(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】床暖房パネル
(51)【国際特許分類】
F24D 3/16 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
F24D3/16 D
(21)【出願番号】P 2019082122
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2018088050
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300018253
【氏名又は名称】株式会社エコミナミ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 央
(72)【発明者】
【氏名】山本 真司
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-134247(JP,A)
【文献】特開昭63-054528(JP,A)
【文献】登録実用新案第3009800(JP,U)
【文献】特開2000-035225(JP,A)
【文献】実開昭57-100105(JP,U)
【文献】特開2005-282944(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02340928(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に取り付けられ、熱媒体が流れる1つの流路を形成するパイプと、
を有する床暖房パネルであって、
前記パイプは、直線部と曲線部とを交互に備える第1蛇行部と第2蛇行部とを有し、
前記第1蛇行部の曲線部と前記第2蛇行部の曲線部とは、平面視において、それらの一部が互いに重なり合うように配置され、
前記第1蛇行部の直線部と前記第2蛇行部の直線部とは、平面視において互いにずれて配置され
、
前記基材は、熱伝導性を有し且つ柔軟性を有するシート状の部材である、
床暖房パネル。
【請求項2】
前記基材は、金属製のシートである、請求項1に記載の床暖房パネル。
【請求項3】
前記パイプが配置される面とは反対側の面である前記基材の外面には、前記基材の輻射率よりも高い輻射率を有する輻射層が設けられている、請求項1又は2に記載の床暖房パネル。
【請求項4】
前記輻射層は、樹脂が混ぜ込まれた黒色塗料によって構成されている、請求項
3に記載の床暖房パネル。
【請求項5】
前記パイプの少なくとも一部を覆うように前記基材に貼り付けられた
柔軟性を有するシート状のカバー部材を有
し、
前記カバー部材の厚さは、前記パイプの直径よりも小さく設定されている、請求項1~
4のいずれか1つに記載の床暖房パネル。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記第1蛇行部の直線部と前記第2蛇行部の直線部とを密着して覆う一方で、前記第1蛇行部の曲線部と前記第2蛇行部の曲線部とを露出させるように前記基材に貼り付けられている、請求項5に記載の床暖房パネル。
【請求項7】
前記基材と接触する面とは反対側の面である前記カバー部材の外面には、平面視において前記パイプからずれた位置に、複数枚の板材が設けられている、請求項5又は6に記載の床暖房パネル。
【請求項8】
前記基材は、複数の切り込みを備え、
前記パイプは、前記複数の切り込みを通じて前記基材を縫うように取り付けられている、請求項1~5のいずれか1つに記載の床暖房パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房パネル及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存の住宅に床暖房パネルを設置する方法として、一般的に、既設のフローリング又は畳をはがして床暖房パネルを設置し、フローリング又は畳を貼り直すという方法が行われている。
【0003】
しかしながら、この方法では、家具などのフローリング又は畳の上にあるもの全てを邪魔にならないように移動させる必要がある。また、近年、畳がなくフローリングだけの住宅が増えている。畳に比べてフローリングは、はがす手間が大きいとともに再利用が困難である。また、特に、築年数が浅い住宅に床暖房パネルを設置する場合には、比較的に新しいフローリングを取り替えることになり、当該フローリングを無駄にしてしまうことになり得る。
【0004】
これに対して、床下から床暖房パネルを設置する方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、既設のフローリングを剥がす必要性を無くすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、住宅の床材は人や家具などの荷重を受ける部分であるので、床材の厚さを薄くするのには限界がある。このため、床下から床暖房パネルを設置する場合、厚さのある床材を介して床暖房パネルで発生した熱を放熱することになるので、暖房性能が低くなる。このため、床下から床暖房パネルを設置する方法は、現実的にはあまり普及していない。
【0007】
本発明の目的は、前記課題を改善することにあって、より暖房性能を向上させることができる床暖房パネル及びその設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一態様に係る床暖房パネルは、
基材と、
基材に取り付けられ、熱媒体が流れる1つの流路を形成するパイプと、
を有する床暖房パネルであって、
パイプは、直線部と曲線部とを交互に備える第1蛇行部と第2蛇行部とを有し、
第1蛇行部の曲線部と第2蛇行部の曲線部とは、平面視において、それらの一部が互いに重なり合うように配置され、
第1蛇行部の直線部と第2蛇行部の直線部とは、平面視において互いにずれて配置される。
【0009】
また、前記目的を達成するために、本発明の一態様に係る床暖房パネルの設置方法は、
床材に対して下方から基材を取り付ける工程と、
基材に対して、熱媒体が流れる1つの流路を形成するパイプを取り付ける工程と、
を含み、
パイプは、直線部と曲線部とを交互に備える第1蛇行部と第2蛇行部とを有し、
第1蛇行部の曲線部と第2蛇行部の曲線部とは、平面視において、それらの一部が互いに重なり合うように配置され、
第1蛇行部の直線部と第2蛇行部の直線部とは、平面視において互いにずれて配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る床暖房パネル及びその設置方法によれば、暖房性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る床暖房パネルの概略構成を示す平面図である。
【
図3】
図1の床暖房パネルにおける、閉塞領域と第1開放領域と第2開放領域との位置関係を示す平面図である。
【
図4】
図1の床暖房パネルの一部拡大斜視図である。
【
図5】
図1の床暖房パネルの第1変形例を示す平面図である。
【
図6】
図1の床暖房パネルの第2変形例を示す平面図である。
【
図8】
図1の床暖房パネルの第3変形例を示す平面図である。
【
図10】
図1の床暖房パネルの第4変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1態様によれば、基材と、
前記基材に取り付けられ、熱媒体が流れる1つの流路を形成するパイプと、
を有する床暖房パネルであって、
前記パイプは、直線部と曲線部とを交互に備える第1蛇行部と第2蛇行部とを有し、
前記第1蛇行部の曲線部と前記第2蛇行部の曲線部とは、平面視において、それらの一部が互いに重なり合うように配置され、
前記第1蛇行部の直線部と前記第2蛇行部の直線部とは、平面視において互いにずれて配置されている、床暖房パネルを提供する。
【0013】
本発明の第2態様によれば、前記第1蛇行部の直線部と前記第2蛇行部の直線部との最小間隔が前記パイプの最小曲げ半径以下である、第1態様又は第2態様に記載の床暖房パネルを提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、前記基材の外面には、前記基材の輻射率よりも高い輻射率を有する輻射層が設けられている、第1又は2態様に記載の床暖房パネルを提供する。
【0015】
本発明の第4態様によれば、前記基材は、柔軟性を有するシート状の部材である、第1~3態様のいずれか1つに記載の床暖房パネルを提供する。
【0016】
本発明の第5態様によれば、前記パイプは、平面視において、
前記第1蛇行部の直線部及び曲線部と前記第2蛇行部の直線部及び曲線部とに囲まれた閉塞領域と、
前記閉塞領域に隣接し且つ前記第1蛇行部の直線部と前記第2蛇行部の直線部とに挟まれた領域であって、一端部が前記第1蛇行部の曲線部及び前記第2蛇行部の曲線部によって閉塞される一方で、他端部が開放されている第1開放領域と、
前記閉塞領域に隣接し且つ前記第1蛇行部の直線部と前記第2蛇行部の直線部とに挟まれた領域であって、他端部が前記第1蛇行部の曲線部及び前記第2蛇行部の曲線部によって閉塞される一方で、一端部が開放されている第2開放領域と、
を有するように設けられ、
前記第1開放領域と前記第2開放領域とは、前記第1蛇行部の直線部と交差する方向に前記閉塞領域を介して交互に位置するように設けられている、第4態様に記載の床暖房パネルを提供する。
【0017】
本発明の第6態様によれば、前記パイプの少なくとも一部を覆うように前記基材に貼り付けられたカバー部材を有する、第1~5態様のいずれか1つに記載の床暖房パネルを提供する。
【0018】
本発明の一態様によれば、
床材に対して下方から基材を取り付ける工程と、
前記基材に対して、熱媒体が流れる1つの流路を形成するパイプを取り付ける工程と、
を含み、
前記パイプは、直線部と曲線部とを交互に備える第1蛇行部と第2蛇行部とを有し、
前記第1蛇行部の曲線部と前記第2蛇行部の曲線部とは、平面視において、それらの一部が互いに重なり合うように配置され、
前記第1蛇行部の直線部と前記第2蛇行部の直線部とは、平面視において互いにずれて配置される、床暖房パネルの設置方法を提供する。
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0020】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る床暖房パネルの概略構成を示す平面図である。
図2は、
図1のA1-A1線断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る床暖房パネル1は、基材の一例である放熱シート2と、パイプ3と、カバー部材の一例であるカバーシート4とを有している。
【0022】
放熱シート2は、パイプ3の内部を流れる温水や温風などの熱媒体から熱を受けて、当該熱を外部に放熱する柔軟性を有するシート状の部材である。放熱シート2の外形は、例えば矩形である。放熱シート2の寸法は、例えば800mm×800mmである。放熱シート2は、熱伝導率が高い材料、例えばアルミニウムなどの金属によって構成されている。
【0023】
図2に示すように、放熱シート2の外面2a(パイプ3が配置される表面とは反対側の面)には、放熱シート2の輻射率よりも高い輻射率を有する輻射層5が設けられている。本実施形態において、輻射層5は、遠赤外線の輻射率が放熱シート2よりも高くなるように、放熱シート2の外面2aに焼付け塗布等により形成された黒色塗料によって構成されている。床暖房パネル1を床下に設置する際、床暖房パネル1は、輻射層5が床材に接触するように取り付けられる。
【0024】
パイプ3は、放熱シート2の内面2b上に配置されている。パイプ3の内部には、熱媒体が流れる1つの流路が形成されている。パイプ3の一端部には、熱媒体が供給される熱媒体入口3Aが形成されている。パイプ3の他端部には、熱媒体を排出する熱媒体出口3Bが形成されている。本実施形態において、熱媒体入口3Aと熱媒体出口3Bとは、放熱シート2の第1コーナー部2Aの近傍に配置されている。
【0025】
パイプ3は、第1蛇行部31と第2蛇行部32とを有している。本実施形態において、第1蛇行部31は、放熱シート2の第1コーナー部2Aから、当該第1コーナー部2Aとは対角に位置する第2コーナー部2Bへ蛇行しながら向かう熱媒体の流れの「往路」を形成する部分である。第2蛇行部32は、放熱シート2の第2コーナー部2Bから第1コーナー部2Aへ蛇行しながら向かう「復路」を形成する部分である。本実施形態において、第1蛇行部31と第2蛇行部32とは、第2コーナー部2Bの近傍に位置する接続点(折り返し点ともいう)C1で互いに接続されている。
【0026】
第1蛇行部31は、直線部31aと曲線部31bとを交互に有している。より具体的には、第1蛇行部31は、互いに並列に配置された複数の直線部31aと、互いに隣接する直線部31aの一端部同士又は他端部同士を接続する複数の曲線部31bとを備えている。ここでは、直線部31aの延在方向をX方向という。また、複数の直線部31aの配列方向(X方向と交差する方向)をY方向という。また、X方向及びY方向に対して直交する放熱シート2の厚さ方向をZ方向という。
【0027】
第2蛇行部32は、直線部32aと曲線部32bとを交互に有している。より具体的には、第2蛇行部32は、互いに並列に配置された複数の直線部32aと、互いに隣接する直線部32aの一端部同士又は他端部同士を接続する複数の曲線部32bとを備えている。
【0028】
第2蛇行部32の複数の直線部32aは、Y方向に並列に配置されている。また、第1蛇行部31の直線部31aと第2蛇行部32の直線部32aとは、平面視において互いにY方向にずれて配置されている。すなわち、第1蛇行部31の直線部31aと第2蛇行部32の直線部32aとは、平面視において、Y方向に交互に配置(一部を除く)されている。
【0029】
第1蛇行部31の曲線部31b及び第2蛇行部32の曲線部32bは、それぞれ円弧状に曲げられた部分である。曲線部31b,32bの曲げ半径R1は、パイプ3の材質、直径等に基づいてあらかじめ規定されている最小曲げ半径以上に設定されている。パイプ3は、意図しない外力が加えられたときに屈曲して破損等しないように、比較的硬質な材料で構成されている。本実施形態において、パイプ3は、例えば、ポリエチレン、ポリブテンなどの樹脂製のパイプである。パイプ3は、パイプ3の内径は、例えば7mmである。パイプ3の外径は、例えば10mmである。パイプ3の最小曲げ半径(曲げ中心からパイプの中心までの距離)は、例えば10cmである。曲線部31b,32bの曲げ半径R1は、10cmである。
【0030】
第1蛇行部31の直線部31aと第2蛇行部32の直線部32aとは、最小間隔P1がパイプ3の最小曲げ半径以下になるように配置されている。この配置を実現するため、第1蛇行部31の曲線部31bと第2蛇行部32の曲線部32bとは、平面視において、それらの一部が互いに重なり合うように配置されている。すなわち、
図3に示すように、第1蛇行部31の曲線部31bと第2蛇行部32の曲線部32bとは、Z方向に重なるように配置されている。
【0031】
また、パイプ3は、
図4に示すように、平面視において、閉塞領域E1と、第1開放領域E2と、第2開放領域E3とを有するように配置されている。「閉塞領域E1」とは、
図4では斜線で示す領域であり、第1蛇行部31の直線部31a及び曲線部31bと第2蛇行部32の直線部32a及び曲線部32bとに囲まれた領域である。「第1開放領域E2」とは、閉塞領域E1に隣接し且つ第1蛇行部31の直線部31aと第2蛇行部32の直線部32aとに挟まれた領域であって、一端部が第1蛇行部31の曲線部31b及び第2蛇行部32の曲線部32bによって閉塞される一方で、他端部が開放されている領域である。「第2開放領域E3」とは、閉塞領域E1に隣接し且つ第1蛇行部31の直線部31aと第2蛇行部32の直線部32aとに挟まれた領域であって、他端部が第1蛇行部31の曲線部31b及び第2蛇行部32の曲線部32bによって閉塞される一方で、一端部が開放されている領域である。第1開放領域E2と第2開放領域E3とは、Y方向に閉塞領域E1を介して交互に位置するように設けられている。
【0032】
カバーシート4は、パイプ3の少なくとも一部を覆うシート状の部材である。カバーシート4の厚さは、パイプ3の直径よりも小さく設定されている。カバーシート4の外形は、例えば矩形である。カバーシート4の寸法は、例えば800mm×650mmである。カバーシート4は、熱伝導率が高い材料、例えばアルミニウムによって構成されている。
【0033】
本実施形態において、カバーシート4は、第1蛇行部31の複数の直線部31aと第2蛇行部32の複数の直線部32aとに密着して覆うように設けられている。一方、カバーシート4は、第1蛇行部31の複数の曲線部31bと第2蛇行部32の複数の曲線部32bとを露出させるように設けられている。これにより、曲線部31b,32bは、カバーシート4によってY方向の移動を規制されないので、放熱シート2及びカバーシート4をY方向に丸めるように変形(湾曲)させる際に、曲線部31b,32bが当該変形を阻害することを抑えることができる。
【0034】
本実施形態に係る床暖房パネル1によれば、第1蛇行部31の曲線部31bと第2蛇行部32の曲線部32bとは、平面視においてそれらの一部が互いに重なり合うように配置されている。また、第1蛇行部31の直線部31aと第2蛇行部32の直線部32aとは、平面視において互いにずれて配置されている。これにより、パイプ3の設置密度を向上(例えば、従来の約2倍)させることができるので、より暖房性能を向上させることができる。
【0035】
なお、住宅の床下は、人や家具などの荷重を受けない部分であるので、第1蛇行部31の曲線部31bと第2蛇行部32の曲線部32bとをZ方向に重なるように配置しても、当該曲線部31b,32bに過度な負荷がかかることはない。また、住宅の床下は、空間が通常設けられているので、第1蛇行部31の曲線部31bと第2蛇行部32の曲線部32bとをZ方向に重ねることによって床暖房パネル1の厚さが厚くなった場合でも、他の部材に与える影響を抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る床暖房パネル1によれば、第1蛇行部31の直線部31aと第2蛇行部32の直線部32aとの最小間隔P1がパイプの最小曲げ半径以下に設定されている。これにより、パイプ3の設置密度を向上させることができるので、より暖房性能を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る床暖房パネル1によれば、放熱シート2の外面2aには、放熱シート2の輻射率よりも高い輻射率を有する輻射層5が設けられている。これにより、パイプ3の内部を流れる熱媒体の熱を、輻射効果によって床上の空間に放熱することができ、より暖房性能を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る床暖房パネル1によれば、放熱シート2とカバーシート4とが柔軟性を有するシート状の部材であるので、それらを丸めて(湾曲させて)平面視における横幅を小さくすることができる。これにより、例えば、サイズが600mm×600mmである床下収納庫用の開口部から床下に床暖房パネル1を搬入することができ、設置工事を容易にすることができる。
【0039】
また、本実施形態に係る床暖房パネル1によれば、第1開放領域E2と第2開放領域E3とが、Y方向に閉塞領域E1を介して交互に位置するように設けられている。第1開放領域E2の曲線部31b及び第2開放領域E3の曲線部32bが設けられていない部分は変形させやすいので、放熱シート2及びカバーシート4を丸めて(湾曲させて)平面視における横幅を一層小さくすることができる。これにより、例えば、サイズが600mm×600mmである床下収納庫用の開口部から床下に床暖房パネル1をより容易に搬入することができ、設置工事を一層容易にすることができる。
【0040】
なお、床暖房パネル1は、例えば、以下のようにして床下に設置することができる。
【0041】
まず、床材の下方の既存の断熱材を取り外す。
次いで、既存の断熱材を取り外した位置に、床暖房パネル1を、輻射層5を上側にして配置し、ねじ等の締結部材で床材に固定する。
次いで、取り外した断熱材で床暖房パネル1をカバーシート4側から覆う。
【0042】
このような設置方法によれば、カバーシート4の表面がパイプ3の太さによって凹凸を有するので、断熱材と床暖房パネル1との接触面積が小さくなり、それらの間には隙間(空気層)が形成されることになる。当該隙間が断熱材と共に断熱層として機能し、床暖房パネル1の下方への放熱が一層抑えられる。これにより、床暖房パネル1の上方への放熱を増加させて、より一層暖房性能を向上させることができる。
【0043】
なお、床暖房パネル1は、放熱シート2とカバーシート4とによりパイプ3を挟んだ構造である。このため、放熱シート2とカバーシート4とが接触している部分は、断熱材や剛性を有する部材がなく、薄くなっている。このため、当該部分をねじ等の締結部材で床材に固定する際に、締結部材が当該部分を貫通してしまうことが起こり得る。このため、
図5に示すように、放熱シート2及びカバーシート4のパイプ3が配置されていない部分に、複数枚の板材6を設けてもよい。これにより、床暖房パネル1をねじ等の締結部材で床材に、より安定して固定することができる。なお、板材6は、床暖房パネル1の搬送を容易にするため、軽量で且つ柔軟性を有する部材であることが好ましい。このような部材として、例えば、中比重繊維板(MDF)が挙げられる。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、パイプ3が第1蛇行部31と第2蛇行部32とを有し、第1蛇行部31の直線部31aと第2蛇行部32の直線部32aとが平面視において互いにずれて配置されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、パイプ3が3以上の蛇行部を有し、それらの曲線部の一部が平面視において互いに重なり合うように配置され、それらの直線部が平面視において互いにずれて配置されてもよい。この構成によれば、パイプ3の設置密度を一層向上させることができるので、より一層暖房性能を向上させることができる。
【0045】
また、前記では、基材の一例として柔軟性を有する放熱シート2を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、基材として剛性を有する部材(例えば、パーティクルボード等の木質材や金属板)を用いてもよい。この場合でも、パイプ3が第1蛇行部31と第2蛇行部32とを備えることで、パイプ3の設置密度を向上させることができるので、より暖房性能を向上させることができる。
【0046】
また、前記では、カバー部材の一例として柔軟性を有するカバーシート4を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、カバー部材として剛性を有する部材を用いてもよい。この場合でも、パイプ3が第1蛇行部31と第2蛇行部32とを備えることで、パイプ3の設置密度を向上させることができるので、より暖房性能を向上させることができる。
【0047】
また、前記では、放熱シート2の外面2aに輻射層5を設けたが、本発明はこれに限定されない。輻射層5は、必ずしも設ける必要はない。なお、放熱シート2が金属製シートである場合、当該金属製シートに塗料を定着させ難い。このため、輻射層5を構成する黒色塗料には樹脂が混ぜ込まれていることが好ましい。これにより、放熱シート2が金属製シートである場合であっても、当該金属製シートに黒色塗料を定着させやすくすることができる。なお、この場合、樹脂が断熱効果を有するために伝熱性能が低下するが、輻射層5は、輻射効果によって床上の空間に放熱するためのものであるので、暖房性能の向上に与える影響は少ない。また、床暖房パネル1の伝熱性能が過度に高いことにより、床材の表面と裏面との温度差が大きくなると、床材が反って固定部材が外れてしまうことが起こり得る。前記のように、黒色塗料に樹脂を混ぜることにより、床暖房パネル1の伝熱性能が過度に高くなることを抑えることができる。
【0048】
また、前記では、放熱シート2の平坦な内面2b上にパイプ3を配置し、当該パイプ3の直線部31a及び直線部32aの全体を覆うようにカバーシート4を配置したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図6及び
図7に示すように、放熱シート102の内面102bにパイプ3を収容する溝21を設け、溝21からパイプ3が抜け出ないように複数のカバーシート104を取り付けるように構成してもよい。この場合、溝21は、放熱シート102の内面102b側から外面102aに向けて凹むように設けられる。溝21の形状は、平面視において、パイプ3の第1蛇行部31及び第2蛇行部32の形状と略一致している。カバーシート104は、例えば、粘着テープである。カバーシート104は、溝21に配置されたパイプ3における第1蛇行部31の直線部31a又は第2蛇行部32の直線部32aを覆うように放熱シート102に貼り付けられる。この構成によれば、カバーシート104のサイズを小さくすることができ、製造コストを削減することができる。
【0049】
なお、
図6では、カバーシート104が直線部31a又は直線部32aの全長に渡って覆うように放熱シート102に貼り付けられるものとしたが、本発明はこれに限定されない。本発明に係る床暖房パネルは床下に設置されるものであり、設置後に床暖房パネルに対して外力が加わることが通常想定されない。このため、カバーシート104は、パイプ3が放熱シート2の溝21から抜け出ることを抑えられればよい。例えば、カバーシート104は、直線部31a又は直線部32aの一部又は複数箇所を覆うように放熱シート102に貼り付けられてもよい。この構成によれば、カバーシート104のサイズを一層小さくすることができ、製造コストを一層削減することができる。
【0050】
また、カバーシート4,104を用いずにパイプ3を放熱シート2,102に保持させるように構成してもよい。例えば、
図8及び
図9に示すように、溝21の開口付近の側面において、X方向に間隔を空けて複数対の突起部21aを設け、当該複数対の突起部21aでパイプ3が放熱シート2の溝21から抜け出ることを抑えるように構成してもよい。この場合、一対の突起部21aの隙間は、パイプ3の直径よりも狭くすればよい。一対の突起部21aの隙間を通じてパイプ3を溝21内に押し込むことで、パイプ3が溝21内で保持される。この構成によれば、カバーシートを不要にすることができるので、床暖房パネルの構成部品を減らすことができる。なお、突起部21aは、対に配置される必要はなく、例えば、溝21の一方の側面にのみ設けられてもよい。
【0051】
また、例えば、パイプ3を放熱シート102の溝21に接着剤で貼り付けてもよい。
【0052】
また、例えば、
図10に示すように、直線部31a及び直線部31aに対して交差するように、放熱シート2に複数の切り込み22を設け、当該複数の切り込み22を通じて放熱シート2を縫うようにパイプ3を取り付けてもよい。この構成によれば、カバーシートを不要にすることができるので、床暖房パネルの構成部品を減らすことができる。
【0053】
また、前記では、組み立てられた床暖房パネル1を床下に設置する方法について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、以下のように床下で組み立てながら床暖房パネル1を設置してもよい。
【0054】
まず、床材の下方の既存の断熱材を取り外す。
次いで、既存の断熱材を取り外した位置に、放熱シート2を配置し、ねじ等の締結部材で床材に対して下方から放熱シート2を取り付ける。
次いで、第1蛇行部31と第2蛇行部32を有するようにパイプ3を放熱シート2に配置する。
次いで、パイプ3の少なくとも一部を覆ってカバーシート4を配置する。なお、カバーシート4を設けない場合は、この工程は省略される。
次いで、取り外した断熱材で床暖房パネル1を覆う。
【0055】
なお、床材に対して下方から放熱シート2を取り付ける前に、放熱シート2に対してパイプ3をあらかじめ取り付けてもよい。
【0056】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【0057】
本発明に係る床暖房パネルによれば、より暖房性能を向上させることができるので、特に、床下に設置する床暖房パネルとして有用である。
【符号の説明】
【0058】
1:床暖房パネル、2,102:放熱シート(基材)、2A:第1コーナー部、2B:第2コーナー部、2a,102a:外面、2b,102b:内面、3:パイプ、3A:熱媒体入口、3B:熱媒体出口、4,104:カバーシート(カバー部材)、5:輻射層、6:板材、21:溝、21a:突起部、22:切り込み、31:第1蛇行部、31a:直線部、31b:曲線部、32:第2蛇行部、32a:直線部、32b:曲線部、C1:接続点(折り返し点)、E1:閉塞領域、E2:第1開放領域、E3:第2開放領域、P1:最小間隔、R1:曲げ半径