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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】積層造形装置及び積層造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/85 20210101AFI20220628BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20220628BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20220628BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20220628BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20220628BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20220628BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220628BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220628BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220628BHJP
【FI】
B22F10/85
B22F12/90
B22F10/28
B29C64/153
B29C64/268
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021163652
(22)【出願日】2021-10-04
【審査請求日】2022-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】金子 幹男
(72)【発明者】
【氏名】小林 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】元矢 享嘉
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-107153(JP,A)
【文献】特開2004-162095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/85
B22F 12/90
B22F 10/28
B29C 64/153
B29C 64/268
B29C 64/393
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、造形テーブルと、材料層形成装置と、照射装置と、撮像装置と、画像処理装置と、制御装置とを備える積層造形装置であって、
前記造形テーブル上には造形領域が設けられ、
前記チャンバは、前記造形領域を覆い、
前記造形領域内にベースプレートが配置され、
前記ベースプレートは、平面視において前記ベースプレートの外縁を構成する第1辺及び第2辺を備え、
前記材料層形成装置は、前記ベースプレートの上面に材料粉体の供給により材料層形成
前記照射装置は、前記材料層にレーザ光又は電子ビームを照射することにより固化層形成
前記撮像装置は、前記チャンバ内に移動可能に設けられた第1カメラを備え、
第1カメラは、第1辺の一部及び一方の端点と第2辺の一部及び一方の端点とが第1カメラの視野に含まれるように設定された初期位置から第1辺の他方の端点に向かって第1辺に沿って移動した位置において、第1辺の少なくとも一部を含む第1領域を撮像して第1画像を取得し、前記初期位置から第2辺の他方の端点に向かって第2辺に沿って移動した位置において、第2辺の少なくとも一部を含む第2領域を撮像して第2画像を取得し、
前記画像処理装置は、第1画像を解析して第1辺の位置情報を取得し、第2画像を解析して第2辺の位置情報を取得し、
前記制御装置は、第1辺の前記位置情報及び第2辺の前記位置情報を用いて、検出対象点として第1辺及び第2辺の交点又は第1辺及び第2辺の延長線上の交点の座標を算出する、積層造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の積層造形装置であって、
第1カメラは、第1領域を前記初期位置からの移動距離を変化させて撮像し複数の第1画像を取得し、第2領域を前記初期位置からの移動距離を変化させて撮像し複数の第2画像を取得し、
前記画像処理装置は、前記複数の第1画像をそれぞれ解析して第1辺の前記位置情報を取得し、前記複数の第2画像をそれぞれ解析して第2辺の前記位置情報を取得する、積層造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の積層造形装置であって、
前記画像処理装置は、前記複数の第1画像に含まれる第1辺の長さを検出し、前記複数の第2画像に含まれる第2辺の長さを検出し、
前記制御装置は、検出された第1辺の前記長さが最も大きい第1画像から取得された第1辺の前記位置情報、及び検出された第2辺の前記長さが最も大きい第2画像から取得された第2辺の前記位置情報を用いて、前記検出対象点の座標を算出する、積層造形装置。
【請求項4】
請求項2に記載の積層造形装置であって、
前記制御装置は、第1辺の前記位置情報及び第2辺の前記位置情報を統計処理した結果を用いて、前記検出対象点の座標を算出する、積層造形装置。
【請求項5】
請求項1に記載の積層造形装置であって、
第1カメラは、前記初期位置から所定距離だけ第1辺に平行に移動した位置において第1領域を撮像して第1画像を取得し、
当該所定距離は、第1辺に平行な方向における前記視野の最大長さの半分に等しく、
第1カメラは、前記初期位置から所定距離だけ第2辺に平行に移動した位置において第2領域を撮像して第2画像を取得し、
当該所定距離は、第2辺に平行な方向における前記視野の最大長さの半分に等しい、積層造形装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の積層造形装置であって、
カメラ移動装置を備え、
前記撮像装置は、前記チャンバ内に固定された第2カメラを備え、
第2カメラは、前記造形領域全体を含む領域を撮像して全体画像を取得し、
前記画像処理装置は、前記全体画像を解析して前記造形領域における前記ベースプレートの位置情報を取得し、
前記制御装置は、前記ベースプレートの前記位置情報を用いて第1カメラの移動指令を作成し、
前記カメラ移動装置は、前記移動指令に従って第1カメラを移動させる、積層造形装置。
【請求項7】
材料層形成工程と、固化工程と、第1及び第2画像取得工程と、第1及び第2画像解析工程と、算出工程とを備える積層造形物の製造方法であって、
前記材料層形成工程では、造形テーブル上に設けられた造形領域を覆うチャンバ内において、前記造形領域内に配置されたベースプレートの上面に材料粉体を供給して材料層を形成し、
前記固化工程では、前記材料層にレーザ光又は電子ビームを照射することにより固化層を形成し、
前記ベースプレートは、平面視において前記ベースプレートの外縁を構成する第1辺及び第2辺を備え、
第1画像取得工程では、前記チャンバ内に移動可能に設けられたカメラを用いて、第1辺の一部及び一方の端点と第2辺の一部及び一方の端点とが第1カメラの視野に含まれるように設定された初期位置から第1辺の他方の端点に向かって第1辺に沿って移動した位置において、第1辺の少なくとも一部を含む第1領域を撮像して第1画像を取得し、
第2画像取得工程では、前記カメラを用いて、前記初期位置から第2辺の他方の端点に向かって第2辺に沿って移動した位置において、第2辺の少なくとも一部を含む第2領域を撮像して第2画像を取得し、
第1画像解析工程では、第1画像を解析して第1辺の位置情報を取得し、
第2画像解析工程では、第2画像を解析して第2辺の位置情報を取得し、
前記算出工程では、第1辺の前記位置情報及び第2辺の前記位置情報を用いて、検出対象点として第1辺及び第2辺の交点又は第1辺及び第2辺の延長線上の交点の座標を算出する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形装置及び積層造形物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物の積層造形においては、種々の方式が知られている。例えば、不活性ガスが充満されたチャンバ内において、造形テーブル上の造形領域内に配置されたベースプレートの上面に金属の材料粉体を供給して材料層を形成する。そして、材料層の所定位置に照射装置を用いてレーザ光又は電子ビームを照射することで材料層を焼結又は溶融させて固化層を形成する。このような材料層及び固化層の形成を繰り返すことによって、固化層を積層して所望の三次元造形物を製造する。
【0003】
ベースプレートは、造形テーブルを保護するとともに固化層を固着しやすくするために用いられる。造形完了後の造形物は、ベースプレートと一体化した状態で造形テーブルから取り外され、ベースプレートを造形物から完全に切り離し、又はベースプレートの全部又は一部分を残した状態で製品となる。特許文献1には、ベースプレート上に焼結体が形成された構造の三次元造形物の形状精度を向上させるための製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6564111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ光又は電子ビームをベースプレート上の材料層の所定位置に高精度で照射するためには、造形領域におけるベースプレートの位置を正確に把握し、照射装置の座標系を適切に設定する必要がある。例えば、平面視におけるベースプレートのいずれかの隅角を座標系の設定における基準点とする場合、当該隅角の位置を把握する必要がある。基準点の位置検出には、タッチプローブ、ピックテスタ、通電検出器等の接触式の測定機器を適用可能である他、CCDカメラ等を備える撮像装置により基準点を含む画像を取得し、画像処理を行って位置情報を取得する非接触式の方法が適用可能である。
【0006】
画像取得による非接触式の位置検出においては、カメラと撮像対象物との間の距離が小さいほど、且つカメラの視野に含まれる情報が多いほど、検出精度が高くなる。しかし、一般に撮像対象物との距離と視野内に含まれる情報量とはトレードオフの関係にある。例えば、ベースプレートにカメラを近づけると、視野に含まれるベースプレートの範囲がより限定され、視野内の情報が減少してしまう。逆に、ベースプレートのより広い範囲を視野に含めようとすると、ベースプレートからカメラを遠ざける必要がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ベースプレートの位置検出における精度の低下を抑制することが可能な積層造形装置及び積層造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、チャンバと、造形テーブルと、撮像装置と、画像処理装置と、制御装置とを備える積層造形装置であって、前記造形テーブル上には造形領域が設けられ、前記チャンバは、前記造形領域を覆い、前記造形領域内にベースプレートが配置され、前記ベースプレートは、平面視において前記ベースプレートの外縁を構成する第1辺及び第2辺を備え、前記ベースプレートの上面には、材料粉体の供給により材料層が形成され、前記材料層にレーザ光又は電子ビームを照射することにより固化層が形成され、前記撮像装置は、前記チャンバ内に移動可能に設けられた第1カメラを備え、第1カメラは、第1辺の一部及び一方の端点と第2辺の一部及び一方の端点とが第1カメラの視野に含まれるように設定された初期位置から第1辺の他方の端点に向かって第1辺に沿って移動した位置において、第1辺の少なくとも一部を含む第1領域を撮像して第1画像を取得し、前記初期位置から第2辺の他方の端点に向かって第2辺に沿って移動した位置において、第2辺の少なくとも一部を含む第2領域を撮像して第2画像を取得し、前記画像処理装置は、第1画像を解析して第1辺の位置情報を取得し、第2画像を解析して第2辺の位置情報を取得し、前記制御装置は、第1辺の前記位置情報及び第2辺の前記位置情報を用いて、検出対象点として第1辺及び第2辺の交点又は第1辺及び第2辺の延長線上の交点の座標を算出する、積層造形装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る積層造形装置においては、移動可能な第1カメラを用い、初期位置から視野に含まれる第1辺及び第2辺の長さがより大きくなるように移動した位置で第1画像及び第2画像が取得される。視野に含まれる辺の長さが大きいほど画像から取得される辺の位置情報の精度が高くなる。従って、初期位置において撮像した画像から第1辺及び第2辺の位置情報を取得する場合と比べて、より高精度な位置情報を取得することが可能となり、これに伴い当該位置情報から算出される検出対象点の座標の精度を向上させることができる。また、初期位置からの移動において第1カメラとベースプレートとの距離は一定であるため、撮像対象物との距離を変化させずにより多くの情報を視野内に含めることが可能となる。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、第1カメラは、第1領域を前記初期位置からの移動距離を変化させて撮像し複数の第1画像を取得し、第2領域を前記初期位置からの移動距離を変化させて撮像し複数の第2画像を取得し、前記画像処理装置は、前記複数の第1画像をそれぞれ解析して第1辺の前記位置情報を取得し、前記複数の第2画像をそれぞれ解析して第2辺の前記位置情報を取得する。
好ましくは、前記画像処理装置は、前記複数の第1画像に含まれる第1辺の長さを検出し、前記複数の第2画像に含まれる第2辺の長さを検出し、前記制御装置は、検出された第1辺の前記長さが最も大きい第1画像から取得された第1辺の前記位置情報、及び検出された第2辺の前記長さが最も大きい第2画像から取得された第2辺の前記位置情報を用いて、前記検出対象点の座標を算出する。
好ましくは、前記制御装置は、第1辺の前記位置情報及び第2辺の前記位置情報を統計処理した結果を用いて、前記検出対象点の座標を算出する。
好ましくは、第1カメラは、前記初期位置から所定距離だけ第1辺に平行に移動した位置において第1領域を撮像して第1画像を取得し、当該所定距離は、第1辺に平行な方向における前記視野の最大長さの半分に等しく、第1カメラは、前記初期位置から所定距離だけ第2辺に平行に移動した位置において第2領域を撮像して第2画像を取得し、当該所定距離は、第2辺に平行な方向における前記視野の最大長さの半分に等しい。
好ましくは、前記積層造形装置は、カメラ移動装置を備え、前記撮像装置は、前記チャンバ内に固定された第2カメラを備え、第2カメラは、前記造形領域全体を含む領域を撮像して全体画像を取得し、前記画像処理装置は、前記全体画像を解析して前記造形領域における前記ベースプレートの位置情報を取得し、前記制御装置は、前記ベースプレートの前記位置情報を用いて第1カメラの移動指令を作成し、前記カメラ移動装置は、前記移動指令に従って第1カメラを移動させる。
【0011】
本発明の別の観点によれば、材料層形成工程と、固化工程と、第1及び第2画像取得工程と、第1及び第2画像解析工程と、算出工程とを備える積層造形物の製造方法であって、前記材料層形成工程では、造形テーブル上に設けられた造形領域を覆うチャンバ内において、前記造形領域内に配置されたベースプレートの上面に材料粉体を供給して材料層を形成し、前記固化工程では、前記材料層にレーザ光又は電子ビームを照射することにより固化層を形成し、前記ベースプレートは、平面視において前記ベースプレートの外縁を構成する第1辺及び第2辺を備え、第1画像取得工程では、前記チャンバ内に移動可能に設けられたカメラを用いて、第1辺の一部及び一方の端点と第2辺の一部及び一方の端点とが第1カメラの視野に含まれるように設定された初期位置から第1辺の他方の端点に向かって第1辺に沿って移動した位置において、第1辺の少なくとも一部を含む第1領域を撮像して第1画像を取得し、第2画像取得工程では、前記カメラを用いて、前記初期位置から第2辺の他方の端点に向かって第2辺に沿って移動した位置において、第2辺の少なくとも一部を含む第2領域を撮像して第2画像を取得し、第1画像解析工程では、第1画像を解析して第1辺の位置情報を取得し、第2画像解析工程では、第2画像を解析して第2辺の位置情報を取得し、前記算出工程では、第1辺の前記位置情報及び第2辺の前記位置情報を用いて、検出対象点として第1辺及び第2辺の交点又は第1辺及び第2辺の延長線上の交点の座標を算出する、製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る積層造形装置100の概略構成図である。
図2】材料層形成装置3の斜視図である。
図3】リコータヘッド11の上方からの斜視図である。
図4】リコータヘッド11の下方からの斜視図である。
図5】照射装置13の概略構成図である。
図6】ベースプレート81を造形領域Rに配置した状態を示す平面図である。
図7】隅角の1つが面取りされているベースプレート81を造形領域Rに配置した状態を示す平面図である。
図8】積層造形装置100の別の概略構成図であり、図1の積層造形装置100を右側から見た構成を示す図である。
図9図6のベースプレート81の配置における全体撮像カメラ61及び部分撮像カメラ62の撮像領域又は視野の例を示す図である。
図10】ベースプレート81の隅角C2付近を撮像する際の部分撮像カメラ62の視野を示す図である。
図11図10の部分撮像カメラ62の視野に含まれる各辺の長さの変化を説明するための図である。
図12】ベースプレート81の隅角C4付近を撮像する際の部分撮像カメラ62の視野を示す図である。
図13図7のベースプレート81の配置における部分撮像カメラ62の視野を示す図である。
図14図10の第2領域VC2,2を撮像して得られる第2画像を示す図である。
図15】制御装置9の構成を示すブロック図である。
図16】造形用座標系の設定の手順を示すフロー図である。
図17】積層造形装置100を用いた三次元造形物の製造方法を示す図である。
図18】積層造形装置100を用いた三次元造形物の製造方法を示す図である。
図19】第2実施形態における部分撮像カメラ62の視野を示す図である。
図20】第2実施形態における部分撮像カメラ62の視野を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0014】
1.積層造形装置100
図1は、第1実施形態に係る積層造形装置100の概略構成図である。積層造形装置100は、チャンバ1、材料層形成装置3、及び照射装置13を備える。チャンバ1内に配置される造形テーブル5上に設けられた造形領域Rにおいて、材料層85及び固化層86の形成を繰り返すことで、所望の三次元造形物が形成される。なお、以下の説明において、図1の手前に向かう方向を積層造形装置100の「前」、図1の奥に向かう方向を積層造形装置100の「後」と定める。そして、図1の上下方向を積層造形装置100の上下方向(鉛直方向)と、図1の左右方向を積層造形装置100の左右方向と定める。
【0015】
1.1.チャンバ1
チャンバ1は、三次元造形物が形成される領域である造形領域Rを覆う。チャンバ1の内部は不活性ガス供給装置(不図示)から供給される所定濃度の不活性ガスで充満されている。本明細書において不活性ガスとは、材料層85や固化層86と実質的に反応しないガスであり、材料の種類に応じて選択され、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスを使用可能である。固化層86の形成時に発生するヒュームを含んだ不活性ガスは、チャンバ1から排出され、ヒュームコレクタにおいてヒュームが除去された後にチャンバ1へ供給され再利用される。ヒュームコレクタは、例えば、電気集塵機又はフィルタである。
【0016】
チャンバ1の上面には、レーザ光Bの透過窓となるウィンドウ1aが設けられる。ウィンドウ1aは、レーザ光Bを透過可能な材料で形成される。具体的に、ウィンドウ1aの材料は、レーザ光Bの種類に応じて、石英ガラスもしくはホウケイ酸ガラス又はゲルマニウム、シリコン、ジンクセレンもしくは臭化カリウムの結晶等から選択される。例えば、レーザ光Bがファイバレーザ又はYAGレーザの場合、ウィンドウ1aは石英ガラスで構成可能である。
【0017】
また、チャンバ1の上面には、ウィンドウ1aを覆うように汚染防止装置17が設けられる。汚染防止装置17は、円筒状の筐体17aと、筐体17a内に配置された円筒状の拡散部材17cとを備える。筐体17aと拡散部材17cの間に不活性ガス供給空間17dが設けられる。また、筐体17aの底面には、拡散部材17cの内側に開口部17bが設けられる。拡散部材17cには多数の細孔17eが設けられており、不活性ガス供給空間17dに供給された清浄な不活性ガスは細孔17eを通じて清浄室17fに充満される。そして、清浄室17fに充満された清浄な不活性ガスは、開口部17bを通じて汚染防止装置17の下方に向かって噴出される。このような構成により、ヒュームのウィンドウ1aへの付着を防止し、レーザ光Bの照射経路からヒュームを排除することができる。
【0018】
1.2.材料層形成装置3
材料層形成装置3は、チャンバ1の内部に設けられる。図2に示すように、材料層形成装置3は、ベース4と、ベース4上に配置されるリコータヘッド11とを備える。リコータヘッド11は、リコータヘッド駆動装置12によって水平1軸方向に往復移動可能に構成される。
【0019】
図3及び図4に示すように、リコータヘッド11は、材料収容部11aと、材料供給口11bと、材料排出口11cとを備える。材料供給口11bは、材料収容部11aの上面に設けられ、材料供給ユニット(不図示)から材料収容部11aに供給される材料粉体の受け口となる。材料排出口11cは、材料収容部11aの底面に設けられ、材料収容部11a内の材料粉体を排出する。材料排出口11cは、材料収容部11aの長手方向に延びるスリット形状を有する。リコータヘッド11の両側面には、平板状のブレード11fb,11rbが設けられる。ブレード11fb,11rbは、材料排出口11cから排出される材料粉体を平坦化して、材料層85を形成する。
【0020】
図1及び図2に示すように、造形領域Rは造形テーブル5上に位置し、造形領域Rに所望の三次元造形物が形成される。造形テーブル5は、造形テーブル駆動装置によって駆動され鉛直方向に移動可能である。造形時には造形領域R内にベースプレート81が配置され、ベースプレート81の上面に材料粉体が供給されて材料層85が形成される。
【0021】
1.3.照射装置13
図1に示すように、照射装置13は、チャンバ1の上方に設けられる。照射装置13は、造形領域R内に形成される材料層85の照射領域にレーザ光Bを照射して、材料粉体を溶融又は焼結して固化させ、固化層86を形成する。
【0022】
図5に示すように、照射装置13は、光源31と、コリメータ33と、フォーカス制御ユニット35と、走査装置37とを備え、後述する照射制御部96により制御される。光源31は、レーザ光Bを生成する。レーザ光Bは、材料粉体を焼結又は溶融可能であればよく、例えば、ファイバレーザ、COレーザ、YAGレーザである。本実施形態においては、レーザ光Bとして、ファイバレーザが用いられる。
【0023】
コリメータ33は、コリメータレンズを備え、光源31から出力されたレーザ光Bを平行光に変換する。フォーカス制御ユニット35は、焦点制御レンズと、焦点制御レンズを光軸方向に沿って前後に移動させるモータとを備え、コリメータ33により平行光に変換されたレーザ光Bの焦点位置を調整することで、材料層85の表面におけるレーザ光Bのビーム径を調整する。
【0024】
走査装置37は、例えばガルバノスキャナであり、第1ガルバノミラー37a及び第2ガルバノミラー37bと、第1ガルバノミラー37a及び第2ガルバノミラー37bを所望の角度に各々回転させる第1アクチュエータ及び第2アクチュエータとを備える。フォーカス制御ユニット35を通過したレーザ光Bは、第1ガルバノミラー37a及び第2ガルバノミラー37bにより造形領域R内の材料層85の上面に2次元走査される。具体的には、レーザ光Bは、後述する造形用座標系に従って、第1ガルバノミラー37aに反射されて造形領域Rにおける水平一軸方向であるX軸方向に、第2ガルバノミラー37bに反射されて造形領域Rにおける他の水平一軸方向であってX軸方向に直交するY軸方向に走査される。
【0025】
第1ガルバノミラー37a及び第2ガルバノミラー37bにより反射されたレーザ光Bは、ウィンドウ1aを透過して造形領域R内の材料層85に照射され、これにより、固化層86が形成される。なお、照射装置13は、上述の形態に限定されない。例えば、フォーカス制御ユニット35に代えてfθレンズが設けられてもよい。また、照射装置13は、レーザ光Bのかわりに電子ビームを照射して材料層85を固化させるよう構成されてもよい。具体的には、照射装置13を、電子を放出するカソード電極と、電子を収束して加速するアノード電極と、磁場を形成して電子ビームの方向を一方向に収束するソレノイドと、被照射体である材料層85と電気的に接続されカソード電極との間に電圧を印加するコレクタ電極とを含むよう構成してもよい。
【0026】
上述の構成に加え、積層造形装置100は、固化層86及び造形物に対し必要に応じて切削加工等の機械加工を行うための機械加工装置(不図示)をチャンバ1内に備えてもよい。機械加工装置は、例えば、切削等の機械加工を行うための工具(例えば、エンドミル)を加工ヘッドに取り付けて構成され、加工ヘッドを水平方向及び鉛直方向に適宜移動させて固化層86又は造形物に対して機械加工を行う。また、工具は、加工ヘッドのスピンドルに対して取り付けることで回転可能に構成してもよい。
【0027】
2.造形用座標系の設定
積層造形装置100には、造形領域R内の位置を指定するための機械座標系が予め設定されている。機械座標系は、積層造形装置100に固有に設定されるもので、造形条件によらず不変である。一方、ベースプレート81上の材料層85の所望の位置に照射装置13を用いてレーザ光Bを照射する、又はベースプレート81上の固化層86又は造形物に対して機械加工を行うためには、造形に先駆けて、造形領域Rに配置されるベースプレート81を基準とした造形用座標系を設定する必要がある。造形用座標系は、ベースプレート81の交換や配置変更の度に設定され、照射装置13や機械加工装置に対する動作指令は、造形用座標系に基づき作成される。また、照射装置13や機械加工装置等といった積層造形装置100を構成する装置毎に造形用座標系を設定することも可能である。
【0028】
造形用座標系を設定するために、本実施形態においては、造形用座標系の設定において基準となる点(基準点)の機械座標系における座標を特定する。具体的には、造形領域Rに配置されたベースプレート81の画像を撮像装置により取得し、画像解析により少なくとも1つの検出対象点の機械座標系における座標を取得する。本発明における検出対象点とは、基準点の機械座標系における座標を特定するために、撮像装置により撮像され画像解析において位置が検出される点を指す。検出対象点の座標から基準点の座標を求め、例えば当該基準点を原点として、造形用座標系が設定される。造形用座標系の基準点としては、例えば、平面視におけるベースプレート81の隅角、又は中心を選択可能である。また、検出対象点としては、基準点を特定するために画像解析により検出可能な点を適宜設定可能である。基準点そのものが画像解析により検出可能である場合には、基準点を検出対象点とすることができる。後述するようにエッジ検出等の画像解析により検出対象点を検出するうえでは、検出対象点は、平面視におけるベースプレート81の外縁を構成する辺上に設定することが好ましく、平面視におけるベースプレート81の隅角に設定することがさらに好ましい。
【0029】
例として、図6に示すように矩形のベースプレート81を造形領域Rに配置した場合の、基準点の座標の決定について説明する。なお、図6の下、上、左、右方向は、積層造形装置100の前、後、左、右方向にそれぞれ対応する。図6の例において、機械座標系は、平面視においてフレーム51の内側に位置する造形領域Rの前端及び左端の交点に位置する隅角を原点Odとし、造形領域Rの前端をXd軸、左端をYd軸とするように設定されている。平面視におけるベースプレート81の隅角C2を造形用座標系の基準点とする場合、隅角C2は画像解析による検出が比較的容易であるため、隅角C2を検出対象点として設定できる。画像解析により検出対象点である隅角C2の座標を取得し、これにより基準点としての隅角C2の座標が特定される。
【0030】
別の例として、平面視におけるベースプレート81の中心Gを造形用座標系の基準点とすることもできる。中心Gを画像解析により直接検出することが困難な場合、より検出が容易な点を検出対象点として設定できる。例えば、矩形の一方の対角線の両端に位置する2つの隅角C2,C4を検出対象点として設定した場合、画像解析により隅角C2,C4の座標を取得し、隅角C2,C4を結ぶ線分の中点の座標を求めることで、基準点である中心Gの座標を特定できる。また、2つの隅角C2,C4の代わりに矩形の他方の対角線の両端に位置する2つの隅角C1,C3を検出対象点として同様の操作を行い、中心Gの座標を特定してもよい。或いは、4つの隅角C1,C2,C3,C4を検出対象点として、画像解析によりこれらの点の座標を取得し、隅角C1,C3を結ぶ線分と隅角C2,C4を結ぶ線分の交点として中心Gの座標を特定してもよい。
【0031】
他の例として、図7に示すように、矩形の隅角の1つが面取りされているベースプレート81を造形領域Rに配置した場合の、基準点の座標の決定について説明する。図7の例において、機械座標系は図6と同様に設定されている。面取り部分から延びるベースプレート81の2辺E1,E2の延長線の交点である点C5を造形用座標系の基準点且つ検出対象点とする場合、画像解析により辺E1,E2の座標を求める。そして、辺E1,E2の延長線の交点の座標を求めることで、基準点且つ検出対象点である点C5の座標を特定することができる。
【0032】
3.撮像装置
図8は、積層造形装置100の別の概略構成図であり、図1の積層造形装置100を右側から見た構成を示す図である。本実施形態に係る積層造形装置100は、造形領域Rを上方から撮像するための撮像装置を備える。撮像装置は、例えば、CCDカメラ又はCMOSカメラである。本実施形態に係る撮像装置は、図8に示すように、CCDカメラである全体撮像カメラ61(第2カメラの一例)及び部分撮像カメラ62(第1カメラの一例)の2台のカメラを備え、各カメラが後述する画像処理装置43により制御されて撮像を行う。図9は、図6のベースプレート81の配置における、全体撮像カメラ61及び部分撮像カメラ62の撮像領域又は視野の例を示す図である。
【0033】
3.1.全体撮像カメラ61
全体撮像カメラ61は、チャンバ1内に設けられ、造形領域R全体を含む全体領域Arを撮像して全体画像を取得する。造形領域R全体を撮像領域に含めるために、全体撮像カメラ61は造形領域Rの上方に造形領域Rとある程度の距離を取って配置する必要がある。本実施形態においては、全体撮像カメラ61はチャンバ1の天井部に固定される。全体画像は画像処理装置43により解析され、造形領域Rにおけるベースプレート81の位置情報が取得される。
【0034】
3.2.部分撮像カメラ62
部分撮像カメラ62は、チャンバ1内に少なくとも水平方向に移動可能に設けられ、全体領域Arの一部であり検出対象点付近の領域を撮像して画像取得するために用いられる。本実施形態の部分撮像カメラ62は、カメラ移動装置7により水平移動が可能である。
【0035】
図8に示すように、カメラ移動装置7は、一端に部分撮像カメラ62が取り付けられる。カメラ移動装置7は、造形領域Rにおける水平一軸方向の往復移動を可能とする第1駆動機構71と、第1駆動機構71が取り付けられ当該水平一軸方向に直交する他の水平一軸方向の往復移動を可能とする第2駆動機構72とを備え、後述する移動装置制御部98により制御される。本実施形態の部分撮像カメラ62は、第1駆動機構71により積層造形装置100の前後方向に、第2駆動機構72により積層造形装置100の左右方向に移動される。これにより、部分撮像カメラ62を、造形領域Rの上方において水平方向に自在に移動させて任意の位置に配置することができる。なお、カメラ移動装置7は、部分撮像カメラ62をさらに鉛直方向に移動させるように構成してもよい。本実施形態に係るカメラ移動装置7は、部分撮像カメラ62を上下方向に往復移動させる第3駆動機構73を備える。これにより、造形領域Rとの鉛直方向の距離を適宜調節することが可能となる。第1駆動機構71、第2駆動機構72、及び第3駆動機構73は、例えば、リニアモータ、シリンダ、ボールネジ、又はラック・ピニオン機構を用いてそれぞれ構成することができる。
【0036】
制御装置9は、ベースプレート81の位置情報を用いて部分撮像カメラ62の移動指令を作成し、移動装置制御部98に対して出力する。移動装置制御部98は、移動指令に従ってカメラ移動装置7を動作させ、これにより部分撮像カメラ62が移動し、所定の位置に配置される。
【0037】
撮像に際し、部分撮像カメラ62は、検出対象点の直上付近の初期位置にまず配置される。例えば、図9のベースプレート81の配置において隅角C2を基準点且つ検出対象点とする場合、部分撮像カメラ62は、隅角C2と隅角C2を一方の端点とするベースプレート81の辺E3,E4の一部とが視野に含まれる初期位置に配置される。ここで、辺E3,E4は、平面視におけるベースプレート81の外縁を構成する辺である。図9においては、視野が初期領域VC2,0となるような部分撮像カメラ62の位置を初期位置に設定することができる。
【0038】
次に、部分撮像カメラ62は、初期位置から辺E3に沿って、辺E3の他方の端点である隅角C1に向かってカメラ移動装置7により移動される。具体的には、図10に示すように、移動後の視野が第1領域VC2,1となるように、部分撮像カメラ62を辺E3に平行な方向に隅角C1に向かって距離H1だけ移動させる。第1領域VC2,1には、辺E3の一部が含まれている。移動後の位置において、部分撮像カメラ62は、第1領域VC2,1を撮像して第1画像を取得する。
【0039】
次に、部分撮像カメラ62は、カメラ移動装置7により初期位置に戻される。これにより、部分撮像カメラ62の視野は再び初期領域VC2,0となる。そして、部分撮像カメラ62は、初期位置から辺E4に沿って、辺E4の他方の端点である隅角C3に向かってカメラ移動装置7により移動される。具体的には、図10に示すように、移動後の視野が第2領域VC2,2となるように、部分撮像カメラ62を辺E4に平行な方向に隅角C3に向かって距離H2だけ移動させる。第2領域VC2,2には、辺E4の一部が含まれている。移動後の位置において、部分撮像カメラ62は、第2領域VC2,2を撮像して第2画像を取得する。
【0040】
このように、部分撮像カメラ62は、平面視においてベースプレートの外縁を構成する2辺(第1辺及び第2辺)を対象として撮像を行う。当該2辺は、検出対象点毎に設定され、検出対象点が当該2辺の交点、又は当該2辺の延長線上の交点となるように設定される。部分撮像カメラ62は、第1辺の一部及び一方の端点と第2辺の一部及び一方の端点とが全て視野に収まるように設定された初期位置に一旦配置された後に、各辺の他方の端点に向かって各辺に沿って移動され、移動後の位置において第1辺の少なくとも一部を含む第1領域及び第2辺の少なくとも一部を含む第2領域が撮像され、第1画像及び第2画像がそれぞれ取得される。
【0041】
このように部分撮像カメラ62を移動させた場合、第1領域に含まれる第1辺の長さ、第2領域に含まれる第2辺の長さは、初期位置での視野に含まれる第1辺及び第2辺の長さよりも大きくなる。図11に示すように、第1領域VC2,1に含まれる辺E3の長さT2は、初期領域VC2,0に含まれる辺E3の長さT1よりも大きい。また、第2領域VC2,2に含まれる辺E4の長さT4は、初期領域VC2,0に含まれる辺E4の長さT3よりも大きい。
【0042】
後述するように、第1画像及び第2画像に対しては、エッジ検出等の画像解析が行われ、ベースプレート81の輪郭、換言すれば平面視におけるベースプレート81の外縁が検出される。このような画像解析において外縁を構成する辺の位置情報を検出する場合、画像中に含まれる当該辺の長さが大きいほど、検出精度が高くなる。従って、第1画像及び第2画像を解析して得られる第1辺及び第2辺の位置情報は、初期位置において撮像した画像から検出を行う場合と比べてより高精度となる。また、各辺に沿った移動において、部分撮像カメラ62とベースプレート81との鉛直方向の距離は一定であるため、撮像対象物との距離を広げることなく視野内の情報を増やすことが可能となる。
【0043】
なお、部分撮像カメラ62を各辺に沿って移動させる場合、部分撮像カメラ62を各辺に平行に移動させることが好ましい。これにより、視野内に含まれる辺の長さを最小の移動量で増加させることができ、効率的な撮像が可能となる。
【0044】
各辺に沿った部分撮像カメラ62の移動距離は、ベースプレート81の形状やサイズによって適宜設定される。図10に示す第1領域VC2,1と初期領域VC2,0の関係のように、移動後の視野が初期位置における視野と重複部分を有さないように移動距離を設定してもよい。また、図10に示す第2領域VC2,2と初期領域VC2,0の関係のように、移動後の視野が初期位置における視野と重複部分を有するように移動距離を設定してもよい。
【0045】
また、部分撮像カメラ62の視野のサイズに応じて移動距離を設定してもよい。例えば、第1辺及び第2辺に沿った移動距離を、第1辺及び第2辺に平行な方向における部分撮像カメラ62の視野の最大長さの半分に等しくなるように設定してもよい。図9において、初期位置における部分撮像カメラ62の視野である初期領域VC2,0は、辺E3に平行な方向における長さがLV,1であり、辺E4に平行な方向における長さがLV,2である。この場合、部分撮像カメラの辺E3に沿った移動距離をLV,1/2とし、辺E4に沿った移動距離をLV,2/2と設定してもよい。ベースプレート81の形状が比較的単純である場合等は、このように各辺に沿った移動距離を固定することで、検出精度をある程度確保しつつ、移動距離の設定に要する時間を短縮することが可能となる。
【0046】
図6の配置において中心Gを基準点とし、2つの隅角C2,C4を検出対象点とする場合、検出対象点毎に同様の操作が行われる。つまり、一方の検出対象点である隅角C2に対して、上述の操作を行い第1画像及び第2画像を取得する。また、他方の検出対象点である隅角C4に対して、別途第1画像及び第2画像を取得する。具体的には、図12に示すように、部分撮像カメラ62を、隅角C4と隅角C4を一方の端点とするベースプレート81の辺E5,E6の一部とが視野に含まれる初期位置に配置する。ここで、辺E5,E6は、平面視におけるベースプレート81の外縁を構成する辺である。この場合、視野が初期領域VC4,0となるような部分撮像カメラ62の位置を、初期位置として設定することができる。
【0047】
次に、部分撮像カメラ62は、初期位置から辺E5に平行な方向に辺E5の他方の端点である隅角C3に向かって移動される。移動後の視野は第1領域VC4,1となり、第1領域VC4,1には辺E5の一部が含まれている。部分撮像カメラ62は、第1領域VC4,1を撮像して第1画像を取得する。
【0048】
次に、部分撮像カメラ62は、カメラ移動装置7により初期位置に戻され、部分撮像カメラ62の視野は再び初期領域VC4,0となる。そして、部分撮像カメラ62は、初期位置から辺E6に平行な方向に辺E6の他方の端点である隅角C1に向かって移動される。移動後の視野は第2領域VC4,2となり、第2領域VC4,2には辺E6の一部が含まれている。部分撮像カメラ62は、第2領域VC4,2を撮像して第2画像を取得する。このように、複数の検出対象点が設定される場合には、検出対象点毎に初期位置が設定され、第1画像及び第2画像が取得される。
【0049】
図7に示すベースプレート81の配置における部分撮像カメラ62の撮像について説明する。このような配置において点C5を基準点且つ検出対象点とする場合、部分撮像カメラ62は、辺E1の点C5側の端点C6と、端点C6から延びる辺E1の一部と、辺E2の点C5側の端点C9と、端点C9から延びる辺E2の一部とが視野に含まれる初期位置に配置される。ここで、辺E1,E2は、平面視におけるベースプレート81の外縁を構成する辺である。図13に示すように、視野が初期領域VC5,0となるような部分撮像カメラ62の位置を初期位置に設定することができる。
【0050】
次に、部分撮像カメラ62は、初期位置から辺E1に平行な方向に辺E1の他方の端点である隅角C7に向かって移動される。移動後の視野は第1領域VC5,1となり、第1領域VC5,1には辺E1の一部が含まれている。部分撮像カメラ62は、第1領域VC5,1を撮像して第1画像を取得する。
【0051】
次に、部分撮像カメラ62は、カメラ移動装置7により初期位置に戻され、部分撮像カメラ62の視野は再び初期領域VC5,0となる。そして、部分撮像カメラ62は、初期位置から辺E2に平行な方向に辺E2の他方の端点である隅角C8に向かって移動される。移動後の視野は第2領域VC5,2となり、第2領域VC5,2には辺E2の一部が含まれている。部分撮像カメラ62は、第2領域VC5,2を撮像して第2画像を取得する。
【0052】
なお、撮像装置の構成は、上述の構成に限定されるものではない。例えば、撮像装置に1台のカメラを設け、当該カメラが上述の全体撮像カメラ61及び部分撮像カメラ62の両方の機能を兼ね備えるように構成してもよい。この場合、当該カメラは、カメラ移動装置7により水平移動及び鉛直移動可能に構成される。
【0053】
4.画像処理装置43
本実施形態の積層造形装置100は、画像処理装置43を備える。画像処理装置43は、撮像装置の動作を制御するとともに、撮像装置が取得した全体画像、第1画像、及び第2画像を処理するために用いられる。
【0054】
画像処理装置43は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUがコンピュータプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。プログラムは、内蔵の記憶部に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。ハードウェアによって実現する場合、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はDRP(Dynamically Reconfigurable Processor)などの種々の回路によって実現することができる。
【0055】
4.1.全体画像の解析
画像処理装置43は、後述する制御装置9からの動作指令に基づき全体撮像カメラ61に全体領域Arの撮像を実行させ、全体画像を解析して造形領域Rにおけるベースプレート81の位置情報を取得する。本発明におけるベースプレート81の位置情報とは、検出対象点の位置を機械座標系において特定するために必要な情報を指す。
【0056】
具体的には、画像処理装置43は、まず、ベースプレート81の輪郭を検出しやすくするための前処理としてのフィルタ処理を全体画像に対して行う。フィルタ処理を行った全体画像に対してエッジ検出を行い、ベースプレート81の輪郭を検出する。フィルタ処理及びエッジ検出においては、公知の手法及びアルゴリズムが適用可能である。
【0057】
画像処理装置43は、検出された輪郭上の隅角の位置をベースプレート81の位置情報として取得する。本実施形態に係る画像処理装置43は、天井部に固定された全体撮像カメラ61に固有の座標系、スケーリング、及び回転をキャリブレーションする機能を備える。本実施形態では、全体撮像カメラ61に固有の座標系において特定された当該隅角の位置を、キャリブレーション機能を用いて機械座標系へ変換し、その結果をベースプレート81の位置情報として用いる。なお、ベースプレート81の位置情報は上記の例に限定されず、例えば、検出された輪郭を構成する各辺の位置及び長さをベースプレート81の位置情報として用いることも可能である。このようにして得られたベースプレート81の位置情報は制御装置9へと送られる。
【0058】
4.2.第1画像及び第2画像の解析
画像処理装置43は、制御装置9からの動作指令に基づき部分撮像カメラ62に撮像を実行させ、第1画像及び第2画像を解析して、第1辺の位置情報及び第2辺の位置情報をそれぞれ取得する。具体的には、画像処理装置43は、全体画像の処理と同様に、第1画像及び第2画像に対してフィルタ処理及びエッジ検出を行いベースプレート81の輪郭を検出する。第1画像及び第2画像には、ベースプレート81の輪郭である第1辺及び第2辺が全体画像と比べてより拡大された状態で含まれている。例えば、図10に示す第2領域VC2,2を撮像した場合、図14に示すような第2画像が得られる。
【0059】
画像処理装置43は、第1画像における第1辺の位置及び第2画像における第2辺の位置を、各辺の位置情報として取得する。図14の第2画像の解析においては、第2画像中の辺E4の位置が取得される。本実施形態においては、部分撮像カメラ62に固有の座標系において特定された第1辺及び第2辺の位置を各辺の位置情報として用いる。このようにして得られた第1辺及び第2辺の位置情報は、制御装置9へと送られる。
【0060】
5.制御装置9
次に、積層造形装置100を制御するための制御装置9について説明する。図15に示すように、制御装置9は、数値制御部91、表示部95、及び積層造形装置100を構成する各装置の制御部96,97,98を備える。
【0061】
制御装置9の「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものを指す。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CLPD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等を含むものである。更に、かかるプログラムは、内蔵の記憶部に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。
【0062】
制御装置9の外部には、CAD装置41及びCAM装置42が設置される。CAD装置41は、造形対象の積層造形物の形状及び寸法を示す三次元形状データ(CADデータ)を作成するためのものである。作成されたCADデータは、CAM装置42に出力される。
【0063】
CAM装置42は、CADデータに基づき、積層造形物を造形する際の積層造形装置100を構成する各装置の動作手順データ(CAMデータ)を作成するためのものである。CAMデータには、例えば、各材料層85におけるレーザ光Bの照射位置のデータ及びレーザ光Bのレーザ照射条件のデータが含まれる。作成されたCAMデータは、数値制御部91に出力される。
【0064】
数値制御部91は、制御装置9の外部に設けられる画像処理装置43を制御するとともに、画像処理装置43から送られる情報を用いて検出対象点の座標を算出し、基準点の特定及び造形用座標系の設定を行う。数値制御部91は、さらに、造形用座標系を適宜用いてCAMデータに対して数値制御プログラムによる演算を行い、積層造形装置100に対する動作指令を行う。
【0065】
数値制御部91は、算出部91a、演算部91b、及び記憶部91cを備える。演算部91bは画像処理装置43に対して全体画像の取得及び解析のための動作指令を出力する。そして、算出部91aは、画像処理装置43から送られたベースプレート81の位置情報から、検出対象点の機械座標系における座標を第1算出座標として算出する。なお、本実施形態においては、上述のように画像処理装置43において隅角の位置が取得され、機械座標系へ変換された結果がベースプレート81の位置情報として制御装置9へと送られる。従って、隅角を検出対象点として設定する場合、画像処理装置43から送られた検出対象点の座標を、そのまま第1算出座標として用いることができる。
【0066】
第1算出座標は、演算部91bへと送られる。演算部91bは、ベースプレート81の位置情報及び第1算出座標を用いて部分撮像カメラ62の移動指令を作成し、カメラ移動装置7を制御する移動装置制御部98に対して出力する。移動装置制御部98は、移動指令に基づいてカメラ移動装置7の動作を制御する。具体的には、移動装置制御部98は、移動指令に従って第1駆動機構71、第2駆動機構72、及び第3駆動機構73を動作させて部分撮像カメラ62を水平方向及び/又は鉛直方向に移動させる。これにより、部分撮像カメラ62が、検出対象点の直上付近の初期位置に配置され、その後第1領域及び第2領域を撮像可能な位置に第1辺及び第2辺に沿って移動される。
【0067】
算出部91aは、さらに、画像処理装置43から送られた第1辺及び第2辺の位置情報から、検出対象点の機械座標系における座標を第2算出座標として算出する。本実施形態においては、部分撮像カメラ62に固有の座標系において特定された第1辺及び第2辺の位置を、第1画像及び2画像の撮像時の部分撮像カメラ62の位置を加味して機械座標系に変換する。そして、検出対象点として第1辺及び第2辺の交点又は第1辺及び第2辺の延長線上の交点の座標を第2算出座標として算出する。さらに、第2算出座標から基準点の機械座標系における座標を特定し、例えば当該基準点を原点として、造形用座標系を設定する。第2算出座標、基準点の座標、及び設定された造形用座標系の情報は、演算部91bへと送られる。演算部91bは、造形用座標系を適宜用いて数値制御プログラムによる演算をCAMデータに対して行い、積層造形装置100を構成する各装置の制御部に対して動作指令を信号又は動作指令値のデータの形式で出力する。
【0068】
記憶部91cは、CAMデータ、数値制御プログラム、ベースプレート81の位置情報、第1辺及び第2辺の位置情報、第1及び第2算出座標、基準点の座標、及び造形用座標系の情報等を記憶する。表示部95は、ベースプレート81の位置情報、第1辺及び第2辺の位置情報、数値制御部91の演算部91bが出力する動作指令等を表示する。
【0069】
照射制御部96は、動作指令に基づいて照射装置13の動作を制御する。具体的には、照射制御部96は、光源31を制御し、所定のレーザパワー及び照射タイミングでレーザ光Bを出力させる。また、照射制御部96は、フォーカス制御ユニット35のモータを制御して焦点制御レンズを移動させ、これによりレーザ光Bが所定のビーム径に調整される。また、照射制御部96は、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータを制御し第1ガルバノミラー37a及び第2ガルバノミラー37bをそれぞれ所望の角度に回転させ、これにより、ベースプレート81上の材料層85の所定位置にレーザ光Bが照射される。照射制御部96に対する動作指令、特にアクチュエータの制御に係る動作指令は、造形用座標系に基づき作成される。
【0070】
機械加工制御部97は、動作指令に基づいて機械加工装置の動作を制御する。具体的には、加工ヘッドを所定位置まで移動させる。また、工具を所定のタイミングで動作させ、切削等の機械加工を行う。機械加工制御部97に対する動作指令、特に加工ヘッドの移動に係る動作指令は、造形用座標系に基づき作成される。なお、上述の各制御部96,97,98は、各装置の実際の動作情報を数値制御部91へとフィードバックする。
【0071】
6.積層造形物の製造方法
次に、本実施形態に係る積層造形装置100を用いた積層造形物の造形方法について説明する。本実施形態の造形方法は、造形用座標系の設定工程と、その後に行われる材料層形成工程及び固化工程とを備える。
【0072】
図16は、積層造形に先駆けて行われる造形用座標系の設定工程の手順を示すフロー図である。まず、造形テーブル5上の造形領域R内にベースプレート81が配置される(ステップS1)。
【0073】
まず、全体撮像カメラ61により全体領域Arの撮像が行われ、全体画像が取得される(ステップS2)。全体画像は画像処理装置43へと送られ、画像処理装置43は、全体画像を解析してベースプレート81の位置情報を取得する(ステップS3)。ベースプレート81の位置情報は、制御装置9の算出部91aへと送られる。算出部91aは、ベースプレート81の位置情報から検出対象点の座標を第1算出座標として算出する(ステップS4)。
【0074】
ベースプレート81の位置情報及び第1算出座標は演算部91bへと送られ、演算部91bは部分撮像カメラ62の移動指令を作成する。移動指令に基づき、カメラ移動装置7は、部分撮像カメラ62を初期位置へ配置した後、第1辺に沿って所定距離移動させる(ステップS5)。移動後の位置において第1領域の撮像が行われ、第1画像が取得される(第1画像取得工程、ステップS6)。第1画像は画像処理装置43へと送られ、画像処理装置43は、第1画像を解析して第1辺の位置情報を取得する(第1画像解析工程、ステップS7)。第1辺の位置情報は、制御装置9の算出部91aへと送られる。
【0075】
次いで、カメラ移動装置7は、部分撮像カメラ62を初期位置に戻した後、第2辺に沿って所定距離移動させる(ステップS8)。移動後の位置において第2領域の撮像が行われ、第2画像が取得される(第2画像取得工程、ステップS9)。第2画像は画像処理装置43へと送られ、画像処理装置43は、第2画像を解析して第2辺の位置情報を取得する(第2画像解析工程、ステップS10)。第2辺の位置情報は、制御装置9の算出部91aへと送られる。
【0076】
算出部91aは、第1辺及び第2辺の位置情報を機械座標系に変換し、検出対象点の座標を第2算出座標として算出する(算出工程、ステップS11)。さらに、第2算出座標から基準点の座標を特定し(ステップS12)、当該基準点を基準として造形用座標系を設定する(ステップS13)。
【0077】
なお、図16においては、説明の便宜上、第1画像の取得及び解析(ステップS6,S7)を行ったのちに第2画像の取得及び解析(ステップS9,S10)を行う手順を示したが、画像取得及び解析に係る工程の順序は、これに限定されるものではない。第1画像及び第2画像を取得した後に、第1画像及び第2画像の解析を行ってもよい。
【0078】
以上の手順で造形用座標系が設定された後、材料層形成工程及び固化工程が行われる。材料層形成工程では、造形領域Rに配置されたベースプレート81の上面に材料粉体を供給して材料層85を形成する。固化工程では、材料層85の所定の照射領域に対してレーザ光B又は電子ビームを照射して固化層86を形成する。材料層形成工程及び固化工程は繰り返し実施される。
【0079】
まず、1回目の材料層形成工程が行われる。図17に示すように、造形テーブル5上にベースプレート81を載置した状態で造形テーブル5の高さを適切な位置に調整する。この状態で、リコータヘッド11を図17の左側から右側に移動させることにより、ベースプレート81上に1層目の材料層85が形成される。
【0080】
次に、1回目の固化工程が行われる。図18に示すように、1層目の材料層85の所定の照射領域にレーザ光B又は電子ビームを照射することによって、1層目の材料層85を固化させ、1層目の固化層86を得る。
【0081】
続いて、2回目の材料層形成工程が行われる。1層目の固化層86を形成後、造形テーブル5の高さを材料層85の1層分下げる。この状態で、リコータヘッド11を造形領域Rの図18の右側から左側に移動させることにより、1層目の固化層86を覆うように2層目の材料層85が形成される。そして2回目の固化工程が行われる。上述と同様の方法で、2層目の材料層85の所定の照射領域にレーザ光B又は電子ビームを照射することによって2層目の材料層85を固化させ、2層目の固化層86を得る。
【0082】
所望の三次元造形物が得られるまで、材料層形成工程及び固化工程が繰り返され、複数の固化層86が積層される。隣接する固化層86は、互いに強く固着される。また、造形中又は造形後に、必要に応じて機械加工装置による切削加工等が行われる。積層造形の完了後は、未固化の材料粉体及び切削屑を排出することによって、積層造形物を得ることができる。
【0083】
7.他の実施形態
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、以下の態様によっても実施することができる。
【0084】
7.1.第2実施形態
第1実施形態においては、部分撮像カメラ62を用いて第1辺及び第2辺に対してそれぞれ1回ずつ撮像を行い、1つの第1画像及び第2画像を取得した。第2実施形態に係る積層造形装置100及び積層造形物の造形方法においては、初期位置からの各辺に沿った移動距離を変化させて複数回撮像を行い、複数の第1画像及び第2画像を取得する。以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0085】
第2実施形態における第1画像及び第2画像の取得について、図19のベースプレート81の配置において隅角C2を基準点且つ検出対象点とした場合を例として説明する。まず、部分撮像カメラ62は、第1実施形態と同様に、隅角C2と隅角C2を一方の端点とするベースプレート81の辺E3,E4の一部とが視野に含まれる初期位置にまず配置される。初期位置における視野は、図19に示す初期領域VC2,0となる。次に、部分撮像カメラ62を辺E3に平行な方向に隅角C1に向かって距離H3,1だけ移動させ、これにより移動後の視野は第1領域VE3,1となる。この位置において第1領域VE3,1の撮像を行い、1つ目の第1画像を取得する。
【0086】
次に、部分撮像カメラ62は初期位置に戻され、これにより、部分撮像カメラ62の視野は再び領域VC2,0となる。そして、部分撮像カメラ62を初期位置から辺E3に平行な方向に隅角C1に向かって、1回目の撮像時の移動距離H3,1とは異なる距離H3,2だけ移動させ、これにより移動後の視野は第1領域VE3,2となる。この位置において第1領域VE3,2の撮像を行い、2つ目の第1画像を取得する。
【0087】
上述の操作を、移動距離を変化させながら繰り返すことで、複数の第1領域VE3,1,VE3,2,VE3,3......が撮像されて複数の第1画像が取得される。移動距離は、各撮像における第1領域が辺E3の少なくとも一部を含むように設定される。各撮像における第1領域は、相互に重複部分を有してもよく、重複部分を有していなくてもよい。
【0088】
同様の操作を行い、複数の第2画像が取得される。図20に示すように、部分撮像カメラ62を初期位置から辺E4に平行な方向に隅角C3に向かって距離H4,1だけ移動させ、この位置において第2領域VE4,1の撮像を行い、1つ目の第2画像を取得する。部分撮像カメラ62を初期位置に戻した後、辺E4に平行な方向に隅角C3に向かって、移動距離H4,1とは異なる距離H4,2だけ移動させ、この位置において第2領域VE4,2の撮像を行い、2つ目の第2画像を取得する。このような操作を移動距離を変化させながら繰り返すことで、複数の第2画像が取得される。
【0089】
画像処理装置43は、複数の第1画像をそれぞれ解析して第1辺の位置情報を取得し、複数の第2画像をそれぞれ解析して第2辺の位置情報を取得する。つまり、第1辺及び第2辺それぞれについて、異なる画像から複数の位置情報が得られる。図19及び図20の例においては、第1実施形態と同様に、各画像に含まれる辺E3,E4の位置が部分撮像カメラ62に固有の座標系において特定される。さらに、画像処理装置43は、第1画像に含まれる第1辺の長さ、及び第2画像に含まれる第2辺の長さを検出する。図19においては、第1領域VE3,1,VE3,2,VE3,3を撮像した第1画像から、各第1画像に含まれる辺E3の長さTE3,1,TE3,2,TE3,3がそれぞれ検出される。また、図20においては、第2領域VE4,1,VE4,2を撮像した第2画像から、各第2画像に含まれる辺E4の長さTE4,1,TE4,2がそれぞれ検出される。このようにして得られた第1辺及び第2辺の位置情報、及び各辺の長さの検出結果は、制御装置9へと送られる。
【0090】
制御装置9の算出部91aは、第1辺の複数の位置情報のうち、検出された辺E3の長さが最も大きい第1画像から取得された第1辺の位置情報を選択する。また、第2辺の複数の位置情報のうち、検出された辺E4の長さが最も大きい第2画像から取得された第2辺の位置情報を選択する。そして、選択された第1辺及び第2辺の位置情報を機械座標系に変換し、検出対象点である隅角C2の機械座標系における座標を第2算出座標として算出する。
【0091】
このように、各辺に沿った移動距離を変化させて複数の画像を取得し解析することで、検出される辺の長さがより大きい画像から取得された辺の位置情報を選択可能となる。画像中に含まれる辺の長さが大きいほど検出精度が高くなるため、検出される辺の長さが最も大きい画像から取得された辺の位置情報を検出対象点の座標の算出に用いることで、基準点の座標の精度を向上させることができる。
【0092】
7.2.第3実施形態
第3実施形態に係る積層造形装置100及び積層造形物の造形方法においては、第2実施形態と同様に複数の第1画像及び第2画像を取得して解析を行うが、解析により得られる第1辺及び第2辺の複数の位置情報の利用形態が異なる。以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0093】
第2実施形態と同様に、画像処理装置43における解析により得られた第1辺及び第2辺の複数の位置情報は、制御装置9へと送られる。制御装置9の算出部91aは、これら複数の位置情報に対して統計処理を行い、その結果を用いて検出対象点の機械座標系における座標を第2算出座標として算出する。
【0094】
例えば、第1辺の複数の位置情報のそれぞれから第1辺の座標を算出し、得られた座標の算術平均を求める。第2辺の複数の位置情報に対しても同様の処理を行い、平均化された第1辺及び第2辺の座標を用いて、第2算出座標の算出を行う。
【0095】
また、このような統計処理の前処理として、検出対象点の算出に用いることが適切でないと考えられる少なくとも1つの位置情報を予め除去してもよい。例えば、各辺に対する1回目の撮像においては、一般的に部分撮像カメラ62の移動における操作ミスが起きやすいため、各辺に対する1回目の撮像において取得された第1画像及び第2画像から得られた位置情報を除去してもよい。或いは、各辺の複数の位置情報のうち、検出された辺の長さが所定の閾値未満の画像から取得された位置情報を、検出精度が比較的低いものとして予め除去してもよい。
【0096】
7.3.その他の変形例
第1実施形態においては、全体撮像カメラ61により取得された全体画像の解析によりベースプレート81の位置情報が取得され、当該位置情報を用いて作成された移動指令に従って部分撮像カメラ62の初期位置への配置及びその後の各辺に沿った移動が行われるが、他の構成も考えられる。例えば、作業者が制御装置9に対してベースプレート81のサイズや配置等の検出対象点の位置を特定するための情報をベースプレート81の位置情報として入力し、制御装置9が当該位置情報を用いて部分撮像カメラ62の移動指令を作成してもよい。このような半自動式の構成は、ベースプレート81の色や面質等の条件により全体画像の解析によるベースプレート81の位置情報の取得が困難な場合、又はベースプレート81のサイズや配置(例えば、ベースプレート81のフレーム51からの距離)が事前に分かっている場合に選択され得る。
【0097】
また、カメラ移動装置7を操作するための操作部を設け、作業者が操作部に入力を行ってカメラ移動装置7を操作する構成としてもよい。この場合、作業者は、カメラ移動装置7を手動で操作して、部分撮像カメラ62の初期位置への配置及びその後の各辺に沿った移動を行う必要がある。このような手動の構成は、ベースプレート81が特に複雑な形状を有していたり、ハイブリッド造形において他の加工方法の実施後に積層造形を行う等の事情により、全体画像の解析によるベースプレート81の位置情報の取得が困難であり、且つベースプレート81の位置情報も不明である場合に選択され得る。
【0098】
さらに、積層造形装置100を、制御装置9による制御のもと、上述の実施形態の構成、半自動式の構成、及び手動の構成に各々対応する運転モード間で切替可能に構成してもよい。この場合、制御装置9に、運転モードの切替を行うモード切替部を設けてもよい。
【0099】
以上、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1:チャンバ、1a:ウィンドウ、3:材料層形成装置、4:ベース、5:造形テーブル、7:カメラ移動装置、9:制御装置、11:リコータヘッド、11a:材料収容部、11b:材料供給口、11c:材料排出口、11fb:ブレード、11rb:ブレード、12:リコータヘッド駆動装置、13:照射装置、17:汚染防止装置、17a:筐体、17b:開口部、17c:拡散部材、17d:不活性ガス供給空間、17e:細孔、17f:清浄室、31:光源、33:コリメータ、35:フォーカス制御ユニット、37:走査装置、37a:第1ガルバノミラー、37b:第2ガルバノミラー、41:CAD装置、42:CAM装置、43:画像処理装置、51:フレーム、61:全体撮像カメラ、62:部分撮像カメラ、71:第1駆動機構、72:第2駆動機構、73:第3駆動機構、81:ベースプレート、85:材料層、86:固化層、91:数値制御部、91a:算出部、91b:演算部、91c:記憶部、95:表示部、96:照射制御部、97:機械加工制御部、98:移動装置制御部、100:積層造形装置、B:レーザ光、R:造形領域
【要約】
【課題】ベースプレートの位置検出における精度の低下を抑制することが可能な積層造形装置及び積層造形物の製造方法を提供する。
【解決手段】
チャンバと、造形テーブルと、撮像装置と、画像処理装置と、制御装置とを備える積層造形装置であって、造形テーブル上の造形領域内に配置されたベースプレートは、平面視において外縁を構成する第1辺及び第2辺を備え、撮像装置の第1カメラは、第1辺の一部及び一方の端点と第2辺の一部及び一方の端点とが視野に含まれる初期位置から第1辺に沿って移動した位置において第1領域を撮像して第1画像を取得し、初期位置から第2辺に沿って移動した位置において第2領域を撮像して第2画像を取得し、画像処理装置は、第1及び第2画像を解析して各辺の位置情報を取得し、制御装置は、検出対象点として第1辺及び第2辺の交点又は第1辺及び第2辺の延長線上の交点の座標を算出する、積層造形装置が提供される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図10
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