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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】上部尿路上皮癌の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/337 20060101AFI20220629BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220629BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20220629BHJP
【FI】
A61K31/337
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/26
A61M25/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019524304
(86)(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 US2017061047
(87)【国際公開番号】W WO2018089759
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/421,055
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】518004749
【氏名又は名称】ウエスタン ユニバーシティ オブ ヘルス サイエンシーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】518005872
【氏名又は名称】テソリックス ファーマ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベタジェリ, グル ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベンカテサン, ナタラジャン
(72)【発明者】
【氏名】オーフェリン, マイケル ジー.
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0175559(US,A1)
【文献】国際公開第2008/072584(WO,A1)
【文献】特表2007-508353(JP,A)
【文献】特表2005-510471(JP,A)
【文献】Asian Journal of Pharmaceutical Sciences,2013, Vol.8, No.2,pp.81-87
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部尿路上皮癌(UTUC)にパクリタキセルを局所的に送達するためのシステムであって、
前記システムは、バルーンカテーテルを含み
前記バルーンカテーテルが逆行性または順行性の尿管アクセスを介して尿管及び/又は腎盂に設置されるように構成され、
前記バルーンカテーテルは、前記尿管が一時的に閉塞されるように構成され、
前記バルーンカテーテルがワーキングチャネルを含み、パクリタキセルを含むリポソーム製剤が前記カテーテルの前記ワーキングチャネルに滴下注入されておりかつ
前記バルーンカテーテルは、パクリタキセルを含む前記リポソーム製剤の少なくとも一部を尿路上皮壁に付着させる上で十分な時間、パクリタキセルを含む前記滴下注入リポソーム製剤を前記尿管及び/は腎盂に滞留することが可能なように構成され、びに
パクリタキセルを含む前記リポソーム製剤が水溶液中でプロリポソーム粉末分散物を水和させることによって調製され、その中でプロリポソーム粉末分散物は以下の(a)~(C)からなる:
(a)パクリタキセル;
(b)ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC);及び
c)ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG);
a:b:cの重量比は1:(1~3.8):(0.2~1.5)、
上記システム。
【請求項2】
前記滴下注入リポソーム製剤が、少なくとも約10分、少なくとも約15分、少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、は少なくとも約2時間、前記尿管及び/は腎盂に滞留するようにされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カテーテルが、尿管閉塞用カテーテルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記水溶液が、滅菌水、生理食塩水、は緩衝液である、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロリポソーム粉末分散物が、
(d)マンニトール
を追加で含み、
a:b:c:dの重量比が、1:(1~3.8):(0.4~1.5):(1~3)である、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
パクリタキセルの送達が、UTUCを治療するための補助療法である、請求項1~のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
パクリタキセルの送達が、尿管鏡下でのUTUC腫瘍の切除/摘出に対して補助的なものである、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記リポソーム製剤が、2~5回、1週間に反復して2回、1週間に1回、2週間ごと、は4週間ごとに滴下注入される、請求項1~のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
上部尿路上皮癌(UTUC)にパクリタキセルを局所的に送達するための方法において使用するためのリポソーム製剤であって、
前記方法は、
A.ワーキングチャネルを備えたバルーンカテーテルを逆行性または順行性の尿管アクセスを介して尿管及び/は腎盂に設置すること、
B.前記尿管が一時的に閉塞するように前記カテーテルバルーンを膨張させること、
C.前記リポソーム製剤を前記カテーテルの前記ワーキングチャネルに滴下注入すること、びに
D.前記リポソーム製剤の少なくとも一部を尿路上皮壁に付着させる上で十分な時間、前記滴下注入リポソーム製剤を前記尿管及び/は腎盂に滞留させること、
を含み、
ここで、前記リポソーム製剤中のリポソームは以下の(a)~(c)からなる:
(a)パクリタキセル;
(b)ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC);及び
(c)ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG);
a:b:cの重量比は1:(1~3.8):(0.2~1.5)、
上記リポソーム製剤。
【請求項10】
上部尿路上皮癌(UTUC)にパクリタキセルを局所的に送達するためのバルーンカテーテルであって、
前記バルーンカテーテルが逆行性または順行性の尿管アクセスを介して尿管及び/は腎盂に設置されるように構成され、
前記バルーンカテーテルは、前記尿管が一時的に閉塞されるように構成され、
前記バルーンカテーテルがワーキングチャネルを含み、パクリタキセルを含むリポソーム製剤が前記カテーテルの前記ワーキングチャネルに滴下注入されておりかつ
前記バルーンカテーテルは、前記リポソーム製剤の少なくとも一部を尿路上皮壁に付着させることが可能となる約10分、約20分、約30分、約1時間、又は約2時間パクリタキセルを含む前記滴下注入リポソーム製剤を前記尿管及び/又は腎盂に滞留することが可能なように構成され、
ここで、前記リポソーム製剤中のリポソームは以下の(a)~(c)からなる:
(a)パクリタキセル;
(b)ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC);及び
(c)ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG);
a:b:cの重量比は1:(1~3.8):(0.2~1.5)、
上記バルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部尿路上皮癌(UTUC)に化学療法剤を局所的に送達するための方法に関する。方法は、カテーテルによる逆行性または順行性のアクセスを介して化学療法剤のリポソーム製剤を尿管及び/または腎盂に局所的に送達することを含む。
【背景技術】
【0002】
上部尿路上皮癌(UTUC)は、比較的珍しい型のがんであり、すべての尿路上皮癌の5~10%を占めるものにすぎない。(Leow et al.,2014,Suriano et al.,2014,Roupret et al.,2015)。西洋諸国におけるUTUCの推定年間発症率は、住民100,000人当たり約2症例(または6000症例/年)である。(Roupret et al.,2015)。UTUCは、70~90歳の人にその発症ピークが存在し、男性に3倍多く見られる。この疾患の症例の17%で併発膀胱癌が存在する。UTUC患者の22~47%で膀胱に再発が生じるのに対し、対側の上部尿路での再発率は2~6%である。(Hung et al.,2017)。UTUCの60%が診断時点で浸潤性であるのに対し、膀胱腫瘍が浸潤性である割合は15~25%である。(Leow et al.,2014,Roupret et al.,2015)。
【0003】
リスクの高い患者のUTUCの治療では、根治的腎尿管摘除術(RNU)が必要となり得る。一方、リスクの低い症例では、保存的治療が採られ得る。この治療は、対側腎が機能するときに検討され得る。リスクの低いUTUCに対する腎温存手術(KSS)では、腫瘍学的な予後及び腎機能を損なうことなく、切開根治手術と関連する病的状態を回避することが可能である。さらに、すべての不可避な症例(すなわち、腎不全患者または機能する腎臓が単一である患者)においても保存的治療が検討され得る。最も一般的なKSS手法には、尿管鏡下逆行性腫瘍切除法、経皮的順行性腫瘍切除法、または尿管部分摘除術が含まれる。
【0004】
尿管鏡を使用するUTUCの内視鏡的切除法は、高度に選択的な症例及び下記の状況において検討され得る:生検にレーザー発生装置及びアリゲーター型内視鏡用鉗子が利用可能であるとき、尿管鏡が柔軟性及び剛性であるとき、より綿密かつ厳密な調査監視の必要性について患者が知らされているとき、ならびに完全に腫瘍を摘出することが強く推奨されるとき。しかしながら、遠隔の解剖学的腎盂領域に内視鏡的にアクセスすることは、外科的な切除または生検を行う能力を制限し得るものである。さらに、純粋な内視鏡的処置では、腫瘍のステージ分類及び段階分けが過少となるリスクが存在する。さらに、尿管鏡を用いて治療された腎盂腫瘍及び尿管腫瘍の再発率は高く、それぞれ33~35%及び31~32%となっている。
【0005】
腫瘍再発に対抗するために、抗腫瘍化学療法剤を使用する術後滴下注入療法によってUTUCの外科的管理を達成することができる。UTUCでは、KSSの後にMMCを管腔内に滴下注入することで有望な結果が得られることが報告されている(Aboumarzouk et al.,2013)。しかしながら、尿管アクセス及び適切な薬物滞留時間の達成が困難であることから、内視鏡的処置の後に化学療法を局所的に実施することによる疾患再発に対する効果は最小限のものである(Keeley et al.,1997,Goel et al.,2003,Aboumarzouk et al.,2013,Hutchinson et al.,2016)。
【0006】
外科的に除去し、局所的な術後化学療法が行われた後でさえ尿路上皮腫瘍の再発が続くことは、UTUC患者に対するさらなる治療方法が必要であることを示している。尿管内部の環境が水性であり、ぜん動が排出性であり、尿路上皮バリアの通過が困難であることを考慮すると、上部尿路への管腔内送達は、特有の課題を提起するものである。
【0007】
したがって、現在、抗腫瘍化学療法剤を使用する滴下注入療法を含むUTUCの内視鏡的治療方法が必要とされている。化学療法剤の滞留時間が延長され、それによって化学療法剤への尿路上皮癌の曝露が増加するようになるUTUCの治療方法も必要とされている。化学療法剤の安定なリポソーム製剤の使用方法であって、尿中のpHで化学療法剤が沈殿することなく、UTUCを患う尿管及び/または腎盂の尿路上皮壁に少なくとも部分的に薬剤が付着することが製剤によって可能になる使用方法も必要とされている。そのような方法は、治療の効力を増進または維持しながら治療の副作用を最小化することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上部尿路上皮癌を治療するための組成物及び方法に関する。上部尿路上皮癌(UTUC)に化学療法剤を局所的に送達するための本発明による方法では、ワーキングチャネルを備えたバルーンカテーテルが逆行性または順行性の尿管アクセスを介して尿管及び/または腎盂に設置され、尿管が一時的に閉塞するようにカテーテルバルーンが膨張され、化学療法剤を含む液体リポソーム製剤がカテーテルのワーキングチャネルに滴下注入され、リポソーム製剤の少なくとも一部を尿路上皮壁に付着させる上で十分な時間、滴下注入リポソーム製剤が尿管及び/または腎盂に滞留するようにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】逆行性アクセスを介する、尿管及び腎盂への化学療法製剤のリポソーム製剤の送達を示す。
図2】尿管のバルーン閉塞を使用する化学療法剤の送達を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、上部尿路上皮癌(UTUC)に化学療法剤を局所的に送達するための方法に関する。方法は、ワーキングチャネル及びバルーンを有するバルーンカテーテルを逆行性(または順行性)の上部尿管アクセスを介して尿管/腎盂に設置すること、尿管が一時的に閉塞するようにカテーテルバルーンを膨張させること、化学療法剤を含む液体リポソーム製剤をカテーテルのワーキングチャネルに注入(滴下注入)すること、ならびに製剤の少なくとも一部が尿路上皮壁に付着するようになる上で十分な時間、注入リポソーム製剤を尿管及び/または腎盂に滞留させること、を含む。本発明の方法では、滞留時間は、約1分~約120分である。例えば、リポソーム製剤は、少なくとも約10分、少なくとも約15分、少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、または少なくとも約2時間、滞留させることができる。本発明の方法では、注入される化学療法剤リポソーム製剤は、それが尿管及び/または腎盂に滴下注入され、そこに滞留する間に尿路上皮壁と接触するようになり、そこに付着する。
【0011】
化学療法剤を局所的に滴下注入することの効力は、特有の尿路環境に最適化され、尿管上皮を通過する能力を有する薬物製剤を使用することによって改善できる。その目的を達成するために、尿管上皮を効率的に通過し、薬物が有効レベルで尿管に送達されるようにプロリポソーム製剤が設計される。プロリポソーム製剤は、水性媒体で再構成されるとリポソーム製剤となり、これに伴って水溶解度が上昇するため、結果的に、カテーテルアクセスを介する上部尿路への直接的な曝露が改善される。
【0012】
逆行性または順行性の尿管アクセスに適した任意のカテーテルを本発明の方法において使用することができる。カテーテルは、剛性または好ましくは柔軟性のバルーンカテーテルであり得る。例えば腫瘍が腎盂、遠位尿管、中部尿管、または近位尿管に位置するとき、剛性のものよりも柔軟性の尿管鏡の方が好ましい。本発明の方法では、カテーテルは、尿管閉塞用カテーテルである。カテーテルは、例えば、フォガティバルーンカテーテル、Boston Scientific(登録商標)Equalizer Balloon Catheter(登録商標)、またはBoston Scientific(登録商標)Occlusion Balloon Catheter(登録商標)であり得る。バルーンカテーテルを膨張させることで、注入された化学療法剤製剤の滞留時間を延長することが可能になる。好ましくは、本発明の方法では、尿管への内視鏡的な逆行性のアクセスを介する、遠位端が膨張可能なバルーンを備えたカテーテルが利用される。
【0013】
カテーテルデバイスは、例えば、シリコーンまたはPVCで形成され、フレンチスケールで直径が約3.2であり、内径が0.38であり、1cmの細長い卵形バルーンを有するものであり得る。バルーンの圧力は、必要に応じて調整することができ、例えば、最大で10mmHgに到達させることができる。カテーテルデバイスは、放射線造影で増強されたイメージング技術(蛍光透視法など)の支援を得て挿入及び設置することができる。本発明の方法では、バルーンは、設置後に、尿管を閉塞させる上で十分な体積に膨張され、リポソーム製剤が直接的に近位尿管に滴下注入される。
【0014】
本発明の方法は、UTUC腫瘍を治療するために化学療法剤のリポソーム製剤を尿管鏡下で注入(滴下注入)することを含む。UTUCを治療するための当該技術分野において知られる任意の化学療法剤が使用され得る。化学療法剤は、例えば、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル、もしくはカバジタキセルなど)またはシスプラチンであり得る。
【0015】
UTUCを治療するための化学療法剤(パクリタキセルまたはシスプラチンなど)は、本発明の方法において使用されるべきプロリポソーム製剤として最初に製剤化される。リポソーム製剤は、尿管及び/または腎盂への滴下注入の前に、プロリポソーム製剤に水溶液を添加することによってプロリポソーム製剤から調製することができる。水溶液は、滴下注入向けとして当該技術分野において知られる任意のものであり得、例えば、緩衝液である滅菌水、生理食塩水などである。
【0016】
リポソーム製剤の体積は、必要に応じて調整することができ、例えば、UTUC腫瘍のサイズ及び位置に応じて調整することができる。注入される製剤の体積は、約1mL~約50mLであり得る。例えば、開示の方法は、尿管アクセスバルーン閉塞カテーテルを介して、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約6mL、約7mL、約8mL、約9mL、約10mL、約11mL、約12mL、約13mL、約14mL、約15mL、約20mL、約25mL、約30mL、約35mL、約40mL、約45mL、または約50mLの化学療法剤含有ポソーム製剤を尿管及び/または腎盂に滴下注入することによって実施できる。
【0017】
リポソーム製剤における化学療法剤の濃度は、化学療法剤の所望の投与量を送達するために、必要に応じて調整することができる。例えば、投与されるパクリタキセルの用量は、約0.5mg/kg~約20mg/kgの範囲であり得、例えば、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、または約15mg/kgであり得る。
【0018】
プロリポソーム製剤
本発明の方法は、UTUC腫瘍に化学療法剤を局所的に送達するものであり、この方法は、化学療法剤のリポソーム製剤を尿管及び/または腎盂に滴下注入することを含む。リポソーム製剤は、化学療法剤のプロリポソーム製剤を使用して調製される。
【0019】
UTUCの治療方法は、リポソームの懸濁物を投与するものであり、こうしたリポソームには、化学療法剤または活性薬剤の組み合わせが封入されたナノサイズ化水難溶性薬物封入リポソーム小胞が含まれる。リポソームは、本明細書の実施例1~4ならびに米国特許第9,445,995号及び第6,759,058号(それらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載のキャスト膜法によって形成されるプロリポソーム粉末分散物を水和させることによって調製され得る。リポソーム製剤及びプロリポソーム製剤は、後述の実施例に記載のものと同様の有機溶媒非使用法によっても調製され得る。
【0020】
一般に、本発明のリポソームの脂質成分は、リン脂質小成分を含み、この小成分は、単一の化学種に属するリン脂質分子からなるか、またはさまざまな化学種の組み合わせからなり得る。本明細書に開示のプロリポソーム粉末分散物のリン脂質成分は、任意の医薬的に許容可能なリン脂質及びそのようなリン脂質の混合物であり得る。天然及び合成のリン脂質及びリン脂質誘導体が取り入れられ、一般に、リン脂質と称される。
【0021】
リン脂質は、有機分子のリン酸から構成される親水性頭部及び1つまたは複数の疎水性脂肪酸尾部という2つの主要領域を有する分子である。天然起源のリン脂質は、一般に、コリン、グリセロール、及びリン酸から構成される親水性領域と、脂肪酸から構成される2つの疎水性領域と、を有する。リン脂質は、水性環境に置かれると、親水性頭部が集合して直線状の配置をとると同時に、その疎水性尾部が互いに本質的に平行に整列する。その後、疎水性尾部が水性環境を回避しようとするにつれて分子の第2のラインが第1のラインと尾部同士を突き合わせる形で整列する。水性環境との接触(すなわち、二重層の縁で生じる接触)が最大限に回避され、これと同時に、体積に対する表面積の比が最小化することによって最小エネルギーの高次構造が達成されるように2つのリン脂質ライン(リン脂質二重層またはラメラとして知られる)がまとまってリポソームとなる。その際に、水性媒体のいくらか、及びその水性媒体に溶解または懸濁され得るものは何であれ、リポソーム(またはリン脂質球体)によって当該球体のコア内に捕捉される。こうしたものには、本明細書に開示のプロリポソーム粉末分散物の成分(テストステロン及び他の成分など)が含まれる。
【0022】
本明細書に開示のプロリポソーム粉末分散物において使用され得る適切なリン脂質の例には、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、卵ホスファチジルコリン(卵-PC)、ダイズホスファチジルコリン(ダイズ-PC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG)、1,2-ジミリストイル-ホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジパルミトイルホスフェート(DPP)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロール(DSPG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DSGPA)、ホスファチジルセリン(PS)、及びスフィンゴミエリン(SM)が含まれる。本明細書に開示のプロリポソーム粉末分散物は、上述のリン脂質のいずれかの個々の組み合わせも含み得る。
【0023】
プロリポソーム製剤、すなわち、プロリポソーム粉末分散物は、少なくとも、(a)薬物(典型的には化学療法剤)と、(b)第1のリン脂質と、(c)第2のリン脂質と、の混合物であり、これらのものは、互いに分散しており、水溶液と接触するとリポソームを形成する。例えば、プロリポソーム粉末分散物は、(a)、(b)、及び(c)を含み、(a):(b):(c)の重量/重量比の範囲は、(1.0):(1.0~3.0):(0.1~1.5)であり得る。プロリポソーム粉末分散物は、成分(a~c)に加えて、(d)コレステロールも含み得る。したがって、プロリポソーム製剤は、(a)、(b)、(c)、(d)を含み、(a):(b):(c):(d)の重量/重量比の範囲は、(1.0):(1.0~3.0):(0.1~1.5):(0.1~2.0)であり得る。
【0024】
プロリポソーム製剤は、送達前に水または水溶液において水和され、その結果、そのリポソーム内に化学療法剤が封入されたリポソームが形成される。得られるリポソーム懸濁物は、水または水溶液に加えて、凍結乾燥/凍結保護物質(スクロース、トレハロース、またはマンニトールなど)を含み得る。典型的には、リポソーム製剤の凍結乾燥/凍結保護成分は、薬物成分と共にある一定のw/w比(凍結乾燥/凍結保護物質:薬物=約(0.5:1.0)~(4.5:1.0))で存在する。例えば、本発明による治療方法において使用するためのリポソーム懸濁物は、(a)薬物(典型的には化学療法剤)と、(b)第1のリン脂質と、(c)第2のリン脂質と、(e)凍結乾燥/凍結保護物質と、を(1.0):(1.0~3.0):(0.1~1.5):(0.5~4.5)で含むプロリポソーム粉末を混合することによって調製され得る。
【0025】
本発明において使用されるプロリポソーム製剤及びリポソーム製剤は、さまざまな薬物及び活性薬剤を収容することができる。UTUCの治療において使用するための製剤に関して、本発明では、限定はされないが、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、DJ-927、TPI287、ラロタキセル、オルタタキセル(ortataxel)、DHA-パクリタキセル、カルタゾタキセル(cartazotaxel)、及びテセタキセル(tesetaxel)を含む)、ならびにシスプラチンが収容される。
【0026】
例えば、タキサン誘導体薬物を含むプロリポソーム粉末分散物(「プロリポソーム膀胱内用タキサン(PLIT)製剤」)は、(a)タキサンと、(b)第1のリン脂質と、(c)第2のリン脂質と、を含み得る。さまざまな実施形態では、プロリポソーム粉末分散物は、(a)、(b)、及び(c)を含み、(a):(b):(c)の重量/重量比は、(1.0):(1.0~3.8):(0.2~1.5)またはそこに含まれる任意の比から選択される。例えば、プロリポソーム分散物のさまざまな実施形態では、(a):(b):(c)の重量/重量比は、(1.0):(3.15):(1.00)、または(1.0):(3.20):(1.05)、または(1.0):(3.25):(1.10)、(1.0):(1.43):(0.567)の比(それぞれDMPC:DMPG:パクリタキセル)またはそこに含まれる任意の比であり、これらは、15mgのマンニトールと共に1mlの滅菌水に含められ得る。
【0027】
上に示されるように、本明細書に記載のプロリポソーム粉末分散物は、タキサン、第1のリン脂質、及び第2のリン脂質に加えて、コレステロールも含み得る。したがって、本発明で使用されるプロリポソーム粉末分散物のさまざまな実施形態では、プロリポソーム粉末分散物が含む(a):(b):(c):(d)の重量/重量比は、(1.0):(1.0~3.8):(0.4~1.5):(0.5~1)またはそこに含まれる任意の比から選択される。したがって、プロリポソーム分散物のある特定の実施形態では、(a)は、パクリタキセルであり、第1のリン脂質である(b)は、DMPCであり、第2のリン脂質である(c)は、DMPGであり、(d)は、コレステロールあり、(a):(b):(c):(d)の重量/重量比は、(1.0):(3.40):(1.25):(0.70)、または(1.0):(3.45):(1.30):(0.75)、または(1.0):(3.50):(1.35):(0.80)、またはそこに含まれる任意の比である。
【0028】
あるいは、本発明において使用されるプロリポソーム製剤及びリポソーム製剤は、例えば、シス-ジアンミンジクロロ白金(II)(一般に、シスプラチンとして知られる)を含み得る。したがって、本発明において使用されるシスプラチンを含むプロリポソーム粉末分散物(「プロリポソーム膀胱内用シスプラチン(PLIC)製剤」)は、(a)シスプラチンと、(b)第1のリン脂質と、(c)第2のリン脂質と、を含み得る。さまざまな実施形態では、プロリポソーム粉末分散物は、(a)、(b)、及び(c)を含み、(a):(b):(c)の重量/重量比は、(1.0):(2.5~4.5):(1.5~2.5)またはそこに含まれる任意の比から選択される。例えば、プロリポソーム分散物のさまざまな実施形態では、(a):(b):(c)の重量/重量比は、(1.0):(2.7):(1.2)、または(1.0):(2.75):(1.21)、または(1.0):(2.76):(1.22)、または(1.0):(2.77):(1.2)、または(1.0):(2.78):(1.22)、またはそこに含まれる任意の比であり得る。したがって、プロリポソーム分散物のある特定の実施形態では、(a)は、シスプラチンであり、第1のリン脂質である(b)は、DMPCであり、第2のリン脂質である(c)は、DMPGであり、(a):(b):(c)の重量/重量比は、(1.0):(2.7):(1.2)、または(1.0):(2.75):(1.21)、または(1.0):(2.76):(1.22)、または(1.0):(2.77):(1.2)、または(1.0):(2.78):(1.22)、またはそこに含まれる任意の比である。
【0029】
プロリポソーム分散物の他の実施形態では、(a):(b):(c)の重量/重量比は、(1.0):(4.1):(2.1)、または(1.0):(4.15):(2.25)、または(1.0):(4.16):(2.26)、または(1.0):(4.17):(2.27)、またはそこに含まれる任意の比であり得る。したがって、プロリポソーム分散物のある特定の実施形態では、(a)は、シスプラチンであり、第1のリン脂質である(b)は、DMPCであり、第2のリン脂質である(c)は、DMPGであり、(a):(b):(c)の重量/重量比は、(1.0):(4.1):(2.1)、または(1.0):(4.15):(2.25)、または(1.0):(4.16):(2.26)、または(1.0):(4.17):(2.27)、またはそこに含まれる任意の比であり得る。
【0030】
PLIT製剤と同様に、本明細書に記載のプロリポソーム粉末分散物は、シスプラチン、第1のリン脂質、及び第2のリン脂質に加えて、コレステロールを含み得る。したがって、本発明によるプロリポソーム粉末分散物のさまざまな実施形態では、プロリポソーム粉末分散物が含む(a):(b):(c):(d)の重量/重量比は、(1.0):(2.5~4.5):(1.5~2.5):(0.5~1)またはそこに含まれる任意の比から選択される。したがって、プロリポソーム分散物のある特定の実施形態では、(a)は、シスプラチンであり、第1のリン脂質である(b)は、DMPCであり、第2のリン脂質である(c)は、DMPGであり、(d)は、コレステロールであり、(a):(b):(c):(d)の重量/重量比は、(1.0):(2.7):(1.2):(1.6)、または(1.0):(2.75):(1.21):(1.65)、または(1.0):(2.76):(1.22):(1.7)、または(1.0):(2.77):(1.2):(1.75)、または(1.0):(2.78):(1.22):(1.8)、またはそこに含まれる任意の比である。
【0031】
医薬製剤及び剤形
本発明では、本発明によるプロリポソーム粉末分散物と組み合わせることのできるさまざまな医薬賦形剤が取り入れられることで、医薬製剤または剤形が創出される。パクリタキセルは、脂質と共にエタノールに溶解し、ロータリーフラッシュエバポレーターを使用して薄膜を成形した。乾燥した膜は、通常の生理食塩水もしくは水または任意の医薬的に許容可能な溶媒を使用して水和させた。これによって、リポソーム分散物が得られる。Emulsiflex(商標)-C5(Avestin,Canada)もしくは同様の高圧ホモジナイザー、または200nmの範囲内の所望のサイズに低減することができる、文献において知られる適切な機器を使用して上記の分散物を押し出し処理に供した。このリポソーム分散物に対して適切な賦形剤を外部から添加し、凍結乾燥に供すことでプロリポソーム粉末を得ることができる。すなわち、賦形剤は、「外部から」添加される。例えば、プロリポソーム粉末分散物は、少なくとも1つの医薬的に許容可能な賦形剤と混合され得る。医薬的に許容可能な賦形剤の例には、限定はされないが、(a)凍結保護物質、充填剤、または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース(例えば、ラクトース一水和物)、スクロース、グルコース、マンニトール、トレハロース、及びケイ酸など)、(b)結合剤(例えば、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Benecel(商標)として市販される)、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel(商標)(Ashland Inc-Covington,KY)として市販される)を含む)、デンプン、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシアガムなど)、(c)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物など)が含まれる。いくつかの実施形態では、医薬的に許容可能な賦形剤は、特定の賦形剤に適した任意の量で使用される。
【0032】
UTUCを治療するために尿管及び/または腎盂に化学療法剤を送達するための開示の方法は、UTUCの他の治療方法に対する補助療法または追加治療として使用することができる。例えば、化学療法剤のリポソーム製剤の滴下注入方法は、尿管鏡下でのUTUCの切除/摘出に対して補助的なものであり得る。したがって、本発明の方法は、移行上皮癌に対するリポソーム製剤化化学療法剤を腎内または尿管に注入することを含み得る。
【0033】
前記リポソーム製剤が、2~5回、1週間に反復して2回、1週間に1回、2週間ごと、または4週間ごとに滴下注入される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【実施例
【0034】
下記の実施例1~4では、プロリポソーム膀胱内用パクリタキセル(PLIP)製剤であるそれぞれPLIP-003、PLIP-006、PLIP-021、及びPLIP-023の調製について記載される。上述のPLIP製剤の調製は、それぞれ表1~4に記載されるように、それぞれの製剤につき、50℃の水浴に500mL丸底フラスコを置き、その中で薬物及び脂質成分をすべて一緒に10mLのエタノールに溶解することによって実施した。減圧下でロータリーフラッシュエバポレーター(Buchi)を使用して脂質成分及びエタノールの混合物を乾燥させることによってそこから薄膜を成形した。この膜を、減圧下(150~200mbar)、室温で一晩完全に乾燥させた。その後、20mLの生理食塩水を使用し、フラスコを50℃の水浴に置くことによって上記の膜を水和させた。このフラスコを、Buchiロータリーフラッシュエバポレーターを使用して回転させることでリポソーム分散物を形成させた。その後、Nano DeBee(登録商標)高圧ホモジナイザーを使用し、この分散物を高圧下、室温でホモジナイズすることで、粒子サイズ範囲が100~200nmのユニラメラリポソームを得た。その後、調製した分散物を、EmusiFlex(登録商標)-C5ホモジナイザーを使用して押し出し処理に供した。押し出しは、サイズが1μmから0.2μmに低減されるポア直径を有するポリカーボネート膜を使用して実施した。この最終押し出し物に対して、それぞれ表1~3に記載の量のマンニトールを添加し、この混合物を凍結乾燥することでプロリポソームを得た。
【0035】
実施例1.PLIP-003
【表1】
【0036】
実施例2.PLIP-006
【表2】
【0037】
実施例3.PLIP-021
【表3】
【0038】
実施例4.PLIP-023
【表4】
【0039】
実施例5.ナノサイズ化水難溶性薬物封入リポソーム小胞を調製するための代替方法を下記のように実施した:
【0040】
1.脂質成分(DMPC及びDMPGなど)を秤量し、水性媒体に移した。2.脂質成分のTc/Tgより高い温度で水性媒体を保持した。3.脂質混合物を静置するか、あるいは撹拌、混合、及び/またはホモジナイズすることによって脂質を水和させた。4.水難溶性薬物(修飾タキサン(パクリタキセルなど)など)または白金含有薬物(シスプラチンなど)を脂質分散物に添加し、薬物及び脂質の混合物を継続的に撹拌した。5.リポソームを得るために、脂質+薬物を含有する分散物を、高圧かつ脂質のTc/Tgより高い温度でホモジナイズした。薬物がリポソームに封入されるまでホモジナイズを継続した。顕微鏡下でリポソームを観察し、いずれの薬物結晶も見られないことをもって薬物が封入されたことを確認した。6.薬物が封入された時点で、次に、薬物封入リポソーム小胞をナノサイズ化したものを得るために、脂質(複数可)のTc/Tgの若干上、Tc/Tg、またはTc/Tg未満でホモジナイズを実施した。7.適切な凍結/凍結乾燥保護物質をリポソーム小胞に添加してから凍結乾燥することで薬物負荷プロリポソームを得た。
【0041】
ナノサイズ化薬物封入リポソーム小胞の上述の代替調製方法の利点には、有機溶媒または高刺激性溶媒(エタノール、クロロホルム、及びエーテルなど)を使用する必要がないこと、必要なものが水性媒体のみである簡便なプロセスであること、単位操作の数が低減されること、プロセスに必要な機器の数が低減されること、実施例1~4に記載のキャスト膜法と比較して薬物封入リポソーム小胞を得るためにかかる時間が顕著に短いこと(2日の調製時間に対して2時間)、ならびに当該代替調製方法が簡便、迅速、かつ経済的なプロセスであること、が含まれる。
【0042】
実施例6.PLIP-001。
ナノサイズ化水難溶性薬物封入リポソーム小胞の代替調製方法(実施例5に記載のもの)を使用することでパクリタキセル製剤であるPLIP-001を調製し、この製剤に表5に記載の成分を含めた。PLIPの成分量は、PTXの量に比例して重量/重量比ベースで調整することができる。
【表5】
【0043】
実施例7.尿管組織へのPTXの送達のエクスビボアッセイ。
新鮮な状態で得た腎臓及び尿管を緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水など)ですすぎ/洗浄する。尿管をカテーテルでカニューレ処置する。カテーテルのバルーンを膨張させ、巾着縫合を使用してカテーテルを固定する。PTXを含むリポソーム製剤を尿管に直接的に滴下注入する。アッセイにおけるリポソーム製剤の体積は、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約6mL、約7mL、約8mL、約9mL、約10mL、約11mL、約12mL、約13mL、約14mL、約15mL、約20mL、約25mL、約30mL、約35mL、約40mL、約45mL、または約50mLである。特定の滞留時間(約10分、約20分、約30分、約1時間、及び約2時間)製剤を尿管に残存させる。リポソーム製剤を排出し、尿管及び腎臓の切片を作成する。リポソームPTX製剤からの尿管及び腎臓の組織への移行動態学の評価を目的とし、腎臓組織におけるPTXの測定を含めて、さまざまな組織深度(0~4000ミクロン)でPTXをアッセイする。
参考文献
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本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
上部尿路上皮癌(UTUC)に化学療法剤を局所的に送達するための方法であって、
A.ワーキングチャネルを備えたバルーンカテーテルを逆行性または順行性の尿管アクセスを介して尿管及び/または腎盂に設置すること、
B.前記尿管が一時的に閉塞するように前記カテーテルバルーンを膨張させること、
C.化学療法剤を含む液体リポソーム製剤を前記カテーテルの前記ワーキングチャネルに滴下注入すること、ならびに
D.前記リポソーム製剤の少なくとも一部を尿路上皮壁に付着させる上で十分な時間、前記滴下注入リポソーム製剤を前記尿管及び/または腎盂に滞留させること、
を含む、前記方法。
(項目2)
前記滴下注入リポソーム製剤が、少なくとも約10分、少なくとも約15分、少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、または少なくとも約2時間、前記尿管及び/または腎盂に滞留するようにされる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記カテーテルが、尿管閉塞用カテーテルである、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記化学療法剤が、タキサンである、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記化学療法剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、またはカバジタキセルである、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記化学療法剤が、シスプラチンである、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記化学療法剤のプロリポソーム製剤に水溶液が添加されることによって、滴下注入前に前記化学療法剤のリポソーム製剤が調製される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記水溶液が、滅菌水、生理食塩水、または緩衝液である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記リポソーム製剤の体積が、約1mL~約15mLである、項目1に記載の方法。
(項目10)
(a)シスプラチンと、
(b)ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)と、
(c)ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG)と、
を含むプロリポソーム粉末分散物を使用してシスプラチンがリポソーム製剤に製剤化され、a:b:cの重量比が、1:(2.5~4.5):(1.5~2.5)である、項目6に記載の方法。
(項目11)
前記プロリポソーム粉末分散物が、
(d)コレステロール
を追加で含み、
a:b:c:dの重量比が、1:(2.5~4.5):(1.5~2.5):(0.5~1)である、項目10に記載の方法。
(項目12)
(a)パクリタキセルと、
(b)ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)と、
(c)ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG)と、
を含むプロリポソーム粉末分散物を使用してパクリタキセルがプロリポソーム製剤に製剤化され、a:b:cの重量比が、1:(1~3.8):(0.4~1.5)である、項目5に記載の方法。
(項目13)
前記プロリポソーム粉末分散物が、
(d)コレステロール
を追加で含み、
a:b:c:dの重量比が、1:(1~3.8):(0.4~1.5):(0.5~1)である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記プロリポソーム粉末分散物が、
(d)マンニトール
を追加で含み、
a:b:c:dの重量比が、1:(1~3.8):(0.4~1.5):(1~3)である、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記化学療法剤の送達が、UTUCを治療するための補助療法である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記化学療法剤の送達が、尿管鏡下でのUTUC腫瘍の切除/摘出に対して補助的なものである、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記リポソーム製剤が、2~5回、1週間に反復して2回、1週間に1回、2週間ごと、または4週間ごとに滴下注入される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
図1
図2