(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】電流測定装置、断線検出装置および電流測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20220629BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20220629BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G01R31/54
G01R19/00 A
H05B3/00 310C
(21)【出願番号】P 2020557453
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2018043730
(87)【国際公開番号】W WO2020110221
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000250317
【氏名又は名称】理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】木村 康二
(72)【発明者】
【氏名】今宮 賢典
(72)【発明者】
【氏名】松倉 孝典
(72)【発明者】
【氏名】大竹 良範
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓未
(72)【発明者】
【氏名】今井 亮佑
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-026091(JP,A)
【文献】特開昭57-050781(JP,A)
【文献】特開平11-227032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/54
G01R 19/00
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の負荷のそれぞれに対する電源供給路にそれぞれ設けられた電流測定器からの電流測定信号を切り替えて出力する電流測定信号選択出力部と、
前記複数の負荷のそれぞれに対する電源供給の出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信し、当該出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信している期間が所定時間以上継続している負荷を安定状態負荷とする安定状態判定部と、
前記安定状態負荷と判別された負荷であって且つ電流値が未測定である測定可能未測定負荷に対応する電流測定信号を、前記電流測定信号選択出力部から受けて電流を測定し、当該電流測定した負荷を測定済みにする電流測定部と、を備え
、
前記負荷に優先順位情報が対応付けられており、前記測定可能未測定負荷が複数あった場合には、前記優先順位情報に基づく優先度が最も高い負荷の電流測定を行うことを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
複数の負荷のそれぞれに対する電源供給路にそれぞれ設けられた電流測定器からの電流測定信号を切り替えて出力する電流測定信号選択出力部と、
前記複数の負荷のそれぞれに対する電源供給の出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信し、当該出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信している期間が所定時間以上継続している負荷を安定状態負荷とする安定状態判定部と、
前記安定状態負荷と判別された負荷であって且つ電流値が未測定である測定可能未測定負荷に対応する電流測定信号を、前記電流測定信号選択出力部から受けて電流を測定し、当該電流測定した負荷を測定済みにする電流測定部と、を備え、
前記出力オン信号が所定時間以上継続した安定状態負荷であって且つ電流値が未測定であるオン測定可能未測定負荷と、前記出力オフ信号が所定時間以上継続した安定状態負荷であって且つ電流値が未測定であるオフ測定可能未測定負荷が同時にあった場合、前記オン測定可能未測定負荷の電流測定を優先して行うことを特徴とす
る電流測定装置。
【請求項3】
複数の負荷のそれぞれに対する電源供給路にそれぞれ設けられた電流測定器からの電流測定信号を切り替えて出力する電流測定信号選択出力部と、
前記複数の負荷のそれぞれに対する電源供給の出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信し、当該出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信している期間が所定時間以上継続している負荷を安定状態負荷とする安定状態判定部と、
前記安定状態負荷と判別された負荷であって且つ電流値が未測定である測定可能未測定負荷に対応する電流測定信号を、前記電流測定信号選択出力部から受けて電流を測定し、当該電流測定した負荷を測定済みにする電流測定部と、を備え、
前記測定可能未測定負荷がなく、前記安定状態負荷と判別された負荷であって電流値が測定済みである測定可能測定済負荷がある場合には、当該測定可能測定済負荷の電流測定を行うことを特徴とす
る電流測定装置。
【請求項4】
前記測定可能測定済負荷の電流測定中に、前記測定可能未測定負荷が生じた場合には、前記測定可能測定済負荷の電流測定を中止し、前記測定可能未測定負荷の電流測定を行うことを特徴とする請求項
3に記載の電流測定装置。
【請求項5】
前記複数の負荷の全ての電流値が測定済みとなった場合には、全ての負荷を未測定とすることを特徴とする請求項1から
4の何れかに記載の電流測定装置。
【請求項6】
所定期間の経過後に、全ての負荷を未測定とすることを特徴とする請求項1から
5の何れかに記載の電流測定装置。
【請求項7】
複数の負荷のそれぞれに対する電源供給路にそれぞれ設けられた電流測定器からの電流測定信号を切り替えて出力する電流測定信号選択出力部と、
前記複数の負荷のそれぞれに対する電源供給の出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信し、当該出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信している期間が所定時間以上継続している負荷を安定状態負荷とする安定状態判定部と、
前記安定状態負荷と判別された負荷であって且つ電流値が未測定である測定可能未測定負荷に対応する電流測定信号を、前記電流測定信号選択出力部から受けて電流を測定し、当該電流測定した負荷を測定済みにする電流測定部と、を備え、
信号回路のLOWレベル若しくはHIGHレベルにおけるA/Dカウント値を取り込む内部基準値取込部を備え、
前記安定状態負荷と判別された負荷が無い場合には、前記内部基準値取込部による取り込み処理を行うことを特徴とす
る電流測定装置。
【請求項8】
前記内部基準値取込部による取り込み処理が行われた場合には、内部基準値を取込済みとし、全ての負荷の電流値が測定済みであり且つ内部基準値が取込済みである場合に、全ての負荷を未測定とすると共に、内部基準値を未取込とすることを特徴とする請求項
7に記載の電流測定装置。
【請求項9】
請求項1から
8の何れかに記載の電流測定装置を備える断線検出装置。
【請求項10】
優先順位情報が対応付けられた複数の負荷のそれぞれに対する電源供給の出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信し、当該出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信している期間が所定時間以上継続している負荷を安定状態負荷とするステップと、
前記安定状態負荷と判別された負荷であって且つ電流値が未測定である
測定可能未測定負荷の電流を測定し、当該電流測定した負荷を測定済みにするステップと、
前記測定可能未測定負荷が複数あった場合には、前記優先順位情報に基づく優先度が最も高い負荷の電流測定を行うステップと、を備えることを特徴とする電流測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の負荷への電源供給路における電流を測定するための電流測定装置、当該電流測定装置を備えた断線検出装置、および電流測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電気、電子回路においては、その処理動作において所定箇所の電流を測定することが行われており、そのための電流測定回路を備えている。
電流測定の目的の一例として、負荷への電源供給路における断線若しくは短絡を検知することが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平04-26091号公報
【文献】特開2001-255945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2で例示されるように、複数の負荷(ヒータ)を有する装置において、それぞれの負荷の電源供給路における断線若しくは短絡の検知を個別に行いたい場合がある。このような装置において、特許文献1では、断線を検知するための構成を1つに集約している。即ち、特許文献1の
図1や
図2等に示されるように、複数の電流検出手段104(ヒータ電流検出回路)からの入力を切り替えてヒータ断熱検出手段105(制御手段41)に入力することで、断線を検知するための構成をヒータ断熱検出手段105(制御手段41)に集約している。このように断線を検知するための構成を1つに集約することで、低コスト化や省スペース化が図られる。
特許文献1の技術では、“ヒータ電流測定条件の整ったものから、ヒータ操作手段102で操作中のヒータ手段101の検出信号を取り込み、所定の基準値よりも低いときには当該ヒータ手段101へのヒータ回路が断線していることを検出する(3項左上欄)”ものである。ここで、特許文献1における“ヒータ電流測定条件の整ったもの”は、出力ON/OFFの期間がわかっていることを前提にして判別されるものである(5項左上欄)。即ち、複数の電流検出手段104(ヒータ電流検出回路)からの入力を切り替える処理や、ヒータ電流測定の処理を行う主体(マイコン等)に対して、出力ON/OFFの期間の情報が入力されている必要があるが、このような制約は、装置の設計の自由度を下げる一面がある。
例えば、装置全体の設計を考える上で、複数の電流検出手段からの入力を切り替えて、各負荷の電流測定の処理を行うための主体(マイコン等)に対して出力ON/OFFの期間の情報を入力させることが効率的ではない場合もあり、そのような場合には、従来の技術では対応できないものであった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、複数の負荷のそれぞれに対する電源供給路におけるそれぞれの電流を測定する電流測定装置であって、従来にはない方式による電流測定を行う電流測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
複数の負荷のそれぞれに対する電源供給路にそれぞれ設けられた電流測定器からの電流測定信号を切り替えて出力する電流測定信号選択出力部と、前記複数の負荷のそれぞれに対する電源供給の出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信し、当該出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信している期間が所定時間以上継続している負荷を安定状態負荷とする安定状態判定部と、前記安定状態負荷と判別された負荷であって且つ電流値が未測定である測定可能未測定負荷に対応する電流測定信号を、前記電流測定信号選択出力部から受けて電流を測定し、当該電流測定した負荷を測定済みにする電流測定部と、を備えることを特徴とする電流測定装置。
【0007】
(構成2)
前記負荷に優先順位情報が対応付けられており、前記測定可能未測定負荷が複数あった場合には、前記優先順位情報に基づく優先度が最も高い負荷の電流測定を行うことを特徴とする構成1に記載の電流測定装置。
【0008】
(構成3)
前記出力オン信号が所定時間以上継続した安定状態負荷であって且つ電流値が未測定であるオン測定可能未測定負荷と、前記出力オフ信号が所定時間以上継続した安定状態負荷であって且つ電流値が未測定であるオフ測定可能未測定負荷が同時にあった場合、前記オン測定可能未測定負荷の電流測定を優先して行うことを特徴とする構成1又は2に記載の電流測定装置。
【0009】
(構成4)
前記測定可能未測定負荷がなく、前記安定状態負荷と判別された負荷であって電流値が測定済みである測定可能測定済負荷がある場合には、当該測定可能測定済負荷の電流測定を行うことを特徴とする構成1から3の何れかに記載の電流測定装置。
【0010】
(構成5)
前記測定可能測定済負荷の電流測定中に、前記測定可能未測定負荷が生じた場合には、前記測定可能測定済負荷の電流測定を中止し、前記測定可能未測定負荷の電流測定を行うことを特徴とする構成4に記載の電流測定装置。
【0011】
(構成6)
前記複数の負荷の全ての電流値が測定済みとなった場合には、全ての負荷を未測定とすることを特徴とする構成1から5の何れかに記載の電流測定装置。
【0012】
(構成7)
所定期間の経過後に、全ての負荷を未測定とすることを特徴とする構成1から6の何れかに記載の電流測定装置。
【0013】
(構成8)
信号回路のLOWレベル若しくはHIGHレベルにおけるA/Dカウント値を取り込む内部基準値取込部を備え、
前記安定状態負荷と判別された負荷が無い場合には、前記内部基準値取込部による取り込み処理を行うことを特徴とする構成1から7の何れかに記載の電流測定装置。
【0014】
(構成9)
前記内部基準値取込部による取り込み処理が行われた場合には、内部基準値を取込済みとし、全ての負荷の電流値が測定済みであり且つ内部基準値が取込済みである場合に、全ての負荷を未測定とすると共に、内部基準値を未取込とすることを特徴とする構成8に記載の電流測定装置。
【0015】
(構成10)
構成1から9の何れかに記載の電流測定装置を備える断線検出装置。
【0016】
(構成11)
複数の負荷のそれぞれに対する電源供給の出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信し、当該出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信している期間が所定時間以上継続している負荷を安定状態負荷とするステップと、前記安定状態負荷と判別された負荷であって且つ電流値が未測定である負荷の電流を測定し、当該電流測定した負荷を測定済みにするステップと、を備えることを特徴とする電流測定方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電流測定装置では、出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信している期間が所定時間以上継続している負荷を安定状態と判断し、安定状態となった負荷であって未測定の負荷から電流の測定を行うようにしているため、出力オン/オフの期間の情報が無くても処理をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る実施形態の電流測定装置を含むシステムの構成の概略を示すブロック図
【
図2】実施形態の電流測定装置の処理動作の概略を示すフローチャート
【
図3】実施形態の電流測定装置の処理動作の概略を示すフローチャート
【
図4】実施形態の電流測定装置の処理動作の概略を示すフローチャート
【
図5】実施形態の電流測定装置の処理動作の概略を示すフローチャート
【
図6】実施形態の電流測定装置の処理動作の概略を示すフローチャート
【
図7】実施形態の電流測定装置の処理動作の概略を示すフローチャート
【
図8】実施形態の電流測定装置の処理動作の概略を示すフローチャート
【
図9】実施形態の電流測定装置の処理動作の概略を示すフローチャート
【
図10】実施形態の電流測定装置の動作を説明するためのタイミング図
【
図11】実施形態の電流測定装置の動作を説明するためのタイミング図
【
図12】実施形態の電流測定装置の動作を説明するためのタイミング図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0020】
図1は、本発明に係る実施形態の電流測定装置を含むシステムの構成の概略を示すブロック図である。
当該システムは、複数の負荷(ヒータ)を有する装置に対し、複数のヒータ6を制御対象としてその温度制御を行うものである。なお
図1では簡単化のために負荷(ヒータ)への電力供給回路部分の1つのみを描いているが、点線で囲まれた部分が複数(本実施形態では16チャンネル)設けられているものである。
図1に示されるように、負荷であるヒータ6とこれに対する電力供給を行う交流電源5の電源供給路上に、電力供給のオン/オフの切り替えを行うスイッチング素子(本実施形態ではソリッドステートリレー(SSR))21と、電流測定器(本実施形態ではカレントトランス(CT))22とが設けられている。
図1のシステムは、時間比例制御に基づいて上記スイッチング素子(SSR)21のオン/オフ制御を行うことにより、ヒータ6へ電力供給を制御することで温度制御を行うものである。
図1のシステムでは、その大まかな構成として、SSR21の制御等を行う出力制御器1と、前記したSSR21やCT22が搭載された出力器2と、PID等のフィードバック制御によりSSR21のオン/オフ制御を行う制御信号の演算等を行う温度制御器3と、上位装置との通信等を行う通信器4とを備えている。
【0021】
出力器2に搭載されるSSR21やCT22は、前述のごとく16チャンネル分設けられている。出力制御器1に搭載されているマイコン11には各SSR21が16チャンネル分の配線で接続されている。一方、各CT22は、電流測定信号選択出力部(本実施形態ではマルチプレクサ(MUX))12と接続され、MUX12とマイコン11が接続されることにより、マイコン11からの制御によってMUX12が切り替えられ、所望のチャンネルのCT22からの信号がマイコン11に入力される構成となっている。
出力器2には、内部基準値取込部23が備えられる。内部基準値取込部23は、出力器2の信号回路のLOWレベル若しくはHIGHレベルにおけるA/Dカウント値を取り込むものであり、当該A/Dカウント値に基づいて、各信号が較正されるものである。
温度制御器3のマイコン31では、ヒータ6によって温度制御される制御対象の近傍に設けられた温度センサ7によって得られる温度情報(PV)と、通信器4のマイコン41を介して得られる目標温度情報(SV)に基づいて、操作量(MV)を算出し、これに基づく出力オン信号、出力オフ信号を算出し、これを出力制御器1のマイコン11に対して出力する処理が行われる。また、温度制御器3のマイコン31では、出力制御器1のマイコン11から得られる電流値情報(各CT22からの信号に基づく)に基づいて、断線警報処理や短絡(溶着)警報処理等も行われる。
なお、各所での各々の説明を省略するが、アナログ信号(CT22や温度センサ7等からの信号)はA/D変換された上で各マイコンに入力されるものである。
【0022】
本発明は、主に、複数の負荷に流れる電流を計測する部分に関するものであり、本実施形態においては、主に出力制御器1において実装されるものである。電流計測という機能に着目した場合、出力制御器1は、電流測定装置として機能するものである。
出力制御器1に備えられるマイコン11は、複数の負荷(ヒータ6)のそれぞれに対する電源供給の出力オン信号若しくは出力オフ信号を温度制御器3のマイコン31から受信し、当該出力オン信号若しくは出力オフ信号を受信している期間が所定時間以上継続しているヒータ6を安定状態負荷として判別する機能と、当該安定状態負荷と判別されたヒータ6であって且つ電流値測定フラグが未測定である測定可能未測定負荷に対応する電流測定信号を、MUX12から受けて電流を測定し、当該電流測定したヒータ6に対応する電流値測定フラグを測定済みにする機能を有する。即ち、マイコン11は、電流測定部と、安定状態判定部としての機能を有する。
【0023】
次に、上記構成の
図1のシステムにおける、本発明に関する処理動作部分について、
図2~9のフローチャートと、
図10~12のタイミング図を参照しつつ説明する。下記説明では処理主体を省略して記載しているが、下記処理は出力制御器1のマイコン11によって実行されるものである。
【0024】
図2~4は、各負荷(ヒータ6)が、安定状態負荷であるか否かを判別する処理の一例を示したフローチャートであり、
図3、4の処理は、それぞれ
図2のステップ207、208で実行される処理である。
“安定状態負荷”とは、本実施形態のごとく、電流測定を行う機器(マイコン11)において、単に出力オン信号若しくは出力オフ信号が入力されるだけであり、出力オン/オフの期間の情報が無い場合、即ち、電流測定を行う機器(マイコン11)には出力オン若しくはオフが何時から何時まで続くのかの情報がない場合において、出力信号が一定期間オンかオフに維持されている負荷について、これを出力信号の安定状態として扱うものである。この“一定期間”を本実施形態では20msとしている。20msは交流電源5の周期(50Hzの電源の周期)に基づくものである。時間比例制御に基づいて電源のゼロクロスに基づいてスイッチングする場合、少なくとも半周期待つことで信号状態が確定するものであるが、余裕をもって1周期分としているものである。即ち、ゼロクロスが動作基準であることによる遅延分を吸収しているものである。
本実施形態においては、出力オン信号が安定状態であるか否かと、出力オフ信号が安定状態であるか否かの双方について判別をするものを例としている。
【0025】
先ず、ステップ201(
図2)では、初期化処理としてnに1を代入する。前述のごとく、本実施形態では
図1の点線で囲まれた部分が16チャンネルあり、各チャンネルには1~16の数字割り当てられていて、nはこのチャンネル番号を示す変数である。以降、このチャンネル番号をCHnと表記し、チャンネル1のCTはCT1、チャンネルnのCTはCTnと表記する。またチャンネルnのヒータは、ヒータnと表記する。
なお、
図2では記載を省略しているが、初期化処理として、CHn出力フラグやCHn状態フラグの各フラグに0が代入される。
各フラグが示す情報は下記の通りである。
・CHn出力フラグ:温度制御器3のマイコン31から入力されるヒータnに対する出力信号が、オンであるかオフであるかを示す。
・CHn状態フラグ:ヒータnが、1.出力オン信号で安定状態負荷、2.出力オフ信号で安定状態負荷、3.1,2の何れでもない、の何れであるかを示す。
【0026】
ステップ201に続くループ1は、ステップ202~209の処理を、nが1から16となるまで(即ち全チャンネル分)繰り返すものである。
【0027】
ステップ202では、CHn出力フラグの状態を判別し、これが“0”である場合にはステップ203、“ON”である場合にはステップ207、“OFF”である場合にはステップ208へとそれぞれ移行する。
【0028】
初期状態としては、CHn出力フラグ=0であるため、最初の処理ではステップ203へと移行し、CHnタイマ(計時)をスタートする。
続くステップ204では、温度制御器3のマイコン31から受信されるヒータnに対する出力信号がオンであるかオフであるかを判別し、オンであった場合にはCHn出力フラグ=ONとし(ステップ204→ステップ205)、オフであった場合にはCHn出力フラグ=OFFとする(ステップ204→ステップ206)。なお、「フラグ=ON」等と表現するのは理解の容易のためであり、プログラム上は“1”等の数値情報等であってよい。以降で説明する各フラグについても同様である。
続くステップ209でnをインクリメントして、ループ1の処理を繰り返す。
【0029】
ステップ202における判別の結果、CHn出力フラグが“ON”であった場合にはステップ207のオン安定状態判断処理を行う。
図3は、ステップ207のオン安定状態判断処理を示すフローチャートである。
ステップ301では、温度制御器3のマイコン31から受信されるヒータnに対する出力信号がオンであるかオフであるかを判別し、オンであった場合にはステップ302へと移行し、オフであった場合にはステップ304へと移行する。
【0030】
ステップ301の判別結果がオンであった場合、これは出力信号がオン状態で維持されていることを意味する。ステップ302ではこのオン状態の維持時間が所定時間(本実施形態では20ms)以上継続しているか否かを判別し、継続している場合にはステップ303へ移行してCHn状態フラグを“オン安定(出力オン信号で安定状態負荷)”とし、オン安定状態判断処理を終了する。一方、所定時間継続していない場合にはステップ303をスキップしてオン安定状態判断処理を終了する。
【0031】
ステップ301の判別結果がオフであった場合、これは出力信号がオン状態からオフ状態に変化していることを意味する。よって、新たにオフ状態が開始されたとして、ステップ304ではCHnタイマ(計時)をリスタートし、ステップ305でCHn出力フラグ=OFFとする。また、CHn状態フラグを0にする(ステップ306)。前述のごとく、CHn状態フラグは、ヒータnが、
1.出力オン信号で安定状態負荷
2.出力オフ信号で安定状態負荷
3.1,2の何れでもない
の何れであるかを示す情報であり、出力信号がオン状態からオフ状態に変化した直後は3に該当し、これを示す0をCHn状態フラグに代入しているものである。
【0032】
図3のオン安定状態判断処理により、出力オン信号で安定状態である負荷(チャンネル)が判別され、当該情報がCHn状態フラグとして得られる。
【0033】
図2のステップ202における判別の結果、CHn出力フラグが“OFF”であった場合にはステップ208のオフ安定状態判断処理を行う。
図4は、ステップ208のオフ安定状態判断処理を示すフローチャートである。
図4のオフ安定状態判断処理は、
図3のオン安定状態判断処理におけるオンとオフを入れ替えただけの処理であるため、ここでの説明を省略する。
図4のオフ安定状態判断処理により、出力オフ信号で安定状態である負荷(チャンネル)が判別され、当該情報がCHn状態フラグとして得られる。
【0034】
図2(及び
図3、4)の安定状態負荷であるか否かを判別する処理は、交流電源5の電源周期に対して十分に速いサイクルにて常に繰り返し実行されることで、各CHnに対する出力信号の状態を常時監視し、安定状態負荷であるか否かの情報を常時更新する。
【0035】
図5~9は、各負荷(ヒータ6)に流れる電流を計測する処理の一例を示したフローチャートであり、
図6~9の処理は、それぞれ
図5のステップ505~508で実行される処理である。
なお、
図5では記載を省略しているが、初期化処理として、内部基準値取込部23によるA/Dカウント値の取り込み処理と、CHnオン電流値測定フラグ、CHnオフ電流値測定フラグ、内部基準値取込フラグ、内部基準値フラグ等の各フラグに0を代入する処理が行われる。
各フラグが示す情報は下記の通りである。
・CHnオン電流値測定フラグ:出力信号がオン状態における電流を測定済みであるか否かを示すチャンネル毎のフラグ。測定回数に対応する数値が格納される。
・CHnオフ電流値測定フラグ:出力信号がオフ状態における電流を測定済みであるか否かを示すチャンネル毎のフラグ。測定回数に対応する数値が格納される。
・内部基準値取込フラグ:内部基準値(A/Dカウント値)を取込済みであるか否かを示すフラグ。LOWレベル及びHIGHレベルの双方のA/Dカウント値を取得した回数に対応する数値が格納される。
・内部基準値フラグ:LOWレベルのA/Dカウント値、HIGHレベルのA/Dカウント値を交互に取り込むための切り替え変数。
【0036】
先ず、ステップ501(
図5)では、上記説明した
図2(及び
図3、4)の処理によって設定されているCHn状態フラグが“オン安定”で、CHnオン電流値測定フラグが0であるCHnがあるか否かを判別する。当該CHnのヒータは“オン測定可能未測定負荷”に該当する。“オン測定可能未測定負荷”があった場合には、後に説明するオン出力電流測定処理により、該当チャンネルの電流測定処理を行う(ステップ501:Yes→ステップ505)。即ち、“オン測定可能未測定負荷”の電流測定が優先して行われる。出力オン時に測定した結果は、負荷6の電流測定値であり、負荷6の電流測定値は、断線警報の判別以外にも各種の制御処理において利用される測定値であり、これを優先して取り込むものである。
“オン測定可能未測定負荷”が無かった場合には、ステップ502へと移行して、CHn状態フラグが“オフ安定”のCHnがあるか否かを判別する。“オフ安定”のCHnがあった場合にはCHnオフ電流値測定フラグが0のCHnがあるか否かを判別する(ステップ502:Yes→ステップ503)。当該CHnのヒータは“オフ測定可能未測定負荷”に該当する。“オフ測定可能未測定負荷”があった場合には、後に説明するオフ出力電流測定処理により、該当チャンネルの電流測定処理を行う(ステップ503:Yes→ステップ506)。
ステップ502の判別の結果、“オフ安定”のCHnが無かった場合、ステップ504へと移行して“オン安定”のCHnがあるか否かが判別される。ステップ504の判別結果で“オン安定”のCHnがない場合、オン/オフ何れについても安定状態のチャンネルが無い(即ち電流測定可能なチャンネルが無い)状態である。この場合には、ステップ508へと移行して、後に説明する内部基準値取込処理を行う。電流測定可能なチャンネルが無い場合に、A/Dカウント値の取り込み処理を行うものである。
ステップ503の判別がNoであった場合及びステップ504の判別がYesであった場合には、ステップ507へと移行して、後に説明する再測定処理を行う。測定可能(安定状態)なチャンネルは存在するが、電流未測定のチャンネルが無い場合に、測定済みのチャンネルを再測定するものである。
【0037】
図6は、ステップ505のオン出力電流測定処理を示すフローチャートである。
当該処理は、前述のごとく、“オン測定可能未測定負荷”についての電流測定処理である。
ステップ601では、CHn状態フラグが“オン安定”で、CHnオン電流値測定フラグが0であるCHn(即ち、“オン測定可能未測定負荷”)のうち、nが最も小さいチャンネルを判別する。
続くステップ602では、ステップ601で選択されたチャンネルの“オン測定可能未測定負荷”について電流測定を開始し、測定時間の計時をスタートする。即ち、チャンネル番号が小さいものほど優先して電流測定が行われるものであり、従って、チャンネル番号は電流測定の優先順位を定める情報でもある。
なお、電流測定は、マイコン11からMUX12に対して、該当チャンネルのCT22を選択させる指示を出し、これによって、該当チャンネルのCT22からの信号が、マイコン11に入力されることによって行われるものである。
【0038】
ステップ603では、電流測定を行っているチャンネルのCHn状態フラグが“オン安定”で維持されているか否かを判別する。前述のごとく、
図2(及び
図3、4)の処理によって、各チャンネルのCHn状態フラグが常時更新されており、これによって安定状態が維持されているか否かを判別するものである。
CHn状態フラグが“オン安定”でなくなった場合には、オン出力電流測定処理を終了する(ステップ603:No→end)。この場合には、該当チャンネルの電流測定は完了しておらず、電流未測定扱いとなる。
一方、CHn状態フラグが“オン安定”で所定時間(本実施形態では50ms)維持された場合には、電流測定が完了し、当該測定値を該当チャンネルの出力オン信号の際の電流値として記憶し、CHnオン電流値測定フラグをインクリメントする(ステップ604:Yes→ステップ605)。
なお、測定値の取り込みの際には、CT22からの信号に対し、内部基準値取込部23によって取り込まれているA/Dカウント値に基づいた較正処理が行われる。
【0039】
以上のオン出力電流測定処理により、“オン測定可能未測定負荷”の電流測定が、チャンネル番号に従った優先順にて行われる。
【0040】
図7は、
図5のステップ506のオフ出力電流測定処理を示すフローチャートである。
オフ出力電流測定処理(
図7)は、オン出力電流測定処理(
図6)のオンとオフを入れ替えただけのものであり、基本的な処理概念は同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0041】
図9は、
図5のステップ508の内部基準値取込処理を示すフローチャートである。
図5のステップ508は、安定状態のチャンネルが無い、即ち電流測定可能なチャンネルが無い場合において実行される処理であり、内部基準値取込部23によるA/Dカウント値の取り込みを行う処理である。
【0042】
ステップ901(
図9)では、内部基準値フラグの値を判別し、0であった場合にはステップ902、1であった場合にはステップ904へそれぞれ移行する。
内部基準値フラグが0であった場合には、LowレベルのA/Dカウント値の取り込み処理を行い(ステップ902)、内部基準値フラグを1に変更する。
内部基準値フラグが1であった場合には、HighレベルのA/Dカウント値の取り込み処理を行い(ステップ904)、内部基準値フラグを0に変更する。また、上記処理によりLowレベル及びHighレベルの双方のA/Dカウント値が取り込まれたことになるため、内部基準値取込フラグをインクリメントする(ステップ906)。
このように、内部基準値取込処理が実行される度に、LowレベルとHighレベルのA/Dカウント値が順番に取得され、Lowレベル及びHighレベルの双方のA/Dカウント値が取り込まれた際に、内部基準値取込フラグがインクリメントされる。
【0043】
図8は、
図5のステップ507の再測定処理を示すフローチャートである。
図5のステップ507は、測定可能(安定状態)なチャンネルは存在するが、電流未測定のチャンネルが無い場合において実行される処理であり、測定済みのチャンネルを再測定する処理若しくは内部基準値取込処理を行うものである。
なお、ここで再測定されるチャンネルは“測定可能測定済負荷”に該当する。
【0044】
ステップ801(
図8)では、CHn状態フラグが“オン安定”又は“オフ安定”で、CHnオン電流値測定フラグ又はCHnオフ電流値測定フラグが最も小さいチャンネルを判別する。即ち、測定可能(安定状態)なチャンネルの中で、測定回数が最も少ないチャンネルを判別する。
続くステップ802では、ステップ801で判別された最小のCHnオン電流値測定フラグ又はCHnオフ電流値測定フラグと、内部基準値取込フラグを比較する。内部基準値取込フラグの方が小さかった場合にはステップ809へ移行して内部基準値取込処理を行い、CHnオン電流値測定フラグ又はCHnオフ電流値測定フラグが小さい場合にはステップ803以降の処理へと移行する。電流の測定回数と、内部基準値の取り込み回数を比較して、少ない回数の方の測定若しくは取り込みを行うものである。なお、ステップ809の内部基準値取込処理は、
図9の処理であるため、ここでの説明を省略する。
【0045】
ステップ803では、ステップ801で判別されたチャンネルが複数ある場合に、“オン安定”を優先して選別し、さらにその中でチャンネル番号が一番小さいものを判別する。
続くステップ804~808の処理は、ステップ803で判別されたチャンネルについての電流測定処理であり、ステップ806を除き、
図6のステップ602~605若しくは
図7のステップ702~705と同様の処理である。
ステップ806は、上記チャンネルの電流測定中において、CHn状態フラグが“オン安定”でCHnオン電流値測定フラグが0であるCHn(即ち、“オン測定可能未測定負荷”)、又は、CHn状態フラグが“オフ安定”でCHnオフ電流値測定フラグが0であるCHn(即ち、“オフ測定可能未測定負荷”)が生じているか否かを判別する。前述のごとく、
図2(及び
図3、4)の処理によって、各チャンネルのCHn状態フラグが常時更新されており、これによって安定状態で未測定のチャンネルが生じているか否かを判別するものである。
安定状態で未測定のチャンネルが生じている場合には、電流測定処理を中止して、測定済みのチャンネルの再測定処理を終了する。これにより、安定状態で未測定のチャンネルの電流測定が直ぐに開始されるようにしている。
【0046】
【0047】
上述のステップ501~504、及びステップ505~508(
図6~9)の処理によって、所定の優先度に従ってチャンネルが選択されて、当該チャンネルの電流測定(若しくは内部基準値取込)が行われる。
これに続くステップ509では、全てのチャンネルのCHnオン電流値測定フラグ及びCHnオフ電流値測定フラグが0でなく、且つ、内部基準値取込フラグが0でない状態であるか否かを判別する。即ち、すべての電流測定と内部基準値取込が行われたか否かを判別するものであり、すべての電流測定と内部基準値取込が行われていた場合には、ステップ511へと移行する。
ステップ511では、全てのチャンネルのCHnオン電流値測定フラグ及びCHnオフ電流値測定フラグと内部基準値取込フラグをリセット(0を代入)し、ステップ501へと戻って上記処理を繰り返す。
【0048】
ステップ510はタイムアウト処理であり、所定期間が経過しても全ての測定や取込が終了しない場合には、全てのチャンネルのCHnオン電流値測定フラグ及びCHnオフ電流値測定フラグと内部基準値取込フラグをリセット(0を代入)し(ステップ510:Yes→ステップ511)、ステップ501へと戻って上記処理を繰り返すものである。
タイムアウト処理における“所定期間”は設計思想に基づいて適宜定められるものであり、例えば、出力のオン/オフ状態を監視し、オン/オフの切り替わり回数から出力周期を判断し(2回の切り替わりで2周期)、24周期経過した場合を“所定期間”の経過とする。
【0049】
次に、上記説明した処理動作に関し、その一部を簡単に例示したタイミング図である
図10~12を参照しつつ、本実施形態の電流測定の動作を説明する。なお、
図10~12では、簡単化のため、出力オン信号に対する電流測定のみを対象としている。
【0050】
図10は、CH4に着目し、他のチャンネルについては全てのチャンネルが順番通りに電流測定されるとして単純化したものである。
チャンネルの番号順でCH4の順番になった際に、CH4に対する出力信号はオンではないため、この時点でのCH4の電流測定はスキップされ、CH5の電流測定が行われる。
その後、CH7の電流測定中にCH4に対する出力信号がオンとなり、この状態が維持されてCH8の電流測定中にCH4が安定状態となっている。CH8はこれが最初の電流測定であり(再測定ではない)、CH8の電流測定の完了を待つ。
CH8の電流測定が完了した後は、未測定の中でチャンネル番号が一番小さいCH4が電流測定対象となる。
【0051】
図11は、
図10と同様にCH4に着目し、他のチャンネルについては全てのチャンネルが順番通りに電流測定されるとして単純化したものであるが、CH4以外のチャンネルについては、全て電流測定済みである場合を示している。
CH4が安定状態となるまでは、既に測定済みの各チャンネルについて、チャンネル番号順に再測定が行われる。
CH8の再測定中にCH4が安定状態となると、CH8の再測定を中止し、すぐにCH4の電流測定が開始される。CH4の電流測定完了によって、全てのチャンネルの測定が完了するため、全てのチャンネルが未測定に戻され、以降、各チャンネルの測定処理が繰り返される。
【0052】
図12は、
図10と同様にCH4に着目し、他のチャンネルについては全てのチャンネルが順番通りに電流測定されるとして単純化したものである。
チャンネルの番号順でCH4の順番になった際に、CH4は安定状態であったため、CH4の電流測定が開始されるが、電流測定の途中で出力信号がオフとなり、これによりCH4の電流測定が中止され(CH4の電流測定は未完了)、すぐにCH5の測定が開始される。その後、再度CH4が安定状態となった時点では、CH10が最初の電流測定中であり、CH10の電流測定の完了を待つ。
CH10の電流測定が完了した後は、未測定の中でチャンネル番号が一番小さいCH4が電流測定対象となる。
【0053】
上記のごとく、本実施形態によれば、各チャンネルの出力オン信号の際の電流値及び各チャンネルの出力オフ信号の際の電流値の測定が効率的に行われる。
マイコン11による上記処理に基づき取得、記憶されている各チャンネルの出力オン信号の際の電流値及び出力オフ信号の際の電流値は、温度制御器3のマイコン31へと送信される。これを利用して、マイコン31では、断線警報処理や短絡(溶着)警報処理が行われる。即ち、出力オン信号の際の電流値が所定の値に達していない場合には、該当チャンネルにおける断線と判断し、断線警報を発する(例えば通信器4を介して上位装置へと警報情報を送信)。また、出力オフ信号の際の電流値が所定の値以上である場合には、該当チャンネルにおける溶着と判断し、溶着警報を発する(例えば通信器4を介して上位装置へと警報情報を送信)。
【0054】
以上のごとく、本実施形態によれば、マイコン11において、出力信号のオン/オフの期間の情報が無い場合、即ち、電流測定を行う機器(マイコン11)には出力オン若しくはオフが何時から何時まで続くのかの情報がない場合においても、各チャンネルの電流測定を効率的に行うことができる。
本実施形態では、
図1に示されるように、大まかな構成として、SSR21の制御等を行う出力制御器1と、前記したSSR21やCT22が搭載された出力器2と、PID等のフィードバック制御によりSSR21のオン/オフ制御を行う制御信号の演算等を行う温度制御器3とを備えている。このような構成におけるマイコン11に、電流測定機能を持たせる場合、従来方式では対応できないか、対応させるための追加的な構成や処理等を要するため、装置の設計の自由度を下げる一面がある。これに対し、本実施形態によれば、そのような制約が低減されるものである。
なお、本発明の適用が
図1のような構成に限られるというものでなく、例えば、出力制御器1、出力器2、温度制御器3の全て若しくは一部が任意の組みあわせで一体化しているようなもの、或いはさらに細分化されているもの等、適宜対応することができる。
また、本実施形態では処理の制御主体をマイコン11とし、各機能がソフトウェア的に実装されるものとして説明しているが、上記説明した処理の一部若しくは全てをハードウェア的に実現するものであっても構わない。また、各機能がソフトウェア的に実装される際の制御主体をマイコンに限るものではなく、上記説明した機能を実行できる各種のデバイスを用いることができる。
【0055】
本実施形態では、出力オン信号の際の電流値及び出力オフ信号の際の電流値の双方を取得するものを例とし、出力オン信号時の電流測定を優先するものとしているが、オン/オフで優先度を設けないものであってよい。また、出力オン信号の際の電流値又は出力オフ信号の際の電流値の何れか一方のみを取得するものであっても構わない。
【0056】
本実施形態では、各チャンネルに対してその番号に従って優先させる処理とするものを例としているが、各チャンネル間に特段優先順位を付与しないもの(ランダム的に処理するもの)であっても構わない。ただし、複数ある負荷の中でその重要度に高低が存在するような場合には、これに対応させた優先情報を付与すると好適である。
本実施形態では、負荷としてヒータを例としているが、これに限られるものではなく、ヒータ以外の各種の負荷の電流測定として本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1...出力制御器(電流測定装置)
11...マイコン(安定状態判定部、電流測定部)
12...MUX(電流測定信号選択出力部)
2...出力器
21...SSR
22...CT(電流測定器)
23...内部基準値取込部
3...温度制御器(断線検出装置)
6...ヒータ(負荷)