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特許7096346設定可能なハイブリッド自己干渉キャンセルシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】設定可能なハイブリッド自己干渉キャンセルシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 15/00 20060101AFI20220628BHJP
   H04L 27/36 20060101ALI20220628BHJP
   H04L 27/38 20060101ALI20220628BHJP
   H04B 1/525 20150101ALI20220628BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H04B15/00
H04L27/36
H04L27/38
H04B1/525
H04B1/10 L
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020544016
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 US2019019910
(87)【国際公開番号】W WO2019169047
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】62/635,671
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/740,833
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518210487
【氏名又は名称】クム ネットワークス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kumu Networks,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,ウィルヘルム,ステッフェン
(72)【発明者】
【氏名】リドル,アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】ランディ,アーニー
(72)【発明者】
【氏名】シー,ダイ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ジョン-イル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン,マヤンク
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0171903(US,A1)
【文献】特表2015-501117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0197231(US,A1)
【文献】特表2016-515360(JP,A)
【文献】特開2009-194639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 15/00
H04L 27/36
H04L 27/38
H04B 1/525
H04B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己干渉キャンセルシステムにおいて:
通信システムの無線周波数(RF)送信信号に通信可能に結合された送信カプラであって、前記RF送信信号をサンプリングして、RF搬送周波数を有するサンプリングされたRF送信信号を作成する、送信カプラと;
第1アナログ自己干渉キャンセラとを具え、当該第1アナログ自己干渉キャンセラが:
前記サンプリングされたRF送信信号を、同相送信信号成分と直角位相送信信号成分に分解する周波数ダウンコンバーと;
前記同相送信信号成分を、第1経路同相送信信号成分と、第2経路同相送信信号成分とに分割する第1サンプリングカプラと;
前記直角位相送信信号成分を、第1経路直角位相送信信号成分と、第2経路直角位相送信信号成分とに分割する第2サンプリングカプラと;
前記第1経路同相送信信号成分をスケーリングして第1スケーリング同相送信信号成分を生成するとともに、前記第1経路直角位相送信信号成分をスケーリングして第1スケーリング直角位相送信信号成分を生成する、第1アナログベクトル変調器と;
前記第2経路同相送信信号成分を遅延させて第1遅延同相送信信号成分を生成する第1遅延器と;
前記第2経路直角位相送信信号成分を遅延させて第1遅延直角位相送信信号成分を生成する第2遅延器と;
前記第1遅延同相送信信号成分をスケーリングして第2スケーリング同相送信信号成分を生成するとともに、前記第1遅延直角位相送信信号成分をスケーリングして第2スケーリング直角位相送信信号成分を生成する第2アナログベクトル変調器と;
前記第1および第2のスケーリング同相送信信号成分を組み合わせて、同相自己干渉キャンセル信号成分を生成する第1結合カプラと;
前記第1および第2のスケーリング直角位相送信信号成分を組み合わせて、直角位相自己干渉キャンセル信号成分を生成する第2結合カプラと;
前記同相自己干渉キャンセル信号成分および直角位相自己干渉キャンセル信号成分からRF自己干渉キャンセル信号を生成する周波数アップコンバータと;
前記通信システムのRF受信信号に通信可能に結合され、前記RF自己干渉キャンセル信号を前記RF受信信号と組み合わせて、RF複合受信信号を生成する受信カプラとを具え、当該RF複合受信信号は、前記RF受信信号よりも自己干渉が少ないことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第1アナログ自己干渉キャンセラがさらに:
前記第1遅延同相送信信号成分を、第1経路第1遅延同相送信信号成分と、第2経路第1遅延同相送信信号成分とに分割する第3サンプリングカプラであって、前記第2アナログベクトル変調器は、前記第1経路第1遅延同相送信信号成分に結合される、第3サンプリングカプラと;
前記第1遅延直角位相送信信号成分を、第1経路第1遅延直角位相送信信号成分と、第2経路第1遅延直角位相送信信号成分とに分割する第4サンプリングカプラであって、前記第2アナログベクトル変調器は、前記第1経路第1遅延直角位相送信信号成分に結合される、第4サンプリングカプラと;
前記第2経路第1遅延同相送信信号成分を遅延させて第2遅延同相送信信号成分を生成する第3遅延器と;
前記第2経路第1遅延直角位相送信信号成分を遅延させて第2遅延直角位相送信信号成分を生成する第4遅延器と;
前記第2遅延同相送信信号成分をスケーリングして第3スケーリング同相送信信号成分を生成するとともに、前記第2遅延直角位相送信信号成分をスケーリングして第3スケーリング直角位相送信信号成分を生成する第3アナログベクトル変調器とを具え;
前記第1結合カプラは、前記第1、第2、および第3スケーリング同相送信信号成分を組み合わせて、同相自己干渉キャンセル信号成分を生成し;前記第2結合カプラは、前記第1、第2、および第3スケーリング直角位相送信信号成分を組み合わせて、直交自己干渉キャンセル信号成分を生成することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、さらに、前記第1アナログベクトル変調器によるスケーリングの前に前記第1経路同相送信信号成分を増幅する第1増幅器と、前記第1アナログベクトル変調器によりスケーリングの前に前記第1経路直角位相送信信号成分を増幅する第2増幅器とを具えることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記RF受信信号と組み合わせる前に、前記RF自己干渉キャンセル信号を増幅する第3増幅器をさらに具えることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記同相送信信号成分および直角位相送信信号成分の両方が中間周波数(IF)搬送周波数を有し、ここで前記IF搬送周波数は前記RF搬送周波数よりも低いことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、前記IF搬送周波数が0ヘルツであることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第1アナログベクトル変調器は、前記第1経路同相送信信号成分と前記第1経路直角位相送信信号成分との第1線形結合から前記第1スケーリング同相送信信号成分を生成し、前記第1アナログベクトル変調器は、前記第1経路同相送信信号成分と第1経路直角位相送信信号成分の第2線形結合から前記第1スケーリング直角位相送信信号成分を生成することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、第1振幅スケーリング値および第1位相シフト値を適用するために、前記第1アナログベクトル変調器は、前記第1経路同相送信信号成分、第1振幅スケーリング値、および第1位相シフト値のコサインの積を、前記第1経路直角位相送信信号成分、第1振幅スケーリング値、および第1位相シフト値の負のサインの積に加えることによって前記第1線形結合を生成し;前記第1アナログベクトル変調器は、前記第1経路同相送信信号成分、第1振幅スケーリング値、および第1位相シフト値のサインの積を、前記第1経路直角位相送信信号成分、第1振幅スケーリング値、および第1位相シフト値のコサインの積に加えることによって前記第2線形結合を生成することを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記第1アナログベクトル変調器が、差動減衰器回路を使用して前記第1および第2線形結合を生成することを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項7に記載のシステムにおいて、前記第1経路同相送信信号成分および前記第1経路直角位相送信信号成分によって表される複素信号は、意図された信号と画像信号の両方を含み、前記画像信号は、前記意図された信号の複素共役であることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、第1振幅スケーリング値および第1位相シフト値を適用するために、前記第1アナログベクトル変調器は、前記画像信号を検出、測定、または推定した後に前記第1および第2線形結合を生成し、ここで前記第1アナログベクトル変調器は、前記第1および第2線形結合を生成して、前記第1スケーリング同相送信信号成分および前記第1スケーリング直角位相送信信号成分における前記画像信号の存在を低減することを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、第1振幅スケーリング値および第1位相シフト値を適用するために、前記第1アナログベクトル変調器は、前記第1経路同相送信信号成分、前記第1振幅スケーリング値、前記第1位相シフト値のコサイン、および1とスケーリングファクタの合計に対する1の積を、第1経路直角位相送信信号成分、第1振幅スケーリング値、第1位相シフト値の負のサイン、および1と前記スケーリングファクタの差に対する1の積に加えることによって前記第1線形結合を生成し;前記第1アナログベクトル変調器は、前記第1経路同相送信信号成分、前記第1振幅スケーリング値、前記第1位相シフト値のサイン、および1と前記スケーリングファクタの合計に対する1の積を、前記第1経路直角位相送信信号成分、前記第1振幅スケーリング値、前記第1位相シフト値のコサイン、および1と前記スケーリングファクタの差に対する1の積に加えることによって前記第2線形結合を生成することを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記第1アナログベクトル変調器は、差動減衰器回路を使用して前記第1および第2線形結合を生成することを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第1結合カプラは、第1増幅ステージおよび第2増幅ステージを具え、第1動作モードでは、前記第1結合カプラは、前記第1増幅ステージおよび第2増幅ステージの両方を使用して、前記第2スケーリング同相送信信号成分を増幅し;前記第1動作モードにおいて、前記第1結合カプラは、第1増幅ステージおよび第2増幅ステージの一方のみを使用して、前記第1スケーリング同相送信信号成分を増幅することを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記第1結合カプラがさらにスイッチを具え、第2動作モードにおいて、前記第1結合カプラは、前記第1増幅ステージおよび第2増幅ステージの両方を使用して、前記第2スケーリング同相送信信号成分を増幅し;前記第2動作モードにおいて、前記第1結合カプラは、前記第1増幅ステージおよび第2増幅ステージの両方を使用して、前記第1スケーリング同相送信信号成分を増幅し;前記スイッチは、前記第1結合カプラを前記第1動作モードから第2動作モードに切り替えることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記第1結合カプラは、第1増幅ステージおよび第2増幅ステージを具え;第1動作モードにおいて、前記第1結合カプラは、前記第1増幅ステージおよび第2増幅ステージの両方を使用して、第3スケーリング同相送信信号成分を増幅し;前記第1動作モードにおいて、前記第1結合カプラは、前記第1増幅ステージおよび第2増幅ステージの両方を使用して、前記第2スケーリング同相送信信号成分を増幅し;前記第1動作モードにおいて、前記第1結合カプラは、前記第1増幅ステージおよび第2増幅ステージの一方のみを使用して、前記第1スケーリング同相送信信号成分を増幅することを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記第1結合カプラがさらにスイッチを具え、第2動作モードにおいて、前記第1結合カプラは、前記第1増幅ステージおよび第2増幅ステージの両方を使用して、前記第3スケーリング同相送信信号成分を増幅し;前記第2動作モードにおいて、前記第1結合カプラは、前記第1増幅ステージおよび第2増幅ステージの一方のみを使用して、前記第2スケーリング同相送信信号成分を増幅し;前記第2動作モードにおいて、前記第1結合カプラは、前記第1増幅ステージおよび第2増幅ステージの一方のみを使用して、前記第1スケーリング同相送信信号成分を増幅し;前記スイッチは、前記第1結合カプラを前記第1動作モードから前記第2動作モードに切り替えることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第1アナログベクトル変調器が、信号を合計スケールファクタでスケーリングするスケーリングステージのセットを有する差動減衰器回路を使用して、第1スケーリング同相送信信号成分および第1スケーリング直角位相送信信号成分を生成し;前記スケーリングステージのセットは、スイッチのセットによって差動減衰器回路に接続されており;前記合計スケールファクタは、前記スイッチのセットの状態構成によって設定されることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のシステムにおいて、前記システムは、前記差動減衰器回路の所望のスケーラ出力を計算し、当該所望のスケーラ出力に最も近い合計スケールファクタをもたらす状態構成を選択することによって前記状態構成を生成することを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムにおいて、前記状態構成は、ハイブリッド温度計コードに従って決定された一組の状態構成から選択されることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項7に記載のシステムにおいて、前記第1アナログベクトル変調器が、第1差動減衰器回路を使用して前記第1経路同相送信信号成分をスケーリングし、第2差動減衰器回路を使用して前記第1経路直角位相送信信号成分をスケーリングし、スケーリング後の前記同相送信信号成分と前記第1経路直角位相送信信号成分を合計することによって、前記第1線形結合を生成し;前記第1アナログベクトル変調器は、第3差動減衰器回路を使用して前記第1経路同相送信信号成分をスケーリングし、第4差動減衰器回路を使用して前記第1経路直角位相送信信号成分をスケーリングし、スケーリング後の前記同相送信信号成分と第1経路直角位相送信信号成分とを合計することによって、前記第2線形結合を生成することを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムにおいて、スケーリングステージの第1セットを有する前記第1差動減衰器回路が、第1合計スケールファクタによって前記第1経路同相送信信号成分をスケーリングし;前記第1合計スケールファクタは、前記スケーリングステージの第1セットの第1状態構成によって設定され;スケーリングステージの第2セットを有する前記第2差動減衰器回路が、前記第1経路直角位相送信信号成分を第2合計スケールファクタによってスケーリングし;前記第2合計スケールファクタは、前記スケーリングステージの第2セットの第2状態構成によって設定され;スケーリングステージの第3セットを有する前記第3差動減衰器回路が、前記第1経路同相送信信号成分を第3合計スケールファクタによってスケーリングし;前記第3合計スケールファクタは、前記スケーリングステージの第3セットの第3状態構成によって設定され;スケーリングステージの第4セットを有する前記第4差動減衰器回路が、前記第1経路直角位相送信信号成分を第4合計スケールファクタでスケーリングし;前記第4合計スケールファクタは、前記スケーリングステージの第4セットの第4状態構成によって設定されることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記第1、第2、第3、および第4状態構成は、ハイブリッド温度計コードに従って決定された1組の状態構成から選択されることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]関連出願の相互参照
本発明は、2018年2月27日に提出された米国仮出願整理番号62/635,671、および2018年10月3日に提出された米国仮出願整理番号62/740,833の利益を主張するものであり、これらのすべてが本参照により全体が組み込まれる。
【0002】
[0002]本発明は、一般に無線通信分野に関し、より具体的には設定可能なハイブリッド自己干渉キャンセルの新規で有用なシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]従来の無線通信システムは半二重であり、すなわち単一の無線通信チャネル上で信号を同時に送信および受信することができない。無線通信分野における最近の研究により、全二重無線通信システムの開発が進歩し、これらのシステムが正常に実装された場合、無線通信分野に多大な利益をもたらす可能性がある。例えば、セルラーネットワークで全二重通信を使用すると、スペクトルの必要性を半分に減らすことができる。全二重通信の実装を成功させるための1つの大きな障害は、自己干渉の問題である。この分野も進歩してきたが、自己干渉に対処することを目的としたソリューションの多くは、特に、複雑さや損失を大きくせずにパフォーマンスを満たす自己干渉キャンセルソリューションに関しては、パフォーマンスが不十分である。さらに、これらのソリューションの一部は、単一のシナリオ用に設計および使用された場合は適切に機能するが、動作モードや環境の変更(4×4MIMOから1×4SIMOへの移行など)に柔軟に対応できない場合がある。したがって、無線通信分野では、設定可能なハイブリッド自己干渉キャンセルのための新しく有用なシステムおよび方法を作成する必要がある。本発明は、そのような新しく有用なシステムおよび方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】[0004]図1は、全二重トランシーバの概略図である。
図2】[0005]図2は、本発明の実施形態のシステムの概略図である。
図3A】[0006]図3Aは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラの概略図である。
図3B】[0007]図3Bは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラの概略図である。
図4A】[0008]図4Aは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラの概略図である。
図4B】[0009]図4Bは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラの概略図である。
図4C】[0010]図4Cは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラの概略図である。
図5A】[0011]図5Aは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラのアナログベクトル変調器の概略図である。
図5B】[0012]図5Bは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラのアナログベクトル変調器の概略図である。
図6A】[0013]図6Aは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラのアナログベクトル変調器の減衰回路の概略図である。
図6B】[0014]図6Bは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラのアナログベクトル変調器の減衰回路の概略図である。
図6C】[0015]図6Cは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラのアナログベクトル変調器の減衰回路の概略図である。
図7A】[0016]図7Aは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラの遅延器の概略図である。
図7B】[0017]図7Bは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラの遅延器の概略図である。
図7C】[0018]図7Cは、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラの遅延器の概略図である。
図8】[0019]図8は、本発明の実施形態のシステムの一次アナログ自己干渉キャンセラの結合カプラの概略図である。
図9】[0020]図9は、本発明の実施形態のシステムの二次アナログ自己干渉キャンセラの結合カプラの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
[0021]本発明の実施形態の以下の説明は、本発明をこれらの発明の実施形態に限定することを意図するものではなく、当業者が本発明を作成および使用できるようにすることを意図している。
【0006】
1.全二重無線通信システム
[0022]無線通信システムは、世界の通信方法に革命をもたらし、そのようなシステムを使用した通信の急速な成長により、すべての地域と産業にわたって経済的および教育的な機会が増加している。残念ながら、通信に必要な無線スペクトルは有限のリソースであり、無線通信の急速な成長により、この利用可能なリソースはますます不足している。その結果、スペクトル効率が無線通信システムにとってますます重要になっている。
【0007】
[0023]スペクトル効率を高めるための1つの有望なソリューションは、全二重無線通信システムにある。つまり、同じ無線チャネルで同時に無線信号を送受信できる無線通信システムである。この技術により、標準の半二重無線通信システムと比較して、スペクトル効率を2倍にすることができる。
【0008】
[0024]全二重無線通信システムは無線通信分野に大きな価値を有するが、そのようなシステムは自己干渉の課題に直面することが知られている。これは、同じチャネルで受信と送信が同時に行われるため、全二重トランシーバで受信された信号には、そのトランシーバから送信されている信号からの不要な信号成分が含まれる場合があるからである。その結果、全二重無線通信システムは、自己干渉を低減するために、アナログおよび/またはデジタルの自己干渉キャンセル回路を含むことがよくある。
【0009】
[0025]全二重トランシーバは、送信出力をベースバンドアナログ信号、中間周波数(IF)アナログ信号、または無線周波数(RF)アナログ信号としてサンプリングするのが望ましいが、全二重トランシーバは、追加的または代替的に、任意の適切な方法で送信出力をサンプリングしてもよい。このサンプリングされた送信出力は、受信した無線通信データから干渉を取り除くために全二重トランシーバで利用することができる(例えば、RF/IF/ベースバンドアナログ信号またはRF/IF/ベースバンドデジタル信号として)。多くの全二重トランシーバでは、アナログ自己干渉キャンセルシステムがデジタル自己干渉キャンセルシステムとペアになっている。アナログキャンセルシステムは、RF送信信号の遅延バージョンとスケーリングバージョンを合計してRF自己干渉信号を作成し、それをRF受信信号から差し引くことで、自己干渉の最初の部分を削除する。あるいは、アナログキャンセルシステムは、中間周波数で同様のタスクを実行し得る。RF(またはIF)受信信号からRF/IF自己干渉信号が差し引かれた後、受信機のアナログデジタルコンバータを通過する(デジタル受信信号になる)。この段階の後、デジタル自己干渉キャンセル信号(デジタル送信信号を変換することによって作成される)がデジタル受信信号から差し引かれる。
【0010】
[0026]本明細書で説明するシステムおよび方法は、受信機のダイナミックレンジの問題を軽減することにより、図1(および他の適用可能なシステム)に示すように全二重トランシーバのパフォーマンスを向上させ、自己干渉キャンセルの効果を高めることができる。その他の適用可能なシステムには、アクティブセンシングシステム(RADARなど)、有線通信システム、RFID、無線通信システム、チャネルエミュレータ、反射率計、PIMアナライザ、および/または、送受信バンドの周波数は近いが重なっていない他の適切な測定機器システム、またはTDD(時分割複信)システムでさえも含まれる。
【0011】
2.設定可能なハイブリッド自己干渉キャンセルのシステム
[0027]図2に示されるように、設定可能なハイブリッド自己干渉キャンセルのシステムは、送信カプラ110、一次アナログ自己干渉キャンセラ120、および受信カプラ111を具える。このシステム100は、追加的または代替的に、二次アナログ自己干渉キャンセラ130、デジタル自己干渉キャンセラ140および/またはコントローラ150を具え得る。
【0012】
[0028]システム100は、自己干渉キャンセルを実行することにより、全二重トランシーバ(または他の適用可能なシステム)の性能を向上させるように機能する。
【0013】
[0029]システム100は、任意数のサンプリングされたアナログおよび/またはデジタル送信信号に基づいて、アナログおよび/またはデジタル自己干渉キャンセルを実行することにより、自己干渉キャンセレーションを実行する。例えば、デジタル自己干渉キャンセラ130は、図2に示されるように、デジタル送信信号をサンプリングし得るが、このデジタル自己干渉キャンセラ130は、追加的または代替的に、(例えば、アナログ送信信号に結合されたADCを通じて)アナログ送信信号をサンプリングし得る。
【0014】
[0030]システム100は、好ましくは、アナログおよびデジタル自己干渉キャンセルを同時に並行して実行するが、追加的または代替的に、アナログおよび/またはデジタル自己干渉キャンセルを任意の適切な時間および任意の順序で実行してもよい。
【0015】
[0031]システム100は、好ましくは、デジタル回路とアナログ回路の両方を使用して実装される。デジタル回路は、好ましくは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)および/または任意の適切なプロセッサまたは回路を使用して実装される。アナログ回路は、好ましくはアナログ集積回路(IC)を使用して実装されるが、追加的または代替的に、ディスクリートコンポーネント(例えば、コンデンサ、抵抗、トランジスタ)、ワイヤ、伝送ライン、トランス、カプラ、ハイブリッド、導波管、デジタルコンポーネント、混合信号成分、またはその他の適切なコンポーネントを使用して実装できる。デジタルおよびアナログ回路の両方が、追加的または代替的に、光学回路(例えば、フォトニック集積回路)を使用して実装され得る。システム100は、好ましくは、設定データを格納するためのメモリを具えるが、追加的または代替的に、外部に保存された設定データを使用してもよいし、任意の適切な方法で設定され得る。
【0016】
[0032]システム100は、好ましくは、受信機に結合される。この受信機は、通信リンク(例えば、同軸ケーブル、無線チャネル)を介して送信されたアナログ受信信号を受信するように機能する。受信機は、好ましくは、通信システムによる処理のためにアナログ受信信号をデジタル受信信号に変換するが、追加的または代替的に、アナログ受信信号を変換しない(変換せずに直接通過させる)でもよい。
【0017】
[0033]受信機は、好ましくは無線周波数(RF)受信機であるが、追加的または代替的に、任意の適切な受信機であってもよい。この受信機は、好ましくはデュプレクサ結合RFアンテナによって通信リンクに結合されるが、追加的または代替的に、任意の適切な方法で通信リンクに結合されてもよい。代替結合のいくつかの例には、1以上の専用受信アンテナを介した結合が含まれる。別の代替の結合では、受信機は、サーキュレータ結合RFアンテナによって通信リンクに結合されてもよい。
【0018】
[0034]受信機は、好ましくは、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)および周波数ダウンコンバータを含む。この受信機は、低雑音増幅器をさらに含み得る。受信機は、追加的または代替的に、増幅器、フィルタ、信号プロセッサ、および/または任意の他の適切な構成要素を含み得る。好ましい実施形態の1つのバリエーションでは、受信機は、アナログ処理回路(例えば、増幅器、フィルタ、減衰器、遅延器)のみを含む。この受信機は、受信信号をスケーリング、シフト、および/または他の方法で変更するように機能し得る。ダウンコンバータは、RF(またはその他の適切な周波数)からのアナログ受信信号をベースバンドまたはIFアナログ受信信号にダウンコンバートするように機能し、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)は、ベースバンドまたはIFアナログ受信信号をデジタル受信信号に変換するように機能する。
【0019】
[0035]同様に、システム100は、好ましくは送信機にも結合される。この送信機は、通信システムの信号を通信リンクを介して第2の通信システムに送信するように機能する。送信機は、好ましくは、デジタル送信信号をアナログ送信信号に変換する。
【0020】
[0036]送信機は、好ましくは無線周波数(RF)送信機であるが、追加的または代替的に、任意の適切な送信機であってもよい。
【0021】
[0037]送信機は、好ましくはデュプレクサ結合RFアンテナによって通信リンクに結合されるが、追加的または代替的に、任意の適切な方法で通信リンクに結合されてもよい。代替結合のいくつかの例には、1または複数の専用送信機アンテナを介した結合が含まれる。別の代替的な結合では、送信機は、サーキュレータ結合RFアンテナによって通信リンクに結合されてもよい。
【0022】
[0038]送信機は、デジタル-アナログコンバータ(DAC)および周波数アップコンバータを含むことが好ましい。この送信機は、電力増幅器をさらに含み得る。送信機は、追加的または代替的に、増幅器、フィルタ、信号プロセッサ、および/または任意の他の適切な構成要素を含み得る。送信機は、送信信号をスケーリング、位相シフト、遅延、および/または他の方法で変更するように機能することができる。デジタル-アナログコンバータ(DAC)は、デジタル送信信号をベースバンドまたはIFアナログ送信信号に変換するように機能し、アップコンバータは、ベースバンドまたはIFアナログ送信信号をベースバンドまたはIFからRF(またはその他の意図された送信周波数)にアップコンバートするように機能する。
【0023】
[0039]送信カプラ110は、一次アナログキャンセラ120、二次アナログキャンセラ130、および/またはデジタルキャンセラ140にアナログ送信信号のサンプルを提供するように機能する。送信カプラはさらに、信号経路間で電力を分割するのに用いることができる(例えば、異なるアナログキャンセラ120のブロック間で電力を分割する)。
【0024】
[0040]送信カプラ110は、好ましくは、短区画の方向性伝送線カプラであるが、追加的または代替的に、任意の電力ディバイダ、電力コンバイナ、方向性カプラ、または他のタイプの信号スプリッタであってもよい。送信カプラは好ましくは受動カプラであるが、追加的または代替的に能動カプラ(例えば、電力増幅器を含む)であってもよい。例えば、送信カプラ110は、結合伝送線カプラ、分岐線カプラ、ランゲカプラ、ウィルキンソン電力ディバイダ、ハイブリッドカプラ、ハイブリッドリングカプラ、複数出力ディバイダ、導波路方向性カプラ、導波管カプラ、導波管電力カプラ、ハイブリッドトランスカプラ、クロス接続トランスカプラ、抵抗性または容量性ティー、および/または抵抗性ブリッジハイブリッドカプラを含み得る。送信カプラの出力ポートは、好ましくは90度位相シフトされるが、追加的または代替的に、任意の量(例えば、0度、180度)に位相合わせまたは位相シフトされてもよい。
【0025】
[0041]TXカプラは、送信機のアクティブエレメント、例えばPAまたはPMA(ポストミキサーアンプ)に含めることもできる。これは、WLANやセルラチップセットなどの高度に集積されたシステムのコストとサイズの点で魅力的である。同様に、RXカプラは、例えば受信チェーンのLNAに統合されてもよい。
【0026】
[0042]送信カプラ110は、直列および/または並列に配置することができる。システム100における複数の送信カプラ110の構成は、後のセクションでさらに詳細に論じられる。
【0027】
[0043]受信カプラ111は、(アナログ/デジタルキャンセラからの)1つ以上のアナログ自己干渉キャンセル信号をアナログ受信信号と組み合わせるように機能する。
【0028】
[0044]受信カプラ111は、好ましくは、短区画の方向性伝送線カプラであるが、追加的または代替的に、任意の電力ディバイダ、電力コンバイナ、方向性結合器、または他のタイプの信号スプリッタであり得る。受信カプラ111は、好ましくは受動カプラであるが、追加的または代替的に、能動カプラ(例えば、電力増幅器を含む)であってもよい。例えば、受信カプラ111は、結合伝送線カプラ、分岐線カプラ、ランゲカプラ、ウィルキンソン電力ディバイダ、ハイブリッドカプラ、ハイブリッドリングカプラ、複数出力ディバイダ、導波路方向性カプラ、導波管電力カプラ、ハイブリッドトランスカプラ、クロス接続トランスカプラ、抵抗ティー、および/または抵抗性ブリッジハイブリッドカプラを含み得る。受信カプラ111の出力ポートは、好ましくは90度位相シフトされるが、追加的または代替的に、任意の量(例えば、0度、180度)に位相合わせまたは位相シフトされてもよい。
【0029】
[0045]受信カプラ111は、直列および/または並列に配置することができる。システム100における複数の受信カプラ111の構成は、後のセクションでさらに詳細に論じられる。
【0030】
[0046]一次アナログ自己干渉キャンセラ120は、アナログ送信信号から、アナログ受信信号に存在する自己干渉を低減するためにアナログ受信信号と組み合わせることができるアナログ自己干渉キャンセル信号を生成するように機能する。自己干渉キャンセルの前に、受信信号は、意図された受信信号と自己干渉の両方またはいずれかを含んでいる場合がある。自己干渉キャンセル後、受信信号(これは、受信信号と自己干渉キャンセル信号の組み合わせの産物であることから、「複合」受信信号と呼ばれることもある)は、好ましくは意図した受信信号(存在する場合)をまだ含んでおり、残っている自己干渉は、残留自己干渉と呼ばれる。一次アナログ自己干渉キャンセラ120は、好ましくはベースバンドで動作するように設計されるが、追加的または代替的に、1つまたは複数のIF帯域、1つまたは複数の無線周波数(RF)帯域、または適切な周波数コンバータを用いて任意の適切な周波数帯域(複数有り)で動作するように設計されてもよい。
【0031】
[0047]一次アナログ自己干渉キャンセラ120は、好ましくはRF送信信号のフィルタリング、スケーリングされ、位相シフトされ、および/または遅延されたバージョンのセットを組み合わせることにより、RF送信信号をアナログ自己干渉キャンセル信号に変換する1つ以上のアナログ回路として実装されるが、追加的または代替的に、任意の適切な回路として実装されてもよい。例えば、一次アナログ自己干渉キャンセラ120は、RF送信信号の単一のバージョンまたはコピーのみを含む変換を実行することができる。変換された信号(アナログ自己干渉キャンセル信号)は、好ましくは、受信機で受信された自己干渉成分の少なくとも一部をモデル化する。
【0032】
[0048]一次アナログ自己干渉キャンセラ120は、好ましくは、アナログ回路特性;例えば、RFトランシーバの温度、アナログキャンセラの温度、周囲温度、配線構成、湿度、RF送信器の電力、信号帯域幅、送信周波数などの変化に加えて、自己干渉パラメータ(例えば、送信アンテナと受信アンテナとの間のアンテナ結合特性)の変化に適合可能である。一次アナログ自己干渉キャンセラ120の適応は、好ましくは同調回路によって実行されるが、追加的または代替的に、キャンセラ120/130、コントローラ150、または任意の他の適切なコントローラに含まれる制御回路または他の制御機構によって実行されてもよい。
【0033】
[0049]本発明の実施形態の一実装例において、図3Aおよび3Bに例示されるように、一次アナログ自己干渉キャンセラ120は、サンプリングカプラ121、アナログベクトル変調器(AVM)122、遅延器123、および結合カプラ124を具える。この一次アナログ自己干渉キャンセラ120は、追加的または代替的に、周波数ダウンコンバータ125、周波数アップコンバータ126、および/または増幅器127を具え得る。この実装例では、アナログ自己干渉キャンセラ120が送信信号を信号パスに分割し(必要に応じてサンプリングカプラ121を使用)、これらの信号パス(「タップ」とも呼ばれる)を個別に変換してから、結合カプラ124で再結合する。
【0034】
[0050]図3Aに示されるように、送信信号(またはキャンセラ120への他の入力)は、(直角位相信号としてまだ提供されていない場合)直角位相信号に分割されることが好ましい。つまり、入力信号は、互いに90度位相がずれた2つの振幅変調信号によって表される。同相成分はI成分とも呼ばれ、オフセット相成分は直交(Q)成分と呼ばれる。IおよびQ信号は、(AVM122に関するセクションで後述するように)異なる振幅で組み合わされて、得られる信号の位相シフトおよび/または振幅スケーリングを作成することができる。
【0035】
[0051]図3Aの一次アナログ自己干渉キャンセラ120の実装例のセクションは、好ましくは、3つのタップを有する単一のキャンセラブロックを具える。あるいは、キャンセラ120/130は、任意の数のタップを有する任意の数のキャンセラブロックを具え得る。キャンセラブロックの使用は、MIMO(マルチインマルチアウト)通信で重要になる場合がある。例えば、キャンセラ120は、各自己干渉チャネルのブロックを具え得る(例えば、2×2MIMOの場合、4つのブロック:RX1チャネルのTX1干渉のブロック、RX1チャネルのTX2干渉のブロック、RX2チャネルのTX2干渉、およびRX2チャネルのTX1干渉のブロック)。図3Bに示すように、2×2MIMOシステムには4つのキャンセラブロックが使用される(キャンセラブロック間の境界は明示的に示されていないが、AVM122の各垂直ペアがキャンセラブロックを構成し得る)。図3Bに示すように、キャンセラブロックは要素を共有する場合がある。例えば、TX2から入力を取得する図3Bのキャンセラブロックと同様に、TX1から入力を取得する図3Bのキャンセラブロック(AVM122の最左列とその右側の列)は遅延器123を共有する。
【0036】
[0052]より一般的には、キャンセラブロックは、目的に応じて異なる入力または出力に切り替えることができる。例えば、各ブロックが8つのタップを有する4つのキャンセラブロックを有するキャンセラ120を考える。このようなキャンセラは、2×2MIMO構成で使用できる。例えば、キャンセラブロック120aが、送信信号TX1により引き起こされる干渉に起因する受信信号RX1における自己干渉をキャンセルする信号を生成し、キャンセラブロック120bが、送信信号TX2により引き起こされる干渉に起因する受信信号RX1における自己干渉をキャンセルする信号を生成し、キャンセラブロック120cが、送信信号TX1によって引き起こされる干渉に起因する受信信号RX2の自己干渉をキャンセルする信号を生成し、キャンセラブロック120dが、送信信号TX2によって引き起こされる干渉に起因する受信信号RX2の自己干渉をキャンセルする信号を生成する。このような構成では、各MIMOチャネルにはキャンセル実行に使用できる8つのタップがある。同じキャンセラを、送信信号によって引き起こされた干渉に起因する受信信号の自己干渉をキャンセルする4つのブロックすべて(32タップすべて)を持つSISO構成、または代替MIMO構成(例えば、2×1、1×2など)で使用できる。
【0037】
[0053]図4A(一部の入力がブロック間でコンポーネントを共有する例)と図4B(入力がブロック間でコンポーネントを共有しない例)に示すように、キャンセラ120はオプションでスイッチ160に接続され、この方法で設定可能となっている。図4Aおよび4B(および4C)にはI/Q信号が明示的に存在しないが、図3Aおよび3Bに示すようにそれらが実装され得ることが理解されたい。さらに、システム100に存在する信号は、差動信号(例えば、信号は、接地を基準とする単一の信号ではなく、V+およびV-信号のペアとして表され得る)であり得、その結果、図3Aおよび3Bでは線ごとに2つ以上の信号(例えば、「I」線上の1+およびI-)、図4Aおよび4Bでは線ごとの4つ以上の信号(例えば、I+、I-、Q+、Q-)を生じる。
【0038】
[0054]キャンセラ120は、(図4Aおよび4Bにあるように)チェーンを並列に切り替えることができるが、(図4Cに示すように)チェーンを直列に切り替えることもできることに留意されたい。チェーンの並列切り替えは、入力/出力の再割り当て(例えば、キャンセラよりも多くのチャネルがあり、キャンセラは使用または必要に基づいてチャネル間で切り替えることができる。または、TDDシステムでは、入力と出力を信号パスの反転に応じて切り替えることができる)、または同じチャネルで時間分解能を高めるのに役立つ(この場合、パスの切り替えは、別のブロックに対するブロックの時間遅延を相殺するためにオプションで追加の遅延を含み得る)。直列の切り替えチェーンにより、遅延を連鎖させることができ(例えば、図4Cに示すように、左側の遅延は、図の切り替え構成で右側の遅延と直列になっている)、これにより、キャンセラによって達成可能な時間遅延のウィンドウを拡張することができる。
【0039】
[0055]上記のキャンセラブロックスイッチングはアンテナアレイにも適用可能であり、この場合、アンテナのグループが束ねられてビームを形成し、さまざまな方向に向けられる。その結果、アンテナのグループごとに異なるタップ数のキャンセラが必要になり、アンテナによってはキャンセルが不要となる場合がある。スイッチブロックにより、必要なキャンセラとタップの総数を減らすことができるため、コスト、サイズ、重量を節約できる。
【0040】
[0056]キャンセラブロックは(例えば、ブロックへの恒常的な接続によって)静的に構成できるが、追加的または代替的に、(例えば、図4Aおよび4Bに示すスイッチ160によって、または信号をルーティングするための他の手段によって)動的に構成してもよい。例えば、キャンセラブロックは、キャンセラをすべてのアンテナ要素またはグループ(ラウンドロビン)に順次切り替えてアンテナアレイをトレーニングし、アレイの最高の全体パフォーマンスを選択することで設定することができる。別の操作モードは、ビームステアリングパターンに従うことである。
【0041】
[0057]場合によっては、信号パスが異なる周波数サブバンドで動作できるように信号パスをフィルタリングすることができる。周波数サブバンドは周波数が重複する場合があり、追加的または代替的に、同じ周波数サブバンドに対応する複数のフィルタが存在し得る。そのような実装では、一次キャンセラ120はフィルタを具え得る。
【0042】
[0058]一次アナログ自己干渉キャンセラ120は、好ましくは、遅延器123で信号成分を遅延させることに加えて、アナログベクトル変調器(AVM)122で各タップの信号成分を位相シフトおよび/またはスケーリングすることによって各タップを変換する。いくつかの実装例では、遅延器123はタップごと(例えば、図3Aおよび3Bのように)であり得るが、遅延器123およびAVM122は、キャンセラ120内に任意の数、構成、および/または場所に存在してもよい。一次アナログ自己干渉キャンセラ120のコンポーネントは、システム100のアナログ自己干渉キャンセルを可能にする様々な方法で結合することができる。
【0043】
[0059]サンプリングカプラ121は、送信信号(または他の信号成分)を複数の送信信号経路に分割するように機能する。サンプリングカプラ121は、好ましくは、入力信号を、入力信号と実質的に同じ波形を有する複数の信号に分割する。電力は、出力信号間で様々な方法で分割することができる。例えば、サンプリングカプラ121aおよび121bは2つの-3dBポートを有し、一方でサンプリングカプラ121cは、1つの-1.25dBポートと1つの-6dBポートを有し得る。この例では、ベクトル変調器122aの信号成分の信号レベルは送信信号に対して-6dBであり、122bでの信号成分は-7.25dBであり、122cでの信号成分は-12dBである。同様に、信号分割は、(例えば、増幅器の出力での並列負荷を用いて)現在のドメインで実行されてもよい。
【0044】
[0060]サンプリングカプラ121は、好ましくは伝送線電力ディバイダであるが、追加的または代替的に、任意の適切な電力ディバイダ、スプリッタ、またはカプラであってもよい。サンプリングカプラ121は、送信信号を前処理するための任意の適切な電子機器をさらに具え得る。例えば、サンプリングカプラ121は、1つ以上の出力信号に含まれる電力を増加させるための増幅器を具えてもよい。サンプリングカプラ121は、追加的または代替的に、信号の選択的ルーティングを可能にするスイッチまたは他のコンポーネントを具え得る。
【0045】
[0061]各アナログキャンセラ120ブロックは、好ましくは、1つのサンプリングカプラ121を具える。追加的または代替的に、アナログキャンセラ120の複数ブロックが、1つまたは複数のサンプリングカプラ121を共有してもよい。サンプリングカプラ121および他のカプラ(Tジャンクションのように単純であり得る)は、必ずしも図に明示されていないことに留意されたい。例えば、サンプリングカプラ121は、図3Aに示されるように、システムの各信号経路交差部にあってもよい。
【0046】
[0062]アナログベクトル変調器122は、アナログ自己干渉キャンセラ120の信号成分を位相シフトおよび/またはスケーリングするように機能する。アナログベクトル変調器122は、位相シフト、位相反転、増幅、および減衰のうちの1つまたは複数を実行することができる。位相シフトは、キャンセラ120が位相のずれた複数の信号成分の寄与を反映できるようにし、一方で信号スケーリング(例えば、減衰、増幅、反転)は、キャンセラが自己干渉キャンセル信号成分を予測または受信信号内に観測された自己干渉に適切に一致させることを可能にする。
【0047】
[0063]スケーリングするとき、アナログベクトル変調器122は、送信信号成分にスケールファクタを効果的に乗算する。例えば、34%の減衰が0.66のスケールファクタとして表され、20%の利得が1.20のスケールファクタとして表され、また10%の減衰と位相反転は、-0.90のスケールファクタとして表すことができる。スケールファクタは複雑な場合があり、例えば、ei・π/2のスケールファクタは、90度の位相シフトとして表される。
【0048】
[0064]本発明の実施形態の一実装例では、図5Aおよび5B(図5B図5AのAVM122の差動形式を示す)に示すように、AVM122は、直角位相信号で動作する複数のスケーリングセルのセットを含む。前述のように、同相信号と直角位相信号の組み合わせにより、振幅と位相の異なる信号が発生する。例えば、RF信号は次のように表される:
IQ形式で記述すると、同じ信号は単に以下のようになる:
そして、等価の複素ベースバンド信号は
直角位相信号のベースバンド周波数で動作するAVM122は、上記のように信号IとQを認識する。(最終的に生じる)信号をスケーリングするために、AVM122は、IおよびQ成分を一緒にスケーリングすることができる。例えば、Cでスケーリングされた結果の信号を取得するには、IおよびQ成分にそれぞれCを掛けるだけである。
【0049】
[0065]異なる(実際の)重みでIおよびQ成分をスケーリングすることにより、再構成後の得られる信号で位相シフトを実現できる。例えば、RF信号x(t)=A(t)cos[ωt+Φ(t)]を取り、信号をAだけスケーリングし、信号をΦだけ位相シフトしたいと仮定する(新たなRF信号x(t)=AA(t)cos[ωt+Φ(t)+Φ])。したがって、元の信号は次のように分解できる:
所望の結果を得るために、IとQは次のようにスケーリングされる:
この手法は、例えばデジタル信号から位相シフトおよび/またはスケーリングされた信号を生成するために一般的に使用される。残念ながら、RF信号への適用性は本質的に制限されている。上記の方程式を詳しく調べると、IとQのスケールファクタは定数として表現できないことがわかる(両方にΦ(0)の関数が含まれる)。現実の状況では、A(t)および/またはΦ(t)を個別に知ることができない場合がある。
【0050】
[0066]幸いなことに、複素重みでスケーリングすると、この問題を解決することができる。同じ信号x(t)を考えると、以下の乗算によって同じ振幅と位相の変化が適用され得る:
これは、次で書き換えることができる:
したがって:
これはもはやIおよびQ成分の単純なスカラー乗算ではないが、これらの成分の線形結合である(個別にA(t)やΦ(t)を知る必要がない)。
【0051】
[0067]図5A、5Bに示すように、AVM122は、元のIおよびQ信号の重み付けバージョンを組み合わせることにより、第1の振幅スケーリング値(例えば、C)および第1の位相シフト値(例えば、Φ)をIおよびQ信号に適用することができる。ここで「適用」とは、IおよびQ信号を再構成したときに、得られる信号がスケーリングおよび位相シフトされるように(または、言い換えると、IおよびQ信号成分によって表される複素ベースバンド信号がスケーリングされ、位相シフトされるように)変調されることをいう。つまり、回路の重みを次のように設定することにより、CejΦの複素スカラーを信号に適用することができる:
【0052】
[0068]場合によっては、直角位相信号の生成により、目的の信号の複素共役で実質的な画像信号が生成されることがある。つまり、δ(I-jQ)で、δは1未満のスケーリングファクタである(画像は意図した信号よりも通常はるかにパワーが低いという事実を説明するため)。これは多くの場合、回路性能のばらつきに起因するI/Qの不均衡が原因で発生する。発明の実施形態の実装例において、AVM122は、δの検出、測定、および/または推定に基づいて画像の存在を補正するための重みを生成し得る(または画像の存在を減らすため他の方法で振幅スケーリングおよび/または位相シフト値を変更し得る)。例えば、CejΦのスケーリングファクタが必要であると仮定する。この係数で画像を含む信号に単純に重みを付けると、次の応答が生成される:
ここで、画像の存在を修正できるスカラーを生成することは不可能である(解くと、「修正されたスケール」KはIとQに基づいて変化することがわかる):
IおよびQ成分を個別に操作することで、このような修正された応答を生成できる。図5Aの回路を使用して、重みを次のように設定すると、所望の結果が得られる:
(つまり、重みを適用すると、Kによるスケーリングと同じ効果が得られる:
【0053】
[0069]これは、(コントローラ150などを介して)システム100が、測定または推定された信号の非理想性に応じて意図されたスケール値を実際のスケール値に変更する例である。システム100は、追加的または代替的に、スケールファクタ生成プロセスの一部として、他の非理想性(または一般にシステム動作の他のパラメータ)を補正することができる。
【0054】
[0070]各アナログベクトル変調器122は、好ましくは、信号成分周波数の変化によるアナログベクトル変調器122の入力および出力インピーダンス(および/または位相シフト量)の変動を補償する、または単にインピーダンスを移相シフタのコアの適切なインピーダンスレベルと標準化されたインピーダンスレベル(例えば、50オーム)との間で変換する、インピーダンス整合ネットワークをその入力および出力に含む。あるいは、アナログベクトル変調器122は、インピーダンス整合ネットワークを含まなくてもよい。インピーダンス整合ネットワークは、好ましくは調整可能(例えば、連続的または離散的に可変)であるが、追加的または代替的に固定的(すなわち、ネットワークを用いて達成されるインピーダンス変換が可変ではない)であってもよい。
【0055】
[0071]アナログベクトル変調器122は、回路コンポーネントの任意の適切な組み合わせを使用して出力信号成分を生成することができる。これらの回路コンポーネントは、ディスクリート型(例えば、コンデンサ、インダクタ)または集積型(例えば、固定のキャパシタンス、インダクタンス、抵抗およびスイッチを備えた単一要素)、または他の任意の適切な回路構成要素であり得る。
【0056】
[0072]アナログベクトル変調器122のスケーリングステージは、減衰器、増幅器、位相反転器、および/または送信信号成分をスケーリングするための他の適切なコンポーネントを含み得る。減衰器は、抵抗減衰器(Tパッド、Piパッド、ブリッジ-T)、容量性分割器、ユニティゲイン未満の増幅器、またはその他の適切なタイプの減衰器である。増幅器は、トランジスタ増幅器、真空管増幅器、オペアンプ、または他の任意の適切なタイプの増幅器であってもよい。位相反転器は、NPN/PNP位相反転回路、変圧器および/または反転増幅器を含む任意の位相反転装置であり得る。
【0057】
[0073]アナログベクトル変調器122は、好ましくは、位相シフト、減衰、ゲイン、カットオフ(例えば、無限減衰)、および位相反転が可能であるが、代わりに、これらの機能のサブセットのみが可能であってもよい。各アナログベクトル変調器122は、単一のデバイスに5つすべての機能を含むことが好ましいが、追加的または代替的に、機能を異なるセクションに分割してもよい(例えば、個別の位相シフト回路とともに、調整可能なゲインを持つが反転機能のない増幅器)。アナログベクトル変調器122は、好ましくは同調回路またはコントローラ150によって制御されるが、追加的または代替的に、任意の適切な方法で制御されてもよい。
【0058】
[0074]本発明の実施形態の一実装例では、一部またはすべてのAVM122は、関連する信号パスに全体のスケール調整を好ましくは一緒に適用する1組のスケーリングステージに分離されたスケーラ(例えば、減衰器)である。これらのスケーリングステージは、好ましくは、制御信号(例えば、コントローラ150によって決定され、送信される)に応じて、「オン」(例えば、信号パスに適用される)または「オフ」(例えば、信号パス外にバイパスされる)に切り替えられる。これは、ハードウェア(スイッチ、1つ以上のトランジスタなど)、ファームウェア、ソフトウェアの物理的な接続/切断として実装できる。スケーリングステージの状態の変更は、追加的または代替的に、任意の適切な方法で実装されてもよい。AVM122にもたらされる結果としてのスケールファクタは、どのステージがオンで、どのステージがオフであるかによって決定される。例えば、4dBの減衰ステージと8dBの減衰ステージが「オン」のAVM122は、12dBの減衰を生じさせる。代替的に、AVM122は、一組のステージへと分離されなくてもよい。追加的または代替的に、ステージは、「オン」または「オフ」状態の2つ以上のステージのさまざまな組み合わせが、任意の適切な合計スケールファクタアプリケーションを提供するように構成される。
【0059】
[0075]各スケーリングステージは、好ましくは、設定された量(すなわち、不変の量)の減衰または利得を生じさせる。あるいは、スケーリングステージは調整可能な要素を具えてもよい。例えば、減衰ステージが、(例えば、FETで実現される)電圧制御抵抗器を具えてもよい。このステージの制御電圧を変更することにより、抵抗(したがって、ステージを通過する信号が受ける減衰量)を変化させることができる。同様に、増幅ステージが、電圧または電流制御増幅器を具えてもよい。
【0060】
[0076]スケーリングステージは、さまざまな符号化方式で使用するように構成できる。符号化方式は、好ましくは、AVM122の特定の合計スケールファクタを達成するために、スケーリングステージがどのように構成されるかを指定する。好ましくは、これは、一組のスイッチのそれぞれの状態(例えば、オンまたはオフ)を指定することによって達成され、各スイッチは、信号経路からスケーリングステージの1つを切断および/または接続するように構成される。代替的に、これは各スケーリングステージの可変スケールファクタを調整することによって、または他の任意の適切な方法で達成してもよい。バイナリ符号化、温度計符号化、ハイブリッド温度計符号化など、符号化方式のいくつかのバリエーションを使用できる。バイナリ符号化方式は、完全温度計符号化方式と比較して特定の全体的なスケールファクタを取得するのに必要な個々のスイッチ(例えば、ビット)が少ないなど、AVM122アーキテクチャの特定の態様を可能にする。温度計符号化方式は、スケーラ動作中の振幅と位相の単調性などの他の機能を有効にするが、完全なバイナリ符号化方式と比較して、より多くのスイッチが必要である。ハイブリッド温度計符号化方式は、好ましくは、AVM122のスケーリングステージのサブセットの温度計符号化と、AVM122のスケーリングステージの別のサブセットのバイナリ符号化を含み、バイナリ符号化の特定の機能を体温計エンコーディングの他の特定の機能と組み合わせて利用する。したがって、ハイブリッド温度計符号化方式は、バイナリ方式と温度計方式の属性を組み合わせて、両方の望ましい側面を包含する。
【0061】
[0077]本発明の実施形態の一実装例では、AVM122は、図6Aおよび図6Bに示されるように、ハイブリッド温度計方式に従って入力信号を減衰させる新規の回路を具える。この回路は複数の減衰ステージを並列に具え、そのいくつかはシャント抵抗ステージであり(例、RaはS1に制御され、RbはS2に制御される)、そのいくつかは直列シャント抵抗ステージ(例、Rc&RdがS3に制御され、Re&RfはS4に制御される)。(例えば、図5Bに示されるような)回路の差動バージョンでは、AVM122は、AVM122出力の極性を反転させる「サインステージ」をさらに含み得る。シャント抵抗ステージは、好ましくは直列シャント抵抗ステージよりも入力に近く、このような構成では、各シャント抵抗ステージが減衰に等しく影響するが(例えば、S1がONでS2がOFFは、S1がOFFでS2がONと等価である)、各直列シャント抵抗ステージの減衰への影響は、ステージが入力から遠くなるほど小さくなる(例えば、S3のON/OFFは、S4のON/OFFよりも大きく影響する)。代替的に、AVM122は、任意の方法で結合された任意の数のステージを具えてもよい。
【0062】
[0078]この実装例では、抵抗値は任意の値に設定できるが、特定の抵抗比(シャント抵抗=直列抵抗の2倍)において、連続する直列シャントステージの減衰の関係は、2の累乗の関係になる。例えば、シャント抵抗(Rd、Rf、Rhなど)が直列抵抗(Rc、Re、Rgなど)の2倍である場合、S3の減衰への寄与はS4の2倍となる。このため、直列シャント抵抗ステージのみで構成されるネットワークは、R-2Rネットワークと呼ばれる。対照的に、この実装例のネットワークは、直列シャント抵抗ステージの前に(好適には)純粋なシャント抵抗ステージを具える。直列シャント抵抗ステージの前にシャント抵抗ステージを含めると、2つの利点がある。1つ目は、従来のR-2Rネットワークよりもスイッチ構成での入力および出力インピーダンスのばらつきが少ないことであり、2つ目は、この構成はハイブリッド温度計のエンコードに適している(後述する)。
【0063】
[0079]このようなネットワークでのハイブリッド温度計符号化の実装について説明する前に、エンコーディングの種類について簡単に説明する。バイナリ符号化方式を実装する減衰器の一実施例は、16の位相シフト値を有するように構成された4ステージバイナリ符号化減衰器を具え得る。つまり、減衰器は2進数に対応する減衰値を有し、これは0000(スケールファクタ1)、0001(スケールファクタ0.99)、0010(スケールファクタ0.96)・・・1111(スケールファクタ0.68)などの特定の減衰器の状態に対応する。スケールファクタはスケーリング電圧またはスケーリング電力を表すために使用される場合があることに注意されたい。対照的に、温度計符号化方式を実装する減衰器の実施例は、5つの減衰値を有するように構成された4ステージ温度計符号化減衰器を具え得る。つまり、減衰器は、温度計でエンコードされた数値に対応する減衰値を有し、これは0000(スケールファクタ0.90)、0001(スケールファクタ0.80)、0011(スケールファクタ0.70)、0111(スケールファクタ0.60)、1111(スケールファクタ0.50)などの特定の減衰器の状態に対応する。ハイブリッド温度計符号化方式を実装する減衰器の例は、8つのステージを含むことができ、最初の4ステージは上記のバイナリ符号化減衰器のようにエンコードされ、後の4つのステージは上記の温度計符号化減衰器のようにエンコードされる。ハイブリッド温度計符号化方式を実装するAVM122の代替例は、バイナリ符号化ステージの数と温度計符号化ステージの数の間の任意の適切な除算(例えば、59ステージで、7ステージがバイナリ符号化で52ステージが温度計符号化される)を有する任意の適切な数のステージを含むことができる。
【0064】
[0080]図6Aと6Bに示す回路のハイブリッド温度計の実装例において、図6Cに示す例では、純粋なシャント抵抗ステージが温度計でエンコードされ、その直後に続く一連の直列シャントステージがバイナリエンコードされ、その後に(オプションで)第2の直列シャントステージのセット(これもバイナリエンコード)および/またはサインステージが続く。ステージの最初のセットは、減衰の最上位ビット(MSB)に対応する(例えば、これらのステージは、後続のステージよりも減衰に寄与する)。同様に、第2のステージセットは、減衰の最下位ビット(LSB)に対応する。オプションの第3のステージセット(LSBよりも減衰への寄与がさらに少ない)は、「トリミング」(例えば、減衰回路間の回路または要素の変動を補正するための減衰の変更)に使用できる。トリミングステージは、減衰回路を較正するときにのみ設定するのが好ましいが、追加的または代替的に、動的に変更してもよい(例えば、AVM122全体の設定間の整合を維持するために、局所的な温度差に応じて)。この場合も、AVM122の差分バージョンには、サインステージも含まれる場合がある。
【0065】
[0081]場合によっては、チューニングの観点からステージが重複することがある(例えば、ステージの一部がステージの他の部分よりも頻繁にチューニングされる場合がある)。例えば、第1ステージの第1の部分(またはサブステージ)は長い時間間隔でのみ調整し、第1ステージの第2の部分(またはサブステージ)は第1の部分と同じ長い時間間隔で調整するとともに、他の時間にも同様に調整してもよい。
【0066】
[0082]本発明の実施形態の実装例では、コントローラ150は、AVM122の所望のスケールファクタ出力を生成し、当該所望のスケールファクタ出力を、上述のハイブリッド温度計符号化方式に従って離散値にエンコードする。離散値は、いくつかの実装例では、AVM122の構成に基づく所望の出力の近似値であり得る。例えば、減衰ステージのそれぞれの所定の減衰値は、一連の個別の合計減衰値の範囲とすることができ、したがって符号化された個別の減衰値は、所望の減衰出力よりも有限量だけ大きいか小さくてもよい。別の例では、ハイブリッド温度計符号化方式は、減衰曲線に従って、所望の減衰出力を個別の減衰出力に変換することができ、減衰ステージの利用可能な構成のセットは、減衰曲線を区分線形(例えば、線形電力、線形電圧)に近似することができる。コントローラ150は、好ましくは減衰ステージのサブセットをアクティベートすることにより、このように符号化された離散減衰値に従って、AVM122の総減衰量を調整する。しかしながら、AVM122の総減衰は、代替的または追加的に、任意の適切な方法で調整されてもよい。
【0067】
[0083]コントローラ150は、異なるパラメータを有するハイブリッド温度計スキームを選択し得ることに留意されたい。例えば、コントローラ150は、反射係数を最小化することを意図した第1のハイブリッド温度計符号化方式、またはキャンセル性能を最大化することを意図した第2のハイブリッド温度計符号化方式を選択することができる。コントローラ150は、任意の適切な情報に基づいてスキームを自動的に選択してもよい。例えば、反射係数が設定された閾値を超える場合、反射係数最小化スキームが自動的に選択されてもよい。コントローラ50は、任意の適切な情報に基づいて、任意の方法(自動、手動など)で符号化方式を選択または他の方法で変更することができる。
【0068】
[0084]本発明の実施形態の別の実装例では、コントローラ150は、動作中にAVM122の合計スケールファクタ値を増分する。この変形例では、減衰値は、ハイブリッド温度計コードに従って計算される一連のステップ(例えば、増分)に従って増分される。これらのステップは、追加的または代替的に、減衰曲線に従って計算されてもよく、その場合、総減衰量の増分は、曲線に沿った離散減衰値の総減衰値をもたらす。いくつかの実装例では、総減衰値の粗い(または減衰曲線に沿った)増分が、ハイブリッド温度計コードの温度計コンポーネントに従って計算され、細かい増分が、ハイブリッド温度計コードのバイナリコンポーネントに従って計算される。一般に、粗い増分は、好ましくは細かい増分よりも大きい任意の増分であるが、粗いおよび/または細かい増分は、追加的または代替的に、任意の適切な増分とすることができる。
【0069】
[0085]ハイブリッド温度計符号化の上記の例は減衰について示されているが、AVM122の他の態様(例えば、位相シフト、増幅)でも、実質的に同様の方法でエンコードできることを理解されたい。
【0070】
[0086]遅延器123は、送信信号成分を遅延させ、好ましくは、受信された自己干渉における対応する遅延と整合させるように機能する。各遅延器123によって導入される遅延(遅延器遅延とも呼ばれる)は、好ましくは可変である(すなわち、遅延器123は可変遅延器である)が、遅延器123は、追加的または代替的に、固定遅延を導入するようにしてもよい。遅延器123は、好ましくは、アナログ遅延回路(例えば、バケットブリゲードデバイス、長い伝送線路、RC/LC/RLCアクティブまたはパッシブフィルタネットワーク、表面弾性波(SAW)遅延線路、熱電または機械的遅延または光学遅延線)として実装されるが、追加的または代替的に、他の任意の適切な方法で実装することができる(例えば、遅延器は、ADCおよびDACを具えたデジタル遅延器123を使用して実装されてもよい)。遅延器123が可変遅延器である場合、導入される遅延は、好ましくは同調回路によって設定されるが、追加的または代替的に、任意の適切な方法で設定することができる。
【0071】
[0087]遅延器123は、全帯域または一部(サブ)帯域のみをカバーすることができる。例えばコストを削減するか、パフォーマンスを向上させる場合は、遅延の全帯域幅を分割し、適切なサブバンドフィルタデバイスを使用してもよい。さらに、部品表(BOM)のさまざまな遅延デバイスの数を減らすか、コストを削減するか、パフォーマンスを向上させるために、これらのさまざまなサブバンドを周波数変換(アップミキシングとダウンミキシング)によって1つの優先サブバンドに変換してもよい。
【0072】
[0088]各遅延器123は、信号成分の周波数変化による遅延器123の入力および出力インピーダンス(および/または遅延量)の変動を補償する、または標準化されたインピーダンスレベル(50オーム)への遅延器のコアのレベルに適切なインピーダンスから/へインピーダンスを変換するインピーダンス整合ネットワークをその入力および出力に含み得る。あるいは、遅延器123は、インピーダンス整合ネットワークを具えなくてもよい。インピーダンス整合ネットワークは、好ましくは調整可能(例えば、連続的または離散的に可変)であるが、追加的または代替的に静的(すなわち、ネットワークを使用することにより達成されるインピーダンス変換が可変ではない)であってもよい。
【0073】
[0089]本発明の実施形態の1つの実装例では、遅延器123は、図7A、7B、および7Cに示されるようなアクティブ遅延を実装する。そのような実装例において、遅延器123は、遅延長(例えば、2.5、5.0、10ns)および遅延損失/利得(例えば、-4dB、0dB、4dB)の両方で設定可能であり得る。さらに、遅延器123は、(例えば、オペアンプに結合されたコンポーネントに基づいて)帯域幅を調整し、プロセス変動を補償することができる。通常、帯域幅と遅延時間の間にはトレードオフがある(そのため、帯域幅が選択される)が、一部のシナリオでは、同じ信号パスで、帯域幅の制限が大きい遅延(以下、「低域遅延器」)および帯域幅の制限が少ないもの(以下、「全域遅延器」)を交替することが利益となり得る。そのようなシナリオでは、この交替により、遅延器123チェーンの利得対周波数および遅延対周波数応答が、他の場合よりも平坦になり得る。別のケースでは、バイパススイッチを使用して帯域幅を変更することなく、信号パスに(追加の)遅延ステージを切り替えることで、遅延時間を変更できる。
【0074】
[0090]可変遅延および帯域幅は、図7A、7B、7Cに示す遅延実装例においてコンデンサの切り替え可能なバンクを使用することによって実装することができる。例えば、より低いコンデンサ値に切り替えると遅延が小さくなるとともに帯域幅のカバレッジが広がり、逆も同様である。同様に、抵抗器の切り替え可能なバンクを使用して、遅延の利得を変更できる。さらに、帯域幅スイッチと並列に小さなコンデンサを使用すると、プロセスのばらつきを取り除くことができる。
【0075】
[0091]位相シフトの変更は遅延に影響し得るため(逆も同様)、ベクトル変調器122と遅延器123は協調して調整することができる(例えば、位相シフト値が変更されたら、遅延値も変更して、位相シフトによる意図しない遅延を補正できる)。
【0076】
[0092]ベクトル変調器122および/または遅延器123による変換後、送信信号成分は自己干渉キャンセル信号成分へと変換され、これが組み合わされて自己干渉キャンセル信号を形成することができる。
【0077】
[0093]結合カプラ124は、自己干渉キャンセル信号成分を組み合わせてアナログ自己干渉キャンセル信号を生成するように機能し、その後、アナログ自己干渉キャンセル信号がアナログ受信信号と組み合わされ、自己干渉が除去される。結合カプラ124は、好ましくは、(複数の信号経路に起因する)自己干渉キャンセル信号成分を結合し、得られるアナログ自己干渉キャンセル信号を出力する。結合カプラ124は、好ましくは伝送線カプラであるが、追加的または代替的に、任意の適切なタイプのカプラ(サンプリングカプラ121の章で説明される)であり得る。結合カプラ124は、(システム100の他のすべてのカプラと同様に)任意で増幅を含むことができる。結合カプラ124は、自己干渉キャンセル信号を出力前に後処理するための任意の適切な電子機器をさらに具え得る。例えば、結合カプラ124は、自己干渉キャンセル信号の電力を増大させる増幅器を具え得る。結合カプラ124は、信号成分を結合して信号を形成することができるが(例えば、自己干渉キャンセル信号成分を結合して自己干渉キャンセル信号を形成することができる)、追加的または代替的に、信号成分を結合して、後に組み合わせて信号を形成できる信号スーパー成分を形成してもよい。ここで、信号成分、信号スーパー成分、および信号の間に固有の物理的な違いはなく、信号または信号成分が最終的にどのように使用されるかを区別するために異なる用語が使用されることを留意されたい。例えば、第1および第2の信号成分のセットが組み合わされて第1のスーパー成分を形成し、第3および第4の信号成分のセットが組み合わされて第2のスーパー成分を形成し、第1および第2のスーパー成分が組み合わされて信号(または、後で組み合わせが発生する場合は、スーパースーパー成分)ば形成される。
【0078】
[0094]結合カプラ124は、固定または可変の結合比を有することができる。可変カプラ124は、例えば、較正(低速だが低頻度)または調整(高速かつ頻繁)中に、またはいつでも、任意の方法で調整することができる。
【0079】
[0095]本発明の実施形態の一実装例では、結合カプラ124は、マルチステージ増幅を含み得る。そのような構成では、カプラ124は、図8に示されるように、(例えば、タップからの)入力を様々な増幅ステージに結合するためのスイッチを追加的または代替的に有し得る。特に、高出力信号成分(通常、より早い/より低い遅延タップに対応する)は、結合カプラ124で受け取る増幅が少ないので、これらの高出力信号成分をキャリーするタップは、1または複数の結合カプラ124の増幅ステージから切り替えられる。追加的または代替的に、入力は、任意の方法で増幅ステージに切り替えまたは割り当てられ得る。スイッチ構成は動作モードに対応することに注意されたい。すなわち、スイッチ構成の1つのセットは、結合カプラの1つの動作モードに対応し、スイッチ構成の異なるセットは、別の動作モードに対応する。
【0080】
[0096]キャンセラ120はまた、自己干渉キャンセラ120で生じる非線形性を補償するために、例えば、増幅器、スイッチ、ミキサ、スケーラ、位相シフタ、遅延器などの1以上の線形化回路を具え得る。これらの線形化回路は、単一のブロックに接続してもよいし(ローカル線形化)、信号パス全体を構成してもよい(グローバル線形化)。
【0081】
[0097]前述のように、一次アナログ自己干渉キャンセラ120は、IF(ベースバンドを含む)またはRF帯域の一方または両方で自己干渉キャンセルを実行することができる。一次アナログ自己干渉キャンセラ120がIF帯域またはベースバンドでキャンセルを実行する場合、アナログ自己干渉キャンセラ120は、(図3に示されるように)ダウンコンバータ125およびアップコンバータ126を具えることが好ましい。さらに、アナログ自己干渉キャンセラ120は、異なる周波数で動作する別個の周波数コンバータを具えてもよいことに留意されたい。キャンセラ120は、任意の周波数帯域で動作する任意の要素を有し得る。RF周波数での遅延は、遅延信号の精度を高レベルに維持するために望ましい場合があるが、IFまたは光遅延は、より柔軟な周波数の使用と狭い領域でのより広い帯域幅に対応するという利点を提供する。ただし、遅延は任意のシナリオで任意の頻度で実行することができる。
【0082】
[0098]ダウンコンバータ125は、一次アナログキャンセラ120による変換のために、RF送信信号成分の搬送周波数を中間周波数(または、場合によってはベースバンド(IF=0Hz))にダウンコンバートするように機能する。ダウンコンバータ125は、好ましくは、受信機のダウンコンバータと実質的に同様であるが(ただし、LO周波数、線形性、およびフィルタ構成などの詳細は、2つの間で異なり得る)、追加的または代替的に、任意の適切な周波数ダウンコンバータであり得る。あるいは、ダウンコンバータ125は、任意の信号ダウンコンバージョンに使用されてもよい。
【0083】
[0099]図3に示すように、ダウンコンバータ125はさらに、入力信号を同相(I)および直角位相(Q)成分に分解し得ることに留意されたい。このような場合、QミキサのLO位相は、IミキサへのLO位相と直交する。
【0084】
[00100]アップコンバータ126は、受信機でRF受信信号と組み合わせるために、(一次アナログキャンセラ120から受信した)IF自己干渉キャンセル信号の搬送周波数を無線周波数にアップコンバートするように機能する。アップコンバータ126は、好ましくは、受信機および一次アナログキャンセラ120に通信可能に結合され、好ましくは、一次アナログキャンセラ120からIF自己干渉キャンセル信号を受信し、信号を無線周波数にアップコンバートし、生じたRF自己干渉キャンセル信号を受信機へ通過させる。あるいは、アップコンバータ126は、任意の信号アップコンバージョンに使用されてもよい。
【0085】
[00101]増幅器127は、トランジスタ増幅器、真空管増幅器、オペアンプ、または任意の他の適切なタイプの増幅器であり得る。
【0086】
[00102]一次アナログ自己干渉キャンセラ120がIFで動作する実装例では、システム100は、好ましくは、二次アナログ自己干渉キャンセラ130を具える(あるいは、システム100は、任意の構成の二次アナログ自己干渉キャンセラ130を具えても具えなくてもよい)。
【0087】
[00103]この二次アナログ自己干渉キャンセラ130は、好ましくは、一次アナログ自己干渉キャンセラ120と実質的に同様であるが、この二次キャンセラ130は、異なる構成の異なるコンポーネントを使用して動作するのが好ましい。二次キャンセラ130は、特に記載がない限り一次キャンセラ120のアナログと実質的に同様のサンプリングカプラ131、アナログベクトル変調器(AVM)132、遅延器133、および結合カプラ134、周波数ダウンコンバータ135、周波数アップコンバータ136、および/または増幅器137を具え得る。
【0088】
[00104]例えば、本発明の実施形態の1つの実装例では、二次アナログ自己干渉キャンセラ130は、図9に示すように、サンプリングカプラ131、単一のRFタップ(バイパス可能な位相シフトAVM132のセット、および任意で可変減衰AVM132を含む)、および結合カプラ134を具える。この実装例では、二次キャンセラ130は好ましくは、一次RF周波数で動作するように設計された一次位相シフタ(例えば、AVM132b)(例えば、5.5GHzで最大360度の位相シフトを提供するように設計された6ビット位相シフタ)と、より低い周波数で一次位相シフタを補完するように設計された補助位相シフタ(例えば、2.2GHzで180度の位相シフトを提供するように設計された単一ビット位相シフタ)とを具える。補助位相シフタは、必要に応じて低周波数に切り替えられ、高周波数において信号経路から切り替えられる。一次または補助の位相シフタのいずれかは可変位相を有し得るが、この方法で位相シフタを分割すると、同じ帯域幅の単一の可変位相シフタに比べて電力とスペースを大幅に節約できる。一次キャンセラ120と同様に、二次キャンセラ130は任意の方法で構成することができる。
【0089】
[00105]デジタル自己干渉キャンセラ140は、デジタル送信信号からデジタル自己干渉キャンセル信号を生成するように機能する。デジタル自己干渉キャンセル信号は、好ましくは、(DACによって)アナログ自己干渉キャンセル信号に変換され、アナログ自己干渉キャンセル信号と組み合わされて、受信機110におけるRF受信信号に存在する自己干渉をさらに低減する。追加的または代替的に、デジタル自己干渉キャンセル信号は、デジタル受信信号と組み合わせることができる。
【0090】
[00106]デジタル自己干渉キャンセラ140は、好ましくは、ADCを使用して送信機のRF送信信号をサンプリングし(追加的または代替的に、キャンセラ140は、デジタル送信信号または他の任意の適切な送信信号をサンプリングし得る)、サンプリングされ変換されたRF送信信号を、デジタル変換設定に基づいてデジタル自己干渉信号に変換する。このデジタル変換設定は、好ましくは、デジタル自己干渉キャンセラ140がデジタル送信信号をデジタル自己干渉信号に変換する方法を指示する設定(例えば、送信信号を自己干渉信号に変換するために使用される一般化メモリ多項式の係数)を含む。
【0091】
[00107]デジタル自己干渉キャンセラ140は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)および/または任意の適切なプロセッサまたは回路を使用して実装することができる。デジタル自己干渉キャンセラ140は、好ましくは、設定データを格納するためのメモリを含むが、追加的または代替的に、外部に保存された設定データを使用して、または任意の適切な方法で構成することができる。一実施形態では、デジタル自己干渉キャンセラ140は、この参照により全体が組み込まれる、2014年8月11日出願の米国特許出願第14/456,320号のデジタル自己干渉キャンセラと実質的に同様である。
【0092】
[00108]デジタル自己干渉キャンセラ140は、いくつかの方法で信号を送信および受信するように結合することができる。例えば、デジタル自己干渉キャンセラ140は、変換されたRF送信信号を入力として使用し、変換されたデジタル自己干渉キャンセル信号を出力として提供することができる。別の例として、デジタル自己干渉キャンセラ140は、デジタル送信信号を入力として使用するとともに、デジタル自己干渉キャンセル信号を出力として(直接デジタル受信信号に)提供することができる。デジタル自己干渉キャンセラは、追加的または代替的に、デジタルおよびアナログ受信信号の任意の組み合わせで送信信号に結合してもよい。
【0093】
[00109]これらの実施例はRF送信信号およびRF受信信号に関するが、デジタル自己干渉キャンセラ140は、追加的または代替的に、IF送信信号および/またはIF自己干渉キャンセル信号に結合し得ることに留意されたい。
【0094】
[00110]コントローラ150は、アナログ自己干渉キャンセラ120/130、および特にその部品(例えば、遅延器123/133、ベクトル変調器122/132)を制御するように機能する。コントローラ150は、追加的または代替的に、システム100の任意の部分(例えば、デジタル自己干渉キャンセラ140)を制御するように機能することができる。例えば、コントローラ150は、遅延器123のスイッチまたは他の構成パラメータを制御してもよい。
【0095】
[00111]好ましい実施形態の方法およびその変形例は、コンピュータ可読命令を格納するコンピュータ可読媒体を受け取るように構成された機械として少なくとも部分的に具体化および/または実施することができる。命令は、好ましくは自己干渉キャンセルシステムと統合されたコンピュータ実行可能コンポーネントによって実行されることが好ましい。コンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EEPROM、光学デバイス(CDまたはDVD)、ハードドライブ、フロッピードライブ、または任意の適切なデバイスなどの任意の適切なコンピュータ可読媒体に格納することができる。コンピュータ実行可能コンポーネントは、一般的なまたはアプリケーション固有のプロセッサであることが好ましいが、任意の適切な専用ハードウェアまたはハードウェア/ファームウェアの組み合わせデバイスが、代替的または追加的に命令を実行してもよい。
【0096】
[00112]当業者は、上記詳細な説明から、そして図および特許請求の範囲から認識するように、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の好ましい実施形態に修正および変更を行うことができる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9