00
C09D7/61
C09D201/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020540634
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2019051574
(87)【国際公開番号】W WO2019145333
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】18153657.4
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カルステン・ローゼンハーン
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ラリッサ・シャウフラー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーネ・カトライン
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・ヴェーバー-チャプリック
(72)【発明者】
【氏名】ロビン・クルップ-テイラー
(72)【発明者】
【氏名】サエーデ・ゴルカル
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-115698(JP,A)
【文献】特開昭63-064923(JP,A)
【文献】特開昭61-275133(JP,A)
【文献】特開昭60-086031(JP,A)
【文献】DONG FU; ET AL,IRON OXYHYDROXIDE NANOPARTICLES FORMED BY FORCED HYDROLYSIS: DEPENDENCE OF PHASE 以下備考,PHYSICAL CHEMISTRY CHEMICAL PHYSICS,英国,2011年,VOL:13, NR:41,PAGE(S):18523(1 - 7),http://dx.doi.org/10.1039/c1cp20188c,COMPOSITION ON SOLUTION CONCENTRATION
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 49/02
C09D 11/00
C09D 7/61
C09D 201/00
CAplus(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程:
a)硝酸第二鉄(III)を水に溶解する工程
b)工程a)に従って得られた溶液を、55℃~65℃の範囲の温度で48時間以上処理する工程
c)工程b)に従って得られた懸濁液からゲータイトを単離する工程
d)工程c)で単離されたゲータイトを、水に懸濁させる工程
e)工程d)の懸濁液を、自生圧力下、120~220℃の温度で熱水的に処理する工程
を含む、ゲータイトの製造方法。
【請求項2】
工程a)において使用する前記硝酸第二鉄が、99重量%超の純度の、硝酸第二鉄九水和物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硝酸第二鉄を溶解させるために工程a)において使用する前記水が、2ppmよりも少ないアルカリ及びアルカリ土類の合計含有量を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
i)1.3よりも低いアスペクト比AR、
ii)58~59のCIELAB L値、
iii)43~47のCIELAB b値、及び、
iv)ミリングのCIELAB b 値の差(デルタb )が0.6未
(ここで、前記ミリングは、0.5gの顔料粉末を、2000分-1の周波数の振動ボールミル内で、10mmメノウボールを用いて2分間すり潰すことによって行う。)
を有するゲータイト。
【請求項5】
インク、ペイント、コーティング、建材、プラスチック及び紙工業分野の製品、食品分野の製品、焼付けワニス若しくはコイルコーティング分野の製品、砂粒、ケイ灰煉瓦、エナメル及び釉がけ分野の製品、並びに医薬品工業の製品を着色するための、請求項4に記載のゲータイトの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲータイト顔料の製造方法、それぞれのゲータイト顔料及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
サブミクロン粒子の形態でα-FeOOH(ゲータイト)相を含む鉄黄(yellow iron oxide)顔料は、当技術分野において公知である。そのような鉄黄顔料の着色特性は、粒度分布及び形状、並びに粒子の内部構造及び粒子凝集の状態によって実質的に決定される。
【0003】
一般に、(特許文献1)に記載されているように、α-FeOOH(鉄黄)は、沈殿プロセスによって又は公知のPennimanプロセスによって、鉄(II)塩から調製される。両プロセスにおいて、種結晶が最初に生み出され、その上へ次に、さらなる工程において、比較的ゆっくりと、追加のα-FeOOHが成長させられる。
【0004】
上述したプロセスによって調製されたα-FeOOH粒子は、一般に、非常に一定の針状に結晶化している。針状結晶軸に垂直の及び平行の散乱係数及び吸収係数は、かなり異なる。針状結晶が先ず観察の方向に垂直に、次に平行に配置される場合、かなりの色差が観察者の目に見える。この効果は、それが絹布地の表面でも観察できるため、シルキング効果と呼ばれる。酸化鉄顔料に関して、シルキング効果は、一方向に塗布されるラッカーの場合の効果(いわゆるイメージ枠組み効果(image framework effect))、及びプラスチック及びプラスチックフォイルの押出及びカレンダー掛け中の顔料の配列の結果の効果として特に迷惑である。
【0005】
(特許文献2)は、低いシルキング効果を有する鉄黄顔料の調製方法が記載されている。このシルキング効果の排除は、一緒に成長して回転楕円体凝集体(小さい「ハリネズミ」のような)を与える高樹状針状結晶が生成することにより達成される。これらのおよそ同じ寸法の凝集体は、もはや特定の好ましい方向に配列することができない。高樹状粒子をベースとするそのような顔料の不利点は、それらがミリングに敏感であって、シルキング効果のある一部の淡黄色酸化鉄顔料によって得られる黄色度指数bの値が低下することである。
【0006】
先行技術を調査すると、針状結晶から構築されていない、球形ゲータイト顔料を見いだすことができる。(非特許文献1)及びまたそのような球形酸化鉄粒子を研究している他の学術論文に言及される。これらの粒子は、約60℃で水中の硝酸鉄(III)から調製される。しかしながら、これらの合成ルートの全てが、全種類の不純物に対して非常に敏感であり、実験室スケールの大きさでのみ提供することができる高レベルの精製が必要とされる。さらに、これらのプロセスによって得られる色特性は、満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第2 455 158 A1号明細書
【文献】独国特許出願公開第A1-33 26 632号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Fuら,Phys.Chem.Chem.Phys.,2011,13,18523-18529,「Iron oxyhydroxide nanoparticles formed by forced hydrolysis:dependence of phase composition on solution concentration」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、特に公知の球形ゲータイトに関して、これらの欠点を克服するゲータイトの新規製造方法を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
意外にも、そのような顔料は、工程:
a)硝酸第二鉄(III)の水への溶解の工程
b)工程a)に従って得られた溶液の、特に10h以上、55~65℃の範囲の温度での処理の工程
c)工程b)に従って得られた懸濁液からゲータイトを単離する工程
d)工程c)の単離されたゲータイトを水に懸濁させる工程及び
e)工程d)の懸濁液を、特に1h以上、自生圧力下に170~220℃の温度で熱水的に処理する工程
を含有するゲータイトの製造方法によって調製できることが分かった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
工程a)
工程a)において好ましくは使用される硝酸第二鉄は、Fe(NO×9HOである。さらにより好ましい硝酸第二鉄は、99重量%超、特に99.9%超の純度を有する。硝酸第二鉄の濃度は、0.01~0.12M、好ましくは0.05~0.1M、特に0.055~0.09M、さらにより好ましくは0.06~0.065Mの範囲となるべきである。
【0012】
硝酸第二鉄を溶解させるために工程a)において使用する水は、好ましくは、2ppmよりも少ないアルカリ及びアルカリ土類の合計含有量を有する。
【0013】
工程a)は、15~25℃の、特に20~25℃の温度で好ましくは行う。温度が工程b)において用いられる値まで上昇する前に、工程a)に従って得られる溶液を、いくらかの時間、好ましくは5~20時間、好ましくは10~29時間そのままにしておくことが有利であることが分かった。
【0014】
工程b)
工程a)後に、水溶液の温度を、55~65℃の範囲に上昇させる。好ましくは、温度を、スムーズに、特に2.5K/分以下、好ましくはそれ以下の速度で上昇させる。起こる反応は、一般化学方程式:
Fe(NO×9HO(水性)→FeOOH(固体)+3HNO(水性)+7H
に従うと推測される。
【0015】
達成された温度での反応時間は、好ましくは10h以上、特に24時間以上、より好ましくは48時間以上、最も好ましくは96時間以上であるべきである。溶液の蒸発による反応器内の容積変化は、好ましくは、10容積%未満に保たれる。これは、閉鎖反応容器によって達成することができる。工程b)の間に、水性懸濁液が得られる。
【0016】
工程c)
工程b)の処理の後に、形成された顔料は、沈殿し、反応器の底部に沈んだ。固形分を、好ましくは、懸濁液から濾過することによって単離し、水で洗浄し、任意選択的に乾燥させる。好ましくは、固体を、導電率が1000μS/c未満になるまで水で洗浄する。
【0017】
工程d)
工程c)の処理から単離した顔料を、好ましくは水に加えて、水性懸濁液をベースとして、10重量%以下の、好ましくは5重量%以下の、特に2重量%以下の、より特に0.15~0.3重量%の固形分の水性懸濁液を形成させる。
【0018】
工程e)
工程d)において調製された懸濁液を、次にオートクレーブ中で好ましくは処理し、自生圧力下、120~220℃の範囲の温度に、好ましくは150~200℃に加熱する。
【0019】
このいわゆる熱水処理は、好ましくは1h以上、より好ましくは12~24時間行う。特にこの処理を24h後に終える。
【0020】
懸濁液を、熱水処理の間ずっと好ましくは撹拌する。オートクレーブは、好ましくは、特にテフロン(登録商標)裏打ちの、ステンレス鋼製である。
【0021】
固形分を、好ましくは、懸濁液から濾過し、水で洗浄し、任意選択的に乾燥させる。
【0022】
顔料
本発明の方法に従って得られた顔料は、
i)1.5よりも低い、好ましくは1.3よりも低い、最も好ましくは1.2よりも低い、特に1.1よりも低いアスペクト比AR
ii)56~60の、好ましくは58~59のCIELAB L
iii)42~48の、好ましくは43~47のCIELAB b
iv)好ましくは100~600nmの範囲の平均粒径
を有する球形の黄色顔料である。
【0023】
したがって、そのような顔料も本発明の一部であり、ここで、上述の方法に従って得られる顔料は、好ましくは99重量%超のα-ゲータイトを含有する、ゲータイトである。
【0024】
特徴i)
アスペクト比ARは、文献に報告されているアスペクト比を測定する又は決定するための種々の技法によって決定することができる。膨大な数の研究(Baudetら、1993;Jennings及びParslow、1988;Lohmander、2000;Pabstら、2000;Pabstら、2001;Pabstら、2006a;Pabstら、2007b;Slepetys及びCleland、1993)は、どのようにしてレーザーアンサンブル回折及び単一粒子光散乱(静的及び動的)がアスペクト比を測定する有利な条件を提供するかを記述している。
【0025】
アスペクト比ARは、統計的に適切な数の粒子についての走査又は透過電子顕微鏡法画像及びコンピュータ計算されるそれらの分布特性(平均、標準偏差)から決定することもできる。ARを決定するために、好ましくは、楕円を各粒子にフィットさせて主楕円軸長さ対短楕円軸長さの比であるARを得る。
【0026】
特徴ii)
CIELABシステムのL値は、チキソトロピー効果を有する規定のアルキッド樹脂中でDIN EN ISO 11664-4:2011-07及びDIN EN ISO 787-15:2007を方法として用いる、酸化鉄顔料に対して慣習的な表面コーティング試験で測定する。
【0027】
特徴iii)
CIELABシステムのb値は、チキソトロピー効果を有する規定のアルキッド樹脂中でDIN EN ISO 11664-4:2011-07及びDIN EN ISO 787-25:2007を方法として用いる、酸化鉄顔料に対して慣習的な表面コーティング試験で測定する。
【0028】
特徴iv)
粒径は、より好ましくは150~500nmの範囲内、最も好ましくは200~400nmの範囲内にある。
【0029】
本発明顔料のBET比表面積は、好ましくは10~60m/g、特に10~40m/g、より好ましくは10~20m/gの範囲にある。BET比表面積は、DIN-ISO 9277に記載されている方法によって測定することができる。
【0030】
本発明は、
i)1.5よりも低い、好ましくは1.3よりも低い、最も好ましくは1.2よりも低い、特に1.1よりも低いアスペクト比AR
ii)58~59のCIELAB L
iii)43~47のCIELAB b
iv)及び下に記載される方法に従ってミリング後に測定される、0.6未満、好ましくは0.5未満のデルタb
v)及び好ましくは100~600nmの範囲の平均粒径
を有する、本発明顔料とも考えられる、ゲータイト顔料にも言及する。
【0031】
これらの特徴の測定は、上述した方法と同じ方法で行う。デルタb値は、それぞれの顔料のミリングの前後で決定されるそれぞれのb値の差であり、ここで、このミリング方法では、好ましくは0.5gの顔料試料を使って、顔料を、2000分-1の周波数で2分間、振動ボールミルにおいて10mmメノウボールを用いて処理する。
【0032】
本発明顔料の使用
本発明は、インク、ペイント、コーティング、建材、プラスチック及び紙工業の分野の製品、食品分野の製品、焼付けワニス若しくはコイルコーティング分野の製品、砂粒、ケイ灰煉瓦、エナメル及び釉がけ分野の製品、並びに医薬品工業の製品、特にタブレットを着色するための、上述により定義した本発明顔料の使用にも言及する。特に本発明顔料は、好ましくは、ペイント及びコーティングに使用される。
【実施例
【0033】
方法:L及びbの測定
好ましくはSetal(登録商標)F 48である規定のアルキッド樹脂中で、DIN EN ISO 11664-4:2011-07及びDIN EN ISO 787-25:2007に従って顔料の色を測定するために、ミッドオイルアルキッドをベースとするコーティングシステムに顔料を分散させる。練り顔料を使用してペイントフィルムを調製し、それを乾燥させ、基準システムと比較して比色分析的に評価する。
【0034】
測定システムの詳細な説明を以下に示す。
【0035】
顔料を、風乾ラッカーシステムにミュラー(プレート型)を用いて分散させる。ラッカーシステム(ラッカー)は、以下の成分:
95.26% Setal(登録商標)F 48(Nuplex製のバインダー、中油、約55%油含有量の非揮発性物質内容物/非揮発性物質中のトリグリセリドおよそ48%、非揮発性物質分画中の無水フタル酸約26%中の乾燥性植物脂肪酸に基づいて空気乾燥させるためのガソリン/キシレン混合物38のアルキッド樹脂)
0.78% 2-ブタノンオキシム、石油スピリット中の55%(スキンニング剤)
1.30% Octa Soligen(登録商標)カルシウム(湿潤剤、炭化水素混合物中の分岐C~C19脂肪酸のカルシウム塩(4%Caを含有する;Borchers AG)
0.22% コバルトOcta Soligen(登録商標)6(乾燥物質、炭化水素混合物中の分岐C~C19脂肪酸のコバルト(2+)塩(6%Coを含有する;Borchers AG)
0.87% ジルコニウムOcta Soligen(登録商標)6(乾燥物質、炭化水素混合物中のジルコニウム分岐C~C19脂肪酸(6%Zrを含有する;Borchers AG)
1.57% グリコール酸n-ブチルエステル(=ヒドロキシ酢酸ブチルエステル)
からなる。
【0036】
成分を高速で混合して仕上げコーティングにする。DIN EN ISO 8780-5(1995年4月)に記述されているとおり、プレート型(muller:ミュラー)を使用する。24cmの有効プレート直径の(登録商標)ENGELSMANN JEL 25/53ミュラーを適用するために、下方プレートの速度は、負荷棒上に2.5kg重りを取り付けることによって最初は約75であり、プレート間の力は約0.5kNとなる。DIN EN ISO 8780-5(1995年4月)のセクションに、2.5kg重り付きで100回転まで1段階で0.4gの顔料及び1.00gのペイントを分散する方法が記載されている。ミュラーを開き、ラッカーを中心の外側で下方プレート上に素早く集める。閉じる時にさらなる1.00gのラッカーを追加し、プレートを折り畳む。負荷重りなしの50回転での2段階後に、準備は完了する。
【0037】
顔料入りラッカーを、非吸収性ボール紙上にフィルムアプリケーター(少なくとも150ミクロン、250ミクロン超のギャップ)でコートする。ワニスが塗られたボール紙(スプレッド)を、次に、少なくとも12h室温で乾燥させる。色測定の前にスプレッドを約65℃(±5℃)で1時間乾燥させ、冷却する。
【0038】
増白を測定するためのアルキッドエナメル中の調製物
顔料及び増白剤を、風乾ラッカーシステム中にミュラー(プレートFarbenausreib機械)で分散させる。増白剤として市販のTronox RKB 2二酸化チタン顔料を使用する。このラッカーシステム(ラッカー)は、上に記述したものに相当する。
【0039】
コーティングシステムの成分を高速で混合して仕上げコーティングにする。
【0040】
顔料入りラッカー及びラッカーコーティングは、上に記述した通りであり、0.1500gの試験すべき顔料、0.7500gのTronox(登録商標)RKB 2 二酸化チタン顔料、及び2.0グラムのアルキッド樹脂を秤量する。
【0041】
色彩計
光沢トラップなしのd/8測定形状を有する分光光度計(「色彩計」)を用いた。この測定形状は、ISO 7724/2-1984(E)、セクション4.1.1、DIN 5033パート7(1983年7月)、セクション3.2.4、及びDIN 53236(1983年1月)、セクション7.1.1に記載されている。
【0042】
DATAFLASH(登録商標)2000計測器(Datacolor International Corp.,USA)を用いた。色彩計を、ISO 7724/2-1984(E)セクション8.3に記載されているように、白色セラミック作業標準に対して較正した。理想的に艶のない白色物体に対する作業標準の反射データを色彩計に堆積する、黒色点較正を、色彩計製造業者からの中空黒色物体を使用して実施して、白色作業標準での較正後に、全ての着色測定値が、理想的に艶のない白色物体に関連するようにした。
【0043】
色彩測定
色彩測定の結果は、反射スペクトルである。比色分析パラメータの計算に関する限り、測定を行うために用いられる発光体は、重要ではない(蛍光性試料の場合を除いて)。反射スペクトルから、任意の所望の比色分析パラメータを計算することが可能である。この場合に用いる比色分析パラメータL、a及びbを、DIN 6174(CIELAB値)に従って光源D65に対して計算する。
【0044】
存在する場合、光沢トラップの電源を切る。色彩計及び試験検体の温度は、およそ25℃±5℃であった。
【0045】
顔料のミリング安定性の試験
0.5gの顔料粉末を、Sartorius製のDismembrator R型に製造された2000分-1の周波数の振動ボールミル内で10mmメノウボールを用いて2分間すり潰した。原色ペイントドローダウンを、上述した通りに調製した。
【0046】
比色測定
比色測定は、色彩計Spectraflash 600プラスで行う。設定は、上に記載された通りである。
【0047】
粒径及びアスペクト比の測定:
円相当面積粒径xを、好適なPCプログラム(例えばImageJ)を用いて、分離した粒子又は連続的な単一層の粒子のSEM画像を解析することによって決定した。最初に、粒子とバックグラウンドとの間の高いコントラストを確保するために画像を好適に前処理する。第二に、画像を閾値処理して、バックグラウンドが白色であり、粒子が黒色である二値画像を得る。次に、連続的な粒子を、それらの間に白線を引くことによる手動で、或いは好ましくは、自動機能(例えば分水嶺(Watershed)アルゴリズム)を用いてのどちらかで、分離する。最後に、単一粒子に相当する各黒色領域を分析して、その面積を決定し(面積A)、楕円をそれにフィットさせる(主軸長さx及び短軸長さx)。粒径x
【数1】
によって決定する。楕円アスペクト比を、AR=x/xによって決定する。x及びARの分布は、十分な数の粒子を測定し、及びそれらの数又は質量によってそれらをカウントして、それぞれ、数又は質量重み付け分布を形成することによって決定することができる。
【0048】
BET表面積
BET表面積は、多点法に従って窒素収着によって測定した。測定の前に、試料を12h、120℃で乾燥窒素の流れ中でガス抜きした。測定温度は77Kであった。
【0049】
実験の部
実施例1:出発原料:硝酸第二鉄九水和物
100gの硝酸第二鉄九水和物を、60℃で45gの60%硝酸に溶解させ、これに、7℃での24時間の再結晶、及び真空下でのその結晶の乾燥が続いた。
【0050】
実施例2:(比較)リットルスケール合成及び回転楕円体鉄黄粒子の色測定
実施例1における手順に従って再結晶した硝酸第二鉄九水和物を使用して62mMの硝酸第二鉄水溶液(溶媒:超純水)の2L溶液を形成した。溶液を室温で24時間熟成させた。次に、2つの1リットルの低密度ポリエチレンボトルをこの溶液の半分で満たし、60℃に既に予熱されたオーブンに入れた。ボトルをそれぞれ、24時間(試料A)及び96時間(試料B)後にオーブンから取り出した。固形分をそれぞれ洗浄し、重力沈降によって回収してより小さい容積に濃縮した。その後、懸濁液を3000RCF以下で遠心分離し、上澄み液を除去し、純水で置き換えた。このプロセスを3回繰り返した。次に固体を乾燥させた。それぞれの試料を走査電子顕微鏡法によって撮像した。質量重み付け分布の平均値及び標準偏差を表1に示す。生成物を上述した方法に従って色彩的に分析した。色パラメータを表1に示す。
【0051】
実施例3A:(参考)リットルスケール合成;回転楕円体鉄黄
実施例2の乾燥試料Aを超純水に再分散させ、テフロン(登録商標)裏打ちオートクレーブに入れた。熱水処理の間の懸濁液中の固体の濃度は、合計0.2重量%であった。オートクレーブを密封し、熱水的な後処理を実施するために20時間170℃に加熱した。この後に、固形分を洗浄し、重力沈降によって回収してより小さい容積に濃縮した。その後、懸濁液を3000RCF以下で遠心分離し、上澄み液を除去し、純水で置き換えた。このプロセスを3回繰り返した。次に固体を乾燥させた。熱水的な後処理生成物を、上述した方法に従って色彩的に分析した。
【0052】
実施例3B:(本発明)リットルスケール合成;回転楕円体鉄黄
実施例2の乾燥試料Bを使用して、実施例3Aに記載した方法と同じ方法で合成した。
【0053】
実施例2A、2B、3A及び3Bの色値を表1に示す。表1において、実施例2(比較)の生成物と、本発明実施例3の生成物とを比べると、実施例3A及び3Bにおける追加の熱水処理によって、それぞれの熱水的に処理されていない生成物と比較して改善された色(より高いL及びb値)がもたらされることが明らかである。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例4:本発明による回転楕円体鉄黄と、以下に定義される針状又はハリネズミ様顔料との、ミリング安定性の比較
原色顔料安定性を、本発明に従って製造された顔料(実施例3B)、独国特許出願公開第A1-33 26 632号明細書の実施例4によるハリネズミ様顔料、及び針状ゲータイト顔料(Bayferrox(登録商標)920)について試験した。各場合において、原色測定を、上述したように非ミルド及びミルド顔料に関して行った。色値を表2に示す。
【0056】
【表2】