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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】再閉鎖可能な創傷被覆材
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
A61F13/02 310M
A61F13/02 310D
A61F13/02 310J
A61F13/02 380
A61F13/02 390
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021538482
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 US2019069168
(87)【国際公開番号】W WO2020142570
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/786,943
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/786,975
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/865,657
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/865,681
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/865,753
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521286695
【氏名又は名称】クリッパート, ジェフ
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】特許業務法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】クリッパート, ジェフ
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5562107(US,A)
【文献】米国特許第4399816(US,A)
【文献】米国特許第5722943(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0019602(US,A1)
【文献】米国特許第4884563(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0238932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再閉鎖可能な創傷被覆材であって、
患者の皮膚に付着するように機能し得るベース層であって、前記ベース層は、その穴を通じて前記患者の傷へのアクセスを可能とする事前形成開口部を形成する、ベース層と、
カバー層であって、通常の使用の間、前記カバー層が前記ベース層から分離しないように前記ベース層に恒久的に接着する第1の接着領域を有する、カバー層と、を備え、
前記カバー層は、前記ベース層に取り外し可能に結合するように構成された第2の接着領域を有し、
前記カバー層は、前記ベース層内に形成された前記事前形成開口部を覆うように構成されており、
前記ベース層及び前記カバー層は、実質的に類似の柔軟性と伸縮性を有する材料から形成されており、
前記カバー層は、前記第1の接着領域と前記第2の接着領域とを含む第1の接着層を備え、
前記カバー層は、前記第1の接着層に付着した内部フィルムと、前記第1の接着層とは反対側で前記内部フィルムに付着した第2の接着層と、前記内部フィルムとは反対側で前記第2の接着層に付着した上部フィルムと、を更に含み、
前記カバー層は、前記上部フィルムと前記第2の接着層との間に位置するタブ層と、前記タブ層と前記上部フィルムとの間に位置するタブ接着層と、を更に含む
創傷被覆材。
【請求項2】
前記ベース層はポリウレタンであり、前記カバー層は熱可塑性ポリウレタンである、請求項1記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項3】
日付・被覆材交換管理システムを更に含み、前記日付・被覆材交換管理システムは、前記ベース層に付着するように構成された被覆材部分と、複数のパッキン交換ステッカーを含むパッキン部とを備える、請求項1記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項4】
前記第1の接着領域が前記ベース層に恒久的に接着される場合、ヒンジとして機能し得る、請求項記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項5】
前記第1の接着領域はアクリル系接着剤を含み、前記第2の接着領域はシリコーン接着剤を含む、請求項記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項6】
前記カバー層は、前記第1の接着層に付着した剥離フィルムを更に含む、請求項記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項7】
前記上部フィルムは透明である、請求項記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項8】
前記上部フィルムは少なくとも1つのリフトタブを含む、請求項記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項9】
前記少なくとも1つのリフトタブは2つのリフトタブを含む、請求項記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項10】
前記上部フィルム及び前記タブ層は、少なくとも1つの方向に前記内部フィルムを超えて延在する少なくとも1つのリフトタブを含む、請求項記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項11】
前記少なくとも1つのリフトタブは2つのリフトタブを含む、請求項10記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項12】
前記ベース層の前記事前形成開口部に相当する凹部が形成されるまで前記第1の接着層が前記上部フィルムの縁部から内方へ延在する、請求項記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項13】
前記カバー層は透明である、請求項1記載の再閉鎖可能な創傷被覆材。
【請求項14】
創傷被覆材の製造方法であって、
ベース層を形成する工程であって、
ベースフィルムを準備することと、
前記ベースフィルムに開口部を形成することと、
前記ベースフィルムの第1の側に接着層を形成することと、
前記ベースフィルムの、前記第1の側とは反対側の第2の側に剥離紙を付着させる、こととを含む、ベース層を形成する工程と、
前記ベースと実質的に類似の素材のカバー層を形成する工程であって、
上部フィルムを準備することと、
前記上部フィルムの、前記ベース層に最も近い側に上部フィルム接着層を形成することと、
内部フィルムを前記上部フィルム接着層に恒久的に接着することと、
2つの部分を含む内部フィルム接着層を形成することと、を含む、前記カバー層を形成する工程と、
前記カバー層の少なくとも一部分を、前記2つの部分のうちの1つを介して前記ベースフィルムに恒久的に接着する工程と、
前記カバー層の少なくとも一部を、前記2つの部分のうちの別の1つを介して前記ベースフィルムに離脱可能に付着させる工程と、
前記上部フィルムと前記上部フィルム接着層との間に、タブフィルム接着層によって接着されたタブ層を配置する工程と、を含む
創傷被覆材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
米国特許商標庁に2018年12月31日に出願された米国仮出願第62/786,943号、米国特許商標庁に2018年12月31日に出願された米国仮出願第62/786,975号、米国特許商標庁に2019年6月24日に出願された米国仮出願第62/865,657号、米国特許商標庁に2019年6月24日に出願された米国仮出願第62/865,681号、及び米国特許商標庁に2019年6月24日に出願された米国仮出願第62/865,753号に基づく利益を主張し、これらの各出願の全内容は、全ての目的のために参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
創傷被覆材は傷を覆って外部環境からの感染を防ぐ。創傷被覆材は、清浄で滅菌された傷と、外部環境における細菌、水分、及び/又は粒子との間に障壁を形成する。そのようにして、合併症を併発することなくその傷を完全に治癒することができる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】再閉鎖可能な創傷被覆材を利用することができる例示的な環境の図である。
【0004】
図2A】閉鎖された構成における再閉鎖可能な創傷被覆材の図の一例である。
【0005】
図2B】部分的に解放された構成における、図2Aの再閉鎖可能な創傷被覆材の図の一例である。
【0006】
図3】再閉鎖可能な創傷被覆材の一例の組立分解等角図である。
【0007】
図4】再閉鎖可能な創傷被覆材の別の一例の組立分解等角図である。
【0008】
図5】再閉鎖可能な創傷被覆材の別の一例の図である。
【0009】
図6図5の再閉鎖可能な創傷被覆材のカバー層の一例の組立分解等角図である。
【0010】
図7】再閉鎖可能な創傷被覆材の日付・被覆材交換管理システムの図の例である。
図8A】再閉鎖可能な創傷被覆材の日付・被覆材交換管理システムの図の例である。
図8B】再閉鎖可能な創傷被覆材の日付・被覆材交換管理システムの図の例である。
【0011】
図9】再閉鎖可能な創傷被覆材を使用する方法の一例のフローチャートである。
【0012】
図10】再閉鎖可能な創傷被覆材を製造する方法の一例のフローチャートである。
【発明の詳細な説明】
【0013】
傷は二次感染の重大なリスクをもたらす可能性がある。そのためその傷を創傷被覆材料で被覆することにより、傷の滲出液を吸収したり、痛みを減らしたり、細菌の増殖を防ぐことで傷を治療する。従来、裏面粘着式テープ又はフィルムは、異なる多くの素材のフォーム又は非フォームの創傷被覆材と組み合わせて使用される。これらのフィルム及び/又はテープは傷を覆うように貼られたり、他の追加の創傷被覆材料の上に貼着され、傷の周りの皮膚表面に粘着剤で固定されたりする。一部のシナリオにおいては、傷を被覆する従来のフォーム及び/又は非フォームのパッドを、患者の皮膚にまだ付着している被覆材の周囲を残しながら、まっすぐな刃や他の切断器具でパッドの周囲のフィルム被覆材をカットすることにより交換することができる。次にフォーム又は非フォームのパディングを交換し、元のフィルム被覆材の上部に追加のフィルム被覆材を積層して密閉させる。陰圧閉鎖療法(NPWT)が用いられる場合、新しく貼付されたフィルム被覆材に穴をあけ、この穴の中又は上に高圧チューブを置き、そのチューブが通せる粘着性パッドによってその場所にチューブを固定する。
【0014】
しかしながら、従来の慣行においては、患者から被覆材を切り離すのに鋭利な切断器具を用いなければならない。鋭利な切断器具を用いるステップを更に行うことによって、その患者や介護者にさらに怪我を負わせるリスクが追加されるおそれがある。別の懸念点は、一次フィルムの上に追加のフィルムを積層することによって、傷を治癒する水分微小環境を直接制御する被覆材の透湿度(透湿度)が減少し得るということである。被覆材の透湿度が顕著に減少すると皮膚の呼吸能力に大きく影響を与えるおそれがあり、それによって今度は傷の周囲の組織が浸軟したり、被覆材中に余分な水分が閉じ込められたりしてそれにより傷そのものが治癒しにくくなるなど、追加のリスクを抱えることになる。
【0015】
傷は、排液、目視検査、フォーム又は非フォームのパッキンの交換、及び/又は他の理由(例えば陰圧適用のための被覆材の交換等)のために、一日ごと又は一時間ごとにアクセスすることが求められる場合がある。傷にアクセスするためには、従来であれば皮膚から粘着フィルム又はテープを除去して傷を曝露する。傷にアクセスするためにこれらの粘着フィルム及び/又はテープを繰り返し取り外したり、且つ/又は剥がしたりすると、軽度のものから非常に重度のものまで皮膚に刺激を与えて、中には皮膚が完全に裂けたり剥がれたりする場合もある。特に高齢者や重傷患者においてはそのようなことが起こりやすい。
【0016】
従来、傷の部位はアクセスするごとに再被覆しなければならず、治癒を促進して傷を感染から保護するために新しい被覆材を貼って傷を覆わなければならない。取り外しと再被覆の作業を行うためには、在宅医療提供者に毎日訪問してもらう必要があることも多く、傷の周囲の皮膚が更に巻き添えのダメージを受けるのを避けるために、傷の外縁に多大な注意を払いながら非常に時間のかかる作業を行わなければならない。このような被覆材の交換は非常にコストがかかるおそれがあり、健康管理において継続的なコストの上昇につながり得る。加えて、このような従来のフィルム被覆材の取り外しに伴うコスト面での懸念及び不安を考慮して、この被覆材の交換間隔を延ばそうとする傾向が高まっており、そのために標準的な治療が損なわれて、それによる二次感染のリスクも高まる傾向にある。
【0017】
本明細書において開示されるのは、患者の皮膚に付着するように機能し得るベース層を備えた、再閉鎖可能な創傷被覆材である。ベース層は、それを通じて患者の傷にアクセス可能な事前形成(pre-fabricated)開口部を形成する。したがって、この開口部があれば、患者及び/又は介護者が受け取った時点で創傷被覆材が既に開口部を有していることから、傷に貼り付ける前に患者や介護者が被覆材のベース層をカットする必要がなくなる。ベース層中の事前形成開口部により、従来の慣行では穴を開けるのに用いられていた鋭利なナイフや刃を挿入することによる、患者と介護者の両方の怪我のリスクが減少する。
【0018】
カバー層がベース層と連結されており、事前形成開口部を覆うように機能し得る。カバー層は、第1の部分と第2の部分を形成する複数の側(side)を有し得る。第1の部分は、カバー層の複数の側のうち、ベース層に恒久的に接着されて通常の操作の間はカバー層がベース層から分離することを防ぐように機能し得る、少なくとも1つの側を含み得る。第2の部分は、カバー層の複数の側のうち、ベース層と分離可能に結合されるように機能し得る2以上の側を有し得る。通常の操作には、ベース層上でカバー層を開閉することが含まれる。一例においては、ヒンジとして作用するカバー層の1つの側は、ベース層と恒久的に接着されて、複数の側のうちの上記1つの側がベース層から分離するのを防ぐ。別の例においては、カバー層の1つの側はベース層と共成形されている。更に別の例においては、カバー層の1つの側はベース層に振動溶接されている。この説明では恒久的に接着された構造について言及しているが、本開示は上述のどの構造も含むことができる。少なくとも1つの例において、接続を恒久的な接着として説明する場合、恒久的に接着された部分をベース層から取り外すのに必要な力は、分離可能に結合された部分をベース層から取り外すのに必要な力の少なくとも2倍であり得るシナリオについて述べる。さらに別の例においては、恒久的に接着されているものとして説明される接続とは、恒久的に接着された部分をベース層から取り外すのに必要な力が分離可能に接合された部分をベース層から取り外すのに必要な力の10倍を超えることもあり得るシナリオのことをいう場合もある。ベース層に接着された1つの側により、ベース層に対するカバー層の残りの部分の接着と位置合わせが容易となり、例えばしわを生じることなく、且つ/又は事前形成開口部を通じて露出された傷と接着剤が触れることなしに接着や位置合わせを容易に行うことができる。カバー層は、持ち上げられて傷を露出し、ベース層上に置き直して密封状態を形成し傷を保護することを繰り返してもよい。
【0019】
少なくとも1つの例において、ベース層とカバー層は、実質的に類似の素材からなるものであってもよい。例えば、上記素材は、実質的に類似の柔軟性及び/又は伸縮性を有していてもよい。しかしながら、上記素材は同じタイプの素材からなるものである必要は無い。少なくとも1つの例において、カバー層とベース層の素材は3種類のフィルムと2種類の接着剤を含んでもよい。
【0020】
ベース層はランディングゾーンを含んでいてもよい。ランディングゾーンは事前形成開口部の縁部間に延在し、事前形成開口部を囲み、ベース層の最外縁部に向かって一定の距離に広がる。ランディングゾーンは、カバー層をベース層に貼り付けるのに好ましい領域である。カバーの周囲は事前形成開口部の周囲よりも大きく、そのためカバー層がベース層上に置かれたときに傷が露出しない。カバー層がベース層上にある場合、カバー層の周囲はランディングゾーン内に配置されている。一部の例においては、ランディングゾーンは事前形成開口部からベース層の最外縁部までの距離の約20%~約65%の距離に広がる。一部の例においては、ランディングゾーンは事前形成開口部からベース層の最外縁部までの距離の約50%の距離に広がる。
【0021】
ベース層上に設けられた所定のランディングゾーンに対してカバー層を繰り返し持ち上げて置き直すことができることによって、ベースフィルムの全ての縁部とカバー層の持ち上げ可能な縁部(1以上のリフトタブを含んでいてもよい)との間に一定の十分な余白(マージン)が得られる。以前の設計においては必要であった手作業による切断プロセスを行うと、これらのフィルムの非常に薄く脆い特性により、手作業による切断プロセスの間に縁部が不均一になったり、フィルムが裂けたりするおそれが高まる。従来、アクセス窓を手作業でカットすると、カバー層の接着剤縁部と、ベース層の、手作業で切断された縁部との間に、一定しない不十分な余白(マージン)が形成され、その結果、カバー層とベース層の位置がずれる。従来のカバー層の縁部の、ベース層の一定しない縁部への位置合わせ及び位置決めが不正確になることによって、創傷被覆材の効果を妥協することになり得る。そして、従来の創傷被覆材では傷に対して100%閉鎖されたバリアを維持することは難しく、そのため従来の創傷被覆材は臨床的に問題がある。
【0022】
さらに、上述した通り、ベース層とカバー層とは、素材の柔軟性と伸縮性が実質的に同等である点で類似の素材からなっていてもよい。更に、カバー層は上部フィルムと内部フィルムとを含んでもよい。それらを含む場合、内部フィルムはカバー層に剛性を付与する。同様に、上部フィルムと内部フィルムは類似の素材からなるものであってもよい。少なくとも1つの例においては、内部フィルムが上部フィルムとは異なる素材ではあるが上部フィルムと同様の物性を共有するものであってもよい。少なくとも1つの例において、上部フィルムはカバー層の全体に広がっており、内部フィルムはカバー層の一部分のみを覆う。内部フィルムがベース層の事前形成開口部を覆うカバー層の領域の周囲の境界のみになるように内部フィルムが設計されていてもよい。上述のように内部フィルムが境界のみを形成する場合、ベース層と離脱可能なように設計された接着剤を含む領域において、カバー層の剛性が増大し得る。
【0023】
これらの層に対して異なる素材を使用する従来の設計とは異なり、上記再閉鎖可能な創傷被覆材は、組み立て時に使用するフィルムと接着剤の両方で類似の素材を用いる。本願の再閉鎖可能な創傷被覆材は、層を接合できると共にベース層からカバー層を取り外すことができる、特殊なアクリル系及びシリコーンゲル接着剤を使用する。ある例においては、シリコーンゲル接着剤を除去可能な接着剤用として使用し、アクリル系接着剤を恒久的な接着剤用として使用する。ベース層とカバー層との間に形成される接合は高い粘着性がありながら柔軟なものであってもよい。少なくとも1つの例において、上記接合は、そのカバー層とベース層とにより、患者に貼られたベース層からカバー層を持ち上げて置き直すことを50回までは繰り返せるような接合であってもよい。ある例においては、上部フィルムはポリエチレン(PE)などの柔軟性のあるフィルムであってもよい。
【0024】
従来の傷用カバーは、多くとも一種類の接着剤によるものであり、非類似の素材を用いてベース層とカバー層とを形成し、それによりベース層とカバー層の間の境界を形成する必要があった。従来の傷カバーにおいて用いられているような、柔軟性のない、非類似の素材に頼り、それを使用すると、皮膚の通常の運動の間にそれぞれ独立した層が一斉に動くことができず、そのためこれらの層が互いに引っ張り合うと共にその下の皮膚をも引っ張る。このことは使用者にとって不快なだけでなく、ベース層からの上層の時期尚早な開口及び分離を含む、望ましくない分離を促進する。特定の要求に応えるために、本設計において特定の接着剤を使用することにより、皮膚と調和して動き、そのため重要な機能を果たす、柔軟性と伸縮性を有する素材を使用できるようになる。本明細書で開示する創傷被覆材のために選択される素材では、素材同士が似ていることから、毎日皮膚が動く間においてさえも7日間継続的に装着してもなおデバイスの有効性が持続する。上述したとおり、素材同士が類似(似ている)というフレーズは、素材同士が、特に限定されないが、柔軟性、伸縮性、及び/又は弾性等の物性のうち1以上の類似の物性を有していることを示すために用いることができる。
【0025】
シリコーン接着剤は、湿気の多い環境下でも気密シールを保つことができ、多くの場合、望ましくない細菌が無い状態が保たれた環境下であれば、最善の治癒の機会を提供する。カバー層とベース層との間の望ましい接合を形成するのに使用される、アクリル系接着剤とシリコーン接着剤の独自の組み合わせにより剥離力が減少する。この剥離力とは、ベース層がカバー層の下側と接合したままの状態でベース層からカバー層を分離する力であって、カバー層に柔軟性のある境界を形成する力である。剥離力が減少することにより、亀裂や皮膚に対する接着性の損失によってベース層が傷み、最終的には創傷被覆材が剥がれ落ちることにもつながるリスクを伴うことなく、カバー層を繰り返し開閉することができるようになる。
【0026】
上記再閉鎖可能な創傷被覆材は、例えば、図1において示されるような例示的な環境において使用することができる。図1は、ベッド12(例えば病院のベッド)に横たわる患者10を示している。患者10は、世話と頻繁なアクセスとを必要とする傷11を負っている。なお図1は患者10の腕にある傷11を図示しているが、これは例示の目的で示すものであり、創傷被覆材100は患者10の体のどの部位にある傷11に対しても使用することができるものと理解されるべきである。更に、図1に示すような傷11の大きさは例示を意図しており、本開示から逸脱しない範囲で様々な大きさの傷に合うよう創傷被覆材100の大きさを変えることができるものと理解されるべきである。
【0027】
傷11は、再閉鎖可能な創傷被覆材100によって被覆され、保護されている。図2を参照しつつより詳しく論じるように、創傷被覆材100のカバー層106は、傷11に(例えば医療従事者14が)アクセスするために持ち上げることができ、このとき、患者10の皮膚に付着した創傷被覆材100のベース層を取り外す必要は無い。したがって、皮膚は接着層を定期的に取り外すことによる刺激を受けない。創傷被覆材100は外部環境から傷11を保護し、傷11が治癒するための清浄な空間を確保する。
【0028】
図2A及び図2Bは再閉鎖可能な創傷被覆材100の図である。創傷被覆材100は、患者の皮膚に接合されるように機能し得るベース層102を含む。例えば、ベース層102は、接着層によって患者の皮膚に接合される。図2Aに示すように、ベース層102は実質的に長方形の形状を有する。ベース層102は、ベース層102の縁部103によって形成される幅102Wと長さ102Lとを有する。少なくとも1つの例において、ベース層102は幅102Wが約18センチメートルで、長さ102Lが約22センチメートルであってもよい。本明細書で使用するように、(破線140によって図示されている)長さは、ベース層102に恒久的に接着されたカバー層106の側(辺)130の1つに対して垂直な方向をいう。(破線142によって図示されている)幅は、ベース層102に恒久的に接着されたカバー層106の側130の1つに対して平行な方向をいう。他の例においては、ベース層102の形状は正方形、円形、長円形、三角形、六角形、又は傷を覆うことができ、傷にアクセスすることができる他の任意の形状であってもよい。
【0029】
ベース層102は、それを通じて患者の傷にアクセス可能な事前加工(pre-fabricated)開口部104を形成する。事前形成開口部104を有することによって、創傷被覆材100のベース層102から手作業で窓を切り出す必要がなく、また常に一定の大きさと縁部が確保され、安全性が高まる。また、事前形成開口部104によって、手作業で切った窓が不適切な大きさ及び/又は不適切な形となって、ベース層102からの接着剤が傷にくっつかなかったり、又は傷と近くなりすぎたりすることが防げる。更に、事前形成開口部104により、創傷被覆材100の最初のサイズ調整及び配置の間、創傷被覆材100を貼る医療従事者に傷が見えるようになる。傷が見えるようにすることで、誤って切られた、捨てる必要のある創傷被覆材が出ないことから、サイズが合わなかったり、窓を切ろうとする時に失敗したりすることによる不要なゴミを削減できる。
【0030】
図2Aに示すように、事前形成開口部104は、事前形成開口部104の幅104Wと長さ104Lが同じ正方形の形状である。少なくとも1つの例において、事前形成開口部104の幅104Wは約10センチメートルであり、事前形成開口部104の長さ104Lは約10センチメートルである。他の例においては、事前形成開口部104の幅104Wと長さ104Lは同じでなくてもよく、それにより事前形成開口部104は長方形の形状であってもよい。他の例においては、事前形成開口部104の形状は円形、長円形、三角形、六角形、又は傷を覆うことができ、傷にアクセスすることができるような他の任意の形状であってもよい。さらに他の例においては、事前形成開口部104の形状は他の被覆材のガーゼパッドの利用可能なサイズに合うようにサイズを合わせることができる。例えば、ガーゼパッドは、とりわけ、4インチ×4インチ、3インチ×3インチ、及び2インチ×2インチのサイズにすることができる。したがって、本事前形成開口部104もそれに応じたサイズにすることができる。本明細書で述べる他の要素もそれに応じた大きさにすることができる。
【0031】
カバー層106は、事前形成開口部104を覆い、それにより傷が外部環境から保護され、その傷が接着剤を用いてベース層102に接合されように機能し得る。カバー層106は、周囲を形成する複数の側(辺)130を有する。カバー層106の周囲は、カバー層106が事前形成開口部104を覆うように、複数の縁部105によって形成される事前形成開口部104の周囲よりも大きい。図2Aに示すように、カバー層106は実質的に長方形の形を有する。カバー層106は、複数の側130によって形成される、幅106W及び長さ106Lを有する。少なくとも1つの例において、カバー層106は幅106Wが約15センチメートルで、長さ106Lが約18センチメートルであってもよい。他の例においては、カバー層106の形状は、正方形、円形、長円形、三角形、六角形、又は事前形成開口部104及び傷が被覆され、アクセスできるような好適な他の形状であってもよい。他の例においては、カバー層106の大きさは、事前形成開口部104より50%~70%大きくてもよい。
【0032】
少なくとも1つの例において、カバー層106は、カバー層106を取り外す必要なしに、カバー層106を通して傷を目視することができる程度に実質的に透明である。したがって、傷は外部環境の細菌や他の病原体に不必要に曝露されない。一部の例においては、カバー層106は、傷が過度の水分に曝露されないように防水性であってもよい。他の例においては、カバー層106は半透明又は不透明であってもよい。カバー層106が半透明な場合であっても、カバー層を取り外すことなく傷を監視することができる。
【0033】
ベース層102は、鎖線内の領域として図2Aに示されたランディングゾーン110を含む。ランディングゾーン110は事前形成開口部104を取り囲み、ベース層102の最外縁部103と、事前形成開口部104の縁部105によって形成される間隙の間に延在する。一部の例においては、ランディングゾーン110は、ランディングゾーン110の何れかの側のベース層102の残りの表面領域が等分されるように位置決めされる。少なくとも1つの例において、ランディングゾーン110は、事前形成開口部104からベース層102の最外縁部103までの距離の約20%~約65%である。一部の例においては、ランディングゾーン110は、事前形成開口部104からベース層102の最外縁部103までの距離の約40%~約65%であってもよい。一部の例においては、ランディングゾーン110は、事前形成開口部104からベース層102の最外縁部103までの距離の約45%~約55%であってもよい。一部の例においては、ランディングゾーン110は、事前形成開口部104からベース層102の最外縁部103までの距離の約50%であってもよい。カバー層106の複数の側130は、カバー層106の周囲がランディングゾーン110内に配置されるように、形と大きさが決められてもよい。
【0034】
カバー層106の側130を正確に配置することにより、水分や細菌が傷に入るのを防ぐ実現可能なシールを提供しつつ、患者の皮膚からベース層102が剥がれる可能性を抑制し、制限する。カバー層106の周囲がランディングゾーン110内に配置されることで、例えば図2Bに図示されるような、再閉鎖可能なカバー層106の持ち上げと分離の間にベース層102にかかる力は、ベース層102の縁部103から離れる方向に向いている。上記力がベース層102の縁部103から離れる方向に向くことにより、カバー層106が持ち上げられたときの、皮膚からベース層102の素材を剥がそうとする力のポテンシャルが減少される。更に、ランディングゾーン110内に適合するようにサイズ決めされたカバー層106は、望まない細菌と水分が入り込むことから傷を保護する実現可能なシールを形成しつつ、カバー層106の側130が、ベース層102の素材に対してシールをし、皮膚に対してはシールしないようガイドする。
【0035】
ベース層102の皮膚に優しい特性により、ベース層102を長期(例えば最長で7日間)にわたって傷の周りの皮膚表面に安全に固定し続けることができ、またカバー層106が透明であることによって目視で検査することができ、またカバー層106を開閉することにより傷に頻繁にアクセスすることができるようになる。
【0036】
少なくとも1つの例において、図2A及び2Bに図示されているように、カバー層106は、カバー層106の複数の側130の1つから延在する少なくとも1つのリフトタブを含んでもよい。リフトタブ108は、カバー層106をベース層102から持ち上げ、ベース層102上にカバー層106を置き直すのに用いることができる。図2Bは、ベース層102から一部を持ち上げて、事前形成開口部104を通して傷を露出させたカバー層106を示す。一部の例においては、リフトタブ108を簡単に掴めてベース層102から剥がせるように、リフトタブ108は接着剤を含んでいなくてもよい。一部の例においては、リフトタブ108は幅108Wが約1センチメートルで、長さ108Lが約1センチメートルであってもよい。他の例においては、リフトタブ108の幅と長さは同じでなくてもよい。他の例においては、リフトタブ108の幅と長さは事前形成開口部104のサイズに応じて決められてもよい。
【0037】
図2Bにおいて見られるように、カバー層106の側130の1つはベース層102と恒久的に接着されて複数の側130のうちの上記1つの側がベース層102から分離するのを防ぐ。例えば、第1の接着領域200は、カバー層106の側130の1つをベース層102と恒久的に接着してヒンジとして機能させるために用いることができるアクリル系接着剤を含んでもよい。第1の接着領域200は、長さ200Lと幅200Wとを含んでもよく、第1の接着領域200の寸法200Wと200Lは、カバー層106とベース層102との間を十分に接合するように構成することができる。他の例においては、カバー層106の側130の1つがベース層102と恒久的に接合されるように、他の接着剤を使用してもよい。恒久的に接合されたとは、過剰な力や努力なしでは取り外したり分離したりすることが難しいこととして定義されてもよい。接着によりカバー層106とベース層102とが柔らく柔軟なヒンジを形成することで、ヒンジの構成部品を追加することなくてもヒンジ様の設計を提供することができる。カバー層106の1つの側130がベース層102と強くかつ恒久的に接着され、ヒンジを形成するように作用することで、カバー層106を開閉する間に再閉鎖可能なカバー層106が折れ曲がるおそれを大きく減少することができる。更に、図2Bに図示されているように、創傷被覆材100のヒンジ様の設計において、カバー層106の3つの側のみ、又はカバー層106の75%がベース層102から持ち上げられればその下の傷にアクセスすることができ、これにより従来の設計に比べて少なくとも25%、破壊点を減少することができる。また、接着性の程度が高い側130により、再閉鎖可能なカバー層106の、ベース層102に対する向きが決定され得る。少なくとも1つの例において、恒久的に接着された側130は、側130の向きが事前形成開口部104の縁部と平行で、且つ事前形成開口部104の縁部と正確に当接するように位置決めすることができる。
【0038】
少なくとも1つの例において、ベース層102とカバー層106とは、ベース層102とカバー層106の両方が皮膚と、又は互いに調和して動くような類似の素材からなるものであってもよく、類似の柔軟性、弾性、曲げ性、伸縮性、及び収縮性を持つようなものであってもよい。ベース層102及びカバー層106の素材は、材質が似ているために、毎日皮膚が動く間においてさえも、創傷被覆材100を7日間連続装着しても有効性が持続する。更に、素材が類似であることによってベース層102とカバー層106が異なるように収縮したり動いたりするのを減らしたり、防止したりすることができる。またこれにより、患者の付け心地を改善したり、またベース層102とカバー層106との間で望まない分離が起こることを減らしたり、防止したりする。少なくとも1つの例において、ベース層102の素材にはポリウレタンを含むことができ、カバー層106の素材には熱可塑性ポリウレタンを含むことができる。ポリウレタン及び熱可塑性ポリウレタンの類似性について、素材が似ているといえるために必要な一例が定義される。
【0039】
少なくとも1つの例において、カバー層106は、傷にアクセスした時刻及び/又は日付、創傷被覆材を貼った時刻及び/又は日付、及び/又は傷にアクセスした回数のうち少なくとも1つを記録できる日付・被覆材交換管理システム70を含むことができる。日付・被覆材交換管理システム70は、創傷被覆材100上に配置され、その幅700Wが約10センチメートルであり、長さ700Lが約1.5センチメートルである被覆材部分700を含んでもよい。他の例においては、被覆材部分700の幅700Wと長さ700Lを所望の通りに変更することができる。
【0040】
図3は例示的な創傷被覆材100の組立分解等角図を示している。上で議論した通り、創傷被覆材100はベース層102とカバー層106とを含んでいる。ベース層102は、ベースフィルム304を患者の皮膚に付着することができるようにベースフィルム304の下側に配置された接着層302を有するベースフィルム304を含んでもよい。少なくとも1つの例において、ベースフィルム304はポリウレタンを含むことができる。一部の例において、ベースフィルム304は順応性があり、通気性があり、及び/又は防水性の好適な素材からなるものであってもよい。ベースフィルム304は、液体、細菌、及び/又はウイルスを含む外部汚染物質に対する無菌バリアを提供する、柔らかく、順応性があり、透湿性があり、防水性があり、吸収性があり、透明で、低アレルギー性で、及び/又は柔軟なフィルムを提供する滅菌バリアである。接着層302は、例えば、刺激を起こさず患者の皮膚に強固に接着するアクリル系接着剤を含んでもよい。ベースフィルム304は、それを通して傷にアクセスすることができる、上述の事前形成開口部104を含む。
【0041】
ベース層102は、日付・被覆材交換管理システム70をも含んでもよい。日付・被覆材交換管理システム70は、創傷被覆材100上に配置された被覆材部分700を含んでもよい。被覆材部分700は、取り替えた日付や回数などのデータが記入されたステッカー704を含んでいてもよい。少なくとも1つの例において、ステッカー704は布からなるものであってもよい。他の例においては、ステッカー704は、プラスチック、金属、又はステッカー704に筆記具によって記入できるその他の好適な素材であってもよい。アクリル系接着剤などの接着剤702をステッカー704の下側に配置して、ステッカー704をベースフィルム304に付着できるようにしてもよい。更に、日付・被覆材交換管理システム70は、図8Aにおいて更に図示される複数のパッキン交換ステッカー803を含んでもよい。複数のパッキン交換ステッカー803は、詳しくは後述する、1、2、3、4、及び5と番号が振られた標識703の上の被覆材部分700上に配置することができる。
【0042】
少なくとも1つの例において、図3に示すように、除去可能な剥離紙300を、ベースフィルム304とは反対側の接着層302に対して配置することができる。除去可能な剥離紙300は、創傷被覆材100が貼られるまで接着層302の強力な接着性を保護することができる。少なくとも1つの例において、除去可能な剥離紙300は剥離剤でコートされていてもよい。一部の例においては、第2の除去可能な剥離紙306は、接着層302とは反対側のベースフィルム304の上方で、かつベース層102とカバー層106の間に含まれていてもよい。第2の除去可能な剥離紙306は、創傷被覆材100が患者に貼られるまで、ベース層102に安定性を付与し、清浄性を維持するために含まれていてもよい。ある一例においては、第2の除去可能な剥離紙306は、ジョイント303、305を用いて2つの部分に分離するように作られていてもよい。
【0043】
貼り付ける前に、接着層302から離れるように除去可能な剥離紙300を剥離することにより除去可能な剥離紙300を取り外し、患者の皮膚にいつでも創傷被覆材100を貼れる状態にしてもよい。患者の皮膚にベース層102を固定することにより首尾よく創傷被覆材100が貼り付けられると、第2の除去可能な剥離紙306を取り外してベース層102を露わにし、ベース層102をその事前形成開口部104内の中央にある傷の周囲を覆う機能性滅菌皮膚バリアとしてもよい。
【0044】
少なくとも1つの例において、カバー層106は上部フィルム360と内部フィルム356とを含む。少なくとも1つの例において、カバー層106はタブ層364を含んでもよい。カバー層106は2以上の接着層を含むこともできる。第1の接着層352又は内部フィルム接着層を内部フィルムの上に形成することができる。第1の接着層352は第1の接着領域200及び第2の接着領域202を含んでもよい。第1の接着領域200は、ベース層102に恒久的に接着し、通常の操作の間、カバー層106がベース層102から分離することを防ぐように機能し得る。少なくとも1つの例において、カバー層106がベース層102に対して動く場合、第1の接着領域200はヒンジとして機能し得る。第2の接着領域202は、ベース層102と分離可能に接合されるように構成されている。少なくとも1つの例において、第1の接着領域200はアクリル系接着剤であり、第2の接着領域202はケイ素系接着剤である。
【0045】
第2の接着層358又は上部フィルム接着層は、上部フィルム360に対向する側で内部フィルム356に接着されていてもよい。少なくとも1つの例において、第2の接着層358はアクリル系接着剤を含んでもよい。1つの例において、上部フィルム360及び内部フィルム356は、第2の接着層358を介して互いに接着されていてもよい。図示されているように、カバー層はタブ層364及びタブ接着層362を含んでもよい。少なくとも1つの例において、タブ接着層362はアクリル系接着剤を含んでもよい。タブ層364は、タブ層がリフトタブ361を1つ以上含むように形成される。少なくとも1つの例において、タブ層364はPEを含む。図示されているように、タブ層364は2つのリフトタブ361を含む。1以上のタブ361がベース層102に最も近い側に接着材を有しないことから、リフトタブ361があることによってベース層102に対するカバー層106の取り外しがより容易になる。図示するように、上部フィルム360は1以上のリフトタブ361を更に含んでもよい。2以上の層から形成されたリフトタブ361を有することにより、強度と剛性が高くなるようにリフトタブ361を形成することができる。
【0046】
出荷の目的で、第2の接着層352の下側に剥離フィルム350を貼り付けることができる。剥離フィルム350によって、後の使用における第2の接着層352の触知性が確実に維持される。少なくとも1つの例において、剥離フィルム350はフルオロプラスチックフィルムを含んでもよい。追加の例においては、カバー層106は所望に応じて上述の部品の任意の組み合わせを含むことができる。
【0047】
上部フィルム360は、ベース層102の事前形成開口部104を覆うように機能し得るとともに、ベース層102上で持ち上げと置き直しを繰り返すことができるように機能し得る。少なくとも1つの例において、上部フィルム360は、カバー層106を持ち上げることなく傷が視認可能な程度に少なくとも部分的に透明である。他の例においては、上部フィルム360が透明である。上部フィルム360の素材には、熱可塑性ポリウレタンを含むことができる。上部フィルム360は、抗菌特性、通気性、生体適合性、弾性、エラストマーメモリ性、耐薬品性、微生物耐性、防水性、心地よい柔らかな感触、引裂抵抗性、及び/又は耐破壊性を提供する透明な滅菌バリアであってもよい。一部の例においては、上部フィルム360の素材は、カバー層106の上部フィルム360とベースフィルム102とが類似の素材からなるものである限り変更可能である。柔軟性と伸縮性のある類似の素材を用いることで、ベース層102とカバー層106の両者が、皮膚に調和して、及び互いに調和して動くことができる。ベース層102及びカバー層106の素材は、材質が似ているために、毎日皮膚が動く間においてさえも、創傷被覆材100を7日間連続装着しても有効性が持続する。更に、素材が類似であることによってベース層102とカバー層106が異なるように収縮したり動いたりするのを減らしたり、防止したりすることができる。またこれにより、患者の付け心地を改善したり、またベース層102とカバー層106との間で望まない分離が起こることを防止したりする。
【0048】
少なくとも1つの例において、第1の接着層358は上部フィルム360に付着していてもよい。第1の接着層358は、アクリル系接着剤を含んで、内部フィルム356に上部フィルム360を強固に接着してもよい。内部フィルム356は、上部フィルム360及びベース層102と類似又は同一の素材(例えばポリウレタンやポリエチレン)を含んでもよく、それによりカバー層106とベース層102の柔軟性と、調和した運動が維持されるようにしてもよい。少なくとも1つの例において、内部フィルム356は、創傷被覆材100が皮膚と実質的に調和して動けるように、柔軟性をまだ有しつつも上部フィルム360よりも剛性があってもよい。皮膚と実質的に調和して動くことにより、創傷被覆材100は皮膚と接触した状態を維持することができ、患者の心地よさのレベルを維持することができる。
【0049】
第2の接着層352を含んでカバー層106をベース層102に付着させてもよい。第2の接着層352は、上部フィルム360の反対側の、ベース層102に近接した内部フィルム356の下側に付着していてもよい。第2の接着層352は、アクリル系接着剤等の接着剤を含む第1の接着領域200の1つの側を含んでいてもよく、それによりカバー層106の1つの側130をベース層102に恒久的に接着してヒンジとして機能させてもよい。他の例においては、カバー層106の側130の1つがベース層102と恒久的に接合されるように、他の接着剤を使用してもよい。接着によりカバー層106とベース層102とが柔らく柔軟なヒンジを形成することで、ヒンジ様の設計が提供される。第2の接着層352は、低アレルギー性及び/又は皮膚と接触しても安全なものであってもよい。
【0050】
第2の接着層352の残りの部分は、シリコーン接着剤等の軽度又は中程度の粘着性の接着剤を含んでもよく、それによりカバー層106の第2の接着領域202がベース層102に対し取り外し可能に付着しつつも、容易にベース層102から持ち上げることができるようにしてもよい。そのようにすると、ベース層102を取り外したり調整したりすることなく、カバー層106の一部分をベース層102から持ち上げて傷を露出することができる。本明細書において議論する接着剤はそれぞれ、水分の存在下でも機能し得ることができるものである。少なくとも1つの例において、第2の接着層352が第2の接着層352自身又はカバー層106の他の部分に付着するようにカバー層106が折り曲げられた場合でも、第2の接着層352は剥離することができる。
【0051】
一部の例において、第2の接着領域202は粘着性があるが柔軟性もあり、カバー層106をベース層102から持ち上げたり、ベース層102に置き直したりするサイクルを50回までは繰り返すことができるベース層102とカバー層106との間の接合を形成することができる。
【0052】
図3に示すように、第1の接着層358、内部フィルム356、及び第2の接着層352のそれぞれは、ベース層102の事前形成開口部104に対応する開口部を形成してもよい。したがって、接着層358と352は、事前形成開口部104を通して露出された傷と干渉せず、またその傷と接触しない。
【0053】
図4は、図3において上で議論した各特徴を含み得るが、熱反応特性及び/又は水反応特性を更に有する創傷被覆材100を図示する。
【0054】
少なくとも1つの例において、カバー層106内で熱反応性インク452を用いること及び/又はベース層102内の熱反応性インク402によって熱反応特性を含めることができる。熱反応性インク452、402は、特定の温度範囲の存在下にある場合に状態が変化するいずれのインクであってもよい。例えば、熱反応性インク452、402は、ある温度範囲、例えば華氏約91度又は摂氏33℃±5%の平均的な皮膚の温度に曝露されると色が変わり得る。少なくとも1つの例において、熱反応性インク452、402は感染が存在するか、又は感染が始まりつつあるかを示すものであってもよい。例えば、熱反応性インク452、402が皮膚の温度計として作用するように、温度範囲に応じて熱反応性インク452、402の色が変わったり、異なるパターンが表示されたりしてもよい。
【0055】
少なくとも1つの例において、熱反応性インク402をベース層102に含むことができる。所定の温度範囲に曝露されると、熱反応性インク402は、例えば特定の色に変化するなど状態が変化し、それによりベース層102が十分に患者の皮膚と接合されていることが示される。
【0056】
少なくとも1つの例において、ベース層102から分離されてさらに再付着されるように意図された、粘着性の低い側を形成する層の内部、上部、下部又は層の間にこの熱反応性インク452を配置することにより、カバー層106の持ち上げ可能な側の少なくとも一部分、又は全部に沿って調和するように熱反応性インク452を置くことができる。所定の温度範囲に曝露されると、熱反応性インク452は、例えば特定の色に変化するなど状態が変化し、それによりカバー層106がベース層102上で完全に密封されていることが示される。カバー層106が適切に閉鎖されていれば、下にある皮膚に近接していることによって所定の温度に到達することから、色が変化する熱反応性インク452は、カバー層106がベース層102に適切に接着されていることを示す確実な標識になり得る。
【0057】
更に、熱反応性インク452、402は、ユーザが熱反応性インク452、402から肯定的な反応を得たり維持したりすることができない時に、創傷被覆材100がもはや使用できないものであることをユーザに示すために使用することができる。色の変化が起こらない場合には、その使用限界に到達、又は限界を超えていることから、ユーザに、創傷被覆材100を取り外し、交換する必要があることを示すように設計される。
【0058】
一部の例において、水反応性インク450、400を創傷被覆材100に一体化させてもよい。水反応性インク450、400は、傷被覆材100に水分が存在する場合にフィードバックを返すことができる。水反応性インク450、400は、カバー層106及び/又はベース層102の接着性領域を形成する層の内部、上部、下部、又は層の間に配置することができる。水反応性インク450、400は、水又は水分の存在下において、状態(例えば色)が変化し得る。水反応性インク450、400は、乾燥した状態に保たれ、水や水分を含まないことを意図した創傷被覆材100又はその下の皮膚の領域に水又は水分が入り込んだことを警告する。少なくとも1つの例において、水反応性インク450、400は所定の色やパターンに変化して、創傷被覆材100の水分及び/又は湿度の量や範囲を示すことができる。例えば、水反応性インク450、400の色はある色合いの青に変化し、チャートと比較すると湿度が70%であることを示すようにしてもよい。水反応性インク450、400を含むことで、結果的に水分に長期曝露されることにもなる皮膚の浸軟又は損傷が生じるおそれを制限する。皮膚が浸軟すると、潜在的に事実上全身性になる可能性があり、抗生物質や抗真菌剤などのより積極的な治療が必要となる菌及び/又は細菌への二次感染につながるおそれがある。創傷被覆材100によって被覆される皮膚上の水分の防止及び早期の検出は、特に最長で7日間装着され得る、長期間装着されるフィルム被覆材において、皮膚の浸軟を防ぐのに非常に重要である。
【0059】
図5及び図6は、図3及び図4において上述した特徴のそれぞれ及びいずれかを含み得るものであって、陰圧閉鎖療法(NPWT)においても更に使用することができる創傷被覆材100を図示する。NPWTは、余分な水分を取り除き、循環を改善することにより、治癒過程を助けることができる。
【0060】
図5及び図6において図示されている創傷被覆材100は、カバー層106の開口部506を通して傷に流体的に連通する導管502を含むことができる陰圧システム500を含むことができる。図6に示すように、導管502は、カバー層106の上部フィルム360に接着層600によって結合することができるカフ504に連結することができる。接着層600は、例えばアクリル系接着剤を含むことができ、それによりカバー層106の柔軟性を維持しながら強い付着と密閉性を提供することができる。導管502は、密閉された創傷被覆材100を通して真空を適用することができ、それにより傷領域からの傷液体をよりよく循環させ除去するポンプ510と流体的に結合することができる。導管502及びカフ504は、NPWTのための一定の又は断続的な陰圧、例えば約-75mmHg~約-125mmHgの陰圧に耐え、維持することができるものであってもよい。少なくとも1つの例において、創傷被覆材100は、導管502及びカフ504をカバー層160に取り付けさせるものであってもよい。別の例において、創傷被覆材100は開口部とカフ504をカバー層106に結合させるが、導管502は結合させないカバー層106を含んでいてもよい。そのような例において、カフ504を結合するように機能し得る好適な導管502は、医師又は医療従事者によって個別に提供されてもよい。
【0061】
図5及び図6に図示された創傷被覆材100を用いて、介護者は、処置している傷の変化の状態に応じて、自身が選択したフォーム又はパッキンを柔軟に選択することができる。フォームやパッキンは、創傷被覆材100を切断したり、皮膚から創傷被覆材100を取り外したりすることなく即座に調べて交換することができる
【0062】
図7図8A、及び図8Bは、傷にアクセスした時刻及び/又は日付、創傷被覆材を貼った時刻及び/又は日付、及び/又は傷にアクセスした回数のうち少なくとも1つの記録を含むことができる日付・被覆材交換管理システム70を図示する。少なくとも1つの例において、図7に示すように、日付・被覆材交換管理システム70は、創傷被覆材100に適用され、又は創傷被覆材100上に配置された被覆材部分700を含むことができる。被覆材部分700は、上述の創傷被覆材100に貼り付けられるよう、接着剤702を含むことができる。接着剤702は、例えば傷にアクセスした、傷を検査した、及び/又は傷を清浄した日付及び/又は回数を記入するのに使用することができる。また、接着剤702は、いつ、及び/又は何回被覆材パッドが交換され、及び/又はバーム又は局所軟膏が塗られたかを記録するのに使用することができる。少なくとも1つの例において、ステッカー704は布からなるものであってもよい。他の例においては、ステッカー704は、プラスチック、金属、又はステッカー704に筆記具によって記入できるその他の好適な素材であってもよい。アクリル系接着剤などの接着剤702をステッカー704の下側に配置して、ステッカー704がベースフィルム304に付着できるようにしてもよい。更に、パッキン交換ステッカー803を貼って標識703を覆ってもよい。
【0063】
少なくとも1つの例において、図8A及び図8Bに示すように、日付・被覆材交換管理システム70はパッキン部800を含んでもよい。一部の例において、パッキン部800は創傷被覆材100を含んでもよい。パッキン部800は、被覆材の適用日802、パッキン交換日804、及び/又は創傷被覆材100の使用に関する任意の必要な情報を示すために使用することができる。図8Bに示すように、パッキン部800の背面は接着剤806(例えばアクリル系接着剤)を含むことができ、それによりパッキン部800を壁、ベッド、及び/又はドレッサーなどの表面に貼り付けることができるようになる。少なくとも1つの例において、パッキン部800は幅800Wが約12センチメートルで、長さ800Lが約15センチメートルであってもよい。パッキン部800の寸法800W、800Lは、例えば創傷被覆材100の大きさや形、及び/又は貼り付ける領域の寸法に応じて、所望により変更することができる。出荷時には、パッキン部800は、取り外して標識703の上に貼り付けることができるパッキン交換ステッカー803を含むことができる。
【0064】
図9を参照すると、ある例に応じたフローチャートが提示されている。方法900は例示として提供されるものであり、その方法を実行する方法は様々存在する。後述する方法900は、図1図8Bに図示される構成を用いて実行することができ、例えばこれらの図の様々な要素が方法900を説明するのに参照される。図9に示す各ブロックは、例示的な方法900において実行されるプロセス、方法、又はサブルーチンの1以上を表す。更に、図示されているブロックの順序は単に例示的なものであり、ブロックの順序は本開示に従って変更することが可能である。本開示から逸脱しない範囲で追加のブロックを加えてもよく、より数の少ないブロックを利用してもよい。例示的な方法900はブロック902から始めることができる。
【0065】
ブロック902において、創傷被覆材のベース層に形成された事前形成開口部の位置が傷の位置と合うように、創傷被覆材の位置を患者の傷の位置と合わせる。上述した通り、創傷被覆材は実質的に透明であってもよく、創傷被覆材の、傷との位置合わせは自信をもって最小限の問題で達成することができる。更に、事前形成開口部があることにより創傷被覆材に穴を開ける必要がなくなり、これにより安全性を高め、ベース層の境界が確実に傷に干渉しないようにすることができる。
【0066】
ブロック904において、創傷被覆材を患者に貼り付けることができる。ベース層は患者の皮膚に貼り付けられる。ベース層は、ベース層が患者に長期間、例えば最長で7日間の間付着できるような素材や接着剤を含む。
【0067】
ブロック906において、創傷被覆材のカバー層は持ち上げられて、創傷被覆材のベース層を取り外すことなく傷にアクセスすることができる。少なくとも1つの例において、カバー層は、カバー層を取り外す必要なしに、カバー層を通して傷を視認可能な程度に実質的に透明であってもよい。カバー層の複数の側のうち1つはベース層に恒久的に接着されてヒンジとして機能し得る。創傷被覆材が接着性のヒンジを利用する場合、カバー層が折れ曲がったり、ずれたりするおそれを最小限にしつつ、カバー層を持ち上げたり、置き直したりすることができる。
【0068】
ブロック908において、カバー層を置き直すことで創傷被覆材のカバー層とベース層の間を密封することができる。創傷被覆材によって、望まない細菌や他の外部環境が傷の治癒過程に悪影響を及ぼすことが防止できる。カバー層を持ち上げて置き直すサイクルは、ベース層を取り外すことなく、例えば50回までは繰り返すことができる。ベース層を所定の位置に保持することにより、患者の皮膚は接着剤の除去や再塗布によって過剰に刺激されることがない。また、創傷被覆材を交換する時間やコストを大幅に減少することができる。
【0069】
上述の通り、少なくとも1つの例において、ユーザは、日付・被覆材交換管理システム上で、傷にアクセスした時刻及び/又は日付、創傷被覆材を貼った時刻及び/又は日付、及び/又は傷にアクセスした回数のうち少なくとも1つを記録することができる。データの記録により、患者に対処する医療スタッフの間での引き継ぎが容易になり、エラーを減らすことができる。
【0070】
図10を参照すると、ある例に応じたフローチャートが提示されている。方法1000は例示として提供されるものであり、その方法を実行する方法は様々存在する。後述する方法1000は、図1図8Bに図示される構成を用いて実行することができ、例えばこれらの図の様々な要素が方法1000を説明するのに参照される。図10に示す各ブロックは、例示的な方法1000において実行されるプロセス、方法、又はサブルーチンの1以上を表す。更に、図示されているブロックの順序は単に例示的なものであり、ブロックの順序は本開示に応じて変更することが可能である。本開示から逸脱しない範囲で追加のブロックを加えてもよく、より数の少ないブロックを利用してもよい。例示的な方法1000はブロック1002から始めることができる。
【0071】
ブロック1002において、上記方法は創傷被覆材のベース層のベースフィルムを準備することから始めることができる。少なくとも1つの例において、ベースフィルムは上述の通りベース層の一部であってもよい。創傷被覆材を製造する方法の始まりとしてベースフィルムに言及したが、別の例においては、カバー層を形成することから始めることができる。他の例においては、カバー層とベース層は実質的に同時に形成して、その後連結することができる。
【0072】
ブロック1004において、上記方法は、上記ベースフィルムに開口部を形成することを含み得る。他の例においては、開口部はベースフィルムを作成するプロセスで形成することができる。更に別の例においては、ベース層が形成され、その後ベース層に開口部が形成される。ベースフィルムが事前に形成された開口部を有する場合、ベース層の他の部品も、対応する事前に形成された開口部と共に形成することができる。少なくとも1つの例において、ベース層は、1以上の接着層によって共に連結された2つ以上のベースフィルムを含むことができる。
【0073】
ブロック1006において、上記方法は、上記ベースフィルムの第1の側に接着層を形成することを含み得る。ベースフィルムの第1の側に形成された接着層は患者に貼付されるように機能し得る。接着層の接着剤はアクリル系接着剤であってもよい。さらに、上記方法は接着層に貼り付けられる除去可能な剥離紙を準備することを含んでもよい。この除去可能な剥離紙は、患者に貼り付けられる前の接着層を保存するために、出荷中に使用することができる。
【0074】
ブロック1008において、上記方法は、上記ベースフィルムの、上記第1の側とは反対側の第2の側に剥離紙を付着させることを含み得る。第2の除去可能な剥離紙は、接着を利用する紙を使用して付着させることができ、また第2の除去可能な剥離紙は第2の側に付着される前に剥離紙上に形成される接着材を含んでもよい。少なくとも1つの例において、第2の側に付着される第2の除去可能な剥離紙は、2つの部分に分離するように構成されてもよい。少なくとも1つの例において、ブロック1002~1008は、ベース層を形成する場合に述べたものと同じであってもよい。
【0075】
ブロック1010において、上記方法は、実質的にベース層と類似の素材からなるカバー層を形成することを含み得る。上記方法の他の部分において後述するようなカバー層は複数の層から形成されていてもよい。
【0076】
ブロック1012において、上記方法は、上部フィルムを準備することを含み得る。上部フィルムは上述したものと同じであってもよい。上部フィルムは、ベースフィルムに形成された開口部を覆うように構成されていてもよい。
【0077】
ブロック1014において、上記方法は、ベース層に最も近い上部フィルムの側上に上部フィルム接着層を形成することを含み得る。上部フィルム接着層は、追加の部品のカバー層を構築できるように機能し得る。上部フィルム接着層は恒久的接着剤からなってもよい。少なくとも1つの例において、上部フィルム接着層はアクリル系接着剤からなるものであってもよい。
【0078】
ブロック1016において、上記方法は、内部フィルムを上部フィルム接着層に恒久的に接着することを含み得る。内部フィルムは、上部フィルムと同一の大きさを有するものでなくてもよい。ある一例においては、内部フィルムは、上部フィルムと実質的に同一の周囲を有していてもよい。他の例においては、上部フィルムと内部フィルムとの間に追加のタブ層を形成してもよい。タブ層は実質的に小さくてもよく、内部フィルムの、ベース層に対する、付着点及び/又はカバー層の側の反対側の一部の上のみに延出していてもよい。
【0079】
ブロック1018においては、上記方法は、2つの領域を含む内部フィルム接着層を形成することを含んでもよい。上記2つの領域のうち1つは第1の接着領域であってもよい。第1の接着領域は、カバー層をベース層に恒久的に接着するように機能し得る。上記2つの領域のうちのも別の1つは第2の接着領域であってもよい。第2の接着領域は、ベース層と分離可能に付着するように構成されていてもよい。
【0080】
ブロック1020においては、上述の通り、上記方法は、第1の接着領域を介してカバー層をベースフィルムに恒久的に接着することを含んでもよい。少なくとも1つの例において、ベース層の第2の除去可能な剥離紙はスロットを含んでいてもよく、カバー層の少なくとも一部分はそのスロットを通して挿入されていてもよく、それにより第1の接着領域をベース層のベースフィルムに恒久的に接着してもよい。
【0081】
ブロック1022において、上記方法は、上記2つの部分の別の1つを介して取り外し可能なフィルムを離脱可能に付着することを含み得る。
【0082】
本開示の理解を高めるために、本明細書では多くの例が提供されている。特定の陳述一式が以下のように提供される。
【0083】
陳述1:患者の皮膚に付着するように機能し得るベース層であって、上記ベース層は、その穴を通じて上記患者の傷へのアクセスを可能とする事前形成開口部を形成する、ベース層と、カバー層であって、通常の使用の間、上記カバー層が上記ベース層から分離しないように上記ベース層に恒久的に接着する第1の接着領域を有する、カバー層と、を備え、上記カバー層は、上記ベース層に取り外し可能に結合するように構成された第2の接着領域を有し、上記カバー層は、上記ベース層内に形成された上記事前形成開口部を覆うように構成されており、上記ベース層及び上記カバー層は、実質的に類似の柔軟性と伸縮性を有する材料から形成されている、再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0084】
陳述2:上記ベース層はポリウレタンであり、上記カバー層は熱可塑性ポリウレタンである、陳述1に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0085】
陳述3:日付・被覆材交換管理システムを更に含み、上記日付・被覆材交換管理システムは、上記ベース層に付着するように構成された被覆材部分と、複数のパッキン交換ステッカーを含むパッキン部とを備える、陳述1又は2に記載の上記再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0086】
陳述4:上記カバー層は上記第1の接着領域と上記第2の接着領域とを含む第1の接着層を備える、陳述1~3の何れか1つに記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0087】
陳述5:上記第1の接着領域が上記ベース層に恒久的に接着される場合、ヒンジとして機能し得る、陳述4に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0088】
陳述6:上記第1の接着領域はアクリル系接着剤を含み、上記第2の接着領域はシリコーン接着剤を含む、陳述5に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0089】
陳述7:上記カバー層は、上記第1の接着層に接着された内部フィルムと、上記第1の接着層とは反対側で上記内部フィルムに接着された第2の接着層と、上記内部フィルムとは反対側で上記第2の接着層に接着された上部フィルムと、を更に含む陳述4に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0090】
陳述8:上記カバー層は、上記第1の接着層に接着された取り外し可能なフィルムを更に含む、陳述7に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0091】
陳述9:上記上部フィルムは透明である、陳述7に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0092】
陳述10:上記上部フィルムは少なくとも1つのリフトタブを含む、陳述7に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0093】
陳述11:上記少なくとも1つのリフトタブは2つのリフトタブを含む、陳述10に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0094】
陳述12:上記カバー層は、上記上部フィルムと上記第2の接着層との間に位置するタブ層と、上記タブ層と上記上部フィルムとの間に位置するタブ接着層と、を更に含む陳述7に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0095】
陳述13:上記上部フィルム及び上記タブ層は、少なくとも1つの方向において上記内部フィルムを超えて延在する少なくとも1つのリフトタブを含む、陳述12に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0096】
陳述14:上記少なくとも1つのリフトタブは2つのリフトタブを含む、陳述13に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0097】
陳述15:上記ベース層の上記事前形成開口部に相当する凹部が形成されるまで上記第1の接着層が上記上部フィルムの縁部から内方へ延在する、陳述7に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0098】
陳述16:上記第1の接着領域の少なくとも一部分はアクリル系接着剤を含み、上記第2の接着領域は上記ベース層と上記カバー層との間で粘着性があるが柔軟性もある接合を形成するように機能し、上記ベース層に対する上記カバー層の持ち上げと置き直しを50回までは繰り返すことが可能である、陳述4に記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0099】
陳述17:上記第1の接着層、上記内部フィルム、及び上記第2の接着層は、それぞれ上記事前形成開口部に対応する開口部を形成する陳述7~15の何れか1つに記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0100】
陳述18:上記ベース層は、事前形成開口部を囲み、上記ベース層の最外縁部と事前形成開口部の縁部の間に形成される間隙の間に延在するランディングゾーンを含み、上記ランディングゾーンは、事前形成開口部から上記ベース層の最外縁部までの距離の約20%~約65%であり、上記カバー層の複数の側は上記事前形成開口部の周囲よりも大きい周囲を形成し、上記カバー層の上記周囲が上記ランディングゾーン内に配置される、陳述1~17の何れか1つに記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0101】
陳述19:上記ベース層は、事前形成開口部を囲み、上記ベース層の最外縁部と事前形成開口部の縁部の間に形成される間隙の間に延在するランディングゾーンを含み、上記ランディングゾーンは、事前形成開口部から上記ベース層の最外縁部までの距離の約40%~約65%であり、上記カバー層の複数の側は上記事前形成開口部の周囲よりも大きい周囲を形成し、上記カバー層の上記周囲が上記ランディングゾーン内に配置される、陳述1~18の何れか1つに記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0102】
陳述20:上記ベース層は、事前形成開口部を囲み、上記ベース層の最外縁部と事前形成開口部の縁部の間に形成される間隙の間に延在するランディングゾーンを含み、上記ランディングゾーンは、事前形成開口部から上記ベース層の最外縁部までの距離の約45%~約55%であり、上記カバー層の複数の側は上記事前形成開口部の周囲よりも大きい周囲を形成し、上記カバー層の上記周囲が上記ランディングゾーン内に配置される、陳述1~19の何れか1つに記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0103】
陳述21:上記カバー層は透明である、陳述1~20の何れか1つに記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0104】
陳述22:上記ベース層は、幅が約18センチメートルで長さが約22センチメートルである、陳述1~21の何れか1つに記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0105】
陳述23:上記カバー層は、幅が約15センチメートルで長さが約18センチメートルである、陳述1~22の何れか1つに記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0106】
陳述24:上記事前形成開口部は、幅が約10センチメートルで長さが約10センチメートルである、陳述1~23の何れか1つに記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0107】
陳述25:上記カバー層は、複数の側のうち1つから延出する少なくとも1つのリフトタブを含み、それにより上記カバー層を上記ベース層から持ち上げ、且つ置き直すことができるようになる、陳述1~24の何れか1つに記載の再閉鎖可能な創傷被覆材が開示される。
【0108】
陳述26:創傷被覆材のベース層に形成された事前形成開口部の位置が患者の傷の位置と合うように上記創傷被覆材の位置を上記傷の位置に合わせることと、上記創傷被覆材を上記患者に貼ることと、上記創傷被覆材のカバー層を持ち上げて、上記ベース層を取り外すことなく上記傷にアクセスすることと、上記創傷被覆材の上記カバー層を置き直して、上記創傷被覆材の上記カバー層と上記ベース層の間を密閉することと、を含む方法が開示される。
【0109】
陳述27:上記カバー層を持ち上げて置き直すサイクルは、上記ベース層を取り外すことなく50回までは繰り返すことが可能である、陳述26に記載の方法が開示される。
【0110】
陳述28:上記カバー層の複数の側の少なくとも1つはベース層に恒久的に接着されてヒンジとして機能し得る、陳述26又は27に記載の方法が開示される。
【0111】
陳述29:日付・被覆材交換管理システム上で、傷にアクセスした時刻及び/又は日付、創傷被覆材を貼った時刻及び/又は日付、及び/又は傷にアクセスした回数のうち少なくとも1つを記録することを更に含む、陳述26~28の何れか1つに記載の方法が開示される。
【0112】
陳述30:上記カバー層は、そのカバー層を通して傷が視認可能なように透明である、陳述26~29の何れか1つに記載の方法が開示される。
【0113】
陳述31:創傷被覆材の製造方法であって、前記創傷被覆材の製造方法は、ベースフィルムを準備することと、上記ベースフィルムに開口部を形成することと、上記ベースフィルムの第1の側に接着層を形成することと、上記ベースフィルムの、上記第1の側とは反対側の第2の側に剥離紙を付着させることと、上記ベース層と実質的に類似の素材のカバー層を形成することと、を含み、ここで上記カバー層を形成することは、上部フィルムを準備することと、上記上部フィルムの、上記ベース層に最も近い側に上部フィルム接着層を形成することと、内部フィルムを上記上部フィルム接着層に恒久的に接着することと、2つの部分を含む内部フィルム接着層を形成することと、を含み、上記創傷被覆材の製造方法は更に、上記カバー層の少なくとも一部分を、上記2つの部分のうち1つを介して上記ベースフィルムに恒久的に接着することと、上記カバー層の少なくとも一部分を、上記2つの部分のうち別の1つを介して上記ベースフィルムを離脱可能に付着させることと、を含む、創傷被覆材の製造方法が開示される。
【0114】
陳述32:上記上部フィルムと上記上部フィルム接着層との間を、タブフィルム接着層によって付着させたタブ層を準備することを更に含む、陳述31に記載の方法が開示される。
【0115】
上で示し、説明した開示は例にすぎない。上記詳細な説明において本技術の多数の特性及び利点を、本開示の構造や機能の詳細と共に述べたものの、本開示は例示的なものでしかなく、その詳細に対し、特に形状や寸法、部品の配置に関する事項について、本開示の原則の範囲内で、添付の請求の範囲で用いられる用語の広義の一般的な意味によって示される最大限の範囲にまで変更を加えてもよい。そのため、上述の(実施)例が添付の請求の範囲の範囲内で改変し得ることは認識されるであろう。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10