(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】風船型喀痰吸引用医療シミュレーター
(51)【国際特許分類】
G09B 23/28 20060101AFI20220628BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G09B23/28
G09B19/00 Z
(21)【出願番号】P 2022012943
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2022-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522042636
【氏名又は名称】藤永 真那
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】藤永 真那
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-096413(JP,A)
【文献】特開2018-120205(JP,A)
【文献】特開2015-018152(JP,A)
【文献】特開2014-206570(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0178030(US,A1)
【文献】市来 幸裕,嚥下評価のための空圧式咽喉ロボットモデル,第22回日本ロボット学会学術講演会予稿集CD-ROM 2004年,社団法人日本ロボット学会,2004年09月15日,3H22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56,
17/00-19/26,
23/00-29/14,
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喀痰吸引訓練用に使用される風船型喀痰吸引用医療シミュレーターであって、
人の頭の外形を模し内部が空洞の頭部、前記頭部の下端に通風可能に配置された筒状の首部、及び、前記首部の下端に通風可能に配置された、人の胸部上半身の外形を模し内部が空洞の胸部を有し、空気の流入出により膨張又は収縮する、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた風船体と、
前記風船体への空気の流入又は排出を可能とする空気注入口と、
前記風船体の鼻穴に相当する部位に設けた穴に前記風船体の内部で横設状態となるようにかつ前記穴に周縁密閉に接続された、前記風船体の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の鼻腔筒状部を有し、
前記風船体の口に相当する部位に設けた穴に前記風船体の内部で横設状態となるようにかつ前記穴に周縁密閉に接続された、前記風船体の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の口腔筒状部を有し、及び、
前記風船体の喉部に相当する部位に設けた穴に前記風船体の内部で横設状態となるようにかつ前記穴に周縁密閉に接続された、前記風船体の表面から気管カニューレの先端手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の喉部筒状部を有する喀痰吸引管路と、を備え、
前記喀痰吸引管路
の風船体内部側のすべての端部を閉塞状態にしたことを特徴とする風船型喀痰吸引用医療シミュレーター。
【請求項2】
前記喀痰吸引管路が、
前記鼻腔筒状部の前記風船体内部側の先端部、前記口腔筒状部の前記風船体内部側の先端部、及び、前記喉部筒状部の前記風船体内部側の先端部をそれぞれ分離状態でそれぞれ閉塞させた形態、あるいは、
前記鼻腔筒状部の前記風船体内部側の先端部、前記口腔筒状部の前記風船体内部側の先端部、及び、前記喉部筒状部の前記風船体内部側の先端部を、1本の上下に長尺状の筒状の可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた気道筒状部に設けた3つの穴にそれぞれ周縁密閉に接続させ、前記気道筒状部の上端及び下端を閉塞させた形態であることを特徴とする請求項1に記載の風船型喀痰吸引用医療シミュレーター。
【請求項3】
前記鼻腔筒状部に、2本の前記風船体の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さを有し、前記鼻腔筒状部より厚みが厚い可撓性を有する合成樹脂からなる筒状の鼻筒状体を挿入し、
前記口腔筒状部に、前記風船体の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さを有し、前記口腔筒状部より厚みが厚い可撓性を有する合成樹脂からなる筒状の口筒状体を挿入し、
前記喉部筒状部に、前記風船体の表面から気管カニューレ先端手前までの長さに相当する長さを有し、前記喉部筒状部より厚みが厚い可撓性を有する合成樹脂からなる筒状の喉筒状体を挿入したことを特徴とする請求項1又は2に記載の風船型喀痰吸引用医療シミュレーター。
【請求項4】
前記空気注入口を2か所設け、一方の前記空気注入口は注入のみ開となる逆止弁付きの空気注入口で、他方の空気注入口は逆止弁なしで開口部を塞ぐキャップ付きの空気注入口とすることを特徴とする請求項1~3のいいずれかに記載の風船型喀痰吸引用医療シミュレーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自力で痰を出すことができない人に対して、介護福祉士が、口腔内、鼻腔内、及び、気管カニューレ内部に貯留している痰の吸引をするという医療行為をできるようにする資格である介護福祉士喀痰吸引研修の中の基本研修に使用する風船型喀痰吸引用医療シミュレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
前記介護福祉士喀痰吸引研修の中の基本研修には、口腔内吸引、鼻腔内吸引及び気管カニューレ内吸引の各喀痰吸引行為に関する講義と、喀痰吸引用医療シミュレーターを使用しての喀痰吸引演習がある。そして、受講者の喀痰吸引演習の成果を指導者が評価するようになっており、その評価項目には、喀痰吸引用医療シミュレーターを使用して、前記3つの喀痰吸引行為ごとに、実施準備、吸引をするケア実施、結果確認報告、片付け、及び記録について合計32項目の評価をするようになっている。
【0003】
現在、口腔内吸引、鼻腔内吸引及び気管カニューレ内吸引の喀痰吸引研修の中の基本研修に使用されている喀痰吸引用医療シミュレーターは、人体の頭部から胸部までの上半身の部分を、外観をマネキンのように造られて、かつ分割できるようになっており、分割すると口腔内の状態、鼻腔内の状態、及び、気管内の状態を詳細に人体の内部を再現するように造られているので、価格が極めて高価である。
【0004】
特許文献1には、模擬的な気管内吸引が被訓練者によって施される模擬気管と、前記模擬的な気管内吸引における被訓練者による操作の状態を検出する状態検出手段と 、前記状態検出手段が検出した前記操作の状態に基づいて、前記操作に対する患者の模擬的な反応を被訓練者に知覚可能に出力する反応出力手段と、を備えている気管内吸引の訓練装置が開示されている。
【0005】
非特許文献1には、頭部から首部までは人体の外観及び内部構造を形成して、その下方に胸部に係る形状の部品の組み合わせがされた形態を有する模型であるが、大卒初任給の約1.5倍くらいの高価格で売り出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-96413号公報
【文献】サカモト吸引シミュレーター URL https://www.mitakaーsupply.com/02models/M175.php
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在使用されている喀痰吸引用医療シミュレーターは、人の上半身の外形、口腔内構造、鼻腔内構造、気道内構造が人体の構造を詳細に再現された模型であるので、費用が極めて高価である。そのため、受講生一人一人が購入することができない。そのため、介護福祉士の実務者研修を実施している資格・研修教育機関に登校して行う喀痰吸引演習のみとなり、受講生一人当たりに割り当てられる時間に制限があるので、受講生が喀痰吸引演習の指導者による決められた項目の評価でなかなか合格水準に達しないという問題があった。しかも、昨今ではコロナ禍でリモート研修を組み込むようになり、追加補習として自主的に資格・研修教育機関に登校して行う喀痰吸引演習ができなくなり、ますます受講生が喀痰吸引演習の指導者による決められた項目の評価で合格水準に達しにくくなったという問題があった。
【0008】
特許文献1の気管内吸引の訓練装置は、ゴーグル型ディスプレー、各種センサー及び制御部などを備えているので価格が高価であり、非特許文献1の吸引シミュレーターも受講生一人一人が購入するには価格が高いので、いずれも受講生一人一人が購入することができない。そのため、コロナ禍でリモート研修となったときに、喀痰吸引用医療シミュレーターを使用しての喀痰吸引演習は自宅ではすることができず、限られた登校授業のときの割り当てられた短い時間しか訓練ができないので訓練時間の減少により、受講者の喀痰吸引演習の成果を指導者が評価すると合格点が得られにくいという問題があった。
【0009】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、受講生が一人一人購入できる低価格にすることができ、自宅で受講生各自が基本研修である喀痰吸引演習の訓練をすることができる風船型喀痰吸引用医療シミュレーターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において、上下又は横は、人が座位又は立ち居の姿勢での顔の上下方向や横方向を意味し、仰臥時や仰向け時の姿勢での顔の上下方向や横方向ではない。
【0011】
請求項1に記載の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターは、喀痰吸引訓練用に使用される風船型喀痰吸引用医療シミュレーターであって、人の頭の外形を模し内部が空洞の頭部、前記頭部の下端に通風可能に配置された筒状の首部、及び、前記首部の下端に通風可能に配置された、人の胸部上半身の外形を模し内部が空洞の胸部を有し、空気の流入出により膨張又は収縮する、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた風船体と、前記風船体への空気の流入又は排出を可能とする空気注入口と、前記風船体の鼻穴に相当する部位に設けた穴に前記風船体の内部で横設状態となるようにかつ前記穴に周縁密閉に接続された、前記風船体の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の鼻腔筒状部を有し、前記風船体の口に相当する部位に設けた穴に前記風船体の内部で横設状態となるようにかつ前記穴に周縁密閉に接続された、前記風船体の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の口腔筒状部を有し、及び、前記風船体の喉部に相当する部位に設けた穴に前記風船体の内部で横設状態となるようにかつ前記穴に周縁密閉に接続された、前記風船体の表面から気管カニューレの先端手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の喉部筒状部を有する喀痰吸引管路と、を備え、前記喀痰吸引管路の風船体内部側のすべての端部を閉塞状態にしたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターは、請求項1において、前記喀痰吸引管路が、前記鼻腔筒状部の前記風船体内部側の先端部、前記口腔筒状部の前記風船体内部側の先端部、及び、前記喉部筒状部の前記風船体内部側の先端部をそれぞれ分離状態でそれぞれ閉塞させた形態、あるいは、前記鼻腔筒状部の前記風船体内部側の先端部、前記口腔筒状部の前記風船体内部側の先端部、及び、前記喉部筒状部の前記風船体内部側の先端部を、1本の上下に長尺状の筒状の可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた気道筒状部に設けた3つの穴にそれぞれ周縁密閉に接続させ、前記気道筒状部の上端及び下端を閉塞させた形態であることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターは、請求項1又は1において、前記鼻腔筒状部に、2本の前記風船体の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さを有し、前記鼻腔筒状部より厚みが厚い可撓性を有する合成樹脂からなる筒状の鼻筒状体を挿入し、前記口腔筒状部に、前記風船体の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さを有し、前記口腔筒状部より厚みが厚い可撓性を有する合成樹脂からなる筒状の口筒状体を挿入し、前記喉部筒状部に、前記風船体の表面から気管カニューレ先端手前までの長さに相当する長さを有し、前記喉部筒状部より厚みが厚い可撓性を有する合成樹脂からなる筒状の喉筒状体を挿入したことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターは、請求項1~3のいずれかにおいて、前記空気注入口を2か所設け、一方の前記空気注入口は注入のみ開となる逆止弁付きの空気注入口で、他方の空気注入口は逆止弁なしで開口部を塞ぐキャップ付きの空気注入口とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターは、人体の複雑な内部構造を複雑な模型で再現させた構造にせずに筒状の物体の組み合わせからなる構造にしたので、受講生が自分で購入することができる低価格にすることができた。これにより受講生が介護福祉士の喀痰吸引研修の中の基本研修の口腔内吸引、鼻腔内吸引、及び、気管カニューレ内部吸引の喀痰吸引演習を自宅でできるようになり早期にスキルを向上させ指導員による決められた評価項目で合格水準に容易に達することができるという効果を奏する。そして、昨今のように、リモート研修時間が増加して登校時で喀痰吸引演習の追加の補習ができにくくなっても自宅での喀痰吸引演習により合格水準に容易に達することができるという効果を奏する。
【0016】
喀痰吸引演習の評価は32項目の手順に沿って32項目の評価をするが、本発明の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターを使用することによって鼻腔から咽頭への気道、口腔から咽頭への気道、又は、呼吸困難者に装着される気管カニューレの気道をイメージしやすいという効果を奏するので、人体での喀痰吸引を行うときに落ち着いて32項目の手順をしっかりと行えるという効果を奏する。
【0017】
さらに、受講者が本発明の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターを使用して訓練している様子を受講生の自宅のパソコンのカメラから撮影した映像をリアルタイムで指導者のパソコン画面に表示させることにより、指導者がリアルタイムで評価項目に沿った評価をしてアドバイスすることができるので、自宅でのシミュレーション演習の効果を高めることができるという効果を奏する。
【0018】
前記風船型喀痰吸引用医療シミュレーターは、空気を抜くと、ぺしゃんこに圧縮できるので鞄等に入れて容易に持ち運びでき、収納時にスペースを取らないという効果を奏する。
【0019】
請求項2の記載の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターは、前記鼻腔筒状部、前記口腔筒状部及び前記喉部筒状部のそれぞれの前記風船体内部側の先端部を、上端及び下端を閉塞させた1本の上下に長尺状の筒状の気道筒状部に設けた穴に周縁密閉で接続させたので、片持ちでなく両持ちで支持するため、前記鼻腔筒状部、前記口腔筒状部及び前記喉部筒状部のそれぞれの前記風船体内部側の先端部の高さが安定するという効果を奏する。
【0020】
請求項3に記載の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターは、風船体と同じ材質の筒状部の内部に、前記筒状部より板厚が厚めの合成樹脂からなる筒状体を挿入し、その挿入した筒状体の内部に吸引チューブを挿入するので、吸引チューブの出し入れを繰り返しても破れることなく破損し難くなり耐久性が高まり、風船型喀痰吸引用医療シミュレーターを長く繰り返し使用することができるという効果を奏する。
【0021】
請求項4に記載の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターは、例えば、空気注入口が逆止弁なしの注入口1つの場合は、逆止弁なしの空気の注入口から息を吹き込んで風船体を所定の大きさまで膨張させてから、前記注入口を塞ぐキャップを嵌め込もうとしたときに、前記注入口の開口部が何も塞がれていない瞬間が生じ、その瞬間に風船体の内部に貯留した圧力が高まった空気の一部が一気に噴出し前記風船体が所定の大きさから収縮してしまい、なかなか所定の大きさまで膨らますことができないという問題があったが、最初に逆止弁なしの空気の注入口から所定の大きさになる前の圧力が少し低いタイミングになるまで息を吹き込んで逆止弁なしの空気の注入口にキャップを嵌め込んで塞ぎ、その後に逆止弁付き注入口から息を吹き込んで風船体を所定の大きさになるまで膨張させると、所定の大きさで収縮することなく膨張でき維持させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の鼻腔筒状部の先端部、口腔筒状部の先端部、及び、喉部筒状部の先端部をそれぞれ分離状態で閉塞させた形態の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターの右側面視の概要図である。
【
図2】本発明の鼻腔筒状部の先端部、口腔筒状部の先端部、及び、喉部筒状部の先端部を1本の気道筒状部に接続させた形態で下端部を風船体の底部に接続させた風船型喀痰吸引用医療シミュレーターの右側面視の概要図である。
【
図3】本発明の鼻腔筒状部の先端部、口腔筒状部の先端部、及び、喉部筒状部の先端部を1本の気道筒状部に接続させた形態で下端部を風船体の空間に位置するようにした風船型喀痰吸引用医療シミュレーターの右側面視の概要図である。
【
図4】板厚の厚い筒状体を挿入した本発明の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターの右側面視の概要図である。
【
図5】板厚の厚い筒状体を挿入した本発明の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターの正面視の概要図である。
【
図6】板厚の厚い筒状体の説明図で、(a)は鼻腔筒状部に挿入する筒状体の説明図で、(b)は口腔筒状部に挿入する筒状体の説明図で、(c)は喉部筒状部に挿入する筒状体の説明図である。
【
図8】自宅で本発明の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターを使用して訓練するときの使い方の説明図である。
【
図9】登校時におけるシミュレーター訓練に本発明の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターを使用して訓練するとした場合に使用する関連機器との接続関係の説明図である。
【
図10】上端の開口部を風船体の上面に周縁密閉に固定させ、気道筒状部の下端の開口部を風船体の底面に周縁密閉に固定させた風船型喀痰吸引用医療シミュレーターの説明図である。
【
図11】気道筒状体の筒状の形状を筒状の横方向の断面積を、上端側を小さく下端側を大きくし上端と下端の間は漸変させた形状の場合の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の風船型喀痰吸引用医療シミュレーターは、介護福祉士の実務者研修における喀痰吸引の演習に供するシミュレーターであり、受講者が自分で購入できる低価格に抑えることができ、自宅で喀痰吸引の演習を行うときに使用して学習効果を高めることができる
【0024】
前記風船型喀痰吸引用医療シミュレーター1は、
図1~
図3に示すように、喀痰吸引訓練用に使用される風船型喀痰吸引用医療シミュレーター1であって、人の頭の外形を模し内部が空洞の頭部21、前記頭部21の下端に通風可能に配置された筒状の首部22、及び、前記首部22の下端に通風可能に配置された、人の胸部上半身の外形を模し内部が空洞の胸部23を有し、空気の流入出により膨張又は収縮する、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた風船体2と、前記風船体2への空気の流入又は排出を可能とする空気注入口6、7と、前記風船体2の鼻穴に相当する部位に設けた穴31に前記風船体2の内部で横設状態となるようにかつ前記穴31に周縁密閉に接続された、前記風船体2の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の鼻腔筒状部3を有し、前記風船体2の口に相当する部位に設けた穴32に前記風船体2の内部で横設状態となるようにかつ前記穴32に周縁密閉に接続された、前記風船体2の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の口腔筒状部4を有し、さらに、前記風船体2の喉部に相当する部位に設けた穴33に前記風船体2の内部で横設状態となるようにかつ前記穴33に周縁密閉に接続された、前記風船体2の表面から気管カニューレの先端手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の喉部筒状部5を有する喀痰吸引管路10と、を備え、前記喀痰吸引管路10の前記風船体内側のすべての端部9a~9eを閉塞状態にしている。
【0025】
前記風船体2は、人の頭の外形を模し内部が空洞の頭部21、前記頭部21の下端に通風可能に配置された筒状の首部22、及び、前記首部22の下端に通風可能に配置された、人の胸部上半身の外形を模し内部が空洞の胸部23を有し、空気の流入出により膨張又は収縮する、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られている。
【0026】
前記風船体2は、前記頭部21、前記首部22及び前記胸部23からなり、空気の注入で膨張し、空気の排出で収縮する風船である。しかし、ゴムのように材質自体が縮んだり伸びたりするのではなく、前記風船体2は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂シートから造られるので、前記風船体2の材質は伸び縮みしないので前記風船体2の内部の空気が抜けて前記風船体2が縮小したり前記風船体2の内部に空気が入って前記風船体2が膨張する。前記風船体2の内部の空気を排出すると、前記風船体2をぺしゃんこに圧縮できる。
【0027】
空気注入口6、7は、前記風船体2への空気の流入又は排出を可能とする部位である。空気の流入は受講者などの人が息を吹き込むことで行われる。そして、前記空気注入口6、7は、2か所設けられ、一方の前記空気注入口7は注入のみ開となる逆止弁付きの空気注入口7で、他方の空気注入口6は逆止弁なしで開口部を塞ぐキャップ付きの空気注入口6である。
【0028】
前記空気注入口6は、息を吹き込む開口部には空気の流動を阻害する機能が備えられていないので、吹き込んだ息を勢いよく前記風船体2内に流入させることができる。一方、前記空気注入口7は、開口部に排出をさせない逆止弁を設けているので力強く息を吹き込むことにより少しずつの量の空気を前記風船体2内に流入させる。
【0029】
よって、前記風船体2がある程度の大きさになるまでは空気注入口6から息を吹き込み、その後空気注入口6の開口部をキャップを嵌め込んで塞ぎ、次に逆止弁付きの空気注入口7から狙いの大きさになるまで息を吹き込む。前記狙いの大きさとは、例えば、前記風船体2の表面が張った状態をいう。
【0030】
前記喀痰吸引管路10は、前記鼻腔筒状部3、前記口腔筒状部4及び前記喉部筒状部5を備える。そして、前記喀痰吸引管路10は、前記鼻腔筒状部3の前記風船体2内部側の先端部9a、前記口腔筒状部4の前記風船体2内部側の先端部9b、及び、前記喉部筒状部5の前記風船体2内部側の先端部9cをそれぞれ分離状態でそれぞれ閉塞させた形態A、あるいは、前記鼻腔筒状部3の前記風船体2内部側の先端部9a、前記口腔筒状部4の前記風船体2内部側の先端部9b、及び、前記喉部筒状部5の前記風船体2内部側の先端部9cを、1本の上下に長尺状の筒状の可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた気道筒状部8a又は8bに設けた3つの穴にそれぞれ周縁密閉に接続させ、前記気道筒状部8a又は8bの上端及び下端を閉塞させた形態Bがある。
【0031】
前記形態Aは、
図1に示すように、前記鼻腔筒状部3、前記口腔筒状部4及び前記喉部筒状部5が片持ちの形態であり、前記鼻腔筒状部3の端部9a、前記口腔筒状部4の端部9b及び前記喉部筒状部5の端部9cは、3つがそれぞれ分離状態で、それぞれ閉塞状態にしている。閉塞することにより、風船体2内の貯留される空気は漏れることがない。また、気道は筒状体の前記鼻腔筒状部3、前記口腔筒状部4及び前記喉部筒状部5のみであるので、構造が極めてシンプルであり製造コストをより低価格にすることができる。
【0032】
前記形態Bは、
図2、
図3、
図10又は
図11に示すように、前記鼻腔筒状部3、前記口腔筒状部4及び前記喉部筒状部5が両持ちの形態であり、前記鼻腔筒状部3の前記風船体2内部側の先端部9a、前記口腔筒状部4の前記風船体2内部側の先端部9b、及び、前記喉部筒状部5の前記風船体2内部側の先端部9cを閉塞せずに開口状態で、1本の上下に長尺状の筒状の可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた気道筒状部8a、8b、8c又は8dにそれぞれ設けた3つの穴にそれぞれ周縁密閉に接続させ、
図2に示すように前記気道筒状部8aの上端を鼻腔筒状部3と略同一高さで閉塞し、下端を前記風船体2の底面に当接させて閉塞状態にし、
図3に示すように、前記気道筒状部8bの上端を鼻腔筒状部3と略同一高さで閉塞し、下端を前記風船体2の底面まで到達させない高さで閉塞状態にし、
図10又は
図11に示すように前記気道筒状部8cの上端を前記風船体2の頭部の上面に当接させて閉塞し、下端を前記風船体2の底面に当接させて閉塞状態にする。閉塞することにより、風船体2内の貯留される空気は漏れることがない。
【0033】
また、前記気道筒状体8a~8dは、空洞を形成可能な筒状であればよく、横方向の断面形状が円形、楕円形、四角形、多角形など空洞を形成可能な断面形状であればよく、また、横方向の前記断面形状の大きさが、
図2、
図3又は
図10に示すように、上端から下端まで同一の大きさであっても、
図11に示すように、上端から下端まで大きさが漸変しても空洞を形成可能な形状であればよい。
【0034】
前記形態Bは、前記形態Aには有していない前記気道筒状部8を有しているので、咽頭から肺への気道をイメージしやすくなり訓練効果を高めることができる。
【0035】
前記鼻腔筒状部3は、
図1~
図4に示すように、前記風船体2の鼻穴に相当する部位に設けた穴31に前記風船体2の内部で横設状態となるようにかつ前記穴31に周縁密閉に接続された、前記風船体2の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の形状を有する。前記鼻腔筒状部3は薄厚のポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂シートから造られているので、前記風船体2の空気を排出すると、ぺしゃんこに圧縮できる。
【0036】
前記鼻腔筒状部3の長さを、顔の表面から咽頭手前までの長さに相当する長さにすることによって、吸引チューブ40を鼻の穴から咽頭手前まで挿入して気道の咽頭付近にたまった喀痰を吸引するイメージを定着させることができやすい。
【0037】
前記口腔筒状部4は、
図1~
図4に示すように、前記風船体2の口に相当する部位に設けた穴22に前記風船体2の内部で横設状態となるようにかつ前記穴32に周縁密閉に接続された、前記風船体2の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の形状を有する。前記口腔筒状部4は薄厚のポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂シートから造られているので、前記風船体2の空気を排出すると、ぺしゃんこに圧縮できる。
【0038】
前記口腔筒状部4の長さを、顔の表面から咽頭手前までの長さに相当する長さにすることによって、吸引チューブ40を口の穴から咽頭手前まで挿入して気道の咽頭付近にたまった喀痰を吸引するイメージを定着させることができやすい。
【0039】
前記部筒状部5は、
図1~
図4に示すように、前記風船体2の喉部に相当する部位に設けた穴33に前記風船体2の内部で横設状態となるようにかつ前記穴33に周縁密閉に接続された、前記風船体2の表面から、喉から気道までを切開してできた穴がつぶれないように設けた管である気管カニューレの先端手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた筒状の形状を有する。前記喉部筒状部5は薄厚のポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂シートから造られているので、前記風船体2の空気を排出すると、ぺしゃんこに圧縮できる。
【0040】
前記喉部筒状部5の長さを、首部22の表面から前記気管カニューレの先端手前までの長さに相当する長さにすることによって、吸引チューブ40を喉の穴から前記気管カニューレの先端手前まで挿入して気道にたまった喀痰を吸引するイメージを定着させることができやすい。
【0041】
次に、鼻筒状体11は、前記鼻腔筒状部3に挿入され、2本の前記風船体2の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さを有し、前記鼻腔筒状部3より厚みが厚い可撓性を有する、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる筒状体である。また、
図6(a)に示すように、先端側を鼻腔の咽頭側がやや下降しているのに似せてやや下向きにカーブさせた形状にしてもよい。前記鼻筒状体11は薄厚の前記鼻腔筒状部3より厚みが厚いので、前記鼻腔筒状部3は前記鼻筒状体11の形状に沿って変化する。
【0042】
口筒状体12は、前記口腔筒状部4に挿入され、前記風船体2の表面から咽頭の手前までの長さに相当する長さを有し、前記口腔筒状部4より厚みが厚い可撓性を有する、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる筒状体である。また、
図6(b)に示すように、先端側を口腔の咽頭側がやや下降しているのに似せてやや下向きにカーブさせた形状にしてもよい。前記口筒状体12は薄厚の前記口腔筒状部4より厚みが厚いので、前記口腔筒状部4は前記口筒状体12の形状に沿って変化する。
【0043】
喉筒状体13は、前記喉部筒状部5に挿入され、前記風船体2の表面から気管カニューレ先端手前までの長さに相当する長さを有し、前記喉部筒状部5より厚みが厚い可撓性を有する、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる筒状体である。前記喉筒状体13は、気管カニューレの形状に似せた形状をするのがよく、例えば、気管カニューレが直線状の場合は、
図6(c)に示すように、直線状にする。前記喉筒状体13は薄厚の前記喉部筒状部5より厚みが厚いので、前記喉部腔筒状部5は前記喉筒状体13の形状に沿って変化する。
【0044】
喀痰吸引の演習をするときには、前記鼻筒状体11、前記口筒状体12及び前記喉筒状体13の穴に吸引チューブ40が挿入される。
【0045】
次に、介護福祉士の実務者研修を実施している資格・研修教育機関に登校して行う喀痰吸引演習では、例えば、
図9に示すように、必要器具を準備して行う。しかし、受講生が自宅で演習を行うときには器具は揃っていないので、前記風船型喀痰吸引用医療シミュレーター1と吸引チューブ40を使用して自らイメージしながら演習を行う。この自宅での演習を繰り返しすることにより、資格・研修教育機関に登校して行う喀痰吸引演習の評価で容易に合格水準に到達することができる。
【0046】
次に、使い方について説明する。
図8に示すように、前記風船型喀痰吸引用医療シミュレーター1
の顔側を上方に向けた状態で置く。そして、鼻腔内吸引の演習をするときは吸引チューブ40を前記鼻筒状体11の穴に挿入し、口腔内吸引の演習をするときは吸引チューブ40を前記口筒状体12の穴に挿入し、気管カニューレ内吸引の演習をするときは吸引チューブ40を前記喉筒状体13の穴に挿入する。
【0047】
自宅で喀痰吸引の演習を行うときは、評価項目は受講生に公開されているので、その項目に沿ってイメージしながら演習する。例えば、必要器具の準備確認、吸引の環境・利用者の姿勢を整える、手袋の着用又はセッシを持つ、吸引チューブ40を清潔に取り出す、吸引チューブを清潔にバッテリー51に接続された吸引器50と連結管58で連結する、吸引器50の電源52を入れて水(水貯水容器57)を吸い決められた吸引圧(吸引圧計53)になることを確認する、適切な吸引圧で適切な深さまで吸引チューブ40を挿入する、適切な吸引時間(吸引時間計54)で分泌物などの貯留物を吸引する、吸引器50の電源52を切る、などの32項目をイメージしながら喀痰吸引演習を行う。
【0048】
特に、前記風船型喀痰吸引用医療シミュレーター1を使用することによって、吸引チューブ40を挿入したときに、十分な深さに挿入したら、根元を抑えていた指を離して吸引圧をかけ、粘膜を傷つけないように、指をこするようにして吸引チューブ40の先をくるくる回しながら行うというポイントの演習が自宅で十分にできるという効果があります。
【符号の説明】
【0049】
1 風船型喀痰吸引用医療シミュレーター
2 風船体
3 鼻腔筒状部
4 口腔筒状部
5 喉部筒状部
6 空気注入口
7 空気注入口
8 気道筒状部
9 端部
11 鼻筒状体
12 口筒状体
13 喉筒状体
21 頭部
22 首部
23 胸部
31 穴
32 穴
33 穴
40 吸引チューブ
50 吸引器
51 バッテリー
52 電源
53 吸引圧計
54 吸引時間計
57 水貯留容器
58 連結管
【要約】
【課題】受講生が購入できる低価格にすることができ、自宅で受講生各自が喀痰吸引演習をすることができる風船型喀痰吸引用医療シミュレーターを提供することを課題とする。
【解決手段】頭部、首部及び胸部を有し、空気の流入出により膨張又は収縮する、可撓性を有する薄厚の合成樹脂シートで造られた風船体と、風船体への空気の流入又は排出を可能とする空気注入口と、風船体の鼻穴の相当部位に接続された、咽頭の手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する鼻腔筒状部を有し、風船体の口の相当部位に接続された、咽頭の手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する口腔筒状部を有し、及び、風船体の喉部の相当部位に接続された、気管カニューレの先端手前までの長さに相当する長さで、可撓性を有する喉部筒状部を有する喀痰吸引管路と、を備え、喀痰吸引管路の風船体内側のすべての端部を閉塞状態にした風船型喀痰吸引用医療シミュレーターにより課題解決できた。
【選択図】
図4