(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】マットレス換気システムおよび風量の制御方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/12 20060101AFI20220629BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A47C27/12 D
A47C27/00 F
(21)【出願番号】P 2017255281
(22)【出願日】2017-12-30
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】安藤 強史
(72)【発明者】
【氏名】高岡 本州
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-097460(JP,U)
【文献】特開2008-119454(JP,A)
【文献】特開2016-158636(JP,A)
【文献】特開昭62-246321(JP,A)
【文献】登録実用新案第3154293(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0041246(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00-22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マットレス内に生じさせる風により前記マットレスの状態を制御するマットレス換気システムであって、
前記マットレスの使用者の睡眠深度の情報を取得する睡眠情報取得部と、
前記使用者の周辺の湿度を反映する前記マットレスの湿度情報、および前記マットレスの温度情報を取得するマットレス情報取得部と、
前記マットレス内の風量を制御
し、前記睡眠深度が深くなる期間において当該睡眠深度が浅くなる期間に比して前記風量を多くする風量制御部とを設け、
前記風量制御部は、前記温度情報および前記湿度情報をパラメータとする算出式を用いた算出結果に基づいて前記風量を制御するものであって、
前記算出式は、
前記温度が高いほど前記風量が多くなり、かつ、前記湿度が高いほど前記風量が多くなるように設定されており、
前記睡眠深度が既定の条件を満たしたときに更新されることを特徴とするマットレス換気システム。
【請求項2】
前記睡眠情報取得部は、
前記使用者の体動を検知する体動検知センサを含み、該体動検知センサの検知結果に基づいて前記睡眠深度の情報を取得することを特徴とする請求項1に記載のマットレス換気システム。
【請求項3】
前記マットレス内に風を生じさせる風生成部を備え、
前記風生成部は、
略身長方向へ伸びるとともに複数の通風孔を有する導風管を含み、該導風管内への空気の送出または該導風管内からの空気の吸引によって前記風を生じさせるものであり、
前記通風孔は、脚部対応部よりも胴部対応部の方が前記風量が多くなるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載のマットレス換気システム。
【請求項4】
前記マットレス情報取得部は、
複数の温湿度センサを含み、該複数の温湿度センサそれぞれによって検知される温度および湿度のうち最も高い温度および湿度の情報を、前記風量の制御に用いられる情報として取得することを特徴とする請求項1に記載のマットレス換気システム。
【請求項5】
前記風生成部における風を生じさせる動作が、断続的に行われることを特徴とする請求項3に記載のマットレス換気システム。
【請求項6】
マットレス内に生じさせる風により前記マットレスの状態を制御するマットレス換気システムであって、
前記マットレスの使用者の睡眠深度の情報を取得する睡眠情報取得部と、
前記使用者の周辺の湿度を反映する前記マットレスの湿度情報、および前記マットレスの温度情報を取得するマットレス情報取得部と、
前記湿度情報および前記温度情報に基づいて前記マットレス内の風量を制御し、前記睡眠深度が深くなる期間において当該睡眠深度が浅くなる期間に比して前記風量を多くする風量制御部と、
前記マットレス内に風を生じさせる風生成部と、を備え
前記風生成部は、
略身長方向へ伸びるとともに複数の通風孔を有する導風管を含み、該導風管内への空気の送出または該導風管内からの空気の吸引によって前記風を生じさせるものであり、
前記通風孔は、脚部対応部よりも胴部対応部の方が前記風量が多くなるように形成されており、
前記風生成部における風を生じさせる動作が、断続的に行われ、
前記マットレス情報取得部は、前記風を生じさせる動作が停止した時の前記温度情報および前記湿度情報を取得することを特徴とするマットレス換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレス換気システムおよび風量の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
理想的なマットレスに求められる7大要素として、(1)適度な保温性があること(暖かさを調整しやすいこと)、(2)適度な透湿性があること(汗をかいても蒸れないこと)、(3)適度な反発力があること(寝返り性がよいこと)、(4)体圧分散性がよいこと(適度な柔らかさがあること)、(5)アレルゲンが少ないこと(ダニ等が繁殖しにくいこと)、(6)クリーニングしやすいこと(水に強く乾燥が速いこと)、および(7)環境にやさしいこと(リサイクルしやすい素材であること)が挙げられる。
【0003】
前記7大要素を高次元で満足できるマットレス用クッション材としては、例えば、特許文献1に記載されたフィラメント3次元結合体が知られている。特許文献1によれば、水平に配置された複数のノズルから溶融状態のポリエチレン樹脂を鉛直方向下向きに押し出した後、直径が1mm前後の溶融フィラメントを冷却水中に落下させて、水の浮力で溶融フィラメントのループを形成させると同時に、複数の溶融フィラメントどうしを3次元的に融着結合させることで、空隙率が90%を超える極めて風通しのよいフィラメント3次元結合体を製造することが開示されている。
【0004】
フィラメント3次元結合体(すなわちマットレス用クッション材)は、その上面に季節に応じて最適な保温性を有するクッション材カバー(あるいはマットレスパッド)を載せて、マットレスとして使用される。ところが、風通しのよいフィラメント3次元結合体をクッションとして用いたマットレスであっても、その使用者が寝室内の温度と湿度が高い時に蒸し暑さを感じて、夜中に目が覚める(中途覚醒する)といった問題があった。
【0005】
この問題は、深い眠り(ノンレム睡眠)に入る際に、深部体温を下げるために多量の発汗が行なわれる生理現象に起因している。特に、入眠直後の最初のノンレム睡眠への移行時において発汗量は最も多く、深部体温が十分に下がって睡眠時の深さが深くなるほど質の高い睡眠が得られるが、発汗により寝床内の湿度が高くなると汗が蒸発しにくくなると、深い眠りに入ることができなかったり、中途覚醒するようになる。
【0006】
この問題の解消方法として、綿などの吸湿性のよい中材を用いた掛布団と敷布団(マットレスパッド)を用いることにより、発汗により発生した水蒸気を掛布団と敷布団の中材で吸収し、寝床内の湿度が過度に高まらないようにする方法が考えられる。しかしこの場合、中材の吸湿性を回復させるためには、頻繁に天日干しをしなければならないという煩わしさや、ダニが繁殖しやすいといった欠点があった。
【0007】
また、他の方法として、例えば特許文献2には、入眠直後の発汗量が多い時間帯のみ、空調機で寝室内の温度を下げて蒸し暑さを感じさせない方法が記載されている。更に他の方法として、例えば特許文献3には、衣服内に発汗を検知するセンサを設け、発汗量を測定することにより入眠を判定し、寝冷えを防止するために入眠後の室内温度を高くするように制御することが記載されている。更に他の方法として、例えば特許文献4には、体動センサを用いて睡眠状態を判定し、快眠と寝覚めを良くするために、睡眠深度が深い時に布団の温度が低く、睡眠深度が浅い時に布団の温度が高くなるように制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2017/122370号
【文献】特開平7-71804号公報
【文献】特開2001-78966号公報
【文献】特開2017-211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載された方法では、空調機の温度制御プログラムを予め作成する必要があり、作成したプログラム(予定した睡眠深度変化のタイミング)に対して実際の睡眠深度変化のタイミングがずれた場合には効果が得られないといった課題や、睡眠深度変化のタイミングが互いに異なる複数の人が一つの同じ部屋で就寝する場合には、全ての人に快適な温湿度環境を提供できないといった課題がある。
【0010】
特許文献3に記載された方法では、発汗センサを衣服に付けるのが煩わしいといった課題がある。また更に、入眠直後に睡眠深度が深くなっていく過程において、多量の発汗が生じた時に蒸し暑さを感じるといった課題がある。
【0011】
特許文献4に記載された方法では、睡眠深度が浅いと布団内の温度が高く制御される。そのため、入眠直後に睡眠深度が深くなっていく過程の初期(睡眠深度が浅い時期)において、多量の発汗が生じた時に蒸し暑さを感じるといった課題や、布団内の温度調整が不要な条件下(布団内の温度や湿度が所定範囲内の時など)において送風が止まった際に、発汗により衣服や寝具に吸着された水分が拡散せず、蒸し暑さを感じるといった課題がある。
【0012】
更に、特許文献2および3に記載されたものは、室内の温度や湿度を睡眠に適するように調節するものであって、人体を被う寝具自体の状態を調節すると言う考えはない。これに対して、特許文献4に記載されたものは、寝具自体の温度や湿度を睡眠状態に適するように調節するものである点で特許文献2および3に記載されたものとは異なる。しかしながら特許文献4に記載されたものも、人体に最も近い外部環境を睡眠状態に適するように温度、湿度を強制的に設定するものであって、人体自体が睡眠状態に応じて発生する熱、水分を利用して寝具の状態を睡眠に適するように寝具内の通風を制御すると言う考えがなかった。
【0013】
また、一般的な寝具(布団や敷布団あるいはマットレス)においては、ある程度の保温性を確保するために通風性が低くされている(風通しが良くない)ため、送風口から近い場所と送風口から遠い場所では温湿度差が生じやすくなり、寝床内の温度や湿度を均一に調整することが難しいといった課題があった。逆に、風通しを高めようとすれば、保温性が損なわれ、風が直接身体に当たると起床時にだるさを感じるといった課題があった。さらには、睡眠深度が深くなる過程、すなわち深部体温を下げる過程において、単に寝床内の温度を下げる方法では、汗をかかなくても体温が下がるため、人の持つ生理的な機能を弱めてしまう可能性もあった。また、マットレス内に風を生じさせるシステムにおいて、睡眠深度に加えて温度と湿度の両方を考慮して風量制御を行う発想はこれまでに無く、特に風量制御については改善の余地がある。
【0014】
本発明は上記課題に鑑み、人体自体が睡眠状態に応じて発生する熱、水分を利用して寝具の状態を睡眠に適するように寝具内の通風を適切に制御することが可能となるマットレス換気システムおよび風量の制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るマットレス換気システムは、マットレス内に生じさせる風により前記マットレスの状態を制御するマットレス換気システムであって、前記マットレスの使用者の睡眠深度の情報を取得する睡眠情報取得部と、前記マットレス内の風量を制御する風量制御部とを設け、前記風量制御部は、前記睡眠深度が深くなる期間において、当該睡眠深度が浅くなる期間に比して前記風量を多くする構成とする。
【0016】
また上記構成としてより具体的には、前記使用者の周辺の湿度を反映する前記マットレスの少なくとも湿度情報を取得するマットレス情報取得部を設け、前記風量制御部は、少なくとも前記湿度情報に基づいて、前記風量を制御する構成としてもよい。また上記構成としてより具体的には、前記マットレス情報取得部は、前記マットレスの温度情報をも取得し、前記風量制御部は、前記湿度情報および前記温度情報に基づいて、前記風量を制御する構成としてもよい。また上記構成としてより具体的には、前記マットレス情報取得部は、前記使用者の体表面に近接する前記マットレス上面部付近に設けたセンサーを用いて、前記湿度情報および前記温度情報の少なくとも一方を取得する構成としてもよい。
【0017】
また上記構成としてより具体的には、前記風量制御部は、前記温度情報および前記湿度情報をパラメータとする算出式を用いた算出結果に基づいて前記風量を制御するものであって、前記算出式は、前記温度が高いほど前記風量が多くなり、かつ、前記湿度が高いほど前記風量が多くなるように設定されており、前記睡眠深度が既定の条件を満たしたときに更新される構成としてもよい。本構成によれば、温度および湿度をバランス良く考慮した風量制御の実現が容易となる。
【0018】
また上記構成としてより具体的には、前記風量制御部は、前記睡眠深度の各ピーク時の近傍のタイミングそれぞれを認識し、前記タイミングそれぞれが到来する度に、前記算出式を更新する構成としてもよい。本構成によれば、多汗期と少汗期のそれぞれに適応した算出式を用いてより理想的な風量の制御が容易となる。
【0019】
また上記構成としてより具体的には、前記睡眠情報取得部は、前記使用者の体動を検知する体動検知センサを含み、該体動検知センサの検知結果に基づいて前記睡眠深度の情報を取得する構成としてもよい。
【0020】
また上記構成としてより具体的には、前記マットレス内に風を生じさせる風生成部を備え、前記風生成部は、略身長方向へ伸びるとともに複数の通風孔を有する導風管を含み、該導風管内への空気の送出または該導風管内からの空気の吸引によって前記風を生じさせるものであり、前記通風孔は、前記脚部対応部よりも前記胴部対応部の方が前記風量が多くなるように形成された構成としてもよい。本構成によれば、使用者の発汗量が比較的少ないと見込まれる脚部対応部側よりも、使用者の発汗量が比較的多いと見込まれる胴部対応部側において風量が多くなり、効率の良い換気が可能となる。
【0021】
また上記構成としてより具体的には、前記通風孔は、前記導風管の伸びる方向に沿って並ぶように配置されており、前記脚部対応部に対応する部分よりも前記胴部対応部に対応する部分の方が、間隔が狭くなるように配置された構成としてもよい。
【0022】
また上記構成としてより具体的には、前記マットレス情報取得部は、複数の温湿度センサを含み、該複数の温湿度センサそれぞれによって検知される温度および湿度のうち最も高い温度および湿度の情報を、前記風量の制御に用いられる情報として取得する構成としてもよい。本構成によれば、使用者(就寝者)が寝返り等で移動しても、使用者の体温や発汗の影響を最も強く受ける温湿度センサの温度情報と湿度情報を用いて風量を制御できるので、より使用者の体感に近い温度および湿度での風量制御が可能となる。
【0023】
また上記構成としてより具体的には、前記風生成部における風を生じさせる動作が、断続的に行われる構成としてもよい。本構成によれば、一時的に速い風の流れを作ることができるので、衣服やクッション材カバー内で保持された水分の拡散効果を高めることができる。特に、衣服やクッション材カバーに一旦保持された水分は拡散しにくくなるが、このようにすることで単位時間あたりの風量を過度に多くすることなく、短時間の速い風によって水蒸気の拡散力が高まるので、汗が速やかに拡散され、寝床内の温湿度が過度に上昇することを抑え、快適な寝床内湿度を保つことができる。
【0024】
また上記構成としてより具体的には、前記マットレス情報取得部は、前記風を生じさせる動作が停止した時の前記温度情報および前記湿度情報を取得する構成としてもよい。本構成によれば、温度や湿度の検知精度に対する風の影響を抑え、極力精度の高い温度および湿度の情報を取得することが容易となる。
【0025】
また上記構成としてより具体的には、前記マットレスを有するマットレス換気システムであって、前記マットレスは、通風性を有するクッション材と、該クッション材の少なくとも上面に設けられるクッション材カバーを含み、該クッション材カバーは、JIS L 1096-1999 8.27.1 A法に準じた通気性測定方法により測定される通気度が10cm3/cm2・s以上であって200cm3/cm2・s以下となる構成としてもよい。本構成によれば、適度な通気性を有するクッション材カバーにより水蒸気の拡散性を損なうことなく風速が緩和され、皮膚表面において風速の速い部位で感じる温湿度感と、風速の遅い部位で感じる温湿度感との差を少なくすることができる。
【0026】
また上記構成としてより具体的には、上面で使用者を支持する前記マットレスは、通風性を有するクッション材と、該クッション材を被覆するクッション材カバーを有し、該クッション材カバーの上面の少なくとも一部の通気度が、該クッション材カバーの側面の通気度よりも高い構成としてもよい。本構成によれば、クッション材カバーの上面の通気度が高いことから、使用者の発汗による水蒸気がマットレス内部に速やかに拡散されると同時に、使用者を支持するクッション材カバー上面近傍に、風量を過度に高めることなく効率的に風を送ることができる。その結果、使用者と接するクッション材カバー上面近傍に導かれた風(空気流)によって、クッション材カバー内に滞留する水蒸気が拡散され、マットレスの外部へ排出される。
【0027】
また本発明に係る風量の制御方法は、マットレス内に風を生じさせる風生成装置の風量の制御方法であって、前記マットレスの使用者の睡眠深度の情報を取得する睡眠情報取得ステップと、前記マットレスの温度および湿度の情報を取得する温湿度情報取得ステップと、前記睡眠深度、前記温度、および前記湿度に基づいて前記風量を制御する制御ステップと、を含む制御方法とする。
【0028】
また本発明に係るマットレス換気システムは、上面で使用者を支持するマットレスと、 前記マットレスの温度および湿度の情報を取得する温湿度情報取得部と、前記マットレス内に風を生じさせる風生成部と、前記風生成部の風量を制御する風量制御部とを備え、前記マットレスは、通風性を有するクッション材と、該クッション材を被覆するクッション材カバーを含み、該クッション材カバーの上面の通気度が、側面の通気度より高い構成とする。
【0029】
本構成によれば、クッション材カバーの上面の通気度が高いことから、使用者の発汗による水蒸気がマットレス内部に速やかに拡散されると同時に、使用者を支持するクッション材カバー上面近傍に、風量を過度に高めることなく効率的に風を送ることができる。その結果、使用者と接するクッション材カバー上面近傍に導かれた風(空気流)によって、クッション材カバー内に滞留する水蒸気が拡散され、マットレスの外部へ排出される。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るマットレス換気システムおよび風量の制御方法によれば、人体自体が睡眠状態に応じて発生する熱、水分を利用して寝具の状態を睡眠に適するように寝具内の通風を適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態に係るマットレス換気システム1のブロック図である。
【
図6】マットレス換気システム1の使用時における各項目の変化状況に関するグラフである。
【
図7】マットレス換気システム1の動作に関するフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係るマットレス換気システム101のブロック図である。
【
図9】マットレス換気システム101の上面図である。
【
図10】第3実施形態に係るマットレス換気システム201のブロック図である。
【
図11】マットレス換気システム201の正面図である。
【
図12】他の形態のマットレス換気システム201の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態について、第1実施形態から第3実施形態のそれぞれを例に挙げ、図面を参照しながら以下に説明する。なお以下の説明における上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、各図に示すとおりである。
【0033】
1.第1実施形態
まず第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係るマットレス換気システム1のブロック図である。
図2は、マットレス換気システム1の斜視図である。
図3は、マットレス換気システム1の正面図である。
図4は、マットレス換気システム1の上面図である。また
図5は、
図1に示す導風管7の斜視図である。なお
図3においては、本システム1の使用形態を理解容易とするために、本システム1を使用中の使用者、枕、および掛け布団を点線で示している。
【0034】
図1に示すように、マットレス換気システム1は、寝台部10、風生成部20、情報処理部30を備える。また、
図1~
図4に示すように、寝台部10は、寝台2、下マットレス3、上マットレス4、3個の体動検知センサ5a~5c、3個の温湿度検知センサ6a~6cを含む。
【0035】
寝台2は、各マットレス3、4を下側から支える平台であり、就寝者の頭部側にヘッドボード2aが設けられている。下マットレス3および上マットレス4は、それぞれ、クッション材と、そのクッション材の上面を含む外周表面全体を覆うクッション材カバーとを有する。寝台2の上面に下マットレス3が設置され、下マットレス3の上面に上マットレス4が設置されている。各マットレス3、4は、上下方向を厚み方向とするマットレスであり、前後方向が長手方向(その上で寝る使用者の身長方向に一致する)となっている。マットレス換気システム1が使用される際には、
図3に示すように、使用者は頭を前側に向けるとともに足を後側に向けて、上マットレス4の上に横たわることになる。
【0036】
各マットレス3、4に使用されるクッション材としては、通風性に優れる部材が好ましく、例えばクッション材を扇風機の前に置いた状態であっても、クッション材を通過した風が風船を飛ばす程度の流速を維持できる程度の通風性を有するのが好ましい。本実施形態のクッション材としては、ポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂からなる直径が1mm程度の複数の溶融フィラメントどうしを3次元的に融着結合させた、空隙率が95%のフィラメント3次元結合体を使用している。
【0037】
各マットレス3、4に使用されるクッション材カバーとしては、通気性を有する生地が好ましく、JIS L 1096-1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に準じた適切な通気性測定方法により測定される通気度が、10cm3/cm2・s以上であって200cm3/cm2・s以下であることが好ましく、20cm3/cm2・s以上であって100cm3/cm2・s以下であることがさらに好ましい。なお以下の説明における通気度の具体的な値も、特に断りの無い限り、JIS L 1096-1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に準じた適切な通気性測定方法により測定される通気度の値を示す。通気度が低すぎると発汗により生成したクッション材カバー内の水蒸気の拡散性が低下し、逆に通気度が高すぎると風の流れが緩和されにくくなり、風生成部20により発生させた風が就寝者に直接あたる部位において寒く感じる(保温性が低下する)など、皮膚表面において風速の速い部位で感じる温度と風速の遅い部位で感じる温度との差が大きくなり、保温性にムラが発生する。その点、このように適度な通気性を有するクッション材カバーを用いれば、水蒸気の拡散性を損なうことなく風速が緩和され、皮膚表面において風速の速い部位で感じる温湿度感と、風速の遅い部位で感じる温湿度感との差を少なくすることができる。
【0038】
3個の体動検知センサ5a~5cは加速度センサであり、上マットレス4の上面側におけるクッション材とクッション材カバーとの間に左右に並べて配設され、使用者(就寝者)の寝返り等の体動を検知する。本実施形態においては、体動検知センサとして加速度センサを用いているが、体動を検知し得る他のセンサを用いてもよい。なお後述するとおり、体動の検知結果は、使用者の睡眠深度の情報を取得するために用いられる。そのため体動検知センサの代わりに、使用者の睡眠深度が取得可能となる他の手段が採用されても構わない。例えば、赤外線カメラを用いて使用者の動きを検知する手段が採用され、この動きの頻度に基づいて睡眠深度の情報が取得されるようにしてもよい。また、心拍センサを用いて使用者の心拍数を測定する手段が採用され、この心拍数に基づいて睡眠深度の情報が取得されるようにしてもよい。
【0039】
3個の温湿度検知センサ6a~6cは、温度と湿度を検知するためのセンサであり、上マットレス4内の温度および湿度を検知する。本実施形態においては、温湿度検知センサ6a~6cは、上マットレス4の上面側におけるクッション材とクッション材カバーとの間に左右に並べて配設されている。このように温湿度検知センサ6a~6cは、使用者(就寝者)の発汗や体温の影響による温度や湿度の変化等を感度良く検知できるように、当該影響を極力受けやすい位置に配置されている。これにより、使用者が寝返り等で移動しても、使用者の体温や発汗の影響を最も強く受ける温湿度検知センサの温度情報と湿度情報を用いて風量を制御できるので、より使用者の体感に近い温度および湿度での風量制御が可能となる。
【0040】
風生成部20は、導風管7、ファン8、およびファン駆動部9を含む。導風管7は上マットレス4の内部から外部もしくは外部から内部に風を導く略円筒状の部材であり、下マットレス3と上マットレス4の間に設けられている。
【0041】
図5に示すように、導風管7は頭部通風孔7a、連結開口部7b、および中間通風孔7c~7jを有する中空の管であり、フレキシブルなシリコーン樹脂により形成されている。導風管7は、前後方向へ伸びるように配置されており、前端に頭部通風孔7aを有し、後端に連結開口部7bを有している。連結開口部7bは、上マットレス4の後端中央部の後側に設置したファン8に連結されている。風生成部20は、ファン8を用いた導風管7内への空気の送出または導風管7内からの空気の吸引によって、上マットレス4内に風(空気流)を発生させることが出来る。
【0042】
導風管7は、ファン8に接続された位置から前方に伸びており、上マットレス4の脚部対応部の下側および胴部対応部の下側を順に通って、頭部対応部の近傍にまで及んでいる。なお、脚部対応部は、上マットレス4の上に横たわる使用者の概ね脚部に対応する上マットレス4の部位であり、胴部対応部は、当該使用者の概ね胴部に対応する上マットレス4の部位であり、頭部対応部は、当該使用者の概ね頭部に対応する上マットレス4の部位である。
【0043】
頭部通風孔7aは、前方に向けて開口しており、主に頭部対応部の近傍に風を発生させる役割を果たす。中間通風孔7c~7jそれぞれは、何れも同等の大きさの孔であって、導風管7の側部において前後へ並ぶように設けられている。また中間通風孔7c~7jそれぞれは、上マットレス4に効率良く風を生じさせることが出来るように、上方に向けて開口している。中間通風孔7c~7jのうち、中間通風孔7c~7fは胴部対応部に対応する部分に配置されており、中間通風孔7h~7jは脚部対応部に対応する部分に配置されている。中間通風孔7c~7fは主に胴部対応部に風を発生させる役割を果たし、中間通風孔7h~7jは主に脚部対応部に風を発生させる役割を果たす。
【0044】
なお、中間通風孔7h~7jは、脚部対応部よりも胴部対応部の方が風量が多くなるように形成されている。より具体的に説明すると、中間通風孔7c~7fの配置間隔は中間通風孔7h~7jの配置間隔よりも狭くなっており、胴部対応部の方が、導風管7における単位長さあたりの中間通風孔の個数が多くなっている。これにより、ファン8が風を発生させたとき、脚部対応部よりも胴部対応部の方が風量が多くなる。なお、脚部対応部よりも胴部対応部において風量を多くするための仕組みは上記のものに限られず、例えば、中間通風孔7c~7jの配置間隔を一定とする場合に、中間通風孔7c~7fのサイズを中間通風孔7h~7jよりも大きくする仕組み等が採用され得る。
【0045】
このように本実施形態では、使用者の発汗量が比較的少ないと見込まれる脚部対応部側よりも、使用者の発汗量が比較的多いと見込まれる胴部対応部側において風量が多くなり、効率の良い換気が実現される。また本実施形態においては、導風管7として直線的な1本の中空管を用いているが、途中で枝分かれしている中空管や複数の中空管を水平方向に固定したものを用いてもよい。
【0046】
ファン8は直径8cmの回転翼を備える送風機であり、連結開口部7bに接続される。ファン駆動部9はファン8を駆動するモーターを有し、風量制御部16によって決められた回転数(回転速度)でファン8を回転させる。これにより風生成部20は、当該回転数に応じた風量の風を発生させ、上マットレス4の外部に相当する寝室(寝台部10を設置した部屋)内の空気を上マットレス4内に送ったり、上マットレス4内の空気を寝室内に排気したりすることが可能である。上マットレス4内に外部の空気を送る場合、および上マットレス4内の空気を外部に排出する場合の何れであっても、上マットレス4内の空気は外部の空気と換気されることになる。
【0047】
情報処理部30は、睡眠情報取得部14、温湿度情報取得部15、および風量制御部16を含み、体動検知センサ5a~5cおよび温湿度検知センサ6a~6cの検知結果に基づいて風生成部20が発生させる風の強さ(風量)を制御する役割を果たす。なお情報処理部30は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、およびROM(リードオンリーメモリ)を備え、ROMに格納された所定のソフトウェアに従って動作することにより、上記の各機能部(14~16)が実現される。但し当該各機能部(14~16)の具体的形態は特に限定されず、全部又は一部が専用の回路により実現されても構わない。
【0048】
睡眠情報取得部14は、体動検知センサ5a~5cから所定の時間間隔で送られてくる加速度情報から体動頻度(所定の加速度以上となる体動の単位時間あたりの出現回数)を算出して、風量制御用の睡眠深度の情報を取得する。睡眠深度については、体動頻度が大きいほど睡眠深度が浅いと判断され、体動頻度が小さいほど睡眠深度が深いと判断される。本実施形態では一例として、5段階に分けた体動頻度から5段階の睡眠深度を推定して睡眠深度の情報が得られる。
【0049】
温湿度情報取得部15は、3個の温湿度検知センサ6a~6cから継続的に送られてくる温度情報および湿度情報の中から、最も高い値の温度情報および湿度情報を識別し、この識別された各情報を風量制御用の温度情報および湿度情報として取得する。このようにして取得される風量制御用の温度情報および湿度情報は、3個の温湿度検知センサ6a~6cのうち就寝者の体温や発汗の影響を最も強く受けるものによって検知された情報と言える。そのため本実施形態では、より就寝者の体感に近い温度および湿度の情報に基づいた風量制御が可能である。温湿度情報取得部15が取得した温度情報および湿度情報は、風量制御部16へ送られる。
【0050】
風量制御部16は、睡眠情報取得部14および温湿度情報取得部15から受ける各情報に基づいてファン8の回転数を調節し、これにより風生成部20が発生させる風の強さ(風量)を制御する。風量制御部16の動作について、
図6を参照しながら以下に説明する。
【0051】
図6は、マットレス換気システム1の使用時における各項目の変化状況の一例をグラフで示している。なお
図6においては、横軸はマットレス換気システム1の使用を開始してからの経過時間を示し、上のグラフから順に縦軸は、使用者の睡眠深度、使用者の発汗量、ファン8の回転数、および使用者の深部体温をそれぞれ示している。
【0052】
一般的に就寝者の睡眠深度に関しては、睡眠リズムの存在が知られている。この睡眠リズムにおいては、
図6のグラフに例示するとおり、睡眠深度が浅い状態から深い状態に変化した後に再び浅い状態に変化するまでの睡眠サイクルが繰返されることになる。また発汗量に関しては、睡眠深度が浅い状態から深い状態に変化する際には発汗量が比較的多くなり、睡眠深度が深い状態から浅い状態に変化する際には発汗量が比較的少なくなる傾向にある。また就寝者の深部体温は、最初に睡眠深度が深くなる時期(下降期)において比較的大きく下降し、その後の安定期に入ると変動は比較的小さくなる。
【0053】
なお、
図6に示すタイミングt1は、最初に睡眠深度が最も深くなった時(
図6に示す1回目の深い側のピーク時P1)の近傍のタイミングであり、本実施形態では、ピーク時P1から睡眠深度が浅くなり始めた頃のタイミングである。
図6に示すタイミングt2は、タイミングt1から睡眠深度が徐々に浅くなり、最も浅くなった時(
図6に示す1回目の浅い側のピーク時P2)の近傍のタイミングであり、本実施形態では、ピーク時P2から睡眠深度が深くなり始めた頃のタイミングを示す。
図6に示すタイミングt3は、タイミングt2から睡眠深度が徐々に深くなり、最も深くなった時(
図6に示す2回目の深い側のピーク時P3)の近傍のタイミングであり、本実施形態では、ピーク時P3から睡眠深度が浅くなり始めた頃のタイミングを示す。
図6に示すタイミングt4は、タイミングt3から睡眠深度が徐々に浅くなり、最も浅くなった時(
図6に示す2回目の浅い側のピーク時P4)の近傍のタイミングであり、本実施形態では、ピーク時P4から睡眠深度が深くなり始めた頃のタイミングを示す。
図6に示すタイミングt5は、タイミングt4から睡眠深度が徐々に深くなり、最も深くなった時(
図6に示す3回目の深い側のピーク時P5)の近傍のタイミングであり、本実施形態では、ピーク時P5から睡眠深度が浅くなり始めた頃のタイミングを示す。
【0054】
風量制御部16は、上記の睡眠リズムおよび発汗量を考慮して風量を制御するようになっている。以下、この点についてより具体的に説明する。
【0055】
風量制御部16は、各タイミングt1~t5を所定の規則に従って認識する。すなわち風量制御部16は、睡眠深度の情報取得の開始後に初めて睡眠深度が前回の段階を下回った(睡眠深度が浅くなった)タイミングを、タイミングt1として認識する。また風量制御部16は、タイミングt1の後に初めて睡眠深度が前回の段階を上回った(睡眠深度が深くなった)タイミングを、タイミングt2として認識する。また風量制御部16は、タイミングt2の後に初めて睡眠深度が前回の段階を下回ったタイミングを、タイミングt3として認識する。また風量制御部16は、タイミングt3の後に初めて睡眠深度が前回の段階を上回ったタイミングを、タイミングt4として認識する。また風量制御部16は、タイミングt4の後に初めて睡眠深度が前回の段階を下回ったタイミングを、タイミングt5として認識する。
【0056】
但し、上記の各タイミングを認識するための規則は一例であり、タイミングt1はピーク時P1の近傍のタイミングとなるように、他の規則に従って認識されても良い。また同様に、タイミングt2はピーク時P2の近傍のタイミングとなるように、タイミングt3はピーク時P3の近傍のタイミングとなるように、タイミングt4はピーク時P4の近傍のタイミングとなるように、タイミングt5はピーク時P5の近傍のタイミングとなるように、それぞれ他の規則に従って認識されても良い。なおここでの「近傍」の範囲は、対応するピーク時からの差異が睡眠サイクル(約90分)の周期の概ね1/4以下となる範囲であることが望ましい。なお、一般的には睡眠サイクルが平均約90分であることが知られているが、個人差があるので、各人の睡眠サイクルを継続的に計測して、各人の睡眠サイクルに合わせて補正するのが好ましい。
【0057】
また、入眠時からタイミングt1までの期間(以下、「第1多汗期X1」と称することがある)、タイミングt2からタイミングt3までの期間(以下、「第2多汗期X2」と称することがある)、および、タイミングt4からタイミングt5までの期間(以下、「第3多汗期X3」と称することがある)は、
図6に示すように、使用者の発汗量が多い期間(多汗期)となる。また、タイミングt1からタイミングt2までの期間(以下、「第1少汗期Y1」と称すことがある)、およびタイミングt3からタイミングt4までの期間(以下、「第2少汗期Y2」と称することがある)は、
図6に示すように、使用者の発汗量が少ない期間(少汗期)となる。
【0058】
また演算制御部30には、次の第1式から第6式の各情報が格納されている。
第1式:第1多汗期用ファン回転数Na(rpm)=40×(T-25)+4×(H-40)
第2式:第1少汗期用ファン回転数Nb(rpm)=10×(T-25)+1×(H-40)
第3式:第2多汗期用ファン回転数Nc(rpm)=30×(T-25)+3×(H-40)
第4式:第2少汗期用ファン回転数Nd(rpm)=7×(T-25)+0.7×(H-40)
第5式:第3多汗期用ファン回転数Ne(rpm)=20×(T-25)+2×(H-40)
第6式: 安定期用ファン回転数Nf(rpm)=3×(T-25)+0.3×(H-40)
但し、Tは温度(℃)(温湿度情報取得部15によって取得される風量制御用の温度情報の値)を表し、Hは湿度(%)(温湿度情報取得部15によって取得される風量制御用の湿度情報の値)を表す。
【0059】
上記の第1式から第6式のそれぞれは、睡眠情報取得部14および温湿度情報取得部15から受ける各情報から、適切な風生成部20の風量(換気量)と相関の高いファン8の回転数を算出するために、予め設定された算出式である。何れの式も、対応する期間における発汗量の傾向等を考慮して設定されており、例えば第1式は、第1多汗期X1における発汗量の傾向等を考慮して最適な算出式となるように設定されている。また各式の内容から明らかなとおり、第1式から第6式の何れの式も、温度Tが高いほど回転数が高く(風量が多く)なり、かつ、湿度Hが高いほど回転数が高く(風量が多く)なるように設定されている。
【0060】
風量制御部16は、第1多汗期X1およびこれより前の期間においては、第1式に基づいて第1多汗期用ファン回転数Naを算出し、この算出結果をファン8の回転数として決定する。また風量制御部16は、第1少汗期Y1においては第2式に基づいて第1少汗期用ファン回転数Nbを算出し、この算出結果をファン8の回転数として決定する。また風量制御部16は、第2多汗期X2においては第3式に基づいて第2多汗期用ファン回転数Ncを算出し、この算出結果をファン8の回転数として決定する。また風量制御部16は、第2少汗期Y2においては第4式に基づいて第2少汗期用ファン回転数Ndを算出し、この算出結果をファン8の回転数として決定する。また風量制御部16は、第3多汗期X3においては第5式に基づいて第3多汗期用ファン回転数Neを算出し、この算出結果をファン8の回転数として決定する。また風量制御部16は、第3多汗期X3より後の期間においては第6式に基づいて安定期用ファン回転数Nfを算出し、この算出結果をファン8の回転数として決定する。
【0061】
風量制御部16は、上述のとおりファン8の回転数を決定する度に、最新の当該回転数の情報をファン駆動部9へ送出する。ファン駆動部9は、この受取った情報に基づき、最新の当該回転数でファン8を回転させることになる。これにより風生成部20の風量が適切に制御され、発汗により生成した水蒸気の拡散速度(排気速度)を発汗量に応じて高めることができる。すなわち、風量を大きくすることによりクッション材カバーの生地内部の空気攪拌効果が高まり、クッション材カバー生地の内部空間に滞留する水蒸気(高湿度空気)を速やかに拡散し、上マットレス4の外部に排出できるので、発汗量の多い時間帯であっても寝室内や寝床内の温湿度を過度に下げることなく蒸し暑さを低減できる。
【0062】
マットレス換気システム1は、空調機を用いることによって、寝室内の温湿度が一定となる条件下(例えば、温度が20℃であって湿度が40%)で使用されることが好ましいが、寝室内の温湿度が変化する場合は、寝室内の温湿度に応じてファン回転数を補正することが好ましい。補正方法の一例としては、室内の温湿度を5段階程度に分けて、ユーザーが季節に応じてダイヤル等で選択できるようにする方法や、寝室内の温湿度を測定する温湿度センサの情報を取得して補正する方法が挙げられる。
【0063】
本実施形態においては、簡単な一次式からなる上記の第1式から第6式の各式を用いて、ファン回転数を温度情報と湿度情報から一義的に算出しているが、これらの算出式は一例を示すものであり、式や係数は風生成部20の能力やユーザーの代謝量に合わせて設定することが望ましい。また、本実施形態においては、就寝直後(レム睡眠まで)の覚醒時までのファン回転数(風量)を第1多汗期X1用の第1式を用いて制御しているが、このようにしたのは、就寝直後から上マットレス4内の温湿度が著しく上昇していくことを想定したためである。なお、このように第1多汗期X1用の第1式を用いる代わりに、この時期専用の制御式を設定してもよい。
【0064】
また上記実施形態においては、風量制御部16によって決定された回転数でファン8を一定に回転させるようにしているが、単位時間当たりの風量が変わらないように風速に強弱をつけるようにしてもよく、単位時間当たりの風量が変わらないように風の生成が断続的に行われる(風生成部20の風を生じさせる動作が断続的に行われる)ようにしてもよい。このようにすれば、一時的に速い風の流れを作ることができるので、衣服やクッション材カバー内で保持された水分の拡散効果を高めることができる。特に、衣服やクッション材カバーに一旦保持された水分は拡散しにくくなるが、このようにすることで単位時間あたりの風量を過度に多くすることなく、短時間の速い風によって水蒸気の拡散力が高まるので、汗が速やかに拡散され、寝床内の温湿度が過度に上昇することを抑え、快適な寝床内湿度を保つことができる。
【0065】
また、風生成部20の風を生じさせる動作が断続的に行われるようにする場合、温湿度情報取得部15は、当該風を生じさせる動作が停止した時の温度および湿度の情報を取得するようにしてもよい。このようにすれば、温度や湿度の検知精度に対する風の影響を抑え、極力精度の高い温度および湿度の情報を取得することが容易となる。
【0066】
次に、マットレス換気システム1の動作の流れの具体例について、
図7に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0067】
マットレス換気システム1には不図示の電源スイッチが設けられており、使用者等の操作によって電源のオン/オフが切替可能となっている。本システム1は通常、不使用時には省電力等のため電源オフの状態とされ、使用時(使用者の就寝時)には電源オンの操作がなされることになる。
【0068】
使用者等によって電源オンの操作がなされると(ステップS1)、マットレス換気システム1は電源オンの状態へ移行し、睡眠情報取得部14による睡眠深度の情報取得が開始されるとともに、温湿度情報取得部15による温度情報と湿度情報の取得が開始される(ステップS2)。以降、リアルタイムな睡眠深度の情報、温度情報、および湿度情報が逐次、継続的に取得される。なおマットレス換気システム1は、所定の設定時刻(例えば就寝予定時刻)が到来したとき、或いは、各センサ(5a~5c、6a~6c)の一部または全部の検知結果に基づいて就寝者の存在が検出されたとき等において、自動的に電源オンの状態へ移行するようにしてもよい。
【0069】
また、マットレス換気システム1が電源オンの状態に移行した直後は、第1式を用いたファン8の駆動が開始される(ステップS3)。より具体的に説明すると、風量制御部16は、最新の温度および湿度の情報が取得される度に、これらの情報と第1式に基づいて最新の第1多汗期用ファン回転数Naを算出する。そしてファン駆動部7は、この第1多汗期用ファン回転数Naで回転するようにファン8を駆動させる。このような第1式を用いたファン8の駆動は、第1少汗期Y1に移行するまで(換言すれば、タイミングt1が到来するまで)実行される。
【0070】
一方、第1少汗期Y1に移行したときには(ステップS4のYes)、第2式を用いたファン8の駆動が開始される(ステップS5)。より具体的に説明すると、風量制御部16は、最新の温度および湿度の情報が取得される度に、これらの情報と第2式に基づいて最新の第1少汗期用ファン回転数Nbを算出する。そしてファン駆動部7は、この第1少汗期用ファン回転数Nbで回転するようにファン8を駆動させる。このような第2式を用いたファン8の駆動は、第2多汗期X2に移行するまで(換言すれば、タイミングt2が到来するまで)実行される。
【0071】
一方、第2多汗期X2に移行したときには(ステップS6のYes)、第3式を用いたファン8の駆動が開始される(ステップS7)。より具体的に説明すると、風量制御部16は、最新の温度および湿度の情報が取得される度に、これらの情報と第3式に基づいて最新の第2多汗期用ファン回転数Ncを算出する。そしてファン駆動部7は、この第2多汗期用ファン回転数Ncで回転するようにファン8を駆動させる。このような第3式を用いたファン8の駆動は、第2少汗期Y2に移行するまで(換言すれば、タイミングt3が到来するまで)実行される。
【0072】
一方、第2少汗期Y2に移行したときには(ステップS8のYes)、第4式を用いたファン8の駆動が開始される(ステップS9)。より具体的に説明すると、風量制御部16は、最新の温度および湿度の情報が取得される度に、これらの情報と第4式に基づいて最新の第2少汗期用ファン回転数Ndを算出する。そしてファン駆動部7は、この第2少汗期用ファン回転数Ndで回転するようにファン8を駆動させる。このような第4式を用いたファン8の駆動は、第3多汗期X3に移行するまで(換言すれば、タイミングt4が到来するまで)実行される。
【0073】
一方、第3多汗期X3に移行したときには(ステップS10のYes)、第5式を用いたファン8の駆動が開始される(ステップS11)。より具体的に説明すると、風量制御部16は、最新の温度および湿度の情報が取得される度に、これらの情報と第5式に基づいて最新の第3多汗期用ファン回転数Neを算出する。そしてファン駆動部7は、この第3多汗期用ファン回転数Neで回転するようにファン8を駆動させる。このような第5式を用いたファン8の駆動は、第3多汗期X3が終了するまで(換言すれば、タイミングt5が到来するまで)実行される。
【0074】
一方、第3多汗期X3が終了したときには(ステップS12のYes)、第6式を用いたファン8の駆動が開始される(ステップS13)。より具体的に説明すると、風量制御部16は、最新の温度および湿度の情報が取得される度に、これらの情報と第6式に基づいて最新の安定期用ファン回転数Nfを算出する。そしてファン駆動部7は、この安定期用ファン回転数Nfで回転するようにファン8を駆動させる。
【0075】
このような第6式を用いたファン8の駆動は、使用者等が電源オフの操作を行うまで実行される。通常は起床時において、使用者によって電源オフの操作が行われることになる。電源オフの操作がなされたときには(ステップS14のYes)、ファン8の駆動は停止し、マットレス換気システム1は電源オフの状態に移行する。なおマットレス換気システム1は、所定の設定時刻(例えば起床予定時刻)が到来したとき、或いは、各センサ(5a~5c、6a~6c)の一部または全部の検知結果に基づいて就寝者の不在が検出されたとき等において、自動的に電源オフの状態へ移行するようにしてもよい。
【0076】
以上に説明したとおり、マットレス換気システム1は、上マットレス4の使用者の睡眠深度の情報を取得する睡眠情報取得部14と、上マットレス4の温度および湿度の情報を取得する温湿度情報取得部15と、上マットレス4内に風を生じさせる風生成部20と、風生成部20の風量を制御する風量制御部16とを備える。また風量制御部16は、前記睡眠深度、前記温度、および前記湿度に基づいて前記風量を制御する。そのためマットレス換気システム1によれば、室内の温度・湿度や入眠後の発汗量が変化しても、風によって発汗による水蒸気を速やかに拡散させ、上マットレス4の外部へ排出させることが可能である。
【0077】
マットレス換気システム1によれば、上マットレス4内の温度情報と湿度情報とともに、睡眠深度の変化を含む睡眠情報を用いて上マットレス4内の風の風量を制御しているので、睡眠深度が浅い状態から深い状態への移行時など発汗量が多くなるタイミングで、マットレス内に多めの風を送ることができ、発汗により発生した水蒸気を速やかに拡散させて上マットレス4の外に排出させることができる。
【0078】
その結果、使用者の代謝が低下した時(体からの発熱量が少なくなる時)の保温性を損なうことなく、多量の発汗時においても、過度に湿度が高まって蒸し暑くなるのを防止できる。さらには、個々のマットレスにおいて風量を調整できるので、同じ部屋で複数人が就寝する場合であっても、各人の寝床内の温湿度を適切に調整することができる。ダブルサイズマットレス等、1つのマットレスの上に複数の人が就寝する場合であっても、左右独立した2つのマットレスとして風量を制御することができる。
【0079】
またマットレス換気システム1によれば、風量制御をより適切に行うことが可能となる。すなわち、上マットレス4内に生じる風は、上マットレス4の温度を下げる効果とともに上マットレス4の湿度を下げる効果も有することから、上マットレス4の温度と湿度の両方の情報に基づいてその風量を制御することにより、より適切な風量を実現することが可能である。また、上マットレス4の最適な温度や湿度は使用者の睡眠深度の状況によって変化するため、当該睡眠深度の情報にも基づいて当該風量を制御することによって、更に適切な風量を実現することが可能である。
【0080】
なお、風量制御部16は、前記温度および前記湿度をパラメータとする算出式(第1式から第6式の何れか)を用いた算出結果に基づいて前記風量を制御する。そして前記算出式は、前記温度が高いほど前記風量が多くなり、かつ、前記湿度が高いほど前記風量が多くなるように設定されており、前記睡眠深度が既定の条件を満たしたときに更新されるようになっている。このように温度および湿度をパラメータとする適切な算出式を用いることにより、温度および湿度をバランス良く考慮した風量制御の実現が可能である。
【0081】
本実施形態では、風量制御部16は前記睡眠深度の各ピーク時(P1~P5)の近傍のタイミング(t1~t5)それぞれを認識し、当該タイミングそれぞれが到来する度に、前記算出式を更新するようになっている。これにより、多汗期と少汗期のそれぞれに適応した算出式を用いてより理想的な風量の制御が容易である。
【0082】
なお、睡眠リズムについては、通常、睡眠深度が浅い状態から深い状態に変化した後に再び浅くなるまでの変化を1サイクルとする睡眠サイクルが繰返されるリズムとなることが分かっている。また更に、この睡眠サイクルは通常、約90分となることが分かっている。そこでこのことを利用して、上述した各タイミング(t1~t5)の一部を認識するようにしても良い。例えば、タイミングt1については本実施形態と同様にして認識する一方、睡眠サイクルが90分であって多汗期と少汗期の長さが同等であると仮定して睡眠リズムを推定し、この推定された睡眠リズムに基づいてタイミングt2~t5を認識するようにしても良い。
【0083】
また、本実施形態における風生成部20(上マットレス4内に風を生じさせる風生成装置の一形態)の風量の制御方法は、上マットレス4の使用者の睡眠深度の情報を取得する睡眠情報取得ステップと、上マットレス4の温度および湿度の情報を取得する温湿度情報取得ステップと、当該睡眠深度、当該温度、および当該湿度に基づいて当該風量を制御する制御ステップと、を含む方法となっている。
【0084】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係るマットレス換気システム101について説明する。なお、第2実施形態に係るマットレス換気システム101は、導風管、ファン、およびファン駆動部の個数が異なる点を除き、基本的に第1実施形態に係るマットレス換気システム1と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる点の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する点については説明を省略することがある。
【0085】
図8は本実施形態に係るマットレス換気システム101のブロック図であり、
図9はマットレス換気システム101の上面図である。マットレス換気システム101は、第1実施形態においても設けられていた導風管7に加え、導風管7の右側において前後に伸びるように配置された右側導風管107、および導風管7の左側において前後に伸びるように配置された左側導風管117を有している。これらの導風管107、117は、導風管7と同等の構成である。
【0086】
またマットレス換気システム101は、右側導風管107に対応した右側ファン108および右側ファン駆動部109を有するとともに、左側導風管117に対応した左側ファン118および左側ファン駆動部119を有する。右側ファン108および右側ファン駆動部109は、第1実施形態においても設けられていたファン8およびファン駆動部9と同等の機能を有しており、ファン8およびファン駆動部9の右側に配置されている。右側ファン108は右側導風管107の連結開口部107bに連結されており、右側ファン駆動部109は右側ファン108を駆動する役割を果たす。
【0087】
左側ファン118および左側ファン駆動部119は、ファン8およびファン駆動部9と同等の機能を有しており、ファン8およびファン駆動部9の左側に配置されている。左側ファン118は左側導風管117の連結開口部117bに連結されており、左側ファン駆動部119は左側ファン118を駆動する役割を果たす。
【0088】
本実施形態では、ファン8の回転方向は、外部から導風管7内へ向かう風を生じさせる方向へ設定され、右側ファン108の回転方向は、右側導風管107内から外部へ向かう風を生じさせる方向へ設定され、左側ファン118の回転方向は、左側導風管117内から外部へ向かう風を生じさせる方向へ設定されている。これにより、
図9に破線矢印で示す空気の流れを、効果的に発生させることが可能である。但し各ファンの回転方向は、これとは異なる方向に設定されても構わない。
【0089】
また風量制御部16は、各ファン8、108、118の回転数を決定して、ファン8の回転数の情報をファン駆動部9へ、右側ファン108の回転数の情報を右側ファン駆動部109へ、左側ファン118の回転数の情報を左側ファン駆動部119へ、それぞれ送出する。なお各ファン8、108、118の回転数は、一例として、いずれも第1実施形態において決定されるファン8の回転数の3分の1とすれば良い。
【0090】
本実施形態では、複数個の導風管が左右に間隔を空けて設けられており、それぞれの導風管を用いて上マットレス4内に風を生じさせることができる。そのため、上マットレス4内により満遍なく風を生じさせ、温度や湿度の偏りを極力抑えることが可能となる。特に左右方向寸法の大きい上マットレス4を使用する場合は、このように複数個の導風管を用いることによる効果は顕著である。なお設けられる導風管の個数は、2個あるいは4個以上としても良い。
【0091】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係るマットレス換気システム201について説明する。なお、第3実施形態に係るマットレス換気システム201は、導風管の有無、ならびにファンおよびファン駆動部の個数が異なる点を除き、基本的に第1実施形態に係るマットレス換気システム1と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる点の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する点については説明を省略することがある。
【0092】
図10は本実施形態に係るマットレス換気システム201のブロック図であり、
図11はマットレス換気システム201の正面図である。マットレス換気システム201は、第1実施形態において設けられていた導風管7、ファン8、およびファン駆動部9の代わりに、頭部側ファン208a、脚部側ファン208b、頭部側ファン駆動部209a、および脚部側ファン駆動部209bが設けられている。
【0093】
頭部側ファン208aおよび脚部側ファン208bは第1実施形態におけるファン8と同等の機能を有し、頭部側ファン駆動部209aおよび脚部側ファン駆動部209bは第1実施形態におけるファン駆動部9と同等の機能を有する。頭部側ファン208aは頭部側ファン駆動部209aによって、脚部側ファン208bは脚部側ファン駆動部209bによって、各々回転駆動される。頭部側ファン208aは、上マットレス4の頭部側(前側)側面に設けられ、脚部側ファン208bは、上マットレス4の脚部側(後側)側面に設けられている。
【0094】
頭部側ファン208aの回転方向は、外部から上マットレス4内へ向かう風を生じさせる方向へ設定され、脚部側ファン208bの回転方向は、上マットレス4内から外部へ向かう風を生じさせる方向へ設定されている。これにより各ファン208a、208bの作用によって、上マットレス4内において前側から後側へ向かう風を効果的に生じさせることが可能である。
【0095】
また風量制御部16は、各ファン208a、208bの回転数を決定して、頭部側ファン208aの回転数の情報を頭部側ファン駆動部209aへ、脚部側ファン208bの回転数の情報を脚部側ファン駆動部209bへ、それぞれ送出する。なお各ファン208a、208bの回転数は、一例として、いずれも第1実施形態において決定されるファン8の回転数の2分の1とすれば良い。
【0096】
なお、上マットレス4内の風向きとしては、相対的に発汗量が多くなる胴部対応部から脚部対応部に向けて風を送るのが好ましいが、上マットレス4内を換気できる方法であれば特に制限がなく、例えば脚部対応部から頭部対応部に向けて風を送ってもよい。また、上マットレス4の左右両側面にファンを設けて、上マットレス4の左側および右側の側面の一方から他方へ向かう風を生じさせても良い。
【0097】
第3実施形態に係るマットレス換気システム201の上マットレス4においては、
図12に示すようなクッション材カバー205を設けるのが好ましい。
図12は、クッション材カバー205を被覆して形成した上マットレス4を用いた場合における、マットレス換気システム201の斜視図である。
【0098】
クッション材カバー205は、使用者の上半身と接する第1高通気性生地205aと、使用者の下半身と接する第1高通気性生地205bと、それら以外の低通気性生地205cで構成され、上マットレス4の外周面を被覆する。第1および第2高通気性生地205a、205bはクッション材カバー205の上面の所定部分に、低通気性生地205cはクッション材カバー205の他の部分(側面の部分を含む)に、それぞれ配置されている。第1および第2高通気性生地205a、205bの通気度としては、10cm3/cm2・s以上であって、200cm3/cm2・s以下であることが好ましく、低通気性生地205cの通気度としては、0.1cm3/cm2・s以上であって、10cm3/cm2・s以下であることが好ましい。
【0099】
第1および第2高通気性生地205a、205bの通気度が10cm3/cm2・s未満であると、生地内部の水蒸気の拡散速度が低くなり、水蒸気が速やかに排出されにくくなる。第1および第2高通気性生地205a、205bの通気度が200cm3/cm2・sを超えると、風生成部20が停止している状態であっても対流が生じやすくなり、保温性が損なわれやすくなる。
【0100】
低通気性生地205cの通気度が0.1cm3/cm2・s未満であると、上マットレス4内部に結露が生じやすくなり、カビやダニの繁殖が起こりやすくなる。低通気性生地205cの通気度が10cm3/cm2・sを超えると、風生成部20により生じる風が外部に漏れやすく(あるいは外部から流入しやすく)なり、発汗により生じた第1および第2高通気性生地205a、205b近傍の水蒸気を効率的に換気することが難しくなる。
【0101】
また、第1高通気性生地205aの通気度としては、50cm3/cm2・s以上であって、200cm3/cm2・s以下であることがさらに好ましく、第2高通気性生地205bの通気度としては、10cm3/cm2・s以上であって、50cm3/cm2・s以下であることがさらに好ましい。通気度は、JIS L 1096-1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に準じた適切な通気性測定方法により測定される。
【0102】
第1高通気性生地205aが、発汗量が相対的に多くなる使用者の上半身と接する面に設けられていることから、発汗時に水蒸気が上マットレス4内部に速やかに拡散される。
第2高通気性生地205bは、発汗量が相対的に少ない使用者の下半身と接する面に設けられていることから、発汗時に生成する水蒸気が適度に上マットレス4内部に拡散される。
【0103】
低通気性生地205cは、風生成部20によって発生する風が上マットレス4の外部に漏れることを防止するので、風生成部20によって発生する風量を過度に高めることなく、第1高通気性生地205aおよび第2高通気性生地205bを介して上マットレス4に入ってきた水蒸気を効率的に排出できる。なお、本実施形態において、クッション材カバー205の底面を通気度の低い低通気性生地205cで構成している。しかし、下マットレス3を使用せずに、上マットレス4を通気性の低い板などで構成される寝台2の上に直接設置する場合など、クッション材カバー205の底面から風が漏れたり流入する可能性が低い場合においては、底面に通気度の高い生地を用いてもよく、さらには底面を生地で覆わなくてもよい。
【0104】
上述したように
図12に示す上マットレス4は、通風性を有するクッション材と、該クッション材を被覆するクッション材カバー205を有し、クッション材カバー205の上面の少なくとも一部の通気度が、クッション材カバー205の側面の通気度よりも高くなっている。このようにクッション材カバーの上面の通気度が高いことから、使用者の発汗による水蒸気が上マットレス4内部に速やかに拡散されると同時に、使用者を支持するクッション材カバー上面近傍に、風量を過度に高めることなく効率的に風を送ることができる。その結果、使用者と接するクッション材カバー上面近傍に導かれた風(空気流)によって、クッション材カバー内に滞留する水蒸気が拡散され、上マットレス4の外部へ排出される。
【0105】
4.その他
以上に説明した各実施形態のマットレス換気システムは、下記のとおりの構成とされており、人体自体が睡眠状態に応じて発生する熱、水分を利用して寝具の状態を睡眠に適するように寝具内の通風を適切に制御することが可能となっている。当該マットレス換気システムは、上マットレス4(マットレスの一形態)内に生じさせる風により上マットレス4の状態を制御するシステムであり、上マットレス4の使用者の睡眠深度の情報を取得する睡眠情報取得部14と、上マットレス4内の風量を制御する風量制御部16とを設け、風量制御部16は、前記睡眠深度が深くなる期間において、当該睡眠深度が浅くなる期間に比して前記風量を多くする構成とされている。
【0106】
また当該マットレス換気システムは、前記使用者の周辺の湿度を反映する上マットレス4の少なくとも湿度情報を取得する温湿度情報取得部15(マットレス情報取得部の一形態)を設け、風量制御部16は、少なくとも前記湿度情報に基づいて、前記風量を制御する構成とされている。また、前記マットレス情報取得部は、上マットレス4の温度情報をも取得し、風量制御部16は、前記湿度情報および前記温度情報に基づいて、前記風量を制御する。また、前記マットレス情報取得部は、前記使用者の体表面に近接する前記マットレス上面部付近に設けたセンサーを用いて、前記湿度情報および前記温度情報の少なくとも一方を取得する。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、マットレス換気システム等に利用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1、101、201 マットレス換気システム
10 寝台部
20 風生成部
30 情報処理部
2 寝台
3 下マットレス
4 上マットレス
5a~5c 体動検知センサ
6a~6c 湿温度検知センサ
7 導風管
7a 頭部通風孔
7b 連結開口部
7c~7j 中間通風孔
8 ファン
9 ファン駆動部
14 睡眠情報取得部
15 温湿度情報取得部(マットレス情報取得部)
16 風量制御部