(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】抗VWF D’D3単一ドメイン抗体及びそれを含むポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 16/36 20060101AFI20220629BHJP
C07K 14/755 20060101ALI20220629BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220629BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220629BHJP
C07K 14/745 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220629BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20220629BHJP
A61K 38/36 20060101ALI20220629BHJP
A61K 38/37 20060101ALI20220629BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220629BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220629BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
C07K16/36 ZNA
C07K14/755
C07K19/00
C07K16/46
C07K14/745
A61K47/68
A61P7/04
A61K38/36
A61K38/37
A61P43/00 111
C12N15/13
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2018538749
(86)(22)【出願日】2017-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2017051569
(87)【国際公開番号】W WO2017129630
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-14
(32)【優先日】2016-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ルンタン,ペトリュス
(72)【発明者】
【氏名】エイメ,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥニ,セシール
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ,オリヴィエ
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-517789(JP,A)
【文献】特表2008-539775(JP,A)
【文献】The Journal of Clinical Investigation,1993年,Vol.91, No.1,p.273-282
【文献】Blood,2014年,Vol.124, No.3,p.445-452
【文献】Blood,2012年,Vol.119, No.20,p.4769-4778
【文献】The Journal of Biological Chemistry,2006年,Vol.281, No.8,p.4699-4707
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/36
C07K 19/00
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォン・ビルブラント因子(VWF)D’D3ドメインに対する単離された単一ドメイン抗体(sdAb)であって、前記sdAbが、配列番号1として示す配列を有するCDR1、配列番号2として示す配列を有するCDR2、及び配列番号3として示す配列を有するCDR3か、
配列番号5として示す配列を有するCDR1、配列番号6として示す配列を有するCDR2、及び配列番号7として示す配列を有するCDR3か、又は配列番号9として示す配列を有するCDR1、配列番号10として示す配列を有するCDR2、及び配列番号11として示す配列を有するCDR3、を含む、単離された単一ドメイン抗体。
【請求項2】
前記sdAbが、KB-VWF-013(配列番号4)、KB-VWF-008(配列番号8)、又はKB-VWF-011(配列番号12)である、請求項1記載の単離された単一ドメイン抗体。
【請求項3】
ポリペプチド及び請求項1又は2記載のVWFに対する少なくとも1つのsdAbを含むキメラポリペプチド。
【請求項4】
前記キメラポリペプチドが、野生型ポリペプチドとの比較で、VWFについての増加した親和性及び/又は低下した解離速度定数を有する、請求項3記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、FVII、FVIII、プロテインC、及びプロテインSからなる群より選択される凝固因子である、請求項3又は4記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
前記sdAbが、少なくとも1つの請求項1又は2に記載の単一ドメイン抗体を含み、単一ドメイン抗体が、治療用ポリペプチドのN末端に、C末端に、若しくはN末端及びC末端の両方に融合されるか、又は治療用ポリペプチドの配列内に挿入される、請求項3記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
VWFに対する2つ、3つ、4つ、又は5つのsdAbを含む、請求項3~6のいずれか一項記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
VWFに対する2つのsdAbが、i)VIII因子のBドメインのC末端部分を置換している(FVIII-KB13-bv)(配列番号13;配列番号16;若しくは配列番号17);ii)FVIIIのC末端に融合されている(配列番号18;若しくは配列番号19);iii)同時に、VIII因子のBドメインのC末端部分を置換し、VIII因子のC末端に融合されている(配列番号20;配列番号21;配列番号22;若しくは配列番号23);又はiv)VII因子のC末端に挿入されている(配列番号14)、請求項3~7のいずれか一項記載のキメラポリペプチド。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、第1の抗原に対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体及び第2の抗原に対する少なくとも1つのさらなる結合部位を含む、請求項3~8のいずれか一項記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
キメラポリペプチドが、請求項3~9のいずれか一項記載のキメラポリペプチドであり、VWFが、延長された半減期を伴うVWFポリペプチドである、キメラポリペプチド/VWF複合体。
【請求項11】
請求項3~9のいずれか一項記載のキメラポリペプチド又は請求項10記載のキメラポリペプチド/VWF複合体を含む、医薬組成物。
【請求項12】
請求項1又は2記載のVWF D’D3ドメインに対する単離されたsdAb、請求項4~9のいずれか一項記載のキメラポリペプチド、又は請求項10記載のキメラポリペプチド/VWF複合体を含む、医薬。
【請求項13】
請求項1又は2記載のVWF D’D3ドメインに対する単離されたsdAb、請求項4~9のいずれか一項記載のキメラポリペプチド、又は請求項10記載のキメラポリペプチド/VWF複合体を含む、出血障害を予防又は治療するための医薬組成物。
【請求項14】
請求項4~9のいずれか一項記載のキメラポリペプチド又は請求項10記載のキメラポリペプチド/VWF複合体を含む、出血障害を予防又は治療するための医薬組成物。
【請求項15】
前記出血障害が、血友病A又は血友病Bである、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
治療用ポリペプチドのポリペプチド配列に、
請求項1に記載のVWF D’D3ドメインに対する少なくとも1つのsdAbをエキソビボで加える工程を含む、該治療用ポリペプチドの半減期を延長又は増加させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は免疫療法の分野にある。特に、本発明は、フォン・ヴィルブランド因子(VWF)D’D3ドメインに対する単離単一ドメイン抗体(sdAb)及びそれを含むポリペプチド(例えば血液凝固因子など)ならびに治療におけるそれらの使用(例えば止血障害の防止及び処置など)に関する。
【0002】
発明の背景:
治療用タンパク質のインビボ半減期を延長し、それによりそれらの効率を増強することは医薬分野における主要な関心事である。多くの戦略がこの目的のために用いられてきた(タンパク質安定性及び溶解性を改善し、タンパク質分解を防止し、血流からのクリアランス速度を低下させる、PEG化を通じた又はFc融合タンパク質など共有結合修飾を含む)。そのようなアプローチは、異なる治療用タンパク質に、及び異なる障害、例えば血友病A(凝固VIII因子(FVIII)をコードする遺伝子中の欠損により起こされ、出生男児10,000名中1~2名に罹患する出血性疾患)などについて適用されてきた。血友病Aに罹患した患者は、精製血漿由来又は組換え産生FVIIIの注入で処置することができる。全ての市販のFVIII産物は、しかし、数時間(7~21時間、Van Dijk et al., Haematologica 2005 92:494-498)の短い半減期を有することが知られており、患者への頻繁な静脈内投与が要求される。このように、多くのアプローチがFVIII半減期を延長するために試みられてきた。例えば、凝固因子の半減期を延長するための開発におけるアプローチには、FVIII分子の化学的(PEG化)1又は遺伝子改変(Fc融合)2が含まれる。使用されているタンパク質工学にもかかわらず、しかし、現在開発中の長時間作用型FVIII産物は、限られた半減期を有すると報告されており、前臨床動物モデルにおいてわずか約1.5~2時間である。一貫した結果がヒトにおいて実証されており、例えば、rFVIIIFcによって、ADVATE(登録商標)と比較し、血友病A患者における半減期が1.7倍まで改善すると報告された。
【0003】
投薬スケジュールにより起こる頻繁な投与及び不便のために、あまり頻繁でない投与を要求するFVIII産物、即ち、1.5~2倍の半減期の制限よりも長い半減期を有するFVIII産物を開発する必要性が依然としてある。
【0004】
発明の概要:
本発明は、フォン・ヴィルブランド因子(VWF)D’D3ドメインに対する単離単一ドメイン抗体(sdAb)及びそれを含むポリペプチド(例えば血液凝固因子など)ならびに治療におけるそれらの使用(例えば止血障害の防止及び処置など)に関する。特に、本発明は特許請求の範囲により定義する。
【0005】
発明の詳細な説明:
本発明は、フォン・ビルブラント因子(VWF)D’D3ドメインに対する単離単一ドメイン抗体(sdAb)を治療用ペプチドに導入することにより、有意に増加した半減期を伴うポリペプチドが得られるとの発見に依存する。実際に、本発明に従ったキメラポリペプチドは、VWFからの解離低下を示し、より安定な複合体形成に導く。これによりクリアランス率の低下、及び、このように半減期の延長がもたらされる。例えば、本発明者らは、VWF D’D3ドメイン(FVIII-KB013bv)に対する2つの単離sdAbを挿入し、それによりBドメインを置換するキメラFVIIIポリペプチドが、野生型Bドメインレス FVIIIとの比較で、延長した半減期を示し(野生型FVIIIについてのT1/2は1.10時間(95%信頼区間:0.88~1.48時間))、FVIII-KB-013bvについてのT1/2は、血友病マウスにおいて測定した場合、2.11時間である(95%CI:1.66~2.92時間)。半減期延長は、このように、2.11/1.10=1.9倍である。VWF D’D3ドメインに対するsdAbも、本来であればVWFに結合しないタンパク質との複合体形成を誘導するために使用することができる。例えば、融合タンパク質FVII-KB013bv(FVII及びFVIIのC末端での2つの単離sdAbからなる)(しかし、FVIIではない)は、VWFと複合体を形成することが見出された。さらに、本発明者らは、その半減期をさらに改善するために、そのようなキメラFVIIIポリペプチドがVWFバリアントと複合体化しうることも実証した(例、FVIII-KB013bv/D’D3-Fc)。従って、本発明者らは初めて、このような構造を用いた半減期の増加を実証した。
【0006】
本発明のVWF D’D3ドメインに対する単一ドメイン抗体:
【0007】
第1の態様では、本発明はフォン・ビルブラント因子(VWF)D’D3ドメインに対する単離単一ドメイン抗体(sdAb)に関する。
【0008】
「単離された」により、それは、本発明に従った単一ドメイン抗体を指す場合、示した分子が、同じ型の他の生物学的な巨大分子の実質的な非存在において存在することを意味する。
【0009】
本明細書において使用するように、用語「単一ドメイン抗体」(sdAb)は、当技術分野においてその一般的な意味を有し、天然では軽鎖を欠いている、ラクダ科動物哺乳動物において見出されうる型の抗体の単一重鎖可変ドメインを指す。そのような単一ドメイン抗体はVHH又は「ナノボディー(登録商標)」とも呼ばれる。(単一)ドメイン抗体の一般的な記載については、上で引用する先行技術、ならびにEP 0 368 684、Wardら(Nature 1989 Oct 12; 341 (6242): 544-6), Holt et al, Trends Biotechnol, 2003, 21(ll):484-490;及びWO 06/030220、WO 06/003388も参照する。単一ドメイン抗体のアミノ酸配列及び構造は、4つのフレームワーク領域又は[FR]で構成されると考えることができ、それらは、当技術分野においてそれぞれ「フレームワーク領域1」又は「FR1」として;「フレームワーク領域2」又は「FR2」として;「フレームワーク領域3」又は「FR3」として;及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」として言及され;それぞれのフレームワーク領域は、3つの相補性決定領域又は「CDR」により中断されており、それらは、当技術分野においてそれぞれ「相補性決定領域1」又は「CDR1」として;「相補性決定領域2」又は「CDR2」として;及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」として言及される。したがって、単一ドメイン抗体は、一般的な構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を伴うアミノ酸配列として定義することができ、それにおいてFR1からFR4はそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、及びそれにおいてCDR1からCDR3は相補性決定領域1~3を指す。本発明の文脈において、単一ドメイン抗体のアミノ酸残基は、International ImMunoGeneTics情報システムアミノ酸ナンバリング(http://imgt.cines.fr/)により与えられるVHドメインについての一般的なナンバリングに従って番号付けられる。
【0010】
用語「VWF」は、当技術分野における一般的な意味を有し、血液凝固に含まれる血液糖タンパク質であるヒトフォン・ビルブラント因子(VWF)を指す。VWFは、各々が異なる機能をカバーするいくつかの相同ドメインで構成される単量体である:D1-D2-D’-D3-A1-A2-A3-D4-C1-C2-C3-C4-C5-C6-CK。天然に生じるヒトVWFタンパク質は、GeneBank受託番号NP_000543.2に示されるようなアミノ酸配列を有する。単量体は、その後、ジスルフィド結合を介したシステイン残基の架橋により二量体又は多量体中に配置される。VWFの多量体は、このように、極めて大きく、VWFの高分子量(HMW)多量体とも呼ばれる40を超える単量体からなることができる。
【0011】
好ましくは、von VWF D’D3ドメインに対する単一ドメイン抗体は、VWFのアンフォールディング(血小板結合部位の曝露に導く)を誘導しない。さらに、本発明の文脈内では、フォンVWF D’D3ドメインに対する単一ドメイン抗体によって、以下に記載するようなそのような単一ドメイン抗体を含む凝固因子などのポリペプチドのVWFへの結合は遮断されない。
【0012】
本発明者らは、要求される特性を伴う単一ドメイン抗体(sdAb)KB-VWF-013を単離し、前記KB-VWF-013の相補性決定領域(CDR)を特徴付け、及び、このように前記sdAbのCDRを決定している(表A)。
【表1】
【0013】
特に、本発明は、配列番号1として示す配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR1、配列番号2として示す配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR2、及び配列番号3として示す配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR3を含む単離単一ドメイン抗体(sdAb)に関する。
【0014】
アミノ酸配列同一性は、好ましくは、適切な配列アライメントアルゴリズム及びデフォルトパラメーター、例えばBLAST P(Karlin and Altschul, Proc. Natl Acad. Sci. USA 87(6):2264-2268 (1990))などを使用して決定する。
【0015】
一部の実施形態では、本発明に従った単離単一ドメイン抗体は、配列番号1として示す配列を有するCDR1、配列番号2として示す配列を有するCDR2、及び配列番号3として示す配列を有するCDR3を含む。
【0016】
一部の実施形態では、本発明に従った単離単一ドメイン抗体は、配列番号4として示す配列を有する。
【0017】
sdAb KB-VWF-013がマウスVWFと交差反応することにさらに留意すべきであり、これは、前臨床評価及び毒物学的試験での関心である。
【0018】
FVIII結合を遮断しないVWF D’D3に対するsdAbの他の例(潜在的なCDRを太字で示す):
【表2】
【0019】
特に、本発明は、配列番号5として示す配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR1、配列番号6として示す配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR2、及び配列番号7として示す配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR3を含む単離単一ドメイン抗体(sdAb)に関する。
【0020】
一部の実施形態では、本発明に従った単離単一ドメイン抗体は、配列番号5として示す配列を有するCDR1、配列番号6として示す配列を有するCDR2、及び配列番号7として示す配列を有するCDR3を含む。
【0021】
一部の実施形態では、本発明に従った単離単一ドメイン抗体は、配列番号8として示す配列を有する。
【0022】
sdAb KB-VWF-008がイヌVWFと交差反応することにさらに留意すべきであり、これは、前臨床評価及び毒物学的試験での関心である。
【表3】
【0023】
特に、本発明は、配列番号9として示す配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR1、配列番号10として示す配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR2、及び配列番号11として示す配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR3を含む単離単一ドメイン抗体(sdAb)に関する。
【0024】
一部の実施形態では、本発明に従った単離単一ドメイン抗体は、配列番号9として示す配列を有するCDR1、配列番号10として示す配列を有するCDR2、及び配列番号11として示す配列を有するCDR3を含む。
【0025】
一部の実施形態では、本発明に従った単離単一ドメイン抗体は、配列番号12として示す配列を有する。
【0026】
一部の実施形態では、単一ドメイン抗体は「ヒト化」単一ドメイン抗体である。本明細書で使用するように、用語「ヒト化」は、天然に生じるVHHドメインのアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列が「ヒト化」されている(即ち、前記の天然に生じるVHH配列のアミノ酸配列中(特にフレームワーク配列中)の1つ又は複数のアミノ酸残基を、ヒトからの従来の鎖抗体からのVHドメイン中の対応する位置に生じるアミノ酸残基の1つ又は複数により置換することによる)本発明の単一ドメイン抗体を指す。単一ドメイン抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において周知である。典型的には、ヒト化置換は、結果として得られるヒト化単一ドメイン抗体が、本発明の単一ドメイン抗体の好ましい特性を依然として保持するように選ぶべきである。当業者は、適切なヒト化置換又はヒト化置換の適切な組み合わせを決定及び選択することができる。
【0027】
本発明のキメラポリペプチド:
本発明の第2の態様は、ポリペプチド及び本発明のVWFに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含むキメラポリペプチドに関する。
【0028】
本明細書で使用するように、用語「タンパク質」又は「ポリペプチド」は、2つ又はそれ以上の天然アミノ酸又は非天然アミノ酸のポリマーを指す。
【0029】
「融合」又は「キメラ」タンパク質又はポリペプチドは、天然において天然には連結されていない第2のアミノ酸配列に連結された第1のアミノ酸配列を含む。別々のタンパク質中に通常存在するアミノ酸配列は、融合ポリペプチド中にまとめることができる。融合タンパク質は、例えば、化学合成により、又はポリペプチド領域が所望の関係でコードされているポリヌクレオチドを作製及び翻訳することにより作製する。「融合」又は「キメラ」ポリペプチド及びタンパク質には、第1のポリペプチド鎖(例、FVIIIタンパク質)と第2のポリペプチド鎖(例、von VWF D’D3ドメインに対する単一ドメイン抗体)との組み合わせが含まれる。
【0030】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、好ましくは、それを必要とする患者への反復投与に導く短い半減期を有する、任意のポリペプチド、特に治療用ポリペプチドを含む。そのような治療用ポリペプチドは、例えば、インスリン、グルカゴン、オステオプロテゲリン(OPG)、アンジオポエチン2(ANGPT2)、又はフリンでありうる。
【0031】
特定の実施形態では、キメラポリペプチドは凝固因子(血液凝固因子としても言及する)を含む。
【0032】
本明細書において使用するように、用語「凝固因子」は、被験体における出血エピソードの持続を防止又は減少させる、天然に生じる又は組み換え産生された分子又はその類似体を指す。換言すれば、それは、プロ凝固活性を有する分子、即ち、フィブリノゲンを不溶性フィブリンのメッシュに変換し、血液を凝血又は凝固させることに関与する分子を意味する。凝固因子には、VIII因子、プロトロンビン因子(VII因子、IX因子、X因子、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、及びプロトロンビンを含む)及び凝固因子Vが含まれる。特定の実施形態では、本発明に従ったキメラポリペプチドであって、ポリペプチドは、FVII、FVIII、プロテインC、及びプロテインSからなる群より選択される凝固因子である。本発明の凝固因子は、野生型凝固因子のバリアントであってもよい。用語「バリアント」は、保存的又は非保存的挿入、欠失及び置換を含み、そこでは、そのような変化によって、それぞれの凝固因子の生物学的活性を付与する活性部位又は活性ドメインは実質的に変化しない。好ましくは、凝固因子は、FVII、FVIII、及びFXからなる群より選択する。
【0033】
一実施形態では、本発明に従った、ポリペプチド及びVWFに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含むキメラポリペプチドであって、それにおいて、前記キメラポリペプチドは、野生型ポリペプチドとの比較で、VWFについての増加した親和性及び/又は低下した解離速度定数を有する。
【0034】
理論に縛られることを望むことなく、親和性(即ち、VWFについての親和性)がKd=会合速度(kon)/解離速度(koff)により定義されることを知ることなく、キメラポリペプチドは、VWFへの、von VWF D’D3に対する単一ドメイン抗体の結合の結果として、低下したkoffに主に起因する親和性増加を有するはずである。
【0035】
好ましい実施形態では、キメラポリペプチドは、VWFに対して向けられ、被験体に投与された、前記sdAbに連結されていない対応するポリペプチドと比較し、被験体に投与された場合、クリアランス速度の低下、及び、このように、延長された半減期を示す。
【0036】
本明細書で使用するように、用語「半減期」は、インビボでの特定のポリペプチドの生物学的半減期を指す。半減期は、被験体に投与される量の半分が動物における循環及び/又は他の組織から除去されるために要求される時間により表してもよい。所与のポリペプチドのクリアランス曲線が時間の関数として構築される場合、曲線は通常、迅速なα相及びより長いβ相を伴う二相性である。
【0037】
典型的には、本発明のキメラポリペプチドは、本発明の少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含み、それは、治療用ポリペプチドのN末端に、C末端に、又はN末端及びC末端の両方に融合されており、即ち、融合タンパク質(最終的には少なくとも1つのさらなるアミノ酸配列を介して)を提供する。
【0038】
あるいは、本発明のキメラポリペプチドは本発明の少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含み、それは治療用ポリペプチド中に挿入される。
【0039】
用語「中に挿入される」は、本明細書において使用するように、天然ポリペプチド(例えば成熟ヒトFVIIIポリペプチドなど)における類似位置と比べた、キメラポリペプチドにおけるvon VWF D’D3ドメインに対する単一ドメイン抗体の位置を指す。この用語は、天然ポリペプチドと比べたキメラポリペプチドの特性を指し、キメラポリペプチドが作製された任意の方法又はプロセスを示さず、暗示せず、又は推論しない。例えば、本明細書において提供するキメラポリペプチドに関して、語句「von VWF D’D3ドメインに対する単一ドメイン抗体が、FVIIIポリペプチドの残基759の下流に挿入される」は、キメラポリペプチドが、天然ヒトFVIII中のアミノ酸Arg759に対応するアミノ酸の下流のvon VWF D’D3ドメインに対するsdAb(例、天然ヒトFVIIIのアミノ酸Ser760又はPhe761に対応するアミノ酸により結合されている)を含むことを意味する。重要なことに、融合タンパク質との関連でsdAbの曝露を改善するために、柔軟なアミノ酸リンカー(例、Gly-Gly-Gly-Serモチーフの1つ又は複数のコピー)を各々のsdAb配列のN末端又はC末端に配置してもよい。
【0040】
本明細書において使用するように、用語「挿入部位」は、異種部分を挿入することができる位置のすぐ上流にある、ポリペプチド(例えばFVIIIポリペプチドなど)中の位置を指す。「挿入部位」は数字として特定され、この数字は、挿入位置の直ぐN末端である挿入部位に対応する、前記ポリペプチド中のアミノ酸の数である。
【0041】
本発明に従い、唯一の単一ドメイン抗体を含むポリペプチドは、本明細書において「一価」ポリペプチドとして言及する。本発明に従った2つ又はそれ以上の単一ドメイン抗体を含む、又はそれらから本質的になるポリペプチドは、本明細書において「多価」ポリペプチドとして言及する。
【0042】
本発明に従ったキメラポリペプチドは、本発明の少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含み、前記単一ドメイン抗体は、治療用ポリペプチドのN末端に、C末端に、N末端及びC末端の両方に融合されるか、又は治療用ポリペプチドの配列内に挿入される。
【0043】
一実施形態では、ポリペプチドは、VWFに対する2つ、3つ、4つ、5つのsdAbを含む。特定の実施形態では、本発明に従った2つ又はそれ以上の単一ドメイン抗体は、同じ末端に、又は同じ挿入部位に融合又は挿入される。
【0044】
一実施形態では、ポリペプチドは、好ましくは単一ドメイン抗体でもある、本発明の少なくとも1つの単一ドメイン抗体及び少なくとも1つの他の結合単位(即ち、別のエピトープ、抗原、標的、タンパク質、又はポリペプチドに対して向けられている)を含む。そのようなポリペプチドは、同じ単一ドメイン抗体を含むポリペプチド(「単一特異性」ポリペプチド)とは対照的に、本明細書において「多重特異性」ポリペプチドとして言及する。
【0045】
このように、一部の実施形態では、本発明のポリペプチドはまた、任意の所望のタンパク質、ポリペプチド、抗原、抗原決定基、又はエピトープに対する少なくとも1つのさらなる結合部位を提供しうる。前記結合部位は、本発明の単一ドメイン抗体が再び向けられる同じタンパク質、ポリペプチド、抗原、抗原決定基、又はエピトープに対して向けられるか、あるいは、本発明の単一ドメイン抗体からの異なるタンパク質、ポリペプチド、抗原、抗原決定基、又はエピトープに対して向けられうる。本発明の「二重特異性」ポリペプチドは、第1の抗原(例、VWF D’D3ドメイン)に対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体及び第2の抗原(即ち、VWF D’D3ドメインとは異なる)に対する少なくとも1つのさらなる結合部位を含むポリペプチドである。
【0046】
一部の実施形態では、さらなる結合部位は、単一ドメイン抗体の半減期が増加するように、血清タンパク質に対して向けられる。典型的には、前記血清タンパク質はアルブミンである。一部の実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリンドメインに連結された本発明の単一ドメイン抗体を含む。例えば、ポリペプチドは、Fc部分(例えばヒトFcなど)に連結された本発明の単一ドメイン抗体を含む。前記Fc部分は、本発明の単一ドメイン抗体の半減期及びさらに産生を増加させるために有用でありうる。例えば、Fc部分は血清タンパク質に結合することができ、このように、単一ドメイン抗体での半減期を増加させる。
【0047】
特定の実施形態では、凝固因子はFVIIIである。用語「VIII因子」及び「FVIII」は、本明細書において互換的に使用する。FVIIIタンパク質を6つの構造ドメインに分ける:三重Aドメイン(A1、A2、A3)、炭水化物が豊富な、不要な中心ドメイン(Bドメイン)、及び二重Cドメイン(C1、C2)。また、A1及びA2ドメイン、A2及びBドメイン、ならびにB及びA3ドメインは、それぞれa1、a2、及びa3として公知の短い配列により分離されており、それらは複数の酸性アミノ酸の存在により特徴付けられる。天然に生じるヒトFVIIIタンパク質は、GeneBank受託番号NP_000123に示すアミノ酸配列を有する。「FVIII」は、野生型FVIIIならびに野生型FVIIIの凝血促進活性を有する野生型FVIIIのバリアントを含む。バリアントは、野生型FVIIIのアミノ酸配列と比較し、欠失、挿入、及び/又は付加を有していてもよい(例えば低下した免疫原性を伴う変異体など)。用語FVIIIは、タンパク質分解処理された形態のFVIIIを含む。市販の治療用FVIII産物は、血漿由来FVIII(pdFVIII)産物及び組換えFVIII(rFVIII)産物、例えば全長rFVIII(Kogenate Bayer、Advate Baxter、Helixate CSL-Behring)及びBドメイン欠失rFVIII(Refacto Wyeth、現在PfizerによりXynthaとして販売されている)などを含む。
【0048】
特定の実施形態では、本発明に従ったFVIIIポリペプチド及びVWFに対する少なくとも1つのsdAbを含み、前記FVIIIポリペプチドは、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、及び場合によりBドメインの全部又は一部を含み、VWFに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体が、(i)前記FVIIIポリペプチドのC末端;(ii)Bドメインの全部又は一部が存在する場合、前記FVIIIポリペプチドのBドメイン内に;(iii)前記FVIIIポリペプチドのA1ドメインの表面ループ内に;(iv)前記FVIIIポリペプチドのA2ドメインの表面ループ内に;(v)前記FVIIIポリペプチドのA3ドメインの表面ループ内に;(vi)前記FVIIIポリペプチドのC1ドメイン内に;又は(vii)前記FVIIIポリペプチドのC2ドメイン内に存在し;前記ポリペプチドは、von VWFに対して向けられ、被験体に投与された、前記sdAbに連結されていない対応するFVIIIと比較し、被験体に投与された場合に延長された半減期を示す。
【0049】
一実施形態では、Bドメインの部分は、Bドメインの1~20のアミノ酸を伴う部分(即ち、Arg740位のトロンビンの切断部位を含む部分)である。
【0050】
ヒトにおけるヒトFVIIIの典型的な半減期は数時間(7~21時間、Van Dijk et al., Haematologica 2005 92:494-498)である。一部の実施形態では、キメラFVIIIポリペプチドは、野生型FVIIIポリペプチドと比較して延長した半減期を有する。特定の実施形態では、キメラFVIIIポリペプチドの半減期は、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、又は少なくとも約12倍、野生型FVIIIよりも長く延長される。
【0051】
特定の実施形態では、VWFに対する2つのsdAbは、VIII因子のBドメイン(FVIII-KB13-bv)(配列番号13)内に挿入される。
【表4】
【0052】
特定の実施形態では、VWFに対する2つのsdAbが、FVIIIのBドメイン(FVIII_KB0013bv(6GGGS))(配列番号16)内に挿入される。sdAb配列とFVIII軽鎖の間のリンカーは、1ではなく6つのGGGS配列を含む。
【表5】
【0053】
特定の実施形態では、VWFに対する2つのsdAbが、FVIIIのBドメイン(FVIII_KB0013bv(6GGGS)_Y1680F)(配列番号17)内に挿入される。sdAb配列とFVIII軽鎖の間のリンカーは、1ではなく6つのGGGS配列を含む。VWFへのFVIIIの自然結合を回避するためのY1680F変異(結合はsdAbのみにより媒介される)。
【表6】
【0054】
特定の実施形態では、VWFに対する2つのsdAbが、FVIII(FVIII_BD_Cter-0013bv)(配列番号18)のC末端に挿入される。
【表7】
【0055】
特定の実施形態では、VWFに対する2つのsdAbが、FVIIIのC末端(FVIII_BD_Cter-0013bv_Y1680F)(配列番号19)に挿入される。VWFへのFVIIIの自然結合を回避するためのY1680F変異(結合はsdAbのみにより媒介される)。
【表8】
【0056】
特定の実施形態では、VWFに対する2つのsdAbがFVIIIのBドメイン内に挿入され、2つのsdAbはC末端(FVIII_KB0013bv_Cter-0013bv)(配列番号20)に挿入される。
【表9】
【0057】
特定の実施形態では、VWFに対する2つのsdAbがFVIIIのBドメイン内に挿入され、2つのsdAbはC末端(FVIII_KB0013bv_Cter-0013bv_Y1680F)(配列番号21)に挿入される。Y1680F変異によって、VWFへのFVIIIの自然結合を回避することが可能になる(結合はsdAbのみにより媒介される)。C末端トロンビン切断部位によって、FVIII活性化時にsdAbを放出することが可能になる。
【表10】
【0058】
特定の実施形態では、VWFに対する2つのsdAbがFVIIIのBドメイン内に挿入され、2つのsdAbはC末端(FVIII_KB0013bv(6GGGS)_Cter-0013bv)(配列番号22)に挿入されている。sdAb配列とFVIII軽鎖の間のリンカーは、1ではなく6つのGGGS-配列を含む。C末端トロンビン切断部位によって、FVIII活性化時にsdAbを放出することが可能になる。
【表11】
【0059】
特定の実施形態では、VWFに対する2つのsdAbがFVIIIのBドメイン内に挿入され、2つのsdAbがC末端(FVIII_KB0013bv(6GGGS)_Cter-0013bv_Y1680F)(配列番号23)に挿入される。sdAb配列とFVIII軽鎖の間のリンカーは、1ではなく6つのGGGS配列を含む。Y1680F変異によって、VWFへのFVIIIの自然結合を回避することが可能になる(結合はsdAbのみにより媒介される)。C末端トロンビン切断部位によって、FVIII活性化時にsdAbを放出することが可能になる。
【表12】
【0060】
特定の実施形態では、凝固因子はFVIIである。用語「VII因子」及び「FVII」は、本明細書において互換的に使用する。VII因子は、一本鎖チモーゲンとして血液中を循環する微量の血漿糖タンパク質である。チモーゲンは触媒的に不活性である。一本鎖因子VIIは、インビトロでXa因子、XIIa因子、IXa因子、又はトロンビンにより二本鎖VIIa因子に変換されうる。Xa因子はVII因子の主要な生理学的アクチベーターであると考えられている。止血に含まれるいくつかの他の血漿タンパク質と同様に、VII因子は、その活性についてビタミンKに依存し、それは、タンパク質のアミノ末端にクラスター化された複数のグルタミン酸残基のγカルボキシル化のために要求とされる。これらのγカルボキシル化グルタミン酸は、VII因子とリン脂質との金属関連相互作用のために要求される。
【0061】
チモーゲンVII因子の活性化二本鎖分子への変換は、分子のほぼ中央に位置する内部ペプチド結合の切断により生じる。ヒトVII因子において、活性化切断部位はArg152-Ile153にある。組織因子、リン脂質、及びカルシウムイオンの存在において、二本鎖VIIa因子は、限定されたタンパク質分解によりX因子又はIX因子を迅速に活性化する。市販の治療用FVII産物には、血漿由来FVII(pdFVII)、例えばVII因子(登録商標)(Baxterにより市販されているImmuseven)など、及び組み換えFVII(rFVII)、例えばNovoNordiskにより市販されているNovoSeven(登録商標)など、及び臨床試験中の他の組換えFVII産物:NovonordiskのprLA-rFVIIa(第I/II相試験)、CSL BehringのCSL689 rVIIa-FP(第II/III相試験)、BaxterのBAX 817(第III相試験)、rEVO Biologics及びLFB BiotechnologiesのLR769(第III相試験)、Bayer のBAY 86-6150 eptacog alfa(第II/III相試験)、OPKO HealthのVIIa-CTP因子(第II相試験)又はPfizer のPF-05280602(第I相試験)が含まれる。
【0062】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、FVIIポリペプチド及び本発明に従ったVWFに対する少なくとも1つのsdAbを含み、前記FVIIポリペプチドは、Glaドメイン、疎水性領域、EGF1ドメイン及びEGF2ドメイン、触媒ドメイン(His-Asp-Ser)を含み、VWFに対する前記の少なくとも1つの単一ドメイン抗体は、前記FVIIポリペプチドのC末端で前記FVIIポリペプチドに連結されている。
【0063】
ヒトにおけるヒトFVIIの典型的な半減期は数時間である(4.2時間、Osterm et al., 2007, Thromb Haemostas vol 98, pp 790-797)。一部の実施形態では、キメラFVIIポリペプチドは、野生型FVIIポリペプチドと比較し、延長された半減期を有する。特定の実施形態では、キメラFVIIポリペプチドの半減期は、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、又は少なくとも約12倍、野生型FVIIよりも長く延長される。
【0064】
特定の実施形態では、VWFに対するsdAbは、VII因子のC-terドメイン(FVII-KB13-bv)(配列番号14)に挿入される。
【表13】
【0065】
特定の実施形態では、本発明に従ったキメラポリペプチドであって、VWFに対する2つのsdAbが、i)VIII因子のBドメインのC末端部分を置換している(FVIII-KB13-bv)(配列番号13;配列番号16;配列番号17);ii)FVIIIのC末端に融合されている(配列番号18;配列番号19); iii)同時に、VIII因子のBドメインのC末端部分を置換し、VIII因子のC末端に融合されている(配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23);又はiv)VII因子のC末端に挿入されている(配列番号14)。
【0066】
特定の実施形態では、本発明に従ったキメラポリペプチドであって、ポリペプチドは、第1の抗原に対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体及び第2の抗原に対する少なくとも1つのさらなる結合部位を含む。
【0067】
本発明に従い、本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチドは、従来の自動ペプチド合成方法により、又は組換え発現により産生してもよい。タンパク質の設計及び作製のための一般的な原則は、当業者に周知である。
【0068】
本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチドは、溶液中で、又は従来技術に従って固体支持体上で合成してもよい。種々の自動シンセサイザーが市販されており、Stewart and Young;Tam et al., 1983;Merrifield, 1986及びBarany and Merrifield, Gross and Meienhofer, 1979において記載される公知のプロトコールに従って使用することができる。本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチドはまた、例示的なペプチドシンセサイザー(例えばApplied Biosystems Inc.からのモデル433Aなど)を用いて固相技術により合成してもよい。任意の所与のタンパク質の純度(自動ペプチド合成を通じて、又は組換え方法を通じて生成された)を、逆相HPLC分析を使用して決定してもよい。各々のペプチドの化学的信憑性は、当業者に周知の任意の方法により確立されうる。
【0069】
自動ペプチド合成への代替物として、組換えDNA技術を用いてもよく、それにおいて、選んだポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現ベクター中に挿入し、適当な宿主細胞中に形質転換又はトランスフェクトし、発現のために適切な条件下で培養する(本明細書において以下に記載する通り)。組換え方法は、より長いポリペプチドを産生するために特に好ましい。
【0070】
種々の発現ベクター/宿主系を利用し、ペプチド又はタンパク質をコードする配列を含み、発現させてもよい。これらは、微生物、例えば組換えバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換した細菌;酵母発現ベクターを用いて形質転換した酵母(Giga-Hama et al., 1999);ウイルス発現ベクター(例、バキュロウイルス、Ghosh et al., 2002を参照のこと)を用いて感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を用いてトランスフェクトした、又は細菌発現ベクター(例、Ti又はpBR322プラスミド;Babe et al., 2000を参照のこと)を用いて形質転換した植物細胞系;又は動物細胞系などを含むが、しかし、これらに限定しない。当業者は、タンパク質の哺乳動物発現を最適化するための種々の技術を知っている(例、Kaufman, 2000;Colosimo et al., 2000を参照のこと)。組換えタンパク質産生において有用である哺乳動物細胞は、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、COS細胞(例えばCOS-7など)、W138、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、及び293細胞を含むが、しかし、これらに限定しない。細菌、酵母、及び他の無脊椎動物におけるペプチド基質又は融合ポリペプチドの組換え発現のための例示的なプロトコールが、当業者に公知であり、本明細書において以下に簡単に記載している。組換えタンパク質の発現のための哺乳動物宿主系も当業者に周知である。宿主細胞株は、発現タンパク質をプロセシングする、又はタンパク質の活性を提供する際に有用でありうる特定の翻訳後修飾を産生する特定の能力について選んでもよい。ポリペプチドのそのような修飾は、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、及びアシル化を含むが、しかし、これらに限定しない。タンパク質の「プレプロ」形態を切断する翻訳後プロセシングはまた、正確な挿入、フォールディング、及び/又は機能のために重要でありうる。異なる宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38など)は、特定の細胞機構及びそのような翻訳後活性のための特徴的な機構を有し、導入された外来タンパク質の正確な修飾及びプロセシングを確実にするために選ばれうる。
【0071】
本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチドの組換え産生において、本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチドをコードするためのポリヌクレオチド分子を含むベクターを用いることが必要であろう。そのようなベクターを調製し、ならびにそのようなベクターを用いて形質転換された宿主細胞を産生する方法は、当業者に周知である。そのような努力において使用されるポリヌクレオチド分子をベクターに結合してもよく、それは一般的に宿主おいて伝播するための選択マーカー及び複製起点を含む。発現コンストラクトのこれらのエレメントは当業者に周知である。一般的に、発現ベクターは、適切な転写又は翻訳調節配列(例えば哺乳動物遺伝子、微生物遺伝子、ウイルス遺伝子、又は昆虫遺伝子に由来するものなど)に作動可能に連結されている所与のタンパク質をコードするDNAを含む。調節配列の例は、転写プロモーター、オペレーター、又はエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに転写及び翻訳を制御する適当な配列を含む。
【0072】
用語「発現ベクター」、「発現コンストラクト」、又は「発現カセット」は、本明細書を通して互換的に使用され、遺伝子産物をコードする核酸を含む任意の型の遺伝子コンストラクトを含むことを意味し、それにおいて、配列をコードする核酸の部分又は全部を転写することが可能である。
【0073】
本発明のペプチド又はポリペプチドの発現のための適切な発現ベクターの選択は、もちろん、使用される特定の宿主細胞に依存し、当業者の技術の範囲内である。
【0074】
発現は、適当なシグナルがベクター中に提供されることを要求する(例えば、宿主細胞において目的の核酸の発現を駆動するために使用されうるウイルス及び哺乳類の両方の供給源からのエンハンサー/プロモーターなど)。通常、発現される核酸は、プロモーターの転写制御下にある。「プロモーター」は、遺伝子の特異的な転写を開始するために要求される、細胞の合成機構、又は導入された合成機構により認識されるDNA配列を指す。ヌクレオチド配列は、調節配列が目的のタンパク質(即ち、単一ドメイン抗体)をコードするDNAに機能的に関連する場合、作動可能に連結されている。このように、プロモーターヌクレオチド配列は、プロモーターヌクレオチド配列が配列の転写に向ける場合、所与のDNA配列に作動可能に連結されている。
【0075】
本発明に従ったキメラポリペプチド/VWF複合体
別の態様では、本発明はキメラポリペプチド/VWF複合体に関し、そこでは、キメラポリペプチドは上記の本発明のキメラポリペプチドであり、延長された半減期を伴うVWFポリペプチドである。
【0076】
本明細書で使用するように、用語「延長された半減期を伴うVWFポリペプチド」は、保存的又は非保存的のいずれかの挿入、欠失、及び置換を伴うVWF又はそのフラグメント(特にD’D3ドメインを含む)のバリアントを指し、そのような変化によって、VWF又はWVFの誘導体(例えばFc融合物など)の生物学的活性は変化せず、天然VWFと比較して延長した半減期に導かれる。ヒトにおけるヒトVWFの典型的な半減期は16時間である(Goudemand et al., 2005)。
【0077】
一実施形態では、延長された半減期を伴うVWFポリペプチドはPEG化rVWF(PEGrVWF)である。
【0078】
ポリエチレングリコール(PEG)が、その高い程度の生体適合性及び修飾の容易さを前提として、薬物担体として広く使用されてきた。種々の薬物、タンパク質、及びリポソームへの付着によって、滞留時間が改善され、毒性が減少することが示されてきた。PEGは、鎖の末端でヒドロキシル基を通じて、及び他の化学的方法を介して活性薬剤に結合させることができる;しかし、PEG自体は1分子当たり多くて2つの活性薬剤に限定される。異なるアプローチにおいて、PEGとアミノ酸のコポリマーを、PEGの生体適合性の特性を保持しうるが、しかし、1分子当たり多数の付着点(より大きな薬物負荷を提供する)という追加の利点を有しうる、種々の適用に適するように合成的に設計されうる新規生体材料として探索した。
【0079】
特定の実施形態では、延長された半減期を伴うVWFポリペプチドは、PEG化VWF D’D3である。
【0080】
特定の実施形態では、延長された半減期を伴うVWFポリペプチドは、アルブミンにコンジュゲートされたVWF D’D3(D’D3-Alb)である。
【0081】
特定の実施形態において、延長された半減期を伴うVWFポリペプチドは、VWF D’D3-Fcである(VWF D’D3-Fcは、Fc受容体FcRnリサイクリング経路との相互作用のため、VWF D’D3と比べて延長された半減期を有する)3。
【0082】
VWF又はVWF D’D3の半減期を延長するための修飾の他の可能性は、HEPylation、ポリシアリル化、又はXTENポリペプチドの付着である。
【0083】
治療方法及び使用:
別の態様では、本発明は、薬物としての使用のための、フォン・ビルブラント因子(VWF)D’D3ドメインに対する単離単一ドメイン抗体(sdAb)に関する。
【0084】
別の態様では、本発明は、薬物としての使用のための、本発明のポリペプチド及び少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含むキメラポリペプチドに関する。
【0085】
さらに別の態様では、本発明は、薬物としての使用のための、本発明のキメラポリペプチド/VWF複合体に関する。
【0086】
本発明に従い、本発明の単一ドメイン抗体又は本発明のキメラポリペプチド、又は本発明のキメラポリペプチド/VWF複合体は、治療的に効果的な量で患者に投与される。
【0087】
特定の実施形態では、出血性障害を防止又は処置するための方法における使用のための、本発明に従ったVWF D’D3ドメインに対する単離sdAb、本発明に従ったポリペプチド及びVWFに対する少なくとも1つのsdAbを含むキメラポリペプチド、又は本発明に従ったキメラポリペプチド/VWF複合体。
【0088】
別の実施形態では、本発明は、治療的に効果的な量の本発明に従ったキメラポリペプチド又は上に記載するキメラポリペプチド/VWF複合体を前記被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体における出血障害の防止又は処置の方法のために適切である。
【0089】
例えば、本発明に従った修飾凝固因子は、出血障害を防止及び/又は処置するための方法において使用してもよい。本発明の修飾凝固因子の投与により処置されうる出血障害は、血友病、ならびにフィブリノゲン、プロトロンビン、V因子、VII因子、又はX因子の欠損又は構造異常を含むが、しかし、これらに限定しない。
【0090】
特定の実施形態では、本発明の修飾凝固因子の投与により処置されうる出血障害は、血友病A又は血友病Bである。
【0091】
「治療的に効果的な量」とは、任意の医療処置に適用可能な合理的な利益/リスク比での慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の処置のための方法における使用のために、防止するために十分な量のポリペプチド(又はポリペプチドをコードする核酸)を意味する。本発明の化合物及び組成物の毎日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医により決められることが理解されるであろう。任意の特定の患者のための特定の治療的に効果的な用量レベルは、患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、及び食事;用いられる特定の化合物の投与時間、投与経路、及び排泄速度;治療期間;用いられる特定のポリペプチドと組み合わせで又はそれと同時に使用される薬物;及び医学的技術分野において周知の因子を含む種々の因子に依存する。例えば、所望の治療的効果を達成するために、及び所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させるために要求されるものよりも低いレベルで化合物の用量を開始することは、当業者の技術内で周知である。しかし、産物の1日投与量は、0.01~1,000mg/成人/日の広範囲にわたり変動しうる。好ましくは、組成物は、処置される患者への投与量の症候性調整のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250、及び500mgの活性成分を含む。医薬は、典型的には、約0.01mg~約500mgの活性成分を、好ましくは1mg~約100mgの活性成分を含む。効果的な量の薬物は、普通は、0.0002mg/kg~約20mg/kg体重/日、特に約0.001mg/kg~7mg/kg体重/日の投与量レベルで供給される。
【0092】
別の態様は、VWF D’D3ドメインに対する単一ドメイン抗体、キメラポリペプチド、本明細書に記載するキメラポリペプチド/VWF複合体、及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関する。
【0093】
本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチド(又はその核酸をコードする核酸)は、医薬組成物を形成するために、医薬的に許容可能な賦形剤、及び、場合により徐放性マトリックス(例えば生分解性ポリマーなど)と組み合わせてもよい。本明細書において使用するように、用語「医薬的に」又は「医薬的に許容可能な」は、哺乳動物、特にヒトに適宜投与した場合、有害な、アレルギー性の、又は他の厄介な反応を産生しない分子実体及び組成物を指す。医薬的に許容可能な担体又は賦形剤は、非毒性の固体、半固体、もしくは液体充填剤、希釈剤、カプセル化材料、又は任意の型の補助製剤を指す。
【0094】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所、又は直腸投与のための本発明の医薬組成物において、活性成分は、単独で又は別の活性成分との組み合わせで、従来の医薬的支持体との混合物として、動物及びヒトに単位投与形態で投与することができる。適切な単位投与形態は、経口経路形態(例えば錠剤、ゲルカプセル、粉末、顆粒剤及び経口懸濁剤又は溶液など)、舌下及び頬側投与形態、エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、髄腔内及び鼻腔内投与形態及び直腸投与形態などを含む。好ましくは、医薬組成物は、注射することが可能な製剤用の医薬的に許容可能である賦形剤を含む。これらは、特に等張性の無菌生理食塩溶液(リン酸一ナトリウム又はリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムなど、あるいはそのような塩の混合物)、又は乾燥、特に凍結乾燥組成物でありうるが、それらは、滅菌水又は生理学的食塩水の添加時に、場合に依存して、注射可能な溶液の構成を許す。
【0095】
注射可能な使用のために適切な医薬的形態は、無菌水溶液又は分散剤;ゴマ油、ピーナッツ油又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び無菌の注射可能な溶液又は分散剤の即時調製のための無菌粉末を含む。全ての場合において、形態は無菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度まで液体でなければならない。それは、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、微生物(例えば細菌及び真菌など)の汚染作用に対して保存されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容可能な塩としての本発明の化合物を含む溶液は、界面活性剤(例えばヒドロキシプロピルセルロースなど)と適切に混合し、水中で調製することができる。分散剤はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中ならびに油中で調製することができる。保存及び使用の普通の条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための保存剤を含む。
【0096】
ポリペプチド(又はそれをコードする核酸)は、中性又は塩の形態の組成物に製剤化することができる。医薬的に許容可能な塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)を含み、それらは、無機酸、例えば、塩酸又はリン酸、あるいは酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩はまた、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化鉄など、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来しうる。担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、及び野菜油を含む溶媒又は分散媒質でありうる。適した流動性は、例えば、コーティング(例えばレシチンなど)の使用により、要求される粒子サイズの維持により(分散剤の場合において)、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌薬剤及び抗真菌薬剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)によりもたらすことができる。多くの場合において、等張薬剤(例えば、糖又は塩化ナトリウム)を含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤の組成物(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)中での使用によりもたらすことができる。
【0097】
無菌の注射可能な溶液は、上に列挙する他の成分のいくつかを伴う適当な溶媒中に、要求される量で活性ポリペプチドを取り込ませることにより調製し、必要な場合、ろ過滅菌が続く。一般的に、分散剤は、種々の滅菌活性成分を、塩基性分散媒及び上に列挙するものからの要求される他の成分を含む無菌賦形剤中に取り込ませることにより調製する。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合において、好ましい調製方法は真空乾燥技術及び凍結乾燥技術であり、それによって、活性成分プラス先に無菌ろ過したその溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末がもたらされる。
【0098】
製剤化時に、溶液は、投与製剤と適合する様式で、治療的に効果的な量で投与されうる。製剤は、種々の投与形態(例えば上に記載する注射可能な溶液の型など)で容易に投与されるが、しかし、薬物放出カプセルなどを用いることもできる。
【0099】
水溶液中での非経口投与のために、例えば、溶液は、必要な場合、適切に緩衝化し、液体希釈剤は、最初に、十分な生理食塩水又はグルコースを用いて等張にすべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与のために特に適切である。これに関連して、用いることができる無菌水性媒質は、本開示に照らして当業者に公知であろう。例えば、1投与量を、1mlの等張性NaCl溶液中に溶解し、1000mlの皮下注入液に添加する、又は提案された注入部位に注射しうる。投与量におけるいくらかの変動が、処置されている患者の状態に依存して必然的に生じる。投与に責任のある人は、任意の事象において、個々の被験体のための適当な用量を決定する。
【0100】
ポリペプチド(又はそれをコードする核酸)を、治療用混合物内で製剤化し、約0.0001~1.0ミリグラム、又は約0.001~0.1ミリグラム、又は約0.1~1.0、又はさらには約10ミリグラム/用量かそこらを含みうる。複数用量を投与することもできる。本発明をさらに、以下の図面及び実施例により例証する。
【0101】
治療用ポリペプチドの半減期を延長又は増加させる方法:
治療用ポリペプチドのポリペプチド配列に、VWF D’D3ドメインに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を加える工程を含む治療用ポリペプチドの半減期を延長又は増加させる方法も開示する。
【0102】
一実施形態では、VWFに対する前記の少なくとも1つの単一ドメイン抗体は、上記のように前記の治療用ポリペプチドのポリペプチド配列中に融合又は挿入される。特定の実施形態では、VWFに対する前記の少なくとも1つの単一ドメイン抗体は、上記のようにVIII因子のBドメイン内に挿入される。
【0103】
同種抗体の形成を低下させる方法:
一部の実施形態では、本発明のsdAbは、同種抗体の形成を低下させるのに適切である。特定の実施形態では、VWFに対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体は、上記のようにVIII因子のBドメイン内に挿入されて、同種抗体の形成を低下させる。
【0104】
用語「同種抗体」は、当技術分野において一般的な意味を有し、同じ種の人からの異種組織に対して天然に生じる抗体を指す。典型的には、本発明の文脈において、FVIIIタンパク質におけるVWFに対するsdAbの取り込みによって、VWF(FVIII-KB013bv)からのFVIIIの解離が回避され、このように、被験体は、通常の会合-解離速度を示すFVIIIと比較して免疫原性が低いFVIII-KB013bvに対する同種抗体を発生しない。
【0105】
本発明はさらに、以下の図面及び実施例により例証される。しかし、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定するものとして任意の方法で解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】FVIII及びsdAbとのVWF相互作用の会合及び解離のリアルタイム分析。固定化されたsdAbへのVWFの結合及び固定化されたVWFへのFVIIIの結合に関する会合及び解離曲線を
図1にプロットする。分析のために、本発明者らは解離相に焦点を当てた。見掛けの解離定数は、2.0±1.1×10
-5/秒(KB-VWF-008)、0.6±0.5×10
-5/秒(KB-VWF-011)、1.3-3.5×10
-5/秒(KB-VWF013)、及び2.2-3.0×10
-3/秒(FVIII)である。
【
図2】VIII因子へのVWF結合に対するsdAbの効果。固定化されたVWFへのFVIIIの結合を、sdAb又はMab418の非存在又は存在において決定した。抗体の非存在におけるFVIII結合と比べたFVIII結合のパーセンテージがプロットされている。FVIII結合は、KB-VWF-008、011、又は013の存在により影響されない。
【
図3】VIII-sdAb因子融合タンパク質はVWFに結合する。VWFと複合体を形成する能力を、血友病マウスにおけるWT-FVIII-SQ、FVIII-SQ/p.Y1680F、又はFVIII-KB013bv/p.Y1680Fの一過性発現に介してテストした。遺伝子導入の4日後、VWF/FVIII複合体を決定し、WT-FVIII-SQと比べた複合体のパーセンテージとして表した。予想通り、p.Y1680F変異の存在によって、VWF(FVIII-SQ/p.Y1680F)へのFVIIIの結合は無効になった。対照的に、KB-VWF-013の導入によって、p.Y1680F変異の存在にもかかわらず、VWFへの結合が回復し、さらに改善した。
【
図4】FVIII-KB013bvの発現及び機能解析。精製FVIII-KB013及びWT-FVIII-SQを、トロンビンの非存在又は存在においてインキュベートした。ウエスタンブロット分析を実施して、FVIIIフラグメントの存在を決定した。FVIII-KB013bvは、トロンビンの非存在においてインキュベートした場合、主に一本鎖タンパク質として移動するのに対し(レーン1)、WT-FVIII-SQは主にヘテロ二量体タンパク質として移動する(レーン3)。トロンビンのインキュベーション後、FVIII-KB013bv及びWT-FVIII-SQの両方が、トロンビン切断軽鎖及び重鎖由来A1及びA2ドメインからなるヘテロ二量体タンパク質として存在する(レーン2及び4)。
【
図5】FVIII-KB-013bvのインビボ生存率。FVIII-KB013bv又はWT-FVIII-SQをFVIII欠損マウスに静脈内に与えた。指示時点で、血液を採取し、FVIII活性を決定した。注射3分後の活性と比べた残留活性を、注射後の時間に対してプロットする。FVIII-KB013bvは、WT-FVIII-SQよりも遅く循環から除去される。
【
図6】FVIII-KB013bv注射の24時間後の血友病マウスにおける止血の矯正。FVIII欠損マウスにFVIII-KB013bv又はBドメインレスFVIII(Xyntha)を静脈内に与え、注入24時間後、麻酔したマウスにおいて尾の末端を切断した。血液喪失を30分間にわたりモニターした。流血の量を決定し、各々のマウスについて提示した。FVIII-KB013bvで処置したマウスは、野生型BドメインレスFVIIIで処置したマウスと比較して、有意に少ない血液を喪失した。
【
図7】KB-VWF-013の凝固VII因子への融合によって、VWFとの複合体形成が誘導される。VWFと複合体を形成する能力を、野生型C57B16マウスにおける野生型FVII及びFVII-KB013-bvの一過性発現を介してテストした。遺伝子導入の4日後、VWF/FVIII複合体を決定し、OD450nmとして表した。予想通り、VWFとの複合体形成は野生型FVIIについては検出されなかった。対照的に、VWF-FVII複合体は、FVII-KB013-bvを発現する全てのマウスにおいて検出された。このように、FVIIとKB-VWF-013の融合によって、VWFに結合するFVIIの能力が誘導される。
【0107】
実施例:
実施例A:VWFのタンパク質ドメイン構造
VWFのcDNA配列及びタンパク質配列のバイオインフォマティクス分析によって、タンパク質構造によって異なる型のドメイン構造が区別されることが明らかになった。本来、このドメイン構造は、以下の順序で配置された、シグナルペプチド(SP)、Aドメイン、Bドメイン、Cドメイン、Dドメイン、及びCKドメインからなる:SP-D1-D2-D’-D3-A1-A2-A3-D4-B1-B2-B3-C1-C2-CK(Verweij CL et al., (1986) EMBO Journal, vol. 5, pp. 1839-1847)。最近では、更新されたドメイン構成が提案されており、そこでは、ドメインが以下の順序で配置されている:SP-D1-D2-D’-D3-A1-A2-A3-D4-C1-C2-C3-C4-C5-C6-CK(Zhou YF et al., (2012) Blood, vol 120, pp. 449-458)。異なるドメインの境界は、出版物から別の出版物で変動しうるため、本発明者らは、本願では、Lenting PJ et al., (2015) Blood, vol 125, pp. 2019-2028の
図1中で定義される境界を使用する。
【0108】
実施例B:VWF又はそのフラグメントへのsdAbの結合
sdAbs KB-VWF-008、011、及び013を、ハーフウェルマイクロタイタープレート(Greiner Bio-One、フランス、レ・ジュリス)中での50mMの容量の10mM NaHCO3、50mM Na2CO3(pH9.5)中に4℃で16時間にわたり固定化した(5μg/mL)。陽性対照として、ポリクローナルウサギ抗VWF抗体(Dako、デンマーク、グロストルプ)も同様の様式で固定化した。陰性対照として、抗体は固定化しなかった。0.1%Tween-20(TBS-T)を添加したTris緩衝生理食塩水(pH 7.6)(75μl/ウェル)を使用してウェルを3回洗浄した後、ウェルを、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加したTBS-T(75μl/ウェル)を用いて30分間にわたり37℃でブロックした。ウェルを上に記載するように洗浄し、その後、以下のVWF調製物(3%BSAを添加したTris緩衝化生理食塩水(pH7.6)で希釈、全て2μg/ml、50μl/ウェル、37℃で2時間)を、固定化sdAb及び両方の型の対照ウェルの各々に加えた:
-精製組換えヒトVWF(rhVWF)、
-精製組換えマウスVWF(rmVWF)、
-VWFフラグメントSpII(VWFの残基2129~2813を包含する、黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼとのインキュベーション後の血漿由来の(pd)-VWFのタンパク質分解フラグメント;Denis C et al., (1993) Arteriosclerosis Thrombosis, vol 13, pp. 398-406)、
-VWFフラグメントSpIII(VWFの残基764-2128を包含する、黄色ブドウ球菌V8-プロテアーゼとのインキュベーション後のpd-VWFのタンパク質分解フラグメント;Kalafatis M et al., (1987) Blood, vol 70, pp. 1577-1583)、
-D’D3-HPC4フラグメント(抗体HPC4についての認識部位を表すアミノ酸配列EDQVDPRLIDGK(配列番号15)に融合されたヒトVWF残基764~1247)、
-A1-A2-A3-HPC4フラグメント(アミノ酸配列EDQVDPRLIDGKに融合されたヒトVWF残基1260~1874)、
-hD1-D2-HPC4フラグメント(アミノ酸配列EDQVDPRLIDGKに融合されたヒトVWF残基23~762)、
-mD1-D2-HPC4フラグメント(アミノ酸配列EDQVDPRLIDGKに融合されたマウスVWF残基23~762)
【0109】
ウェルを次に、TBS-T(75μl/ウェル)を使用して3回洗浄した。結合したVWF調製物を、rhVWF、rmVWF、SpII、及びSPIIIについてのペルオキシダーゼ標識ポリクローナルウサギ抗VWF抗体(Dako、デンマーク、グロストルプ;1/6000希釈)を用いて、又はD’D3-HPC4、A1A2A3-HPC4、hD1D2-HPC4、及びmD1-D2-HPC4についてのペルオキシダーゼ標識モノクローナル抗体HPC4(1/1000希釈)(50μl/ウェル)を用いて37℃で2時間にわたりプローブした。ウェルを次に、TBS-T(75μl/ウェル)を用いて3回洗浄した。残留したペルオキシダーゼ活性を、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジンのペルオキシダーゼ媒介加水分解を測定することにより検出した。
【0110】
陰性結合(-)を光学密度(OD)≦0.5として定義し、中程度陽性結合(+)をOD>0.5及び<1.0として定義し、強陽性結合(++)をOD≧1.0として定義した。これらの定義に基づいて、VWF調製物のいずれも、陰性対照への中程度又は強陽性結合を示さなかった(表1)。mD1-D2-HPC4を除いた全てのVWF調製物が、陽性対照(ポリクローナル抗VWF抗体)への中程度又は強陽性結合を有していた。sdAbのいずれもSpII、A1A2A3-HPC4、hD1-D2-HPC4、又はmD1-D2-HPC4に結合しなかった。対照的に、KB-VWF-008、011、及び013は、rhVWF、spIII、及びD’D3-HPC4への中程度又は強陽性結合を有し、これら3つのsdAbのエピトープがVWF残基764~1247内に位置することを示唆する。さらに、sdAb KB-VWF-013は、rmVWFと陽性反応した、3つのテストされたsdAbのうちの、ただ一つのものであり、このsdAbがマウスVWFと交差反応することを示す。
【表14】
【0111】
rhVWF:組換えヒトVWF;rmVWF:組換えマウスVWF;spII:VWFの残基2129~2813を包含する黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼとのインキュベーション後の血漿由来(pd)-VWFのタンパク質分解フラグメント;spIII:VWFの残基764~2128を包含する黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼとのインキュベーション後のpd-VWFのタンパク質分解フラグメント;D’D3-HPC4:アミノ酸配列EDQVDPRLIDGKに融合されたヒトVWF残基764~1247;A1-A2-A3-HPC4:アミノ酸配列EDQVDPRLIDGKに融合されたヒトVWF残基1260~1874;hD1-D2-HPC4:アミノ酸配列EDQVDPRLIDGKに融合されたヒトVWF残基23~762;mD1-D2-HPC4:アミノ酸配列EDQVDPRLIDGKに融合されたマウスVWF残基23~762;対照;ポリクローナルウサギ抗ヒトVWF抗体(Dako)。
- :陰性結合を、OD≦0.5であると定義する;
+:中程度の陽性結合を、OD> 0.5- <1.0であると定義する;
++:強陽性結合を、≧1.0であると定義する。
【0112】
実施例C:FVIII及びsdAbとのVWF相互作用の会合及び解離のリアルタイム分析
VWFとsdAbの間での相互作用を、Octet-QK機器(Fortebio、米国カリフォルニア州メルドパーク)を使用したバイオレイヤー干渉法を介して分析した。この目的のために、sdAbs KB-VWF-008、011、及び013を、EDC/NHS活性化アミン反応性バイオセンサー(Fortebio、米国カリフォルニア州メルドパーク)へのカップリングのために、10μg/mlの濃度まで0.1M Mes(pH5.0)中で希釈した。センサーを0.2mlの0.1M MES、pH5.0中で300秒間にわたり再水和させた。センサーを次に、0.1mlの0.2M EDC/0.095M NHS混合物との300秒間にわたるインキュベーションにより活性化し、その後0.1mlのsdAb溶液と600秒間にわたりインキュベートした。非占有アミン反応部位を、1Mエタノールアミンとの180秒間にわたりインキュベートすることによりクエンチし、センサーを、0.1%Tween-20(PBS-T)を添加したリン酸緩衝生理食塩水との300秒間にわたるインキュベーションを介して、安定したベースラインレベルに到達させた。sdAbでコーティングされたセンサーを次に、種々の濃度の精製血漿由来VWF(KB-VWF-008及び011についてのPBS-T中の2.5、25、及び250μg/ ml対KB-VWF-013についての25及び250μg/ml)を含むウェルに移し、固定化sdAbへのVWFの会合を視覚化するために、600秒間にわたりインキュベートした。この会合段階の後、センサーをPBS-Tを含むウェルに移し、900秒間にわたりインキュベートし、VWF-sdAb複合体の解離を可能にした。
【0113】
別の組の実験では、本発明者らは、再びOctet-QK機器を使用し、バイオレイヤー干渉法分析を介して固定化組換えヒトVWFへのVIII因子の会合及び解離を決定した。アミン反応性バイオセンサーを使用し、組換えVWF(0.1M MES、pH5.0中で50μg/ml)を固定化した。0.1M MES pH5.0との600秒間のインキュベーションを介したセンサーの水和後、センサーを0.1mlの0.2M EDC/0.095M NHS混合物を用いて420秒間にわたり活性化し、その後、0.1mlのVWF溶液と420秒間にわたりインキュベートした。非占有アミン反応部位を1Mエタノールアミンと420秒間にわたりインキュベートすることによりクエンチし、センサーを、Hepes緩衝液(20mM Hepes、0.11M NaCl、0.005%Tween-20、5mM CaCl2、pH7.3)との600秒間にわたるインキュベーションを介して、安定したベースラインレベルに到達させた。VWFコーティングされたセンサーを次に、種々の濃度の精製組換え全長VIII因子(Kogenate;Hepes緩衝液中で3.5nM又は1.4nMに希釈)を含むウェルに移し、固定化VWFへのFVIIIの会合を視覚化するために600秒間にわたりインキュベートした。この会合段階に続き、センサーを、Hepes緩衝液を含むウェルに移し、600秒間にわたりインキュベートし、VWF-FVIII複合体の解離を可能にした。
【0114】
会合及び解離曲線を
図1にプロットする。sdAbsとVWFの間での相互作用対VWFとFVIIIの間で相互作用のデータを分析する際、本発明者らは、両方の型の相互作用について解離相に焦点を当てた。VWF-FVIII相互作用についての解離速度定数を、単一の指数関数的減衰についての等式を使用して算出し、解離速度定数は、3.5nM及び1.4nMのFVIII濃度について、それぞれ2.2×10
-3/秒及び3.0×10
-3/秒と算出した。これらの値は、文献に記載されるものと同様である(0.3~6.0×10
-3/秒;Sandberg et al., (2012) Thromb Res vol 130, pp 808-817;Dimitrov et al., (2012) Biochemistry vol 51, pp 4108-4116;Zollner et al., (2014) Thromb Res vol 134, pp 125-131)。sdAbの解離定数は、モニターされた期間中に解離が遅すぎるため、単一の指数関数的減衰についての等式を使用して正確に算出することはできなかった。本発明者らは、従って、解離曲線の勾配を決定するための線形回帰アプローチを使用し、それは、真の解離速度定数を恐らくは過大評価する見掛けの解離速度定数を表す(即ち、実際には、解離は見掛けの解離速度定数により表されるよりも遅い)。KB-VWF-008については、見掛けの解離速度定数は2.0±1.1×10
-5/秒(平均値±標準偏差;n=3濃度)であった。KB-VWF-011については、見掛けの解離速度定数は0.6±0.5×10
-5/秒(平均値±標準偏差;n=3濃度)であった。KB-VWF-013については、見掛けの解離速度定数はそれぞれ1.3×10
-5/秒及び3.5×10
-5/秒(それぞれ250μg/ml及び25μg/ml)であった。このように、3つのsdAbの各々について、VWFとの相互作用についての見掛けの解離速度定数は、FVIII-VWF相互作用についての文献で報告された解離速度定数と比較して少なくとも15~300倍遅く、同じOctet-QK機器で分析したVWF-FVIII相互作用について算出した解離速度定数と比較して少なくとも100倍遅い。
【0115】
実施例D:VIII因子へのVWF結合に対するsdAbの効果
ポリクローナルウサギ抗VWF抗体(Dako、デンマーク、グロストルプ)を、50mM Na
2CO
3(pH9.5)中の5μg/mlで、一晩4℃で50μlの容量でマイクロタイターウェル上に固定化した。0.1%Tween-20(TBS-T)を添加したTris緩衝生理食塩水で3回洗浄後、ウェルをTBS-T中の3%BSAで飽和させた。次に、rVWF(0.03~1.0μg/ml;50μl/ウェル)をウェルに加えて、4℃で一晩インキュベートした。TBS-T中での洗浄後、ウェルを75μlの0.35M CaCl
2を用いて2回、37℃で10分間にわたりインキュベートし、TBTS-T(75μl/ウェル)を用いた6回の洗浄が続いた。次に、1.5U/mlの濃度に希釈したrFVIII(Kogenate-FS、Bayer Healthcare)を、20μg/mlのsdAb KB-VWF-008、-11、又は-013の存在下又は非存在において50μlの全容量で加えた。対照として、FVIIIを、VWFへのFVIIIの結合をブロックするマウスモノクローナル抗VWF抗体Mab418の存在において加えた(Takahashi Y et al., (1987) Blood vol 70, pp 1679-1682)。37℃で2時間及びTBS-T(75μl/ウェル)で3回洗浄後、結合したFVIIIを、ペルオキシダーゼ標識ポリクローナルヒツジ抗FVIII抗体(Stago BNL、オランダ、ライデン)を使用してプローブし、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジンのペルオキシダーゼ媒介性加水分解を測定することにより検出した。各々のVWF濃度について、sdAb又はMab418の存在におけるFVIII結合を、sdAb又はMab418の非存在におけるFVIII結合と比べて算出し、結合パーセンテージ(%)で表した(
図2)。Mab418の存在によって、VWFへのFVIIIの結合が72±5%(平均値±標準偏差;n=6;対照と比較してp<0.001)だけ低下したのに対し、各々のsdAbの存在によって、いずれの抗体の非存在と同様のFVIII結合が残った(複数比較を用いた一方向ANOVAを使用してテストした場合、p>0.05)。これは、sdAbs KB-VWF-008、-011、及び-013がVWFへのFVIIIの結合に干渉しないことを示す。
【0116】
実施例E:因子VIII-sdAb融合タンパク質はVWFに結合する。
野生型BドメインレスFVIII(WT-FVIII-SQ)、1680位のTyrからPheへの置換を含むBドメインレスFVIII(FVIII-SQ/p.Y1680F)及び1680位のTyrからPheへの置換を含むFVIII-KB013bv(FVIII-KB013bv/p.Y1680F)をコードするcDNA構築物をpLIVE-プラスミド(Mirus Bio、米国ウィスコンシン州マディソン)にクローニングした。1680位のチロシンは、WT-FVIII-SQ中で硫酸化されており(フォン・ビルブラント因子(VWF)への結合の必要条件)、Pheへのp.Tyr1680の変異は、VWF結合の喪失と関連付けられる(Leyte A et al., (1991) J Biol Chem vol 266, pp 740-746)。プラスミド(100μg/マウス)を、流体力学的遺伝子導入を介してVIII因子欠損マウス中に注射した:プラスミドは、動物の体重の10%(即ち、20グラムのマウスについては2ml)に相当する容量を用いて、0.9%生理食塩水中に希釈した。溶液を5秒以内に尾静脈に注入する。遺伝子導入の4日後、血液を、イソフルラン麻酔マウスから眼窩後穿刺を介して採取し、血漿を遠心分離(22℃で20分間にわたり1500g)により調製した。血漿を次に使用し、マウスの血漿中に形成されたVWF-FVIII複合体を測定した。複合体は以下のように決定した:マイクロタイターウェルを、実施例Dに記載するように、ポリクローナルウサギ抗VWF抗体(5μg/ml)を用いてコーティングした。0.1%Tween-20(TBS-T)を添加したTris緩衝生理食塩水で3回洗浄後、ウェルをTBS-T中の3%BSAを用いて飽和させた。次に、マウス血漿サンプル(TBS-Tで10倍に希釈)をウェルに加え、37℃で2時間にわたりインキュベートした。TBS-T(75μl/ウェル)での3回洗浄後、結合したFVIIIを、ペルオキシダーゼ標識ポリクローナルヒツジ抗FVIII抗体(Stago BNL、オランダ、ライデン)を使用してプローブし、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジンのペルオキシダーゼ媒介性加水分解を測定することにより検出した。変異体FVIII-SQ/p.Y1680F及びFVIII-KB013bv/p.Y1680FについてのVWF複合体の量は、任意に100%として設定した、WT-FVIII-SQの量と関連していた。予測された通り、VWFとの複合体形成は、変異体FVIII-SQ/p.Y1680Fについては強く低下した(WT-FVIII-SQについての100%と比較して8%;
図3を参照のこと)。対照的に、結合は、VWF結合性sdAbを含むバリアントFVIII-KB013bv/p.Y1680Fについては2.4倍(238%)増加した。p.Y1680F変異は自然のVWF結合を無効にするため、これらのデータは、VIII因子タンパク質中に組み込まれながら、sdAb KB-VWF-013はVWFへの結合を救済することができることを示す。このように、融合タンパク質との関連において、sdAb KB-VWF-013は、VWF結合に寄与する。
【0117】
実施例F:FVIII-KB013bvの発現及び機能解析
ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞を、pcDNA3.1/Hygro中にクローン化されたFVIII-KB013bvをコードするcDNAを用いてトランスフェクトし、ハイグロマイシンを用いた選択を介して安定な細胞株を得た。1つのクローンをFVIII-KB013bvの産生のために選択した。FVIII-KB013bvを、製造者(GE Healthcare、フランス、ヴェリジー=ヴィラクブレー)が指示する通り、VIIISelect-マトリックスを使用した親和性クロマトグラフィーを介して培地から精製した。精製したFVIII-KB013bvを活性及び抗原についてテストした。5つのトップフラクションを選択し、発色2段階活性(Biophen FVIII:C;Hyphen Biomed、フランス、ヌーヴィル=シュル=オワーズ)及びVIII因子抗原レベル(Girma JP et al., (1998) Haemophilia vol 4 pp 98-103)を決定した。平均活性は188±42U/ml(平均値±標準偏差;n=5連続溶出画分)であることが見出され、抗原は176±28U/mlであると算出された。平均活性/抗原比は1.1±0.3であり、FVIII-KB013bvが発色2段階活性アッセイにおいて完全な活性を呈することを示した。
【0118】
第2の分析では、FVIII-KB013bv及びWT-FVIII-SQをトロンビン(10nM)の非存在又は存在において室温で30分間にわたりインキュベートした。その後、サンプルを、ポリクローナルヒツジ抗FVIII抗体を使用したウエスタンブロッティングを介して分析した。トロンビンの非存在においてインキュベートしたサンプルについては、WT-FVIII-SQは切断形態で主に存在し、90kDaの重鎖及び80kDaの軽鎖からなり、一部の非切断物質も存在する(
図4中のレーン3)。対照的に、FVIII-KB013bvについては、調製物の>90%が一本鎖タンパク質として存在し、二本鎖として現れた(
図4中のレーン1)。注目すべきは、非切断FVIII-013bvのサイズは、FVIII重鎖と軽鎖の間でのsdAb KB-VWF-013の2つのコピーの挿入のために、WT-FVIII-SQのサイズよりわずかに大きい(
図4中のレーン1及び3)。対照的に、トロンビンとのインキュベーション後、WT-FVIII-SQ及びFVIII-013bvは、トロンビン活性化FVIIIについて同様のパターンを呈し、70kDaの軽鎖ならびに別々のA1及びA2ドメインを伴った(
図4中のレーン2及び4)。この分析は、トロンビン活性化後、挿入されたsdAb KB-VWF-013bvがタンパク質から除去され、天然のヘテロ三量体FVIIIaタンパク質を生じることを示す。
【0119】
実施例G:FVIII-KB-013bvのインビボでの生存
精製したWT-FVIII-SQ又はFVIII-kb013bv(両方ともBHK-M細胞において産生され、VIII選択親和性クロマトグラフィーを使用して精製した)をFVIII欠損マウスに静脈内(250-500U/kg)投与した。注射後の異なる時間点(WT-FVIII-SQについては3分、30分、1時間、2時間、8時間、及び24時間、ならびにFVIII-KB013bvについては3分、4時間、9時間、21時間、29時間、及び48時間)に、血液サンプルをイソフルラン麻酔マウスからの眼窩後穿刺を介して得て、血漿を遠心分離(22℃で20分間にわたり1500g)により調製した。残留FVIII活性を、製造者(Biophen FVIII:C;Hyphen Biomed、フランス、ヌーヴィル=シュル=オワーズ)により指示された通りに、発色2段階アッセイを使用して測定した。注射後3分目での活性と比べた残留FVIII活性を、注射後の時間に対してプロットした(
図5)。このアプローチによって、FVIII-KB013bvについての活性が、後の時間点でより高いWT-FVIII-SQのままであることが明らかになった。例えば、24時間でのWT-FVIIIについての相対的残留FVIII活性は0.72±0.23%(n=3)であったのに対し、FVIII-KB013bvについては、29時間での相対残留活性は3倍以上であった(2.62±0.25%;n=3;スチューデントt検定においてp=0.0007)。データを、単一の指数関数的減衰(Graph Prism 5 for Mac OSX、GraphPad Software、米国カリフォルニア州ラホーヤ)を記載する等式を使用して分析した場合、WT-FVIII-SQについて算出された半減期は1.1時間であった(95%信頼区間0.9~1.5時間)。FVIII-KB013bvについては、半減期は2.1時間と算出し(95%信頼区間1.7~2.9時間;WT-FVIII-SQと比較してp=0.0032)、WT-FVIII-SQについての半減期より2倍長い。これらの結果は、2つのコピーのsdAb KB-VWF-013の存在が、FVIIIの生存に対して有意な有益な効果を有することを示す。
【0120】
実施例H:FVIII-KB013bv注射の24時間後での血友病マウスにおける止血の矯正
8~12週齢の血友病マウスに、静脈内尾注入を介して500U/kgの用量でWT-FVIII-SQ(Xyntha)又はFVIII-KB013bvを与えた。注射から24時間後、尾部の末端3mmをケタミン/キシラジン麻酔マウスから切断した。切断した尾部を、切断直後に、温かい生理食塩水で満たした50mlチューブ中に浸漬した。血液を37℃で30分間にわたり採取した。30分後、血液と生理食塩水の混合物を1500gで遠心分離した。赤血球ペレットを次にH
2O中に溶解し、ヘモグロビンの量を、416nmで吸光度を読み取ることにより得た。各々のサンプル中の喪失した血液の容量を、上に記載するようにヘモグロビンを抽出するために、H
2O中のマウス血液の一定量(20μl、40μl、60μl、80μl、及び100μl)を溶解することにより得られた標準曲線から算出した。各々のマウスについての血液喪失量を
図6中に提示する。FVIII-KB013bvを注射したマウスについては、平均血液喪失量は13±3μl(平均値±標準偏差;n=3マウス)と算出された。WT-FVIII-SQを投与したマウスについては、平均血液喪失量は194±146μL(平均値±標準偏差;n=5マウス)であり、それは、FVIII-KB013bvを注射したマウスと比較して有意に高かった(p=0.0043、マン・ホイットニー検定を使用して決定)。このように、FVIII-KB013bvは、WT-FVIII-SQよりも長い期間にわたり止血活性を呈する。
【0121】
実施例I:同種抗体の形成を低下させるための治療用タンパク質としてのFVIII-KB013bvの使用
VWF及びFVIIIは複合体として血漿中を循環するが、同種抗体がこれらのタンパク質の治療的適用後に発生する程度に顕著な差がある。補充療法に応答したVWFへの同種抗体の発生は、重度フォン・ビルブラント疾患を伴う患者の5~10%を含むと推定されている(James et al., (2013) Blood vol 122, pp 636-640)。対照的に、阻害性同種抗体は、以前に未処置の血友病A患者の27%までにおいて発生する(Iorio et al., (2010) JTH vol 8, pp 1256-1265)。
【0122】
この抗体の発生率における差の根本的な理由は不明である。最近、Sorvillo及び共同研究者(Haematologica 2016 in press;doi:10.3324/haematol.2015.137067)は、VWFが、エンドサイトーシスされることなく、抗原提示細胞の表面に結合したままであることを示した。対照的に、このVWFに結合したFVIIIは実際にこれらの細胞により取り込まれ、MHCクラスII分子中への取り込みのためにプロセッシングされ、それによりCD4+ T細胞への提示を可能にする。FVIII(しかし、VWFではない)が抗原提示細胞に侵入するとの概念は、抗体発生がVWF補充療法と比較し、FVIII補充療法時に増加することを説明しうる。抗原提示細胞の表面でのFVIIIの解離を防止し、それにより抗原提示細胞によるFVIIIの取り込みを防止する方法は、このように、FVIII置換療法時に同種抗体の形成を低下させる手段となりうる。VWFからのFVIIIの解離を低下させるための1つの方法は、FVIIIタンパク質中のVWFに対するsdAbを組み入れることによるものであり、その例は本発明のFVIII-KB013bvである。FVIII-KB013bvは、従って、通常の会合-解離速度を呈するFVIIIと比較し、免疫原性が低い治療用タンパク質として使用することができるであろう。
【0123】
実施例J:凝固VII因子へのKB-VWF-013の融合によって、VWFとの複合体形成が誘導される。
VWFを認識するsdAbがVWFへのFVIII以外のタンパク質の結合を媒介することができるか否かを決定するために、KB-VWF-013の2つのコピーに融合したヒト凝固VII因子(FVII)の配列をコードするcDNAを構築した。FVII及びKB-VWF-013をコードする配列を、トロンビン切断部位をコードするリンカー配列により分離した。このcDNA及び対応するタンパク質の全配列をFVII-KB13-bvとして言及する。FVII-KB-13-bv及びWT-FVIIをpLIVE-プラスミド(Mirus Bio、米国ウィスコンシン州マディソン)中にクローニングした。プラスミドを、流体力学的遺伝子導入を介して野生型C57B16-マウス中に注射した(100μg/マウス):プラスミドを、動物の体重の10%(即ち、20gマウスについて2ml)に相当する容量で0.9%生理食塩水中に希釈した。溶液を5秒以内に尾静脈に注射する。遺伝子導入の4日後、血液を、イソフルラン麻酔マウスから眼窩後穿刺により採取し、血漿を遠心分離(22℃で20分間にわたり1500g)により調製した。血漿を次に使用し、マウスの血漿中に形成されたVWFとFVII又はFVII-KB13-bvの間の複合体を測定した。複合体は以下のように決定した:マイクロタイターウェルを、50μlの炭酸緩衝液(0.07M NaHCO3、0.03M Na2HCO3、pH 9.6)中2.5μg/mlの濃度でポリクローナルヒツジ抗ヒトFVII抗体(Affinity Biologicals、カナダオンタリオ州アンカスター)で、4℃で一晩コーティングした。ウェルを、0.1%Tween-20(TBS-T)を添加したTris緩衝生理食塩水で3回洗浄し、次にTBS-T中の5%BSA、1%ポリビニルピロリドン(PVP)を用いて37℃で2時間にわたり飽和させ、再びTBS-Tで5回洗浄する。次に、マウス血漿サンプル(1%BSAを含む50μlのTBS-T中で10倍に希釈)をウェルに加え、37℃で2時間にわたりインキュベートした。TBS-T(75μl/ウェル)で5回洗浄後、結合したFVII又はFVII-KB13-bvを、ペルオキシダーゼ標識ポリクローナルウサギ抗VWF抗体(Dako)を使用してプローブし、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジンのペルオキシダーゼ媒介加水分解を測定することにより検出した。FVIIを発現するマウスについては、バックグラウンドを超えるシグナルは検出されず(OD450nm=-0.038±0.033;平均値±標準偏差;n=4マウス)、VWFとFVIIの間に複合体が存在しないことを示唆する。対照的に、明確なシグナルが、FVII-KB13-bvを発現する各々のマウスからの血漿について観察された(OD450nm=0.684±0.554;n=4;p=0.029、マン・ホイットニー検定を用いて分析)。これによって、sdAb KB-VWF-013へのFvIIの融合により、循環VWFへのタンパク質の会合が誘導されることが実証される。
【0124】
参考文献
本願を通して、種々の参考文献において、本発明が関係する最新技術が記載されている。これらの参考文献の開示は、本明細書により参考として本開示中に組み入れられる。
【表15】
【配列表】