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特許7096434構造化格子コンポーネント、撮像システム及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】構造化格子コンポーネント、撮像システム及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21K 1/06 20060101AFI20220628BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20220628BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20220628BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20220628BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G21K1/06 D
G21K1/06 C
B32B3/10
B32B7/02
A61B6/00 330Z
A61B6/00 300J
G02B5/18
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021525550
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2019080772
(87)【国際公開番号】W WO2020099280
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】18205877.6
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】フォークトマイヤー ゲレオン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルメス ドロテー
(72)【発明者】
【氏名】リウ ボー
(72)【発明者】
【氏名】ヤロシェンコ アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ウニクリシュナン サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブス ヨハネス ウィルヘルムス マリア
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-513414(JP,A)
【文献】特表2012-530270(JP,A)
【文献】特開2015-178683(JP,A)
【文献】特開2009-282322(JP,A)
【文献】特開2012-047688(JP,A)
【文献】特開平11-104119(JP,A)
【文献】特開2011-069818(JP,A)
【文献】特表2002-526354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 1/06
B32B 3/10
B32B 7/02
A61B 6/00
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化格子を製造する方法であって、前記方法は、
基板上に、格子パターンを有する触媒を提供するステップと、
前記格子パターンに基づいて壁部及びトレンチを形成するために前記触媒上にナノ構造を成長させるステップと、
X線吸収材料を使用して前記ナノ構造の前記壁部の間の前記トレンチを充填するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記ナノ構造は、前記X線吸収材料よりも低いX線吸収度を有する材料を使用して、成長する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ構造は、カーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記X線吸収材料を使用して前記トレンチを充填するステップの前に、不活性化層を付与するステップを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性化層を付与するステップは、化学蒸着法を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記不活性化層は、前記基板から規定の距離に付与され、前記規定の距離は、2μm未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記トレンチを充填するステップは、電気めっき法を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記トレンチを充填するステップは、
機械的充填ステップであって、機械的応力及び高温度を使用した加圧下での機械的充填ステップ、
バインダ物質に埋め込まれた金属粉末によって前記トレンチを充填するステップ及び前記トレンチの固体充填を達成するために前記バインダ物質を焼成するステップ、並びに、
成長した前記ナノ構造を使用して格子構造を刻印するステップ
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
X線源のコーンビームへと格子構造を調節するため、前記格子構造を屈曲させるステップを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
基板と、
前記基板上の格子パターンを有する触媒と、
前記格子パターンに基づいて壁部及びトレンチを形成する前記基板上のナノ構造と、
前記ナノ構造の前記壁部の間の前記トレンチに充填されたX線吸収材料と
を備え、
前記ナノ構造はカーボンナノチューブを含む、構造化格子コンポーネント。
【請求項11】
前記X線吸収材料と前記ナノ構造との間に配置された不活性化層を更に備える、請求項10に記載の構造化格子コンポーネント。
【請求項12】
前記基板は、前記X線吸収材料と直接接触する、請求項10に記載の構造化格子コンポーネント。
【請求項13】
前記ナノ構造は、2つの隣り合う壁部を接合する支持要素を備え、前記支持要素は、前記壁部の2つの対向する側部に、長手方向の異なる位置にそれぞれ設けられる、請求項10に記載の構造化格子コンポーネント。
【請求項14】
請求項10に記載の構造化格子コンポーネントを備える撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造化格子を製造する方法、及び対応する構造化格子コンポーネントに関する。本発明は、特には、医療用途における暗視野又は位相コントラストX線撮像の分野に適用されるが、もちろん、本出願は、これらの分野に限定されるものではなく、例えば、非破壊試験(NDT)にも適用され得る。
【背景技術】
【0002】
暗視野X線撮像又は位相コントラスト撮像は、幅が数μmで深さが200~330μmのトレンチ/壁部構造、すなわち幅に対する深さのアスペクト比が非常に高いトレンチ/壁部構造を有する特別な格子コンポーネントを必要とすることが知られている。X線吸収度は、第1の又は位相格子コンポーネントによって作り出された干渉パターンが第2の又はアナライザ格子コンポーネントを使用して分析され得るように、壁部とトレンチとの間で異なる。
【0003】
米国特許出願公開第2012/0307966A1号は、X線暗視野撮像又は位相コントラスト撮像のための格子コンポーネントを含む位相コントラスト撮像のための装置を開示している。格子構成部は、ビームスプリッタ格子及びアナライザ格子を含む。
【0004】
米国特許出願公開第2018/0187294A1号は、成形物を生成するためのプロセスを開示しており、このプロセスによって、より粘度の低い状態の金属ガラス材料を形成し得、その形状を正確に制御しつつ、比較的短時間で数10pm以下の小さな構造を製造し得、このプロセスは、過冷却状態の金属ガラス材料又は固体金属ガラス材料を、0.5K/sの温度上昇率で、金属ガラス材料の過冷却液体の結晶化プロセスが始まる温度以上の温度まで加熱する加熱ステップと、金属ガラス材料の過冷却液体の結晶化プロセスが完了するまで金属ガラス材料をトランスファー成形する成形ステップとを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、暗視野X線撮像又は位相コントラスト撮像のために特に適した、より利用しやすい格子製造を可能とする、構造化格子を製造するための方法及びこのような構造化格子コンポーネントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によると、構造化格子を製造する方法が提供され、方法は、
基板上に格子パターンを有する触媒を提供するステップと、
格子パターンに基づいて壁部及びトレンチを形成するように触媒上にナノ構造を成長させるステップと、
X線吸収材料を使用してナノ構造の壁部の間のトレンチを充填するステップと
を有する。
【0007】
ナノ構造は格子パターンに対応して成長するので、それらは、ナノ構造のX線吸収度に対応するX線吸収度を有する壁部を形成する。更に、壁部の間のトレンチは、X線吸収材料、すなわち、ナノ構造の材料よりも少なくともX線吸収度の高い材料を使用して充填されるので、例えば暗視野X線撮像に適した格子コンポーネントが取得され得る。故に、この態様による方法は、方法の複雑性を最小限に保ちつつ、有利な特性を有する構造化格子を取得することを可能とする。
【0008】
特には、基板は導電性基板であり、基板は、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)を含むめっきベースを有する導電性シリコンのような剛性基板であってよい。代替的に又は追加的に、基板は、ニッケルフォイル及び/又は銅フォイルなどの導電性フォイルを含み得、基板は、任意選択的に、導電性フォイルの下に絶縁体を含み得る。
【0009】
好適には、触媒は、基板の上に副層の形態で提供され、触媒は、ナノ構造成長プロセスのために構成される。好適には、ナノ構造は触媒上に成長する。別の言い方をすると、触媒が設けられていない基板上の領域にはナノ構造は成長しない。
【0010】
好適には、ナノ構造は基板の表面に垂直に成長するが、特定の角度でナノ構造を成長させることも想定される。特には、傾いたナノ構造は、例えば、基板に対する傾斜形状を有する触媒を提供すること又は異なる方法によって成長し得る。
【0011】
好適には、格子パターンは長手方向格子要素を備え、これらは細長状であるか又は平行であるかの少なくとも一方である。格子パターンは、当業者にとっての格子の全ての認識を含むことを意図され、全体的な触媒及び基板が、並びに、更に触媒及び基板の副構造のみが格子パターンの形態で提供され得る。
【0012】
好ましい実施形態において、ナノ構造は、X線吸収材料よりも低いX線吸収度を有する材料、特には、X線吸収材料のX線吸収度よりも少なくとも2倍低いX線吸収度を示す材料を使用して成長する。
【0013】
好適には、X線吸収度における差は、例えば、暗視野又は位相コントラスト撮像における位相格子に適した干渉パターンの生成、及び、例えば、これらの用途におけるいわゆるアナライザ格子に関する強度変化の生成を可能とする。X線吸収度という語は、当技術分野において一般的に適用可能な意味を有する。特には、X線吸収度を比較するとき、好適には、特定のエネルギー又は波長のX線吸収度が比較される。より好ましくは、構造化格子の用途のために使用される全てのエネルギー又は波長のX線吸収度が比較される。それ故、最も好ましくは、ナノ構造は、構造化格子が意図される全エネルギー範囲にわたってX線吸収材料よりも著しく低いX線吸収度を有する。
【0014】
好ましい実施形態において、ナノ構造はカーボンナノチューブ(CNT)を含み、又はカーボンナノチューブから成る。CNTは、その特性、特にはX線吸収に関する特性により、本発明によるナノ構造として特に適している。更に、CNTは、高い安定性で高いアスペクト比まで成長し得る。この実施形態によると、単一壁CNT,二重壁CNT,及びこれらの組み合わせなどの全ての種類のCNTが想定される。CNTは垂直CNTであることが好ましい。
【0015】
好ましい実施形態において、方法は、X線吸収材料を使用してトレンチを充填するステップの前に、不活性化層を付与するステップを更に有する。好適には、不活性化層は、X線吸収材料によってトレンチを充填するステップを補助し、従って、好適には、ナノ構造の壁部を実質的に全体的に覆う。より具体的には、例えば電気めっき法を介してX線吸収材料によって充填するステップでは、電気めっきがトレンチの底部から上部へのみ施され、側壁すなわち壁部からは施されないようにするために不活性化層が隔離材料として必要とされる。さもなければ、空洞を作らずに完璧に充填することは不可能であろう。
【0016】
好ましい実施形態において、CNTは、付与される不活性化層とともに、ナノ構造と称される。
【0017】
好ましい実施形態において、不活性化層を付与するステップは、化学蒸着法、特には原子層蒸着法(ALD)のステップを有する。
【0018】
化学蒸着法、特にはALDは、基板上に材料の薄い層を蒸着するよく知られた方法である。有利には、ナノ構造の全ての壁部をそれぞれ覆う実質的に均一な厚さが達成される。用いられる方法のため、不活性化層の付与は、トレンチ内の定められた深さにおいて付与が停止され、好適には導電性であり、故に、上に付与される不活性化層によって絶縁されない基板を不活性化層が覆わないようにするために、正確に制御され得る。いくつかの実施形態において、導電性は、電気めっき法を含む方法のためなどに、X線吸収材料によってトレンチを充填するステップのために必須であり得る。更に、不活性化層を定められた厚さで停止させるために浸潤が正確に制御され得る。
【0019】
好ましい実施形態において、不活性化層は、基板から規定の距離に付与され、特には、2μm未満の距離に付与される。故に、ナノ構造を還元又は酸化から確実に保護しつつ、基板の電気接続性が維持され得る。
【0020】
好適には、不活性化層において用いられる不活性化材料は、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化チタン(TiO2)及びシリカ(SiO2)のうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
好ましい実施形態において、トレンチを充填するステップは、電気めっき法のステップを有する。
【0022】
トレンチを充填するために電気めっき法を使用することは、X線吸収材料によって、確実に及び完全に、すなわち空洞を有することなくトレンチを充填するという利点を有する。基板は導電性であるので、電気めっきプロセスのための一方の電極として用いることができる。好適には、電気めっき法のために使用されるX線吸収材料は、少なくとも1つのX線吸収金属を含み、より好ましくは、金(Au)、鉛(Pb)及びビスマス(Bi)のうちの少なくとも1つを含むが、他の元素、合金、又はそれらの組み合わせも同様に用いられてよい。いくつかの実施形態において、トレンチにおけるX線吸収材料の充填の高さは、理論の時間を調節することによって定められ得、格子が完全に充填されないが、CNT構造よりも低い一定のレベルちょうどまで充填されることが非常によい。
【0023】
好ましい実施形態において、トレンチを充填するステップは、機械的充填ステップであって、特には機械的応力及び高温度を使用した加圧下での機械的充填ステップを有する。
【0024】
この充填方法は電気めっき法に頼らないので、不活性化層が設けられる必要はなく、故に、製造方法のステップの数及び複雑性を全体として低減することを可能とする。トレンチを機械的に充填する同等の方法が、例えば、Lei,Yaohuらによる「Improvement of filling bismuth for X-ray absorption gratings through the enhancement of wettability.」Journal of Micromechanics and Microengineering 26.6(2016):065011において公開されている。
【0025】
しかしながら、更に、この実施形態において、ALDを含む不活性化ステップが有利に追加的に用いられ得る。隔離又は不活性化を目的とする代わりに、この実施形態においては、ナノ構造、例えばCNT構造のために特に湿潤性が重要であり、不活性化ステップは湿潤性の向上をもたらし得る。
【0026】
好ましい実施形態において、トレンチを充填するステップは、
バインダ物質に埋め込まれた金属粉末によってトレンチを充填するステップと、
トレンチの固体充填を達成するためにバインダ物質を焼成するステップと
を有する。
【0027】
最終製造物においてトレンチ内の金属の高い密度と、特には、高い充填率とを得るために、金属粉末は、好適に細かく、例えば、直径の平均が25ミクロン未満である。好適には、粉末粒子の平均サイズは、5ミクロン未満など、更により小さい。故に、トレンチ内での高充填効率因子が達成され得る。
【0028】
好ましい実施形態において、トレンチを充填するステップは、成長したナノ構造を使用して格子構造を刻印するステップを有する。
【0029】
格子構造を刻印するこの実施形態による代替的な方法は、材料系の機械的特性に応じて有利に適用され得る。手法が異なるが同様の考え方が、例えば、Yashiro,Wataruらによる「A metallic glass grating for x-ray grating interferometers fabricated by imprinting.」Applied Physics Express 7.3(2014):032501によって説明されている。
【0030】
好ましい実施形態において、アスペクト比は、壁部の厚さに対する壁部の高さの比として定められ、ナノ構造を成長させるステップは、アスペクト比が少なくとも5、特には少なくとも10、好適には15になるまで実施される。
【0031】
壁部の高さによって、基板の表面に垂直な方向における壁部の延在が定められる。更に、壁部の厚さは、壁部の長手方向への延在に実質的に垂直な方向における延在として定められる。好ましくは、壁部の長さ及び厚さは、基板の表面に実質的に平行な平面にわたり、高さはこの平面に実質的に垂直である。ナノ構造の全ての壁部は、高さ及び/又は厚さが等しくてよく、又は異なる壁部が異なる高さ及び/又は厚さをそれぞれ有してもよい。他の実施形態において、格子にわたってデューティサイクルが異なることも有利であり得る。高さ及び/又は厚さが異なる場合には、この実施形態によるアスペクト比は、最も低いアスペクト比として、すなわち、最も大きい厚さと最も小さい高さを有するものとして理解される。
【0032】
好ましい実施形態において、壁部の厚さ及びトレンチの厚さは、およそ等しい。故に、壁部及びトレンチの間で厚さにおける差が著しいことが保証され得、このことは、例えば、干渉パターンのノイズの増加、又はX線吸収の減少につながる。
【0033】
この出願のコンテキストにおいて、「およそ」とは、近似される値のプラスマイナス30%の範囲を指す。それ故、壁部の厚さ及びトレンチの厚さは等しくなり得、又は、2つの値のうちの一方がそれぞれの他方の厚さの30%だけより小さく/大きくなり得る。好適には、壁及びトレンチの厚さは、格子構造全体にわたっておよそ一定である。好適には、壁部及び/又はトレンチの厚さの差異は、平均厚さのそれぞれ10%未満であり、更に好ましくは5%未満である。
【0034】
好ましい実施形態において、基板は、少なくとも100cmの表面を備え、好適には、少なくとも43cm×43cmである。
【0035】
ナノ構造成長のプロセス、特にはCNT成長のプロセスは、広い面積においてトレンチ壁構造の生成を可能とするので、この実施形態による方法は、一回の処理ステップにおいて、全体的な検知器フィールド、すなわち43cm×43cm、をカバーする格子の製造を可能とし得る。それ故、複数の格子が必要とされる場合に、隣接する格子の間の接合部におけるアーチファクトなどが生じないので、撮像品質が向上される。更に、一回の製造ステップにおいて1つのコンポーネントしか必要にならないので、製造コストが低減され得る。
【0036】
好ましい実施形態において、基板は、基板の副エリアの形成を可能とするタイル状の構造を備える。
【0037】
基板がタイル構造を備えるので、歩留まり及び均一性に応じて、構造化格子コンポーネントを屈曲及び/又は集束させるために副エリアの形成が有益であり得る。
【0038】
好ましい実施形態において、方法は、X線源のコーンビーム、すなわち設定の幾何学的形状へと調節するように、格子構造を屈曲させるステップを更に有する。
【0039】
好ましい実施形態において、格子構造を屈曲させるステップは、機械的フレーム設定を使用して実施される。
【0040】
使用において、特には暗視野X線撮像/位相コントラスト撮像のためのシステム内での使用において、構造化格子は典型的には検知器の前に装着され、X線源と検知器との間の距離は2メートルを超える。故に、X線源の焦点スポットポイントの方向における格子表面の集束が必要とされる。好適には、本発明のいくつかの実施形態によると、集束された幾何学的形状に到達するために、トレンチ内にX線吸収材料が既に充填された完全に処理された構造が屈曲される。このプロセスフローは、「最後に集束する」プロセスフローとも称され得る。もちろん、異なるプロセスフロー、すなわち、トレンチを充填する前に集束が行われるプロセスフロー、異なるステップの順序も想定されることが、想定されるべきである。
【0041】
好ましい実施形態において、基板上に触媒を提供するステップは、
少なくとも導電性表面を有する基板を提供するステップと、
基板上に触媒を蒸着するステップと、
リソグラフィ及びエッチングを使用して、触媒上に格子パターンを作り出すステップと
を有する。
【0042】
この実施形態によると、基板上の触媒の幾何学的形状の作成がより詳細に説明される。副層又は触媒の蒸着に続いて、当技術分野においてよく知られたリソグラフィ又はエッチング技術を使用して、幾何学的格子パターンが使用可能な技術を使用して取得される。
【0043】
更なる態様によると、構造化格子コンポーネントが提供される。構造化格子コンポーネントは、
基板と、
基板上の格子パターンを有する触媒と、
格子パターンに基づいて壁部及びトレンチを形成する基板上のナノ構造と、
ナノ構造の壁部の間のトレンチを充填するX線吸収材料と
を備え、
ナノ構造はカーボンナノチューブ(CNT)を含む。
【0044】
この態様による構造化格子コンポーネントは、暗視野撮像又は関連するプロセスに特に適しているが、この用途に限定されるものではない。提供されるナノ構造は、壁部とその間のX線吸収材料によって充填されるトレンチとを形成するので、単純な構造を有する効果的な構造化格子が提供される。CNTなどのナノ構造は、広い面積の基板上での製造を可能とするので、この態様による構造化格子コンポーネントは、X線撮像システムに適した全視野格子を含むものなど、大きな表面を有し得る。この態様による構造化格子コンポーネントによって解決される主な問題は、大きな面積であるが、トレンチ/幾何学的形状の非常に高いアスペクト比を有する格子の非常に細かな構造化も、CNTを含む成長したナノ構造によって解決される。
【0045】
この態様による構造化格子コンポーネントは、位相格子及びアナライザ格子のどちらとしても用いられ得る。好適には、構造化格子コンポーネントはアナライザ格子として用いられ、種々の有益さの中でもとりわけ、ノイズが低減された分析につながるので有益である。
【0046】
好ましい実施形態において、構造化格子コンポーネントは、X線吸収材料とナノ構造との間に配置された不活性化層を更に備える。
【0047】
好ましい実施形態において、不活性化層は、Al2O3、TiO2及びSiO2のうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
好ましい実施形態において、基板は、X線吸収材料と直接的に接触する。
【0049】
X線吸収材料によってトレンチを充填するための電気めっき法プロセスを可能とするために好適には導電性である基板は、故に、ナノ構造を保護する不活性化層が付与されるにもかかわらず、導電性であることを維持される。好適には、不活性化層はトレンチに進入し、ナノ構造の全ての壁部及び表面を覆うが、接地基板を覆う前に、不活性被膜が停止する規定の距離、例えば2ミクロンよりも小さな距離、が維持される。例えばALD技術を適用することによって、不活性化層の正確な制御が達成され得る。
【0050】
好ましい実施形態において、ナノ構造は、2つの隣り合うトレンチ壁部を接合する支持要素を備える。支持構造は構造化格子コンポーネントの機械的安定性を向上させる。
【0051】
好ましい実施形態において、支持要素は、壁部の2つの対向する側部に、長手方向の異なる位置においてそれぞれ設けられる。故に、構造化格子コンポーネントの機械的安定性が更に増加され得る。同時に、構造化格子が位相格子である場合に、格子パターンの壁部の延在方向に垂直な方向における干渉パターンが低減され得る。同様に、構造化格子がアナライザ格子である場合、支持要素によって誘起される背景ノイズが低減され得る。最後に、同一の壁部をそれぞれ接合する2つの支持要素が、壁部の方向に沿って、2つの隣り合う壁部の間の距離より著しく大きな距離、例えば、壁部の間の距離の4倍、好ましくは10倍よりも大きな距離を有することが好ましい。
【0052】
好ましい実施形態において、基板は、導電性シリコンを含む剛性基板と、ニッケルフォイル、銅フォイルを含む導電性フォイルとのうちの少なくとも1つを備える。
【0053】
好ましい実施形態において、基板が剛性基板を備える場合、基板はめっきベースを備え、めっきベースは、特には、元素Cu、Ni、Auのうちの少なくとも1つを含む。
【0054】
好ましい実施形態において、基板は、元素Cu、Ni、Auのうちの少なくとも1つを含む。
【0055】
好ましい実施形態において、X線吸収材料は、元素Au、Pb、Biのうちの少なくとも1つを含む。
【0056】
更なる態様において、撮像システム、特にはX線位相コントラスト又は暗視野撮像システムが提供される。撮像システムは、本発明の態様による構造化格子コンポーネントを備える。
【0057】
請求項1の方法、請求項10の構造化格子コンポーネント及び請求項14の撮像システムは、特には従属請求項において定められるように、類似の及び/又は同一の好ましい実施形態を有することが理解されるべきである。
【0058】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせでもあり得ることが理解されるべきである。
【0059】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、それらを参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1A-1F】本発明による方法のステップを概略的及び例示的に示す図である。
図2】充填されていない構造化格子コンポーネントの上面図を概略的及び例示的に示す図である。
図3】構造化格子を通って切り取られた断面の透視図を概略的及び例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1Aから図1Fは、本発明による構造化格子を製造する方法の様々なステップを概略的及び例示的に示す。
【0062】
図1Aにおいて示されるように、ステップ110において、基板20は、その表面上に触媒30を備える。基板20は、めっきベースを有する導電性シリコンのような剛性基板であり得、例えば、Cu、Ni、Auを含み、触媒30は、カーボンナノチューブ(CNT)などの以下に説明されるナノ構造50の成長プロセスのための副層を形成する。基板20は、ニッケルフォイル、銅フォイルなどを含む導電性フォイルであってもよく、又はこれを含んでよい。
【0063】
図1Bにおいて、格子構造を有する、すなわち触媒30がそれによってパターン化される幾何学的構造を備えるフォトマスク40を付与するリソグラフィステップ120が適用される。
【0064】
図1Cにおいて概略的及び例示的に示されるエッチングステップ130において、フォトマスク40によって覆われていない触媒30の全ての部分が除去又はエッチングされるように構成部に光が当てられる。ステップ110から130は、基板20上での格子パターンを有する触媒30の幾何学的形状の作成と要約され得る。
【0065】
図1Dにおいて、触媒30上にナノ構造50を成長させるステップ140が、概略的及び例示的に示される。壁部52と、2つの隣り合う壁部52の間に位置するトレンチ54とがこのように形成される。壁部52は、触媒30の上に、この目的のために設けられた格子バターンに基づいて成長する。
【0066】
好適には、ナノ構造50は、カーボンナノチューブ(CNT)を含み、又はカーボンナノチューブから成る。故に、成長ステップ140は、具体的には、CNTの成長のために適合される。CNTは、非常に高いアスペクト比、すなわち、壁部52の高さ55に対する厚さ53の非常に高い比での壁部52の蒸着及び成長をそれぞれ可能とする。格子パターンは、厚さ53が2つの隣り合う壁部52の間の距離57におよそ対応するように形成される。
【0067】
図1Eは、X線吸収材料によって充填するための構造を作成する任意選択的なステップ150を概略的及び例示的に示す。より具体的には、不活性化層60が付与され、これは壁部52の側面及び壁部52の上側におけるナノ構造50の浸潤を含む。例えば、不活性化層60は、原子層蒸着法(ALD)又はこれと同等の技術を使用して付与される。浸潤は定められた深さにおいて停止するように正確に制御され、壁部52の側壁部の不活性化層60は、トレンチ54の基底部を覆う前に、故に基板20に接触する前に、基板20から規定の距離、好ましくは2ミクロンよりも小さな距離において停止するように正確に制御される。故に、基板20の電子的特性及び導電特性が不活性化層60によって妨害されることはない。
【0068】
図1Fは、X線吸収材料70を使用してナノ構造50の壁部52の間のトレンチ54を充填するステップ160を概略的及び例示的に示す。ステップ160におけるトレンチ54を充填するステップの複数の代替例は、以下に説明される。
【0069】
不活性化層60の不活性化材料は、好適には、Al2O3、TiO2及びSiO2のうちの少なくとも1つを含む。
【0070】
ステップ160は、好適には、電気めっき法のステップを有する。電気めっき法は、X線吸収材料70による完全で信頼性の高いトレンチ54の充填を可能とする。
【0071】
ステップ160のための電気めっき法に対する代替例としては、上に挙げたLeiらによる2016年の記事において説明されているような機械的応力及び高温度を使用した加圧下での機械的充填がある。なおも更なる手法としては、例えばバインダマトリクス内の金属の細かい粉末を使用してステップ160においてトレンチを充填する手法があり、X線吸収材料70によるトレンチ54の固体充填を達成するために、バインダマトリクスは最後には焼成される。ステップ160の更なる代替方法としては、格子構造の刻印のためのナノ構造50の使用がある。この代替例は、材料系の機械的特性に依存する。この方法とは手法が異なるが同様の考え方が、上に挙げたYashiroらによる2014年の記事によって説明されている。
【0072】
X線吸収材料70は、例えば、Au、Pb、Bi、又はこれらの任意の組み合わせ若しくは合金を含む。特には、X線吸収材料70の組成は、意図される用途のために最も好ましいX線吸収度を有するために選ばれ得る。
【0073】
ステップ150は、トレンチ54を充填するためのステップ160の実施態様として電気めっき法が用いられる場合、厳密に必要とされる。ステップ160の代替的なバージョンにおいては、ステップ150の不活性化は、全ての実施態様のために必要とされるものではない。いくつかの実施例において、これらの方法では、それぞれの材料特性の差に起因する充填の不良を回避するために、X線吸収材料70を形成する充填材料によってナノ構造50の湿潤性を保証することの方がより重要である。従って、ステップ160における電気めっき法以外の他の充填の方法のために、ステップ150は、追加的に又は代替的に、それぞれのナノ構造50の湿潤性を向上させるために、ナノ構造50の全体にわたる任意選択的なナノ層の蒸着を用い得る。
【0074】
ステップ160においてトレンチ54を充填した後、構造化格子コンポーネント1の製造は完了する。
【0075】
図2は、図1Aから図1Fにおいて説明された方法の結果に対応する構造化格子コンポーネント1の上面図を概略的及び例示的に示す。複数の長手方向の平行な壁部52が、図2においては垂直方向として示されている方向に延在していることが分かる。X線吸収材料70は、それぞれの壁部52の間のトレンチの中に示されている。壁部52の延在方向に沿ったそれぞれ異なる位置に支持要素58が設けられ、隣り合う壁部52を接合し又は繋げている。故に、構造化格子コンポーネント1の機械的安定性が増加される。
【0076】
好適には、壁部及びトレンチの厚さはそれぞれ、1から10ミクロンの範囲であり、好ましくは7から9ミクロンの間であり、標準的又は平均的厚さからの誤差は、好適には、10%未満である。故に、壁部及びトレンチの厚さは、およそ一定であると見なされてよい。
【0077】
図3は、基板20上で垂直方向において壁部52及びトレンチ54が延在する様子が見られるように、構造化格子コンポーネント1を透視断面図において概略的及び例示的に示す。壁部52の高さ55は、それらのそれぞれの幅又は厚さよりも大きく、アスペクト比は5よりも大きく、好ましくは10より大きく、最も好ましくは少なくとも15である。
【0078】
このような構造化格子コンポーネント1をX線撮像システムに一体化するために、基板20は、好ましくは、焦点を焦点スポット距離に一致させる定められた半径に屈曲され得る。好適には、基板20は、図1に関して説明された方法によって構造化格子コンポーネント1を製造した後で屈曲され得、基板20とフォトマスク40との間の界面における底部層の安定的な構造が屈曲を補助する。
【0079】
電気めっき法又はトレンチ54をX線吸収材料70で充填する任意の他の方法を含む浸潤及びステップ160は、最適化手法に応じて機械的界面を安定化させる。好適には、基板20は、機械的フレーム設定を使用して屈曲され得る。いくつかの実施例において、基板20は、副エリアを形成するようにタイル状にパターン化もされ得、副エリアは個々に屈曲のために使用され得る。
【0080】
上述された本発明による概念の主な焦点は医療用X線撮像、特には位相コントラスト撮像及び暗視野撮像であるが、発明的な概念の他の使用ケースは多岐にわたる。医療用撮像の他に、発明的概念の適用は、例えば非破壊試験(NDT)においても有益である。
【0081】
特許請求された発明を実践するにあたって、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、開示された実施形態に対する他の変形例が、当業者によって理解及び実行され得る。
【0082】
特許請求の範囲において、「備える、含む、有する」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は、複数を排除するものではない。
【0083】
単一のユニット又はデバイスが、請求項に記載されたいくつかのアイテムの機能を完遂し得る。特定の手段が互いに異なる従属請求項において記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0084】
特許請求の範囲における任意の参照記号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3