(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】クリーナヘッド
(51)【国際特許分類】
B08B 5/00 20060101AFI20220629BHJP
B08B 11/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B08B5/00 A
B08B11/00 A
(21)【出願番号】P 2020148335
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】500469109
【氏名又は名称】有限会社タクショー
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】添本 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宇澤 啓
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-055398(JP,A)
【文献】特開2014-100622(JP,A)
【文献】特開2005-296809(JP,A)
【文献】特開2004-330162(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101132868(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 5/00
B08B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包囲外壁部(11)と、該包囲外壁部(11)の内部空間をバキューム空間(V
0
)とプレッシャ空間(P
0
)とバキューム空間(V
0
)に区画形成する一対の区画内壁部(12)(12)とを、一体に有する押出型材(1)から作製され、
上記包囲外壁部(11)は、横断面形状において、被除塵面(10)に対向して配設される一辺(11A)を有し、
一対の上記区画内壁部(12)(12)は、60°乃至100°の所定角度(2θ)を成すように相互に接近しつつ、上記一辺(11A)に合流して連結され、上記一辺(11A)と、上記所定角度(2θ)をもって相互に接近する一対の上記区画内壁部(12)(12)の傾斜部(12B)(12B)の各々と、によって形成される隅部に、アール状肉付部(13)(13)を形成し、
連結された合流位置(G)に於て、上記プレッシャ空間(P
0
)の高圧エアーを噴出する吐出用スリット(6)を上記一辺(11A)と直交方向に開設し、
さらに、上記バキューム空間(V
0
)へ除塵後のエアーを吸入する一対の吸引用スリット(7)(7)を、上記傾斜部(12B)(12B)の各々と平行状に形成するとともに、上記アール状肉付部(13)に、上記吸引用スリット(7)を開口させたことを特徴とするクリーナヘ
ッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーナヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクリーナヘッドC
0 は、
図7に示すような横断面形状のものが使用されている(特許文献1参照)。
即ち、
図7及び
図8(
A)に示すように、矢印K方向へ送られる被除塵体51は、平面状シート体や平面パネル等であり、中央の吐出用スリット53と、送り方向(矢印K)の上流・下流側の吸引用スリット54,54を備え、この吸引用スリット54,54の間隔寸法W
54は十分大きく設定されている。
【0003】
また、
図8(B)や
図8(C)に示した被除塵体51は、バックアップロール55にサポートされつつ矢印K方向へ送りが与えられるフィルム(シート体)であり、吸引用スリット54と被除塵体51との間隔寸法を所定値以下に保つために、クリーナヘッドC
0 の対応面56は、低い台形や円弧状の凹窪面に、形成されていた。
このように、従来のクリーナヘッドC
0 に於ては、被除塵体51の被除塵面形状の各々に応じた対応面56を有する多種類のものを揃える必要があった。
【0004】
そこで、
図7に示したようなAl押出型材から成る従来のクリーナヘッドC
0 における大き目の間隔寸法W
54を、短縮することを、本発明者は着想して、これを検討したのが、
図9に示した(比較例としての)クリーナヘッドC
1 である。
即ち、
図9の比較例に示したように、2本の吸引用スリット54,54の間隔寸法W
54を(
図7よりも)減少でき、バックアップロール55にてサポートされたシート体等の被除塵体51にも適用できると考えたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図9(比較例)にあっては、Al押出型材から成るため、前記間隔寸法W
54を十分に小さくすることができないことが判明した。
具体的には、
図9に於て、長方形の周囲壁57と、その内部の2本の折曲がった区
画壁58,58によって、中央のプレッシャ空間59と左右のバキューム空間60,60が形成されるが、吐出用スリット53に近いプレッシャ空間59の吐出近傍部59Aの間隔寸法Waは、
図9に示す程度にまで、小さくすることが困難である。
【0007】
その理由は、押出金型の中子の一部を、
図9に示した小さな間隔寸法Waを成形する薄い肉厚とすることが、困難であるためである。つまり、上記間隔寸法Waのように薄い肉厚に、押出金型の中子の一部を形成すると、押出成形時に損傷及び早期摩耗を受ける。
さらに、押出成型された区画壁58自身の肉厚も、余り薄くすることが難しいために、
図9における間隔寸法Waを十分に小さくできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、包囲外壁部と、該包囲外壁部の内部空間をバキューム空間とプレッシャ空間とバキューム空間に区画形成する一対の区画内壁部とを、一体に有する押出型材から作製され、上記包囲外壁部は、横断面形状において、被除塵面に対向して配設される一辺を有し、一対の上記区画内壁部は、60°乃至100°の所定角度を成すように相互に接近しつつ、上記一辺に合流して連結され、上記一辺と、上記所定角度をもって相互に接近する一対の上記区画内壁部の傾斜部の各々と、によって形成される隅部に、アール状肉付部を形成し、連結された合流位置に於て、上記プレッシャ空間の高圧エアーを噴出する吐出用スリットを上記一辺と直交方向に開設し、さらに、上記バキューム空間へ除塵後のエアーを吸入する一対の吸引用スリットを、上記傾斜部の各々と平行状に形成するとともに、上記アール状肉付部に、上記吸引用スリットを開口させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2本の吸引用スリットの吸引領域の幅寸法が小さくなって、被除塵面が平面状であっても円筒面状であっても、共用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】使用状態を説明した本発明の実施の一形態を示す横断面図である。
【
図2】吐出用スリットと吸引用スリットを加工する前の状態の押圧型材を示す横断面図である。
【
図6】本発明の一つの使用方法を説明した簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図2に於て、Al等の金属から成る押出型材1を例示する。この押出型材1は、横断面矩形状の包囲外壁部11と、一対の区画内壁部12,12とを、一体に有している。
【0012】
図1と
図3に於て、本発明に係るクリーナヘッド30を示し、
図2の押出型材1に、吐出用スリット6及び2本の吸引用スリット7,7を機械加工等にて開設して、作製される。前記一対の区画内壁部12,12は、矩形状の包囲外壁部11の内部空間を、バキューム空間V
0 とプレッシャ空間P
0 とバキューム空間V
0 に、区画形成する。
このように、
図1~
図3に於て、左右中央のプレッシャ空間P
0 と、左右のバキューム空間V
0 ,V
0 とに、内部空間が区画内壁部12,12にて区画形成される。
【0013】
包囲外壁部11は、横断面形状が、横長扁平状矩形であって、被除塵面10に対向して配設される一辺(第1水平面部)11Aと、それに平行な他辺(第2水平面部)11Bと、左辺(鉛直左面部)11Cと、右辺(鉛直右面部)11Dと、から成っている。
【0014】
そして、区画内壁部12,12は、鉛直部12Aと傾斜部12Bを有し、「く」の字状に折曲がった断面形状である。
図2に示す如く、他辺(上辺)11Bから直角状に2本の鉛直部12A,12Aが垂設され、上下途中位置から傾斜部12B,12Bが相互に接近するように折曲がっている。
この傾斜部12Bと中央鉛直線Lc との成す角度θは、30°~50°とする。好ましくは、35°~45°である。
【0015】
さらに言えば、左右一対の区画内壁部12,12は、その上下途中から、60°乃至100°(望ましくは70°乃至90°)の所定角度2θを成すように(相互に)接近しつつ、上記一辺(第1水平面部)11Aに合流して連結された断面形状である。Gは、左右一対の区画内壁部12,12の傾斜部12B,12Bと、一辺(第1水平面部)11Aとが連結された合流位置を示す。
なお、
図2に示すように、傾斜部12Bと一辺11Aによって形成される隅部は、アール状肉付部13が形成されている。
【0016】
前述の合流位置Gに於て、プレッシャ空間P0 の高圧エアーを噴出させる吐出用スリット6を開設する。即ち、中央鉛直線Lc に沿って、狭小な幅寸法の吐出用スリット6を、形成する。
【0017】
また、
図5、及び、
図3に示すように、バキューム空間V
0 へ(被除塵面10から分離・除去した粉塵を含んだ除塵後の)エアーを吸入する一対の吸引用スリット7,7を、前記所定角度2θをもって相互に接近する一対の区画内壁部12,12の傾斜部12B,12Bの各々と平行状に、形成する。
【0018】
即ち、一対の吸引用スリット7,7の各々は、傾斜部12Bと平行状に開設される。一対の吸引用スリット7,7の成す角度は、従って、2θとなる。かつ、中央鉛直線Lc に関して、一対の吸引用スリット7,7は相互に線対称に配設される。
【0019】
ここで、本発明の構成を別の表現をもって、繰返して説明すれば、前述の一辺(第1水平面部)11Aは、被除塵面10に対向する対応壁部15と呼ぶことができる。
そして、
図5に示すように、該対応壁部15には、直交方向に開設した吐出用スリット6、及び、該吐出用スリット6の上流近傍と下流近傍に開設した一対の吸引用スリット7,7を有するクリーナヘッド30に於て、上記対応壁部15に開設の上記一対の吸引用スリット7,7の外方延長線L
7 ,L
7 は、上記対応壁部15から離れるに従って、相互接近して交わるように、上記対応壁部15に傾斜状に開設した。
【0020】
なお、
図5に示すように、外方延長線L
7 は、吸引用スリット7,7の各々のスリット幅の中央に沿った線であって、相互に2θの角度をもって、相互接近しつつ、(
図5の)星印
25の位置にて、交わる。
【0021】
次に、
図4は本発明の他の実施形態を示す。即ち、一対の上記区画内壁部12,12の各々に、包囲外壁部11の外部から、押圧力F
1 ・引張力F
2 を付与して、区画内壁部12,12を矢印M
12方向に微小揺動変形させ、区画内壁部12,12の先端の吐出用スリット6の間隙寸法εを、調整自在な押圧・引張力付与手段20を、具備する。
【0022】
押圧・引張力付与手段20は、
図4に於ては、鉛直左面部11Cと(左側の)区画内壁部12とを連結するボルト・ナット結合、あるいは、鉛直右面部11Dと(右側の)区画内壁部12とを連結するボルト・ナット結合を、用いた場合を示す。
【0023】
図4に於て、紙面に直交方向に、複数のボルト・ナット結合を所定ピッチをもって、配設する。なお、
図4に示した押圧力F
1 及び引張力F
2 を、選択して作用させる構造に限らず、紙面に直交方向に所定ピッチをもって、押圧力付与専用のボルト・ナット結合等と、引張力付与専用のボルト・ナット結合等とを、交互に配設するも、好ましい。
このように、吐出用スリット6の間隙寸法εを、調整自在な押圧・引張力付与手段20を、具備しているので、特に長尺のクリーナヘッドにあっては、全長にわたって、均等にエアー吐出ができるように迅速かつ容易に調整作業を行い得る。しかも、クリーナヘッドを分解することなく、外部から迅速、かつ、運転中にあっても高精度な調整作業を行い得る。
【0024】
本発明は、
図5に示すように、吐出流れF
6 が被除塵面10に衝突する領域に極めて近い位置に、吸引流れF
7 が生じ、その気流が極めて安定する。
特に、吸引用スリット7,7が傾斜状に設けられて、吸引用スリット7,7の開口端部の間隔寸法W
54を十分に小さくすることが可能であるので、吐出流れF
6 が被除塵面10に衝突領域に一層近づき、従って、
図6に示したように、シート体(フィルム)等の被除塵体9に対し、(図
1に示したような)バックアップロール14を使用せずに、送りロール21,22の中途部位にて、一対のクリーナヘッド30,30をもって除塵することができる。つまり、バックアップロール14を使用せずに、
図6に示すように空中搬送が可能となる利点もある。
【0025】
図1に示すように、被除塵体9が、小径のバックアップロール14にて矢印F
9 の方向に送られるシート体(フィルム)である場合であっても、吸引用スリット7の下方開口部の位置では、包囲外壁部11の一辺11Aの下面とのギャップ(間隙)は十分に小さい。
即ち、被除塵面10(II)と被除塵面10(III)を比較すると、吸引用スリット7の下方開口部の位置では、包囲外壁部11の一辺11Aの下面とのギャップ(間隙)に、ほとんど差を生じず、吸引用スリット7を介しての吸引力に差異がないことが判る。
【0026】
従って、被除塵面10が、
図1の(I)(II)(III)のいずれであっても、本発明のクリーナヘッド30が対応できる(共用可能)。これに対し、従来例を示す
図8に於ては、対応面56を、低台形凹状や円弧凹状とせねばならなかったのは、吸引用スリット54,54が被除塵体51から、大きく分離することを防止する必要があったためである。
要するに、本発明のクリーナヘッド30では、従来の低台形凹状対応面56(
図8(B)参照)や、円弧凹状対応面56(
図8(C)参照)とする必要がなくなり、同一形状のままで共用できる(十分に除塵作用を発揮できる)。
【0027】
本発明は、以上詳述したように、被除塵面10に対向する対応壁部15には、直交方向に開設した吐出用スリット6、及び、該吐出用スリット6の上流近傍と下流近傍に開設した一対の吸引用スリット7,7を、有するクリーナヘッドに於て、上記対応壁部15に開設の上記一対の吸引用スリット7,7の外方延長線L7 ,L7 は、上記対応壁部15から離れるに従って、相互接近して交わるように、上記対応壁部15に傾斜状に開設したので、吸引用スリット7,7の開口端の間隔寸法W54は十分に小さくなって、被除塵体9の被除塵面10が、(平坦な)平面状から、大小種々の曲率半径の弯曲面状のものにまで、柔軟に対応できる。従って、多種多様なクリーナヘッドを揃える必要が無くなる。
【0028】
また、本発明のクリーナヘッドは、包囲外壁部11と、該包囲外壁部11の内部空間をバキューム空間V
0 とプレッシャ空間P
0 とバキューム空間V
0 に区画形成する一対の区画内壁部12,12とを、一体に有する押出型材1から作製され、上記包囲外壁部11は、横断面形状において、被除塵面10に対向して配設される一辺11Aを有し、一対の上記区画内壁部12,12は、60°乃至100°の所定角度2θを成すように相互に接近しつつ、上記一辺11Aに合流して連結され、連結された合流位置Gに於て、上記プレッシャ空間P
0 の高圧エアーを噴出する吐出用スリット6を開設し、さらに、上記バキューム空間V
0 へ除塵後のエアーを吸入する一対の吸引用スリット7,7を、上記所定角度2θをもって相互に接近する一対の上記区画内壁部12,12の各々と平行状に、形成したので、一対の区画内壁部12,12の断面形状は、
図9に示した比較例における狭小な間隔寸法Waとならずに済み、
図9について既述した押出金型の中子の損傷及び早期摩耗を受ける問題を解決でき、それにもかかわらず、一対の吸引用スリット7,7の開口端部の間隔寸法W
54を、十分に小さくできる。
このように、間隔寸法W
54は十分に小さくなって、被除塵体9の被除塵面10が、(平坦な)平面状から、大小種々の曲率半径の弯曲面状のものにまで、柔軟に対応できる。従って、多種多様なクリーナヘッドを揃える必要が無くなる。
【0029】
さらに、2θ<60°であると、上記間隔寸法W
54を十分に減少できなくなって、被除塵面10の形状によっては十分な除塵が困難になる(
図1とその説明参照)。
また、2θ>100°であると、被除塵面10から吸引する領域が過小面積となってしまって、逆に、十分な粉塵の除去(吸引)が困難となる。
【符号の説明】
【0030】
1 押出型材
6 吐出用スリット
7 吸引用スリット
10 被除塵面
11 包囲外壁部
11A 一辺
12 区画内壁部
12B 傾斜部
13 アール状肉付部
G 合流位置
P
0
プレッシャ空間
V0 バキューム空間
W54 間隔寸法
ε 間隙寸法
2θ 所定角度