(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】額縁
(51)【国際特許分類】
A47G 1/06 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
A47G1/06 E
A47G1/06 K
(21)【出願番号】P 2018071735
(22)【出願日】2018-04-03
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390014580
【氏名又は名称】セイキ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390020101
【氏名又は名称】セイキ住工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】守谷 晋
(72)【発明者】
【氏名】宮田 徹
(72)【発明者】
【氏名】守谷 将人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 登
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-252899(JP,A)
【文献】米国特許第04233765(US,A)
【文献】特開平09-098866(JP,A)
【文献】登録実用新案第3213795(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0020096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 1/06,1/14
G09F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の展示物を取り付けるための額縁であって、
前記額縁は、矩形の枠体
を有し、該枠体の内側には、スクリーンをスクリーン取付部材
で緊張状態
に取り付けることにより前記展示物を
装着するための装着面が形成され、
前記枠体の周囲に
、前記展示物を保持するための保持部材が取り付けられ、
前記保持部材は、前記枠体と別体に形成されていて、該保持部材に設けた脚部を前記枠体の外周に形成した取付溝に嵌入し、前記脚部の係止爪を前記取付溝の内向き突縁に係止させることにより、前記枠体に取り付けられていることを特徴とする額縁。
【請求項2】
前記額縁における枠体の厚さ方向の一面側に、該枠体の開口を包囲すると共に、内向き突縁により口縁が狭窄化された取付溝が形成され、
該取付溝にスクリーンを保持させるスクリーン取付部材は、前記
枠体の厚さ方向一面側の取付溝を覆う蓋部と、取付溝に前記スクリーンと一緒に押入される脚部とを有し、該脚部には係止爪が設けられていて、この係止爪が前記内向き突縁に係止することで、該スクリーン取付部材が
枠体の厚さ方向一面側の取付溝から抜け止めされると共に、前記スクリーンが枠体に緊張状態で張設されて、枠体の
厚さ方向一面側と該枠体の開口を覆うスクリーンとにより前記展示物の装着面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の額縁。
【請求項3】
前記保持部材は、合成樹脂により形成されて、矩形の枠体の各周辺毎に、枠体の外周に固定される第1部分と、枠体の前記一面側に位置して前記展示物を枠体側に圧接する第2部分とを有し、
前記第2部分には、前記展示物の周囲を枠体に弾力的に押圧保持する当接片が一体的に設けられていることを特徴とする請求項
2に記載の額縁。
【請求項4】
前記第1部分と第2部分とはヒンジを介して連結されていて、第2部分が、このヒンジを回動基点として、前記当接片と枠体との間に展示物を挟持する保持位置と、該展示物の保持状態を開放する退避位置とに変位可能であり、また、これら第1部分と第2部分との間には、該第2部分を前記保持位置に保持するための位置保持機構が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の額縁。
【請求項5】
前記第1部分と第2部分とを連結する前記ヒンジは、軟質合成樹脂材料からなる弾性変形可能な薄板状として、該第1部分及び第2部分と一体形成されていることを特徴とする請求項4に記載の額縁。
【請求項6】
前記第1部分は、枠体の前記一面側に開放する凹部内において枠体の外周に接する側壁に設けられた受け爪を有し、該受け爪には、凹部の深さ方向に向かって上り勾配状に傾斜する傾斜部と、その内端側に鉤部を構成する係合段部とが設けられ、
一方、先端側に前記当接片が設けられた回動カバーを有する前記第2部分には、該回動カバーの基端側に、該回動カバーが前記保持位置にあるときに前記受け爪における係合段部に係止する係合突部をもつ掛け爪が設けられ、
前記位置保持機構が、前記回動カバーが退避位置から保持位置へと回動するときに、前記係合突部が傾斜部に乗り上がり、該傾斜部を乗り越えたときに係合段部に係止されるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の額縁。
【請求項7】
前記当接片は、回動カバーの基端側に向けて傾斜する板状体から成り、該板状体が当接片の先端側に向かうに従い薄肉化されていることを特徴とする請求項6に記載の額縁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絵画、ポスター、写真、賞状等の展示物を取り付ける額縁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絵画、ポスター、写真、賞状等のシート状の展示物を取り付ける額縁は公知である。一般的な額縁として、例えば、特許文献1や特許文献2に示されているようなタイプのものが挙げられる。このうち、特許文献1に示す額縁は、矩形の枠状に形成された外枠1と、プラスチックフィルムから成るカバーシート2と、矩形板状のバックボート(基台)3とを有し、この額縁に展示物を収容する場合、前記基台3に展示物を重ねるとともに、展示物の表面に前記カバーシート2をあてた状態で外枠1を被せ、それから、該外枠1に配設された止め具11で基台3の裏面を係止する。
【0003】
また、前記特許文献2に示されている額縁は、厚紙やプラスチック、発泡材等で形成された基台3と、基台3に載せられた展示物を覆う透明な保護カバー5と、これら基台3及び保護カバー5の周縁に取り付けられる枠体7とを有し、前記枠体7は、該枠体7の4つの辺を構成する4つの縁部材9-12から構成されると共に、4隅の角部に、縦横で隣接する縁部材をつなぐL字形の接続部材13が取り付けられている。この額縁に展示物を装着する場合には、枠体7の1つの辺を形成する縁部材9の両側に配された接続部材13を外し、該縁部材9を引張りながら基台3をスライドさせる。そして、引っ張り出された基台3上に展示物を載せ、基台3を元の位置に戻して取り外された縁部材9と接続部材13とを再び取り付ける。
【0004】
ところで、従来の額縁は、展示物を重ねるための基台を樹脂や金属で形成すると、一定の強度を確保することができるがその一方で額縁の重量が大きくなってしまう。これに対して、基台を前記厚紙、発泡材、或いはベニヤ等の木製板で形成したものの場合、樹脂や金属で形成したものに比べて軽量であるが、湿気などにより反りが発生し易く、それに伴い、展示物を平らに取り付けられなかったり、或いは、枠体の外形がくずれて額縁の美感を損ねてしまうといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-200941号公報
【文献】特開2007-021005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、絵画、写真、ポスター等のシート状の展示物を取り付ける額縁において、枠体内の前記基台に相当するものを、枠体内の開口にネット状のスクリーンを緊張状態で張設したものとし、それによって、枠体の歪みを抑制すると共に、軽くて、収納した展示物を平面状に保つ保持性においても優れている額縁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明によれば、シート状の展示物を取り付けるための額縁であって、前記額縁は、矩形の枠体を有し、該枠体の内側には、スクリーンをスクリーン取付部材で緊張状態に取り付けることにより前記展示物を装着するための装着面が形成され、前記枠体の周囲に、前記展示物を保持するための保持部材が取り付けられ、前記保持部材は、前記枠体と別体に形成されていて、該保持部材に設けた脚部を前記枠体の外周に形成した取付溝に嵌入し、前記脚部の係止爪を前記取付溝の内向き突縁に係止させることにより、前記枠体に取り付けられていることを特徴とする額縁が提供される。
【0008】
本発明に係る額縁においては、前記額縁における枠体の厚さ方向の一面側に、該枠体の開口を包囲すると共に、内向き突縁により口縁が狭窄化された取付溝が形成され、該取付溝にスクリーンを保持させるスクリーン取付部材は、前記枠体の厚さ方向一面側の取付溝を覆う蓋部と、取付溝に前記スクリーンと一緒に押入される脚部とを有し、該脚部には係止爪が設けられていて、この係止爪が前記内向き突縁に係止することで、該スクリーン取付部材が枠体の厚さ方向一面側の取付溝から抜け止めされると共に、前記スクリーンが枠体に緊張状態で張設されて、枠体の厚さ方向一面側と該枠体の開口を覆うスクリーンとにより前記展示物の装着面が形成されているのがより好ましい。
【0009】
本発明に係る額縁において、前記保持部材は、合成樹脂により形成されて、矩形の枠体の各周辺毎に、枠体の外周に固定される第1部分と、枠体の前記一面側に位置して前記展示物を枠体側に圧接する第2部分とを有し、前記第2部分には、前記展示物の周囲を枠体に弾力的に押圧保持する当接片が一体的に設けられていることが望まれる。
【0010】
また、本発明に係る額縁においては、前記第1部分と第2部分とはヒンジを介して連結されていて、第2部分が、このヒンジを回動基点として、前記当接片と枠体との間に展示物を挟持する保持位置と、該展示物の保持状態を開放する退避位置とに変位可能であり、また、これら第1部分と第2部分との間には、該第2部分を前記保持位置に保持するための位置保持機構が設けられていることが望ましい。
【0011】
本発明に係る額縁において、前記第1部分と第2部分とを連結する前記ヒンジは、軟質合成樹脂材料からなる弾性変形可能な薄板状として、該第1部分及び第2部分と一体形成されたものとするのが望ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る額縁において、前記第1部分は、枠体の前記一面側に開放する凹部内において枠体の外周に接する側壁に設けられた受け爪を有し、該受け爪には、凹部の深さ方向に向かって上り勾配状に傾斜する傾斜部と、その内端側に鉤部を構成する係合段部とが設けられ、一方、先端側に前記当接片が設けられた回動カバーを有する前記第2部分には、該回動カバーの基端側に、該回動カバーが前記保持位置にあるときに前記受け爪における係合段部に係止する係合突部をもつ掛け爪が設けられ、前記位置保持機構が、前記回動カバーが退避位置から保持位置へと回動するときに、前記係合突部が傾斜部に乗り上がり、該傾斜部を乗り越えたときに係合段部に係止されるように構成されていることが望まれる。
上記額縁における当接片は、回動カバーの基端側に向けて傾斜する板状体から成り、該板状体が当接片の先端側に向かうに従い薄肉化されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明によれば、絵画、写真、ポスター等のシート状の展示物を取り付ける額縁において、一般的な額縁の枠体内の基台に相当するものを、該枠体内の開口にネット状のスクリーンを緊張状態で張設したものとするので、それによって枠体の歪みを抑制すると共に、軽くて、収納した展示物を平面状に保つ保持性においても優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る額縁の一実施形態を示す正面図である。
【
図3】展示物を保持する保持部材を枠体に固定する前の状態を示す正面図である。
【
図5】前記枠体を分解した状態を示す正面図である。
【
図6】保持部材における第2部分が退避位置にあるときの状態を示す部分拡大断面図である。
【
図7】前記第2部分が退避位置から保持位置に変位している途中の状態を示す部分拡大断面図である。
【
図8】前記第2部分が保持位置にあるときの状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1-
図8は、本発明に係る額縁の一実施形態を示すものである。この額縁1は、ポスターや写真等の展示物50を取り付けるためのもので、中央に開口3を有する矩形の枠体2と、ネット状の矩形のスクリーン20と、枠体2にスクリーン20を装着するスクリーン取付部材21と、前記枠体2の周囲に固定される保持部材30とを有している。該額縁1は、前記スクリーン20が、スクリーン取付部材21により前記開口3を覆うようにして枠体2に取り付けられていることで、展示物50を装着する装着面Mが形成され、さらに、前記保持部材30によって、展示物50を装着面M上に保持するように構成されている。以下、額縁1の具体的構成について説明する。
【0016】
前記スクリーン20は、ポリエステル繊維あるいはポリプロピレン繊維等を平織やラッセル織等の織り方で形成されていて、その縦横寸法は前記枠体2の開口3よりも若干大きくなっている。
【0017】
図2-
図5に示すように、前記枠体2は、該枠体2の4辺にそれぞれ配置されたフレーム4と、隣接する縦横のフレーム4,4同士の端部を接続する4つのコーナー部材10とを有している。前記フレーム4は、同形同大の長尺の部材であり、その素材としては、軽量で剛性の高いアルミニウム等が使用される。前記フレーム4には、該フレーム4の長手方向における一端と他端とを貫通する連結孔5が設けられている。一方、前記コーナー部材10は、直方体状のキャップ部11と、前記フレーム4の連結孔5に嵌入する一対の連結用突部12,12とを有している。一対の連結用突部12,12は、互いに直交する2方向に突出していて、この連結用突部12が、フレーム4に形成された前記連結孔5に嵌入されていることで、4つの角部において隣接する縦横のフレーム4,4の端部同士が連結固定され、それにより、矩形状に枠組みされた前記枠体2が構成されている。
【0018】
なお、符号12aは、例えばゴム等の弾性力のある筋状の弾性体であり、弾性体12aの摩擦力により連結孔5に嵌入された連結用突部12が簡単に外れてしまうのを防止している。前記キャップ部11は、保持部材30を枠体2に固定する際の位置決め片11aを有し、また、枠体2の外周を構成する2辺には、保持部材30の脚部34の押入を許容する受入凹部11b(
図6-
図8参照)を設けている。
【0019】
一方、
図2-
図8に示すように、前記枠体2は、該枠体2の厚さ方向の一面2a(以下表面とする)側に、前記スクリーン取付部材21が嵌入する第1の取付溝6が形成されている。この第1の取付溝6は、枠体2における前記開口3を包囲していると共に、その口縁に設けられた一対の内向き突縁6a,6aによって該口縁が狭窄化されている。
さらに、この枠体2における外周には、保持部材30を取り付ける為の第2の取付溝7を有していて、この第2の取付溝7も第1の取付溝6と同じく、その口縁には一対の内向き突縁7a,7aが設けられ該口縁が狭窄化されている。なお、第2の取付溝7は、前記キャップ部11に設けられた前記受入凹部11bに連続して連なっている。
【0020】
前記スクリーン取付部材21は、合成樹脂の押し出し成形により形成されていて、前記取付溝6を覆う平板状の蓋部22と、蓋部22から直交方向に延びる一対の脚部23,23とを有し、これら脚部23,23の先端部外側には、互いに背向する係止爪24,24が各々形成されている。
【0021】
前記スクリーン取付部材21を用いて枠体2にスクリーン20を取り付けるには、スクリーン取付部材21と第1の取付溝6との間に、前記スクリーン20を平坦な状態に軽く引き伸ばして介在させるとともに、該スクリーン取付部材21の脚部23,23の先端と、該第1の取付溝6の口縁とをスクリーン20を間に介して対向配置させる。それから、蓋部22の外表面を押しこんで、前記脚部23,23を、スクリーン20と一緒に第1の取付溝6内へと押入する。
【0022】
そうすると、前記脚部23に形成された係止爪24の斜面がスクリーン20を介して前記内向き突縁6a,6aの先端に当接し、脚部23,23が内側に弾性変形する。前記係止爪24の斜面が内向き突縁6a,6aを通過すると、脚部23,23が元の状態に弾性復帰し、該係止爪24が内向き突縁6a,6aに係止される。この係止状態で、スクリーン取付部材21が、第1の取付溝6内にスクリーン20を引き込んだ状態となり、且つ、該第1の取付溝6からの抜け出しが防止されている。このように、前記スクリーン20は、スクリーン取付部材21と一緒に第1の取付溝6に引き込まれることで、最終的に適度な緊張が与えられて枠体2に取り付けられ、また、該スクリーン20によって枠体2の開口3が覆われると共に、該枠体2の表面2aとこのスクリーン20とにより、展示物50の前記装着面Mが形成される。
【0023】
また、前記張設作業の結果、スクリーン20は枠体2に緊張状態で綺麗に張ることができ、張設後に外力が作用してもしわが生じることがなく、さらに、該スクリーン20の緊張力により枠体2を構成する4つのフレーム4が対辺側(即ち枠体2の中央)に向けて引っ張られるため、前記枠体2の歪みや反りの発生が可及的に抑制される。また、スクリーン20の網目が通気性を確保することから、湿気の影響で反りが生じることもなく、軽くて且つ展示物50の平面性が保たれる。
【0024】
また、
図2及び
図6-
図8に示すように、前記スクリーン取付部材21が前記第1の取付溝6に嵌入している状態では、蓋部22の外表面は、前記枠体2の表面2aよりも外側に突出しないように構成されており、装着面M上に重ねられた展示物50の裏面に蓋部22が当たって蓋部22の外形が浮き出るのが防止される。なお、前記スクリーン20は、第1の取付溝6への押入後にスクリーン取付部材21からはみ出した余剰部分を適宜の長さ分だけカットしたり、或いは、枠体2の開口3の縦横寸法と、当該スクリーン20における、第1の取付溝6に引き込まれる縁部分の長さを考慮したサイズに、予め裁断したものを取り付けることでもよい。
【0025】
次に、前記装着面M上に展示物50を保持するための保持部材30について、具体的に説明する。
この保持部材30は、枠体2の4辺に沿ってそれぞれ配置される合成樹脂製のもので、該枠体2の外周に固定される第1部分31と、該枠体2の表面2a側に位置していて前記展示物50を枠体2側に圧接する当接片43を備えた第2部分32と、該第1部分31と第2部分32とを連結するヒンジ33とを有し、これら第1部分31、第2部分32及びヒンジ33は、一体成形により形成されている。
そして、前記第2部分32は、ヒンジ33を回動基点として、展示物50を当接片43と枠体2の表面2aとの間で挟持する保持位置(
図2及び
図8参照)と、前記展示物50の保持状態を開放する退避位置(
図6参照)とに保持できるように回動変位可能に構成されている。
【0026】
なお、保持部材30の長さは、枠体2を枠組みするフレーム4の長さより長くなっていて、枠体2に固定したときに、該フレーム4の両端を接続するコーナー部材10に設けた位置決め片11aに当接するように成っている。そして、
図1及び
図3において、縦向きに対向配置された左右の保持部材30の長さは、横向きに対向配置された上下の保持部材30の長さよりも長くなっている。これら保持部材30は、その他の点では実質的に同一の構成を有しているため、以下、4つの保持部材30に共通するものとして説明する。
【0027】
図6-
図8に示すように、前記保持部材30の第1部分31には、枠体2の外周に形成された前記第2の取付溝7に嵌入する一対の脚部34,34が設けられ、該一対の脚部34,34には、その先端部外側に互いに背向する係止爪35,35が設けられており、該係止爪35,35が、第2の取付溝7の内向き突縁7a,7aに係止されている。
また、
前記第1部分31には、
表面2a側に開放する凹部36
が設けられている。該第1部分31の凹部36は、前記枠体2の外周に接して脚部34が垂下している内側壁37と、内側壁37の外側に対向配置された外側壁38と、枠体2の裏面2b側において前記内側壁37と外側壁38とを連結して、凹部36の底を構成する底側壁39とで形成されている。この凹部36は、保持部材30を第2の取付溝7に固定した際に、この第2の取付溝7を覆う外周化粧材としての役割を有している。
【0028】
前記凹部36は、枠体2の外周に接する内側壁37の内側に、受け爪40を有している。この受け爪40は、第2部分32に設けられた後述する掛け爪42と係合することで、該第2部分32を前記保持位置に保持し、該掛け爪42と共に第2部分の位置保持機構を構成するものである。該受け爪40は、前記内側壁37における凹部36の口縁に設けられていて、凹部36の深さ方向に向かって上り勾配状に傾斜する傾斜部40aと、その内端側に鉤部を構成する係合段部40bとを有している。なお、前記傾斜部40aと係合段部40bとが交わる頂部は丸められている。
【0029】
一方、前記第1部分31の外側壁38にヒンジ33を介して連結された第2部分32は、先端側に前記当接片43が設けられた回動カバー41を有し、該回動カバー41の基端部には、前記受け爪40に係合される掛け爪42が設けられている。
前記回動カバー41は、平らな板状で展示物の周囲を覆う部分であり、前記ヒンジ33に連結されて保持位置と退避位置とに回動変位可能であると共に、保持位置側に位置するときには、前記展示物50の縁部と枠体2の表面2aとの境界を覆って意匠性を高めるものである。
【0030】
前記掛け爪42は、前記回動カバー41のヒンジ33への連結部に設けた立設部42aから、該回動カバー41の先端側に向けて湾曲するように形成された係合突部42bを有し、回動カバー41を
図6の前記退避位置から前記保持位置に移動させるときに、この係合突部42bが凹部36の深さ方向に向かって上り勾配状に傾斜する受け爪40の傾斜部40aに沿って、その内端側の鉤部を構成する前記係合段部40bに係合することにより、前記第2部分32が前記保持位置に保持されるように構成している。
【0031】
前記当接片43は、回動カバー41の内面側に設けられ、該回動カバー41の基端側に向かって傾斜する弾性変形可能な板状体から成っている。この当接片43は、その先端に向かうに従って次第に薄肉化されていると共に、該先端部分が前記回動カバー41の内面側に向けて若干湾曲した形状を成している。展示物50を保持する際には、当接片43の先端部分が、装着面Mに重ねられた展示物50を可及的に面接触状態で弾性圧接し、また、厚みのある展示物50においても、その厚さに応じて該当接片43が内側(回動カバー41側)に倒伏するようにして撓むため、当接片43と枠体2との間に様々な厚さの展示物50を挟むことが可能である。
また、前記ヒンジ33は、軟質な合成樹脂材料からなる弾性変形可能な薄板状として、該第1部分及び第2部分と一体形成されている。
【0032】
前記保持部材30を枠体2に取り付けるには、保持部材30の長さ方向両端を前記位置決め片11aに突き当てて位置決めさせると共に、該保持部材30の脚部34の先端と、枠体2における第2の取付溝7、及び、該第2の取付溝7に連なるキャップ部11の前記受入凹部11bの口縁とを対峙させた状態とする。その状態で、前記凹部36を区画する外側壁38の外表面を第2の取付溝7と受入凹部11bに向けて押圧する。そうすると、前記脚部34に形成された係止爪35の斜面が、第2の取付溝7の内向き突縁7a,7aに当たって脚部34,34が内側に弾性変形し、前記係止爪35の全体が内向き突縁7a,7aの内側を通過すると、脚部34,34が元の状態に弾性復帰し、該係止爪35が内向き突縁7a,7aに係止される。このようにして、脚部34が第2の取付溝7及び受入凹部11b内に押入されて、前記保持部材30が枠体2に取り付けられる。
【0033】
次いで、前記保持部材30により展示物50を保持する場合について説明する。
先ず、
図6に示すように、前記保持部材30の第2部分32を開いて退避位置に位置させた状態とし、スクリーン20及び枠体2の表面2aで構成された装着面M上に展示物50を載せる。それから、前記第2部分32の回動カバー41を前記退避位置から保持位置へと回動させる。このとき、
図7に示すように、前記掛け爪42の係合突部42bが第1部分31の受け爪40の傾斜部40aに乗り上がることで、圧接し合う受け爪40と掛け爪42が全体的に弾性変形すると共に、軟質で薄板状のヒンジ33が弾性的に変形して傾斜部40aに対する係合突部42bのせり上がりが許容される。
【0034】
それから、さらに回動カバー41を保持位置に向けて回動させると、前記係合突部42bが傾斜部40aの頂部に向かって該傾斜部40a上を摺接していき、該傾斜部40aの頂部を乗り越えたところで、該係合突部42bと係合段部40bとが係合される(
図8参照)。この係合状態においては、前記第2部分32が保持位置に保持され、前記展示物50が、回動カバー41に設けられた当接片43の外面と枠体2との間で弾力的に挟持される。これを、前記枠体2の4辺に配された各保持部材30について行うことで、前記展示物50を装着面M上に保持することができる。
【0035】
なお、額縁1から展示物50を取り外す場合には、前記受け爪40の係合段部40bから掛け爪42の係合突部42bを離脱させる。そうすることで、ヒンジ33における延伸後の弾性的収縮力の作用により、前述の手順とは逆の手順を経て前記回動カバー41が保持位置から退避位置に向かって変位して、展示物50に対する挟持状態が解除され、それに合わせて、該回動カバー41を退避位置まで開いて該展示物50を取り外す。なお、係合段部40bから係合突部42bを離脱させる際、前記受け爪40における傾斜部40aと係合段部40bとが交差する頂部、及び、掛け爪42の係合突部42bの先端は丸められているので、過剰な力を要することなくその離脱をスムーズに行うことができる。
【0036】
以上において本発明に係る額縁について説明してきたが、本発明は前記の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない範囲で様々な設計変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、本実施形態では、枠体2に前記保持部材30を予め固定しているが、装着面Mに展示物50を装着したあとに後付けで保持部材30を枠体2に固定し、それから第2部分32を退避位置から保持位置へと変位させて保持することもできる。さらに、保持部材の構成についても、第1部分31と第2部分32を可撓なヒンジ33により連結した本実施形態に限られることはなく、展示物50を枠体2との間で圧接することにより、最終的に、前記装着面M上に保持できるものであれば如何なる構成を有していてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 額縁
2 枠体
2a 一面
3 開口
6 第1の取付溝
6a 内向き突縁
20 スクリーン
21 スクリーン取付部材
22 蓋部
23 脚部
24 係止爪
30 保持部材
31 第1部分
32 第2部分
33 ヒンジ
36 凹部
40 受け爪
40a 傾斜部
40b 係合段部
41 回動カバー
42 掛け爪
42b 係合突部
43 当接片