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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】衛生マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A41D13/11 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021103235
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2021-06-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521273961
【氏名又は名称】松浦 久美子
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松浦 久美子
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-183738(JP,A)
【文献】特開2013-074927(JP,A)
【文献】登録実用新案第3229972(JP,U)
【文献】特開2015-62450(JP,A)
【文献】登録実用新案第3226835(JP,U)
【文献】登録実用新案第3211334(JP,U)
【文献】特開2006-223792(JP,A)
【文献】特開2016-123737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の口および鼻を覆う布体と、前記布体の両側に取り付けられ前記装着者の耳に掛けられる一対の耳掛け部と、を有する衛生マスクであって、
前記耳掛け部は、曲げ方向の力に対して弾性変形および塑性変形する線材を内蔵する線材部と、少なくとも前記線材部の一方の端部と前記布体の上コーナー部との間を伸縮可能に接続する上側伸縮ひも部と、少なくとも前記線材部の他方の端部と前記布体の下コーナー部との間を伸縮可能に接続する下側伸縮ひも部と、を有し、
前記線材部の長さは、前記上側伸縮ひも部の前記上コーナー部に対する接続位置と、前記下側伸縮ひも部の前記下コーナー部に対する接続位置との間の長さの80~150%であり、
前記耳掛け部は、前記上側伸縮ひも部と前記下側伸縮ひも部とを繋ぐ中間ひも部をさらに有し、
前記上側伸縮ひも部と、前記下側伸縮ひも部と、前記中間ひも部とは、連続するひと繋ぎの伸縮ひも部で構成されており、
前記線材部は、前記線材部が内蔵する線材を被覆する被覆部を用いて形成されており前記線材部の一方の端部から他方の端部まで前記伸縮ひも部を前記線材部に沿って逸脱しない状態で挿通させる挿通孔を有し、
装着時において、前記上側伸縮ひも部および前記下側伸縮ひも部による前記布体側への引張力と釣り合って前記線材部が湾曲し、装着者の耳介の上下端部分と耳掛け部との間に隙間を形成する衛生マスク。
【請求項2】
装着者の口および鼻を覆う布体と、前記布体の両側に取り付けられ前記装着者の耳に掛けられる一対の耳掛け部と、を有する衛生マスクであって、
前記耳掛け部は、曲げ方向の力に対して弾性変形および塑性変形する線材と前記線材が内蔵されるように前記線材の全体を被覆する被覆部とを有する線材部と、少なくとも前記線材部の一方の端部と前記布体の上コーナー部との間を伸縮可能に接続する上側伸縮ひも部と、少なくとも前記線材部の他方の端部と前記布体の下コーナー部との間を伸縮可能に接続する下側伸縮ひも部と、を有し、
前記線材部の長さは、前記上側伸縮ひも部の前記上コーナー部に対する接続位置と、前記下側伸縮ひも部の前記下コーナー部に対する接続位置との間の長さの80~150%であり、
前記上側伸縮ひも部は、前記線材部の一方の端部と前記上コーナー部とに固定されており、前記下側伸縮ひも部は、前記線材部の他方の端部と前記下コーナー部とに固定されており、
装着時において、前記上側伸縮ひも部および前記下側伸縮ひも部による前記布体側への引張力と釣り合って前記線材部が湾曲し、装着者の耳介の上下端部分と耳掛け部との間に隙間を形成する衛生マスク。
【請求項3】
前記布体の上辺部には、曲げ方向の力に対して弾性変形および塑性変形する線材を有するノーズフィット部が形成されており、
前記ノーズフィット部が有する線材と、前記線材部が内蔵する線材とは、同じ材料を用いていることを特徴とする請求項1に記載の衛生マスク。
【請求項4】
前記線材部は、前記伸縮ひも部に沿って移動可能である請求項に記載の衛生マスク。
【請求項5】
前記布体は不織布で構成される布本体部を有し、
前記被覆部は、前記布本体部の不織布と同じ材料で構成される請求項に記載の衛生マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉アレルギーや感染症の予防、飛沫の飛散防止などのために装着される衛生マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
花粉アレルギーや感染症の予防などの観点から、マスクを装着する場面が増えている。特に、新型コロナウイルスなどの感染症の世界的な流行により、従来に比べてより長時間にわたって、マスクを装着したままの状態で、日常生活を送る必要性が生じている。
【0003】
衛生マスクとしては、幾つかの形態が提案されているが、装着者の耳に掛けて使用するものが広く普及している。このようなマスクの耳掛け紐は、ゴム紐や布片などの伸縮性の素材で構成されている。耳掛け紐の伸縮性による引張力が、衛生マスクにおける布体を、装着者の顔に密着させる力を生じる。
【0004】
このような耳掛け紐の引張力は、衛生マスクにおける布体と、装着者の鼻や口元との間に形成される隙間を小さくするために有効ではある。しかしながら、耳かけ紐が装着者の耳と接触する力は、耳掛け紐の引張力が強まることにより増大し、装着者に不快感や痛みを生じさせる問題があった。特に、マスクを長時間装着すると、たとえ耳掛け紐が装着者の耳を圧迫する力が大きくない場合であっても、不快感や痛みが生じやすくなる傾向にあり、問題となっている。
【0005】
このようなマスク装着時に生じる耳の不快感や痛みを軽減するアイデアとして、耳掛け紐を太くして接触面積を広げたり、耳掛け紐を柔軟な素材でカバーしたりするものが提案されている(特許文献1等参照)。しかしながら、従来の衛生マスクの耳掛け紐では、耳介の上下の付け根部分のような敏感な部分を圧迫する場合があり、不快感や痛みを十分に解消できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-158905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、長時間装着しても耳が痛くなりにくい耳掛け紐を有する衛生マスクを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る衛生マスクは、
装着者の口および鼻を覆う布体と、前記布体の両側に取り付けられ前記装着者の耳に掛けられる一対の耳掛け部と、を有する衛生マスクであって、
前記耳掛け部は、曲げ方向の力に対して弾性変形および塑性変形する線材を内蔵する線材部と、少なくとも前記線材部の一方の端部と前記布体の上コーナー部との間を伸縮可能に接続する上側伸縮ひも部と、少なくとも前記線材部の他方の端部と前記布体の下コーナー部との間を伸縮可能に接続する下側伸縮ひも部と、を有し、
前記線材部の長さは、前記上側伸縮ひも部の前記上コーナー部に対する接続位置と、前記下側伸縮ひも部の前記下コーナー部に対する接続位置との間の長さの80~150%である。
【0009】
本発明に係る衛生マスクは、耳掛け部に、曲げ方向の力に対して弾性変形および組成変形する線材を内蔵する線材部を有し、その線材部の長さは、上側伸縮ひも部と下側伸縮ひも部の接続位置との間の長さの80~150%である。本願発明に係る衛生マスクでは、曲げ方向の力に対して弾性変形および組成変形する線材が、線材部において芯または骨の役割を果たし、上下伸縮ひも部や下側伸縮ひも部などの引張力とバランスして変形することにより、装着者の耳介の上下端部分と、耳掛け紐との間にすき間を形成する。
【0010】
耳介の上下端部分は、耳介の中でも比較的柔らかい部分であって敏感であるが、この部分と耳掛け部の間に隙間を形成し、耳掛け部が耳介の敏感な部分に接触することを防止し、長時間装着しても耳が痛くなりにくい耳掛け紐を実現する。なお、線材部は、耳介の上下方向中央付近に対して接触するが、耳介におけるこの部分には軟骨があり、耳介の中でも比較的硬く、耳介の上下端部分ほど敏感ではないと考えられる。このため、本発明に係る衛生マスクは、しっかりと耳に掛けられた状態で長時間装着しても、耳が痛くなりにくい。
【0011】
また、たとえば、前記布体の上辺部には、曲げ方向の力に対して弾性変形および塑性変形する線材を有するノーズフィット部が形成されていてもよく、
前記ノーズフィット部が有する線材と、前記線材部が内蔵する線材とは、同じ材質であってもよい。
【0012】
このような衛生マスクは、ノーズフィット部を有することにより、布体の上辺部を、装着者の顔の鼻梁による起伏に沿って塑性変形させることができ、布体と装着者の顔との間の隙間を小さくすることができる。また、耳掛け部における線材部が内蔵する線材と、ノーズフィット部が有する線材とが同じ材質であることにより、布体の上辺と線材部とのしなやかさおよび腰の強さのバランスを好適に保つことができるとともに、材料を調達しやすくしてコストを抑制できる。
【0013】
また、たとえば、前記耳掛け部は、前記上側伸縮ひも部と前記下側伸縮ひも部とを繋ぐ中間ひも部をさらに有してもよく
前記上側伸縮ひも部と、前記下側伸縮ひも部と、前記中間ひも部とは、連続するひと繋ぎの伸縮ひも部で構成されていてもよく、
前記線材部は、前記伸縮ひも部を挿通する挿通孔を有してもよい。
【0014】
このような衛生マスクの耳掛け部は、伸縮ひも部の単位長さ当りの伸縮量を低減することができるため、耐久性が良好である。また、伸縮ひも部を通していることにより、線材部の外径が大きくなり、耳への接触圧を軽減できる。
【0015】
また、たとえば、前記線材部は、前記伸縮ひも部に沿って移動可能であってもよい。
【0016】
このような衛生マスクは、耳掛け部における線材部の位置を調整することができるため、耳掛け紐が装着者の耳の敏感な部分に触れないように、線材部の位置を調整することができる。
【0017】
前記布体は不織布で構成される布本体部を有してもよく、
前記線材部は、前記線材部が内蔵する線材を被覆しており前記布本体部の不織布と同じ材質の不織布で構成される被覆部を有してもよい。
【0018】
線材部が不織布で構成される被覆部を有することにより、線材部と耳介との接触部分における接触圧を軽減し、マスクの装着感をより向上させることができる。また、布本体部と被覆部とを同じ材質の不織布とすることにより、廃棄物の分別の手間を軽減するとともに、材料を調達しやすくしてコストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る衛生マスクの正面図である。
図2図2は、図1に示す衛生マスクの背面図である。
図3図3は、図1および図2に示す衛生マスクの使用状態を示す概念図である。
図4図4は、図1に示すIV―IV線に沿う断面図である。
図5図6は、本発明の第2実施形態に係る衛生マスクの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る衛生マスク10を、装着者の顔に面する側とは反対側から見た正面図である。図1に示すように、衛生マスク10は、装着者の口および鼻を覆う布体20と、布体20の両側に取り付けられる一対の耳掛け部30、35とを有する。図3に示すように、衛生マスク10は、耳掛け部30、35を、それぞれ装着者の左右の耳に掛けることにより、装着される。
【0021】
衛生マスク10は、花粉アレルギーや感染症の予防、飛沫の飛散防止などのために、家庭や職場など、さまざまなシチュエーションで使用される。衛生マスク10としては、家庭用のみには限定されず、病院などで医療用に用いられるものであってもよい。
【0022】
図1に示すように、布体20は、不織布で構成される布本体部20aと、布体20の上辺部25に形成されるノーズフィット部26とを有する。布本体部20aは、略矩形の外観形状を有する。布体20の中央部付近には、上辺部25に平行なプリーツ28が複数形成されている。図3に示すように、衛生マスク10を装着した際、プリーツ28が広がることにより、布体20が装着者の顔を立体的に覆うことができる。
【0023】
ただし、衛生マスク10における布本体部20aの材質は、不織布のみには限定されず、ウレタンなどの発泡性樹脂や、綿糸などによるガーゼなど、不織布以外の材質であってもよい。また、布本体部20aの形状も、プリーツ28を有する矩形形状のもののみには限定されず、複数の布片を繋ぎ合わせて立体形状を構成するものであってもよい。
【0024】
布本体部20aのノーズフィット部26は、曲げ方向の力に対して弾性変形および塑性変形する線材を有する。ノーズフィット部26が有する線材の材質としては、たとえば、アルミニウムや鉄またはこれらを含む合金のような金属や、形状保持プラスチック(たとえば登録商標「テクノロート」として製品化されているプラスチック材料)などが挙げられる。ノーズフィット部26は、弾性により布本体部20aの上辺部25に腰の強さを与えるとともに、塑性により人の手の力で形状を変形させることができ、かつ、力が除去された後も変形した形状を保持できるため、布体20の上辺部25を、装着者の鼻梁の形状にフィットするように変形させることができる。
【0025】
図1に示すように、衛生マスク10における耳掛け部30、35は、布体20の左右の縦辺に取り付けられている。耳掛け部30と耳掛け部35は、衛生マスク10に略対称に取り付けられている。
【0026】
耳掛け部30は、線材部32と、伸縮ひも部34とを有する。伸縮ひも部34は、上側伸縮ひも部34aと、中間ひも部34cと、下側伸縮ひも部34bとで構成される。上側伸縮ひも部34aと、下側伸縮ひも部34bと、中間ひも部34cとは、連続するひと繋ぎのひもとなっている。
【0027】
図1に示すように、上側伸縮ひも部34aは、少なくとも線材部32の一方の端部32aと布体20の上コーナー部21との間を伸縮可能に接続する。また、下側伸縮ひも部34bは、少なくとも線材部32の他方の端部32bと布体20の下コーナー部23との間を伸縮可能に接続する。中間ひも部34cは、線材部32における挿通孔32cの内部に収容されており、上側伸縮ひも部34aと、下側伸縮ひも部34bとを繋いでいる。
【0028】
図1に示す衛生マスク10では、伸縮ひも部34は、上コーナー部21と下コーナー部23とに接続するひと繋ぎのゴム紐で構成されているが、耳掛け部30としては、このような伸縮ひも部34を有するもののみには限定されない。たとえば、図5に示す衛生マスク110のように、上側伸縮ひも部134aが線材部32の一方の端部132aに固定されており、下側伸縮ひも部134bが線材部の他方の端部132bに固定されており、図1に示す中間ひも部34cに相当する構造がない耳掛け部130を、耳掛け部30に代えて用いることも可能である。
【0029】
また、上側伸縮ひも部34aおよび下側伸縮ひも部34bを含む伸縮ひも部34としては、天然ゴム糸やポリウレタン糸などの弾性糸が入った繊維ひもであるゴム紐のほか、ひも状にしたポリウレタンなどの樹脂や、コイル状の弾性ひもなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0030】
図1に示す耳掛け部30の線材部32は、曲げ方向の力に対して弾性変形および塑性変形する線材32eを内蔵する。線材部32の断面図である図4に示すように、線材部32は、平板状の線材32eと、線材部32が内蔵する線材32eを被覆する被覆部32dとを有する。
【0031】
線材部32が内蔵する線材32eの材質は、線材32eを曲げる曲げ方向の力に対して弾性変形および塑性変形するものであれば特に限定されず、たとえば、アルミニウムや鉄またはこれらを含む合金のような金属や、形状保持プラスチック(たとえば登録商標「テクノロート」として製品化されているプラスチック材料)などが挙げられる。
【0032】
線材32eは、耳掛け部30の連続する方向に沿って設けられている。線材32eは、弾性により線材部32に腰の強さを与える。そのため、衛生マスク10の装着時において、線材部32は、上側伸縮ひも部38aおよび下側伸縮ひも部38bなどによる布体20側への引張力と釣り合って湾曲する(図3参照)。
【0033】
また、線材部32は、線材32eの塑性により人の手の力で形状を変形させることができ、かつ、力が除去された後も変形した形状を保持できる。そのため、衛生マスク10の装着者は、線材部32をノーズフィット部26と同様に塑性変形させ、装着時における線材部32の一方の端部32aおよび他方の端部32bの位置を、付け心地が最適となる位置に調整することが可能である。また、衛生マスク10の装着者は、線材部32を塑性変形させることにより、耳との引っ掛かりを調整することができる。
【0034】
線材部32が内蔵する線材32eと、布体20におけるノーズフィット部26が有する線材32eとは、同じ材質であることが好ましい。これにより、布体20の上辺部25と線材部32とのしなやかさおよび腰の強さのバランスを好適に保つことができるとともに、材料を調達しやすくして、衛生マスク10の製造コストを抑制できる。なお、衛生マスク10の製造工程をより合理化するために、ノーズフィット部26が有する線材と、線材部32が内蔵する線材32eは、同材質であるだけでなく、長さおよび太さを含む形状についても、共通とすることができる。
【0035】
図2は、衛生マスク10を、装着者の顔に面する側から見た背面図である。図2に示すように、線材部32の長さL1は、上側伸縮ひも部38aの上コーナー部21に対する接続位置21aと、下側伸縮ひも部34bの下コーナー部23に対する接続位置23aとの間の長さL2の80~150%であることが好ましく、100~150%であることがさらに好ましい。
【0036】
線材部32の長さL1を、接続位置21a、23a間の長さL2に対して所定の比率以上とすることにより、装着者の耳介における繊細な部分に、耳掛け部30が接触することを好適に防止できる。また、線材部32の長さL1を、接続位置21a、23a間の長さL2に対して所定の比率以下とすることにより、耳掛け部30の着脱時に、耳掛け部30が頭髪などに引っ掛かりやすくなることを防止したり、衛生マスク10の装着時に耳掛け部30が目立ちすぎることを防止したりすることができる。なお、線材部32の長さL1および接続位置21a、23a間の長さL2は、布体20に外力が加えられていない状態を基準とする。
【0037】
図1および図4に示すように、線材部32の線材32eは、布本体部20aを構成する不織布と同じ材質の不織布で構成される被覆部32dにより被覆されていてもよい。線材部32が不織布による被覆部32dを有することにより、線材部32と装着者の耳介との接触部分における接触圧を軽減し、衛生マスク10の装着感をより向上させることができる。また、装着者の耳付近の肌に触れる可能性の高い線材部32の表面の材質を、顔に触れる布体20と共通の不織布とすることにより、線材部32が肌に接触することによる肌荒れの防止も、図ることができる。
【0038】
また、図1図2および図4に示すように、線材部32は、伸縮ひも部34を挿通する挿通孔32cを有しており、線材部32は、伸縮ひも部34に沿って移動可能である。このような衛生マスク10は、耳掛け部30における線材部32の位置を調整することができるため、耳掛け部30が装着者の耳の敏感な部分に触れないように、線材部32の位置を調整することができる。挿通孔32cを有する線材部32は、たとえば被覆部32bを構成する不織布を筒状に接着または縫い合わせることにより形成することができるが、線材部32に製造方法はこれのみには限定されない。
【0039】
図1および図2に示す耳掛け部35は、線材部36と、上側伸縮ひも部38aおよび下側伸縮ひも部38bを含む伸縮ひも部38と、を有する。耳掛け部35は、上側伸縮ひも部38aが布体20の上コーナー部22に接続しており、下側伸縮ひも部38bが布体20の下コーナー部24に接続しており、布体20に対する取付位置が、耳掛け部30に対して対称である。
【0040】
しかし、耳掛け部35は、布体20に対する取付位置が異なることを除き、耳掛け部30と同様の構成であるため、耳掛け部35の詳細については、説明を省略する。図3は、衛生マスク10を装着した装着者を、側方からみた概念図である。図3に示すように、衛生マスク10は、耳掛け部30、35を耳介92に掛けて装着される。
【0041】
図3に示すように、衛生マスク10では、装着時において、上側伸縮ひも部38aおよび下側伸縮ひも部38bなどによる布体20側への引張力と釣り合って、線材部32が湾曲する。この際、図3に示すように、線材部32に内蔵された線材32e(図4参照)により、線材部32には腰がある(曲げ方向の力に対して抗する剛性がある)ため、装着者の耳介92の上下端部分と耳掛け部35との間には、隙間82が形成される。
【0042】
耳介の付け根の上下端部分は、耳介の中でも比較的柔らかい部分であって敏感であり肌荒れも生じやすく、長時間に渡る異物の接触により痛みが生じやすい部分である。衛生マスク10では、図3に示すように、耳介92の上下端部分と耳掛け部35との間に隙間82を形成し、耳掛け部35が耳介92の敏感な部分に接触することを防止することにより、長時間装着しても耳が痛くなりにくい。
【0043】
また、図3に示すように、線材部32が適度に湾曲することにより、線材部32が耳介92の上下方向中央部付近に適切にホールドされて、線材部32が下方にずれることが防止され、耳介92と耳掛け部35との間にできる隙間82が、衛生マスク10の装着中、常に維持される。なお、線材部32は、耳介92の上下方向中央付近に対して接触するが、耳介92におけるこの部分には軟骨があり、耳介の中でも比較的硬く、耳介の上下端部分ほど敏感ではないと考えられる。したがって、図3に示す衛生マスク10は、しっかりと耳に掛けられた状態で長時間装着しても、耳が痛くなりにくい。
【0044】
第2実施形態
図5は、本発明の第2実施形態に係る衛生マスク110を示す正面図である。衛生マスク110は、布体20については図1に示す衛生マスク10と同様であるが、耳掛け部130、135の構造が、衛生マスク10の耳掛け部30、35とは異なる。衛生マスク110の説明では、衛生マスク10との相違点のみを説明し、共通点については、衛生マスク10と同様の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
図5に示すように、衛生マスク110の耳掛け部130は、上側伸縮ひも部134aが線材部132の一方の端部132aと上コーナー部21とに固定されており、下側伸縮ひも部134bが線材部132の他方の端部132bと下コーナー部23とに固定されている。線材部132は、図1に示す線材部32と同様に、線材32eと被覆部32dとを有するが、線材部132の内部に挿通孔32cに相当する構造は形成されていない。
【0046】
耳掛け部135についても、耳掛け部130と同様の構造を有する。このような耳掛け部130、135は、図1に示す耳掛け部30、35に比べて、伸縮ひもの合計長さが短くなるものの、線材部132の構造が単純であり、製造が容易である。また、衛生マスク110は、衛生マスク10との共通部分については、衛生マスク10と同様の効果を奏する。
【0047】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明してきたが、本発明はこれらの実施形態のみには限定されず、他の実施形態や変形例を数多く含むことは言うまでもない。たとえば、実施形態では、プリーツ型の布体20を有する衛生マスク10、110を例に挙げて説明したが、他の構造の布体を有するマスクの耳掛け部に、上述した線材部を有する耳掛け部の構造を適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
10、110…衛生マスク
20…布体
20a…布本体部
21、22…上コーナー部
21a、23a…接続位置
23、24…下コーナー部
25…上辺部
26…ノーズフィット部
28…プリーツ
30、35、130、135…耳掛け部
32、36、132…線材部
32a、132a…一方の端部
32b、132b…他方の端部
32c…挿通孔
32d…被覆部
32e…線材
34、38…伸縮ひも部
34a、38a、134a…上側伸縮ひも部
34b、38b、134b…下側伸縮ひも部
34c…中間ひも部
82…隙間
92…耳介
【要約】
【課題】長時間装着しても耳が痛くなりにくい耳掛け紐を有する衛生マスクを提供する。
【解決手段】装着者の口および鼻を覆う布体と、前記布体の両側に取り付けられ前記装着者の耳に掛けられる一対の耳掛け部と、を有する衛生マスクであって、前記耳掛け部は、曲げ方向の力に対して弾性変形および塑性変形する線材を内蔵する線材部と、少なくとも前記線材部の一方の端部と前記布体の上コーナー部との間を伸縮可能に接続する上側伸縮ひも部と、少なくとも前記線材部の他方の端部と前記布体の下コーナー部との間を伸縮可能に接続する下側伸縮ひも部と、を有し、前記線材部の長さは、前記上側伸縮ひも部の前記上コーナー部に対する接続位置と、前記下側伸縮ひも部の前記下コーナー部に対する接続位置との間の長さの80~150%である衛生マスク。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5