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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】日焼け止め組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20220629BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61K8/86
A61Q17/04
A61K8/49
A61K8/37
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017255387
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2019108317
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝夫
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-051922(JP,A)
【文献】特開2016-222612(JP,A)
【文献】特開2014-114291(JP,A)
【文献】特開2012-111726(JP,A)
【文献】特開2011-178769(JP,A)
【文献】特開2005-255669(JP,A)
【文献】特開平08-337513(JP,A)
【文献】特開2011-195478(JP,A)
【文献】特開2008-162930(JP,A)
【文献】特開2008-208052(JP,A)
【文献】特開2011-073971(JP,A)
【文献】Whitening Facial Cleanser Clean & White (ID:653717),Mintel GNPD[online],2007年02月,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/653717/,[検索日2021.11.8], インターネット
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 0.1~3質量%
(b)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 3~8質量%
(c)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル_0.1~5質量%、および
(d)水 60~90質量%
を含有し、エタノールを含み又は含まず、前記エタノールの含有量が0~0.1質量%である、日焼け止め組成物。
【請求項2】
(c)成分は、PPG-6デシルテトラデセス-20である、請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線から肌を守る日焼け止め組成物の開発が盛んになっている。このような日焼け止め組成物においては、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤等の日焼け止め成分を配合し、SPF(Sun Protection Factor)値を高めることにより日焼け止めの効果を得ている。日焼け止め組成物の剤型としては、二層式や粒子が沈降するタイプの日焼け止め組成物があるが、使用時に振って均一に分散させる手間があり、紫外線吸収剤を使用したより均一なタイプの日焼け止め組成物が求められている。
【0003】
上記のように均一なタイプの日焼け止め組成物において、SPF値を高めるためには、組成物中に日焼け止め成分をより多く配合させることが必要になるが、同時に、さっぱりさ、みずみずしさ、べたつかなさ、などの使用感も求められている。また、組成物において、さっぱりさ、みずみずしさを出そうすると、粘度を低くするとともに、組成物中の水性成分の量を多くする必要がある。上記紫外線吸収剤には、水溶性紫外線吸収剤と油溶性紫外線吸収剤とがあるが、水性成分に溶解しやすい水溶性紫外線吸収剤が使用される。しかしながら、水溶性紫外線吸収剤だけでは、SPF値を向上させることが困難であり、より高いSPF値を得るために油溶性紫外線吸収剤を併用が欠かせない。これら水溶性吸収剤および油溶性紫外線吸収剤を併用し、組成物中に均一にするには、例えば、特許文献1に記載されるように、界面活性剤を使用して、組成物中の分散・溶解させることにより配合することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-162930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に水性媒体の量を多くし、水溶性紫外線吸収剤に加え、油溶性紫外線吸収剤を高配合した場合には、経時安定性に難があった。
本発明は、より経時安定性が向上した日焼け止め組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の日焼け止め組成物は、(a)水溶性紫外線吸収剤、(b)油溶性紫外線吸収剤、(c)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテルおよび(d)水を含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より経時安定性が向上した日焼け止め組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
本発明の日焼け止め組成物は、
(a)水溶性紫外線吸収剤、
(b)油溶性紫外線吸収剤、および
(c)HLBが10以上のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテルから選択される少なくとも1種
(d)水
を含有することを特徴としている。
【0010】
(a)水溶性紫外線吸収剤としては、化粧料に配合され得るものであれば特に限定されるものでなく、例えばヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸又はこれらの塩より選ばれる一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸又はこれらの塩を挙げることができ、更に好ましくは、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸又はこれらの塩を挙げることができる。本発明に用いられる成分(a)の含有量は、特に限定されるものではないが、組成物中に0.1~5質量%が好ましく、より好ましくは0.1~4質量%、特には0.1~3質量%である。(a)成分を配合することにより、紫外線防御能の向上を図ることができるが、(a)成分の配合量が多すぎると製剤安定性の悪化を招くおそれがある。
【0011】
(b)油溶性紫外線吸収剤としては、化粧料に配合され得るものであれば特に限定されるものでなく、例えばパラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸エトキシエチル、ジメトキシケイ皮酸モノエチルヘキサン酸グリセリル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ブチルメトキシベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン等が挙げられることができる。好ましい成分としては、パラアミノ安息香酸メチル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸エトキシエチル、ブチルメトキシベンゾイルメタン、オクチルトリアゾンを挙げることができ、更に好ましくは、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルを挙げることができる。これらは、一種又は二種以上を適宜選択して組み合わせて用いることができる。本発明に用いられる成分(b)の含有量は、特に限定されるものではないが、組成物中1~15質量%である。さらに、他の成分とのバランスを考慮すると、組成物中3~8質量%がより好ましい。(b)成分の配合量が多すぎると製剤の安定性の悪化、使用性の悪化を招くおそれがある。
【0012】
(c)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテルとしては、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル等を好ましいものとして挙げることができる。これらは、一種又は二種以上を適宜選択して組み合わせて用いることができる。
本発明に用いられる(c)成分は、(b)成分に対して重量比[(b)成分/(c)成分]が、0.1~2であることが好ましく、0.2~1.2であることがよりこましい。また、(c)成分の含有量は、組成物中0.1~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
(c)成分の配合量が多すぎると製剤の使用感、特にベタツキが生じやすくなるおそれがある。一方、(c)成分の配合量が少なすぎると、(b)成分を分散させること困難となることがある。
【0013】
また、(d)成分は、(a)成分の10質量倍量以上組成物中に含有することが好ましく、組成物中50~95質量%がより好ましく、60~90質量%がさらに好ましい。
(d)成分の量が少ないと、(a)成分の溶解が不十分となり、使用性が悪くなる可能性がある。
【0014】
さらに、本発明の日焼け止め組成物は、SPF値を向上させるために、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールおよび/またはトリスビフェニルトリアジンを含有することが好ましい。上記メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールおよびトリスビフェニルトリアジンは、水に不溶であるため、水分散物として配合することが好ましい。メチレンビスとリゾリルテトラメチルブチルフェノールの水分散物としては「Tinosorb M」という商品名で、また、トリスビフェニルトリアジンの水分散物としては「Tinosorb A2B」の商品名でそれぞれBASF社から市販されている。
本発明の日焼け止め組成物におけるメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールおよびトリスビフェニルトリアジンの含有量は、組成物中、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
また、本発明の日焼け止め組成物におけるトリスビフェニルトリアジンの含有量は、組成物中、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
【0015】
本発明の日焼け止め組成物には、上記した必須成分を含まない範囲で、他に通常の化粧料に使用される成分、例えば、炭化水素、高級脂肪酸エステル、植物油脂、シリコーン油、トリグリセライド、フッ素系油等の(b)成分以外の油性成分、高分子物質、高級アルコール類、モノグリセライドなどの乳化補助剤、低級アルコール類、ポリオール類等の水性成分、粉体、光揮性顔料、有機球状粉体、(c)成分以外の界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、キレート剤、美容成分、防腐剤、香料、清涼剤等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
ただし、本発明の日焼け止め組成物においては、エタノール等の低級アルコール類については、上記(c)成分の界面活性能を阻害する可能性があるため、実質的に含まない、または0~0.1質量%の界面活性能の阻害が低減できる量にとどめることが好ましい。
さらに、本発明の日焼け止め組成物においては、酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線散乱剤を含有しないことが好ましい。
【実施例
【0016】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例および比較例の日焼け止め組成物を表1に示す組成にて調製し、経時安定性について評価した。
【0017】
【表1】
【0018】
(評価方法:経時安定性)
実施例および比較例の各日焼け止め組成物を30℃、45℃の恒温槽に保管し、下記基準により安定性を評価した。その結果を表1に
◎:3ヶ月以上、分離がなく、粘度に変化がない。
○:1~3ヶ月の期間、分離または粘度変化が生じなかった。
×:1ヶ月以内に分離または粘度変化が生じた。
【0019】
表1から明らかなように。本発明にかかる実施例の日焼け止め組成物は、比較例の日焼け止め組成物に比較して、経時安定性に優れるものであった。