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特許7096457パイプライナ及び引抜成形用途のための耐腐食性不織布
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】パイプライナ及び引抜成形用途のための耐腐食性不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/58 20120101AFI20220629BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20220629BHJP
   D06M 15/333 20060101ALI20220629BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
D04H1/58
D06M15/263
D06M15/333
C08J5/24
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019512780
(86)(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017049557
(87)【国際公開番号】W WO2018128649
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】62/383,665
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507220187
【氏名又は名称】オウェンス コーニング インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ウー ジャンフイ
(72)【発明者】
【氏名】スプー ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ペッセル ジェフ
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515793(JP,A)
【文献】国際公開第2015/057763(WO,A1)
【文献】特表2016-533438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H
D06M 13/00-15/715
C08J 5/04-5/10,5/24
B29B 11/16,15/08-15/14
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織マットであって、
複数の強化繊維と、
バインダ樹脂、カップリング剤、及び腐食抑制剤を含むバインダ組成物と、
を含み、
前記バインダ組成物は非腐食性であり、
前記バインダ樹脂は、15.0重量%から30.0重量%までの熱硬化性材料、および、70.0重量%から85.0重量%までの熱可塑性材料を含み、
前記不織マットは、100%スチレンモノマー中に10分間浸漬された後、少なくとも1.356J(1.0lb/ft)の引張強度を示し、
前記腐食抑制剤は、トリエタノールアミンであり、
前記腐食抑制剤は、前記バインダ組成物中に、前記バインダ組成物内の全固形分に基づいて、0.05重量%から15.0重量%まで存在
前記バインダ組成物は、液体状態で、1.0から7.0までの範囲のpHを示す、ことを特徴とする、不織マット。
【請求項2】
前記複数の強化繊維は、ガラス繊維、合成繊維、及び天然繊維の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の不織マット。
【請求項3】
前記複数の強化繊維は、ガラス繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の不織マット。
【請求項4】
前記複数の強化繊維は、チョップドガラス繊維及び合成繊維の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の不織マット。
【請求項5】
前記バインダ組成物は、消泡剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の不織マット。
【請求項6】
前記カップリング剤は、シランカップリング剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の不織マット。
【請求項7】
前記熱硬化性材料は、アクリル系材料及びウレアホルムアルデヒド材料の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の不織マット。
【請求項8】
前記熱可塑性材料は、エチレン酢酸ビニルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の不織マット。
【請求項9】
前記不織マットは、前記腐食抑制剤を有さない他の同一の不織マットと比較すると、100%スチレンモノマー中に10分間浸漬された後、引張強度において少なくとも12%の増加を示すことを特徴とする、請求項1に記載の不織マット。
【請求項10】
前記不織マットは、前記腐食抑制剤を有さない他の同一の不織マットと比較すると、硬化後、いずれの繊維白化も示さないことを特徴とする、請求項1に記載の不織マット。
【請求項11】
熱硬化性樹脂で含浸された少なくとも1つのロービングと、
請求項2~10の何れか1項に記載の不織マットと、
を含む、引抜成形された複合製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、「CORROSION-RESISTANT NON-WOVEN FOR PIPE LINER AND PULTRUSION APPLICATIONS」と題する、2016年9月6日出願の米国特許仮出願番号第62/383,665号の優先権及びその全ての利点を主張するものであり、その開示全体を引用により本明細書に完全に組み入れる。
【背景技術】
【0002】
従来の不織マットは、適切な樹脂バインダにより一緒に結合された繊維ウェブを含む。天然繊維及び合成(man-made)繊維を含む強化繊維は、様々な技術において有用であり、例えばポリマー材料を強化するために、連続又はチョップド(chopped)フィラメント、ストランド、ロータビング、織布、不織布、メッシュ、及びスクリムの形で使用することができる。強化ポリマーコンポジットは、ポリマーマトリックス材料、強化材量、及び任意の他の成分から、様々な方法で形成することができる。このようなコンポジットは、強化繊維を用いて形成され、該強化繊維は、寸法安定性及び優れた機械的特性を、結果として得られるコンポジットに与える。
【0003】
例えば、ガラス繊維は、これらが一般的に大気条件における変化に応答して収縮又は伸張しないことから、寸法安定性を与える。さらに、ガラス繊維は、高い引張強度、耐熱性、防湿性、及び高い熱伝導性をもつ。
【0004】
不織繊維マットは、ロッド、格子、パイプ及び管を含む様々な引抜成形部品を形成するために、引抜成形プロセスにおいて一般的に使用されている。引抜成形は、一定の断面を有する軽量の線状プロファイル製品の製造のための連続プロセスである。一般に、引抜成形は、繊維マットを適切な樹脂材料で含浸し、連続引張装置を用いて、含浸マットを加熱ダイに通すことを含む。含浸され固化されたマットを加熱ダイに通すことによって、樹脂が硬化され、所望の形状に形成することができる硬化したマットがもたらされる。コンポジットが加熱ダイを出ると、これが冷却され、所望の長さに裁断される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引抜成形プロセスの連続的性質は、有利なことに、任意の所望の長さ又は厚さのコンポジットの製造を可能にする。引抜成形プロセスは、製品に向上した構造的特性(例えば、高い比強度/剛性対重量比)を与える高繊維充填プロファイルを有する製品も製造する。しかしながら、引抜成形プロセスに関連する問題がある。その1つの問題は、繊維マットを含浸するために一般的に使用される樹脂浴に伴って生じる。一般的には、熱硬化性樹脂が使用され、該樹脂は、スチレン及び/又はメチルメタクリレートなどの揮発性不飽和モノマーの使用を必要とする。スチレンは、強化マットに適用されたバインダを容易に膨潤し、劣化させる強力な溶媒である。バインダのこのような劣化は、繊維マットを脆弱化し、また引抜成形プロセス中に用いられる強力な引張力に耐えることができない可能性がある。
【0006】
引抜成形プロセスと関連した別の問題は、製造プロセスにおいて用いられる金属表面に伴って生じる。製造中に金属表面がバインダに曝されると、バインダ内の腐食剤(すなわち、腐食を引き起こす化合物/化学物質)が、金属の上に移動されることが多く、それが最終的に金属自体の腐食を引き起こし得る。腐食とは、精製金属が、周囲環境との化学反応によってより安定した形態(酸化物、水酸化物、硫化物等)に変換されるプロセスである。この化学反応は金属を劣化させ、脆弱化をもたらし、又は場合によっては、金属のひび割れ/破砕を引き起こす。
【0007】
従って、非腐食性であり、スチレンのような揮発性不飽和モノマーには耐性があるが、溶媒含有ポリエステル樹脂には依然として完全に適合性がある不織マットに対する必要性があり、この不織マットは、種々の引抜成形用途を含む下流処理において満足のいくように使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの例示的な実施形態によると、非腐食性バインダ組成物が提供される。不織マットは、バインダ組成物に加えて複数の強化繊維を含む。バインダ組成物は、バインダ樹脂、カップリング剤、及び腐食抑制剤を含む。バインダ樹脂は、熱硬化性材料、熱可塑性材料、及びそれらの組み合わせを含む。不織マットは、100%スチレンモノマー中に10分間浸漬された後、少なくとも1.0lb/ftの引張強度を示す。
【0009】
幾つかの例示的な実施形態において、複数の強化繊維は、ガラス繊維、合成繊維、天然繊維、及びそれらの組み合わせから成る群から選択することができる。幾つかの例示的な実施形態において、複数の強化繊維は、ガラス繊維であり、他の例示的な実施形態においては、チョップドガラス繊維及び合成繊維の混合物である。
【0010】
幾つかの例示的な実施形態において、不織マットは、10.0重量%から100重量%までのチョップドガラス繊維、及び0重量%から90.0重量%までの合成繊維を含む。
【0011】
幾つかの例示的な実施形態において、腐食抑制剤は、トリエタノールアミンを含む有機腐食抑制剤であり、腐食抑制剤は、バインダ組成物中に、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、0.05重量%から15.0重量%まで存在し得る。
【0012】
幾つかの例示的な実施形態において、バインダ組成物は、消泡剤をさらに含み、消泡剤は、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、0.01重量%から10.0重量%までの量で存在し得る。
【0013】
幾つかの例示的な実施形態において、バインダ組成物のカップリング剤は、シランカップリング剤を含み、該カップリング剤は、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、0.05重量%から10.0重量%までの量で存在し得る。
【0014】
幾つかの例示的な実施形態において、熱硬化性材料は、アクリル系材料及びウレアホルムアルデヒド材料の少なくとも1つとすることができる。幾つかの実施形態において、アクリル系材料は、ポリアクリル酸であり、ポリアクリル酸は、10,000の又は10,000未満の分子量を有する低分子量のポリアクリル酸とすることができる。熱可塑性材料は、エチレン酢酸ビニルとすることができる。
【0015】
幾つかの例示的な実施形態において、バインダ樹脂は、全固形分に基づいて、50.0重量%から100重量%まで、又は70.0重量%から85重量%までの熱可塑性材料、及び0重量%から50.0重量%まで、又は15.0重量%から30.0重量%までの熱硬化性材料を含む。
【0016】
幾つかの例示的な実施形態において、不織マットは、腐食抑制剤を有さない他の同一の不織マットと比較すると、100%スチレンモノマー中に10分間浸漬された後、引張強度において少なくとも12%又は少なくとも93%の増加を示す。
【0017】
幾つかの例示的な実施形態において、不織マットは、100%スチレンモノマー中に10分間浸漬された後、少なくとも2.5lb/ft又は少なくとも3.0lb/ftの引張強度を示す。
【0018】
幾つかの例示的な実施形態において、不織マットは、腐食抑制剤を有さない他の同一の不織マットと比較すると、硬化後、いずれの繊維白化も示さない。
【0019】
幾つかの例示的な実施形態において、バインダ組成物は、液体状態での形成後、少なくとも3.69のpHを示す。
【0020】
幾つかの例示的な実施形態において、熱硬化性樹脂で含浸された少なくとも1つのロービングと、複数の強化繊維、並びにバインダ樹脂、カップリング剤、及び腐食抑制剤を含むバインダ組成物を含む不織マットとを含む、引抜成形された複合製品が提供される。バインダ樹脂は、熱硬化性材料、熱可塑性材料、又はそれらの組み合わせを含む。不織マットは、100%スチレンモノマー中に10分間浸漬された後、少なくとも1.0lb/ftの引張強度を示す。
【0021】
幾つかの例示的な実施形態において、複数の強化繊維は、ガラス繊維、合成繊維、天然繊維、及びそれらの組み合わせから成る群から選択することができる。幾つかの例示的な実施形態において、複数の強化繊維は、ガラス繊維であり、他の例示的な実施形態においては、チョップドガラス繊維及び合成繊維の混合物である。
【0022】
幾つかの例示的な実施形態において、引抜成形された複合製品の不織マットは、10.0重量%から100重量%までのチョップドガラス繊維、及び0重量%から90.0重量%までの合成繊維を含む。
【0023】
幾つかの例示的な実施形態において、腐食抑制剤は、トリエタノールアミンを含む有機腐食抑制剤であり、腐食抑制剤は、バインダ組成物中に、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、0.05重量%から15.0重量%まで存在し得る。
【0024】
幾つかの例示的な実施形態において、バインダ組成物は、消泡剤をさらに含み、消泡剤は、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、0.01重量%から10.0重量%までの量で存在し得る。
【0025】
幾つかの例示的な実施形態において、バインダ組成物のカップリング剤は、シランカップリング剤を含み、該カップリング剤は、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、0.05重量%から10.0重量%までの量で存在し得る。
【0026】
幾つかの例示的な実施形態において、熱硬化性材料は、アクリル系材料及びウレアホルムアルデヒド材料の少なくとも1つとすることができる。幾つかの実施形態において、アクリル系材料は、ポリアクリル酸であり、ポリアクリル酸は、10,000の又は10,000未満の分子量を有する低分子量のポリアクリル酸とすることができる。熱可塑性材料は、エチレン酢酸ビニルとすることができる。
【0027】
幾つかの例示的な実施形態において、バインダ樹脂は、全固形分に基づいて、50.0重量%から100重量%まで、又は70.0重量%から85重量%までの熱可塑性材料、及び0重量%から50.0重量%まで、又は15.0重量%から30.0重量%までの熱硬化性材料を含む。
【0028】
幾つかの例示的な実施形態において、引抜成形された複合製品の不織マットは、腐食抑制剤を有さない他の同一の不織マットと比較すると、100%スチレンモノマー中に10分間浸漬された後、引張強度において少なくとも12%又は少なくとも93%の増加を示す。
【0029】
幾つかの例示的な実施形態において、引抜成形された複合製品の不織マットは、100%スチレンモノマー中に10分間浸漬された後、少なくとも2.5lb/ft又は少なくとも3.0lb/ftの引張強度を示す。
【0030】
幾つかの例示的な実施形態において、引抜成形された複合製品の不織マットは、腐食抑制剤を有さない他の同一の不織マットと比較すると、硬化後、いずれの繊維白化も示さない。
【0031】
幾つかの例示的な実施形態において、引抜成形された複合製品の液体状態での形成後、少なくとも3.69のpHを示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】樹脂とガラスとの間の境界面に発生する剥離の絵画的表現である。
図2】剥離(de-bonding)/白化(whitening)を被ったガラスマット(下部)と剥離/白化を被っていないガラスマット(上部)との間の差の絵画的表現である。
図3】市販のサンプルと比較した、本発明の硬化したバインダ配合物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
種々の例示的な実施形態が本明細書で説明又は示唆されるが、本明細書で説明又は示唆されるものと類似した若しくは等価の様々な方法及び材料を用いる他の例示的な実施形態は、一般的な本発明の概念に包含される。
【0034】
特に他に定めのない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野における当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。これに関連して、特に他に示されていない限り、本文書内に与えられる成分の濃度は、慣習的な実務を踏まえて、マスターバッチ又は濃縮物中のこれらの成分の濃度を指す。
【0035】
本明細書で述べられる用語は、例示的な実施形態を説明するためだけのものであり、全体として本出願を限定するものと解釈すべきではない。他に特に指定されていない限り、「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」及び「少なくとも1つ(at least)」は、互換的に使用される。さらに、本出願の説明及び添付の特許請求の範囲において用いられる場合、周囲の文脈と矛盾しない限り、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「その(the)」は、複数形も含む。
【0036】
一般的な本発明の概念は、改善された特性を有する可撓性不織マットに関する。幾つかの例示的な実施形態において、可撓性不織マットは、腐食剤に耐性があり、低下した酸性度、及びより優れた硬化効率を示す一方、溶媒含有ポリエステル樹脂には依然として完全に適合性がある。種々の例示的な実施形態において、可撓性不織マットは、従来のマットを悩ませ、マットで裏打ちされたパイプの寿命を短くするガラス繊維の剥離を実質的に減少又は排除する。さらに、種々の例示的な実施形態によると、本発明の可撓性不織マットは、スチレン並びに引抜成形プロセスにおいて使用される樹脂調合物内に存在し得る樹脂のような揮発性不飽和モノマーに耐性がある。可撓性不織マットの改善された化学特性は、改善された下流プロセス、例えば、複雑な形状及びサイズを有する引抜成形製品の形成をもたらす。本発明の可撓性不織マットは、天然繊維、合成繊維、又はその組み合わせのいずれかを含む複数の繊維を含むことができる。
【0037】
本発明との関連で使用されるような用語「天然繊維」とは、適切な強化特性を有する非合成(non-man-made)繊維を指す。天然繊維は、これらに限定されるものではないが、茎、種子、葉、根、又は師管部を含む、植物の任意の部分から抽出される植物繊維、並びに、これらに限定されるものではないが、絹及びウールを含む動物繊維を含むことができる。天然繊維は、これらに限定されるものではないが、アスベスト、アタパルガイト、セピオライト、ルチル、及び黄鉄鉱を含む鉱物繊維を含むこともできる。強化繊維材料として使用するのに好適であり得る天然繊維の例は、これらに限定されるものではないが、玄武岩、綿、ジュート、竹、ラミー、バガス、ヘンプ、コイア、リネン、ケナフ、サイザルアサ、亜麻、ヘネケアサ、及びこれらの組み合わせを含む。
【0038】
本明細書と関連して使用されるような用語「合成繊維」とは、その化学的組成又は構造が修飾されたあらゆる繊維を指す。合成繊維は、有機繊維及び無機繊維の両方を含むことができる。無機繊維は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、他の金属繊維、又は特別繊維を含むことができる。有機繊維は、天然ポリマー繊維及び合成ポリマー繊維の両方を含むことができる。
【0039】
幾つかの例示的な実施形態において、繊維は、ガラス繊維を含む。ガラス繊維は、任意のタイプのガラスから作成することができる。ガラス繊維の例は:A-型ガラス繊維、C-型ガラス繊維、E-型ガラス繊維、S-型ガラス繊維、ECR-型ガラス繊維(例えば、Owens Corning社から市販されているAdvantex(登録商標)ガラス繊維)、Hiper-tex(商標)、ウールガラス繊維、及びこれらの組み合わせを含む。不織マットにおける、鉱物繊維、炭素繊維、セラミック繊維、天然繊維、及び/又は合成繊維等の他の強化繊維の使用は、同様に一般的な本発明の概念の範囲内にあるものと考えられる。本明細書で使用されるような用語「合成繊維」又は「合成ポリマー繊維」は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、アラミド、及びポリアラミド繊維、並びにこれらの組み合わせのような、好適な強化特性を有する任意の合成繊維を示すことが意図される。
【0040】
幾つかの例示的な実施形態において、本発明による不織マットを形成するために用いられる繊維は、ポリシー繊維のような、ガラス繊維と合成樹脂の組み合わせを含む。種々の例示的な実施形態によると、ポリマー繊維は、ポロプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はその組み合わせを含む。
【0041】
幾つかの例示的な実施形態において、本発明による不織マットを形成するために使用される繊維は、約10.0重量%から約100重量%までのガラス繊維及び約0質量%から約90.0質量%までのポリマー繊維を含む。他の例示的な実施形態において、該繊維は、約50.0重量%から約90.0質量%までのガラス繊維及び約10.0質量%から約50.0質量%までのポリマー繊維、又は約75.0質量%から約90.0質量%までのガラス繊維及び約10.0質量%から約25.0質量%までのポリマー繊維を含む。他の例示的な実施形態において、不織マットは、100重量%のガラス繊維又は100重量%のポリマー繊維を含む。ポリマー繊維は、合成ポリマー繊維とすることができる。本明細書で使用される場合、文脈により特に示されない限り、語句「重量パーセントの組成物」及び「wt.%」とは、組成物の全成分の重量による百分率を示すことを意味する。
【0042】
ガラス繊維は、当業者には周知の従来の方法によって形成することができる。例えば、ガラス繊維は、連続式製造プロセスにより形成することができ、該プロセスにおいては、溶融ガラスがオリフィス又はブッシングの先端に通され、それにより形成される溶融ガラスの流れが固化されてフィラメントとなり、該フィラメントは一緒に結合されて、繊維、ロービング、ストランド等を形成する。
【0043】
可撓性不織マットは、乾式堆積法(dry-laid process)及び湿式堆積法(wet-laid process)を含む様々な方法により形成することができる。幾つかの例示的な実施形態において、不織マットは、湿式堆積法で形成され、該方法は、様々な成分、例えば水、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、潤滑剤、殺生物剤、及び/又は他の化学剤(まとめて「ホワイト・ウォーター」と呼ばれることもある)で充填された混合タンク内に形成することを含む。次に、繊維がスラリー/ホワイト水溶液に導入され、繊維が分散されるように撹拌される。スラリーは、均一又はほぼ均一な内部の繊維の分散を与えるように、十分に攪拌されることが望ましい。
【0044】
次に、水性繊維分散液を、当技術分野において周知の従来の方法に従って処理し、湿式堆積されたマットとすることができる。例えば、水性繊維分散液は、移動するスクリーン又はコンベア上に堆積され、該スクリーン又はコンベア上で、水の大部分が、これを介して排液され、ランダムに配向された繊維ウェブが残される。繊維ウェブは、真空オーブン又は他の乾燥手段によってさらに乾燥させることが可能である。
【0045】
次に、例えば、カーテンコーティング、吹付け、ツインワイヤ浸漬浴、ツーロールパダー等による、いずれかの従来の方法で、バインダ組成物を繊維ウェブに適用することができる。次いで、真空又は他の水除去手段により、水、過剰なバインダ、及び過剰なカップリング剤を除去することができる。最後に、バインダにより被覆された繊維製品を、1又はそれ以上のオーブン内で乾燥及び硬化させることができる。乾燥のための例示的な温度範囲は、約425°F(218℃)から約525°F(274℃)までである。オーブン内で費やされる例示的な時間は、0.1分と3分との間である。乾燥及び硬化された製品は、完成した不織可撓性マットである。
【0046】
本明細書で説明されるように、不織マットは、乾燥式堆積法によって製造することもできる。このプロセスにおいて、繊維はチョップされ、コンベヤに吹き飛ばされ、次に、バインダが適用され、マットを形成する。典型的には、繊維は、ランダムに配向される方法でコンベヤの上に堆積される。バインダにより被覆される繊維製品を、1つ又はそれ以上のオーブン内で乾燥及び硬化させることができる。
【0047】
幾つかの例示的な実施形態において、バインダ組成物は、バインダ樹脂材料、カップリング剤、及び1つ又はそれ以上の随意的な添加剤を含む。バインダ樹脂は、熱硬化性材料、熱可塑性材料、又は熱硬化性材料と熱可塑性材料の混合物とすることができる。熱硬化性材料は、例えば、アクリル系材料、ウレアホルムアルデヒド材料、又はこれら2つの材料の組み合わせを含むことができる。幾つかの例示的な実施形態において、アクリル系材料は、10,000又はそれ未満の分子量を持つ低分子量ポリアクリル酸などのポリアクリル酸である。幾つかの例示的な実施形態において、低分子量ポリアクリル酸は、100から10,000までの分子量を有する。他の例示的な実施形態において、低分子量ポリアクリル酸は、2,000から6000までの分子量を有する。幾つかの例示的な実施形態において、ポリアクリル系アクリル酸組成物は、米国ペンシルバニア州フィラデルフィア所在のRohm and Haas(現在はDow Chemical)社から市販されているQR-1629S、ポリアクリル酸/グリセリン混合物を含む。熱硬化性材料は、ひとたび適切な硬化条件下で架橋されると、良好な引張性能及び耐溶剤性を与え、異なる用途におけるマットの保全性を維持するのに役立つ。
【0048】
幾つかの例示的な実施形態において、熱可塑性材料は、低いガラス転移温度(Tg)(すなわち、約マイナス15℃(-15℃)より低い)を有する任意の熱可塑性材料を含むことができる。ガラス転移温度は、ポリマー材料が硬いガラス様材物質から柔らかいゴム状物質に転移する温度範囲である。熱可塑性材料は、例えば、エチレン酢酸ビニル(「EVA」)とすることができる。他の適切な熱可塑性材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリフッ化ビニルを含む。幾つかの例示的な実施形態において、EVAは、米国ケンタッキー州フローレンス所在のCelanese Corp.から市販されているDur-O-Set(登録商標)E-646を含む。熱可塑性材料は、自己架橋性であり、可撓性マットに必要とされる柔軟性を与えることができる。
【0049】
異なる機能(例えば、熱硬化性及び熱可塑性)を有する樹脂を組み込むバインダ組成物を配合することによって、チョップド繊維強化マットに対して改善された特性を与え得ることが発見された。特に、こうした特性の組み合わせにより、不織マットを、例えば引抜成形用途において、連続フィラメントマットの代わりとして使用することが可能になる。幾つかの例示的なバインダ組成物は、約0質量%から約50.0質量%までの熱硬化性材料、例えばポリアクリル酸、及び約50.0質量%から約100質量%までの熱可塑性材料、例えばEVAを含む。他の例示的な実施形態において、バインダ樹脂は、約15.0質量%から約30.0質量%までの熱硬化性材料、及び約70.0質量%から約85.0質量%までの熱可塑性材料を含む。さらに他の例示的な実施形態において、バインダ樹脂は、約17.0質量%から約25.0重量%までの熱硬化性材料、及び約72.0質量%から約80.0重量%までの熱可塑性材料を含む。
【0050】
幾つかの例示的な実施形態において、バインダ樹脂は、バインダ組成物中に、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、約80.0重量%から約99.0重量%までの量で、幾つかの例示的な実施形態においては、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、約90.0重量%から約99.0重量%までの量で、他の例示的な実施形態においては、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、約97.0重量%から約99.0質量%までの量で存在することができる。
【0051】
バインダ組成物は、カップリング剤をさらに含むことができる。本明細書で説明されるカップリング剤は、本質的に例示的なものであり、本明細書で説明され又は他の方法で示唆される例示的な実施形態のいずれにおいても、当業者には周知の任意の適切なカップリング剤を利用することができる。カップリング剤の量又はカップリング剤の組み合わせの量は、使用される特定の化合物並びにバインダ内で使用される他の化合物に基づいて変化することがあり、一般的に、当業者に周知の任意の適切な量で添加することができる。幾つかの例示的な実施形態において、カップリング剤又は複数のカップリング剤は、バインダ組成物中に、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、約0.05重量%から約10.0質量%までの量で、他の例示的な実施形態においては、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、約0.1重量%から約3.0重量%までの量で存在することができる。様々な例示的な実施形態は、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、約0.2重量%から約0.5重量%までのカップリング剤を含む。強化繊維の表面とその周囲のマトリックスとの間のカップリングを改善する役割以外に、カップリング剤は、後の処理の際の毛羽立ちのレベル又は破壊された繊維フィラメントを減少させるようにも機能し得る。
【0052】
幾つかの例示的な実施形態において、カップリング剤の少なくとも1つは、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、シリコンベースの化学物質を含むカップリング剤である。適切なシランカップリング剤は、アミン(第一級、第二級、第三級、及び第四級)、アミノ、イミノ、アミド、イミド、ウレイド、又はイソシアナト等の、1又はそれ以上の官能基を有する1又はそれ以上の窒素原子を含有するシランを含むことができる。1つの例示的な実施形態において、シランは、メトキシシランである。メトキシシランは、メタクリルオキシ官能性を呈するので、特に有用である。メタキシ官能性は、バインダとガラス表面との間の優れた接着をもたらし、また、ガラス剥離を制限するガラス不織布上のポリエステル樹脂の湿潤性も改善する。適切なシランカップリング剤は、これらに限定されるものではないが、アミノシラン、シランエステル、ビニルシラン、メタクリルオキシシラン、エポキシシラン、硫黄シラン、ウレイドシラン、メトキシシラン、及びイソシアナトシランを含む。本発明において使用するための、シランカップリング剤の具体的で非限定的な例は、γ-メタクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン(A-174)、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(A-1100)、n-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(Y-9669)、n-トリメトキシ-シリル-プロピル-エチレン-ジアミン(A-1120)、メチル-トリクロロシラン(A-154)、γ-クロロプロピル-トリメトキシ-シラン(A-143)、ビニル-トリアセトキシシラン(A-188)、及びメチルトリメトキシシラン(A-1630)を含む。メタクリルオキシプロキルシラン(米国ミシガン州、ミッドランド所在のDow Corning社から市販されているZ-6030)を除いて、上記で識別されたシランカップリング剤の全ては、米国オハイオ州、Strongsville所在のMomentive Performance Materials Inc.から市販されている。
【0053】
幾つかの例示的な実施形態において、バインダ組成物は、腐食抑制剤をさらに含む。腐食抑制剤は、基材の腐食速度を低減させる化学化合物である。このように、腐食抑制剤は、腐食剤が、基材を貫通し、腐食を引き起こすのを防止する。
【0054】
本発明の腐食抑制剤は、無機腐食抑制剤又は有機腐食抑制剤のいずれかとすることができる。腐食抑制剤が無機化合物から選択される場合、腐食抑制剤は、陽極(不動態化抑制剤)又は陰極のいずれかとすることができる。陽極腐食抑制剤は、基材上に不溶性膜を形成することにより、陽極反応をブロックする。陰極腐食抑制剤は、陰極反応自体を遅くすること又は陰極領域上への選択的沈殿により、陰極反応をブロックし、そのことが、表面上への還元種の拡散を制限する。一部の腐食抑制剤は、陰極抑制剤及び陽極抑制剤の両方を含有することさえできる(混合抑制剤)。これらの混合抑制剤は、表面上の陽極部位及び陰極部位の両方をブロックすることにより機能する。有機腐食抑制剤は、一般に、表面吸収又は膜形成を通じて機能する。これらの化合物は、基材の表面上に疎水性保護膜を蓄積する。
【0055】
一般に、用いられる腐食抑制剤のタイプは、これらに限定されるものではないが、基材内の金属のタイプ及びそれらが作動しなければならない温度範囲に基づいて選択される。腐食抑制剤の限定されない例は、ヘキサミン、アルカーノアミンフェニレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、亜硝酸ナトリウム、桂皮アルデヒド、クロマート、ニトリル、シリケート、リン酸塩、ヒドラジン、酸化亜鉛、塩化ベンザルコニウム、及びアスコルビン酸を含む。幾つかの例示的な実施形態において、腐食抑制剤は、トリエタノールアミン(「TEA」)などのアルカノールアミンを含む。
【0056】
種々の金属上の腐食を防止する能力に加えて、TEAは、それを特に有利にする他の特性を示す。TEAは、酸性度を下げるために、酸性官能基と錯体形成することができる。例えば、TEAなどのアルカノールアミン腐食抑制剤なしに不織布を結合するために使用されるバインダは、約2.5のpHを示し得る。しかしながら、TEAなどのアルカノールアミン腐食抑制剤を含む不織布は、4.5に近いpHを示し得る。これは、強酸性のバインダは、不織布を生成する植物における処理の問題を引き起し、非ステンレス鋼ベースの機器の腐食をもたらすことがあるので、特に重要である。さらに、TEAは、その3つの水酸基のために、ポリアクリル酸と架橋することができる架橋剤として働き得る。このことは、より優れた硬化効率をもたらし得る。
【0057】
腐食抑制剤の量は、使用される特定の化合物、並びにバインダ中に使用される他の化合物に基づいて変わり得る。幾つかの例示的な実施形態において、腐食抑制剤は、バインダ組成物中に、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、約0.05重量%から約15.0重量%までの量で、そして、他の例示的な実施形態においては、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、約0.1重量%から~約5.0重量%までの量で存在し得る。他の例示的な実施形態において、腐食抑制剤は、バインダ組成物中に、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、約0.5重量%から約3.5重量%までの量で存在し得る。種々の例示的な実施形態は、腐食抑制剤の、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、約1.5重量%から約2.5重量%までを含む。
【0058】
バインダ組成物は、消泡剤(defoamer)をさらに含むことができる。消泡剤又は泡止め剤(anti-foaming agent)は、プロセス液体中の泡の形成を低減させる又は妨げる化学物質である。工業プロセスにおける泡の形成は特に問題である。例えば、泡は表面被覆上に欠陥をもたらすことがあり、効率的な充填を防止し、処理中に体積を増大させ、オーバーフローを生じさせることがあり、最終生成物を処理するのに使用される機器の処理速度及び可用性を低減させることがある。バインダ中の泡の範囲は、バインダ中の成分、製造方法、及び適用方法を含む多数の要因に影響を受ける。
【0059】
本発明で説明される消泡剤は、本質的に例示的なものであり、当業者に周知の任意の適切な消泡剤を、説明される例示的な実施形態のいずれかにおいて又は本明細書で示唆される他のものに用い得ることを理解されたい。本発明において、オイルベースの消泡剤、粉末消泡剤、水ベースの消泡剤、シリコーンベースの消泡剤、アルキルポリアクリレート、及びEO/PO(エチレン酸化物及びプロピレン酸化物)ベースの消泡剤を含む、一般的なクラスの消泡剤のいずれかを用い得ることが考えられる。例示的な消泡剤は、米国ニュージャージ州Boonton所在のDrews Industrial Divisionから入手可能なDrew Plus Y-250、米国テキサス州Irving所在のCelanese Corp.からのVinamul 7700、及び米国ミシガン州Midland所在のDow Chemical Companyからの、商品名TERGITOL(商標)の下で販売される消泡剤を含む。
【0060】
消泡剤の量は、使用される特定の化合物、並びにバインダ組成物中で使用される他の化合物に基づいて変わり得る。幾つかの例示的な実施形態において、消泡剤は、バインダ組成物中に、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、約0.01重量%から約10.0重量%までの量で、そして、他の例示的な実施形態においては、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、約0.05重量%から約5.0重量%までの量で存在し得る。他の例示的な実施形態において、消泡剤は、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、約0.1重量%から約1.0重量%の量で存在し得る。種々の例示的な実施形態は、消泡剤の、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、約0.2重量%から約0.5重量%までを含む。
【0061】
バインダ組成物は、随意的に、例えば、染料、油、充填剤、着色剤、水性分散液、UV安定剤、潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、粘度調整剤、及び/又は帯電防止剤などの付加的な成分を含むことができる。水性分散液は、エージングに起因するバインダ組成物による酸化の影響を打ち消す酸化防止剤分散液を含むことができる。1つの例示的な酸化防止剤分散液は、米国オハイオ州Akron所在のAkron Dispersions,IncからのBostex 537を含む。酸化防止剤分散液は、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、約0重量%から約5.0重量%まで又はバインダ組成物内の全固形分に基づいて、約0.5重量%から約3.0重量%までの量で含ませることができる。幾つかの例示的な実施形態は、酸化防止剤分散液のバインダ組成物内の全固形分に基づいて、約1.0重量%から約2.0重量%を含む。添加剤は、バインダ組成物内の全固形分に基づいて、約0重量%から約10.0重量%までの量で含ませることができる。
【0062】
幾つかの例示的な実施形態において、バインダ組成物は、強化繊維に適用するために成分を溶解又は分散するための水をさらに含む。水溶性バインダ組成物を、強化繊維への適用に適した粘度に希釈するのに十分な量で、水を添加しりことができる。例えば、バインダ組成物は、全バインダ組成物に基づいて、約50.0重量%から約75.0重量%までの水を含むことができる。
【0063】
幾つかの例示的な実施形態において、形成後、液体状態のバインダ組成物は、約1.0から約7.0までの範囲、又は約2.0から約6.0までの範囲、又は約2.5から約5.0までの範囲、又は約3.0から約4.5までの範囲のpHを示す。
【0064】
本明細書で論じられるように、バインダ組成物は、引抜成形プロセスにおいて使用される熱硬化性樹脂中に一般的に見られるスチレンモノマーなどの揮発性不飽和モノマーに対して改善された耐性を与える。この強化されたスチレンに対する耐性は、可撓性不織マットを、引抜成形プロセスにより適したものにする。本明細書で論じられるように、スチレンモノマーは強力な溶剤であり、該バインダを膨潤及び劣化させるように作用し、それにより該マットの連続性が脆弱化する恐れがある。スチレンモノマーに対して耐性の可撓性不織マットを提供することにより、可撓性不織マット、従ってこれを組み込んでいる結果として得られる引抜成形部品は、その長手方向並びにその横断方向における引張強度を維持する。
【0065】
本明細書で論じられるように、バインダ組成物は、非腐食性でもある。家庭用配管に一般的に使用される銅管の腐食は極めて一般的であり、かつ、あまりに酸性である(低pH)か又はあまりに塩基性(アルカリ、高pH)である水、砂、又は水中の他の沈降物、並びに高レベルの酸素、高レベルの溶解塩及び腐食関与微生物を含む他の化学的原因により引き起こされ得る。管の腐食は、鉛、銅、及び管から飲料水供給への他の有害な化学物質/金属の吸収を含む深刻な健康上の問題を生じさせる。本明細書で論じられるように、本発明のバインダ組成物は、TEA等のアルカノールアミンのような腐食抑制剤を含む。従って、パイプ又はそこから形成されるパイプライナは、化学腐食に耐え、それにより、これらの健康上の問題を軽減する。TEA等の腐食抑制剤は、金属又は他の表面上の水分子を移動させ、金属又は他の表面を腐食から保護する疎水性膜を形成する。有害な化学物質を含有することが多い他の腐食抑制剤とは異なり、TEAは、比較的環境衛生及び安全にフレンドリーである。実際に、TEAは、種々の化粧用組成物及び局所用組成物において頻繁に使用される。
【0066】
本明細書で論じられるように、本発明のバインダ組成物を有するガラスマットは、溶媒含有ポリエステル樹脂との良好な適合性も示す。他の市販のガラスマット及びバインダと対照的に、本発明のバインダ組成物を有するガラスマットは、マットにおけるいずれの白化又はガラス剥離も示さない。こうした白化/剥離は、肉眼で容易に観察可能であり、いずれの拡大も必要としない。このタイプの繊維白化は、樹脂システムの硬化及び収縮の際に樹脂システム内にもたらされる応力の結果として生じる。体積収縮は、最大8.0%とすることができ、一方、硬化中の発熱は、樹脂とガラスとの間の熱膨張係数の差を悪化させる。システムが収縮すると、樹脂と樹脂との間の結合は、ガラス繊維と樹脂との間よりも強くなる。その結果、応力が樹脂とガラスとの間の結合強さを上回ると、境界面が剥離する。この剥離は、腐食層を通る腐食流体の高速搬送を可能にする間隙となり、腐食流体の通路に対するバリアとなることが意図される。繊維と樹脂が剥離すると、この剥離領域から散乱する光が反射し、白色に見える。この白化が、図1に見られる。
【0067】
幾つかの例示的な実施形態において、100%スチレンモノマー中に10分間浸漬された後、腐食抑制剤を含むバインダ組成物を有する不織マットは、腐食抑制剤を有さない他の同一の腐食マットと比較すると、少なくとも12%、又は少なくとも93%、又は少なくとも235%高い引張強度を示す。幾つかの例示的な実施形態において、腐食抑制剤を含有するバインダ組成物を有する不織マットは、100%スチレンモノマー中に10分間浸漬された後、少なくとも1.0ポンド毎フット(lb/ft)、又は少なくとも2.5lb/ft、又は少なくとも3.0lb/ftの引張強度を示す。スチレンは、多くの引抜成形用途において存在し、従って、スチレンに対して耐性がある(すなわち、スチレンへの曝露後、良好な引張強度を維持する)不織マットは、こうした引抜成形用途にはるかに適している。
【0068】
幾つかの例示的な実施形態において、少なくとも4.0重量%の腐食抑制剤を含有するバインダ組成物を有する不織マットは、液体状態での形成後、少なくとも3.69、又は少なくとも4.00、又は少なくとも4.2のpHを示す。
【0069】
本発明の種々の例示的な実施形態を開示することによって、一般的な本発明の概念を、一般的に紹介してきたが、以下に示される特定の具体的な例を参照することにより、更なる理解を得ることができ、以下に示される例は、例示の目的のみで与えられるものであり、一般的な本発明の概念を全て包含すること、又はこれらを他の方法で限定することを意図するものではない。
【実施例
【0070】
実施例
以下の例は、説明のために含められており、本明細書で説明される方法の範囲を限定することを意図するものではない。
【0071】
実施例1
表1に列挙される組成に従って、バインダ配合物(組成物A)を調製した。比較のために、市販のGC25A及びGC30Aマットを使用した。GC25A及びGC30Aマットは、アクリルベースであり、腐食抑制剤を含有しない。
【表1】
【0072】
同じ樹脂及び同一の硬化条件を用いて、組成物A及び市販のバインダ、GC25A及びGC30Aを含有するパネルを積層した。樹脂のプールを注ぎ、樹脂内のベールを濡らした。樹脂はロールアウト(roll out)されず、単にパネルの外縁に向けてウィッキングされただけである。脱気した樹脂において、3つのプライの各々が完全に濡らされた。最後のプライを加えた後、マイラー(Mylar)シートを積層体の上に配置し、気泡をマイラーと積層体との間に閉じ込めた。これらの気泡は、舌圧子により絞り出された。
【0073】
次に、ガラス板を積層体の上に配置し、樹脂をパネルの外縁に向けてゆっくりと押し付けた。その後、3.0mmの一様な樹脂厚を達成するように、重りをガラス板上に配置した。樹脂のゲル化時間を加速するために、パネルの下に加熱パッドを配置した。ひとたび樹脂がパネルを除去するのに十分なほど硬くなると、樹脂を80℃のオーブン中に配置した。硬化後、市販のアクリルベースのGC25A及びGC30Aのサンプルにおいて、著しく明確な剥離/白化が観察され、一方、表1によるバインダ配合物は、こうした剥離/白化を示さなかった。白化は、肉眼で容易に観察可能であり、いずれの拡大も要さない。結果は、図3に見られる。
【0074】
本発明のバインダ配合物及び市販のマットに対しても、耐スチレン性試験を実行した。スチレンへの曝露後に機能するバインダの能力を試験するために、バインダをスチレン中に浸漬し、その後に試験して、その測定した引張強度を求めた。10個の荷重を試験した。引張特性は、引張力がそれに印加されたとき、測定の材料がどのように反応するかを示す。GC25A及び組成物Aがそれぞれ、100%スチレンモノマー浴中に10分間浸漬された。浸漬後、インストロン機械を用いて、各マットに対して引張強度試験が行われた。引張強度を試験するために、各マットを引張装置により伸長させ、各マットを破壊するのに必要な力を記録した。各マットは、2.0in/分で試験された。結果は、表2に示される。
【表2】
【0075】
表2に示されるように、新しいマットは、全ての荷重にわたって著しく高い引張強度を有し、例えば、市販のマットと比較して、235%の平均強度の増加を示した。
【0076】
組成物AのpHも、様々なレベルのトリエタノールアミンの添加で試験された。pHは、較正されたpHプローブを用いて、液体状態でのバインダ形成後に測定された。pHプローブをバインダ内に浸漬させ、pH値が安定した後、読取値を測った。これらの結果が表3に示される。
【表3】
【0077】
表3に示されるように、新しいマットは、TEAのレベルが増大するにつれて著しく高いpH(より低い酸性度)を示し、例えば、TEAを有さない同じ不織マットと比較して、4.0重量%のTEAが添加されたとき、44%のpHの増加を示した。
【0078】
本発明の幾つかの例示的な実施形態が本明細書で説明されたが、一般的な本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなしに、多くの変更を行い得ることを理解されたい。全てのこのような変更が、本発明および関連する一般的な本発明の概念の範囲内に含まれることが意図され、これらは以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
図1
図2
図3