(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】多軸力及びモーメントセンサ、該センサを備えるロボット
(51)【国際特許分類】
G01L 5/169 20200101AFI20220629BHJP
B25J 19/02 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G01L5/169
B25J19/02
(21)【出願番号】P 2021522927
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 US2019040063
(87)【国際公開番号】W WO2020009961
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-05
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521006211
【氏名又は名称】フレキシブ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FLEXIV LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】521006222
【氏名又は名称】フレキシブ ロボティックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FLEXIV ROBOTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ジァン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン スチュアン
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-177232(JP,A)
【文献】特開昭61-283842(JP,A)
【文献】特開2018-059854(JP,A)
【文献】特開2012-237570(JP,A)
【文献】特開2012-093291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0276556(US,A1)
【文献】国際公開第2018/065765(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/042571(WO,A1)
【文献】特開2016-070824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28,
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の支持部材と、
第2の支持部材と、
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との間に接続され、複数の方向に加えられた外力及びモーメントに応じて歪むように構成される変形可能部品と、
磁石及びホール効果センサを含む複数の信号組と、を含み、
前記磁石は前記第1の支持部材と前記第2の支持部材のいずれか一方に取付けられており、
前記ホール効果センサは、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材の他方に取付けられ、各々の磁石に対応する位置に配置されており、
前記複数の信号組は、磁石の着磁方向が異なることで、前記複数の信号組により異なる方向において前記第1の支持部材と前記第2の支持部材に加えられた力及びモーメントを測定することがで
き、
前記第1の支持部材は第1の盤と第3の盤とを含み、前記第2の支持部材は第2の盤と第4の盤とを含み、前記変形可能部品は第1の撓み部材と第2の撓み部材とを含み、
前記第1の盤と前記第2の盤は、前記第1の撓み部材により接続されているとともに、協同でアッパーセンサコンポーネントを構成し、前記第3の盤と前記第4の盤は、前記第2の撓み部材により接続されているとともに、協同でロアセンサコンポーネントを構成し、前記アッパーセンサコンポーネントは前記ロアセンサコンポーネント上に積層されており、
前記第1の盤、前記第2の盤、前記第3の盤及び前記第4の盤は互いに略平行に延在している、
多軸力及びモーメントセンサ。
【請求項2】
前記複数の信号組は6つの信号組を含み、
前記6つの信号組のうち3つの信号組の磁石の着磁方向は、前記センサの周方向に平行であり、
前記6つの信号組のうち他の3つの信号組の磁石の着磁方向は、前記センサの軸方向に平行である、
ことを特徴とする請求項
1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1の盤と前記第3の盤とを剛性的に接続する複数の第1のブリッジング機構と、
前記第2の盤と前記第4の盤とを剛性的に接続する複数の第2のブリッジング機構とをさらに含む、
ことを特徴とする請求項
1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記複数の第1のブリッジング機構及び前記複数の第2のブリッジング機構のそれぞれは、高導磁率の材料を含むとともに、前記複数の信号組のうち対応する一つの信号組に対応する位置に配置され、前記一つの信号組のそれぞれを少なくとも部分的に封止する、
ことを特徴とする請求項
3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記複数の第1のブリッジング機構のそれぞれは、前記センサの軸方向において前記第2の盤から間隔を空けている第1のストッパを含み、前記第1のストッパは、前記第1の撓み部材が軸方向において過度に歪むことを防止するように構成されており、
前記複数の第2のブリッジング機構のそれぞれは、前記センサの前記軸方向において前記第3の盤から間隔を空けている第2のストッパを含み、前記第2のストッパは、前記第2の撓み部材が前記軸方向において過度に歪むことを防止するように構成される、
ことを特徴とする請求項
3に記載のセンサ。
【請求項6】
前記第2の盤から延びて前記第1の盤を挿通する第1の位置決めピンと、前記第3の盤から延びて前記第4の盤を挿通する第2の位置決めピンとをさらに含み、
前記第1の盤の延在方向において、前記第1の位置決めピンと前記第1の盤との間に間隔があり、前記第1の位置決めピンは、前記第1の撓み部材が前記センサの径方向及び周方向において過度に歪むことを防止するように構成され、
前記第4の盤の延在方向において、前記第2の位置決めピンと前記第4の盤との間に間隔があり、前記第2の位置決めピンは、前記第2の撓み部材が前記センサの径方向及び周方向において過度に歪むことを防止するように構成される、
ことを特徴とする請求項
5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記第1の支持部材に接続された上部ハウジングと、
前記第2の支持部材に接続された底部ハウジングと、
前記上部ハウジングと底部ハウジングとの間に接続されている封止部材とを、さらに含み、
前記上部ハウジング、前記底部ハウジング及び前記封止部材は、協同で前記第1の支持部材、前記第2の支持部材、前記変形可能部品及び前記複数の信号組を封止するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項8】
積層されたアッパーセンサコンポーネントとロアセンサコンポーネントとを含み、
前記アッパーセンサコンポーネントは、
第1の盤と、
第2の盤と、
前記第1の盤と第2の盤との間に接続され、複数の方向に加えられた外力及びモーメントに応じて歪むように構成される第1の撓み部材と、
第1の発信器及び第1の受信器を含み、前記第1の発信器が前記第1の盤及び第2の盤のいずれか一方に取付けられており、前記第1の受信器が前記第1の盤及び第2の盤の他方に取付けられているとともに、前記第1の発信器に対応する位置に配置されている、複数の第1の信号組と、を含み、
前記ロアセンサコンポーネントは、
第3の盤と、
第4の盤と、
前記第3の盤と前記第4の盤との間に接続され、複数の方向に加えられた外力及びモーメントに応じて歪むように構成される第2の撓み部材と、
第2の発信器及び第2の受信器を含み、前記第2の発信器が前記第3の盤及び前記第4の盤のいずれか一方に取付けられており、前記第2の受信器が前記第3の盤及び前記第4の盤の他方に取付けられているとともに、前記第2の発信器に対応する位置に配置されている、複数の第2の信号組と、を含み、
前記第1の信号組と前記第2の信号組とは、異なる配置となっていることで、前記第1の信号組と前記第2の信号組とが複数の方向に加えられた外力及びモーメントを測定するように構成される、
多軸力及びモーメントセンサ。
【請求項9】
前記第1の発信器及び前記第2の発信器は磁石であり、前記第1の受信器及び前記第2の受信器はホール効果センサである、
ことを特徴とする請求項
8に記載のセンサ。
【請求項10】
前記複数の第1の信号組の各第1の信号組の前記第1の発信器の着磁方向は、前記センサの周方向に平行であり、
前記複数の第2の信号組の各第2の信号組の前記第2の発信器の着磁方向は、前記センサの軸方向に平行である、
ことを特徴とする請求項
9に記載のセンサ。
【請求項11】
前記第1の盤と前記第3の盤とを剛性的に接続する複数の第1のブリッジング機構と、
前記第2の盤と前記第4の盤とを剛性的に接続する複数の第2のブリッジング機構とをさらに含む、
ことを特徴とする請求項
8に記載のセンサ。
【請求項12】
前記複数の第1のブリッジング機構のそれぞれは、前記センサの軸方向において前記第2の盤から間隔を空けている第1のストッパを含み、前記第1のストッパは、前記第1の撓み部材が軸方向において過度に歪むことを防止するように構成されており、
前記複数の第2のブリッジング機構のそれぞれは、前記センサの前記軸方向において前記第3の盤から間隔を空けている第2のストッパを含み、前記第2のストッパは、前記第2の撓み部材が前記軸方向において過度に歪むことを防止するように構成される、
ことを特徴とする請求項1
1に記載のセンサ。
【請求項13】
前記第2の盤から延びて前記第1の盤を挿通する第1の位置決めピンと、前記第3の盤から延びて前記第4の盤を挿通する第2の位置決めピンとをさらに含み、
前記第1の盤の延在方向において、前記第1の位置決めピンと前記第1の盤との間に間隔があり、前記第1の位置決めピンは、前記第1の撓み部材が前記センサの径方向及び周方向において過度に歪むことを防止するように構成され、
前記第4の盤の延在方向において、前記第2の位置決めピンと前記第4の盤との間に間隔があり、前記第2の位置決めピンは、前記第2の撓み部材が前記センサの径方向及び周方向において過度に歪むことを防止するように構成される、
ことを特徴とする請求項1
2に記載のセンサ。
【請求項14】
前記第1の盤に接続された上部ハウジングと、
前記第4の盤に接続された底部ハウジングと、
前記上部ハウジングと底部ハウジングとの間に接続されている封止部材とを含み、
前記上部ハウジング、前記底部ハウジング及び前記封止部材は、協同で前記アッパーセンサコンポーネント及び前記ロアセンサコンポーネントを封止するように構成される、
ことを特徴とする請求項
8に記載のセンサ。
【請求項15】
連続的に接続された複数のリンクとエンドアクチュエーターとを含み、前記エンドアクチュエーターは多軸力及びモーメントセンサを含み、前記多軸力及びモーメントセンサは前記エンドアクチュエーターに加えられた力及びモーメントを測定するように構成され、
前記多軸力及びモーメントセンサは、
第1の支持部材と、
第2の支持部材と、
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との間に接続され、複数の方向に加えられた外力及びモーメントに応じて歪むように構成される変形可能部品と、
磁石及びホール効果センサを含む複数の信号組と、を含み、
前記磁石は前記第1の支持部材と前記第2の支持部材のいずれか一方に取付けられており、
前記ホール効果センサは、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材の他方に取付けられており、各々の磁石に対応する位置に配置されており、
前記複数の信号組は、磁石の着磁方向が異なることで、前記複数の信号組により異なる方向において前記第1の支持部材と前記第2の支持部材に加えられた力及びモーメントを測定することがで
き、
前記第1の支持部材は第1の盤と第3の盤とを含み、前記第2の支持部材は第2の盤と第4の盤とを含み、前記変形可能部品は第1の撓み部材と第2の撓み部材とを含み、
前記第1の盤と前記第2の盤は、前記第1の撓み部材により接続されているとともに、協同でアッパーセンサコンポーネントを構成し、前記第3の盤と前記第4の盤は、前記第2の撓み部材により接続されているとともに、協同でロアセンサコンポーネントを構成し、前記アッパーセンサコンポーネントは前記ロアセンサコンポーネント上に積層されており、
前記第1の盤、前記第2の盤、前記第3の盤及び前記第4の盤は互いに略平行に延在している、
ロボット。
【請求項16】
前記複数の信号組は6つの信号組を含み、
前記6つの信号組の3つの信号組の磁石の着磁方向は、前記センサの周方向に平行であり、
前記6つの信号組の他の3つの信号組の磁石の着磁方向は、前記センサの軸方向に平行である、
ことを特徴とする請求項1
5に記載のロボット。
【請求項17】
前記多軸力及びモーメントセンサは、
前記第1の盤と前記第3の盤とを剛性的に接続する複数の第1のブリッジング機構と、
前記第2の盤と前記第4の盤とを剛性的に接続する複数の第2のブリッジング機構とをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1
5に記載のロボット。
【請求項18】
前記複数の第1のブリッジング機構のそれぞれは、前記センサの軸方向において前記第2の盤から間隔を空けている第1のストッパを含み、前記第1のストッパは、前記第1の撓み部材が軸方向において歪み過ぎるのを防止するように構成されており、
前記複数の第2のブリッジング機構のそれぞれは、前記センサの前記軸方向において前記第3の盤から間隔を空けている第2のストッパを含み、前記第2のストッパは、前記第2の撓み部材が前記軸方向において過度に歪むことを防止するように構成される、
ことを特徴とする請求項1
7に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は米国特許法第119条(e)により、2018年07月02日に出願され、出願名称が「ROBUST SIX DEGREE OF FREEDOM FORCE AND TORQUE SENSOR WITH OVERLOAD PROTECTION」で出願番号が62/693030である米国特許出願に基づいて優先権を主張する。該米国特許出願の開示内容は、援用により本願に含まれている。
【0002】
本発明は、センサ技術に関し、特に多軸力及びモーメントセンサ、該多軸力及びモーメントセンサを備えるロボットに関する。
【背景技術】
【0003】
多軸力及びモーメントセンサは、ロボットの操作、自動化産業及び実験室での実験に広く活用されている。従来のソリューションでは、ひずみゲージまたはエンコーダーに基づいた設計が採用されている。ひずみゲージセンサは温度変化や製造品質の変化に影響されやすいとともに、製造コストが高い。また、エンコーダーに基づいたセンサは、より強いロバスト性を有するが、剛性が割と低く、システムの全体的な動作が著しく影響を受けるとともに、機器的帯域幅が低くなり、高速感知と制御応用には適しない。なお、大きい構造的歪みも厳しいクロストーク問題及び非線形の原因となる。
【0004】
上記理由で、新型の多軸力及びモーメントセンサが望まれている。
【発明の概要】
【0005】
よって、本発明は多軸力及びモーメントセンサ、及び該多軸力及びモーメントセンサを備えるロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明による技術案は多軸力及びモーメントセンサを提供する。センサは、第1の支持部材、第2の支持部材、第1の支持部材と第2の支持部材との間に接続されている変形可能部品、及び複数の信号組を含んでもよい。変形可能部品は複数の方向に加えられた外力及びモーメントに応じて歪むように構成される。複数の信号組のそれぞれは磁石及びホール効果センサを含む。磁石は第1の支持部材と第2の支持部材のいずれか一方に取付けられており、ホール効果センサは第1の支持部材と第2の支持部材の他方に取付けられ、ホール効果センサは各々の磁石に対応する位置に配置されている。信号組は、磁石の着磁方向が異なることで、信号組により異なる方向において第1の支持部材及び第2の支持部材に加えられた力及びモーメントを測定することができる。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明による技術案は多軸力及びモーメントセンサを提供する。該センサは積層されたアッパーセンサコンポーネントとロアセンサコンポーネントとを含んでもよい。アッパーセンサコンポーネントは第1の盤、第2の盤、第1の盤と第2の盤との間に接続されている第1の撓み部材、及び複数の第1の信号組を含んでもよい。該撓み部材は複数の方向に印加された外力及びモーメントに応じて歪むように構成される。複数の信号組のそれぞれは、第1の発信器及び第1の受信器を含む。第1の発信器は第1の盤と第2の盤のいずれか一方に取付けられ、第1の受信器は第1の盤と第2の盤の他方に取付けられているとともに、第1の発信器に対応する位置に配置されている。
【0008】
ロアセンサコンポーネントは第3の盤、第4の盤、第3の盤と第4の盤との間に接続された第2の撓み部材、及び複数の第2の信号組を含む。該撓み部材は複数の方向に加えられた外力及びモーメントに応じて歪むように構成される。複数の第2の信号組のそれぞれは、第2の発信器及び第2の受信器を含む。第2の発信器は第3の盤と第4の盤のいずれか一方に取付けられ、第2の受信器は第3の盤と第4の盤の他方に取付けられているとともに、第2の発信器に対応する位置に配置されている。第1の信号組と第2の信号組の異なる配置により、第1の信号組及び第2の信号組は複数の方向に加えられた外力及びモーメントを測定するように構成される。
【0009】
上記問題を解決するために、本発明による他の技術案はロボットを提供する。該ロボットは、連続的に接続された複数のリンク及びエンドアクチュエーターを含んでもよい。エンドアクチュエーターは多軸力及びモーメントセンサを含む。該多軸力及びモーメントセンサは第1の支持部材、第2の支持部材、第1の支持部材と第2の支持部材との間に接続された変形可能部品、及び複数の信号組を含む。変形可能部品は複数の方向に加えられた外力及びモーメントに応じて歪むように構成される。複数の信号組のそれぞれは、磁石及びホール効果センサを含む。磁石は第1の支持部材と第2の支持部材のいずれか一方に取付けられ、ホール効果センサは第1の支持部材と第2の支持部材の他方に取付けられているとともに、各々の磁石に対応する位置に配置されている。該複数の信号組は、磁石の着磁方向が異なることで、信号組により異なる方向において第1の支持部材及び第2の支持部材に加えられた力及びモーメントを測定することができる。
【0010】
本発明による多軸力及びモーメントセンサは複数の信号組を含んでもよい。これら信号組は異なる方向に加えられた外力及びモーメントの計測に用いられることができるとともに、軸外負荷相殺及び温度補償に用いられることもできる。従って、本発明によるセンサは異なる方向に加えられた外力及びモーメントをより精確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の実施例に係る技術案を明確に説明するために、実施例の説明に利用される添付図面を簡単に説明する。下記説明に係る図面は本発明の例示的な実施例を示すものに過ぎない。当業者らは、これら添付図面に基づいて、創造的な労力を要せずに他の実施例を想到できる。
【0012】
【
図1】
図1は本発明の一実施例に係る多軸力及びモーメントセンサの等角図である。
【
図2】
図2は本発明の一実施例に係る多軸力及びモーメントセンサの例示的なセンサコンポーネントの模式図である。
【
図3】
図3は本発明の一実施例に係る多軸力及びモーメントセンサの断面図である。
【
図4】
図4は本発明の一実施例に係る多軸力及びモーメントセンサの第1の盤における信号組の例示的な配置を示す図である。
【
図5】
図5は本発明の一実施例に係る多軸力及びモーメントセンサの第4の盤における信号組の例示的な配置を示す図である。
【
図6】
図6は本発明の一実施例に係る多軸力及びモーメントセンサの模式図である。
【
図7】
図7は本発明の一実施例に係るロボットの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面及び例を参照しながら本発明を詳細に説明する。説明される実施例はあくまで例示的なものであって、本発明の実施例の範囲内のものである。当業者らは、創造的労力を要せずに、本願で開示される実施例に基づいて他の実施例を想到することができ、これら他の実施例も本発明の範囲内である。
【0014】
図1~
図3は、本発明の実施例に係る例示的な多軸力及びモーメントセンサ110の構成を示している。
図1~
図3に示されるように、多軸力及びモーメントセンサ110は、第1の支持部材10、第2の支持部材20、変形可能部品30及び複数の信号組(signal pair)40を含んでもよい。
【0015】
本発明の一態様では、変形可能部品30は第1の支持部材10と第2の支持部材20の間に接続されてもよい。変形可能部品30は、第1の方向において第1の支持部材10に加えられた力またはモーメント、及び第1の方向とは他の第2の方向において第2の支持部材に加えられた力またはモーメントによって、変形可能部品30が歪んで、二つの支持部材10、20の間に相対移動が発生するように設計されていてもよい。一部の実施例において、第1の支持部材10、第2の支持部材20及び変形可能部品30は、同じ材料で、例えばアルミニウム合金、チタン合金、ステンレス鋼合金などで構成されてもよい。
【0016】
一部の例において、多軸力及びモーメントセンサ110の各信号組40は発信器401と受信器402とを含んでもよい。発信器401は第1の支持部材10と第2の支持部材20のうちいずれか一方に取付けられてもよく、受信器402は他方の支持部材に取付けられてもよい。該例示的な配置により、発信器401及び受信器402は協働して第1の支持部材10と第2の支持部材20との間の相対変位を検知することが可能となる。
【0017】
一部の実施例において、信号組40は、信号組40に検出された支持部材10、20の間の相対変位が、複数の方向において多軸力及びモーメントセンサ110に加えられた力またはモーメントの計算に利用できるように配置されてもよい。例えば、多軸力及びモーメントセンサ110は6つの信号組40を含んでもよい。6つの信号組40は第1の支持部材10と第2の支持部材20との間で異なる方向(軸方向、径方向、周方向)の相対変位を測定するように構成されてもよい。そして、測定の結果は6つの軸または方向(例えば、X-平行移動、Y-平行移動、Z-平行移動、X-回転、Y-回転、及びZ-回転)において多軸力及びモーメントセンサ110に加えられた力またはモーメントの計算に利用することができる。
【0018】
本発明の一部の実施例において、多軸力及びモーメントセンサ110は、各信号組40において更に複数の組(例えば3組、4組またはそれ以上)の発信器21と受信器22とが含まれてもよい。このような追加の複数組の発信器21と受信器22を備える信号組40は、異なる方向において多軸力及びモーメントセンサ110に加えられた力及びモーメントの計算がより正確にできる。これらは軸外負荷相殺及び温度補償に用いることもできるので、異なる方向において多軸力及びモーメントセンサ110に加えられた力及びモーメントの計算がより正確にできる。
【0019】
本発明の一部の例において、信号組40はインダクタンス、静電容量、抵抗、または光学に基づいたものであってもよく、これら以外の適切な信号の種類を使ってもよい。一部の実施例において、各信号組40の発信器401は磁石であってもよく、対応する受信器402はホール効果センサであってもよい。
【0020】
ホール効果センサの作動原理は次のとおりである。ホール効果センサが磁石の磁気軸に垂直な磁界強度を検知して磁気軸に沿って移動する場合に、センサの変位とセンサによって検知された磁界強度との関係は、ほぼ線形関係である。ホール効果センサが磁石の磁気軸に垂直な磁界強度を検知して磁気軸に垂直する方向に沿って移動する場合に、その検知された磁界強度とセンサの変位との関係は、線形性が低下し、非線形的関数(例えば多項式関数)を利用してモデリングすることができる。信号組40の磁石の着磁方向が異なることによって、信号組40が異なる方向において第1の支持部材10及び第2の支持部材20に加えられた力及びモーメントを測定できるようにする。
【0021】
一部の実施例において、第1の支持部材10は、第1の盤101及び第3の盤102を含んでもよく、第2の支持部材20は第2の盤201及び第4の盤202を含んでもよい。
図1に示されるように、第1の盤101、第2の盤201、第3の盤102及び第4の盤202は互いに略平行に延在している。これら実施例において、変形可能部品30は第1の撓み部材(符号なし)及び第2の撓み部材(符号なし)を含んでもよい。第1の盤101と第2の盤201は、第1の撓み部材により接続されているとともに、共にアッパーセンサコンポーネント301を構成し、第3の盤102と第4の盤202は、第2の撓み部材により接続されているとともに、共にロアセンサコンポーネント302を構成してもよい。本実施例では、
図3に示されるように、アッパーセンサコンポーネント301とロアセンサコンポーネント302はいずれもH形の構造を有する。
【0022】
一部の実施例において、アッパーセンサコンポーネント301がロアセンサコンポーネント302上に積層された構成であってもよい。この例では、信号組40は、対応する2つのセンサコンポーネント301、302に均一的に分布してもよい。均一的な分布は、信号組40の取付がより簡単で、信号組40同士の間の干渉が少なくなる。一部の実施例において、第1の支持部材10と第2の支持部材20はそれぞれ1つだけの盤を含んでもよい。例えば、第1の支持部材10は第1の盤101だけを含み、第2の支持部材20は第3の盤だけを含んでもよい。これらの実施例では、信号組40は2つの盤(例えば第1の盤101と第2の盤201)に取付けられて支持部材10、20の間の相対移動を測定するように構成されてもよい。
【0023】
一部の実施例においては、多軸力及びモーメントセンサ110は、
図1~
図3に示されるように、複数(例えば図示例では6つ)のブリッジング機構50、60をさらに含んでもよい。複数の方面では、第1のブリッジング機構50は第1の盤101と第3の盤102とを剛性的に接続するように構成されてもよく、第2のブリッジング機構60は第2の盤201と第4の盤202とを剛性的に接続するように構成されてもよい。一部の実施例において、ブリッジング機構50、60は第1の支持部材10及び第2の支持部材20よりも遥かに硬いものである。この例では、単なる力若しくはZ軸のモーメント(例えば
図3に示されるように)またはこれら両方が多軸力及びモーメントセンサ110に加えられた場合、遥かに硬いブリッジング機構50、60は負荷をアッパーセンサアセンブル301及びロアセンサアセンブル302に均一に分布させることができる。X軸(例えば、
図3に示されるように)またはY軸(例えば
図3の紙面を出入りする軸)のモーメントが多軸力及びモーメントセンサ110に加えられた場合、ブリッジング機構50、60の剛性により、モーメント負荷の大部分をアッパーセンサコンポーネント301及びロアセンサコンポーネント302におけるX軸の力とY軸の力に分けることができる。場合によっては、このようにモーメント負荷がX軸の力とY軸の力に分けられることで、X軸とY軸の捩じりの剛性が最適化され増強される。ある場合には、平行のブリッジング機構50、60により、X軸及びY軸回りに加えられるモーメントに対する多軸力及びモーメントセンサ110全体の剛性が向上することによって、多軸力及びモーメントセンサ110の6つの検出自由度(DOF:degree of freedom)において所望の検知感度が得られる。
【0024】
本発明の一部の例において、ブリッジング機構50、60は、信号組40を少なくとも部分的に封止することによって、発信器401及び受信器402を外部信号による干渉から保護する。一部の例において、ブリッジング機構50、60は、利用される信号組40のタイプに応じた材料から構成されてもよい。例えば、信号組40に磁気信号が使われる場合、ブリッジング機構50、60は高導磁率の材料(例えばスーパーマロイ(super malloy)、スーパーミューメタルアロイ(super mumetal alloy)、SANBOLD、パーマロイ(permalloy)、炭素鋼、マルテンサイト鋼など)から構成されてもよい。また、信号組40に光信号が使われる場合、ブリッジング機構50、60は遮光材料(例えば非透明プラスチック、金属またはゴムなど)から構成されてもよい。
【0025】
図2を参照する。多軸力及びモーメントセンサ110は、複数の位置決めピン70をさらに含んでもよい。
図3に位置決めピン701、702を備える実施例の断面が示されている。一部の実施例において、位置決めピン701は第2の盤201から延びて第1の盤101を挿通させてもよい。
図3に示されるように、第1の盤101の延出方向において、位置決めピン701と第1の盤101との間に間隔(例えばギャップ)がある。一部の実施例において、位置決めピン702は第3の盤102から延びて第4の盤202を挿通させてもよい。
図3に示されるように、第4の盤202の延出方向において、位置決めピン702と第4の盤202との間にも間隔(例えばギャップ)がある。
【0026】
図2を参照し、位置決めピン70により、X軸とY軸の平行移動及びZ軸の捩じりの過負荷に対して保護がなされ、変形可能部品30が多軸力及びモーメントセンサ110の径方向及び周方向において過度に歪むことが避けられる。例えば、
図3を参照し、アッパーセンサコンポーネント301またはロアセンサコンポーネント302が外力またはモーメントによって過度に歪む場合に、位置決めピン701及び/又は位置決めピン702は、対応する間隔(例えばギャップ)を移動して対応する盤に接触する。例えば、過負荷により位置決めピン701が第1の盤101に接触し、位置決めピン702が第4の盤202に接触する可能性がある。このため、位置決めピン701、702は、アッパーセンサコンポーネント301及び/又はロアセンサコンポーネント302のそれぞれの更なる歪みを防止できる。該更なる歪みは、塑性変形を発生させてアッパーセンサコンポーネント301及び/又はロアセンサコンポーネント302の損害の原因になる。
【0027】
本発明の一部の実施例において、ブリッジング機構50及び/又はブリッジング機構60はストッパを備えてもよい。ストッパにより、X軸とY軸の捩じり及びZ軸の平行移動の過負荷に対して保護がなされる。例えば、
図3に示されるように、ブリッジング機構50はストッパ501を含んでもよい。ストッパ501は、多軸力及びモーメントセンサ110の軸方向(図に示されるZ軸の方向)において第2の盤201から少し間隔を空けてもよい。該例において、第1の盤101が移動して(例えば図示のZ軸方向に沿って)第2の盤201に近すぎるまたは遠すぎる場合に、第2の盤201はストッパ501に接触するので、第2の盤201とストッパ501との間の剛性的圧縮により、塑性変形の発生乃至アッパーセンサコンポーネント301の破壊原因となり得る更なる移動が防止される。一部の例において、ブリッジング機構60は、例示されるロアセンサコンポーネント302を保護するために、同様に構成されたストッパを備えてもよい。
【0028】
図3を参照する。一部の実施例において、保持機構403が第2の盤201に取付けられる(第3の盤102にも取付けられる)ことで、受信器402が取付けられる。該実施例において、ストッパ501は、過大な外力またはモーメントが加えられたときに第2の盤201の代わりに保持機構403に突き当たるように構成されてもよい。なお、本明細書ではブリッジング機構60の構成及び機能を詳細に説明していないが、ブリッジング機構60は本明細書に記載のブリッジング機構50と類似又は同様な構成及び機能を有してもよい。
【0029】
図4、
図5はそれぞれ、第1の支持部材10及び第2の支持部材20における信号組40の例示的な配置を示している。該実施例において、多軸力及びモーメントセンサ110は6つの磁性信号組40を含んでもよく、3つの磁性信号組は第1の支持部材10に配置され、3つの磁性信号組は第2の支持部材20に配置されている。一実施例において、
図4に示されるように、第1の盤101に取付けられた磁石401aの着磁方向は、多軸力及びモーメントセンサ110の周方向に平行であってもよい。
図5に示されるように、第4の盤202に取付けられた磁石401bの着磁方向は、多軸力及びモーメントセンサ110の軸方向に平行の方向であってもよい。
図4は磁石401aの向かい側にあるホール効果センサ402aを示し、
図5は磁石401bの向かい側にあるホール効果センサ402bを示している。
【0030】
磁石401a及びホール効果センサ402aが取付けられている(
図4に示されている)アッパーセンサコンポーネント301の構成により、Z軸方向の力を除いて五つの力/モーメントの全てを検知可能である一方、Z軸回りのモーメントだけが該単独のアッパーセンサコンポーネント301から直接的に計算され得る。磁石401b及びホール効果センサ402bが取付けられている(
図5に示されている)ロアセンサコンポーネント302の構成により、Z軸モーメントを除いて五つの力/モーメントの全て検知可能である一方、Z軸方向の力だけが該単独のロアセンサコンポーネント302から直接的に計算され得る。しかし、多軸力及びモーメントセンサ110の機械的構造で簡単な伝達関数を利用することで、多軸力及びモーメントセンサ110全体における歪み及び力/モーメントを導き出すことができる。
【0031】
例えば、多軸力及びモーメントセンサ110全体に加えられた六つの力/モーメントにより、各ホール効果センサ402aまたは402bは、対応する磁石401aまたは401bに関する三次元の全てにおいて(例えばX軸、Y軸及びZ軸に沿って)直線的に移動する。磁界の変化によってこの3タイプの移動のうちの2タイプの移動(例えばX軸及びY軸に沿った移動)を取得できるが、残りの1タイプの移動(例えばZ軸に沿った移動)は取得できない。取得した2タイプの移動は、線形関数又は非線形関数で計算されることができる。よって、各ホール効果センサ402aまたは402bの読み値の変化に伴って、対応する磁石401aまたは401bに対する各ホール効果センサ402aまたは402bの移動が導き出される。機械的構造の簡単な伝達関数を利用して、多軸力及びモーメントセンサ110全体における歪み及び力/モーメントを導き出すことができる。従って、本発明の一態様により、校正方法を用いて6つの信号組40から6つの力及びモーメントの全てを計算することができる。
【0032】
また、ある場合に、全ての磁石401aまたは401bがアッパーセンサコンポーネント301及びロアセンサコンポーネント302のそれぞれに対して同じ方向に分極しているわけではないため、温度によるセンサコンポーネント301、302への影響を差分法によって抑制することができる。例えば、温度変化による信号変化により、信号組40の信号が同様な傾向で変化するので、両者に対して減算を行うことで、温度変化によるずれを抑制することができる。本発明の他の態様において、同様な目的を達成するために、信号組40の配置は
図4及び
図5と異なってもよい。
【0033】
図6を参照し、多軸力及びモーメントセンサ110は上部ハウジング801、底部ハウジング802及び封止部材803をさらに含んでもよい。上部ハウジング801は第1の支持部材10に固定的に接続されてもよく、底部ハウジング802は第2の支持部材20に固定的に接続されてもよい。封止部材803は上部ハウジング801と底部ハウジング802との間に接続されている。上部ハウジング801、底部ハウジング802及び封止部材803は共に第1の支持部材10、第2の支持部材20、変形可能部品30及び信号組40を封止することによって、外部の水や埃が内部に侵入して部品が損傷するのを防止することができる。
【0034】
本発明は、さらに、ロボット及びエンドアクチュエーターを提供する。
図7にロボット900が示されているが、該ロボット900は連続的に接続される複数のリンク901及びエンドアクチュエーター902を含んでもよい。エンドアクチュエーター902は、エンドアクチュエーター902に作用する外力及びモーメントを測定するための多軸力及びモーメントセンサ110を含んでもよい。多軸力及びモーメントセンサ110は上記いずれか一つの実施例に記載のものであってもよい。他の実施例において、多軸力及びモーメントセンサ110はロボット900の他部品(例えばアクチュエーター)に代替可能に利用されてもよい。
【0035】
本発明の他の例において、多軸力及びモーメントセンサ110は、例えば産業用ロボット、人型ロボット、車両、駆動装置、測定装置など他領域や設備に活用されることができる。
【0036】
更なる詳細説明がなくても、当業者であれば上記説明に従って保護を求めている発明を最大限に利用することができるであろう。本明細書で開示された例や実施例は説明のためのものに過ぎないが、いずれかの形で本願の範囲を制限するものではない。当業者にとって自明であるが、検討されてきた基本原理から逸脱しない限り、上記実施例の細部は変ってもよい。言い換えると、上記説明で具体的に開示された実施例についての様々な変更や改良はいずれも特許請求の範囲内のものである。例えば、説明された様々な実施例における特徴の適切な組合せはいずれも予想できるものである。