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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】空調機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/62 20180101AFI20220629BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20220629BHJP
   F24F 1/0073 20190101ALI20220629BHJP
   F24F 1/035 20190101ALI20220629BHJP
   F24F 1/0087 20190101ALI20220629BHJP
   F24F 1/037 20190101ALI20220629BHJP
【FI】
F24F11/62
F24F11/74
F24F1/0073
F24F1/035
F24F1/0087
F24F1/037
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020167149
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2021116997
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2020-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2020012179
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】木野村 肇
(72)【発明者】
【氏名】所谷 雅史
(72)【発明者】
【氏名】池田 義昭
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-002903(JP,A)
【文献】特開平08-128711(JP,A)
【文献】特開2004-132639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0128549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/62
F24F 11/74
F24F 1/0073
F24F 1/035
F24F 1/0087
F24F 1/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を導入する開口部を有し該空気の流通路が形成された筐体と、該筐体内にて前記流通路の一部を構成するダクトに配設され該ダクト内を流通する空気と熱媒とを熱交換する熱交換器と、該熱交換器で熱交換された空気を前記筐体外に送出する送風機と、を備えた空調機であって、
前記筐体内には、前記熱交換器よりも上流側の前記流通路に連通するとともに流通方向に延設され、かつ、前記熱交換器が配設されているダクトよりも外周側に全周に亘って張り出す第1膨出ダクトと、前記熱交換器よりも下流側の前記流通路に連通するとともに流通方向に延設され、かつ、前記熱交換器が配設されているダクトよりも外周側に全周に亘って張り出す第2膨出ダクトと、が形成されており、
前記空調機は、前記第1膨出ダクト内に配設された第1圧力検知部と、前記第2膨出ダクト内に配設された第2圧力検知部と、前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部とで検知した差圧に基づき前記空調機から送出される風量を導出する導出部と、を備えることを特徴とする空調機。
【請求項2】
前記第1圧力検知部は、前記第1膨出ダクト内の静圧を検知する第1静圧検知部であり、前記第2圧力検知部は、前記第2膨出ダクト内の静圧を検知する第2静圧検知部であることを特徴とする請求項1に記載の空調機。
【請求項3】
前記空調機は、前記第1膨出ダクトよりも上流側に前記流通路の一部を構成する枠体にエアフィルタが略密封状に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空調機。
【請求項4】
前記空調機は、前記第2膨出ダクトよりも下流側に前記流通路を流通する空気を加湿させる加湿器が配設されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の空調機。
【請求項5】
前記エアフィルタが配設される枠体の断面積は、前記熱交換器が配設されるダクトの断面積よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項に記載の空調機。
【請求項6】
前記空調機は、前記導出部が導出した風量を表示させる表示部を備えることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の空調機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を取り込む開口部を有する筐体の内部に熱交換器を備えるとともに、熱交換によって温度調整された空気を送出する送風機を備えた空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にビルや集合住宅、工場等には、これらの屋内空間に温度調整された空気を供給するための空調機が設置されている。このような空調機を比較的大規模な屋内空間を対象に利用する際には、空調機設置後の初動時や試運転時はもちろん、常時、当該空調機が設計上の風量を排出しているかを計測する必要がある。
【0003】
従来、空調機には、筐体内部に風量を計測するための風速計が設置されているものがある。例えば、特許文献1に記載されている空調機は、筐体内部と外部とに連通する吹出しグリルに風速計を配設し、この風速計により検出した風速から、当該空調機の送出風量を導出している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-105549号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されている空調機の風速計が配設された吹出しグリルはダクト状に形成されており、グリル内部の風速分布は均一ではないため、計測結果にバラつきが生じてしまい、このグリル内部を通過する空調機の風量を正確に計測できなかった。また、空気の流通路である吹出しグリルに風速センサを配設しているので、配設させた風速センサ自体が空気の流路を乱すこととなり、正確な風量を正確に計測できなかった。
【0006】
このことから、作業員が空調機の筐体内に進入しハンディタイプの風速計を用いて風量を計測することもあったが、当該作業員の体が筐体内の空気の流れに影響を与えてしまい、正確な風量を計測することができなかった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、空調機が設計上の風量を排出しているかを正確に計測できるようにした空調機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の空調機は、
空気を導入する開口部を有し該空気の流通路が形成された筐体と、該筐体内にて前記流通路の一部を構成するダクトに配設され該ダクト内を流通する空気と熱媒とを熱交換する熱交換器と、該熱交換器で熱交換された空気を前記筐体外に送出する送風機と、を備えた空調機であって、
前記筐体内には、前記熱交換器よりも上流側の前記流通路に連通しかつ、前記熱交換器が配設されているダクトよりも外周側に張り出す第1凹部と、前記熱交換器よりも下流側の前記流通路に連通しかつ、前記熱交換器が配設されているダクトよりも外周側に張り出す第2凹部と、が形成されており、
前記空調機は、前記第1凹部内に配設された第1圧力検知部と、前記第2凹部内に配設された第2圧力検知部と、前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部とで検知した差圧に基づき前記空調機から送出される風量を導出する導出部と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、第1凹部と第2凹部とが空気が流通する流通路よりも外周側に張り出して形成されているので、第1凹部内と第2凹部内とに風速分布が略均一な空間が形成されることとなり、第1凹部内と第2凹部内とに配設された第1圧力検知部と第2圧力検知部とが、それぞれ風速分布が略均一な空間の圧力を検知できることから、導出部が差圧から空調機の風量を正確に導出させることができるので、空調機が設計上の風量を排出しているかを正確に計測できる。
【0009】
前記第1圧力検知部は、前記第1凹部内の静圧を検知する第1静圧検知部であり、前記第2圧力検知部は、前記第2凹部内の静圧を検知する第2静圧検知部であることを特徴としている。
この特徴によれば、第1静圧検知部及び第2静圧検知部により検知した第1凹部及び第2凹部内の静圧に基づき、空調機の風量算出の精度を高めることができる。
【0010】
前記第1凹部は、前記ダクトの外周側に全周に亘って形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、熱交換前の流通路内の空気が第1凹部内に一時的に滞留するようになることから、第1凹部から下流側の熱交換器へ向けて空気を均一に送出させて熱交換させることができる。
【0011】
前記空調機は、前記第1凹部よりも上流側に前記流通路の一部を構成する枠体にエアフィルタが略密封状に配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、第1圧力検知部と第2圧力検知部とが配設される第1凹部と第2凹部とが、いずれもエアフィルタの下流側に配設されているので、一方の検知部のみがエアフィルタの目詰まりによる影響を受けることがなく、正確な流量を導出させることができる。
【0012】
前記第2凹部は、前記ダクトの外周側に全周に亘って形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、熱交換後の流通路内の空気が第2凹部内に一時的に滞留するようになることから、第2凹部から下流側に向けて空気を均一に送出させることができる。
【0013】
前記空調機は、前記第2凹部よりも下流側に前記流通路を流通する空気を加湿させる加湿器が配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、熱交換された空気が加湿器により加湿される前に、第2凹部内に配設された第2検知部に圧力を検知させるので、加湿による空気の圧力変化に影響されず、正確な流量を導出させることができる。
【0014】
前記エアフィルタが配設される枠体の断面積は、前記熱交換器が配設されるダクトの断面積よりも大きく形成されている。
この特徴によれば、エアフィルタが配設されている枠体はダクトよりも大きく開口されているので、エアフィルタによる抵抗があっても安定して熱交換器側に空気を送出させスムーズに熱交換させることができる。
【0015】
前記空調機は、前記導出部が導出した風量を表示させる表示部を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、空調機の風量を利用者や管理者に簡便に周知させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1における空調機を示す斜視図である。
図2】(a)は空調機の一部側断面図を示し、(b)は上面図を示す。
図3】(a)は筐体内部の拡大側断面図を示し、(b)は空気の流通路を示す。
図4】空調機のA-A断面図を示す。
図5】本実施例の変形例におけるは筐体内部の拡大側断面図を示す。
図6】(a)は実施例2における空調機の一部側断面図を示し、(b)は上面図を示す。
図7】(a)は筐体内部の側断面図を示し、(b)は空気の流通路を示す。
図8】(a)~(d)は、本発明の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る空調機を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例1に係る空調機につき、図1から図4を参照して説明する。先ず図1の符号1は、本発明の適用された空調機であり、後述するように温度及び湿度を調整した空気(空調済み空気)を生成し、送出するものである。
【0019】
図1に示されるように、空調機1は、空調前の外気を取り込む開口部5及び空調済みの空気を送出する開口部6(図2参照)を有し略直方体を成す筐体2を備えている。筐体2は、天板2A、側面板2B,2B、背面板2C、正面板2D、底板2Eとから構成され、これ等の板材の内部に空間を有しており、底板2Eを除く各板は、ウレタン等の断熱材を2枚の薄板で挟持させたサンドイッチパネルから成っている。また、筐体2には、筐体内の内部空間と連通し、開閉可能な扉が複数配設されている。
【0020】
図2(a),(b)及び図3に示されるように、筐体2には、その内部に配設され冷媒と空気とを熱交換する熱交換器7と、熱交換器7で熱交換された空気を適宜加湿する加湿器9と、筐体2内にて熱交換及び加湿された空気を筐体2外に送出するモータ18を備えた送風機8と、第1圧力検知部としての第1検知部4Aと第2圧力検知部としての第2検知部4Bとを有する圧力計4と、モータ18や加湿器9等の出力を制御し操作部30と後述する導出部が導出した風量を表示する表示部31とを有する制御部3が主に配設されている。
【0021】
すなわち空調機1は、筐体2内に上記した熱交換器7、加湿器9及び送風機8等の機器一式が配設されたユニットとして構成されており、このユニットを運搬し所望の個所に設置するとともに、付帯工事として後述する配管工事、及び配線工事等を行うことで使用に供される。
【0022】
以下、空調機1の構造について詳細に説明する。尚、図2に参照されるように、空気が流入する開口部5側を左側または上流側とし、熱交換後の空気が送出される開口部6側を右側または下流側として、上流側から順に説明する。また、実施例1における流通路とは、空気が流入する開口部5から空気が送出される開口部6間に形成される空気の主たる移動通路を指す(図3(b)の網掛け部参照)。
【0023】
図2(a),(b)に示されるように、空気を導入する開口部としての開口部5は、筐体2の図示左側に開口形成されており、その開口面の略全面に配されたフィルタ5aを介し筐体2の内外を連通している。開口部5には図示しないダクトが外方側から連結され、外気等の空調前の空気を筐体内に取り込むようになっている。
【0024】
図2(b)に示されるように、開口部5に連通する筐体2の内部には、筐体2の内面と制御部3の背面板3aと後述するエアフィルタ12の前面とから構成される空間S1が形成されている。開口部5から筐体2内に流入した空気は、まず空間S1に流入される。
【0025】
空間S1の下流側には、エアフィルタ12が、断面視略矩形状で図示左右方向に延設された短管状の枠体21に、全周に亘り固定されて配設されている。この枠体21は、筐体2の内面から上下左右に離間して設置されている。また、エアフィルタ12は、開口部5から流入した空気中の塵埃等のパーティクルを除去するために配設されており、枠体21に組み付けられた略矩形状のアルミフレーム12bに、合成繊維不織布またはガラス繊維の濾材12aが張設されて形成されている。なお、ここでの断面方向は、筐体2内の空気が流通する紙面左右方向に直交する方向を指す。よって、空間S1の空気は、エアフィルタ12を通過するとともに空気中のパーティクルが除去され、更に枠体21内を通過するようになっている。
【0026】
図2(a)及び図3に示されるように、エアフィルタ12が配設されている枠体21の下流側には、この枠体21よりも上下左右方向に大形に開口するとともに上流側から下流側へ延びる短管状の外側部22aと,該外側部22aの上流側端部から筐体2の内方側へ延びる前側部22bと,外側部22aの下流側端部から筐体2の内方側へ延びる後側部22cとからなり、空気の流通方向に開放された第1膨出ダクト22が配設されている。図2(a),(b)及び図3に示されるように、第1膨出ダクト22は、筐体2の空間S1における全周に亘って配設されており、上記した外側部22a、前側部22b及び後側部22cによって筐体2の内方に向け開放された略コ字状の断面形状が全周に亘り一様に形成されている。また、第1膨出ダクト22の外側部22aの外面は、筐体2の空間S1を構成する天板2A、側面板2B、背面板2C、底板2E及び制御部3の背面板3aの内面に全周に亘り接して固定されている。また、第1膨出ダクト22の外側部22aから筐体2の内方側へ延びる上流側の前側部22bは、空間S1とその下流側の後述する空間S2とを密封状に区画しており、更に外側部22aから筐体2の内方側へ延びる下流側の後側部22cは、空間S2とその下流側の後述する空間S3’とを密封状に区画している。
【0027】
また、前述した枠体21は、前側部22bの前面に一方端部が溶接等により固定に接続されており、前側部22bから上流側へ向けて配設されている。エアフィルタ12の後面側である下流側から枠体21の内方側と第1膨出ダクト22の内方側には、空間S1よりも圧力の低い空間S2が形成されている。また、第1膨出ダクト22が枠体21よりも大形であり筐体2の内面側に近接して配設されているので、空間S2内において枠体21よりも外方に膨出する第1凹部としての空間Nが筐体2の内面側の全周に亘り形成されるようになっている。
【0028】
図3に示されるように、第1膨出ダクト22の外側部22aから延びる流通路側へ延びる下流側の後側部22cは、上述した前側部22bよりも筐体2の内方側に延びて形成されている。後側部22cの内端部には、下流側である開口部6方向へ延びる短管状のダクト23が溶接等により固定に接続されている。
【0029】
ダクト23の内部には、熱交換器7が配設されている。図4に示されるように熱交換器7は、流通路方向に空気が流通する隙間を設け複数の薄板状の金属板を平行に並べて配列されたフィン群Fと、このフィン群Fを貫通し内部に冷媒が流通する伝熱管17と、冷媒を減圧させる図示しない膨張弁と、から主に構成されている。また、伝熱管17は筐体2に形成された孔部を貫通し、その両端部7a,7bが筐体2の外部に配設され、図示しない冷媒管と連通している。更に筐体2の外部に配設されている図示しない圧縮機で圧縮された冷媒が前記した冷媒管を介し端部7aから熱交換器7へ供給され、熱交換器7で空気と熱交換された冷媒が端部7bから圧縮機へ排出されることで、冷媒が循環するようになっている。本実施例では熱媒の一種として冷媒(R410A)が適用されているが、他の代替フロン、アンモニアや炭酸ガス等の冷媒のみならず、水やブラインなど全ての熱媒に適用可能である。
【0030】
図2(a),(b)及び、図3に示されるように、熱交換器7が配設されているダクト23の下流側には、このダクト23及び枠体21よりも上下左右方向に大形で且つ第1膨出ダクト22の外側部22aよりも小形に開口するとともに上流側から下流側へ延びる短管状の外側部24aと,該外側部24aの上流側端部から筐体2の内方側へ延びる前側部24bと,外側部24aの下流側端部から筐体2の内方側へ延びる後側部24cとからなり、空気の流通路側が開放された第2膨出ダクト24が配設されている。また、第2膨出ダクト24は、前側部24bの内端部がダクト23の下流側の端部と溶接等により固定に配設されている。図2(a),(b)及び図3に示されるように、第2膨出ダクト24は、上記した外側部24a、前側部24b及び後側部24cによって筐体2の内方に向け開放された略コ字状の断面形状が全周に亘り一様に形成されている。また、第2膨出ダクト24の外側部24a、前側部24b及び後側部24cは、その内方の空間S3と後述する空間S3’とを密封状に区画している。熱交換器7よりも下流側である第2膨出ダクト24の内方側と後述する加湿器9よりも上流側とにかけて、空間S2よりも圧力の低い空間S3が形成されている。このように第2膨出ダクト24が区画する空間S3には、熱交換後の空気が通過するようになっている。
【0031】
また、第2膨出ダクト24がダクト23よりも大形であり、筐体2の天板2A及び一方側の側面板2B側に延びて形成されているので、空間S3において、ダクト23よりも外方に膨出する第2凹部としての空間Mが形成されている。尚、本実施例において空間Mは、図2(a)に示されるように、筐体2の天板2Aと一方側の側面板2B側にのみ膨出する空間が形成されるようになっているが、これに限られず、筐体2の全周に亘り形成されることとしてもよい。
【0032】
図2(a)及び、図3(a)に示されるように、第2膨出ダクト24の下流側には、断面視略矩形状で短管状の枠体25が溶接等により固定に接続されている。この枠体25の内部には、加湿器9が配設されている、加湿器9は、熱交換器7にて熱交換された空気を加湿するための給水管9aから構成されており、筐体2の内外を連通する給水管9a内に供給される水を、この給水管9aに開口形成された複数の噴霧口9b,…から熱交換器7側へ噴霧させることで空気を加湿するようになっている。
【0033】
加湿器9の下流側には、筐体2の上面2A、側面板2B,2B、正面板2D,底面2Eと、第1膨出ダクト22の後側部22cから構成される空間S3’が形成されている。空間S3’は、加湿前の空間S3と略同じではあるが僅かに異なる圧力の空間であり、加湿器9で加湿された空気は、この空間S3’内に流出されるようになっている。
【0034】
筐体2の空間S2の最下部に設けられた底板2Eの一部は、ドレンパン10としてとして構成されている。ドレンパン10は、図示左右方向の中央部が最も低い底部である凹形状のテーパ面が形成されており、開口部5から空間S1に取り込まれる取り込み空気に伴い、筐体2内に流入する雨水や結露水や、熱交換器7において熱交換時に生じる結露による水分、及び加湿器9から噴霧される水分をドレン水として受水可能とされている。
【0035】
また筐体2の正面の下部に、ドレンパン10の最も低い底部と筐体2外部とを連通するドレン口10aが形成されており、後述するように、空調機1の設置の際には付帯工事として、ドレン口10aに順次ドレン配管や、排水トラップを接続するとともに、この排水トラップを下水管等の排水管に接続する配管工事を要する。
【0036】
図2(a),(b)に示されるように、下流側の空間S3’には、底板2E上に配設されたモータ18を駆動源とする送風機8が配設されている。本実施例の送風機8は、縦長の細長い板状の羽根が筒状に取り付けられているシロッコファンであり、モータ18を駆動させ送風機8の図示しない羽根車が回転することで、空間S3’内の空気を、筐体2の正面板2Dに形成されている開口部6を介し、筐体2外方に向け送出するようになっている。
【0037】
すなわち筐体2の内部には、筐体2の内面と第1膨出ダクトの前側部22bとエアフィルタ12の上流側とで形成される空間S1と、エアフィルタ12の下流側から枠体21及び第1膨出ダクト22の内方側で熱交換器7よりも上流側にかけて形成される空間S2と、熱交換器7よりも下流側から第2膨出ダクト24の内方側で加湿器9よりも上流側に形成される空間S3と、加湿器9よりも下流側から筐体2の内面と第1膨出ダクトの後側部22cとにより形成される空間S3’とに画成され、且つ空気の流通順に空間S1,S2,S3及びS3’は連通状態となっている。また、前側部22bの前後で空間S1と空間S2が仕切られ、また後側部22cの前後で空間S2と空間S3’とが仕切られている。これにより、開口部5を介し筐体2の空間S1に流入した空気は、エアフィルタ12を通過して空間S2へ流入され、空間S2の空気が下流側へ向けて移動することで熱交換器7において熱交換されたのち空間S3へ流入され、更に空間S3の空気が下流側へ向けて移動することで加湿器9を通過するに伴い加湿されて空間S3’に流入されるようになっている。
【0038】
また、図2(a),(b)及び図3に示されるように、空間S2内における枠体21よりも筐体2の内面側に膨出する空間Nには、圧力計4が配設されている。圧力計4は、制御部3の背面板3aに固定して配設されており、制御部3内に配設されている図示しない導出部に電気的に接続されている。
【0039】
圧力計4は、該圧力計4から延出する2本の空気用のチューブC1,C2を備えており、チューブC1の先端開口は静圧を検知する第1静圧検知部である第1検知部4Aとして配設され、チューブC2の先端開口は静圧を検知する第2静圧検知部である第2検知部4Bとして配設されている。圧力計4は、第1検知部4Aを介して空間Nにおける圧力の空気を取り入れるとともに、第2検知部4Bを介して空間Mにおける圧力の空気を取り入れ、これらの圧力の差圧のデータを電気信号として、制御部3内の導出部に送信するようになっている。また制御部3内の導出部は、第1検知部4Aで検出された圧力(静圧)と、第2検知部4Bで検出された圧力(静圧)の差圧に基づき、空調機1から送出される風量(単位時間あたりの空気量)を導出するようになっている。
【0040】
図3(a)に示されるように、圧力計4から延出するチューブC1は、第1膨出ダクト22内の空間Nに配設されており、その先端開口である第1検知部4Aを介し空間N内の空気を圧力計4内に取り入れるようになっている。また、圧力計4から延出するチューブC2は、第1膨出ダクト22の後側部22cに形成された貫通孔22dに密封状に挿通され、更に第2膨出ダクト24の前側部24bに形成された貫通孔24dに密封状に挿通され、第2膨出ダクト24内の空間Mに配設されており、その先端開口である第2検知部4Bを介し空間M内の空気を圧力計4内に取り入れ、これらの圧力の差圧検出するようになっている。尚、貫通孔22d及び貫通孔24dには図示しないグロメットが嵌合されており、チューブC2の摩耗を防止し、かつ空間S2の空気が空間N及び空間M側へ漏出し難いようになっている。
【0041】
図3(b)に示されるように、エアフィルタが配設される枠体21の開口面積は、熱交換器7が配設されるダクト23の開口面積よりも大きく形成されていることから、空間S1の空気が空間S2を通じて空間S3側へ向けてスムーズに移動されるようになっている。これにより枠体21の開口面からダクト23の開口面を通じる空気の流通路Rが生成されるようになっており、この流通路Rよりも筐体2内における外周側へ張り出す空間N及び空間M内は、空気が流通し難く滞留状態にあり、安定した静圧を検出可能な空間として形成されるようになっている。
【0042】
空間N内に配設された第1検知部4Aと、空間M内に配設された第2検知部4Bとは、流通路Rよりも外周側へ張り出すことで空気が流通し難く滞留する空間内、すなわち動圧が生じ難く安定した静圧の空間内で圧力を検知させることができることから、制御部3内の導出部は、第1検知部4Aが検出した静圧と第2検知部4Bが検出した静圧との差圧に基づき、熱交換器7の面風速を算出し、当該面風速に熱交換器7の通風面積を乗じることで、空調機1の風量を正確に導出することができるようになっている。静圧の差圧と熱交換器7の面風速との関係は、熱交換器7を構成する部材のチューブ径、チューブピッチ、フィン厚み、フィンピッチ、フィン形状、チューブ列ピッチ、チューブ列数等の構造条件や、冷却時/加熱時等の運転条件などに影響されるため、予め当該空調機1の熱交換器7の静圧の差圧と熱交換器7の面風速の関係、及び熱交換器7の通風面積を制御部3内の導出部に入力しておく。また、このようにして導出部が導出した風量を筐体2の側面板2Bに配設されている表示部31に表示させることで、管理者や利用者が空調機1の風量を簡便に確認することができるようになっている。
【0043】
また、本実施例においては、第2検知部4Bを空間S3内の空間Mに配置させ圧力を検知させることとしたが、これに限られず、第1膨出ダクト22を形成する後側部22cの貫通孔22dにチューブC2を挿通させ、空間S3’に第2検知部4Bを配設し、空間S3’の圧力を検知させることとしてもよい。ただし、加湿器9を通過した加湿済の空気の圧力を検知させることから、空間S3内の空間Mで検出させるよりも検出ブレや加湿前と加湿後の圧力差が生じることとなるため、第2検知部4Bは空間S3内の空間Mに配設し静圧を検出させることが好ましい。
【0044】
本実施例の変形例として、例えば図5に示されるように、第1検知部4Aを配置した空間Nと空間S2との間に、これらを連通する小孔27aを備えた板材27を配置するとともに、第2検知部4Bを配置した空間Mと空間S3との間に、これらを連通する小孔28aを備えた板材28を配置してもよい。このようにすることで、空間N及び空間Mにおいて生じる動圧を確実に減殺し、空間N及び空間Mにおける静圧を高精度に検知することができる。
【実施例2】
【0045】
次に、本発明に係る空調機の実施例2について、図6(a),(b)、図7を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0046】
図6(a)は、実施例2における空調機11の一部側断面図を示している。空調機11は、前述した実施例1の空調機1のうち、加湿器、加湿器を配設させるための枠体、及び第2膨出ダクトが省略された構造となっている。
【0047】
図6(a),(b)に示されるように、実施例2における空調機11には、開口部5の下流側からエアフィルタ12の上流側にかけて形成され、筐体2の内面と制御部3の背面板3aとエアフィルタ12の上流側とで形成される空間S1と、エアフィルタ12の下流側から枠体21及び第1膨出ダクト22の内方側で熱交換器7よりも上流側に形成される空間S2と、熱交換器7よりも下流側から開口部6にかけて筐体2の内面と第1膨出ダクト22の後側部22cとにより形成される空間S4とに画成されている。また、空間S4において、ダクト23よりも外方に膨出する第2凹部としての空間Lが形成されている。
【0048】
図7に示されるように、空間S2内における枠体21よりも筐体2の内面側に膨出する空間Nには、圧力計4が配設されている。圧力計4から延出するチューブC1は、第1膨出ダクト22内の空間Nに配設されており、その先端開口である第1検知部4Aを介し空間N内の空気を圧力計4内に取り入れるようになっている。また、圧力計4から延出するチューブC2は、第1膨出ダクト22の後側部22cに形成された貫通孔22dに密封状に挿通され、空間S4内の空間Lに配設されており、その先端開口である第2検知部4Bを介し空間L内の空気を圧力計4内に取り入れ、圧力計4が空間Nと空間Mの差圧を検出し、制御部3内の導出部に電気的に送信するようになっている。
【0049】
空間S4内の空間Lは、空気の流通路Rよりも筐体2内における外周側へ張り出す空間となっており、空気が流通し難く、安定した静圧が検出可能な空間が形成されるようになっている。
【0050】
すなわち、空間N内に配設された第1検知部4Aと、空間L内に配設された第2検知部4Bとは、流通路Rよりも外周側へ張り出すことで空気が流通し難く滞留する空間内、すなわち動圧が生じ難く安定した静圧の空間内で圧力を検知させることができることから、制御部3内の導出部が第1検知部4Aが検出した圧力と第2検知部4Bが検出した圧力の差圧に基づき、空調機1の風量を正確に導出させることができるようになっている。
【0051】
このように、空気を導入する開口部5を有し空気が流通する流通路Rが形成された筐体2と、該筐体2内にて流通路Rの一部を構成するダクト23に配設され該ダクト23内を流通する空気と熱媒とを熱交換する熱交換器7と、該熱交換器7で熱交換された空気を筐体外に送出する送風機8と、を備えた空調機1であって、筐体2内には、熱交換器7よりも上流側の流通路Rに連通しかつ、熱交換器7が配設されているダクト23よりも外周側に張り出す第1凹部としての空間Nと、熱交換器7よりも下流側の流通路Rに連通しかつ、熱交換器7が配設されているダクト23よりも外周側に張り出す第2凹部としての空間Mと、が形成されており、空調機1は、空間Nに配設された第1検知部4Aと、空間M内に配設された第2検知部4Bと、第1検知部4Aと第2検知部4Bとで検知した差圧に基づき空調機1から送出される風量を導出する導出部と、を備えることから、空間Nと空間Mとが空気が流通する流通路Rよりも外周側に張り出して形成されているので、空間N内と空間M内とに風速分布が略均一な空間が形成されることとなり、空間N内と空間M内とに配設された第1検知部4Aと第2検知部4Bとが、それぞれ風速分布が略均一な空間の圧力を検知できることから、導出部が差圧から空調機1の風量を正確に導出させることができるので、空調機1が設計上の風量を排出しているかを正確に計測できる。
【0052】
また第1検知部4A及び第2検知部4Bにより検知した空間N及び空間Mの静圧に基づき、空調機1の風量算出の精度を高めることができる。
【0053】
また、空間Nは、ダクト23の外周側に全周に亘って形成されていることから、熱交換前の流通路R内の空気が空間Nに一時的に滞留するようになり、空間Nから下流側の熱交換器7へ向けて空気を均一に送出させて熱交換させることができる。
【0054】
また、空調機1は、空間Nよりも上流側に流通路Rの一部を構成する枠体21にエアフィルタ12が略密封状に配設されていることから、第1検知部4Aと第2検知部4Bとが配設される空間Nと空間Mとが、いずれもエアフィルタ12の下流側に配設されているので、一方の検知部のみがエアフィルタ12の目詰まりによる影響を受けることがなく、正確な流量を導出させることができる。
【0055】
また、空間Mは、ダクト23の外周側に全周に亘って形成されていてもよく、熱交換後の流通路R内の空気が空間M内に一時的に滞留するようになり、空間Mから下流側に向けて空気を均一に送出させることができる。
【0056】
また、空調機1は、空間Mよりも下流側に流通路Rを流通する空気を加湿させる加湿器9が配設されていることから、熱交換された空気が加湿器9により加湿される前に、空間Mに配設された第2検知部4Bに圧力を検知させるので、加湿による空気の圧力変化に影響されず、正確な流量を導出させることができる。
【0057】
また、エアフィルタ12が配設される枠体21の断面積は、熱交換器7が配設されるダクト23の断面積よりも大きく形成されていることから、エアフィルタ12による抵抗があっても安定して熱交換器7側に空気を送出させスムーズに熱交換させることができる。
【0058】
また、空調機1は、導出部が導出した風量を表示させる表示部31を備えることから、空調機1の風量を利用者や管理者に簡便に周知させることができる。
【0059】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0060】
例えば、ダクト23の配設位置を上流側へ移動させてもよく、例えば、図8(a)に示す変形例のように、第1膨出ダクト22の後側部22cの端部がダクト23の外周側における前後方向の略中央位置に溶接させることとしてもよい。
【0061】
また、図8(b)に示す変形例のように、第1膨出ダクト122の外側部122aを筐体2の前後方向に延出させ、第1膨出ダクト122の後側部122cをダクト23の下流側端部に溶接させることとしてもよい。
【0062】
また、図8(c)に示す変形例のように、圧力計4を筐体2の筐体外に配設させることとし、筐体外と空間Nとを密封状に連通する貫通孔2xと、筐体外と空間Lとを密封状に連通する貫通孔2x’とを設け、空間Nに第1検知部4Aを配設し空間Lに第2検知部4Bを配設させることとしてもよい。
【0063】
また、図8(d)に示す変形例のように、圧力計4を第1膨出ダクト22内の空間Nから空間L内へと移動させ、空間Lから空間Nに向けてチューブC1を延出させ、その先端開口である第1検知部4Aを空間N内に配設し、第2検知部4Bを空間L内に配設させることとしてもよい。
【0064】
また、本実施例の圧力計4は、第1検知部4Aから空間N内の空気を取り入れ、第2検知部4Bから空間M内の空気を取り入れ、これらの圧力の差圧のデータを、制御部3内の導出部に電気的に送信するようになっているが、これに限られず、例えば圧力計からチューブに代えて2本のコードが延出され、一方のコード先端の第1検知部4Aが空間N内の圧力を検出するとともに、他方のコード先端の第2検知部4Bが空間M内の圧力を検出して、圧力計4がそれぞれの圧力の差を導出し、制御部3に送信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 空調機
2 筐体
3 制御部
4 圧力計
4A 第1検知部(第1静圧検知部)
4B 第2検知部(第2静圧検知部)
5 開口部
6 開口部
7 熱交換器
8 送風機
9 加湿器
9a 給水管
9b 噴霧口
10 ドレンパン
11 空調機
12 エアフィルタ
18 モータ
21 枠体
22 第1膨出ダクト
23 ダクト
24 第2膨出ダクト
25 枠体
31 表示部
N 空間(第1凹部)
M 空間(第2凹部)
L 空間(第2凹部)
R 流通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8