(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】静電気力と吸引力の両方を使用した血栓切除
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20220629BHJP
A61B 17/3207 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B17/3207
(21)【出願番号】P 2019546193
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(86)【国際出願番号】 IB2018051731
(87)【国際公開番号】W WO2018172891
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-12-07
(32)【優先日】2017-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519208144
【氏名又は名称】マグネト スロムベクトミィ ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】タフ、ユーファル
(72)【発明者】
【氏名】ステルン、ガル
(72)【発明者】
【氏名】オリオン、イザーク
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0301594(US,A1)
【文献】米国特許第04998933(US,A)
【文献】特表平09-501328(JP,A)
【文献】特表2016-511126(JP,A)
【文献】特表2000-515798(JP,A)
【文献】特表2015-528327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 - 18/14
17/22
17/3207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体から血栓を除去するための装置であって、前記装置は:
1つ以上の穿孔を画定するように形作られた周壁を有する遠位端を備える、
前記被験者の身体に挿入されるように構成された、電気絶縁チューブと;
前記電気絶縁チューブの遠位端の上に配置され、そして前記電気絶縁チューブが前記被験者の身体の内にある間、少なくとも部分的に前記血栓内に位置するように構成される外側電極と;そして
前記外側電極が少なくとも部分的に前記血栓内に位置する間、前記チューブ内で
径方向で前記穿孔の反対側に位置するように構成される内側電極と;
を有し、
前記外側電極は、前記外側電極が少なくとも部分的に前記血栓内に位置し、そして前記内側電極が
径方向で前記穿孔の反対側に位置する間に、
電源が前記外側電極と前記内側電極の間に
正の電圧
を印加
し、
電流が前記穿孔を通って流れる
時に、前記血栓を引き付けるように構成される、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電気絶縁チューブの前記遠位端は、遠位開口部を画定するように形作られている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電気絶縁チューブの前記遠位端が閉じている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電気絶縁チューブの前記遠位端が、前記穿孔に対して遠位の方向に先細りになっている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記電圧が印加されている間に前記穿孔を介して前記血栓に吸引力を印加することにより前記血栓の除去を促進するように構成されたポンプをさらに備える、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記外側電極は、前記電気絶縁チューブの前記遠位端の周りを包み込むコイルを有する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記穿孔は複数であって、前記コイルは、
前記穿孔と他の前記穿孔の間で前記電気絶縁チューブの前記遠位端を包み込む、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記穿孔が第1の穿孔であり、前記外側電極が、前記第1の穿孔と位置合わせされる1つ以上の第2の穿孔を画定する形状の
外側導電性チューブを有する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記穿孔が1つまたはそれ以上の列に配置される、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記穿孔の列が、前記周壁に沿って円周方向に分布している、ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記
穿孔の列のそれぞれについて、前記列
内の少なくとも1つ
の前記穿孔は、前記列
内の他の穿孔よりも大きい、ことを特徴とする請求項9~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記列内の少なくとも最近位の穿孔は、前記列内の他の穿孔よりも大きい、ことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記内側電極がワイヤを有する、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記内側電極が導電コイルを有する、ことを特徴とする請求項1~
12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記内側電極が導電性メッシュを有する、ことを特徴とする請求項1~
12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記内側電極が
内側導電性チューブを有する、ことを特徴とする請求項1~
12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記穿孔が第1の穿孔であり、前記
内側導電性チューブが、前記第1の穿孔と位置合わせされる1つ以上の第2の穿孔を画定するように形作られる、ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の体内の血栓の処置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の参照)
本出願は2017年3月22日出願、タイトル「放射状吸引血栓摘出装置」の米国暫定特許出願第62/474,628(特許文献1)の恩恵を主張し、当該出願はここに参照して本出願に取り入れられる。
【0003】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0301594号(特許文献2)は、身体通路に導入され、そこから流体を引き出すか、または流体をその中に導入することができる可撓性カテーテル装置を記載している。装置は、血栓溶解および/または血栓切除を実行するために体内通路に電圧信号を印加するように構成された電極を有し、電極の1つは血栓材料に接触し、血栓材料を除去または溶解するように設計され、そして電圧信号は単極パルス電圧信号を含む。
【0004】
米国特許出願公開第2001/0001314号(特許文献3)は、侵襲的組織成長により閉塞を受ける身体通路の開通性を維持するための電気外科装置および方法を記載している。この装置は、その上に配置された少なくとも1つの活性電極を有するシャフト遠位端に配置された電極支持体と、その少なくとも1つの活性電極に近接した少なくとも1つのリターン電極(return electrode)とを有する。一実施形態では、各々が湾曲したワイヤループ部分を有する複数の活性電極が、電極支持体の遠位部分内に密封される。
【0005】
米国特許出願公開第2004/0073243号(特許文献4)は、血管から閉塞を除去するための装置および方法を説明している。装置は折りたたまれた状態で展開され、体内で拡張される。次に、装置は閉塞に係合しそして取り除くように操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国暫定特許出願第62/474,628
【文献】米国特許出願公開第2011/0301594号
【文献】米国特許出願公開第2001/0001314号
【文献】米国特許出願公開第2004/0073243号
【発明の概要】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態では、被験者の身体から血栓を除去するための装置が提供される。装置は、被験者の身体に挿入されるように構成された、1つ以上の穿孔を画定するように形作られた周壁を有する遠位端を備える、電気絶縁チューブと;電気絶縁チューブの遠位端の上に配置され、そして電気絶縁チューブが被験者の身体の内にある間、少なくとも部分的に血栓内に位置するように構成される外側電極と;を有する。装置はさらに、外側電極が少なくとも部分的に血栓内に位置する間、チューブ内で穿孔の反対側に位置するように構成される内側電極を有する。外側電極は、外側電極が少なくとも部分的に血栓内に位置し、そして内側電極が穿孔の反対側に位置する間に、外側電極と内側電極の間に正の電圧が印加され、それにより電流が穿孔を通って流れると、血栓を引き付けるように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態では、電気絶縁チューブの遠位端は、遠位開口部を画定するように形作られている。
いくつかの実施形態では、電気絶縁チューブの遠位端が閉じている。
いくつかの実施形態では、電気絶縁チューブの遠位端が、穿孔に対して遠位の方向に先細りになっている。
いくつかの実施形態では、電圧が印加されている間に穿孔を介して血栓に吸引力を印加することにより血栓の除去を促進するように構成されたポンプをさらに備える。
いくつかの実施形態では、外側電極は、電気絶縁チューブの遠位端の周りを包み込むコイルを有する。
いくつかの実施形態では、コイルは、穿孔の間で電気絶縁チューブの遠位端の周りを包み込む。
いくつかの実施形態では、穿孔が第1の穿孔であり、外側電極が、第1の穿孔と位置合わせされる1つ以上の第2の穿孔を画定する形状の導電性チューブを有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、穿孔が1つまたはそれ以上の列に配置される。
いくつかの実施形態では、穿孔の列が、周壁に沿って円周方向に分布している。
いくつかの実施形態では、列のそれぞれについて、列の穿孔のうちの少なくとも1つは、列の他の穿孔よりも大きい。
いくつかの実施形態では、列内の少なくとも最も近位の穿孔は、列内の他の穿孔よりも大きい。
いくつかの実施形態では、内側電極がワイヤを有する。
いくつかの実施形態では、内側電極が導電コイルを有する。
いくつかの実施形態では、内側電極が導電性メッシュを有する。
いくつかの実施形態では、内側電極が導電性チューブを有する。
いくつかの実施形態では、穿孔が第1の穿孔であり、導電性チューブが、第1の穿孔と位置合わせされる1つ以上の第2の穿孔を画定するように形作られる。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、さらに被験者の身体から血栓を除去するための装置が提供される。装置は:遠位開口部を画定するように成形される遠位端を備える、被験者の身体内に挿入されるように構成された、電気絶縁チューブと;電気絶縁チューブの遠位端の上に配置され、電気絶縁チューブが被験者の体内にある間、少なくとも部分的に血栓内に位置するように構成された外側電極とを有する。装置はさらに外側電極が少なくとも部分的に血栓内に位置する間、少なくとも部分的に電気絶縁チューブの遠位端内に位置するように構成された内側電極を有する。外側電極は、外側電極が少なくとも部分的に血栓内に位置し、そして内側電極が少なくとも部分的に電気絶縁チューブの遠位端内に位置する間に、外側電極と内側電極の間に正電圧が印加されると、血栓を引き付けるように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、遠位開口部を通って血栓の分離部分を吸引することにより、血栓の除去を促進するように構成されるポンプをさらに備える。
いくつかの実施形態では、外側電極は、電気絶縁チューブの遠位端の周りを包み込むコイルを有する。
いくつかの実施形態では、外側電極が導電性チューブを有する。
いくつかの実施形態では、内側電極がワイヤを有する。
いくつかの実施形態では、内側電極が導電性チューブを有する。
いくつかの実施形態では、内側電極が導電コイルを有する。
いくつかの実施形態では、内側電極が導電性メッシュを有する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、さらに被験者の身体から血栓を除去する方法が提供される。方法は、1つ以上の穿孔を画定するように形作られた周壁を有する遠位端を備える電気絶縁チューブを被験者の身体内に挿入するステップを有する。方法はさらに、電気絶縁チューブの挿入に続いて、電気絶縁チューブの遠位端上に配置された外側電極が少なくとも部分的に血栓内に位置するまで、被験者の身体を通って電気絶縁チューブを誘導するステップを有する。方法はさらに、外側電極が少なくとも部分的に血栓内に位置する間に、外側電極とチューブ内で穿孔の反対側に配置された内側電極との間に正の電圧を印加し、それにより電流が穿孔を通って流れ、血栓が外側電極に付着するようにさせるステップを有する。方法はさらに、血栓が外側電極に付着する間に、電気絶縁チューブを引き抜くことにより、被験者の身体から血栓を取り除くステップを有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、正電圧を印加するステップは、電気絶縁チューブを引き抜く間、正電圧を印加し続けるステップを有する。
いくつかの実施形態では、外側電極が少なくとも部分的に血栓内に位置する間に、穿孔を介して血栓に吸引力を印加するステップをさらに有する。
いくつかの実施形態では、吸引を印加するステップは、電気絶縁チューブを引き抜きながら、吸引を継続して印加するステップを有する。
いくつかの実施形態では、遠位端は、遠位開口部を画定するように形作られ、方法は、吸引を印加することにより、遠位開口部を通って血栓の分離部分を吸引するステップをさらに有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、少なくともいくつかの穿孔は一列に配置され、その列内の最大の穿孔はその列内の他の穿孔よりも大きく、被験者の身体を通って電気絶縁チューブを誘導するステップは、最大の穿孔が血栓の近位端と整列するまで被験者の身体を通って電気絶縁チューブを誘導するステップを有し、正の電圧を印加するステップは、最大の穿孔が血栓の近位端と整列している間に正の電圧を印加するステップを有する。
いくつかの実施形態では、内側電極はワイヤを有し、方法は、被験者の身体を通って電気絶縁チューブを誘導する前に、血栓にワイヤを通過させるステップをさらに有し、そして被験者の身体を通って電気絶縁チューブを誘導するステップは、ワイヤを介して電気絶縁チューブを誘導するステップを有する。
いくつかの実施形態では、電圧を印加する前に、ワイヤを電気絶縁チューブ内に引き戻すステップをさらに有する。
いくつかの実施形態では、正電圧を印加するステップは、内側電極の遠位先端が最遠位の前記穿孔と整列している間に正電圧を印加するステップを有する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、さらに被験者の身体から血栓を除去する方法が提供される。方法は、遠位開口部を画定する形状の遠位端を有する電気絶縁チューブを被験者の身体内に挿入するステップを有する。方法はさらに、電気絶縁チューブの挿入に続いて、電気絶縁チューブの遠位端上に配置された外側電極が少なくとも部分的に血栓内に位置するまで、被験者の身体を通って電気絶縁チューブを誘導するステップを有する。方法はさらに、外側電極が血栓内に少なくとも部分的に位置する間に、外側電極と電気絶縁チューブの遠位端内に少なくとも部分的に位置する内側電極との間に正電圧を印加し、それにより電流が外側電極と内側電極の間に流れ、血栓を外側電極に付着させるステップを有する。方法はさらに、血栓が外側電極に付着している間、遠位開口部から血栓の分離部分を吸引しながら電気絶縁チューブを引き抜くことにより、被験者の身体から血栓を除去するステップを有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、正電圧を印加するステップは、電気絶縁チューブを引き抜きながら、正電圧を印加し続けるステップを有する。
いくつかの実施形態では、内側電極はワイヤを有し、方法は、被験者の身体を通って電気絶縁チューブを誘導する前に、血栓にワイヤを通過させるステップをさらに有し、および被験者の身体を通って電気絶縁チューブを誘導するステップは、ワイヤを介して電気絶縁チューブを誘導するステップを有する。
いくつかの実施形態では、電圧を印加する前に、ワイヤを電気絶縁チューブ内に引き戻すステップをさらに有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、以下の図面と併せて、その実施形態の以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう:
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態による、被験者の身体から血栓を除去するための装置の概略図である。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態による、被験者の身体から血栓を除去するための装置の概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、電気絶縁チューブの一部を通る縦断面図である。
【
図3A-B】本発明のいくつかの実施形態による、電気絶縁チューブの遠位端の概略図である。
【
図4】本発明の他の実施形態による、被験者の身体から血栓を除去するための装置の概略図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による、被験者の血管内に位置する血栓への装置の送達を示す概略図である。そして
【
図6】本発明のいくつかの実施形態による、被験者の身体から血栓を除去する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(概論)
本発明の実施形態は、血栓切除、すなわち、被験者の身体から血栓を除去するための装置および方法を含む。血栓は、被験者の体内の、血管などの通路を少なくとも部分的に閉塞する任意の材料を含みうる。たとえば、血栓には、凝固した血液、脂肪、コレステロール、プラーク、または体外由来の異物を含みうる。
【0019】
一般に、本明細書に記載の血栓摘出技術は、互いに径方向に分離された2つの電極間に電圧を印加することを伴う。例えば、本明細書に記載される血栓摘出装置の1つは、電気絶縁チューブの遠位端の上に配置された外側電極を備え、一方で電気絶縁チューブは内側電極を含む。チューブの壁は、外側電極の下に配置される1つ以上の穿孔を画定するように形作られている。外側電極が血栓内に入り込む(または「埋め込まれる」)まで、装置は血管内を前進する。その後、外側電極と内側電極の間に正の電圧が印加され、電流が穿孔を介して電極間に流れ、負に帯電した血栓を正に帯電した外側電極に付着させる。血栓が外側電極に付着している間に、装置は血栓とともに被験者から引き抜かれる。
【0020】
有利なことに、2つの電極間の径方向の分離により、そこを通る電流の流れを可能にするチューブの穿孔とともに、比較的小さな電流が血管および近くの組織を流れる。対照的に、2つの電極が縦方向(または「軸方向」)に分離されている場合、またはチューブの壁に穿孔が開いていない場合、電圧の印加中により多くの電流が血管とその近くの組織を流れる必要がありうる。さらに、外側電極がチューブの上に配置されるため、外側電極は比較的大きな表面積にわたって血栓に接触し、血栓に比較的大きな静電引力を加えることが容易になる。対照的に、外側電極が、血栓までチューブ内で運ばれ、その後チューブから血栓内に前進させられる場合、外側電極は、チューブ内に収まるように、より小さなプロファイルを必要としうる。
【0021】
穿孔の別の利点は、吸引力が穿孔を介して血栓に加えられ、それにより血栓が血栓摘出装置により強く付着することである。側面の穿孔を通して吸引を加えることに加えて、チューブの遠位開口部を通して吸引を加えて、電圧が印加されている間および/または装置が引き抜かれている間に集まる任意の気泡または破片を吸引することができる。有利には、外側電極はチューブの上に配置されるため、外側電極はチューブの遠位開口部を塞がないので、気泡および破片はより有効に遠位開口部から吸引され得る。
【0022】
いくつかの場合では、血栓の近位端の位置はわかっていがが、血栓の正確な長さは不明である。そのような場合、穿孔のサイズが均一であれば、血栓内に位置しないチューブの部分にわたって吸引力と静電力が広範囲に印加される可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、穿孔は均一なサイズではない。むしろ、穿孔の1つは他の穿孔よりも大きく、この最大の穿孔は血栓の近位端と整列している。例えば、最も近位の穿孔は、より遠位の穿孔よりも大きくてもよく、そしてこの穿孔は血栓の近位端と整列しうる。
【0023】
他の実施形態では、電気絶縁チューブは穿孔されていない。そのような実施形態において、加えられた吸引力はチューブが穿孔された場合と比較してチューブの遠位開口部に集中し、それにより処置中に発生した気泡または破片をより良く吸引する。
【0024】
いくつかの実施形態では、内側電極は、チューブの長さ全体に延びるワイヤからなる。そのような実施形態では、内側電極は、被験者の脈管構造を通るチューブの前進を促進するために、ガイドワイヤとしてさらに機能し得る。他の実施形態では、内側電極は、外側の電気絶縁チューブの穿孔と位置合わせされた穿孔を有する、内側導電性チューブからなる。
【0025】
(装置の説明)
最初に本発明のいくつかの実施形態による、被験者の身体から血栓を除去するための装置20の概略図である、
図1A~1Bを参照する。(
図1Bは装置20の縦断面図を示している。)
【0026】
装置20は、被験者の体内に挿入されるように構成された電気絶縁チューブ22を含む。チューブ22は、シリコーン、ポリウレタン、ポリエチレン、またはポリテトラフルオロエチレンなどの任意の適切な生体適合性絶縁材料で作られうる。チューブ22は、1つ以上の穿孔34を画定する形状の周壁38を有する遠位端30を備える(したがって、チューブ22は「穿孔チューブ」と呼ばれることがある)。チューブ22は、内腔56を画定する形状を有し、それはチューブの周壁に囲まれている。
【0027】
装置20は、遠位端30の少なくとも一部の上に配置される外側電極24と、内腔56内に位置するように構成される内側電極28とをさらに備える。第1の接続線40は、外側電極24を正端子に接続する。被験者の外部に配置された電圧源32の第2の接続線41は、内側電極28を電圧源の負端子に接続する。
図6を参照して以下にさらに説明するように、外側電極が少なくとも部分的に血栓内にあり、そして内側電極28が穿孔34の反対側にある(例えば、内側電極の遠位先端が最遠位の穿孔と整列している)間に、電圧源32は外側電極24と内側電極28との間に正電圧を印加する。正電圧は、負に帯電した血栓を外側電極に引き付け、血栓が外側電極に付着するようにする。
【0028】
通常、各電極は高導電性の生体適合性金属で構成される。印加される正電圧の有効性を高めるために、外側電極の電気陰性度は内側電極の電気陰性度よりも高くてもよい。したがって、例えば、外側電極は金、白金、またはそれらの合金(白金とイリジウムの合金など)で作られ、内側電極はステンレス鋼、ニチノール、またはチタンで作られる。
【0029】
いくつかの実施形態では、電極の少なくとも1つは少なくとも部分的に放射線不透過性であり、および/または蛍光透視法の下での誘導を容易にするために1つ以上の放射線不透過性マーカーを含む。同様に、遠位端30は、1つ以上の放射線不透過性マーカーを備えて、蛍光透視法の下でのチューブ22の誘導を促進してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、
図1Aに示されるように、外側電極24は、チューブの遠位端30の周りを包む遠位部分24aと近位部分24bの2つの部分からなる。近位部分24bは遠位部分24aに遠位において接続され、第1の接続線40に近位において接続され、遠位部分24aは近位部分24bを介して電圧源32に接続される。典型的には、遠位部分24aの長さL1は、5~150mmの間、例えば10~50mmの間である。遠位部分24aの近位端52は、通常、最近位穿孔34に対し近位に配置され、遠位部分24aの遠位端54は、通常、最遠位穿孔34に対し遠位に配置される。
【0031】
いくつかの実施形態では、外側電極の遠位部分は、遠位端30の周りに巻かれる一定または可変ピッチのコイルからなる。あるいは、外側電極24の遠位部分は、巻き付けられた導電性の編組またはメッシュを含み得る。(いくつかの場合には、
図1Aに示すように、外側電極の遠位部分が穿孔34を部分的に覆うことがある。)外側電極の近位部分は、チューブ22の上を通過する導電性チューブおよび/またはチューブ22の周りを包む導電性編組、メッシュ、またはコイルを含みうる。外側電極の近位部分は、ステンレス鋼、ニチノール、またはチタンなどの任意の適切な材料で作られてもよく、そして潤滑性の向上のためコーティングされてもよい。
【0032】
他の実施形態では、外側電極24は、第1の接続線40に近位で接続され、チューブ22の近位端から遠位端30の少なくとも幾つかの部分にわたって延びる単一の導電性チューブ、メッシュ、編組、またはコイルを含む。外側電極がチューブからなる実施形態では、チューブは、穿孔34と整列する1つ以上の穿孔を画定するように形作られてもよい。
【0033】
通常、外側電極はチューブ22に固定され、それにより外側電極はチューブに沿ってスライドしない。しかし、いくつかの実施形態では、外側電極はチューブ22に沿ってスライドしてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、内側電極28はワイヤ28aを含む。そのような実施形態では、ワイヤ28aは、前述の電圧の印加を促進することに加えて、チューブ22を血栓に案内するのを促進し得る。例えば、ワイヤ28aは被験者に挿入され、次いで、蛍光透視画像法または任意の他の適切な画像技術の下で血栓まで誘導されうる。次に、ワイヤ28aは血栓を通過させられてもよい。続いて、チューブ22(および外側電極24)は、外側電極が血栓内に配置されるまで、ワイヤを通過させられてもよい。
【0035】
あるいは、別のガイドワイヤを使用して、チューブ22を血栓に導くことができる。外側電極が血栓内に留まった後、ガイドワイヤが引き戻され、ワイヤ28aがチューブ22を通ってチューブの遠位端に送られうる。
【0036】
ワイヤ28aと外側電極の間に電圧を印加している間、ワイヤの遠位部分は、電極の間に流れる電流が穿孔を通過するように、穿孔の反対側(または「背後」)のチューブの遠位端内に配置される。例えば、ワイヤの遠位先端は、最も遠位の穿孔と整列していてもよい。いくつかの実施形態では、ワイヤ28aの大部分は絶縁材料で被覆され、ワイヤの遠位部分のみが被覆されていない。
【0037】
チューブ22の内腔56の直径D1は、典型的には0.25~5mm、例えば0.4~2mmである。そのような直径は、一般に、吸引された破片とともに内部電極28がチューブ22を通過するのに十分に大きいが、しかし被験者の脈管構造を通るチューブの誘導を促進するために十分小さい。
【0038】
いくつかの実施形態では、遠位端30は、遠位開口部50を画定するように形作られる。いくつかのそのような実施形態では、遠位開口部50は、電極間に電圧が印加されている間、チューブ22を介した吸引の適切な適用により、血栓の任意の分離部分が遠位開口部50を通って吸引されるように、十分に広い。(言い換えれば、遠位開口部は吸引ポートとして機能し得る。)例えば、遠位開口部50の直径D0は、管腔の直径D1にほぼ等しくあり得る。他のそのような実施形態では、D0はD1よりも著しく小さいため、チューブ22を介して加えられる吸引力は穿孔34に集中し、血栓のより良好な捕捉を促進する。例えば、D0は、ワイヤ28aの(または典型的なガイドワイヤの)ものとほぼ同じ、例えば0.2~1mmの間であり、D1はD0の少なくとも2倍である。
【0039】
他の実施形態では、遠位端30は閉じられている、すなわち、遠位端30は遠位開口部を画定する形状ではないため、印加された吸引力は穿孔34に完全に集中する。このような実施形態では、装置20はガイドワイヤを使用することなく前進される。例えば、装置20はカテーテルに通されてもよい。あるいは、チューブ22は、管腔56に加えて別の管腔を画定するように形作られてもよく、装置を配置するために迅速な交換技術が使用されてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、遠位端30は、血栓を貫通するように構成された先のとがった遠位先端を備えるように、穿孔に対して遠位方向に先細りになっている。例えば、遠位端30の内径は、1~3mmの長さにわたってD1からD0まで減少し得、ここで、D0はD1の50%未満である。
図1Aに示されるように、遠位端30は、チューブ22の本体に固定された先細りの端部キャップ37を備えることにより、遠位方向に先細りになり得る。
【0041】
遠位開口部50が著しく狭められているか存在しない実施形態であっても、加えられる吸引力は、血栓の捕捉を促進することに加えて、吸引機能を実行することができることに留意されたい。例えば、
図5を参照して以下にさらに説明するように、印加された吸引力は、電圧が印加されている間に内側電極の近くに形成される泡を、これらの泡がチューブ内に形成される限りは、吸引し得る。
【0042】
本明細書で記載される様々なチューブ、ワイヤ、および他の長手方向要素は、被験者の脈管構造を通るこれらの要素が通過し易いように、典型的には柔軟であることに留意されたい。これらの要素のそれぞれは、被験者に属する任意の血管から血栓を除去できるように、任意の適切な長さを持ちうる。例えば、チューブ22の近位先端42とチューブ22の遠位先端44(すなわち、遠位端30の遠位先端)との間の距離は、20~200cmの間であり得る。(上記を考慮して、装置20の遠位部分が不均衡に大きく描かれているという点で、
図1Aは縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。)
【0043】
ここで本発明のいくつかの実施形態による、チューブ22の一部を通る縦断面図である
図2を参照する。
【0044】
いくつかの実施形態では、
図2に示すように、内側電極は、ワイヤ28aの代わりに導電性チューブ(または「シャフト」)28bを含む。典型的には、そのような実施形態では、別個のガイドワイヤが装置20の血栓への送達を案内する。(
図1A、1Bのように、チューブ22は端部キャップ37を備えてもよい。)
【0045】
通常、導電性チューブ28bは、電気絶縁性チューブの内壁に取り付けられている。そのような実施形態では、チューブ28bは、通常、チューブ22の穿孔34と整列する1つ以上の穿孔を画定するように形作られる。他の実施形態では、導電性チューブ28bは、絶縁チューブ22内にスライド可能に配置される。ワイヤ28aに関して上述されたように、チューブ28bの大部分は絶縁材料でコーティングされ、チューブ28bの遠位部分-前述の穿孔を画定するように成形されてもよい-はコーティングされない。典型的には、導電性チューブ28bの外径はチューブ22の内径D1にほぼ等しく、チューブ28bはチューブ22の内壁に付着するか、それに沿ってスライドする。
【0046】
さらに他の実施形態では、内側電極は、チューブ22の内壁に取り付けられ得る導電性コイル、編組、またはメッシュを備えてもよい。
【0047】
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、電気絶縁チューブ22の遠位端30の概略図である
図3A~Bを参照する。(
図3Aは、図の左側に遠位端30の正面図、図の右側に遠位端30の側面図、を示している。)
【0048】
通常、穿孔34は1つまたは複数の列58に配置され、各列はそれぞれ任意の適切な向きを有していてもよい。例えば、少なくとも1つの列58は、遠位端30の長手方向軸60に平行に、近位-遠位方向に向けられ得る。遠位端30は、任意の適切な数の列を画定するように成形されてもよく、各列は、1~10個の間の穿孔など、任意の適切な数の穿孔を含んでもよい。
【0049】
通常、列58は、周壁38に沿って円周方向に分布する。例えば、遠位端30は、円周方向に分布する穿孔の4列を画定する形状とし、それにより90度の角度が、連続する列の各対を分離するようにすることができる。そのような例示的な実施形態は、
図3Aの正面図に示されており、複数の矢印62は、4つの列58のそれぞれの位置を示している。(列は必ずしも同じ長手方向位置にある必要はなく、すなわち、1つの列は別の1つの列よりも遠位に位置する場合があることに注意されたい。)
【0050】
いくつかの実施形態では、列のそれぞれについて、列の中の穿孔の少なくとも1つは、列の中の他の穿孔よりも大きい。例えば、
図3Aに示されるように、中央穿孔34cのような、最も近位の穿孔34pと最も遠位の穿孔34dとの間の穿孔のうちの少なくとも1つは、列の他の穿孔のそれぞれよりも大きくあり得る。さらに、穿孔のサイズは、列の中央から減少し、その結果、最も近位の穿孔34pおよび最も遠位の穿孔34dは、列の他の穿孔のそれぞれよりも小さくなる。あるいは、
図3Bに示されるように、最も近位の穿孔34pは、列の他の穿孔より大きくてもよい。加えて、穿孔のサイズは列の近位端から減少し、それにより最も遠位の穿孔34dが列の最小の穿孔であり得る。
【0051】
通常、各穿孔のサイズは7.5x10-5~10mm2である。いくつかの実施形態では、例えば、各穿孔は円形であり、0.01~3.5mmの間の直径を有する。たとえば、各列の最大の穿孔の直径は0.1~3.5mmで、最小の穿孔の直径は0.01~0.3mmである。代替的または追加的に、各列の穿孔の合計サイズは0.05~10mm2の間、および/またはすべての列のすべての穿孔の合計サイズは0.2~20mm2の間であってもよい。代替的または追加的に、吸引が適用されたときに圧力低下を防ぐために、この後者の合計サイズは、内腔56の円形断面積よりも大きくてもよい。
【0052】
通常、特定の列内では、連続する穿孔の各ペアは、0.1~4mmの距離d0で分離される。いくつかの実施形態では、距離d0は列にわたって変化する。例えば、
図3Aに示されるように、最遠位の穿孔は、その近位方向の隣接穿孔から、最近位の穿孔がその遠位方向の隣接穿孔から離れる距離よりも大きい距離だけ、離れうる。
【0053】
図6を参照して以下でさらに説明するように、外側電極が少なくとも部分的に血栓内にある間、吸引は穿孔を介して血栓に加えられる。一般に、血栓に加えられる静電力および吸引力の分布を最適化するために、穿孔のサイズ、および穿孔間の間隔を血栓の位置、サイズ、および/または形状に合わせることができる。たとえば、上記の概要で説明したように、最大の穿孔を血栓の近位端に位置合わせしうる。
【0054】
ポンプやシリンジなどの適切な吸引装置を使用して、前述の吸引力を印加することができる。有利には、遠位端30が開いている場合、チューブ22を介した吸引の印加は、遠位開口部50を介した気泡および/または破片の吸引をさらに支援し得る。
【0055】
ここで本発明の他の実施形態による、被験者の身体から血栓を除去するための装置20aの概略図である
図4を参照する。
図4は、装置20aの側面図および装置20aの縦断面図の両方を含む。
【0056】
いくつかの点で、装置20aの特徴は装置20の特徴と類似している。例えば、装置20aでは、外側電極24と内側電極28は、2つの電極間を隔てる電気絶縁チューブ22により、互いに径方向に離間している。同様に、各電極は上記の形態のいずれかを有してもよく、例えば、外側電極がコイル、メッシュ、編組、および/またはチューブを含むことができ、内側電極がイル、メッシュ、編組、および/またはチューブを含むことができる。同様に、装置20の場合のように、2つの電極間に電圧を印加している間、内側電極は外側電極の下に位置し、例えば内側電極の遠位先端は、遠位開口部50と整列し、または遠位開口部50から数ミリメートル以内にある。同様に、ポンプまたは他の吸引適用装置は、電圧が印加されている間、および/または電圧の印加に続いて、チューブ22を通って吸引を印加してもよい。
【0057】
しかし、装置20aは、装置20aでは遠位端30が穿孔されていない点で装置20と異なる。遠位端30に穿孔がないため、電極間に電圧が印加されている間、電流は完全に遠位開口部50を通って流れる。しかしながら、有利なことに、遠位開口部50により多くの吸引力が集中し、それにより処置中に蓄積する気泡および破片がより良好に吸引される。
【0058】
ここで本発明のいくつかの実施形態による、被験者の血管64内に位置する血栓66への装置20の送達を示す概略図である
図5を参照する。
【0059】
まず、
図5の上部に示されるように、ワイヤ28aは、蛍光透視法または他の適切な撮像様式の下で、ワイヤが血管64に到達するまで、被験者の脈管構造を通って誘導される。その後、ワイヤ28aは血栓を通過する。次に、
図5の中央部分に示されるように、有孔チューブ22が被験者の脈管構造内に挿入され、次いで脈管構造を通って血管64まで誘導される。(図のこの部分には穿孔34は示されていない。)続いて、
図5の下部に示すように、遠位端30の上に配置された外側電極24が少なくとも部分的に血栓内に位置するまで、チューブ22を脈管構造内で誘導する。(
図3A~Bを参照して上述したように、いくつかの実施形態では、チューブ22は、最大穿孔が血栓の近位端68と整列するまで脈管構造を通って誘導され得る。)
【0060】
次に、外側電極とワイヤ28aの間に電圧を印加する前に、例えば、ワイヤの遠位先端が最遠位の穿孔と整列するまで、ワイヤをチューブ22に引き戻すことができる。ワイヤをチューブに引き戻すと、電圧が印加されている間に穿孔を流れる電流の割合が増加する。さらに、ワイヤをチューブに引き戻すと、ワイヤの近くに形成される気泡の吸引が容易になる、何故ならば、これらの気泡の殆どまたは全てはチューブ内に形成されるからである。
【0061】
血栓への装置20の送達、およびその後の装置20を使用した血栓の除去について、本発明のいくつかの実施形態に基づく、血栓を被験者の身体から除去する方法70の流れ図である、
図6を参照してさらに説明する。
【0062】
まず、ワイヤ挿入ステップ72で、ワイヤ28aが被験者に挿入される。続いて、ワイヤ誘導ステップ74で、ワイヤ28aが血栓まで誘導される。次に、
図5の上部を参照して上述したように、血栓穿刺ステップ76で、ワイヤ28aが血栓に通される。その後、チューブ挿入ステップ78で、チューブ22がワイヤ28aを超えて被験者に挿入される。次に、チューブ誘導ステップ80で、
図5の中部および底部を参照して上述したように、外側電極24が少なくとも部分的に血栓内に位置するまで、チューブ22がワイヤを介して誘導される。次にワイヤ引き戻しステップ82で、ワイヤの遠位端が穿孔の反対側でチューブの遠位端内に配置されるように、ワイヤがチューブ内に引き戻される。
【0063】
続いて、印加ステップ84で、電圧源32(
図1)は、外側電極とワイヤとの間に正電圧を印加し、一方、ポンプまたは他の適切な吸引印加装置は、チューブ内の穿孔を介して血栓に吸引を印加する。印加電圧により、電流が穿孔に流れ、外側電極が血栓を引き付ける。印加された吸引は、血栓を径方向内向きにチューブに向かって引っ張ることにより、印加された電圧を補い、電圧が印加されている間、チューブの遠位開口部を通って血栓の分離部分をさらに吸引し得る。いくつかの実施形態では、電圧の印加の前に吸引の印加が開始される。
【0064】
通常、被験者を不必要なリスクに曝すことなく、血栓が外側電極に付着するのに十分な時間、電圧が印加される。例えば、この持続時間は、1秒から10分の間、例えば5秒から5分の間、例えば10秒から2分の間であり得る。この期間の後、電圧停止ステップ85で、電圧の印加が停止される。最後に、チューブ引き戻しステップ86で、血栓が外側電極に付着している間に、ワイヤを介してチューブを被験者から引き戻すことにより、血栓が被験者の身体から除去される。(一部の実施形態では、ワイヤはチューブとともに引き戻されるが、他の実施形態では、ワイヤは、チューブが引き戻された後にのみ引き戻される。)チューブが引き戻されている間、吸引の印加は継続し、それにより、血栓が外側電極に付着し続けるのを助け、および/またはチューブの遠位端を通って血栓の分離部分を吸引することを助ける。
【0065】
代替実施形態では、電圧の印加は、チューブが引き戻される時間の少なくとも一部の間継続してもよい。
【0066】
上述のように、いくつかの実施形態では、内側電極はワイヤ28aを含まないか、またはワイヤ28aはガイドワイヤとして機能しない。そのような実施形態では、ワイヤ挿入ステップ72で、ワイヤ28aの代わりに別個のガイドワイヤが被験者に挿入される。次いで、方法70は、チューブ誘導ステップ80が完了するまで、上記で概説したように進行する。ガイドワイヤが身体から引き戻され、次いで、内側電極の遠位端がチューブの遠位穿孔と整列するまで、内側電極がチューブ22に挿入される。続いて、上で概説したように、後続のステップとともに印加ステップ84が実行される。
【0067】
図6を参照して上述した技術は、必要な変更を加えて装置20a(
図4)で使用できることに留意されたい。例えば、上述のように装置を位置決めすることに加えて、正の電圧とともに、および/または電圧の印加の前または後に吸引力を加えてもよい。この吸引力は、血栓を径方向内側に引き込まないが(チューブに穿孔がないため)、それにもかかわらず、この吸引力は、チューブの遠位開口部を通して血栓の分離部分を吸引しうる。
【0068】
一般に、電極間に印加される正電圧信号は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0301594号(特許文献2)に記載された任意の形態など、任意の適切な形態を有し得る。例えば、電圧信号は、一連のパルスを含む周期信号であってもよく、これらのパルスのそれぞれは、例えば、正弦波信号の正の半波の形状か、台形形状を有する。あるいは、電圧信号は、直流(DC)電圧信号であってもよい。通常、電圧信号は単極性である。電圧の振幅は任意の適切な値を有してもよいが、この振幅は典型的には0.1~100V、例えば1~100V、例えば1~50V、または4~40Vである。そのような振幅は、有効であるのに十分なほど大きいが、血栓の近くの組織の損傷を回避するのに十分なほど小さい。
【0069】
例えば、米国特許出願公開2011/0301594(特許文献2)に、その
図1Dを参照して記載されているように、印加電圧信号の各台形パルスは、(i)約5ミリ秒の期間においてグランドレベル(0ボルト)から約40ボルトの振幅まで直線的にランプアップする場合がある。(ii)約5ミリ秒の期間にわたって一定のままであり、次に(iii)約5ミリ秒の期間にわたってグランドレベルまで直線的に下降する。後続のパルスの開始前に、約5ミリ秒の別の期間、電圧がグランドレベルのままになる場合がある。一般に、印加電圧信号は、パルスである場合、0.1Hz~100MHzの間、たとえば直前の例のように、約50Hzなど、任意の適切な周波数を有する。典型的に、電圧は、0.1~4mA(例えば、1~3mA)の振幅を有する電流が2つの電極間に流れるように、印加される。
【0070】
いくつかの実施形態では、電圧源32は、たとえば1~3mAなどの0.1~4mAの間で電流調整される。他の実施形態では、電圧源は、例えば、0.1~100V、または上で概説したより小さなサブ範囲のいずれかに電圧調整される。
【0071】
代替実施形態では、装置20aを使用する場合、外側電極を電圧源32の負端子に接続し、内側電極を正端子に接続することにより、血栓を溶解する負電圧が外側電極と内側電極の間に印加される。負の電圧が印加されると、溶解した血栓材料片がチューブ22の遠位開口部を通って吸引される。
【0072】
当業者は、本発明が上記に特に示され説明されたものに限定されないことを理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は、前述の様々な特徴の組み合わせおよびサブ組み合わせ、ならびに前述の説明を読んだ当業者に想起される先行技術にないその変形および修正の両方を含む。