(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】電磁駆動式液体霧化装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/48 20200101AFI20220628BHJP
A24F 40/10 20200101ALI20220628BHJP
A24F 40/42 20200101ALI20220628BHJP
【FI】
A24F40/48
A24F40/10
A24F40/42
(21)【出願番号】P 2021541624
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 CN2020108660
(87)【国際公開番号】W WO2021139155
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】202010788548.2
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517283640
【氏名又は名称】雲南中煙工業有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】韓▲いー▼
(72)【発明者】
【氏名】李寿波
(72)【発明者】
【氏名】李廷華
(72)【発明者】
【氏名】朱東来
(72)【発明者】
【氏名】鞏効偉
(72)【発明者】
【氏名】▲りょ▼茜
(72)【発明者】
【氏名】呉俊
(72)【発明者】
【氏名】張霞
(72)【発明者】
【氏名】趙偉
(72)【発明者】
【氏名】洪▲りゅう▼
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108095197(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0343925(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109770437(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁駆動式液体霧化装置であって、
霧化コア(2)及び電磁駆動ユニット(31)を備え、
前記霧化コア(2)は、リザーバ(21)及び電気加熱素子(22)を備え、前記リザーバ(21)が駆動室(211)及び押出室(212)を有し、前記駆動室(211)と前記押出室(212)とが液体連通し、前記駆動室(211)の上壁に弾性ダイヤフラム(2111)及び永久磁石片(2112)が設けられ、前記押出室(212)の上端に液滴吐出孔(2121)である開口が設けられ、電気加熱素子表面(221)と前記液滴吐出孔(2121)とが所定の距離離間して対向するように、前記電気加熱素子(22)が前記液滴吐出孔(2121)の上部に配置され、
前記電磁駆動ユニット(31)は、前記霧化コア(2)の底部に配置さ
れ、
前記霧化コア(2)は、押圧片(2113)、上部封止ガスケット(2114)、押出室枠(2115)、駆動室本体(2116)、下部封止ガスケット(2117)、ベース(2118)及び基部(23)をさらに有し、前記駆動室本体(2116)、前記弾性ダイヤフラム(2111)、前記上部封止ガスケット(2114)、前記下部封止ガスケット(2117)及び前記ベース(2118)が前記リザーバ(21)を構成し、前記押圧片(2113)が前記弾性ダイヤフラム(2111)の外壁に配置され、前記永久磁石片(2112)が、前記押圧片(2113)と前記弾性ダイヤフラム(2111)との間に配置されて前記弾性ダイヤフラム(2111)の壁に当接し、前記押出室枠(2115)の内部が前記押出室(212)であり、前記押出室(212)の開口が前記液滴吐出孔(2121)であり、前記押圧片(2113)、前記永久磁石片(2112)及び前記弾性ダイヤフラム(2111)の中央部には、前記液滴吐出孔(2121)に対応する孔が設けられ、前記基部(23)が前記リザーバ(21)の底部に配置され、
前記電磁駆動ユニット(31)が電磁駆動ロッド(3)のキャビティ内に位置し、前記霧化コア(2)が基部(23)を介して前記電磁駆動ロッド(3)の外壁に配置される、
ことを特徴とする、電磁駆動式液体霧化装置。
【請求項2】
前記電気加熱素子表面(221)と前記液滴吐出孔(2121)が位置する平面とは平行であり、両者間の距離が100μm~2mmである、ことを特徴とする、請求項1に記載の電磁駆動式液体霧化装置。
【請求項3】
前記液滴吐出孔(2121)の面積が3mm×3mm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁駆動式液体霧化装置。
【請求項4】
前記電気加熱素子表面(221)の見かけの水接触角が90°未満であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁駆動式液体霧化装置。
【請求項5】
前記リザーバ(21)の容積が1~2mlであることを特徴とする、請求項1に記載の電磁駆動式液体霧化装置。
【請求項6】
前記電磁駆動ロッド(3)のキャビティ内に電源及び制御チップがさらに設けられ、前記電気加熱素子(22)が導線(222)を介して制御チップ及び電源に電気的に接続される、ことを特徴とする、請求項
1に記載の電磁駆動式液体霧化装置。
【請求項7】
前記霧化コア(2)の外周を取り囲んで霧化器(4)を形成するマウスピース(1)をさらに備え、前記マウスピース(1)の中央部の底面と前記電気加熱素子(22)との間には、外部と連通する空気導入通路(10)が設けられる、ことを特徴とする、請求項1に記載の電磁駆動式液体霧化装置。
【請求項8】
前記駆動室(211)と前記押出室(212)との間が液体通路(2110)であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁駆動式液体霧化装置。
【請求項9】
前記マウスピース(1)の内部には前記空気導入通路(10)と連通するエアロゾル吐出孔(12)が設けられ、前記マウスピース(1)の側壁に観察窓(11)が設けられる、ことを特徴とする、請求項
7に記載の電磁駆動式液体霧化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子霧化の技術分野に属し、具体的には、電磁により液体を駆動して、液体の押出部分を電気加熱素子表面と接触させて霧化する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子霧化タバコのコア部材は霧化器であり、霧化器の性能の良否が液体霧化における霧化効率、エアロゾル特性、吸引品質及び吸引安全性に直接影響を与えるので、現在の電子霧化タバコの開発の焦点となっている。電子霧化タバコの霧化器は、最初は発熱線を電気加熱素子とする霧化器を用いたが、近年来、技術の進歩、人々の安全性及び官能品質への意識の高まりに伴い、霧化器技術は大きな進歩を遂げている。代表的な霧化器技術には、セラミック製霧化コア技術、金属グリッド加熱技術及び金属ブレード加熱技術が含まれる。セラミック製霧化コア技術は、多孔質セラミックス材料を用い、高温焼結によって得られたセラミック体であり、内部に複数の三次元的に互いに連通する細孔が分布し、その孔径が一般的にミクロンオーダー又はサブミクロンオーダーであり、安定性や耐高温性に優れ、安全でリキッドの誘導が容易であるという特性を有するが、熱伝導率が低く、熱抵抗が大きく、体積熱容量が小さいという欠点がある。外国のあるタバコ会社により、発熱が均一であって従来の発熱線に比べて抵抗変化率が小さいことを特徴とする金属グリッド加熱素子を用いた密閉式電子タバコが提案されている。外国の他のタバコ会社により、従来の発熱線及びリキッド誘導コアの加熱機構の代わりに、ブレード式極薄ステンレス板を用いて、リキッドを加熱してエアロゾルを生成し、用いられる加熱ブレードの厚さが極薄(ヒトの髪の毛の直径に相当する)で、従来の発熱線及びリキッド誘導コアの加熱システムよりも10倍大きい表面積を有する電子タバコが提案されている。従来の発熱線に比べて、これらの電気加熱素子は、発熱表面積及び加熱均一性が改善されるが、リキッドの送達量を制御できないため、リキッドが金属グリッド又は金属ブレードの表面に蓄積しひいては電気加熱素子全体を包む恐れがあり、リキッドの加熱ムラが依然として存在し、金属グリッド又は金属ブレードの電気加熱効率が大幅に低下される。
【0003】
現在、電子霧化タバコに存在する他の大きな欠陥は、霧化器の液漏れ問題であり、解決手段としては、主に、複数層の漏れ防止のカートリッジ構造、即ち複数層のリキッド吸収綿、複雑な液漏れ防止構造及びシール方法を用いて、霧化器からのリキッドの蓄積流出を防止して凝縮リキッドを封じ込める方法と、霧化経路を延長させ、リキッドを十分に霧化させることをできるだけ確保し、液漏れのリスクを低減させる方法との2種がある。上述した様々な電子霧化タバコの漏れ防止構造及び技術は、液漏れの確率を低下させることしかできず、電子霧化タバコの液漏れ問題を根本的に解決することができない。
【発明の概要】
【0004】
上記問題点を解消するために、本発明は、電磁駆動式液体霧化装置を提出する。本発明の装置は、電磁駆動原理により液体を駆動し、液体を凸面型薄層液膜又は液滴にし、該凸面型薄層液膜又は液滴が加熱した電気加熱素子表面と接触して急速に霧化されてエアロゾルが生成されて喫煙者に吸引される。
【0005】
本発明の技術的手段は、以下の通りである。
【0006】
電磁駆動式液体霧化装置は、霧化コア2及び電磁駆動ユニット31を備え、
霧化コア2は、リザーバ21及び電気加熱素子22を備え、リザーバ21が駆動室211及び押出室212を有し、駆動室211と押出室212とが液体連通し、駆動室211の上壁に弾性ダイヤフラム2111及び永久磁石片2112を有し、押出室212の上端に液滴吐出孔2121である開口を有し、電気加熱素子表面221と液滴吐出孔2121とが所定の距離離間して対向するように、電気加熱素子22が液滴吐出孔2121の上部に配置され、リザーバ21内にエアロゾル化のための液体200がある。
電磁駆動ユニット31は、霧化コア2の底部に配置される。電磁駆動ユニット31の通電により発生する磁場が、リザーバ21及び内部の液体200を透過して永久磁石片2112に印加される。
【0007】
好ましくは、電気加熱素子表面221と液滴吐出孔2121が位置する平面とは平行であり、両者間の距離が100μm~2mmである。
【0008】
好ましくは、液滴吐出孔2121の面積が3mm×3mm未満である。
【0009】
好ましくは、電気加熱素子表面221の見かけの水接触角が90°未満である。
【0010】
好ましくは、リザーバ21の容積が1~2mlである。
【0011】
好ましくは、霧化コア2は、押圧片2113、上部封止ガスケット2114、押出室枠2115、駆動室本体2116、下部封止ガスケット2117、ベース2118及び基部23をさらに有し、駆動室本体2116、弾性ダイヤフラム2111、上部封止ガスケット2114、下部封止ガスケット2117及びベース2118がリザーバ21を構成し、押圧片2113が弾性ダイヤフラム2111の外壁に配置され、永久磁石片2112が押圧片2113と弾性ダイヤフラム2111との間に配置されて弾性ダイヤフラム2111の壁に当接し、押出室枠2115の内部が押出室212であり、押出室212の開口が液滴吐出孔2121であり、押圧片2113、永久磁石片2112及び弾性ダイヤフラム2111の中央部には、液滴吐出孔2121に対応する孔を有し、基部23がリザーバ21の底部に配置され、
電磁駆動ユニット31が電磁駆動ロッド3のキャビティ内に位置し、霧化コア2が基部23を介して電磁駆動ロッド3の外壁に配置される。
【0012】
好ましくは、電磁駆動ロッド3のキャビティ内に電源及び制御チップをさらに有し、電気加熱素子22が導線222を介して制御チップ及び電源に電気的に接続される。
【0013】
好ましくは、霧化コア2の外周を取り囲んで霧化器4を形成するマウスピース1をさらに備え、マウスピース1の中央部の底面と電気加熱素子22との間には、外部と連通する空気導入通路10が設けられる。電気加熱素子表面221で生成されたエアロゾルが、空気導入通路10から導入された空気によって吸い口にスムーズに運ばれて喫煙者に吸引されることを確保することができる。
【0014】
好ましくは、駆動室211と押出室212との間が液体通路2110である。
【0015】
好ましくは、マウスピース1の内部には空気導入通路10と連通するエアロゾル吐出孔12が設けられ、マウスピース1の側壁に観察窓11が設けられる。エアロゾル吐出孔12は、霧化後の液滴が喫煙者の口に入り込むための吸い口である。
【0016】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。
1、液体が定量供給される。本発明は、電磁駆動により液体を供給する方法を用いるため、1回当たりの給液量が制御可能であり、従来技術で導液綿などの媒体を介して発熱部品に受動的に毛管作用により液体を導く方法とは異なり、そして、従来技術でポンプ機構を用いて液体を供給する方法に比べて、本発明の液体供給装置(液体押出装置)自体がリザーバの一部であり、集積度を向上させるとともに、ポンプの外付けによる装置全体の大型化及びリザーバとポンプとの接続構造の複雑化を防止することができる。
2、液漏れ問題が解消される。本発明では、液滴吐出孔から押し出された液膜又は液滴の体積が小さく、液滴吐出孔と電気加熱素子表面との間隔が小さく(2mm未満、さらに数百ミクロンのみ)、押出室内の液体の駆動ストロークが短く(例えば5mm未満)、電気加熱素子の昇温速度が速く(通常数百ミリ秒以下)、液滴吐出孔から押し出された液滴又は液膜の凸面が電気加熱素子表面に接触する瞬間に、蒸発霧化が発生し、液膜又は液滴の霧化効率が高くなり、また、電気加熱素子の表面処理により、液滴の電気加熱素子表面における濡れ性及び広がり速度が向上されて、霧化が加速される。したがって、液膜又は液滴の霧化の際に、電気加熱素子表面に液体の残留が生じることはなく、液膜又は液滴の接触霧化と同時に、液滴吐出孔の外縁に残留した液体が迅速に押出室内に戻り、緩和時間が通常数百ミリ秒以下であるので、霧化後に液滴吐出孔外に液体が残留しないことを確保することができる。装置の電源が切れたとき又は装置が使用されないときに、液面形態が平面である液柱は、通常、液滴吐出孔外に流れて溢れることなく押出室の内壁に付着するようになっている。したがって、本発明の装置は、従来技術の漏れ防止構造及び漏れ防止技術が液漏れ問題を根本的に解決することができないという欠点を克服した。
3、本発明の電磁駆動は、従来技術の圧電駆動と比べて、装置が小型化されたときに、圧電素子の変形困難により、駆動力が大幅に減少されるという欠点を解決した。
4、本発明の電磁駆動される液体は、小体積の液滴又は液膜であり、従来技術の大体積の液体に比べて、以下の利点を有する。従来技術の受動導液式電子霧化は、多孔質セラミックコア、金属グリッド片、極薄金属ブレード、通常の電熱線などの電気加熱素子のどちらを用いて加熱しても、霧化液体と電気加熱素子との全体接触霧化及び大体積の液体の霧化であり、電気加熱素子の電熱変換効率が低下するとともに、電気加熱素子の発熱ムラが生じてしまう。また、従来の液滴式霧化に比べて、本発明の液滴又は液膜の生成過程が高速で制御可能であり、従来の給液量が制御できない大体積の液体の接触式霧化とは異なる。そして、本発明の液滴又は液膜の小体積霧化は、表面接触霧化及び小体積霧化の特徴を有し、電気加熱素子表面に液膜又は液滴が素早く濡れ広がって薄層液膜が生成され、加熱がより均一になり、大量の液体の付着により電気加熱素子表面の一部の温度が低下して表面温度の分布が不均一になるため、液体がバチバチと跳ねたり液滴が飛散したりすることはない。
5、本発明の喫味及び官能品質における利点。本発明の装置は、液漏れがなく、霧化が高速で均一であるといった利点に加え、電気加熱素子表面において小体積の液体が瞬時に霧化され、膜沸騰温度域を避けるように表面温度が調整されることにより、液体と電気加熱素子表面との間の蒸気膜による阻害を解消するだけでなく、未霧化液体の電気加熱素子表面への残留がない。従来技術の電子タバコの霧化に比べて、本発明では、空気導入通路から導入された空気が、電気加熱素子表面と素早く熱交換し、吸入負圧状態で、電気加熱素子表面で生成された熱を帯びた蒸気が空気によって運ばれて電気加熱素子表面から離れる。また、電気加熱素子表面の面積や粗さを調整し、電気加熱素子表面の温度を核沸騰域にすることにより、液滴の霧化後に電気加熱素子表面が急速に降温することができる。したがって、液滴が霧化されてエアロゾルが生成されて空気に運ばれた瞬間に、電気加熱素子表面が急速に降温し、液滴の霧化後に新たに接触する液体がないので電気加熱素子表面が空加熱されるという問題を効果的に防止するとともに、液滴吐出孔外に残留した液体が高温付着によって押出室内に正常に戻れないので液滴吐出孔が詰まるというリスクを防止することができる。したがって、本発明の装置は、焦げ臭などの望ましくない臭いの発生を防止することができる。
6、他の利点。本発明のリザーバ内の液体の体積が小さく(1~2mL)、永久磁石片と電磁駆動ユニットとの距離が短い(5mm以下)ため、低電力の電磁駆動装置だけで小体積の液体を駆動するのに十分な磁力を生成することができ、電磁駆動ユニットの消費電力が小さく、磁力駆動により安定した小体積の液滴又は液膜を生成することを満たす前提では、リザーバ内の液体の霧化による体積の減少や、装置を手で持つときの傾斜角度、吸引力の大きさなどは、液滴又は液膜の生成挙動、押し出された液滴又は液膜のサイズ、及び液滴又は液膜の霧化特性に顕著な影響を及ぼすことはない。また、本発明のリザーバは、集積度が高く、構造が簡単で、材料が安価で入手しやすく、使い捨ての交換可能な霧化器及び携帯使用に適し、即ち霧化器が使い捨てのものである。さらに、本発明の装置は、電子霧化タバコの使用に限定されるものではなく、小体積の液滴又は液膜の霧化によって使用量が制御可能な蒸気又はエアロゾルを生成する他の用途にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の電磁駆動式液体霧化装置の分解図である。
【
図4】本発明の霧化器と電磁駆動ロッドとの界面の断面図である。
【
図5】本発明の液滴吐出孔の液面が凹面である場合のリザーバと電気加熱素子表面との状態を示す図である。
【
図6】本発明の液滴吐出孔の液面が凸面である場合の液体凸面と電気加熱素子表面との接触状態を示す図である。
【
図7】本発明の電流-時間曲線図(上)、及び液面位置-時間曲線図(下)である。
【
図8】本発明の液滴又は液膜の生成周期の各時間帯の液面形態及び位置を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の内容をよりよく理解するために、実施例により図面を参照して本発明を詳細に説明するが、これらの実施形態は本発明を限定するためのものではない。
【0019】
図1に示すように、本発明の電磁駆動式液体霧化装置は、順次連結されるマウスピース1、霧化コア2及び電磁駆動ロッド3を備え、霧化コア2がリザーバ21、電気加熱素子22及び基部23を備える。
図2に示すように、リザーバ21は上から押圧片2113、永久磁石片2112、弾性ダイヤフラム2111、上部封止ガスケット2114、押出室枠2115、駆動室本体2116、下部封止ガスケット2117及びベース2118から構成され、本発明のリザーバの容積が1~2mlである。押出室枠2115の内部が押出室212であり、駆動室本体2116の内部が駆動室211を構成し、駆動室211及び押出室212がリザーバ21の内部に位置して互いに液体通路2110を介して連通している。電気加熱素子22、リザーバ21及び基部23が霧化コア2を構成する。電気加熱素子22が液滴吐出孔2121の上部に配置され、電気加熱素子表面221が押出室212の液滴吐出孔2121に面して、液滴吐出孔2121の表面と平行して所定の距離離間する。マウスピース1が霧化コア2の外周を取り囲んで霧化器4を構成する。電磁駆動ロッド3は、内蔵された電磁駆動ユニット31、電源及び制御チップを備える。
図4に示すように、霧化コア2が基部23を介して電磁駆動ロッド3の外壁に配置され、霧化器4及び電磁駆動ロッド3が本発明の電磁駆動式液体霧化装置を構成し、装置における電磁駆動ユニット31の通電により発生する磁場が、ベース2118及びリザーバ21の内部の霧化液体200を透過して永久磁石片2112に印加される。電気加熱素子22が導線222を介して制御チップ及び電源に電気的に接続される。電気加熱素子表面221と液滴吐出孔2121との距離が100μm~2mmであり、押圧片2113、永久磁石片2112及び弾性ダイヤフラム2111の中央部の孔の面積が、液滴吐出孔2121の面積よりも大きく、液滴吐出孔2121の面積が3mm×3mm未満であり、電気加熱素子表面221と液滴との接触面積も3mm×3mm未満である。
【0020】
図3に示すように、本発明のマウスピース1の中央部の底面と電気加熱素子22との間には、外部に連通する空気導入通路10が設けられ、マウスピース1の内部には空気導入通路10と連通するエアロゾル吐出孔12が設けられ、マウスピース1の側壁に観察窓11が設けられ、マウスピース1が霧化コア2の外周を取り囲んで霧化器4を構成する。空気導入通路10を設けることにより、液滴を霧化して生成されたエアロゾルを吸引する際に、空気導入通路10から導入された空気によって、電気加熱素子表面221で生成された霧化蒸気が、エアロゾル吐出孔12にスムーズに運ばれて喫煙者の口内に吸引されることを確保することができる。
【0021】
本発明の電磁駆動式液体霧化装置の各部品の要件は、以下の通りである。
永久磁石片2112は、環状ネオジム磁石、フェライト磁石、アルニコ永久磁石片又はサマリウムコバルト永久磁石片などを用いてもよい。弾性ダイヤフラム2111は、ジメチルポリシロキサン(PDMS)などのポリシロキサン弾性材、ポリウレタン(PU)などのポリエステル系弾性材などを用いてもよい。上部封止ガスケット2114及び下部封止ガスケット2117は、ポリイミドシリコーン材料又は類似の封止材料を用いてもよい。押出室枠2115は、ポリカーボネート(PC)、ポリカーボネートとABSとの複合材料などの耐高温材料を用いてもよい。駆動室本体2116は、ポリカーボネート(PC)、ポリカーボネートとABSとの複合材料、ABS、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリメチルメタクリレート(アクリル又はPMMA)などの材料を用いてもよい。ベース2118は、硬質ガラス、透明プラスチック(例えばPC、PMMA)などの磁場透過可能な材料を用いてもよい。
【0022】
図4に示すように、電磁駆動ユニット31は、小型又は超小型電磁コイルを用いて、永久磁石片2112を変位させるのに十分な磁力を発生させることで、弾性ダイヤフラム2111を押圧するか又は引っ張って湾曲させる。このため、磁場を発生させるために、電磁駆動ユニット31に駆動電圧を印加する必要があり、また、弾性ダイヤフラム2111の湾曲変形の時間に対する高速応答を実現するために、適切な駆動周波数を選択する必要がある。さらに、駆動装置の小型化による省スペース化を実現するために、MEMS微細加工技術を含めた方法でマイクロ電磁コイル又はマイクロ平面非螺旋状コイルを製造することができ、特にコイルの総数を減らすことにより駆動装置の製造工程を簡略化するとともに、コイルの総巻数を増やすことによりコイルの小型化を図ることができる。
【0023】
電気加熱素子22は薄層シート状構造であり、電気加熱効率、シート状構造の加工性、液滴の電気加熱素子表面221における濡れ性及び蒸発特性、素子の超小型化などを考えると、電気加熱素子は、表面が多孔質又は粗い金属/合金発熱シート、金属/合金グリッド発熱シート、マイクロナノ多孔質金属/合金フェルト、セラミック多孔質発熱シート、金属箔抵抗、金属電気加熱膜、表面が平滑な金属/合金発熱シート、MEMS技術に基づいて製造されるシリコン系発熱チップなどの表面特性及び熱特性が異なる様々な電気加熱素子を用いてもよい。
【0024】
本発明の電磁駆動式液体霧化装置の組み立ては、以下の通りである。
(1)リザーバ21の組み立て及び液体の注入:
両面に接着剤付きの下部封止ガスケット2117を用いてベース2118及び駆動室本体2116を接着した後、押出室枠2115とベース2118とを接着する。押出室枠2115の側面には、駆動室211及び押出室212内の液体200が流れるための通路2110が設けられる。駆動室211内の液面が弾性ダイヤフラム2111の内面と完全に接触可能な高さになり、押出室212内の液体が液滴吐出孔2121から溢れないままに室内の適切な高さになるまで液体200を駆動室211内に注入した後、両面に接着剤付きの上部封止ガスケット2114を用いて弾性ダイヤフラム2111と駆動室本体2116とを接着する。
上述した部材の接着が終了すると、永久磁石片2112を弾性ダイヤフラム2111の上方に押し当てて、永久磁石片2112の上方に押圧片2113を押し当てる。これにより、リザーバ21の組み立てが終了する。
(2)霧化コア2の組立:
組み立てられたリザーバ21を基部23に固定し、電気加熱素子22の導線222を駆動室本体2116の外壁の配線溝内に挿入する。
(3)電磁駆動式液体霧化装置の組立:
マウスピース1で霧化コア2の外部を取り囲み、マウスピース1の底部を基部23に取り付けて霧化器4を構成する。霧化器4を基部23を介して電磁駆動ロッド3の外壁と連結して本発明の電磁駆動式液体霧化装置を構成する。
【0025】
本発明の電磁駆動式液体霧化装置の動作原理は、以下の通りである。
【0026】
第1ステップ:電磁により液体を駆動して液膜又は液滴を生成して霧化する。
【0027】
本発明の装置の電磁駆動ロッド3が霧化器4と接続されて電源がオンにされると、電磁駆動ユニット31に駆動電圧及び所定波形の駆動電流が印加されるとともに、電気加熱素子22が電熱変換して急速に昇温する。このとき、電磁駆動ユニット31にて電磁変換が行われて磁場が発生し、磁場が電磁駆動ロッド3と霧化器4との接続箇所におけるハウジングを介してリザーバ21の底部のベース2118及び液体200を透過して永久磁石片2112に作用し、永久磁石片2112が磁力により吸引される。永久磁石片2112が磁力の作用で電磁駆動ユニット31に向けて変位して、その下方の弾性ダイヤフラム2111に所定の圧力を印加し、該圧力の駆動で、弾性ダイヤフラム2111が駆動室211内に向けて湾曲変形することにより、弾性ダイヤフラム2111に駆動室211内の液体200に対する圧力駆動効果が発生し、駆動室211内の液体200がリザーバ21内の通路2110を介して押出室212に流れ、さらに押出室212内の液体を液滴吐出孔2121の方向に移動させる。
【0028】
駆動電圧及び駆動電流の増大に伴い、押出室212内の液体が液滴吐出孔2121の方向に向けて移動し続けるとともに、液面形態が凹面101から平面に変化して液滴吐出孔2121の開口に近接し、駆動電圧及び駆動電流がある最大値まで増大すると、液滴吐出孔2121の開口の内縁の液面が液滴吐出孔2121の開口外に押し出され、液滴吐出孔2121と電気加熱素子22の電気加熱素子表面221との間には、液面形態が凸面103の液膜又は液滴が生成され、凸面103が高温の電気加熱素子表面221と接触した後、表面張力及び毛管力などの作用で、液滴吐出孔2121の外に露出している液膜又は液滴が自体の重力及び液滴吐出孔2121の付着力に抗し、電気加熱素子表面221に素早く濡れ広がって霧化され、霧化後のエアロゾルが、空気導入通路10から導入される空気によりマウスピース1のエアロゾル吐出孔12に運ばれて喫煙者に吸引される。
【0029】
第2ステップ:電磁緩和により液膜又は液滴を除去し電磁作用を停止する。
【0030】
電気加熱素子表面で液膜又は液滴が急速に霧化されると同時に、駆動電圧を低下させ、駆動電流の大きさ及び方向を同期して変化させることで、緩和が発生し、霧化後に液滴吐出孔2121の開口外に残留した液面又は開口の内縁の液面が押出室212内に後退し、液面形態が凸面から平面、さらに凹面へ急速に変化し、押出室212内の液体がさらにその底部に移動し、駆動電流がある逆方向最大値になると、押出室212内の液面の移動が停止して液面形態が凹面と維持される。さらに、駆動電圧及び駆動電流がゼロになると、電磁駆動ユニット31の動作が停止し、押出室212内の液面がある位置に安定し、液面形態が平面と維持される。上述したプロセスは、
図7及び
図8に示されている。
【0031】
駆動パラメータ及び時間の制御:
液膜又は液滴の生成周期の時間、1回当たりの吸引持続時間及びそれらの相互関係を設定することにより、一方では、液体の押出室内における駆動、押出室外における液膜又は液滴の生成、液膜又は液滴と電気加熱素子表面との接触霧化の過程を1回当たりの吸引動作の持続過程と同期させることができる。他方では、1回当たりの吸引動作の持続時間が液膜又は液滴の生成周期の時間を超えたり、吸引動作の持続時間が短すぎたり、吸引動作が急に中止したり又は電源が電力不足になったりする場合に、装置は電気的接続を自動的に切断し、駆動電圧及び駆動電流が直ちにゼロになり、電磁駆動ユニット31の動作が停止し、磁場及び磁力が瞬時に失われるため、押出室212内の液体の液面の位置及び形態が、切断前の液膜又は液滴の生成周期の初期位置及び平面状態に直ちに復帰する。
【0032】
本発明では、液膜及び液滴については、液体の液滴吐出孔2121の開口に形成された凸面液面の最高点と液滴吐出孔2121の開口の平面との垂直距離である凸面液面の高さが低い場合に、「液膜」と定義され、凸面液面の高さが高い場合に、「液滴」と定義され、この2つの場合が「液膜又は液滴」と総称される。本発明では、「液膜」、「液滴」又は「液膜又は液滴」とは、液体の液滴吐出孔2121における状態を意味する。
【0033】
本発明では、液滴の生成に影響を与える要素、パラメータ及び制御方法は、以下の通りである。
【0034】
液滴の生成に影響を与える要素としては、液滴吐出孔2121の幾何学的寸法、液滴の押出室及び液滴吐出孔2121の材質、押し出された液体200の特性、駆動条件などを含む。特に、液滴の押出室212及び液滴吐出孔2121の材料の濡れ性、液体の表面張力という液滴生成過程において重要な役割を果たす2つの要素を考慮する必要がある。押出室212全体の内壁及び液滴吐出孔2121の内壁が液体に直接接触するため、濡れ性が付着力に著しく影響を与える。本発明では、液滴の押出室212及び液滴吐出孔2121の内壁は親水性(例えば接触角が60°未満)や液体付着力が強いものが好ましく、液体メニスカスが凹面となってより高い曲率を有し、液体の凹面形態が液滴の押出室内でより安定することを確保する一方、撥水性の液滴吐出孔2121に液滴の尾引きが発生したり、押出液滴が液滴吐出孔2121に付着したり、液滴の押出速度が低下して液滴吐出孔2121の外に残留したりして、霧化速度を低減させて液滴の霧化品質に影響を与えることを防止することができる。また、液体の表面張力が液滴の生成及び変化に有意に影響を及ぼすため、液滴の表面張力を増大させることにより、液滴吐出孔2121の開口外の液滴が霧化された後、液滴吐出孔2121の開口外又は開口の内縁に付着した液体の液面が押出室内に急速に後退し、液滴吐出孔2121の開口外又は開口内における液滴の残留を防止し、液滴の生成速度を増加させるとともに、残留液体の液滴吐出孔における滞留や付着を防止し、液体の漏れや高温硬化による液滴吐出孔2121の詰まりを防止し、1液滴当たり及び1吸引当たりの霧化効果の一致性を確保する。上述により、液滴の生成前に、液体が溢れることなく押出室内で安定することを確保するとともに、駆動により押し出された液滴が霧化された後に、液体の液滴吐出孔2121における残留が発生しないことを確保し、即ち、液体の随時の押出室212内から外への漏出リスクをなくすことができる。濡れ性及び液体の表面張力が決定された場合に、液滴が適切な速度及び体積で押出室から押し出されるように、適切な液体粘度を選択する必要がある。
【0035】
リザーバ21内の液体の駆動モードは液滴の生成過程及び液面形態の変化を決める。電磁駆動装置の入力電流及び駆動電圧は、液体の押出室212での急速で安定した移動及び所望のサイズや形態の液滴の生成にとって非常に重要である。
【0036】
液滴の生成を制御する入力電流のパラメータは、入力電流の波形及び振幅、電気パルス幅などを含む。電磁駆動により液滴を生成する重要な指標は、入力電流の波形である。本発明の駆動電流の波形は正弦波電流、三角波電流、矩形波電流などであってもよく、矩形波電流及び可変周波数により所望の双方向電流を得、電流方向の変化により電磁極性の変更を実現することにより、液体の駆動過程、液面形態の変化及び液滴の生成を制御することが好ましい。液体の駆動、液滴の生成及び液滴の霧化などの各ステップ間の極めて短い時間間隔を確保して、所定の時間内に上述した各ステップを正確に電気的に制御することにより、液面の位置、形態及び液滴生成の安定性や一致性を確保するには、液体を押出室212内で移動させる段階、液滴吐出孔2121で液滴を押し出して安定化させる段階、液滴吐出孔2121で液面を後退させて押出室212内に移動する段階などを含む電流-時間曲線を作成し、液滴生成サイクル周期を実現し、入力電流の大きさと方向の変化、液面位置の変化、液面形態の変化の三者間の時間協調を達成しなければならない。
【0037】
具体的な実施形態は、以下の通りである。
図7に示すように、液滴生成周期(サイクル)の電流-時間曲線及び液面位置-時間曲線は5つの段階(段階I~V)に分けられ、対応する液面の形態及び位置は
図8に示されている。
段階I:液体駆動準備段階。電磁駆動ユニット31に駆動電流を印加すると、電流が0から負の値i
1となってその値で安定し、永久磁石片2112の受ける磁力が反発力であり、弾性ダイヤフラム2111が駆動室211外に湾曲して、押出室212内の液体が液面位置Aに位置して曲率が最大となる凹面状態(
図8-a)を保ち、対応時間が0~t
1である。
段階II:液体駆動及び液滴生成段階。駆動電圧が増大するとともに、電気加熱素子22が急速に昇温し、駆動電流の方向が負の電流から正の電流に徐々に変化し、永久磁石片2112の受ける磁力が反発力から吸引力に急速に変化し、永久磁石片の押圧作用により、弾性ダイヤフラム2111が駆動室211内に急速に湾曲し、押出室212内の液体が圧力の駆動により液滴吐出孔2121に向けて移動し、押出室212内の液面の移動ストロークは、駆動電流が負の値i
1から0となり、液面が位置Aから液滴吐出孔の内縁(位置0)まで移動し、対応時間がt
1~t
2であり、液面形態が位置Aの凹面から位置0の平面(
図8-b)に変化するステップ1と、駆動電流が0から正の値i
2にさらに増大し、液面が液滴吐出孔の内縁(位置0)から液滴吐出孔の外縁の位置Bまで移動し、対応時間がt
2~t
3であり、液面形態が位置0の平面から位置Bの凸面に変化するステップ2とを含み、このとき液滴吐出孔2121の外縁に凸面液滴が生成されて電気加熱素子表面221と直接接触する。
段階III:液滴霧化段階。駆動電圧が一定に保持され、電流が最大値i
2に維持され、永久磁石片2112の受ける磁力が吸引力であって最大であり、弾性ダイヤフラム2111の駆動室211内への湾曲曲率が最大であり、液滴吐出孔2121から押し出された液滴が電気加熱素子表面221に濡れ広がり、押出室内の液体から分離(遮断)されて急速に霧化され、対応時間がt
3~t
4(
図8-c)である。
段階IV:液体の逆方向駆動及び後退段階。駆動電流がi
2から0となり、液面が位置Bから液滴吐出孔の内縁(位置0)まで移動し、対応時間がt
4~t
5であり、液面形態が位置Bの凸面から位置0の平面(
図8-d)に変化するステップ1と、駆動電流が0から負の値i
1にさらに減少し、液面形態が凹面となるステップ2とを含み、駆動電流がi
1で所定の時間安定し、液面形態が凹面(
図8-e)を保ち、対応時間がt
6~t
7である。
(ただし:電磁駆動力が十分に大きくて押出室の長さが十分に短いという理想的な場合に、1サイクルの液面の押出室内の開始位置A及び復帰位置A’における変化は、液滴生成過程及び液滴状態に影響を与えないと考えられる。)
段階V:液体安定化及び駆動停止段階。電磁駆動装置の電気的接続を切断すると、駆動電流が0となり、永久磁石片2112及び弾性ダイヤフラム2111の状態が変わらず、押出室212内の液面が位置0の平面(
図8-b又は
図8-d)に変化する。吸引が終了する。
【0038】
各液滴生成周期及び押出液滴の霧化につれて、駆動室211及び押出室212内の液体の液面が徐々に下降し、リザーバ21内の液体の消費に応じて、液体の押出室内の移動状態、液面形態の変化、液滴の生成速度、液面の後退速度、押出液滴の高さ及び電気加熱素子表面211における霧化状態などが各液滴生成周期で一定になることを確保するために、所定の吸引回数の範囲内及び毎回の吸引過程において、各液滴生成周期の駆動電圧、入力電流振幅、電磁駆動周波数及び電磁パルス幅(時間)などのパラメータを同期して最適化し段階的に変更する必要がある。小体積の液体(例えば1~2ml)及び小型のリザーバ21を用いて、液体の体積及びリザーバ21のサイズの液滴生成及び霧化への影響が最小であることを確保し、電磁駆動周波数に適合する適度な弾性率の弾性ダイヤフラム2111を用いて、各液滴生成周期において、駆動室211内の液面が弾性ダイヤフラム2111の内壁の表面と完全に接触することを確保する。
【0039】
液体駆動及び液滴生成の電流-時間曲線を設定するほか、上述した液体駆動及び液滴生成の時間と霧化エアロゾルの吸引時間との協調性を考える必要がある。即ち、ボタン操作又は吸引動作により、電磁駆動ユニット31及び電気加熱素子22が電源と同時に導通され、電磁駆動が起動して液体200を押圧して押出室212から液滴吐出孔2121へ移動させるときに、電気加熱素子22が同期して急速に昇温し、液滴吐出孔2121で押し出された液滴の凸面が電気加熱素子表面221と直接接触する場合に、接触した液滴が電気加熱素子表面221で急速に霧化されて喫煙者に吸引される。具体的には、電気加熱素子22の昇温速度が電磁駆動による液滴生成速度以上であることを確保した場合に、一旦液滴が生成されて加熱面と接触すると直ちに霧化されるか、又は1吸引当たりの有効持続時間を1つの液滴生成周期と等しく設定し、エアロゾルの吸引持続時間が1つの液滴生成周期を超えると、装置全体が自動的に停電保護状態になり、電磁駆動ユニット31及び電気加熱素子22の動作が停止することで、液滴生成周期を超える時間に液滴が生成されていないため、空吸引及び電気加熱素子の空加熱が発生するという問題を防止する。
【0040】
本発明では、液滴の蒸発霧化に影響を与える要素及びパラメータは、以下の通りである。
【0041】
液体の粘度及び表面張力は、液滴が適切な速度及び体積で押出室212から押し出されることを満たすほか、液体の表面張力、粘度及び電気加熱素子表面の濡れ性の、液滴の電気加熱素子表面221における広がりや収縮に対する影響を総合的に考える必要がある。液体の高粘度が液体の表面における広がりや収縮を抑制するが、本発明の液滴が高温の表面と接触し、液滴の表面張力及び粘度が加熱表面と接触する瞬間に大幅に低下するので、液滴の表面における広がりや収縮を促進し、高粘度の液滴の霧化効率に影響を与えることはない。
【0042】
本発明の液滴吐出孔2121と電気加熱素子表面221との間の距離及び液滴吐出孔の面積は、霧化量及びエアロゾル吸引量に影響を与える2つの重要なパラメータである。(1)駆動圧力及び液体の性質が一定である場合に、液滴吐出孔と電気加熱素子表面との距離が一定であると、液滴吐出孔2121の孔径が小さくなるほど、押出室212内の液体の液滴吐出孔2121での押出抵抗力が大きくなり、押出液滴と電気加熱素子表面221との接触時間が長くなり、そして、押出液滴の半径及び電気熱素子表面221との接触表面積が低減され、液滴の表面における広がり直径が低減されることで、霧化量が低減されて霧化速度が遅くなる。したがって、本発明では、押出液面が電気加熱素子表面と急速に接触し、液滴が電気加熱素子表面に急速に濡れて最大広がり直径を得、液滴の急速な霧化及び電気加熱素子表面221の電気加熱効率の十分な活用を実現するために、表面積が近い液滴吐出孔2121及び電気加熱素子表面221が好ましい。(2)駆動圧力及び液体の性質が一定である場合に、液滴吐出孔2121の面積が一定であると、液滴吐出孔2121と電気加熱素子表面221との距離が大きくなるほど、押出液滴の高さが高くなり、液滴と電気加熱素子表面との接触時間が長くなり、霧化時間が長くなる場合がある。接触時間が長くなると、電気加熱素子表面221と接触する液滴の質量が大きくなり、霧化量が多くなる場合があるが、質量の大きな液滴の電気加熱素子表面221への降温作用により、電気加熱素子表面の加熱ムラが発生することで、逆に霧化量が少なくなる場合があるため、霧化速度と霧化量とのバランスをとる必要がある。
【0043】
以上のように、押出液滴の凸面103と電気加熱素子表面221との急速な接触、電気加熱素子表面221における急速な濡れ広がり及び急速で均一な霧化を実現して、適切な霧化量及びエアロゾル吸引量を得るために、電気加熱特性が適切な電気加熱素子の材料及び表面積、適切なサイズの液滴吐出孔2121の面積、液滴吐出孔と電気加熱素子表面221との適切な距離を選択することができる。好ましくは、押出液滴が液滴吐出孔2121と電気加熱素子表面との間に、相応する高さで液面形態が凸面103である薄層液膜又は液滴になるように、本発明における液滴吐出孔2121と電気加熱素子表面との間隔が100μm~2mmであり、液滴吐出孔2121の面積が3mm×3mm以下であり、液滴と接触する電気加熱素子表面221の面積も3mm×3mm以下である。
【0044】
本発明の液体凸面103と電気加熱素子表面221との距離が小さく、押出室212の長さが短く、液滴の表面に対する高速衝撃(代表的な衝撃速度がm/sレベルである)とは異なり、液滴と電気加熱素子表面221とが接触するときの速度が遅い(代表的な接触速度がmm/sレベルである)ので、液滴の電気加熱素子表面221に対する衝撃を大幅に緩和し、液滴の激しい蒸発を防止して、押出速度の電気加熱素子表面221の温度に対する影響を最小限に抑える。したがって、液滴の駆動/押出速度及び液滴と電気加熱素子表面221との接触角度は、液滴の生成及び霧化に明らかな影響を与えることはない。
【0045】
本発明の液滴霧化特性に最も大きな影響を与えるのは、電気加熱素子22の材料の熱特性及び材料の表面特性である。熱特性は、熱伝導率、熱容量及び加熱表面の酸化性を含む。熱伝動率の高い材料を選択すると、液滴の電気加熱素子表面221における広がり速度を速めることができ、液滴が広がり段階で完全に蒸発するために、電気加熱素子表面221の温度を高めて熱伝導速度を向上させることにより、液滴と固体の接触時間を短縮することができる。酸化されにくい電気加熱素子表面を選択すると、同様に液滴の広がり直径を増大して液滴と電気加熱素子表面221との接触時間を短縮することもできる。電気加熱素子表面の粗さ、マイクロナノ構造及び表面濡れ性などの表面特性を変えることにより、液滴の沸騰伝熱を促進することができる。濡れ性に優れた(見かけの接触角が90°未満のように親水性に優れた)加熱表面を選択すると、ライデンフロスト温度を高め、液滴と電気加熱素子表面221との間の安定した蒸気膜の生成を阻止し、熱伝導率の小さい蒸気膜が液滴と電気加熱素子表面221とを阻害することにより液滴の蒸発速度が低下するという欠陥を防止する。そして、電気加熱素子表面221の濡れ性を増加させることにより、液滴の電気加熱素子表面221における広がり直径を増加させ、液滴の広がりを容易にし、液滴と電気加熱素子表面221との接触時間を短縮することができる。多孔質の電気加熱素子表面221を用いると、空孔率を増加させて、表面粗さを増加させ、上述した液滴と電気加熱素子表面221との間に生成された蒸気を細孔内に浸透させ、蒸気が表面から逃げる際に生じる圧力を解放し、ライデンフロスト温度を高め、液滴の電気加熱素子表面221で生じる膜沸騰を遅らせるか又は完全に阻止することができる。空孔率の増加により、細孔と液体とが接触する実際の表面積を低減させ、電気加熱素子表面221のキャビティ内に空気及び蒸気を捕捉し、熱伝導効率を低下させ、したがって、熱伝導率を増大させるには、適切な電気加熱素子表面221の温度が必要である。また、本発明の液滴と電気加熱素子表面221との接触は低速度接触であり、液滴が接触する際に、十分に高速で表面の細孔内に浸透していないが、表面に広がって薄膜を形成して毛管力の作用により多孔質の表面に吸引されるので、電気加熱素子表面221がナノテクスチャ構造又はナノ繊維構造のようなマイクロナノ構造を用いることにより、液滴と電気加熱素子表面221との接触を改善でき、液面が電気加熱素子表面221に広がる際に、液滴の後退や弾きなどが発生することはなく、液滴のマイクロナノ構造における完全な蒸発に有利である。高熱伝導率で表面濡れ性に優れた多孔質浸透性の電気加熱素子表面211を用いる場合に、電気加熱素子表面221の温度は非常に重要なパラメータである。選択される電気加熱材料の電気加熱素子表面の温度は、液滴に膜沸騰が発生して液滴の蒸発時間が大幅に増加することにより蒸発速度が低下することを防止するために、ライデンフロスト温度よりも低いことが必要である一方、できるだけ核沸騰範囲にある必要もあり、これは、当該範囲の液滴が大きな固液接触面積を有し、液滴の濡れ性が優れ、表面粗さの増加により核沸騰を促進し、最短の蒸発時間を有し、急速に霧化することができるとともに、液滴蒸発時間の表面温度の上昇に伴う変化が小さく、液滴が一定の蒸発状態を保持し、均一な霧化を実現することができるからである。
【0046】
電気加熱素子表面221と接触する液滴の蒸発霧化に対する空気の影響は主に、加熱表面の空気の流速が大きくなると、液滴の濡れ面積が大きくなり、液滴の高さが低くなり、蒸発時間が短くなることと、霧化エアロゾルが吸引される際に、加熱表面に所定の負圧が形成され、霧化蒸気の拡散係数が大きくなり、液滴の蒸発速度が速くなることである。したがって、マウスピース1の空気導入通路10の設計及び負圧状態は、液滴の急速霧化に有利である。
【0047】
以上のように、本発明に用いられる電気加熱素子材料は、熱伝導率及び表面温度の高い金属、合金又はシリコンなどの材質を選択した上で、霧化液滴の濡れ性が優れた(即ち接触角が小さい)表面材質又は改質表面材料を選択し、多孔質又はマイクロナノ構造などを有する、表面粗さの高いグリッド状、繊維状金属又は合金、又は表面にパターン化微細構造を有するシリコン系発熱チップを用いることができ、そして、表面温度がライデンフロスト温度よりも低くて核沸騰温度域にあることが好ましい。
【0048】
以上は本発明の具体的な実施形態のみであるが、本発明の保護範囲はこれらに限定されるものではなく、当業者が本発明に開示された技術的範囲内で容易に想到できる任意の変更又は置換は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものである。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に準じるべきである。
【符号の説明】
【0049】
1:マウスピース
10:空気導入通路
101:凹面
103:凸面
11:観察窓
12:エアロゾル吐出孔
2:霧化コア
200:液体
21:リザーバ
211:駆動室
2110:液体通路
2111:弾性ダイヤフラム
2112:永久磁石片
2113:押圧片
2114:上部封止ガスケット
2115:押出室枠
2116:駆動室本体
2117:下部封止ガスケット
2118:ベース
212:押出室
2121:液滴吐出孔
22:電気加熱素子
221:電気加熱素子表面
222:導線
23:基部
3:電磁駆動ロッド
31:電磁駆動ユニット
4:霧化器
【要約】
霧化コア(2)及び電磁駆動ユニット(31)を備え、霧化コア(2)は、リザーバ(21)及び電気加熱素子(22)を備え、電気加熱素子表面(221)と液滴吐出孔(2121)とが所定の距離離間して対向するように、電気加熱素子(22)が液滴吐出孔(2121)の上部に配置され、電磁駆動ユニット(31)は、霧化コア(2)の底部に配置される電磁駆動式液体霧化装置である。この電磁駆動式液体霧化装置は、小型で、液体が定量供給され、霧化される液体の体積が小さく、液滴の生成過程及び液面形態が制御可能であり、液漏れ問題はない。
【選択図】
図6