(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20220629BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20220629BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B60N2/58
A47C31/02 B
B68G7/05 A
B68G7/05 B
(21)【出願番号】P 2017195382
(22)【出願日】2017-10-05
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】西本 直矢
(72)【発明者】
【氏名】美馬 壱晃
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-023642(JP,A)
【文献】特開2017-019364(JP,A)
【文献】特開2008-143363(JP,A)
【文献】特開平10-015266(JP,A)
【文献】特開平07-163769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
A47C 7/00 - 7/74
A47C 31/00 - 31/12
B68G 7/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の背を支持する背支持部と、該背支持部の側方に位置する側方支持部と、を有し、
該側方支持部は、前記側方支持部の外形形状を規定するためのベース部材と、該ベース部材に被せられて前記側方支持部の外表面をなす表皮と、を備え、
該表皮は、該表皮を構成するために互いに繋ぎ合わされた複数の表皮片を備え、
前記ベース部材の表面には、前記表皮片が繋ぎ合わされた部分が入り込む溝部が設けられ、
前記ベース部材の裏面には、前記表皮を張るために前記表皮の端部が引っ掛けられる爪部が、前記溝部に沿って複数設けられ
るとともに、前記爪部よりも突出量が大きく、前記側方支持部が車体に搭載された状態で車体の一部と係合または当接している凸部が設けられ、
前記爪部は、先端部が乗物用シートの幅方向において前記ベース部材の一端から他端に向かう向きに延出した第一爪部と、先端部が前記幅方向において前記ベース部材の他端から一端に向かう向きに延出した第二爪部と、を有し、
前記凸部は、前記幅方向において前記第一爪部と前記第二爪部との間に配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記爪部は、後方に突出した後方突出部分と、該後方突出部分の先端に隣接し前記後方突出部分の突出方向と交差する方向に突出した先端突出部分と、を有することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記先端突出部分は、前記乗物用シートの幅方向における前記ベース部材の中央位置に向かって突出していることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記表皮は、前記表皮の裏側部において前記表皮片が繋ぎ合わされた部分から延出した延出部を備え、
該延出部は、前記ベース部材に対して前記表皮片が繋ぎ合わされた部分が位置する側とは反対側に引っ張られて前記爪部に引っ掛けられており、
前記表皮の端部が、前記爪部のうち、前記延出部が引っ掛けられている部分よりも前記爪部の先端に近い部分に引っ掛けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記ベース部材には、スリット孔が設けられており、
前記延出部は、前記スリット孔に通されて、前記ベース部材に対して前記表皮片が繋ぎ合わされた部分が位置する側とは反対側に引っ張られており、
前記乗物用シートの幅方向において、前記ベース部材の外縁のうち、前記表皮の端部が回り込んでいる部分と、前記スリット孔との間に前記爪部が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記爪部は、該爪部の芯部と、該芯部から前記側方支持部の上下方向に沿って延出した上下方向延出部と、を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記ベース部材の裏面には、前記爪部と隣接している位置にて突出している隣接突出部が設けられており、
該隣接突出部は、前記乗物用シートの幅方向に沿って前記ベース部材の外縁に向かって延出していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記第一爪部及び前記第二爪部は、それぞれ、前記側方支持部の上下方向に沿って複数設けており、
前記ベース部材のうち、前記幅方向において前記第一爪部よりも前記第二爪部に近い端部には、木目込み溝が形成されており、
前記幅方向における前記表皮の一端部は、複数の前記第一爪部に引っ掛けられており、
前記幅方向における前記表皮の他端部は、複数の前記第二爪部に引っ掛けられていると共に、前記上下方向において複数の前記第二爪部の間にて前記木目込み溝内に入り込んでいることを特徴とする請求項
1乃至7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に、着座者の背を支持する背支持部の側方に側方支持部を備えている乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
着座者の背を支持する背支持部の側方に側方支持部を備えている乗物用シートは、既に知られており、例えば、特許文献1に記載のシートが挙げられる。特許文献1に記載のシートでは、側方支持部(特許文献1では「シートバックサイド部」と表記)が、樹脂製のベース部材(特許文献1では「シートバックサイド部本体」と表記)と、これを覆う表皮(特許文献1では「表皮材」と表記)とによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
側方支持部を構成する表皮については、複数の表皮片を繋ぎ合わせて表皮を構成する場合がある。このような構成において表皮をベース部材に被せるときには、表皮中、表皮片が繋ぎ合わされている部分を引っ張る等して表皮を張る必要がある。この際、表皮が適切に張られていないと、側方支持部の外観に影響を及ぼす虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、側方支持部において表皮を適切に張ることが可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、着座者の背を支持する背支持部と、該背支持部の側方に位置する側方支持部と、を有し、該側方支持部は、前記側方支持部の外形形状を規定するためのベース部材と、該ベース部材に被せられて前記側方支持部の外表面をなす表皮と、を備え、該表皮は、該表皮を構成するために互いに繋ぎ合わされた複数の表皮片を備え、前記ベース部材の表面には、前記表皮片が繋ぎ合わされた部分が入り込む溝部が設けられ、前記ベース部材の裏面には、前記表皮を張るために前記表皮の端部が引っ掛けられる爪部が、前記溝部に沿って複数設けられるとともに、前記爪部よりも突出量が大きく、前記側方支持部が車体に搭載された状態で車体の一部と係合または当接している凸部が設けられ、前記爪部は、先端部が乗物用シートの幅方向において前記ベース部材の一端から他端に向かう向きに延出した第一爪部と、先端部が前記幅方向において前記ベース部材の他端から一端に向かう向きに延出した第二爪部と、を有し、前記凸部は、前記幅方向において前記第一爪部と前記第二爪部との間に配置されていることにより解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の乗物用シートでは、ベース部材の表面に設けられた溝部に、表皮中、表皮片が繋ぎ合わされた部分が入り込み、ベース部材の裏面に複数設けられた爪部の各々に、表皮の端部が引っ掛けられて表皮が張られている。かかる構成では、表皮の端部が複数の爪部に引っ掛けられているため、表皮中、表皮片が繋ぎ合わされた部分が過度に引っ張られてしまうのを抑えることが可能となる。これにより、表皮片が繋ぎ合わされた部分が適切に引っ張られるようになり、結果として、側方支持部が良好な外観を備えるようになる。
【0008】
また、上記の構成では、爪部よりも突出量が大きい凸部が車体と係合又は当接するので、爪部が車体に接触して損傷してしまうのを抑制することが可能となる。
【0009】
また、上記の構成では、乗物用シートの幅方向において第一爪部と第二爪部の間に凸部が設けられているため、第一爪部及び第二爪部の各々が車体に接触して損傷してしまうのを抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明の乗物用シートにおいて、前記爪部は、後方に突出した後方突出部分と、該後方突出部分の先端に隣接し前記後方突出部分の突出方向と交差する方向に突出した先端突出部分と、を有するとよい。
上記の構成であれば、より簡単な構成にて、爪部に引っ掛けられた表皮の端部が爪部から外れるのを抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明の乗物用シートにおいて、前記先端突出部分は、前記乗物用シートの幅方向における前記ベース部材の中央位置に向かって突出しているとよい。
上記の構成では、表皮の端部が乗物用シートの幅方向においてベース部材の中央位置に向かって引っ張られて爪部に引っ掛けられている一方で、爪部の先端突出部分がベース部分の中央位置に向かって突出している。かかる構成であれば、爪部に引っ掛けられた表皮の端部が爪部から外れるのを効果的に抑制することが可能となる。
【0012】
また、本発明の乗物用シートにおいて、前記表皮は、前記表皮の裏側部において前記表皮片が繋ぎ合わされた部分から延出した延出部を備え、該延出部は、前記ベース部材に対して前記表皮片が繋ぎ合わされた部分が位置する側とは反対側に引っ張られて前記爪部に引っ掛けられており、前記表皮の端部が、前記爪部のうち、前記延出部が引っ掛けられている部分よりも前記爪部の先端に近い部分に引っ掛けられているとよい。
上記の構成では、表皮中、表皮片が繋ぎ合わされた部分に取り付けられた延出部、及び、表皮の端部がともに爪部に引っ掛けられているため、これらの各々を引っ掛ける部分を別々に設ける場合と比較して、より簡素な構成とすることが可能となる。
【0013】
また、本発明の乗物用シートにおいて、前記ベース部材には、スリット孔が設けられており、前記延出部は、前記スリット孔に通されて、前記ベース部材に対して前記表皮片が繋ぎ合わされた部分が位置する側とは反対側に引っ張られており、前記乗物用シートの幅方向において、前記ベース部材の外縁のうち、前記表皮の端部が回り込んでいる部分と、前記スリット孔との間に前記爪部が配置されているとよい。
上記の構成では、表皮の端部及び延出部が、乗物用シートの幅方向において互いに反対側から爪部に近付いて当該爪部に引っ掛けられている。かかる構成であれば、乗物用シートの幅方向における一方の向きに向かって、過度な力が爪部に作用するのを抑制することが可能となる。
【0014】
また、本発明の乗物用シートにおいて、前記爪部は、該爪部の芯部と、該芯部から前記側方支持部の上下方向に沿って延出した上下方向延出部と、を有するとよい。
上記の構成では、爪部に上下方向延出部が設けられていることで、爪部の剛性を向上させることが可能となる。
【0015】
また、本発明の乗物用シートにおいて、前記ベース部材の裏面には、前記爪部と隣接している位置にて突出している隣接突出部が設けられており、該隣接突出部は、前記乗物用シートの幅方向に沿って前記ベース部材の外縁に向かって延出しているとよい。
上記の構成では、ベース部材において爪部周辺に隣接突出部が設けられていることで、ベース部材における爪部周辺の剛性を向上させることが可能となる。
【0016】
また、本発明の乗物用シートにおいて、前記第一爪部及び前記第二爪部は、それぞれ、前記側方支持部の上下方向に沿って複数設けており、前記ベース部材のうち、前記幅方向において前記第一爪部よりも前記第二爪部に近い端部には、木目込み溝が形成されており、前記幅方向における前記表皮の一端部は、複数の前記第一爪部に引っ掛けられており、前記幅方向における前記表皮の他端部は、複数の前記第二爪部に引っ掛けられていると共に、前記上下方向において複数の前記第二爪部の間にて前記木目込み溝内に入り込んでいるとよい。
上記の構成では、乗物用シートの幅方向における表皮の一端部が、複数の第一爪部に引っ掛けられている。また、表皮の他端部は、複数の第二爪部に引っ掛けられていると共に、側方支持部の上下方向において複数の第二爪部の間にてベース部材の木目込み溝に木目込まれている。このような構成であれば、比較的簡単な構成にて、皺が発生し易い表皮の上下方向中央部を適切に張って皺の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の乗物用シートによれば、表皮中、表皮片が繋ぎ合わされた部分が過度に引っ張られてしまうのを抑え、表皮片が繋ぎ合わされた部分を適切に引っ張ることで、結果として、側方支持部が良好な外観を備えるようになる。
また、本発明の乗物用シートによれば、より簡単な構成にて、爪部に引っ掛けられた表皮の端部が爪部から外れるのを抑制することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、爪部に引っ掛けられた表皮の端部が爪部から外れるのを、より効果的に抑制することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、表皮中、表皮片が繋ぎ合わされた部分に取り付けられた延出部、及び、表皮の端部の各々を引っ掛ける部分を別々に設ける場合と比較して、より簡素な構成とすることが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、乗物用シートの幅方向における一方の向きに向かって、過度な力が爪部に作用するのを抑制することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、爪部の剛性を向上させることが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、ベース部材における爪部周辺の剛性を向上させることが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、爪部が車体に接触して損傷してしまうのを抑制することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第一爪部及び第二爪部の各々が車体に接触して損傷してしまうのを抑制することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、比較的簡単な構成にて、皺が発生し易い表皮の上下方向中央部を適切に張って皺の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る乗物用シートの斜視図である。
【
図8】ベース部材の裏側部分を斜め下方から見たときの図である。
【
図9】ベース部材の裏側部分のうち、上方部分を拡大して示す図である。
【
図12】表皮を張るための構成についての説明図である。
【
図13】爪部に引っ掛けられた延出部及び表皮の端部を側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る乗物用シートについて、その構成例を説明する。なお、以下では、本実施形態では、車両に搭載されるシート(以下、シートS)を乗物用シートの一例に挙げて説明することとする。ただし、本発明は、車両以外の乗物、例えば船舶や航空機に搭載される乗物用シートにも適用可能である。
【0020】
また、以下の説明中、「前後方向」は、シートSの前後方向に相当する方向であり、シートSが搭載された車両の走行方向と一致する。また、「シート幅方向」は、シートSの幅方向(横幅方向)であり、シートSを正面から見たときのシートSの左右方向である。また、「上下方向」は、シートSが有するシートバック1の上下方向であり、シートバック1の側端部をなす側方支持部4の上下方向と一致する方向である。
また、シート幅方向における「外側」とは、シート幅方向における一端側に相当し、具体的には、車両のドアにより近い側を意味する。また、シート幅方向における「内側」とは、シート幅方向における他端側に相当し、車両の左右方向中央により近い側を意味する。
【0021】
なお、以下においてシートS各部の位置を説明する際には、特に断る場合を除き、シートSに着座した着座者(車両の乗員)を基準として説明することとする。
【0022】
<<シートSの基本構成>>
シートSは、車両のリアシートとして利用され、
図1に示すように、シートバック1とシートクッション2とを有する。
図1は、シートSの斜視図である。シートバック1は、着座者の上半身を支える部分であり、シートクッション2は、乗員の臀部及び大腿部が載る部分である。なお、
図1に図示のシートSは、二人掛け用のシートであるが、これに限定されるものではなく、一人掛け用のシートであってもよく、あるいは、三人以上が着座可能なシートであってもよい。
【0023】
シートバック1は、
図1に示すように、背支持部3と側方支持部4とを有する。背支持部3は、シートバック1の本体部分であり、シートバック1のシート幅方向中央部に設けられ、着座者の背を後方から支持する。側方支持部4は、背支持部3の側方に位置し、具体的には、シート幅方向において背支持部3と車両のドア(不図示)との間に配置されている。側方支持部4の前面は、着座者の脇に位置し、着座者の肩から腰部に亘る部分を側方から支える。また、側方支持部4の前面は、
図1に示すように、背支持部3の前面よりも前方に位置しており、さらに、側方支持部4の前面は、シート幅方向外側に向かうほど前方に位置するように傾いている。
【0024】
側方支持部4は、車体に固定されている。具体的には、車体において側方支持部4よりも後方に位置する部分には、不図示の締結部が設けられており、この締結部によって側方支持部4が車体に締結されている。また、側方支持部4の下端部(厳密には、ベース部材10の下端部)が車体フロアに対してボルト留めされている。
【0025】
<<側方支持部4の構成>>
側方支持部4について説明すると、側方支持部4は、
図2に示すように、その骨格をなすベース部材10を表皮30によって前方から覆うことで構成されている。このようにして構成された側方支持部4は、
図3に図示の外観を呈しており、同図に示すように上下方向に沿って十分長く延びており、シート幅方向にも比較的幅広となっている。
なお、
図2は、側方支持部4の構成部品を示す図であり、
図3は、側方支持部4の外観図である。
【0026】
ベース部材10は、側方支持部4の外形形状を規定するための部材であり、本実施形態では、樹脂成形品からなる。ただし、ベース部材10は、金属部材によって構成されてもよく、より具体的には、金属プレートを加工して成形することで構成されてもよい。
【0027】
ベース部材10は、略プレート型に成形されており、正面視でナイフの先端部分のような四角形状をなしている。また、ベース部材10の前面は、略平面となっている。ベース部材10の構造については、後に詳しく説明することとする。
なお、以下の説明では、ベース部材10の厚み方向において、シートSに着座者が着座している状態にあるときに着座者の身体により近い側を「表側」と呼び、着座者の身体からより離れている側を「裏側」と呼ぶこととする。
【0028】
表皮30は、
図4に示すように、ベース部材10の表側に被せられて側方支持部4の外表面をなす部材である。
図4は、側方支持部4の断面、具体的には
図3のH-H断面を示す図である。
【0029】
表皮30は、ファブリック(布)、天然皮革あるいは人工皮革、もしくは、これらの積層体からなる。表皮30は、若干の厚みを有し、その表面は、着座者の身体が触れた際に柔らかな触り心地を与えるものである。
なお、以下の説明では、表皮30の厚み方向において、シートSに着座者が着座している状態にあるときに着座者の身体により近い側(換言すると、露出する側)を「表側」と呼び、着座者の身体からより離れている側(換言すると、ベース部材10と対向する側)を「裏側」と呼ぶこととする。
【0030】
本実施形態において、表皮30は、複数の表皮片を互いに繋ぎ合わせることで構成されている。具体的に説明すると、表皮30は、シート幅方向において分割された二つの表皮片を縫い合せることで構成されている。つまり、表皮30のシート幅方向中央部には、
図4に示すように、表皮片が繋ぎ合わされた部分(以下、繋ぎ合わせ部分40)が形成されている。繋ぎ合わせ部分40では、各表皮片のシート幅方向端部が裏側に折り返されており、折り返された各表皮片の端部同士が縫製によって繋ぎ合わされている。
【0031】
なお、以下では、表皮30を構成する二つの表皮片のうち、シート幅方向において外側(一端側)に位置する方を外側表皮片33と呼び、内側(他端側)に位置する方を内側表皮片34と呼ぶこととする。ここで、外側表皮片33は、第一表皮片に相当し、内側表皮片34は、第二表皮片に相当する。
また、本実施形態では、二つの表皮片を互いに繋ぎ合わせることで表皮30が構成されているが、これに限定されるものではなく、三つ以上の表皮片を互いに繋ぎ合わせることで表皮30を構成してもよい。
【0032】
表皮30は、ベース部材10に被せられた状態でベース部材10に留められている。より具体的に説明すると、表皮30のシート幅方向外側の端部(以下、外側端部31)は、
図4に示すように、ベース部材10のうち、シート幅方向外側に位置する部分(以下、外側ベース部分11)に掛けられている。
なお、外側端部31は、外側表皮片33のシート幅方向外側端部によって構成されている。そして、外側端部31は、
図4に示すように、ベース部材10の外縁のうち、シート幅方向外側に位置する部分に沿わせて折り曲げられており、ベース部材10の表側から裏側に回り込んでいる。
【0033】
表皮30のシート幅方向内側の端部(以下、内側端部32)は、
図4に示すように、ベース部材10のうち、シート幅方向内側に位置する部分(以下、内側ベース部分12)に引っ掛けられていると共に、内側ベース部分12に設けられた木目込み溝26に木目込まれている。
なお、内側端部32は、内側表皮片34のシート幅方向内側端部によって構成されている。そして、内側端部32は、
図4に示すように、ベース部材10の外縁のうち、シート幅方向内側に位置する部分に沿わせて折り曲げられている。
【0034】
表皮30のうち、繋ぎ合わせ部分40は、ベース部材10の裏側(換言すると、ベース部材10に対して繋ぎ合わせ部分40が位置する側とは反対側)に引っ張られて吊り込まれている。
【0035】
<<表皮30をベース部材10に留めるための表皮30の構成>>
以下、表皮30各部(具体的には、外側端部31、内側端部32及び繋ぎ合わせ部分40)をベース部材10に留めるために表皮30に備えられた機構について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図5は、表皮30の裏側を示す図である。
【0036】
表皮30の外側端部31には、ベース部材10の外側ベース部分11の裏面から突出した突起(厳密には、後述の爪部16)を差し込むために形成された切り込み状の孔(以下、係止孔36)が形成されている。この係止孔36は、
図5に示すように、上下方向に沿って係止孔36間に間隔を空けながら複数設けられている。
【0037】
表皮30の内側端部32には、同じく、係止孔36が設けられている。内側端部32において係止孔36は、
図5に示すように、上下方向に離れた位置に二つ設けられている。また、
図5に示すように内側端部32のうち、上下方向において係止孔36の間に位置する部分には、上下方向に延びたトリムコード37が取り付けられている。このトリムコード37は、ベース部材10の内側ベース部分12に設けられた木目込み溝26に入り込んで木目込まれる部分である。
【0038】
表皮30の繋ぎ合わせ部分40には、延出部としての帯体35が取り付けられている。この帯体35は、表皮30の裏側部において繋ぎ合わせ部分40から延出した短冊状のベルトである。帯体35は、表皮30をベース部材10に留める際に、ベース部材10の裏側(換言すると、ベース部材10に対して繋ぎ合わせ部分40が位置する側とは反対側)に引っ張られて吊り込まれる。
【0039】
そして、帯体35が引っ張られている状態で、帯体35の自由端部35bがベース部材10の外側ベース部分11の裏面から突出した突起(厳密には、後述の爪部16)に引っ掛けられる。なお、自由端部35bは、帯体35のうち、繋ぎ合わせ部分40に取り付けられている基部35aとは反対側に位置する端部であり、矩形状をなす帯体35の一方の短辺部分である。また、自由端部35bには、ベース部材10の突起を差し込むための孔(以下、掛け留め孔35c)が形成されている。
【0040】
帯体35は、
図5に示すように、繋ぎ合わせ部分40に沿って帯体35間に間隔を空けながら複数(
図5に図示のケースでは5個)設けられている。また、本実施形態の帯体35は、表皮30を構成する表皮片(すなわち、外側表皮片33や内側表皮片34)よりも伸張性が低い材質によって構成されており、例えば、ナイロンベルト等によって構成されている。
【0041】
また、本実施形態において、各帯体35は、繋ぎ合わせ部分40において各表皮片(すなわち、外側表皮片33や内側表皮片34)と共縫いされている。具体的に説明すると、各帯体35の基部35aが各表皮片に縫い付けられている。また、基部35aは、
図4に示すように外側表皮片33に接した状態で繋ぎ合わせ部分40に取り付けられている。
【0042】
<<ベース部材10の構造について>>
ベース部材10の構造について
図4並びに
図6乃至
図12を参照しながら説明する。
図6は、ベース部材10を表側から見たときの図である。
図7は、ベース部材10を裏側から見たときの図である。
図8は、ベース部材10の裏側部分を斜め下方から見たときの図である。
図9は、ベース部材10の裏側部分のうち、上方部分を拡大して示す図である。
図10は、
図6のI-I断面を示す図である。
図11は、
図6のJ-J断面を示す図である。
【0043】
ベース部材10は、前述したように樹脂成形品であり、
図6及び
図7に図示の外観を呈している。ベース部材10の下端部には、下方に向かって舌状に延出した取付部28が設けられている。この取付部28の先端部分(下端部分)にはボルト孔が設けられており、このボルト孔に挿入された締結ボルト(不図示)によって取付部28が車体フロアに固定されている。
【0044】
ベース部材10は、シート幅方向において大きく二つの部分に分かれており、具体的には、シート幅方向外側に位置する外側ベース部分11と、シート幅方向内側に位置する内側ベース部分12とを有する。外側ベース部分11は、表皮30がベース部材10に留められた状態において、表皮30を構成する外側表皮片33及び内側表皮片34のうち、外側表皮片33により近い部分である。内側ベース部分12は、表皮30がベース部材10に留められた状態において、表皮30の内側表皮片34により近い部分である。
【0045】
また、ベース部材10の表面には、
図6に示すように、後方に凹むことで形成された収容溝部13が設けられている。この収容溝部13は、ベース部材10の上端から下端に亘って形成された溝部である。そして、表皮30がベース部材10に被せられて留められている状態では、
図4に示すように、表皮30の繋ぎ合わせ部分40が収容溝部13内に入り込んで収容されている。つまり、繋ぎ合わせ部分40をベース部材10に対して吊り込む際には、繋ぎ合わせ部分40が収容溝部13に入り込むようになる。
【0046】
なお、ベース部材10において、収容溝部13は、外側ベース部分11と内側ベース部分12との境界をなしており、収容溝部13よりもシート幅方向外側に外側ベース部分11が位置し、収容溝部13よりもシート幅方向内側に内側ベース部分12が位置している。また、
図6に示すように、内側ベース部分12の表面において、収容溝部13の脇位置には、上下方向に複数並んだ比較的短い矩形状の孔(以下、矩形孔群14)が設けられている。矩形孔群14中の各矩形孔は、ベース部材10を樹脂成形する際に金型からベース部材10を取り出すために形成される。なお、内側ベース部分12のうち、シート幅方向において矩形孔群14と収容溝部13との間に位置する部分は、
図11に示すように、その周辺よりも肉厚な肉厚部15をなしている。
【0047】
ベース部材10の裏面には、
図8や
図9に示すように、後方に向かって突出した爪部16が設けられている。この爪部16は、表皮30をベース部材10に留める際に、表皮30における外側端部31や内側端部32が引っ掛けられる部分である。外側端部31や内側端部32が爪部16に引っ掛けられることで、ベース部材10に被せられた表皮30が張られるようになる。
【0048】
また、本実施形態において、ベース部材10の裏面には、複数の爪部16が設けられており、より詳しくは、外側ベース部分11及び内側ベース部分12の各々の裏面において爪部16が上下方向に沿って複数設けられている。以下、爪部16の詳細について説明する。
【0049】
外側ベース部分11の裏面に設けられた複数の爪部16(以下、第一爪部16A)は、シート幅方向において外側ベース部分11の外側端部に位置し、収容溝部13に沿って配置されている。なお、
図8に図示のケースでは、6個の第一爪部16Aが間隔を空けながら並んでいる。各第一爪部16Aは、
図9に示すように、その先端部がシート幅方向においてベース部材10の外側端から内側端に向かって延出するように形成されている。
【0050】
第一爪部16Aの構成について
図9を参照しながら説明すると、爪部16は、その本体部分をなす芯部17を有する。芯部17は、
図9に示すように、ベース部材10の裏面から後方に向かって延出した後方突出部分17aと、後方突出部分17aの先端に隣接している先端突出部分17bと、を有する。第一爪部16Aの先端突出部分17bは、前述したように、シート幅方向(換言すると、後方突出部分17aの突出方向と交差する方向)において、ベース部材10の外側端から内側端に向かう向きに延出している。つまり、第一爪部16Aの先端突出部分17bは、シート幅方向においてベース部材10の中央位置に向かって突出している。
【0051】
また、本実施形態では、
図9に示すように、シート幅方向において、ベース部材10における表皮30の外側端部31との対向部分と前述の収容溝部13との間に第一爪部16Aが配置されている。ここで、外側端部31との対向部分とは、ベース部材10の裏面において、外側端部31がベース部材10の外縁(厳密には、外縁のうち、シート幅方向外側端部)に沿って折り返されることで当該外側端部31と対向している部分である。
【0052】
また、芯部17の上下方向の各端面には、当該各端面から上下方向に沿って延出した上下方向延出部18が設けられている。上下方向延出部18は、第一爪部16Aの芯部17を補強するために設けられている。また、上下方向延出部18は、
図9に示すように、L字状に屈曲しており、その一辺に相当する部分は、後方突出部分17aから延出しており、もう一辺に相当する部分は、先端突出部分17bから延出している。
【0053】
また、芯部17の後方突出部分17aの根元部分には、該後方突出部分17aと隣接している隣接突出部19が設けられている。隣接突出部19は、第一爪部16Aの補強用に設けられており、第一爪部16Aと隣接している位置にて後方に突出している。また、隣接突出部19は、
図9に示すように、シート幅方向に沿ってベース部材10の外縁(厳密には、外縁のうち、シート幅方向外側端部)に向かって延出している。
【0054】
内側ベース部分12の裏面に設けられた複数の爪部16(以下、第二爪部16B)は、
図8に示すように、上下方向において互いに離れた位置に配置されている。第二爪部16Bは、基本構成の面では第一爪部16Aと同様であり、芯部17と、芯部17から延出した上下方向延出部18とを有する。また、第二爪部16Bの芯部17に隣接している位置には、隣接突出部19が後方に向かって突出している。
【0055】
第二爪部16Bは、
図8に示すように、その先端部(厳密には、芯部17の先端突出部分17b)がシート幅方向においてベース部材10の内側端から外側端に向かう向きに延出するように形成されている。つまり、第二爪部16Bの先端突出部分17bは、第一爪部16Aの先端突出部分17bと同様、シート幅方向においてベース部材10の中央位置に向かって突出している。
【0056】
ベース部材10の構成に関する説明に戻ると、ベース部材10の裏面には、側方支持部4を車体に取り付けるための突起が複数形成されている。具体的に説明すると、ベース部材10の裏面からは、第一締結部21と、第二締結部22と、第一当接部23と、第二当接部24とが、それぞれ後方に向かって突出している。
【0057】
第一締結部21は、ベース部材10の内側ベース部分12の上端位置に設けられたソケット型の突起であり、車体に取り付けられた不図示の差し込み部が差し込まれることで、当該差し込み部と係合可能な構成となっている。つまり、第一締結部21は、側方支持部4が車体に搭載された状態で車体の一部と係合している。
【0058】
第二締結部22は、凸部に相当し、内側ベース部分12において第一締結部21よりも若干下がった位置に設けられたプラグ型の突起であり、車体に取り付けられた不図示の受け部に差し込まれることで当該受け部と係合可能な構成となっている。つまり、第二締結部22は、側方支持部4が車体に搭載された状態で車体の一部と係合している。
また、第二締結部22の後方への突出量は、
図9に示すように第一爪部16Aの突出量に比べて大きくなっており、また、第二爪部16Bの突出量よりも大きくなっている。
【0059】
第一当接部23及び第二当接部24は、凸部に相当し、略半円形の筒状体である。第一当接部23は、内側ベース部分12において第二締結部22よりも下がった位置にあり、収容溝部13の脇位置に設けられている。第二当接部24は、内側ベース部分12の下端部に位置し、収容溝部13の脇位置に設けられている。第一当接部23及び第二当接部24の各々は、側方支持部4が車体に搭載された状態にあるとき、車体の一部に当接して側方支持部4を位置決めしている。
また、第一当接部23の後方への突出量は、
図9に示すように第一爪部16Aの突出量に比べて大きくなっており、また、第二爪部16Bの突出量よりも大きくなっている。同様に、第二当接部24の後方への突出量は、第一爪部16A及び第二爪部16Bの各々の突出量よりも大きくなっている。
【0060】
なお、本実施形態において、第二締結部22、第一当接部23及び第二当接部24は、
図7に示すようにシート幅方向において第一爪部16A及び第二爪部16Bの間に配置されており、厳密には、シート幅方向において最も外側に位置する第一爪部16Aと、最も内側に位置する第二爪部16Bと、の間に配置されている。
【0061】
ベース部材10の収容溝部13の底部13aには、
図6、
図7、
図8に示すように矩形状のスリット孔25が形成されている。このスリット孔25は、収容溝部13の底部13aを貫通しており、表皮30をベース部材10に被せて繋ぎ合わせ部分40を吊り込む際に帯体35が通される孔である。つまり、帯体35は、スリット孔25に通されてベース部材10の裏側に引っ張られて吊り込まれる。
【0062】
本実施形態において、スリット孔25は、収容溝部13に沿ってスリット孔25間に間隔を空けながら複数設けられており、より詳しくは、帯体35と同じ数(すなわち、5個)だけ設けられている。つまり、本実施形態において、ベース部材10には、各帯体35に対してスリット孔25が一つずつ設けられており、各帯体35は、複数のスリット孔25のうち、対応するスリット孔25に通されることになる。
【0063】
なお、各スリット孔25は、
図4に示すように、その後端側の開口25aがシート幅方向において外側(車両ドア側)に向くように形成されている。このため、帯体35をスリット孔25に通す際には、帯体35の自由端部35bがシート幅方向外側に向かうように帯体35を通されることになる。
【0064】
また、本実施形態では、
図7に示すように、各スリット孔25がシート幅方向において第一爪部16A(厳密には、シート幅方向において最も外側に位置する第一爪部16A)と上述の凸部(具体的には、第二締結部22)との間に配置されている。
【0065】
ベース部材10の裏面のうち、
図7及び
図8に示すように、シート幅方向内側の端部には木目込み溝26が設けられている。木目込み溝26は、表皮30をベース部材10に留める際に、表皮30の内側端部32に取り付けられたトリムコード37が入り込む(木目込まれる)溝である。
【0066】
木目込み溝26は、ベース部材10の内側ベース部分12に設けられている。より詳しく説明すると、内側ベース部分12は、
図4に示すように、そのシート幅方向内側端部が後方に向かって延出するようにL字状に屈曲している。そして、内側ベース部分12の内側端部の後端面(すなわち、裏面)に、木目込み溝26が上下方向に沿って長く延びるように形成されている。なお、木目込み溝26が設けられている内側ベース部分12のシート幅方向内側端部は、ベース部材10のうち、シート幅方向において第一爪部16Aよりも第二爪部16Bに近い端部に相当する。
【0067】
また、木目込み溝26は、
図7及び
図8に示すように、上下方向において、互い離れた位置に設けられた二つの第二爪部16Bの間に配置されている。
さらに、木目込み溝26の内壁面の一部は、
図10に示すように隆起して抜け止めビード27を形成している。この抜け止めビード27が形成されていることで、木目込み溝26に木目込まれたトリムコード37が木目込み溝26から抜け出てしまうのを抑えることが可能となる。
【0068】
<<ベース部材10に対する表皮30の留め方について>>
次に、ベース部材10に対する表皮30の留め方について
図4、
図12及び
図13を参照しながら説明する。
図12は、ベース部材10に被せられた表皮30を張るための構成についての説明図である。
図13は、第一爪部16Aに引っ掛けられた帯体35及び表皮30の外側端部31を側方から見た図である。
【0069】
表皮30をベース部材10に留めるにあたり、表皮30をベース部材10の前方からベース部材10に近付け、表皮30をベース部材10の表面(前側の表面)に被せる。このとき、
図4に示すように、表皮30の繋ぎ合わせ部分40が収容溝部13内に入り込むようになる。
【0070】
より詳しく説明すると、繋ぎ合わせ部分40に縫い付けられた複数の帯体35の各々を、収容溝部13の底部13aに形成されたスリット孔25に通し、ベース部材10の裏側に引っ張る。つまり、本実施形態では、表皮30をベース部材10に留めるにあたり、表皮30がベース部材10に被せられ、かかる状態で、各帯体35がスリット孔25に通されて、ベース部材10の裏側(換言すると、ベース部材10に対して繋ぎ合わせ部分40が位置する側とは反対側)に引っ張られている。
【0071】
なお、表皮30がベース部材10に被せられた状態では、
図4に示すように、帯体35の基部35aが繋ぎ合わせ部分40と共に収容溝部13内に収容(配置)されている。
また、スリット孔25の開口25a(厳密には、ベース部材10の裏側に位置する開口25a)は、
図4に示すように、シート幅方向外側に面している。そして、帯体35の自由端部35bは、開口25aを通じてスリット孔25の外側に出ている。
【0072】
また、本実施形態では、繋ぎ合わせ部分40に複数の帯体35が取り付けられており、ベース部材10には、帯体35と同数のスリット孔25が形成されている。各々のスリット孔25には、対応する帯体35が一つずつ通されている。
【0073】
また、表皮30がベース部材10に被せられた状態では、表皮30の裏側部において帯体35が取り付けられている部分と、ベース部材10においてスリット孔25が設けられている部分とが、互いに重なり合うように並んでいる。分かり易く説明すると、表皮30をベース部材10に被せられた状態では、
図4に示すように、繋ぎ合わせ部分40に取り付けられた帯体35の基部35aが、当該帯体35が通過するスリット孔25と隣り合う位置に配置されている。このような位置関係であれば、各帯体35をスリット孔25に通すために必要な各帯体35の長さを、より短くすることが可能となる。
【0074】
帯体35の自由端部35bがスリット孔25の開口25aを通じてスリット孔25の外に出た後、帯体35は、ベース部材10の裏側(すなわち、後方)に引っ張られた状態のまま、
図4に示すように、その途中箇所(具体的には、収容溝部13の底部13aにおいて開口25aの外縁と対向する部分)でL字状に折り曲げられる。これにより、帯体35の自由端部35bは、シート幅方向外側に向かうようになる。
【0075】
一方、ベース部材10のうち、シート幅方向外側に位置する外側ベース部分11の裏側には、第一爪部16Aが設けられている。そして、帯体35の自由端部35bは、
図4及び
図12に示すように、ベース部材10の裏側において第一爪部16Aの先端突出部分17bに引っ掛けられる。具体的に説明すると、自由端部35bに形成された掛け留め孔35cに第一爪部16Aの芯部17及び上下方向延出部18が差し込まれることで、帯体35の自由端部35bが第一爪部16Aに係合するようになる。
なお、第一爪部16Aは、外側ベース部分11の裏面のうち、シート幅方向外側の端部(ベース部材10の一端部)に設けられている。つまり、本実施形態では、帯体35の自由端部35bが外側ベース部分11のシート幅方向外側の端部に引っ掛けられることになっている。
また、帯体35の基部35aが通過するスリット孔25の開口25aは、シート幅方向外側、すなわち、第一爪部16Aが位置する側に面している。このような構成により、より簡単に、帯体35の基部35aを第一爪部16Aに留めておくことが可能となる。
【0076】
そして、すべての帯体35が第一爪部16Aに係合すると、帯体35の基部35aが取り付けられた繋ぎ合わせ部分40が、帯体35の基部35aと共に収容溝部13に入り込んで吊り込まれるようになる。
【0077】
繋ぎ合わせ部分40の吊り込みが完了した後、表皮30の外側端部31を外側ベース部分11のシート幅方向外側端部に留める。より詳しく説明すると、外側ベース部分11の外縁のうち、シート幅方向外側の端に位置する部分に沿って表皮30の外側端部31を折り曲げることで、当該外側端部31を外側ベース部分11の表側から裏側に回り込ませる。そして、
図12に示すように、外側ベース部分11の裏側に回り込んだ外側端部31を第一爪部16Aに引っ掛ける。具体的に説明すると、外側端部31において上下方向に間隔を空けながら複数形成された係止孔36に第一爪部16Aの芯部17及び上下方向延出部18を差し込む。これにより、表皮30の外側端部31のうち、外側ベース部分11の裏側に回り込んだ部分が第一爪部16Aに引っ掛けられ、外側ベース部分11のシート幅方向外側端部に留められる。
【0078】
なお、本実施形態では、表皮30の外側端部31には、第一爪部16Aと同数の係止孔36が形成されている。各々の係止孔36には、対応する第一爪部16Aが一つずつ差し込まれる。
【0079】
以上のように第一爪部16Aには、繋ぎ合わせ部分40に取り付けられた帯体35と、ベース部材10の裏側に回り込んで表皮30の外側端部31と、が引っ掛けられている。表皮30の外側端部31は、
図13に示すように、第一爪部16Aのうち、帯体35が引っ掛けられている部分よりも第一爪部16Aの先端(厳密には、芯部17の先端突出部分17b)に近い部分に掛けられている。
【0080】
また、帯体35及び外側端部31の双方が第一爪部16Aに掛けられている状態では、帯体35及び外側端部31の各々が、第一爪部16Aに対して、互いに反対向きの力を及ぼしている。具体的に説明すると、
図4に示すように、シート幅方向において、ベース部材10の外縁のうち、表皮30の外側端部31が回り込んでいる部分と、帯体35が通るスリット孔25との間に、第一爪部16Aが配置されている。
【0081】
以上の位置関係により、帯体35は、第一爪部16Aよりもシート幅方向内側の位置から第一爪部16Aに近付いて第一爪部16Aに引っ掛けられる。この結果、帯体35が第一爪部16Aに対して、
図13にて矢印f1にて示す向きの引張り荷重が作用することになる。一方、表皮30の外側端部31は、第一爪部16Aよりもシート幅方向外側の位置から第一爪部16Aに近付いて第一爪部16Aに引っ掛けられる。この結果、外側端部31が第一爪部16Aに対して、
図13にて矢印f2にて示す向きの引張り荷重が作用することになる。ここで、上記2つの引張り荷重は、互いに反対向きの力となっている。これにより、第一爪部16Aに作用する引張り荷重が一つの向きに過度に集中するのを抑制することが可能となる。
【0082】
以上のように表皮30の外側端部31は、外側ベース部分11のシート幅方向外側端部に留められる。
一方、表皮30の内側端部32は、ベース部材10の内側ベース部分12のシート幅方向内側端部に留められる。より詳しく説明すると、内側ベース部分12の外縁のうち、シート幅方向内側の端に位置する部分に沿って表皮30の内側端部32を折り曲げる。さらに、内側端部32の所定部分(具体的には、係止孔36が係止されている部分)を内側ベース部分12の表側から裏側に回り込ませる。
【0083】
内側ベース部分12の裏側には、前述したように、第二爪部16Bが上下に離れた位置に二つ設けられている。そして、
図4に示すように、内側ベース部分12の裏側に回り込んだ内側端部32を上下二つの第二爪部16Bの各々に引っ掛ける。具体的に説明すると、内側端部32において上下に離れた位置に設けられた二つの係止孔36のそれぞれに、対応する第二爪部16Bの芯部17及び上下方向延出部18を差し込む。これにより、表皮30の内側端部32のうち、内側ベース部分12の裏側に回り込んだ部分が第二爪部16Bに引っ掛けられるようになる。
【0084】
さらに、内側端部32のうち、上下方向において上下二つの第二爪部16Bの間に位置している部分には、トリムコード37が取り付けられている。このトリムコード37は、内側ベース部分12の裏面のシート幅方向内側端部に形成された木目込み溝26に入り込む(木目込まれる)。このように本実施形態では、表皮30の内側端部32が、上下二つの第二爪部16Bに引っ掛けられると共に、上下方向において第二爪部16Bの間にて木目込み溝26に木目込まれる。
以上までに説明してきた手順により、表皮30各部(具体的には、外側端部31、内側端部32及び繋ぎ合わせ部分40)がベース部材10に留められる。そして、表皮30がベース部材10に留められることで、本実施形態に係る側方支持部4が構成される。
【0085】
<<その他の実施形態>>
以上までに、本発明の乗物用シートについて、具体的な実施例を一つ挙げて説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは、勿論である。
【0086】
また、シートS各部の構成については、あくまでも一例であり、本発明の効果(表皮30を適切に張ること)が発揮されるものである以上、上記の実施形態とは異なる形状であってもよい。例えば、上記の実施形態では、表皮30がベース部材10を直に覆うことで側方支持部4が構成されていることとした。つまり、上記の実施形態では、
図6に示すように、ベース部材10の表側(前側)の面が平坦面であり、その直前位置に表皮30が配置されていることとしたが、これに限定されるものではない。
図14に示すように表面に不図示のパッド材が嵌まり込む嵌合凹部101が形成されたベース部材100を用い、上記のパッド材が嵌合凹部101に嵌まり込んだ状態のベース部材100に表皮30を被せて側方支持部4を構成してもよい。
図14は、変形例に係るベース部材100を示す斜視図である。
なお、変形例に係るベース部材100は、上記のパッド材が嵌合凹部101に嵌まり込んだ状態では、上記の実施形態に係る
図6に図示のベース部材10と略同様の構造を成している。
【符号の説明】
【0087】
1 シートバック
2 シートクッション
3 背支持部
4 側方支持部
10 ベース部材
11 外側ベース部分
12 内側ベース部分
13 収容溝部(溝部)
13a 底部
14 矩形孔群
15 肉厚部
16 爪部
16A 第一爪部
16B 第二爪部
17 芯部
17a 後方突出部分
17b 先端突出部分
18 上下方向延出部
19 隣接突出部
20 外縁外側部分
21 第一締結部
22 第二締結部(凸部)
23 第一当接部(凸部)
24 第二当接部(凸部)
25 スリット孔
25a 開口
26 木目込み溝
27 抜け止めビード
28 取付部
30 表皮
31 外側端部(一端部)
32 内側端部(他端部)
33 外側表皮片(第一表皮片)
34 内側表皮片(第二表皮片)
35 帯体(延出部)
35a 基部
35b 自由端部
35c 掛け留め孔
36 係止孔
37 トリムコード
40 繋ぎ合わせ部分(表皮片が繋ぎ合わされた部分)
100 ベース部材
101 嵌合凹部
S シート(乗物用シート)