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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】無線通信モジュールの評価装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/00 20150101AFI20220628BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H04B17/00 N
G01R31/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022007165
(22)【出願日】2022-01-20
【審査請求日】2022-03-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 勇気
(72)【発明者】
【氏名】竹中 英二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 克征
(72)【発明者】
【氏名】桂 豪
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-101163(JP,A)
【文献】特開2014-239372(JP,A)
【文献】特開2019-128167(JP,A)
【文献】特開平4-321113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0212386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/00
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体となる無線通信モジュールの温度を調整する温度調整器と、
前記無線通信モジュールおよび前記温度調整器を収容する収容ケースと、
前記収容ケース内に乾燥気体を供給する気体供給部と、
前記無線通信モジュールに対向して設けられ、測定用の電波を送受信する測定用アンテナと、を備え、
前記収容ケースは、ケース本体と、前記ケース本体の開口を塞ぐ閉止板と、を有し、
前記閉止板は、発泡体である誘電体により形成され、前記ケース本体の開口端に対して当接および離間可能とされ、
前記収容ケースは、前記収容ケースの内圧が所定値以上となったときに、前記閉止板の少なくとも一部が前記ケース本体の開口端から離間して前記収容ケース内の気体を排出可能とされている、
無線通信モジュールの評価装置。
【請求項2】
前記気体供給部は、前記乾燥気体を供給する供給源と、前記乾燥気体を放出する1または複数の放出孔が形成された筒状の放出部を備え、
少なくとも一つの前記放出部は、前記収容ケースの上部に、前記放出孔を下に向けて設置されるか、前記収容ケースの下部に、前記放出孔を上に向けて設置される、
請求項1記載の無線通信モジュールの評価装置。
【請求項3】
複数の前記放出孔は、前記放出部の長さ方向に間隔をおいて形成されている、
請求項2記載の無線通信モジュールの評価装置。
【請求項4】
前記放出部は複数設けられ、
複数の前記放出部は、前記収容ケースの上部に、前記放出孔を下に向けて設置された第1放出部と、前記収容ケースの下部に、前記放出孔を上に向けて設置された第2放出部と、を含む、
請求項2または3記載の無線通信モジュールの評価装置。
【請求項5】
前記閉止板は、発泡体で形成され、前記発泡体の発泡倍率は3倍以上である、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の無線通信モジュールの評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信モジュールの評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、無線通信モジュールの温度特性を評価するには、恒温槽を有する評価装置が用いられる。恒温槽は、被検体となる無線通信モジュールと、測定用アンテナとを収容する。この評価装置を用いて無線通信モジュールの評価を行うには、恒温槽内で所定の温度とされた条件で、無線通信モジュールに、測定用アンテナとの間で通信を行わせる。
【0003】
この評価装置では、例えば、低温試験を行った後、恒温槽内の温度を常温に戻す場合、無線通信モジュールに結露が生じ、結露によって無線通信モジュールの性能に影響が及ぶ可能性がある。そのため、結露対策として、乾燥空気を恒温槽内に流通させる機構を備えた評価装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-8275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記評価装置では、乾燥空気が恒温槽にうまくいきわたらず、無線通信モジュールにおける結露の抑制が不十分となる可能性がある。
【0006】
本発明の一態様は、無線通信モジュールにおける結露を抑えることができる無線通信モジュールの評価装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、被検体となる無線通信モジュールの温度を調整する温度調整器と、前記無線通信モジュールおよび前記温度調整器を収容する収容ケースと、前記収容ケース内に乾燥気体を供給する気体供給部と、前記無線通信モジュールに対向して設けられ、測定用の電波を送受信する測定用アンテナと、を備え、前記収容ケースは、ケース本体と、前記ケース本体の開口を塞ぐ閉止板と、を有し、前記閉止板は、発泡体である誘電体により形成され、前記ケース本体の開口端に対して当接および離間可能とされ、前記収容ケースは、前記収容ケースの内圧が所定値以上となったときに、前記閉止板の少なくとも一部が前記ケース本体の開口端から離間して前記収容ケース内の気体を排出可能とされている、無線通信モジュールの評価装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、収容ケース内に供給された気体が、収容ケースの内圧上昇とともに逐次排出されるため、収容ケースにおいて乾燥気体の循環が適切に行われ、収容ケース内は、乾燥気体の雰囲気が維持される。よって、無線通信モジュールの結露を抑制することができる。
【0009】
前記気体供給部は、前記乾燥気体を供給する供給源と、前記乾燥気体を放出する1または複数の放出孔が形成された筒状の放出部を備え、少なくとも一つの前記放出部は、前記収容ケースの上部に、前記放出孔を下に向けて設置されるか、前記収容ケースの下部に、前記放出孔を上に向けて設置されることが好ましい。
【0010】
複数の前記放出孔は、前記放出部の長さ方向に間隔をおいて形成されていることが好ましい。
【0011】
前記放出部は複数設けられ、複数の前記放出部は、前記収容ケースの上部に、前記放出孔を下に向けて設置された第1放出部と、前記収容ケースの下部に、前記放出孔を上に向けて設置された第2放出部と、を含むことが好ましい。
【0012】
前記閉止板は、発泡体で形成され、前記発泡体の発泡倍率は3倍以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、無線通信モジュールにおける結露を抑えることができる無線通信モジュールの評価装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の無線通信モジュールの評価装置の構成図である。
図2】被検体保持ユニットの一部の構成図である。
図3】無線通信モジュールおよび第1温度調整機構の構成図である。
図4】無線通信モジュールおよび第1温度調整機構の分解図である。
図5】被検体保持ユニットの一部の斜視図である。
図6】気体供給部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、実施形態の無線通信モジュールの評価装置100の構成図である。無線通信モジュールの評価装置は、単に「評価装置」ということがある。図2は、被検体保持ユニット10の一部の構成図である。図3は、無線通信モジュール1および第1温度調整機構20の構成図である。図3は、図2にAで示す部分の拡大図である。図4は、無線通信モジュール1および第1温度調整機構20の分解図である。図5は、被検体保持ユニット10の一部の斜視図である。図6は、気体供給部40の模式図である。
【0016】
X方向、Y方向およびZ方向は次のように定義される。X方向は、被検体保持ユニット10と測定用アンテナユニット60とが並ぶ方向である。+X方向は、測定用アンテナユニット60から被検体保持ユニット10に向かう方向である。Z方向は上下方向である。+Z方向は上方である。Y方向は、X方向およびZ方向に直交する方向である。被検体保持ユニット10については、測定用アンテナユニット60に近づく方向を「前方」という。測定用アンテナユニット60については、被検体保持ユニット10に近づく方向を「前方」という。なお、ここで定める位置関係は、評価装置100の使用時の姿勢を限定しない。
【0017】
[無線通信モジュール]
図1および図2に示すように、評価装置100は、被検体である無線通信モジュール1を評価するための装置である。評価装置100の説明に先だって、無線通信モジュール1について説明する。
図4に示すように、無線通信モジュール1は、アンテナ基板2と、RFIC3とを備える。
アンテナ基板2は、矩形板状の基材4と、アンテナパターン5(図5参照)とを備える。基材4は、例えば、誘電正接が小さく(すなわち、高周波信号の損失が小さく)、高周波信号の伝送特性の良い材料で形成されている。アンテナパターン5は、基材4の一方の面4a(-X方向の面)または基材4の内部に形成されている。
【0018】
アンテナパターン5は、特に限定されないが、例えば、複数の放射素子(図示略)が面4aに二次元状に形成されたアレーアンテナやフェーズドアレーアンテナであってよい。アンテナパターン5は、例えば、線状アンテナ、平面アンテナ、マイクロストリップアンテナ、パッチアンテナ等の任意のアンテナであってもよい。
【0019】
RFIC3は、ミリ波帯などの高周波信号を処理する集積回路(RFIC:Radio Frequency Integrated Circuit)を備える。RFIC3に適用可能なICパッケージとしては、例えば、BGA(Ball Grid Alley)、CSP(Chip Size Package)、FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)等がある。RFIC3は、アンテナ基板2の他方の面4b(+X方向の面)に実装されている。RFIC3は、例えば、はんだ(SnAgCu等)などで形成された接続部によって、アンテナ基板2の面4bに実装されている。
【0020】
RFIC3は、例えば、矩形板状とされている。RFIC3のY方向の寸法は、アンテナ基板2のY方向の寸法より小さい。RFIC3のZ方向の寸法は、アンテナ基板2のZ方向の寸法より小さい。
【0021】
無線通信モジュール1は、例えば、ミリ波等の高周波信号の送受信を行う。無線通信モジュール1は、高周波信号の送信と受信の両方が可能であることが好ましいが、送信のみ、または受信のみを行う無線通信モジュールであってもよい。高周波信号の周波数は、例えば、10GHz~300GHz、60GHz~80GHz等が挙げられる。
【0022】
[無線通信モジュールの評価装置]
図1に示すように、評価装置100は、被検体保持ユニット10と、第1温度調整機構20と、収容ケース30と、気体供給部40と、移動機構50と、測定用アンテナユニット60と、第2温度調整機構70と、位置確認機構80と、チャンバ90と、を備える。
【0023】
(被検体保持ユニット)
被検体保持ユニット10は、基台11と、背板12と、支持板13と、複数の支持柱14(図2参照)と、押さえ板15と、を備える。
背板12は、基台11の上部から上方に延出する。支持板13は、背板12の前面(-X方向の面)に重ねられている。本実施形態では、背板12および支持板13は、X方向に垂直である。
【0024】
図2に示すように、支持柱14は、支持板13の前面(-X方向の面)から前方(-X方向)に延出する。支持柱14は、前から見て、押さえ板15の四隅にそれぞれ設けられている(図5参照)。支持柱14の先端面には、受け孔(図示略)が形成されている。
【0025】
押さえ板15は、被検体となる無線通信モジュール1を保持するホルダとして機能する。押さえ板15は、無線通信モジュール1で送受信される電波に対する影響が少ない材料、例えば、非金属材料(例えば、樹脂、ガラスなど)で構成される。押さえ板15は、樹脂製であることが好ましい。押さえ板15は、繊維強化樹脂で形成されていてもよい。押さえ板15は、例えば、絶縁性材料で構成される。
押さえ板15が樹脂で形成されていると、無線通信モジュール1で送受信される電波に対する影響を小さくできる。よって、無線通信モジュール1の特性を精度よく評価することができる。
【0026】
図5に示すように、押さえ板15は、例えば、矩形状とされている。押さえ板15には、1または複数の貫通口16が形成されている。貫通口16は、押さえ板15の一方の面から他方の面にかけて、押さえ板15を貫通して形成されている。本実施形態では、貫通口16は、押さえ板15の厚さ方向から見て、矩形状とされている。本実施形態において、貫通口16の数は、2つである。2つの貫通口16は、上下方向(Z方向)に間隔をおいて形成されている。貫通口16は、押さえ板15の厚さ方向から見て、無線通信モジュール1のアンテナパターン5を包含する大きさとされている。
【0027】
押さえ板15は、固定具17によって支持柱14の先端面に固定されている。押さえ板15の四隅には挿通孔(図示略)が形成されている。固定具17は、前記挿通孔に挿通して、支持柱14の前記受け孔に挿入される。固定具17は、ネジ止めなどにより前記受け孔に固定される。これにより、押さえ板15は、無線通信モジュール1をヒートスプレッダ22に向けて押さえ込んでいる(図3参照)。
【0028】
被検体保持ユニット10は、Z方向に沿う回転軸の周りに回動することができる。これにより、被検体保持ユニット10は、測定用アンテナユニット60に対する向きを任意に設定できる。本実施形態では、被検体保持ユニット10は測定用アンテナユニット60に対して正対するが、被検体保持ユニット10は、回動軸の周りの回動によって、左右方向に向きを変えることもできる。
【0029】
(第1温度調整機構)
図3および図4に示すように、第1温度調整機構20は、無線通信モジュール1の温度を調整する。
第1温度調整機構20は、温度調整器21と、ヒートスプレッダ22と、調整用温度センサ23と、伝熱シート24と、モニタ用温度センサ25と、ヒートシンク26と、電源27と、制御部28と、露点計29(図2参照)と、を備える。
【0030】
温度調整器21は、例えば、矩形の板状とされている。温度調整器21は、ヒートシンク26の前面(-X方向の面)に重ねられている。温度調整器21は、例えば、ペルチェ素子である。通電によってペルチェ素子に第1の方向の電流が流れると、ペルチェ素子の一方の面の温度は上昇し、他方の面の温度は降下する。ペルチェ素子に第2の方向(第1の方向とは反対の方向)の電流が流れると、ペルチェ素子の一方の面の温度は降下し、他方の面の温度は上昇する。ペルチェ素子の一方の面および他方の面の温度は、ペルチェ素子に流れる電流の大きさによって定められる。
【0031】
図4に示すように、ヒートスプレッダ22は、温度調整器21からの熱を拡散させることができる。ヒートスプレッダ22は、第1部分22Aと、第2部分22Bとを有する多層構造(詳しくは、二層構造)とされている。第1部分22Aおよび第2部分22Bは、熱伝導率が高い材料、例えば、銅、アルミニウムなどの金属材料、炭素材料などによって形成される。
【0032】
第1部分22Aは、例えば、矩形の板状とされている。第1部分22Aは、温度調整器21の前面(-X方向の面)に重ねられている。第1部分22Aは、厚さ方向から見て、温度調整器21を包含する大きさとされている。
【0033】
第2部分22Bは、第1部分22Aの前面(-X方向の面)に重ねられている。第2部分22Bは、例えば、矩形の板状とされている。第2部分22Bは、厚さ方向から見て、無線通信モジュール1のRFIC3を包含する大きさとされている。本実施形態では、第2部分22BのY方向の寸法は、RFIC3のY方向の寸法より大きい。第2部分22BのZ方向の寸法は、RFIC3のZ方向の寸法より大きい。
本実施形態では、第2部分22BのY方向の寸法は、第1部分22AのY方向の寸法より小さい。第2部分22BのZ方向の寸法は、第1部分22AのZ方向の寸法より小さい。
【0034】
第2部分22Bの後面と第1部分22Aの前面との間には、応力緩和層22Cが形成されている。応力緩和層22Cは、例えば、放熱グリスで構成される。放熱グリスは、複数の導電性粒子(例えば、金属粒子)を含む流動性基材である。流動性基材は、例えば、シリコーン系グリス、ポリオレフィン系グリスなどである。流動性基材は、例えば、液状または半固体状である。導電性粒子は、例えば、金属粒子、セラミック粒子などである。金属粒子は、例えば、熱伝導率の高い金属(銅、銀、アルミニウム等)で形成される。セラミック粒子は、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウムなどで形成される。第2部分22Bは、第1部分22Aの前面に、応力緩和層22Cを介して面的に接触している。
【0035】
ヒートスプレッダ22は、第1部分22Aに応力緩和層22Cを介して第2部分22Bが設けられた構造を有する。無線通信モジュール1は、第2部分22Bに押しつけられる。本実施形態では、無線通信モジュール1は、伝熱シート24(後述)およびモニタ用温度センサ25(後述)を介して第2部分22Bに押しつけられる。無線通信モジュール1が第2部分22Bを押圧することで生じた応力は、応力緩和層22Cによって緩和される。そのため、温度調整器21に加えられる押圧力を抑えることができる。よって、温度調整器21の破損を回避できる。
【0036】
調整用温度センサ23は、ヒートスプレッダ22の温度を検出する。調整用温度センサ23は、例えば、ヒートスプレッダ22の第1部分22Aに内蔵されている。調整用温度センサ23は、例えば、熱電対、サーミスタ、測温抵抗体等を備える。
【0037】
伝熱シート24は、第2部分22Bの前面と、無線通信モジュール1のRFIC3の後面との間に設けられる。伝熱シート24は、第2部分22Bの前面と、RFIC3の後面とに接する。本実施形態では、伝熱シート24の前面の一部は、モニタ用温度センサ25を介してRFIC3の後面に接する。伝熱シート24は、第2部分22Bからの熱をRFIC3に伝えることができる。
【0038】
伝熱シート24は、例えば、矩形状とされている。伝熱シート24は、例えば、炭素材料、金属、無機化合物等で構成される熱伝導性材料と、樹脂とを含有する。炭素材料としては、例えば、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンブラックなどが挙げられる。金属としては、例えば、銅、銀、アルミニウムなどが挙げられる。無機化合物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0039】
伝熱シート24は、厚さ方向に圧縮変形可能な弾性体であってよい。これにより、第2部分22BとRFIC3との隙間を小さくし、第2部分22BとRFIC3との間の伝熱効率を高めることができる。伝熱シート24は、可撓性を有する。伝熱シートは、放熱シート、熱伝導シートともいう。
【0040】
伝熱シート24は、厚さ方向から見て、無線通信モジュール1のRFIC3を包含する大きさとされている。伝熱シート24は、第2部分22Bの前面を包含する大きさとされている。本実施形態では、伝熱シート24は、第2部分22Bの前面と同形である。伝熱シート24は、第2部分22Bの前面に重ねられている。伝熱シート24は、第2部分22Bの前面を全域にわたって覆う。
【0041】
伝熱シート24の両面は、非粘着性である。そのため、伝熱シート24は、無線通信モジュール1に接着しない。よって、無線通信モジュール1の着脱の操作を容易にすることができる。
【0042】
モニタ用温度センサ25は、シート状とされている。モニタ用温度センサ25は、RFIC3の温度を検出する。モニタ用温度センサ25は、例えば、熱電対である。モニタ用温度センサ25は、伝熱シート24とRFIC3との間に設けられる。モニタ用温度センサ25は、厚さ方向から見て、RFIC3より小さい。モニタ用温度センサ25でRFIC3の温度を測定することによって、RFIC3の温度を正確に把握できる。モニタ用温度センサ25は、伝熱シート24より薄い。モニタ用温度センサ25の厚さは、例えば、伝熱シート24の厚さの10分の1以下であってよい。
【0043】
ヒートシンク26は、温度調整器21の後面側に設けられている。ヒートシンク26は、例えば、水冷式、空冷式などのヒートシンクである。ヒートシンク26は、水冷式であることが望ましい。ヒートシンク26は、支持板13の前面に設けられている(図2参照)。
ヒートシンク26は、温度調整器21および無線通信モジュール1の温度を短時間で上昇または降下させることができる。
【0044】
電源27は、温度調整器21に通電する。
制御部28は、調整用温度センサ23の検出値に基づいて、電源27から温度調整器21に流れる電流を制御することにより、温度調整器21の温度を調整する。
露点計29(図2参照)は、収容ケース30内の露点を測定する。
【0045】
(収容ケース)
図2および図5に示すように、収容ケース30は、被検体となる無線通信モジュール1および温度調整器21を収容する。収容ケース30は、ケース本体31と、閉止板32とを備える。
【0046】
ケース本体31は、支持板13の前面から前方に延出する。ケース本体31は、底板33と、一対の側板34と、上板35とを備える。底板33は、例えば、XY平面に沿う矩形状の板である。一対の側板34は、底板33のY方向の両端に立設されている。側板34は、例えば、XZ平面に沿う矩形状の板である。上板35は、一方の側板34の上端から他方の側板34の上端にかけて形成されている。上板35は、例えば、XY平面に沿う矩形状の板である。ケース本体31は、矩形の枠状に形成されている。
【0047】
閉止板32は、YZ平面に沿う矩形状の板である。閉止板32は、ケース本体31の前面開口を覆う蓋材として機能する。閉止板32は、厚さ方向から見て、ケース本体31の前面開口を包含する大きさとされている。
【0048】
閉止板32は、発泡体である誘電体により形成されている。発泡体である誘電体としては、発泡ポリオレフィン(例えば、発泡ポリエチレンなど)などの発泡性樹脂が挙げられる。閉止板32は、発泡体であることにより可撓性が高められ、収容ケース30の内圧が所定値以上となったときに厚さ方向に撓み変形しやすくなる。そのため、収容ケース30の内圧に応じて、ケース本体31の開口端31aに対して当接および離間するように動作しやすくなる。
【0049】
閉止板32は、発泡体であるため、非発泡体に比べて、見かけの誘電率が空気に近くなる。そのため、閉止板32の内部での多重反射は起こりにくくなる。よって、閉止板32の内部におけるマルチパスによる影響を抑制できる。閉止板32は、発泡体であるため断熱効果が高いことから、無線通信モジュール1の温度調整が容易となる。
【0050】
閉止板32を構成する発泡体の発泡倍率は3倍以上が好ましい。発泡体の発泡倍率は3倍以上であると、閉止板32における電波の透過損失を低くできる。
発泡倍率3倍の発泡ポリプロピレン(厚さ5mm、比誘電率1.3)で形成された閉止板32を用いて電波の透過に関するシミュレーションを行ったところ、周波数57GHz~71GHzの電波の透過損失は最大で約0.1dBとなった。発泡ポリプロピレンの発泡倍率が2倍である閉止板32(比誘電率1.5)を用いること以外は同様のシミュレーションを行ったところ、透過損失は最大で約0.2dBとなった。発泡ポリプロピレンの発泡倍率が5倍である閉止板32(比誘電率1.2)を用いること以外は同様のシミュレーションを行ったところ、透過損失は最大で約0.04Bとなった。このように、閉止板32を構成する発泡体の発泡倍率を3倍以上とすることによって、透過損失を低くする(例えば、0.1dB以下とする)ことができるという結果が得られた。なお、周波数57GHz~71GHzは、60GHz帯で用いられる無線通信モジュールの適用周波数範囲の例である。
発泡体の発泡倍率は、50倍以下とすることができる。これにより、閉止板32の機械的強度を確保できる。
【0051】
図5に示すように、閉止板32の周縁部は、複数の固定具36によって、ケース本体31の開口端31aに固定されている。複数の固定具36は、閉止板32の周縁部に、間隔をおいて設けられている。
【0052】
閉止板32は、収容ケース30内の気圧に応じてケース本体31の開口端31aに対して当接および離間可能である。
例えば、閉止板32は、収容ケース30内の気圧が所定値未満のとき、ケース本体31の開口端31aに、全周にわたって当接する。これにより、閉止板32はケース本体31の前面開口を塞ぎ、収容ケース30内は閉空間となる。
収容ケース30の内圧が所定値以上となると、閉止板32の少なくとも一部はケース本体31の開口端31aから離れる。例えば、閉止板32の周縁部は、隣り合う固定具36の間において、ケース本体31の開口端31aから離れる。これにより、収容ケース30内の気体は、閉止板32と、ケース本体31の開口端31aとの隙間から外部に放出(排出)可能となる。そのため、収容ケース30は、閉止板32の少なくとも一部が開口端31aから離間して気体を排出可能である。
【0053】
(気体供給部)
図5および図6に示すように、気体供給部40は、乾燥気体の供給源41と、複数の導入路42と、複数の放出部43と、を備える。
供給源41は、例えば、メンブレンフィルタによって気体から水分を除去することにより、乾燥気体を得る。供給源41は、シリカゲルなどの除湿剤によって気体から水分を除去することにより乾燥気体を得る構成であってもよい。供給源41は、このほか、気体を冷却することにより水分を除去して乾燥気体を得る構成であってもよい。気体としては、特に限定されないが、空気、窒素などが挙げられる。
【0054】
導入路42は、供給源41から供給された乾燥気体を放出部43に導く。
放出部43は、筒状(詳しくは、円筒状)に形成されている。放出部43には、複数の放出孔44が形成されている。放出孔44は、例えば、放出部43の内周面から外周面にかけて放出部43を貫通して形成されている。放出孔44は、例えば円形状の貫通孔である。放出孔44は、放出部43内の乾燥気体を放出部43の外に放出させ、収容ケース30の内部に供給することができる。複数の放出孔44は、放出部43の長さ方向に並んで形成されている。複数の放出孔44は、放出部43の長さ方向に間隔をおいて形成されている。
【0055】
本実施形態では、放出部43の数は2つである。2つの放出部43は、それぞれ収容ケース30の内部に設置されている。
2つの放出部43のうち一方を第1放出部43Aという(図6参照)。第1放出部43Aは、Y方向に沿う姿勢とされ、収容ケース30の内部空間の上部に設置されている。放出孔44は第1放出部43Aの下部に形成されているため、乾燥気体は下方に向けて放出される。
2つの放出部43のうち他方を第2放出部43Bという(図6参照)。第2放出部43Bは、Y方向に沿う姿勢とされ、収容ケース30の内部空間の下部に設置されている。放出孔44は第2放出部43Bの上部に形成されているため、乾燥気体は上方に向けて放出される。
【0056】
(移動機構)
図1に示すように、移動機構50は、スライドレール51と、スライダ52とを備える。
スライドレール51は、チャンバ90の底面に設けられている。スライドレール51は、X方向に沿って延在する直線状のレールである。
スライダ52は、被検体保持ユニット10の下部に設けられている。スライダ52は、スライドレール51に沿って移動可能である。被検体保持ユニット10は、スライダ52によって、スライドレール51に沿ってX方向に移動可能である。そのため、被検体保持ユニット10は、測定用アンテナユニット60に対する離間距離を任意に定めることができる。
【0057】
(測定用アンテナユニット)
測定用アンテナユニット60は、基台61と、支持板63と、複数の支持柱64と、押さえ板65と、測定用アンテナモジュール101(測定用アンテナ)と、を備える。
支持板63は、基台61から上方に延出する。支持柱64は、支持板63の前面から前方(+X方向)に延出する。押さえ板65は、測定用アンテナモジュール101を保持するホルダとして機能する。押さえ板65は、測定用アンテナモジュール101で送受信される電波に対する影響が少なく、熱伝導率が低い材料、例えばPEEK等の樹脂で構成される。押さえ板65は、測定用アンテナモジュール101をヒートスプレッダ72に向けて押さえ込んでいる。
【0058】
測定用アンテナモジュール101は、無線通信モジュール1(図4参照)と同様に、アンテナ基板と、RFICとを備える。測定用アンテナモジュール101は、測定用の電波を送受信する。測定用アンテナモジュール101は、例えば、ミリ波等の高周波信号の送受信を行う。高周波信号の周波数は、例えば、10GHz~300GHz、60GHz~80GHz等が挙げられる。測定用アンテナモジュール101は、無線通信モジュール1と対向する位置に設置される。
【0059】
本実施形態では、測定用アンテナモジュール101を備えた測定用アンテナユニット60を使用しているが、測定用アンテナユニットは図1に示す例に限定されない。測定用アンテナユニットとしては、例えば、ホーンアンテナを用いた測定用アンテナユニットを使用してもよい。
【0060】
(第2温度調整機構)
第2温度調整機構70は、ヒートスプレッダ72と、ヒートシンク76とを備える。ヒートスプレッダ72は、被検体保持ユニット10のヒートスプレッダ22と同様の構造であってよい。ヒートスプレッダ72は、例えば、伝熱シートを介して測定用アンテナモジュール101のRFICに接している。ヒートシンク76は、例えば、空冷式のヒートシンクである。
【0061】
(位置確認機構80)
位置確認機構80は、レーザ光源などの光源81と、受光部82とを備える。受光部82は、光源81からの光を受光する。光源81は、測定用アンテナユニット60の基台61の前面に設けられている。受光部82は、被検体保持ユニット10の支持板13の前面に設けられている。
【0062】
位置確認機構80によれば、光源81からの光を受光部82が受光することによって、被検体保持ユニット10が測定用アンテナユニット60に対して正対する姿勢となっていることを確認できる。
【0063】
(チャンバ90)
チャンバ90は、被検体保持ユニット10、第1温度調整機構20、収容ケース30、気体供給部40、移動機構50、測定用アンテナユニット60、第2温度調整機構70および位置確認機構80を収容する。チャンバ90は、外部からの電磁波の影響を受けず、かつ外部への電磁波の漏洩を抑制できる。チャンバ90は、内部での電磁波の反射を抑制できる。
【0064】
チャンバ90の内面には、電波吸収体91が設けられている。電波吸収体91は、例えば、誘電性電波吸収体である。誘電性電波吸収体は、誘電損失により電波を吸収する。電波吸収体91は、例えば、カーボン粉末を含む発泡樹脂(発泡ウレタン等)で構成されている。電波吸収体91は、誘電性電波吸収体に限らず、導電性電波吸収体、磁性電波吸収体などでもよい。
【0065】
[無線通信モジュールの評価方法]
図1に示す評価装置100を用いて無線通信モジュール1を評価する方法の一例を説明する。
この例では、無線通信モジュール1と測定用アンテナモジュール101との間の電波の送受信状態を確認することによって、無線通信モジュール1の温度特性を評価する評価試験を行う。
【0066】
図5および図6に示すように、気体供給部40の供給源41において、乾燥気体を得る。
乾燥気体は、実施される評価試験の温度に応じて、収容ケース30内で結露が発生しない条件(または結露が少ない条件)を満足するように調整される。例えば、乾燥気体の湿度は、評価試験の温度範囲の下限値において結露が生じないように選択される。例えば、評価試験の温度範囲の下限値が-40℃である場合、-40℃で結露が起きないように、乾燥気体の湿度が設定される。
【0067】
図6に示すように、供給源41から供給された乾燥気体を、導入路42を通して放出部43に導く。放出部43内の乾燥気体は、放出孔44を通して放出され、収容ケース30の内部に供給される。2つの放出部43のうち第1放出部43Aから放出された乾燥気体は、下方に向けて放出される。第2放出部43Bから放出された乾燥気体は、上方に向けて放出される。
【0068】
収容ケース30内の気圧が所定値以上となると、閉止板32の少なくとも一部はケース本体31の開口端31aから離れる。収容ケース30内の気体は、閉止板32と、ケース本体31の開口端31aとの隙間から外部に放出(排出)される。
【0069】
図3および図4に示すように、温度調整器21を用いて、無線通信モジュール1の温度を設定する。制御部28は、調整用温度センサ23の検出値に基づいて、電源27から温度調整器21に流れる電流を制御することにより、温度調整器21の温度を調整することができる。制御部28は、例えば、検出値が、予め定められた設定範囲の下限値を下回った場合に、温度調整器21に流れる電流を大きくし、温度調整器21の温度を上昇させる。制御部28は、例えば、検出値が、予め定められた設定範囲の上限値を上回った場合に、温度調整器21に流れる電流を小さくし、温度調整器21の温度を降下させる。これにより、無線通信モジュール1を、目的の温度とする。
【0070】
図1に示すように、収容ケース30への乾燥気体の供給、および、無線通信モジュール1の温度設定を行いつつ、無線通信モジュール1と測定用アンテナモジュール101との間の電波の送受信状態を確認する。
具体的には、例えば、無線通信モジュール1から送信された電波を、測定用アンテナモジュール101に受信させることで、無線通信モジュール1は適正な送信ができているか否かを評価することができる。測定用アンテナモジュール101から送信された電波を、無線通信モジュール1に受信させることで、無線通信モジュール1は適正な受信ができているか否かを評価することができる。
【0071】
無線通信モジュール1の温度を適宜調整しつつ、送受信状態の確認を行うことによって、無線通信モジュール1の温度特性を評価することができる。
【0072】
[実施形態の無線通信モジュールの評価装置が奏する効果]
評価装置100では、気体供給部40は、チャンバ90の全体ではなく、収容ケース30内に乾燥気体を供給するため、収容ケース30の内部空間の全体に乾燥気体を行き渡らせ、無線通信モジュール1の結露を抑制することができる。
評価装置100では、収容ケース30内に供給された気体が、収容ケース30の内圧上昇とともに逐次排出されるため、収容ケース30において乾燥気体の循環が適切に行われ、収容ケース30内は、乾燥気体の雰囲気が維持される。よって、結露による無線通信モジュール1の不具合を抑制し、無線通信モジュール1の温度特性を適正に評価することができる。
【0073】
気体供給部40は、収容ケース30の上部に設けた第1放出部43Aから下に向けて乾燥気体を供給するため、乾燥気体を収容ケース30内に行き渡らせることができる。気体供給部40は、収容ケース30の下部に設けた第2放出部43Bから上に向けて乾燥気体を供給するため、乾燥気体を収容ケース30内に行き渡らせることができる。よって、無線通信モジュール1の結露を抑制することができる。
【0074】
放出部43の放出孔44は、放出孔44の長さ方向に間隔をおいて形成されているため、収容ケース30内において、Y方向の広い範囲に乾燥気体を供給することができる。よって、乾燥気体を収容ケース30内に行き渡らせることができる。
【0075】
本発明は前記の例に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
図3に示すヒートスプレッダ22は、第1部分22Aと第2部分22Bとを有する二層構造であるが、ヒートスプレッダは、三層以上の構造であってもよい。ヒートスプレッダは、単層構造であってもよい。
図3および図4に示す温度調整器21としては、ペルチェ素子を例示したが、温度調整器は特に限定されない。温度調整器は、ニクロム線等の電熱線などのヒータであってもよい。温度調整器は、チラー(冷却水循環装置)などの冷却機構を備えていてもよい。
図5に示す気体供給部40における放出部43の数は2つであるが、放出部の数は1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
【符号の説明】
【0076】
1…無線通信モジュール(被検体)、21…温度調整器、30…収容ケース、31…ケース本体、31a…開口端、32…閉止板、40…気体供給部、41…供給源、43…放出部、43A…第1放出部、43B…第2放出部、44…放出孔、100…無線通信モジュールの評価装置、101…測定用アンテナモジュール(測定用アンテナ)。
【要約】
【課題】無線通信モジュールにおける結露を抑えることができる評価装置を提供する。
【解決手段】評価装置100は、被検体となる無線通信モジュール1の温度を調整する温度調整器と、無線通信モジュール1および温度調整器を収容する収容ケース30と、収容ケース30内に乾燥気体を供給する気体供給部40と、無線通信モジュール1に対向して設けられ、測定用の電波を送受信する測定用アンテナと、を備える。収容ケース30は、ケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ閉止板32と、を有する。閉止板32は、発泡体である誘電体により形成される。閉止板32は、ケース本体31の開口端31aに対して当接および離間可能とされる。収容ケース30は、収容ケース30の内圧が所定値以上となったときに、閉止板32の少なくとも一部がケース本体31の開口端31aから離間して収容ケース30内の気体を排出可能である。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6