(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】睡眠環境温度制御装置及び睡眠環境温度制御方法
(51)【国際特許分類】
A61M 21/02 20060101AFI20220629BHJP
A47C 21/04 20060101ALI20220629BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20220629BHJP
A47G 9/02 20060101ALI20220629BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20220629BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20220629BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20220629BHJP
F24F 11/62 20180101ALI20220629BHJP
F24F 11/72 20180101ALI20220629BHJP
【FI】
A61M21/02 G
A47C21/04 Z
A47C27/00 F
A47G9/02 G
A61B5/11
A61B5/16
F24F11/46
F24F11/62
F24F11/72
(21)【出願番号】P 2017144711
(22)【出願日】2017-07-26
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】508131381
【氏名又は名称】株式会社スリープシステム研究所
(72)【発明者】
【氏名】根本 新
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-042773(JP,A)
【文献】特開平05-095935(JP,A)
【文献】特開平05-111474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 21/02
A47G 9/02
A47C 27/00
A47C 21/04
A61B 5/16
A61B 5/11
F24F 11/46
F24F 11/62
F24F 11/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠環境温度を制御する睡眠環境温度制御装置において、
利用者の生体信号を無侵襲且つ無拘束で検出する生体信号検出手段と、
前記生体信号検出手段によって検出された生体信号の時系列データに基づいて、前記利用者の睡眠深度を判定する睡眠深度判定手段と、
前記睡眠深度判定手段によって判定された睡眠深度に基づいて、温度調整機能を有する制御対象装置を制御して睡眠環境温度を制御する温度制御手段とを備え、
前記睡眠深度判定手段は、前記生体信号検出手段によって検出された生体信号に基づいて前記利用者の体動の発生を検出し且つ前記利用者が在床していることを検出した場合に、前記体動が発生している期間に基づいて浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び深いノンレム睡眠段階の期間を判定し、
前記温度制御手段は、前記制御対象装置が温度調整機能を有する寝具である場合には、前記利用者が在床しているか否かを判定し、在床していると判定した場合にのみ前記寝具の制御を行うものとし、前記利用者の入床後
所定時間が経過するまでは前記寝具の電源をオンとしたままとし、
前記所定時間経過後であって、検出される前記利用者の体動終了後
から第1の所定時間経過後且つ第2の所定時間経過までは、前記睡眠深度判定手段によって睡眠深度が前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間であると判定するのに応じて、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量の50%とし、前記第2の所定時間経過後には、前記睡眠深度判定手段によって睡眠深度が前記深いノンレム睡眠段階であると判定するのに応じて、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量の30%とし、前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び前記深いノンレム睡眠段階の期間以外の覚醒段階及び浅いノンレム睡眠段階であるときには、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量として寝床内温度制御を行うこと
を特徴とする睡眠環境温度制御装置。
【請求項2】
睡眠環境温度を制御する睡眠環境温度制御装置において、
利用者の生体信号を無侵襲且つ無拘束で検出する生体信号検出手段と、
前記生体信号検出手段によって検出された生体信号の時系列データに基づいて、前記利用者の睡眠深度を判定する睡眠深度判定手段と、
前記睡眠深度判定手段によって判定された睡眠深度に基づいて、温度調整機能を有する制御対象装置を制御して睡眠環境温度を制御する温度制御手段とを備え、
前記睡眠深度判定手段は、前記生体信号検出手段によって検出された生体信号に基づいて前記利用者の体動の発生を検出し且つ前記利用者が在床していることを検出した場合に、前記体動が発生している期間に基づいて浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び深いノンレム睡眠段階の期間を判定し、
前記温度制御手段は、前記制御対象装置がエアコン及び扇風機である場合には、前記利用者が在床しているか否かを判定し、在床していると判定した場合にのみ前記扇風機の制御を行うものとし、前記利用者の入床後
所定時間が経過するまでは前記扇風機の電源をオンとしたままとし、
前記所定時間経過後であって、検出される前記利用者の体動終了後
から第1の所定時間経過後且つ第2の所定時間経過までは、前記睡眠深度判定手段によって睡眠深度が前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間であると判定するのに応じて、前記扇風機の電源を1分間あたり50%オン且つ50%オフとし、前記第2の所定時間経過後には、前記睡眠深度判定手段によって睡眠深度が前記深いノンレム睡眠段階であると判定するのに応じて、前記扇風機の電源を常時オンとし、前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び前記深いノンレム睡眠段階の期間以外の覚醒段階及び浅いノンレム睡眠段階であるときには、前記扇風機の電源を1分間あたり10%オン且つ90%オフとして室内温度制御を行うこと
を特徴とする睡眠環境温度制御装置。
【請求項3】
睡眠環境温度を制御する睡眠環境温度制御方法において、
所定の生体信号検出手段によって利用者の生体信号を無侵襲且つ無拘束で検出する生体信号検出工程と、
信号処理を行うプロセッサが、前記生体信号検出工程にて検出された生体信号の時系列データに基づいて、前記利用者の睡眠深度を判定する睡眠深度判定工程と、
前記プロセッサが、前記睡眠深度判定工程にて判定された睡眠深度に基づいて、温度調整機能を有する制御対象装置を制御して睡眠環境温度を制御する温度制御工程とを備え、
前記睡眠深度判定工程では、前記生体信号検出工程にて検出された生体信号に基づいて前記利用者の体動の発生を検出し且つ前記利用者が在床していることを検出した場合に、前記体動が発生している期間に基づいて浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び深いノンレム睡眠段階の期間を判定し、
前記温度制御工程では、
前記制御対象装置が温度調整機能を有する寝具である場合には、前記利用者が在床しているか否かを判定し、在床していると判定した場合にのみ前記寝具の制御を行うものとし、前記利用者の入床後
所定時間が経過するまでは前記寝具の電源をオンとしたままとし、
前記所定時間経過後であって、検出される前記利用者の体動終了後
から第1の所定時間経過後且つ第2の所定時間経過までは、前記睡眠深度判定工程にて睡眠深度が前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間であると判定するのに応じて、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量の50%とし、前記第2の所定時間経過後には、前記睡眠深度判定工程にて睡眠深度が前記深いノンレム睡眠段階であると判定するのに応じて、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量の30%とし、前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び前記深いノンレム睡眠段階の期間以外の覚醒段階及び浅いノンレム睡眠段階であるときには、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量として寝床内温度制御を行うこと
を特徴とする睡眠環境温度制御方法。
【請求項4】
睡眠環境温度を制御する睡眠環境温度制御方法において、
所定の生体信号検出手段によって利用者の生体信号を無侵襲且つ無拘束で検出する生体信号検出工程と、
信号処理を行うプロセッサが、前記生体信号検出工程にて検出された生体信号の時系列データに基づいて、前記利用者の睡眠深度を判定する睡眠深度判定工程と、
前記プロセッサが、前記睡眠深度判定工程にて判定された睡眠深度に基づいて、温度調整機能を有する制御対象装置を制御して睡眠環境温度を制御する温度制御工程とを備え、
前記睡眠深度判定工程では、前記生体信号検出工程にて検出された生体信号に基づいて前記利用者の体動の発生を検出し且つ前記利用者が在床していることを検出した場合に、前記体動が発生している期間に基づいて浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び深いノンレム睡眠段階の期間を判定し、
前記温度制御工程では、前記制御対象装置がエアコン及び扇風機である場合には、前記利用者が在床しているか否かを判定し、在床していると判定した場合にのみ前記扇風機の制御を行うものとし、前記利用者の入床後
所定時間が経過するまでは前記扇風機の電源をオンとしたままとし、
前記所定時間経過後であって、検出される前記利用者の体動終了後
から第1の所定時間経過後且つ第2の所定時間経過までは、前記睡眠深度判定工程にて睡眠深度が前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間であると判定するのに応じて、前記扇風機の電源を1分間あたり50%オン且つ50%オフとし、前記第2の所定時間経過後には、前記睡眠深度判定工程にて睡眠深度が前記深いノンレム睡眠段階であると判定するのに応じて、前記扇風機の電源を常時オンとし、前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び前記深いノンレム睡眠段階の期間以外の覚醒段階及び浅いノンレム睡眠段階であるときには、前記扇風機の電源を1分間あたり10%オン且つ90%オフとして室内温度制御を行うこと
を特徴とする睡眠環境温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、快適な睡眠を実現できるように睡眠環境温度を最適な温度に制御する睡眠環境温度制御装置及び睡眠環境温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠は健康のバロメータであるといわれ、快適な睡眠をして気分のよい目覚めができれば、目覚めた際に颯爽とした気分となり健康を実感することは、日常において多く経験する。一方、不眠症や不眠傾向にある場合や、深夜労働等のために昼夜の生活が逆転した睡眠を強いられる場合等においては、その目覚めの後の気分は芳しくないことが多い。すなわち、意識的であるか無意識的であるかにかかわらず、睡眠の状態がその後の覚醒時の気分や行動に影響を及ぼし、ひいては覚醒後の昼間の活動の質を定めることになる。
【0003】
このように、睡眠は、人間の身体活動及び心的活動に重要な影響を及ぼす要素であり、良好な睡眠をとることができれば身体的及び心的に健康的な日常活動が保証されるといってよい。従来から、快適な睡眠を確保することを目的として、睡眠時の環境温度を制御することが試みられている。このような試みを具現化した技術としては、例えば特許文献1乃至特許文献3に記載されているように、生体信号に基づいて睡眠深度や睡眠状態を判定し、判定した睡眠深度や睡眠状態に応じて睡眠環境温度を制御するものが提案されている。
【0004】
ここで、いわゆる睡眠ポリソムノグラフ(PSG)による国際睡眠深度判定基準では、脳波、眼球運動、筋電図等に基づいて、睡眠深度を、覚醒段階、レム睡眠段階、浅いノンレム睡眠段階、及び、深いノンレム睡眠段階にわけており、浅いノンレム睡眠段階及び深いノンレム睡眠段階は、それぞれ、さらに2段階にわけられる。なお、浅いノンレム睡眠段階である第1のノンレム睡眠段階及び第2のノンレム睡眠段階は、いわゆる浅い睡眠状態を指し、深いノンレム睡眠段階である第3のノンレム睡眠段階及び第4のノンレム睡眠段階は、いわゆる深いノンレム睡眠状態を指す。健康成人の安定した睡眠においては、覚醒段階が1~3%、第1のノンレム睡眠段階が数%、第2のノンレム睡眠段階が50%、第3及び第4のノンレム睡眠段階が20~30%、レム睡眠段階が20~30%の比率であり、レム睡眠が約90分周期で現れることが目安として知られている。
【0005】
上述した特許文献1乃至特許文献3に記載された技術は、いずれも生体信号に基づいて睡眠深度を判定するものであるが、例えば特許文献4乃至特許文献6に記載されているように、国際睡眠深度判定基準における6段階の睡眠深度を考慮して睡眠環境温度を制御する技術も提案されている。
【0006】
一般に、睡眠深度が深くなると深部体温が約1.5℃低下し、体表面からの熱放散が多くなることから、寝床内温度が上昇する。そのため、いずれの技術においても、深いノンレム睡眠状態では熱放散による寝床内温度の急上昇によって暑苦しくなり覚醒する場合が多い。そのため、睡眠環境温度を低下させるような制御を行うと快適な温度が保持され、深い睡眠が持続され、快適な睡眠が得られることが知られている。
【0007】
また、本願発明者は、特許文献7において、浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階へと遷移する際に誘導温度を設定し、この誘導温度に基づく室温や寝床内温度を含む睡眠環境温度の制御を行うことにより、浅い睡眠から深いノンレム睡眠へと遷移する際に利用者に違和感を与えることなく、適切に浅い睡眠から深いノンレム睡眠へと誘導する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-119454号公報
【文献】特開2009-247846号公報
【文献】特開2006-198023号公報
【文献】特開2003-339674号公報
【文献】特開2005-152310号公報
【文献】特開2005-152537号公報
【文献】特開2014-042773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した特許文献1乃至特許文献7に記載された技術は、睡眠段階に基づく制御を行うものの、その制御を実現するために複雑なハードウェア及び/又はソフトウェアを必要とし、コストの高騰を招来するという問題があった。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、簡便且つ低コストの構成のもとに、深いノンレム睡眠段階であることを的確に判定し、冬季であれば電気毛布等の寝具及び夏季であればエアコンや扇風機等の空調装置といった制御対象装置を適切に制御することにより、睡眠途中の覚醒の発生を低減し、深いノンレム睡眠段階を持続させることができる睡眠環境温度制御装置及び睡眠環境温度制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成する本発明にかかる睡眠環境温度制御装置は、睡眠環境温度を制御する睡眠環境温度制御装置において、利用者の生体信号を無侵襲且つ無拘束で検出する生体信号検出手段と、前記生体信号検出手段によって検出された生体信号の時系列データに基づいて、前記利用者の睡眠深度を判定する睡眠深度判定手段と、前記睡眠深度判定手段によって判定された睡眠深度に基づいて、温度調整機能を有する制御対象装置を制御して睡眠環境温度を制御する温度制御手段とを備え、前記睡眠深度判定手段は、前記生体信号検出手段によって検出された生体信号に基づいて前記利用者の体動の発生を検出し且つ前記利用者が在床していることを検出した場合に、前記体動が発生している期間に基づいて浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び深いノンレム睡眠段階の期間を判定し、前記温度制御手段は、前記制御対象装置が温度調整機能を有する寝具である場合には、前記利用者が在床しているか否かを判定し、在床していると判定した場合にのみ前記寝具の制御を行うものとし、前記利用者の入床後所定時間が経過するまでは前記寝具の電源をオンとしたままとし、前記所定時間経過後であって、検出される前記利用者の体動終了後から第1の所定時間経過後且つ第2の所定時間経過までは、前記睡眠深度判定手段によって睡眠深度が前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間であると判定するのに応じて、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量の50%とし、前記第2の所定時間経過後には、前記睡眠深度判定手段によって睡眠深度が前記深いノンレム睡眠段階であると判定するのに応じて、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量の30%とし、前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び前記深いノンレム睡眠段階の期間以外の覚醒段階及び浅いノンレム睡眠段階であるときには、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量として寝床内温度制御を行うことを特徴としている。
【0012】
また、上述した目的を達成する本発明にかかる睡眠環境温度制御装置は、睡眠環境温度を制御する睡眠環境温度制御装置において、利用者の生体信号を無侵襲且つ無拘束で検出する生体信号検出手段と、前記生体信号検出手段によって検出された生体信号の時系列データに基づいて、前記利用者の睡眠深度を判定する睡眠深度判定手段と、前記睡眠深度判定手段によって判定された睡眠深度に基づいて、温度調整機能を有する制御対象装置を制御して睡眠環境温度を制御する温度制御手段とを備え、前記睡眠深度判定手段は、前記生体信号検出手段によって検出された生体信号に基づいて前記利用者の体動の発生を検出し且つ前記利用者が在床していることを検出した場合に、前記体動が発生している期間に基づいて浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び深いノンレム睡眠段階の期間を判定し、前記温度制御手段は、前記制御対象装置がエアコン及び扇風機である場合には、前記利用者が在床しているか否かを判定し、在床していると判定した場合にのみ前記扇風機の制御を行うものとし、前記利用者の入床後所定時間が経過するまでは前記扇風機の電源をオンとしたままとし、前記所定時間経過後であって、検出される前記利用者の体動終了後から第1の所定時間経過後且つ第2の所定時間経過までは、前記睡眠深度判定手段によって睡眠深度が前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間であると判定するのに応じて、前記扇風機の電源を1分間あたり50%オン且つ50%オフとし、前記第2の所定時間経過後には、前記睡眠深度判定手段によって睡眠深度が前記深いノンレム睡眠段階であると判定するのに応じて、前記扇風機の電源を常時オンとし、前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び前記深いノンレム睡眠段階の期間以外の覚醒段階及び浅いノンレム睡眠段階であるときには、前記扇風機の電源を1分間あたり10%オン且つ90%オフとして室内温度制御を行うことを特徴としている。
【0013】
さらに、上述した目的を達成する本発明にかかる睡眠環境温度制御方法は、睡眠環境温度を制御する睡眠環境温度制御方法において、所定の生体信号検出手段によって利用者の生体信号を無侵襲且つ無拘束で検出する生体信号検出工程と、信号処理を行うプロセッサが、前記生体信号検出工程にて検出された生体信号の時系列データに基づいて、前記利用者の睡眠深度を判定する睡眠深度判定工程と、前記プロセッサが、前記睡眠深度判定工程にて判定された睡眠深度に基づいて、温度調整機能を有する制御対象装置を制御して睡眠環境温度を制御する温度制御工程とを備え、前記睡眠深度判定工程では、前記生体信号検出工程にて検出された生体信号に基づいて前記利用者の体動の発生を検出し且つ前記利用者が在床していることを検出した場合に、前記体動が発生している期間に基づいて浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び深いノンレム睡眠段階の期間を判定し、前記温度制御工程では、前記制御対象装置が温度調整機能を有する寝具である場合には、前記利用者が在床しているか否かを判定し、在床していると判定した場合にのみ前記寝具の制御を行うものとし、前記利用者の入床後所定時間が経過するまでは前記寝具の電源をオンとしたままとし、前記所定時間経過後であって、検出される前記利用者の体動終了後から第1の所定時間経過後且つ第2の所定時間経過までは、前記睡眠深度判定工程にて睡眠深度が前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間であると判定するのに応じて、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量の50%とし、前記第2の所定時間経過後には、前記睡眠深度判定工程にて睡眠深度が前記深いノンレム睡眠段階であると判定するのに応じて、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量の30%とし、前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び前記深いノンレム睡眠段階の期間以外の覚醒段階及び浅いノンレム睡眠段階であるときには、前記寝具の投入熱量を前記利用者の設定どおりの投入熱量として寝床内温度制御を行うことを特徴としている。
【0014】
さらにまた、上述した目的を達成する本発明にかかる睡眠環境温度制御方法は、睡眠環境温度を制御する睡眠環境温度制御方法において、所定の生体信号検出手段によって利用者の生体信号を無侵襲且つ無拘束で検出する生体信号検出工程と、信号処理を行うプロセッサが、前記生体信号検出工程にて検出された生体信号の時系列データに基づいて、前記利用者の睡眠深度を判定する睡眠深度判定工程と、前記プロセッサが、前記睡眠深度判定工程にて判定された睡眠深度に基づいて、温度調整機能を有する制御対象装置を制御して睡眠環境温度を制御する温度制御工程とを備え、前記睡眠深度判定工程では、前記生体信号検出工程にて検出された生体信号に基づいて前記利用者の体動の発生を検出し且つ前記利用者が在床していることを検出した場合に、前記体動が発生している期間に基づいて浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び深いノンレム睡眠段階の期間を判定し、前記温度制御工程では、前記制御対象装置がエアコン及び扇風機である場合には、前記利用者が在床しているか否かを判定し、在床していると判定した場合にのみ前記扇風機の制御を行うものとし、前記利用者の入床後所定時間が経過するまでは前記扇風機の電源をオンとしたままとし、前記所定時間経過後であって、検出される前記利用者の体動終了後から第1の所定時間経過後且つ第2の所定時間経過までは、前記睡眠深度判定工程にて睡眠深度が前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間であると判定するのに応じて、前記扇風機の電源を1分間あたり50%オン且つ50%オフとし、前記第2の所定時間経過後には、前記睡眠深度判定工程にて睡眠深度が前記深いノンレム睡眠段階であると判定するのに応じて、前記扇風機の電源を常時オンとし、前記浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び前記深いノンレム睡眠段階の期間以外の覚醒段階及び浅いノンレム睡眠段階であるときには、前記扇風機の電源を1分間あたり10%オン且つ90%オフとして室内温度制御を行うことを特徴としている。
【0015】
このような本発明にかかる睡眠環境温度制御装置及び睡眠環境温度制御方法は、無侵襲且つ無拘束で検出した生体信号に基づいて睡眠深度を自動的に判定し、判定した睡眠深度に応じて睡眠環境温度を制御する。このとき、本発明にかかる睡眠環境温度制御装置及び睡眠環境温度制御方法は、利用者の体動の発生を検出し且つ利用者が在床していることを検出した場合に、体動が発生している期間に基づいて浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間及び深いノンレム睡眠段階の期間を判定し、制御対象装置としての温度調整機能を有する寝具又は温度調整機能を有する空調装置の制御を行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、簡便且つ低コストの構成のもとに、深いノンレム睡眠段階であることを的確に判定することができ、判定した睡眠深度に応じて制御対象装置を適切に制御することから、睡眠途中の覚醒の発生を低減することができ、深いノンレム睡眠段階を持続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施の形態として示す睡眠環境温度制御装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態として示す睡眠環境温度制御装置の構成を示す図であり、
図1において矢視方向からみたときの一部断面図である。
【
図3】利用者の脚部温度、掛け布団内側の温度(寝床内温度)及び室温の時系列データの具体例を示す図である。
【
図4】
図3の温度の時系列データに対応して計測した利用者の胸部体表面温度、脚部体表面温度及び深部体温の時系列データの具体例を示す図である。
【
図5】大きな体動が発生した場合の生体信号の具体例を示す図である。
【
図6】小さな体動が発生した場合の生体信号の具体例を示す図である。
【
図7】体動がない期間を含む生体信号の具体例を示す図である。
【
図8】生体信号の具体例を示す図であり、離床及び在床の検出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
この実施の形態は、睡眠環境温度を制御する睡眠環境温度制御装置である。特に、この睡眠環境温度制御装置は、利用者の生体信号に基づいて睡眠環境温度を最適に制御するものである。
【0020】
図1に、本発明の実施の形態として示す睡眠環境温度制御装置の処理をブロックとして表した構成を示し、
図2に、
図1において矢視方向からみたときの一部断面図を示している。すなわち、睡眠環境温度制御装置は、寝台21上に横臥している利用者の生体信号を検出する生体信号検出部1と、この生体信号検出部1によって検出された生体信号を増幅する信号増幅部2と、この信号増幅部2によって増幅された生体信号に基づいて睡眠深度を判定する睡眠深度判定部3と、この睡眠深度判定部3によって判定された睡眠深度に基づいて電気毛布等の寝具及び/又はエアコンや扇風機等の空調装置といった制御対象装置5を制御して睡眠環境温度を制御する温度制御部4とを備える。なお、これら各部のうち、少なくとも、睡眠深度判定部3及び温度制御部4は、例えば、信号処理を行うコンピュータにおけるCPU(Central Processing Unit)やメモリ等のハードウェアを用いて実行可能なプログラムとして実装したり、コンピュータに装着可能な拡張ボードに搭載されたDSP(Digital Processing Unit)等の専用プロセッサを用いて実装したりすることができる。
【0021】
生体信号検出部1は、利用者の微細な生体信号を検出する無侵襲且つ無拘束センサである。具体的には、生体信号検出部1は、圧力検出チューブ1aと、この圧力検出チューブ1aの内部に収容されている空気の微小な圧力変動を検出するセンサである微差圧センサ1bとから構成され、無侵襲且つ無拘束な生体信号の検出手段を構成している。
【0022】
圧力検出チューブ1aとしては、生体信号の圧力変動範囲に対応して内部の圧力が変動するように適度な弾力を有するものを使用する。また、圧力検出チューブ1aとしては、圧力変化を適切な応答速度で微差圧センサ1bに伝達するために、チューブの中空部の容積を適切に選択する必要がある。圧力検出チューブ1aが適度な弾性と中空部容積とを同時に満足できない場合には、圧力検出チューブ1aの中空部に適切な太さの芯線をチューブ長さ全体にわたって装填し、中空部の容積を適切にとることができる。
【0023】
このような圧力検出チューブ1aは、寝台21上に敷設された硬質シート22上に配置される。睡眠環境温度制御装置においては、硬質シート22上に弾性を有するクッションシート23が敷設されており、圧力検出チューブ1aの上に利用者が横臥することになる。なお、圧力検出チューブ1aは、クッションシート23等に組み込んだ構成とすることにより、圧力検出チューブ1aの位置を安定させる構造としてもよい。
【0024】
微差圧センサ1bは、微小な圧力の変動を検出するセンサである。本実施の形態においては、微差圧センサ1bとして、低周波用のコンデンサマイクロフォンタイプのものを使用するが、これに限定されるものではなく、適切な分解能とダイナミックレンジとを有するものであればよい。本実施の形態において使用した低周波用のコンデンサマイクロフォンは、一般の音響用マイクロフォンが低周波領域に対して配慮されていないのに引き替え、受圧面の後方にチャンバーを設けることによって低周波領域の特性を大幅に向上させたものであり、圧力検出チューブ1a内の微小圧力変動を検出するのに好適なものである。また、このコンデンサマイクロフォンは、微小な差圧を計測するのに優れており、0.2Paの分解能と約50Paのダイナミックレンジとを有し、通常使用されるセラミックを利用した微差圧センサと比較して数倍の性能を持つものであり、生体信号が体表面に通して圧力検出チューブ1aに加えた微小な圧力を検出するのに好適なものであり、微小な体動を高感度に検出することができる。
【0025】
本実施の形態においては、一方が利用者の胸部の部位の生体信号を検出し、他方が利用者の臀部の部位を検出するように、2組の圧力検出チューブ1aが設けられており、利用者の就寝の姿勢にかかわらず生体信号を検出するように構成されている。なお、睡眠環境温度制御装置においては、胸部の部位又は臀部の部位の一方のみに圧力検出チューブ1aを配置する構成としてもよい。このような生体信号検出部1によって検出された生体信号は、信号増幅部2に供給される。睡眠環境温度制御装置は、このような無侵襲且つ無拘束で生体信号を検出する構成とすることにより、日常生活において容易に使用することができ、特に高齢者の使用に極めて好適である。
【0026】
信号増幅部2は、後の処理工程で処理できるように生体信号検出部1によって検出された信号を増幅し、さらに、明らかに異常なレベルの信号を除去する等して適切な信号整形処理を行う。この信号増幅部2によって増幅された生体信号の時系列データは、睡眠深度判定部3に供給される。
【0027】
睡眠深度判定部3は、信号増幅部2によって増幅された生体信号に基づいて、利用者の睡眠深度のうち、いわゆる第3のノンレム睡眠段階及び第4のノンレム睡眠段階(深いノンレム睡眠段階)を判定する。すなわち、睡眠深度には、覚醒段階、レム睡眠段階、第1のノンレム睡眠段階及び第2のノンレム睡眠段階(浅いノンレム睡眠段階)、並びに、第3のノンレム睡眠段階及び第4のノンレム睡眠段階(深いノンレム睡眠段階)の6段階の種別が存在するが、睡眠環境温度制御装置は、これらのうち深いノンレム睡眠段階のみを判定することによって睡眠環境温度を制御する。そして、睡眠深度判定部3は、生体信号の時系列データを出力し、図示しない表示装置に表示させたり、印刷装置によって印刷させたり、記憶装置にデータとして記憶させたりするとともに、判定した睡眠深度情報を温度制御部4に供給する。
【0028】
温度制御部4は、睡眠深度判定部3によって判定された睡眠深度に基づいて、制御対象装置5の図示しない電源をオン/オフ制御することにより、寝床内温度や室温等の睡眠環境温度を制御する。なお、制御対象装置5は、一般には、冬季であれば温熱敷布団や電気毛布等を具体例とする温度調整機能を有する寝具であり、夏季であればエアコンと扇風機の併用等を具体例とする温度調整機能を有する空調装置であるが、換言すれば、睡眠環境温度制御装置は、温度調整機能を有する装置であれば任意のものを適用することができる。寝具としては、温熱敷布団や電気毛布等の電気加熱方式のものの他、温度調整された流体を収容する温度調整マットや、温度調整された空気を寝床内に供給する空気供給手段を備えるもの等であってもよい。すなわち、温度制御部4は、睡眠深度判定部3によって判定された睡眠深度に基づいて、睡眠環境温度を制御する。
【0029】
このような睡眠環境温度制御装置は、以下の原理に基づいて睡眠深度に応じた睡眠環境温度制御を行う。
【0030】
図3に、利用者の脚部温度、掛け布団内側の温度(寝床内温度)及び室温の時系列データの例を示すとともに、
図4に、
図3の温度の時系列データに対応して計測した利用者の胸部体表面温度、脚部体表面温度及び深部体温の時系列データの例を示す。これらの図からわかるように、深いノンレム睡眠段階においては深部体温が低下するが、深いノンレム睡眠段階が継続すると、体表面からの熱放散によって寝床内温度が急激に上昇し、覚醒を招来する。
【0031】
睡眠環境温度制御装置は、このような睡眠途中の覚醒の発生を低減し、深いノンレム睡眠段階を持続させるような制御を行う。
【0032】
まず、睡眠環境温度制御装置においては、小さな体動であっても正確に検出するために、以下のような手法を採用する。睡眠環境温度制御装置においては、例えば0から1000の値をとる生体信号(信号増幅部2によって増幅された生体信号)を入力したときに、5秒以上連続する変動が5回以上継続した場合に、大きな体動が発生したものとして検出する。例えば、
図5においてS波形として示すような生体信号が得られた場合、5秒以上連続する変動が5回以上継続した期間を大きな体動が発生した期間として検出する。なお、信号増幅部2によって得られた生体信号は、人体から発する様々な振動が混ざり合った信号であり、その中に心拍信号や呼吸信号をはじめとして寝返りを示す体動信号等の様々な信号が含まれているが、睡眠環境温度制御装置においては、このような生体信号を加工することなくそのまま利用して体動の発生を検出する。また、睡眠環境温度制御装置においては、0から1000の値をとる生体信号を入力したときに、上限閾値を800且つ下限閾値を200とし、これらの閾値を超える連続する変動が2秒間で2回継続した場合に、1回の小さい体動が発生したものとして検出する。例えば、
図6に示すような生体信号が得られた場合、閾値を超える連続する変動が2秒間で2回継続した期間を小さい体動が発生した期間として検出する。
【0033】
そして、睡眠環境温度制御装置においては、このようにして検出される体動のうち小さい体動を除いた体動終了後300秒から500秒までの期間を浅いノンレム睡眠段階から深いノンレム睡眠段階への移行期間として定義し、例えば
図7に示すように、かかる体動がない期間が一定時間(例えば、501秒)以上継続する場合に、深いノンレム睡眠段階に到達したものと判定する。
【0034】
なお、この判定は、利用者が在床している場合にのみ行う。そのため、睡眠環境温度制御装置においては、在床及び離床の判定を以下のように行う。すなわち、睡眠環境温度制御装置においては、瞬時の離床を不用意に離床として判定しないようにするために、
図8に示すように、1秒ピッチの連続するサンプリング点Tn、Tn+1が30秒間連続して、
|(f(Tn)―f(Tn+1)|<15
である場合に離床と判定する。また、睡眠環境温度制御装置においては、瞬時の在床についても不用意に在床と判定しないようにするために、1秒ピッチの連続するサンプリング点Tn、Tn+1が30秒間連続して、
|(f(Tn)―f(Tn+1)|>30
である場合に在床と判定する。
【0035】
睡眠環境温度制御装置においては、このようにして深いノンレム睡眠段階を判定すると、以下のように制御対象装置5の制御を行う。なお、覚醒段階及び浅いノンレム睡眠段階は、深いノンレム睡眠段階及び深いノンレム睡眠段階への移行期間以外の期間を意味する。
【0036】
まず、冬季における制御の例として、電気毛布を制御対象装置5とした場合について説明する。深いノンレム睡眠段階においては、上述したように、深部体温が約1.5℃低下して体表面からの熱放散が多くなるのに起因して寝床内温度が上昇して不用意な覚醒を生じさせる。そのため、睡眠環境温度制御装置においては、制御対象装置5としての電気毛布の投入熱量を以下のように制御する。
【0037】
まず、睡眠環境温度制御装置においては、制御対象装置5としての電気毛布の電源をオンとして通電を開始する。そして、利用者の入床後、例えば40分間は、電気毛布の電源をオンとしたままとし、40分経過後に寝床内温度制御を行う。具体的には、睡眠環境温度制御装置においては、40分経過後からは常時、睡眠深度判定部3によって睡眠深度を判定し、その時点における睡眠深度に応じて、温度制御部4の制御のもとに電気毛布の電源のオン/オフ動作を行うことにより、以下のように1分間単位で投入熱量を変化させる。
覚醒段階及び浅いノンレム睡眠段階:100%(利用者の設定どおりの投入熱量)
深いノンレム睡眠段階への移行期間:50%(利用者の設定どおりの投入熱量の50%)
深いノンレム睡眠段階:30%(利用者の設定どおりの投入熱量の30%)
【0038】
このとき、睡眠環境温度制御装置においては、夜間排尿等の離床については、入床後40分間以内は覚醒段階であると扱い、40分経過後に離床したものとして扱う。睡眠環境温度制御装置においては、上述した処理によって離床を検出した場合には、電気毛布の電源を切断する一方で、40分経過後に在床を検出した場合には再度同様の制御を行う。
【0039】
なお、深いノンレム睡眠段階への移行期間に利用者の設定どおりの投入熱量の50%にまで低下させるのは、特許文献7に記載されたように誘導温度を設けることによって深いノンレム睡眠を促進するためである。
【0040】
睡眠環境温度制御装置においては、このような処理を行うことにより、寝床内温度を測定することなく、睡眠深度に応じて制御対象装置5の電源をオン/オフすることによって睡眠途中の覚醒の発生を低減することができ、深いノンレム睡眠段階を持続させることができる。
【0041】
つぎに、夏季における制御の例として、扇風機を制御対象装置5とした場合について説明する。夏季は、一般に掛け布団が薄いことから、寝床内温度制御よりもむしろ室温制御の最適化を図る。ここで、エアコンが設置されている室内の場合、エアコンの温度測定場所と寝具場所とが離れていることから、寝具場所の温度がエアコンの温度測定場所の温度よりも2~3℃程度高いのが通常である。そのため、利用者は、夜中に暑さのために覚醒しがちであることから、必要以上にエアコンの設定温度を低下させる傾向にある。かかる状況を回避するため、エアコンの温度を少し高めの温度(例えば、28℃)に設定しておき、扇風機の駆動を制御するのが望ましい。なお、扇風機は、風の向きを利用者に向けず、利用者よりも1m程度上方を向くように配置するのが望ましい。これは、特に深いノンレム睡眠段階において、温度範囲が広がり、暑さを感じることによって寝苦しくなるのを回避するために、扇風機によって室内の温度分布を低減するという理由に基づく。そして、睡眠環境温度制御装置においては、制御対象装置5としての扇風機の駆動を以下のように制御する。
【0042】
まず、睡眠環境温度制御装置においては、制御対象装置5としての扇風機の電源をオンとして駆動を開始する。なお、冬季の場合と同様に、夜間排尿等を含む離床時には扇風機を駆動させず、在床時のみ制御を行う。そして、睡眠環境温度制御装置においては、利用者の入床後、例えば40分間は、扇風機の電源をオンとしたままとし、40分経過後からは常時、睡眠深度判定部3によって睡眠深度を判定し、その時点における睡眠深度に応じて、温度制御部4の制御のもとに扇風機の電源のオン/オフ動作を行うことにより、室温の制御を行う。
覚醒段階及び浅いノンレム睡眠段階:10%(1分間あたり10%オン且つ90%オフ)
深いノンレム睡眠段階への移行期間:50%(1分間あたり50%オン且つ50%オフ)
深いノンレム睡眠段階:100%(常時オン)
【0043】
睡眠環境温度制御装置においては、このような処理を行うことにより、検出した生体信号を何ら加工することなく、また、寝床内温度や室温を測定することなく、睡眠深度に応じて制御対象装置5の電源をオン/オフすることによって睡眠途中の覚醒の発生を低減することができ、深いノンレム睡眠段階を持続させることができる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
【0045】
例えば、生体信号検出部1としては、上述した中空チューブを用いる代わりに、
図9に示すようなエアマット式の検出手段を用いてもよい。すなわち、
図9に示す生体信号検出部30は、内部に空気を封入したエアマット30aの一端にエアチューブ30bが接続され、さらに、このエアチューブ30bに微差圧センサ30cが接続されて構成される。なお、微差圧センサ30cは、中空チューブを用いた生体信号検出部1の場合において説明したものと同様のものを用いることができる。
【0046】
また、上述した実施の形態においては、体動などの判定に使用する生体信号の閾値や経過時間、睡眠深度に応じた制御対象装置5の駆動量などについて具体値を用いて説明したが、これらの具体値はあくまで一例であり、システムに依存して決まる生体信号の大きさや制御対象装置5の種別などに応じて適切な値に変更可能である。
【0047】
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1,30 生体信号検出部
1a 圧力検出チューブ
1b,30c 微差圧センサ
2 信号増幅部
3 睡眠深度判定部
4 温度制御部
5 制御対象装置
21 寝台
22 硬質シート
23 クッションシート
30a エアマット
30b エアチューブ