(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】もじり耳を形成する装置
(51)【国際特許分類】
D03C 7/02 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
D03C7/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019226966
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】20 2018 107 373.7
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506211838
【氏名又は名称】ゲブリューダー クレッカー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ,シュワムレイン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス,クレッカー
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-247042(JP,A)
【文献】特表2000-509774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03C7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の昇降そうこう(5)と、
見かけが
U形状で、ウエブ(21a)によって接続されている2個の肢(21)を有している半そうこう(20)と、
を有し、
各昇降そうこう(5)は、昇降そうこう(5)の長さ方向に延びている
スリット(13)を有している昇降そうこう脚部(11)を有し、
前記昇降そうこう脚部(11)は、
前記スリット(13)の少なくとも一方の側に少なくとも1個の磁石(14)を有しており、前記少なくとも1個の磁石(14)は、
前記半そうこう(20)の一方の肢(21)と連動し、
前記スリット(13)は昇降そうこう脚部(11)の全高にわたって連続して延びて
おり、
前記半そうこう(20)の肢(21)は、前記昇降そうこう脚部(11)に接触するストッパ(25)を有していることを特徴とする、
もじり耳を形成する装置(1)。
【請求項2】
ストッパ(25)は、ストッパ(25)を超えて突き出している半そうこう(20)の肢(21)の下側の端部が昇降そうこう脚部(11)内の少なくとも1個の磁石(14)の有効な領域まで、そしてその中に突き出すように、半そうこう(20)の肢(21)に配置されていることを特徴とする、請求項
1に記載の装置(1)。
【請求項3】
昇降そうこう脚部(11)は、
前記ストッパ(25)用の当接部(17)を形成するように、
前記昇降そうこう(5)の下側の端部から、前記昇降そうこう(5)の長さ方向に対して横方向に突出するように設けられていることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
半そうこう(20)の肢(21)は、
前記肢(21)の長さ方向に対して横方向に突出する半そうこう脚部(23)
が、下側の端部に設けられていることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記半そうこう脚部(23)
が、前記ストッパ(25)を有していることを特徴とする、請求項
4に記載の装置(1)。
【請求項6】
半そうこう脚部(23)は、昇降そうこう脚部(11)の少なくとも1個の磁石(14)と連動していることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
昇降そうこう(5)は、2個の肢(6、7)を有しており、昇降そうこう(5)の一方の肢(7)は、半そうこう(20)の一方の肢(21)用の誘導溝(7a)を有していることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
昇降そうこう(5)は、半そうこう(20)のウエブ(21a)に接触するサドル(9)を昇降そうこう(5)の肢(6、7)の遷移領域に有することを特徴とする、請求項
7に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個の昇降そうこうと、見かけがほぼU形状で、ウエブによって接続されている2個の肢を有している半そうこうと、を有し、各昇降そうこうは、昇降そうこうの長さ方向に延存する開口を有している昇降そうこう脚部を有し、昇降そうこう脚部は、スリットの少なくとも一方の側に少なくとも1個の磁石を有しており、少なくとも1個の磁石は、半そうこうの一方の肢と連動している、もじり耳を形成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半そうこうの制御が昇降そうこうによって磁気的に行われるもじり耳を形成する装置は、従来技術から知られている。詳細には、半分のもじり耳の製造は、2個の昇降そうこう及び1個の半そうこうの装置を使用して行われ、半そうこうは、ウエブの領域に定置糸を通す穴を有し、耳用糸は、半そうこうの肢と昇降そうこうとの間に延在する。耳用糸は、杼口が変わるたびに、半そうこうの一方の側から半そうこうの他方の側に、それに対応して、一方の昇降そうこうから他方の昇降そうこうに移動するので、前述のように、半分のもじり耳が得られる。
【0003】
適切な織りを製造するには、杼口の変更ごとに耳用糸が半そうこうの一方の側から半そうこう他方の側に実際に移動することが常に保証されていることが必須である。これは、昇降そうこう脚部の磁石が一方の昇降そうこうによる半そうこうの同伴運動中に半そうこうが浮き上がらないことを保証すること、つまり、杼口の変更ごとに半そうこうが一方の昇降そうこうから他方の昇降そうこうに適切に転送されることを常に保証することで保証されている。昇降そうこうによる半そうこうの制御は、前述のように、昇降そうこうの磁石と半そうこうの肢との連動によって行われる。これについては、特許文献1に参照がなされる。
【0004】
時間の経過と共に、半そうこうに作用する運動エネルギーが特に大きく、実質的に分あたり400緯糸よりも緯糸密度が高い織機において、半そうこうの肢は、昇降そうこうの磁石に実際に接触するが、下向きに、つまり磁石を通過して移動することがわかっている。これは、プラスチックから作られている半そうこうが摩耗したときに特に発生する。この点について以下を述べなければならない。各半そうこうは、ウエブによって上端部の位置で接続されている2個の肢を有している。定置糸を誘導する穴は、ウエブの上方に位置している。穴は、ウエブによって昇降そうこうのサドル上に配置される。昇降そうこうのサドルは、半そうこうの下側の端部の位置の少なくとも1個の磁石から、ウエブから計測して半そうこうの肢の長さにほぼ対応する間隔を有している。半そうこうのウエブは、時間の経過と共に、サドルの領域において、昇降そうこう内に食い込む。その結果、半そうこうのウエブが配置されているサドルと磁石との間の間隔が短くなり、これは、半そうこうの肢が昇降そうこうの少なくとも1個の磁石を通過することを意味している。そのため、いずれの場合でも、適切な織りがもはや生じない。織りの欠陥のある布がむしろ製造される。この関連において、ストッパが磁石の下方で昇降そうこう内にはめ込まれており、半そうこうが少なくともストッパの領域内で保持されることを保証しているもじり織り装置が今では知られるようになっており、半そうこうが昇降そうこうの少なくとも1個の磁石によって保持され、したがって、半そうこうの磁石による一方の昇降そうこうから他方の昇降そうこうへの転送の制御が杼口の変更ごとに実際に適切に行われるように、ストッパは磁石から適切な間隔がある(特許文献2(特許文献3))。
【0005】
前述のもじり耳を形成するこれらの装置は、日常的な使用において何千回と実証されてきた。しかし、時と共に、織機の緯糸の数が継続して増大し、通常の緯糸の数は現在では分あたり800緯糸を超え、実際に空気噴射織機であるかレピア織機であるかにはかかかわらない。これは、もじり織り装置、そして特に半そうこうに作用する運動エネルギーが膨大であることを意味しており、それは、特にサドルの領域の昇降そうこうの摩耗にも関連している。さらに、高速のせいで、織機の動作中の粉塵負荷が高い。
【0006】
昇降そうこうは、半そうこうの肢用に昇降そうこう脚部の領域にスリットを有している。昇降そうこう脚部のスリットの少なくとも一方の側に少なくとも1個の磁石が配置されている。前述のストッパは、磁石の下方に任意に存在している、及び/またはスリットは、下側の領域で閉じられている。
【0007】
これに関連して、動作中に、粉塵が昇降そうこう脚部のスリット内に集まり、堆積することが見いだされている。これは、粉塵の堆積のせいで、半そうこうはもはやサドル上に位置せず、半そうこうが昇降そうこうの昇降そうこう脚部のスリットにおいて「浮上」し始めることを意味している。これは、杼口の変更時に、半そうこうは昇降そうこうのサドル上にもはや位置しておらず、その結果、杼口の開口上で耳用糸が半そうこうの一方の側から半そうこうの他方の側に移動できることが確保されない。
【0008】
これに関連して、昇降そうこう脚部及び半そうこう脚部の領域で、昇降そうこう脚部で粉塵が集まるのを防止することを意図した対策を取ることが特許文献3から知られている。ここでは詳細には昇降そうこう脚部及び半そうこう脚部の両方をくさび形に形成して、粉塵が側部に移動して出ることができるように対策が取られている。しかし、それにも関わらず昇降そうこう脚部に粉塵が集積する場合、機械の位置で清掃のために横方向のアクセスが必要となるが、そのための空間が存在せず、それはもじり織り装置が密接に詰められている態様で吊り下げられているため、もじり耳を形成する装置全体を清掃のために分解しなければならず、不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許発明第3818680号明細書
【文献】欧州特許第0 393 460号明細書
【文献】欧州特許第0 566 163号明細書
【文献】国際公開第2007/068388号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の基本的な目的は、昇降そうこう脚部の開口に堆積する粉塵を防止または少なくとも軽減すること及び任意に清掃を容易にすることが含まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、開口が昇降そうこう脚部の全高にわたって延びるという目的を達成することが提案されている。これは、開口が昇降そうこう脚部の長さにわたって連続していることを、つまり、両端でも開口していることを意味している。そうこう支持レールが昇降そうこう脚部の位置で占める空間は除かれる。しかし、昇降そうこう脚部の連続している開口を上方から適切な手段を使用して清掃することは少なくとも可能である。
【0012】
有利な実施態様によって、開口をスリットとして形成できるように設定されている。これは、スリットを形成する開口が、昇降そうこう脚部の高さにわたって、つまり縦方向に開いていることを意味している。それによって、例えば、刃は、開口つまりスリットを通して任意にそうこう支持レールまで導かれ、適切な細い工具によってそうこう支持レールに平行にスリットが清掃されるという点において、細い刃または同様な物体でスリットを清掃する可能性が開かれる。これは、もじり織り装置を分解せずに、その脚部の領域で昇降そうこうを清掃できることを意味している。
【0013】
昇降そうこう脚部のこの実施態様は、織りの欠陥のない織物を、緯糸の数が少ない織機及び中くらいの織機を使用して比較的わずかな手間で製造できることを長期間にわたって保証する効果的な手段であることが証明されている。
【0014】
高速に動作する織機は、分あたり800以上の緯糸で動作することを他の箇所ですでに説明した。他の箇所ですでに説明したように、特定の条件下で、半そうこうが少なくとも1個の磁石を滑って通過し、この限りでは適切な織りが保証できない恐れが常にある。
【0015】
昇降そうこう脚部のスリットつまり開口を簡単に清浄に保ち、同時に、高い運動エネルギーにもかかわらず、昇降そうこう脚部の開口つまりスリット内の少なくとも1個の磁石によって半そうこうの肢を保持するために、本発明のさらなる特徴による半そうこうの肢は、昇降そうこう脚部に接触するストッパを有している。これは、ストッパが、緯糸の数が多いときに、半そうこうの金属製の肢が昇降そうこう脚部の磁石の領域内へと常に移動することを保証し、昇降そうこうの上向き及び下向きの移動中に半そうこうの肢が昇降そうこうのそれぞれの磁石に接触したままであることが保証されることを意味している。
【0016】
本発明のさらなる有利な特徴及び実施態様は、従属請求項によりもたらされる。
【0017】
したがって、金属製の半そうこうの肢の突き出している端部、つまり装着されている状態の下側の端部が、昇降そうこう脚部の少なくとも一個の磁石の有効な領域まで、そしてその中に突き出すように、ストッパが半そうこうの肢の位置に配置されるように特に設定されている。これは、昇降そうこうによる半そうこうの制御が昇降そうこうの少なくとも1個の磁石によって確実になるように、ストッパが半そうこうの肢の位置に配置されていることを意味している。
【0018】
本発明の具体的な特徴は、ストッパの接触を構成する昇降そうこう脚部が、横方向外向きに設定されていることを特徴としている。半そうこう脚部を形成する半そうこうの肢も同様に横方向外向きにさらに設定されている。これは、昇降そうこう及び半そうこうの両方の端部が、大きさに関して互いに適合していることを意味している。この限りでは、半そうこう脚部がストッパを有するようにさらになっており有利である。半そうこうがそれぞれの昇降そうこうによって磁気的に制御つまり案内されている高速で動作している織機での安全性を特に向上させるために、それぞれの磁石が、昇降そうこう脚部のスリット、つまり開口の両側に設けられ、その結果、2個の磁石が互いに対向して配置されるように設定されている。これは、前述のように半そうこう脚部が横方向外向きに設定されており、昇降そうこう脚部の少なくとも1個の磁石と、有利には2個の磁石と磁気的に連動していて有利であることを意味している。
【0019】
昇降そうこうの詳細な構成については、昇降そうこうは2個の肢を有しており、昇降そうこうの一方の肢は、半そうこうの一方の肢、装着状態では下側の肢用の誘導溝を有するように設定されている。
【0020】
昇降そうこうは、昇降そうこうの肢の遷移領域に半そうこうのウエブと接触するサドルを有している。これは、昇降そうこうによる同伴時にサドルは半そうこう及び半そうこうのウエブの接触表面として作動することを意味している。
【0021】
本発明を、図面を参照しながら例としてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、もじり耳を形成する装置全体を示している。
【
図4】
図4は、
図1の線IV-IVに沿った断面としての昇降そうこうの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
もじり耳を形成する装置(もじり織り装置)は、参照番号1を有している。もじり織り装置は、2個の昇降そうこう5及び20によって示されている半そうこうを有している。各昇降そうこう5は、サドル9の領域のほぼ中央(矢印8)で互いに接続されている第1の肢6及び第2の肢7を有している。ホルダ10が第1の上側の肢6に設けられており、織機の例えばそうこう支持レールへの接続のための開口10aを有している。第2の下側の肢7は、そうこう支持レールを同等に受け入れる開口11aを同様に有している昇降そうこう脚部11を有している。
【0024】
第2の下側の肢7のさらなる構成は、ここで関連するが、半そうこう20の肢21を案内するサドル9の領域の中心領域(矢印8)の位置から始まる案内溝7aを有している。下側の肢7には、昇降そうこう脚部11が下側の端部に設けられている。昇降そうこう脚部11は、昇降そうこう脚部11を通して上端から下端まで延びているスリット13を有している。開口11aをわかりやすいように省略している。
図3に従い、半そうこう20の半そうこう脚部23と連動している各磁石14がスリットの両側に設けられている。磁石14は、互いに直接対向している。昇降そうこう脚部11の領域のスリット13は、昇降そうこう5の第2の下側の肢7の案内溝7aの延長部分を形成している。昇降そうこう脚部11の実施形態において、案内溝7aの延長としてのスリット13は、例えば、スリット13に堆積している粉塵を上方から、また、任意に側部からも、刃(矢印28)を使用して取り除くように連続していることが必須であり、また、もじり織り装置を織機から取外す必要がないことに言及されなければならない。
【0025】
半そうこう20の構成は、
図3及び
図5の図からわかる。
【0026】
他の段落ですでに説明したように、半そうこう20は、平面図において、ほぼU形に形成されており、半そうこうの肢21は上側の領域においてウエブ21aによって接続されている。定置糸(不図示)用の穴24がウエブ21aの上方に位置している。半そうこう20は、このウエブによって昇降そうこう5のサドル9上に、実際に、昇降そうこう5が上向きの運動をしているときにはいつも位置している。この場合、耳用糸(不図示)は、対向して配置されている他の昇降そうこうと半そうこうの対応している肢との間に位置している。この状態で、半そうこう20は、上向きに移動している昇降そうこうの昇降そうこう脚部11内の磁石14によって保持されている。ここで、半そうこうの半そうこう脚部23が、緯糸の速度が高くサドルが摩耗した状態で昇降そうこう脚部11内のスリット13を通して摺動するのを防止するために、半そうこう脚部23は、昇降そうこう脚部11の当接部17によって保持されているストッパ25を有している。当接部17は、装着状態では水平な昇降そうこう脚部11の上側の縁によって形成されている。ここで、半そうこう20の肢21の突き出している端部、つまり装着されている状態の下側の端部が、昇降そうこう脚部の少なくとも1個の、有利には、磁石14の2個の対向している磁石の有効な領域まで、そしてその中に突き出すように、ストッパが半そうこうの肢の位置に配置されるように設定されている。したがって、ストッパ25が昇降そうこう脚部の当接部17上に配置されたときに、半そうこう脚部23が1個または2個の磁石24に接触することが保証される。
【符号の説明】
【0027】
1 もじり織り装置
5 昇降そうこう
6 第1の上側の肢
7 第2の下側の肢
7a 誘導溝
8 矢印
9 サドル
10 ホルダ
10a そうこう支持レール用の開口
11 昇降そうこう脚部
11a そうこう支持レール用の開口
13 スリット
14 磁石
17 当接部
20 半そうこう
21 肢
21a ウエブ
23 半そうこう脚部
24 穴
25 ストッパ
28 矢印