(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】テロメラーゼ由来のペプチドを含む樹状細胞治療剤及び免疫治療剤、及びこれを用いる治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/15 20150101AFI20220629BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220629BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20220629BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220629BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220629BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220629BHJP
C07K 7/04 20060101ALN20220629BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
A61K35/15 Z ZNA
A61K35/17 Z
A61K38/10
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P37/04
C07K7/04
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2016247814
(22)【出願日】2016-12-21
【審査請求日】2019-12-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514286826
【氏名又は名称】ジェムバックス アンド カエル カンパニー,リミティド
(73)【特許権者】
【識別番号】514286848
【氏名又は名称】キム サン チェ
(73)【特許権者】
【識別番号】516384508
【氏名又は名称】コリア ステム セル バンク
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】キム サン チェ
(72)【発明者】
【氏名】阿部 博幸
(72)【発明者】
【氏名】チャン ファ イン
(72)【発明者】
【氏名】ハ チョン ソン
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030375(JP,A)
【文献】Experimental Hematology,2007年,Vol.35,pp.297-304
【文献】日本内科学会雑誌,2013年,Vol.102, No.7,pp.1751-1758
【文献】NATURE MEDICINE,2000年,Vol.6, No.8,pp.1011-1017
【文献】Biotherapy,2008年,Vol.22, No.5,pp.327-331
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00 -35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドと、WT1、MUC-1、CA125、MAGE-A3、CEA、NY-ESO1、Survivin及びHer2からなる群から選ばれる一つ以上のペプチドとの組み合わせで活性化された樹状細胞を含む、癌を治療するための免疫反応活性化組成物であって、前記癌が、膵臓癌、肺癌、乳癌、胃癌、及び肺小細胞癌からなる群から選ばれる一つ以上の癌であり、
前記組成物がNK(natural killer)細胞治療剤と共に投与され、
前記癌が肺癌である場合に、前記一つ以上のペプチドが、WT1、MUC-1及びMAGE-A3;WT-1、MUC-1、NY-ESO1及びMAGE-A3;WT-1、MUC-1、CEA、NY-ESO1及びMAGE-A3;又は、WT-1、MAGE-A3及びCEAを含み、
前記癌が膵臓癌である場合に、前記一つ以上のペプチドが、WT-1、MUC-1及びSurvivinを含み、
前記癌が乳癌である場合に、前記一つ以上のペプチドが、WT-1、NY-ESO1及びHer2を含み、
前記癌が肺小細胞癌である場合に、前記一つ以上のペプチドが、WT-1、MUC-1及びSurvivinを含み、
前記癌が胃癌である場合に、前記一つ以上のペプチドが、WT-1、MUC-1、MAGE-A3及びNY-ESO
1を含む、免疫反応活性化組成物。
【請求項2】
前記樹状細胞は、前記組成物を投与される個体の末梢血由来の単核細胞に由来の樹状細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、配列番号1のペプチドを含む免疫治療剤と併用投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、一つ以上の抗癌化学療法用薬剤又は標的抗癌治療剤と併用投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、放射線治療法と併用されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
免疫反応を生じる免疫反応活性化のための、薬学的に有効な量の請求項1~5のいずれか1項に記載の免疫反応活性化組成物であって、当該組成物の有効量が標的指向性治療を必要とする疾病又は異常症状を有する個体に投与される、組成物。
【請求項7】
前記組成物の投与は、2週毎に1回ずつリンパ節付近の皮内注射を通じて行われることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、配列番号1のペプチドを含む免疫治療剤と併用投与される、請求項6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫反応を誘導するテロメラーゼ由来のペプチド及びこれを含むペプチドで刺激された樹状細胞を含む樹状細胞治療剤及び/又はテロメラーゼ由来のペプチドを含む免疫治療剤を含む免疫反応活性化組成物、及び前記樹状細胞治療剤単独で、及び/又は前記免疫治療剤を併用投与する免疫反応活性化方法に関する。より詳しくは、本発明は、テロメラーゼに由来のペプチドを含んだペプチドにより活性化された樹状細胞及びこれを含む組成物単独で、又はテロメラーゼ由来のペプチドを含む免疫治療剤と併用して、抗原特異的免疫反応を増加し、炎症又は癌を含めた疾患の治療に効果的なペプチドにより活性化された樹状細胞治療剤、及び前記細胞治療剤と併用される免疫治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞治療剤は、細胞と組織の機能を復元するために、生きている自家(autologous)、同種(allogenic)、又は異種(xenogenic)の細胞を、体外で増殖及び選別するか、又はその他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるなどの一連の行為を通じて、治療、診断及び予防の目的で用いられる医薬品を言う。
【0003】
細胞治療剤のうち、樹状細胞免疫治療剤は、非常に特化された細胞であって、免疫治療剤が投与される対象に由来の樹状細胞に、ペプチドをパルスして活性化した樹状細胞から調剤され、治療剤を必要とする対象の体内に投与される。投与された樹状細胞は、当該ペプチドの抗原をT細胞に提示し、これにより活性化されたT細胞(CTL)は、当該ペプチドを標識する細胞を特異的に攻撃するため、体内の正常細胞を損傷せず、疾病を治療することができる。未成熟の樹状細胞(Dendritic Cell、DC)は、T細胞を刺激することはできないが、抗原をキャプチャー(capturing)する能力に優れた。未成熟のDCは、抗原及び他の刺激物質をキャプチャーして刺激を受け、成熟の樹状細胞に分化する。抗原を提示する成熟のDCは、CD80、CD83、CD86、及びMHCクラスI及びクラスIIを強く発現し、流入領域リンパ節(draining lymph node)のT細胞が豊かな傍皮質(paracortical)領域へ移動して、抗原をT細胞に提示し、抗原特異的な細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocytes、CTL)を誘導し、ヘルパーT細胞を誘導することによって、抗癌効果を示すようになる。
【0004】
しかし、樹状細胞免疫治療剤の製造のために必要な樹状細胞は、直接に体内から分離できない。そのため、樹状細胞は、免疫治療剤が投与される対象から採取した骨髄又は血液から単核細胞を分離し、この単核細胞を樹状細胞に分化することによって得られる。
【0005】
従来、樹状細胞免疫治療剤の製造に用いられる単核細胞を採取する方法としては、成分採血(apheresis)が知られている。成分採血とは、供与者又は授与者の全血(whole blood)を採血し、血液が装置を通して、必要な成分のみを集めることを言う。成分採血によると、成分採血装置を用いて、血液中の白血球を分離する方法が知られている。しかし、成分採血は、装置の運用に費用がかかる上に、装置の操作に高度の技術が求められる。また、成分採血では、単核細胞のみならず、単核細胞以外の成分(白血球、赤血球又は血小板など)も含む混合物が採取される。そのため、成分採血の後に、赤血球や血小板などの単核細胞以外の成分を取り除くために、単核細胞の分離工程を行うのが一般的である。
【0006】
樹状細胞免疫治療剤を臨床試験などに応用するためには、一回の投与に約1x107個の細胞を用いるのが好ましい。かかる細胞数を確保するために、通常、同一対象から一定の間隔をおいて8回程度の成分採血が行われる。また、血液中に存在する単核細胞の比率が少ないため、樹状細胞免疫治療剤を製造できる程度で、十分な量の単核細胞を得るためには、成分採血を用いる場合、成分採血装置内で血液を循環させて、白血球成分を十分に採取する必要があるが、これは、体力的に、かつ時間的に患者に非常に負担がかかる。そのため、成分採血のうち、患者の容態が急変すると、成分採血を途中で中断し、樹状細胞免疫治療剤療法そのものを断念しなければならない場合がある。また、成分採血において単核細胞の成分を採取した場合は、通常5~8回分程度の樹状細胞免疫治療剤を作製可能であるとするが、実際に得られる樹状細胞免疫治療剤の量は、患者の血液状態などによって変わる。成分採血の他の短所は、採取した単核細胞を冷凍保存しなければならず、このように冷凍された細胞を、投与前に解凍する必要があるということである。
【0007】
成分採血が必要ない免疫治療剤用樹状細胞の製造法は、特許文献1に記載されているように、患者の末梢血を採取して単核細胞を収集及び培養し、単核細胞から分化された未成熟樹状細胞に、ペプチドをパルスして活性化した後、成熟の樹状細胞となると、さらにペプチドをパルスして活性化する過程を経て行われる。成分採血を用いない樹状細胞の製造法は、成分採血を利用する際の短所である患者の負担と時間を減らすことができる。また、一つのワクチンの製造に、25~30ml程度の末梢血で十分であるという長所がある。これと共に、樹状細胞を冷凍するか、解凍する過程のなく、新鮮なワクチンを得ることができる。
【0008】
細胞媒介免疫は、感染又は形質転換された(transformed)細胞(癌細胞など)を殺す作用をする細胞であるCTL(cytotoxic T lymphocyte、細胞傷害性Tリンパ球)及びNK細胞(natural killer cell、ナチュラルキラー細胞)により行われる。
【0009】
CTLは、抗原特異的(antigen-specific)細胞媒介免疫を担当する細胞である。即ち、これは、特定の抗原を認知して、その抗原が見える細胞を、アポトーシス(apoptosis)で殺す役割を果す。これは、抗原特異的であるため、適応性免疫(adaptive immunity)と分類される。活性化されたCTLは、パーフォリン(perforin)又はグランザイム(granzyme)のような物質を分泌して、対象細胞を攻撃及び死滅する作用をする。
【0010】
NK細胞は、問題が起こった細胞(ウィルスに感染されたか、形質転換された癌細胞のような細胞)を認知する方式が、抗原特異的(antigen-specific)でないという点から、CTLとは異なる。NK細胞は、抗原特異的でないため、内在的免疫(innate immunity)と分類される。NK細胞は、個体が元々持っているペプチドを、非正常的に少なく標識する細胞を攻撃して死滅する作用をする。
【0011】
細胞感染及び変性細胞により触発される炎症又は癌を含む各種疾患は、これを治療するために各種化学的治療剤の投与及び放射線治療などを介して、広範囲の治療を通じて大部分の治療が行われる。この過程において、感染又は変性されていない正常細胞の多くの損失及び死滅が現れるようになって、多くの副作用を引き起こすようになる。これにより、正常細胞は触ることなく、感染又は変性などによる異常細胞のみを、特異的に攻撃して取り除く治療剤の必要性が高まってきた。
【0012】
本発明によるペプチド(以下、 PEP1という)は、テロメラーゼ(telomerase)の触媒部分に存在する16個の重要なアミノ酸から構成されたペプチドで、抗炎及び抗酸化などの効能を有するものであると知られている。PEP1を含むペプチド群でパルスして活性化した樹状細胞を含む免疫治療用組成物が、細胞感染及び変性などにより誘導される炎症又は癌を含んだ各種疾患に効果があり、臨床実験などを通じて見出された。これに従って、PEP1を含めたペプチドのパルシングで活性化された樹状細胞免疫治療用組成物が、炎症又は癌を含んだ各種疾患の標的指向性免疫治療の効果を示すことが期待される。追加に、本発明では、PEP1ペプチドなどを含む抗原ペプチドで活性化された樹状細胞治療剤と併用して、PEP1ペプチドを含む免疫治療剤を投与することにより、免疫相昇効果を得ることができる。また、本発明では、PEP1ペプチドなどを含む抗原ペプチドで活性化された樹状細胞治療剤及びNK細胞治療剤と並行して、PEP1ペプチドを含む免疫治療剤を併用することにより、免疫相昇効果を得ることができる。
【0013】
本発明は、テロメラーゼの逆転写酵素(reverse transcriptase of telomerase)由来のペプチドを含むペプチドで活性化された樹状細胞治療剤及びテロメラーゼ由来のペプチドを含む免疫治療剤を包含する、炎症又は癌に対する免疫反応を生じる免疫反応活性化組成物を提供する。具体的に、本発明は、ヒトテロメラーゼの逆転写酵素(human reverse transcriptase of human telomerase、hTERT)由来のアミノ酸ペプチドを含むペプチドで活性化された樹状細胞単独で、又はテロメラーゼ由来のペプチドを含む免疫治療剤を併用して投与する免疫反応活性化組成物を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】WO2013-118899A1
【文献】WO2013-100500A1
【文献】JP5577472B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような背景の下で、本発明者等は、副作用が殆どなく、かつ効果が優れたペプチドで活性化された樹状細胞、及びこれを含む樹状細胞治療剤を開発するために、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明の目的は、効果的であり、かつ副作用のないテロメラーゼ由来のペプチドで活性化された樹状細胞治療剤単独で、又は前記樹状細胞治療剤と併用して、テロメラーゼ由来のペプチドを含む免疫治療剤を併用投与する免疫反応活性化組成物、及び前記組成物を用いて、炎症又は癌を含む疾患を治療する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一側面によると、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、及びそのフラグメントであるペプチドからなる群から選ばれる一つ以上のペプチドで活性化された樹状細胞を含む、感染されるか、又は変性された細胞に対する免疫反応を生じる免疫反応活性化組成物が提供される。
【0018】
本発明による組成物において、前記フラグメントは、3個以上のアミノ酸から構成されたフラグメントであってもよい。
【0019】
本発明による組成物において、前記樹状細胞は、PEP1の他に、さらにWT1、MUC-1、CA125、MAGE-A3、CEA、NY-ESO1、Survivin及びHer2からなる群から選ばれる一つ以上の抗原由来のペプチドで活性化されたことを特徴とする。
【0020】
本発明による組成物は、感染されるか、又は変性された細胞に免疫反応を生じることにより炎症又は癌を治療することを特徴とする。
【0021】
本発明による組成物において、前記癌は、膵臓癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、肝癌、腎臓癌のうちから選ばれる一つ以上の癌を対象にすることを特徴とする。
【0022】
本発明による組成物において、前記樹状細胞は、投与される個体の末梢血から選別培養された単核細胞に由来の樹状細胞であることを特徴とする。
【0023】
本発明による組成物において、前記組成物は、配列番号1又はそのフラグメントを含む免疫治療剤と併用投与することを特徴とする。
【0024】
本発明による組成物において、前記組成物は、NK(natural killer)細胞治療剤と併用投与することを特徴とする。
【0025】
本発明による組成物において、前記組成物は、一つ以上の抗癌化学療法用薬剤又は標的抗癌治療剤と併用投与することを特徴とする。
【0026】
本発明による組成物において、前記組成物は、放射線治療法と併用することを特徴とする。
【0027】
本発明の他の一側面によると、薬学的に有効な量の前記樹状細胞を含む免疫反応活性化組成物を、標的指向性治療を必要とする疾病又は異常症状を有する個体に投与する段階を含む、炎症又は癌に対する免疫反応を生じる免疫反応活性化方法が提供される。
【0028】
本発明の免疫反応活性化方法において、前記組成物の投与は、2週毎に1回ずつ、リンパ節付近の皮内注射で行われることを特徴とする。
【0029】
本発明の免疫反応活性化方法において、前記組成物の投与は、配列番号1又はそのフラグメントを含む免疫治療剤と併用して行われることを特徴とする。
【0030】
本発明の他の一側面によると、前記樹状細胞を含む免疫反応活性化組成物を含む、炎症又は癌に対する免疫反応を生じる免疫反応活性化キットが提供される。
【0031】
本発明によるキットにおいて、前記キットは、配列番号1又はそのフラグメントを含む免疫治療剤をさらに含むことを特徴とする。
【0032】
本発明によるキットにおいて、前記キットは、薬学的有効成分として、本発明による樹状細胞を含む免疫反応活性化組成物及び配列番号1の免疫治療剤を、2週おきにリンパ節付近の皮内注射を通じて投与することを指示する指示書を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明による配列番号1の配列を有するペプチド、又は該配列と80%以上の相同性を有する配列のペプチドを含むペプチドで活性化された樹状細胞を含む免疫反応活性化組成物は、標的指向性治療を必要とする疾病又は異常症状を有する個体で、疾病を誘発する因子の減少及び個体の免疫反応の増加に効果を示し、腫瘍性疾患を含む標的指向性治療を必要とする疾病又は異常症状の治療法を提供することが予想される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】Aは、本発明による未成熟樹状細胞のPEP1抗原エンドサイトーシス(Endocytosis)を、フローサイトメトリー(Flow cytometry)にて分析した結果を示し、Bは、本発明による未成熟樹状細胞のPEP1抗原摂取能を、共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)で観察した結果を示す。
【
図2】本発明によるPEP1活性化樹状細胞の抗原特異的T細胞増殖の誘導を分析した結果を示す。
【
図3】本発明によるPEP1特異的T細胞が分泌するIFN-γ分泌量を分析した結果を示す。
【
図4】本発明による樹状細胞免疫治療法を実施した患者中、74才女性胃癌患者(患者1)の末梢血を用いて、治療前のELISPOTアッセイを実行した結果の写真、及びこれを数値化した結果を示した表である。
【
図5】本発明による樹状細胞免疫治療法を実施した患者中、74才女性胃癌患者(患者1)の末梢血を用いて、治療後のELISPOTアッセイを実行した結果の写真、及びこれを数値化した結果を示した表である。
【
図6】本発明による樹状細胞免疫治療法を実施した患者中、77才男性肺癌患者(患者2)の末梢血を用いて、治療前のELISPOTアッセイを実行した結果の写真、及びこれを数値化した結果を示した表である。
【
図7】本発明による樹状細胞免疫治療法を実施した患者中、77才男性肺癌患者(患者2)の末梢血を用いて、治療後のELISPOTアッセイを実行した結果の写真、及びこれを数値化した結果を示した表である。
【
図8】本発明による樹状細胞免疫治療法を実施した患者中、72才男性膵臓癌患者(患者3)の末梢血を用いて、治療前のELISPOTアッセイを実行した結果の写真、及びこれを数値化した結果を示した表である。
【
図9】本発明による樹状細胞免疫治療法を実施した患者中、72才男性膵臓癌患者(患者3)の末梢血を用いて、治療後のELISPOTアッセイを実行した結果の写真、及びこれを数値化した結果を示した表である。
【
図10】本発明による樹状細胞免疫治療法を実施した患者中、66才女性乳癌患者(患者4)の末梢血を用いて、治療前のELISPOTアッセイを実行した結果の写真、及びこれを数値化した結果を示した表である。
【
図11】本発明による樹状細胞免疫治療法を実施した患者中、66才女性乳癌患者(患者4)の末梢血を用いて、治療後のELISPOTアッセイを実行した結果の写真、及びこれを数値化した結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は、多様な変換を加えてもよく、様々な実施例を有してもよい。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に限定することではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むことを理解すべきである。本発明を説明するにあたって、関連の公知技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にする恐れがあると判断する場合、その詳細な説明を省略する。
【0036】
本発明の一側面において、配列番号1のペプチド、配列番号1のフラグメントであるペプチド、又は前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドは、テロメラーゼ、具体的には、ヒトテロメラーゼ由来のペプチドを含む。
【0037】
本明細書に開示されたペプチドは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列相同性を有するペプチドを含んでもよい。また、本明細書に開示されたペプチドは、配列番号1を含むペプチド又はそのフラグメントと、1個以上のアミノ酸、2個以上のアミノ酸、3個以上のアミノ酸、4個以上のアミノ酸、5個以上のアミノ酸、6個以上のアミノ酸又は7個以上のアミノ酸が変化されたペプチドとを含んでもよい。
【0038】
本発明の一側面において、アミノ酸の変化は、ペプチドの物理化学的特性を変更させる性質に属する。例えば、ペプチドの熱安定性を向上し、気質特異性を変更させ、最適のpHを変化させるなどのアミノ酸の変化が行われてもよい。
【0039】
また、本発明の一側面による配列番号1の配列を有するペプチド、配列番号1の配列のフラグメントであるペプチド、又は前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドは、細胞内毒性が低く、生体内安定性が高いという長所を有する。本発明における配列番号1は、テロメラーゼ由来のペプチドで、以下のように、16個のアミノ酸からなるペプチドである。
【0040】
配列番号1に記載されたペプチドは、以下の表1の通りである。以下の表1における「名称」は、ペプチドを区別するために命名したものである。本発明の一側面において、配列番号1に記載されたペプチドは、ヒトテロメラーゼの全ペプチドを示す。本発明の別の側面において、配列番号1の配列を有するペプチド、配列番号1の配列のフラグメントであるペプチド、又は前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドは、テロメラーゼに含まれたペプチドのうち、当該位置のペプチドを選別して合成した「合成ペプチド」を含む。配列番号2は、全テロメラーゼのアミノ酸配列を示したものである。
【0041】
【表1】
本発明の一側面においては、配列番号1のアミノ酸配列を含む(comprising)ペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントであるペプチドを含むペプチドで活性化された樹状細胞を、有効成分として含む免疫反応活性化組成物が提供される。
【0042】
本発明の一側面によるペプチドで活性化された樹状細胞を含む免疫反応活性化組成物は、配列番号1のアミノ酸配列、又はそのフラグメントを含む免疫治療剤と併用投与することができる。
【0043】
本発明の一側面による免疫反応活性化組成物は、ヒト、イヌ、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ギニアピッグ又はサルを含む全ての動物に適用できる。
【0044】
本発明の一側面による免疫反応活性化組成物は、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、骨髄内、硬膜内又は皮下などで投与できる。
【0045】
本発明の一側面による免疫反応活性化組成物は、必要に応じて、希釈剤、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩解剤、緩衝剤、分散剤、界面活性剤、着色剤、香料、又は甘味剤などの添加剤を含んでもよい。本発明の一側面による免疫反応活性化組成物は、当業界の常法により製造できる。
【0046】
本発明の一側面による免疫反応活性化組成物と併用投与される、配列番号1のアミノ酸配列、又はそのフラグメントを含む免疫治療剤の投与量は、投与される対象の年齢、性別、体重、病理状態及びその重症度、投与経路又は処方者の判断によって変わる。このような因子に基づいた適用量の決定は、当業者のレベル内にあり、この1日投与用量は、例えば、0.1μg/kg/日~100g/kg/日、具体的には、10μg/kg/日~10g/kg/日、より具体的には、100μg/kg/日~1g/kg/日、さらにより具体的には、500μg/kg/日~100mg/kg/日となってもよく、用量による効果の差を見せる場合、これを適切に調節できる。本発明の一側面による薬学組成物は、1日1回~3回投与できるが、これに制限されることではない。
【0047】
本明細書において用いられた用語は、特定の具体例を説明するための目的のみで意図されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。名詞の前に個数が省略された用語は、数量を制限するものではなく、言及された名詞の物品が、一つ以上存在することを示すものである。用語「含む」、「有する」、及び「含有する」とは、包括的意味と解釈される(即ち、「含まれるが、これに限定されない」という意味)。
【0048】
数値の範囲を言及するのは、単にその範囲内に属するそれぞれの別個の数値を、個別的に言及することに代わる容易な方法であるためであり、それではないと明示されていない限り、各数値は、個別的に明細書に言及されているように本明細書に適用される。全ての範囲の限界値は、その範囲内に含まれ、独立して組み合わせ可能である。
【0049】
本明細書に述べられる全ての方法は、特に明示されているか、文脈により明白に矛盾しない限り、適切な順序で行われ得る。いずれか一つの実施例及び全ての実施例又は例示的言語(例えば、「~のような」)を使用するのは、特許請求の範囲に含まれていない限り、単に本発明の記載を容易にするためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書のいかなる言語も、請求されていない構成要素を、本発明の実施に必須的なものであると解釈してはいけない。特に定めのない限り、本明細書に用いられる技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により通常理解されるような意味を有する。
【0050】
本発明の好適な具体例は、本発明を実行するために、発明者に知られた最適のモードを含む。好適な具体例の変形は、先行する記載に触れれば、当業者に明白になるであろう。本発明者らは、当業者がそのような変形を適切に利用することを期待し、発明者らは、本明細書の記載とは異なる方式で、本発明が実施されることを期待する。従って、本発明は、特許法により許容されているように、添付の特許請求の範囲に述べられた発明の要旨の均等物及び全ての変形を含む。さらに、全ての可能な変形内で、前述の構成要素のいかなる組み合わせも、ここで異なって明示するか、文脈上、明白に矛盾しない限り、本発明に含まれる。本発明は、例示的な具体例を参照して、具体的に開示し、記述されたが、当業者は、添付の特許請求の範囲により定められる発明の思想及び範囲を逸脱することなく、形態及びディテールにおいて多様な変化が可能であることがよく分かる。
【0051】
以下、実施例及び実験例をもって、本発明の構成及び効果をより詳細に説明する。しかし、以下の実施例及び実験例は、本発明の理解を助けるために例示の目的にのみ提供されたものに過ぎず、本発明の範疇及び範囲を限定するものではない
実施例
実施例1:ペプチドの合成
配列番号1のペプチド(以下、「PEP1」という)を、従来知られている固相ペプチド合成法(solid phase peptide synthesis, SPPS)に従って製造した。具体的に、ペプチドは、ASP48S(Peptron, Inc., 大韓民国・大田)を用いて、Fmoc固相合成法でC-末端からアミノ酸を一つずつカップリングすることにより合成した。以下のように、ペプチドのC-末端の一番目のアミノ酸が、レジンに付着されたものを用いた。例えば、次の通りである。
【0052】
NH2-Lys(Boc)-2-クロロ-トリチルレジン
NH2-Ala-2-クロロ-トリチルレジン
NH2-Arg(Pbf)-2-クロロ-トリチルレジン
ペプチドの合成に用いた全てのアミノ酸原料は、N-末端がFmocで保護され、残基は全て酸で除去される、Trt、Boc、t-Bu(t-ブチルエステル)、Pbf(2、2、4、6、7-ペンタメチルジヒドロ-ベンゾフラン-5-スルフォニル)などで保護されたものを用いた。例えば、次の通りである。
【0053】
Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Met-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-Ahx-OH、Trt-メルカプト酢酸。
【0054】
カップリング試薬(Coupling reagent)としては、HBTU[2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1、1、3、3-テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート]/HOBt[N-ヒドロキシベンゾトリアゾル]/NMM[4-メチルモルホリン]を用いた。Fmocの除去は、20%のDMF中のピペリジン(piperidine in DMF)を用いた。合成されたペプチドを、レジンから分離及び残基の保護基の除去には、切断カクテル(Cleavage Cocktail)[TFA (トリフルオロ酢酸)/TIS(トリイソプロピルシラン)/EDT(エタンジチオール)/H2O=92.5/2.5/2.5/2.5]を用いた。
【0055】
アミノ酸の保護基が結合された出発アミノ酸が、固相支持体に結合されている状態を利用して、ここに当該アミノ酸を各々反応させ、溶媒で洗浄した後、脱保護の過程を繰り返すことにより、各ペプチドを合成した。合成されたペプチドを、レジンから切り取った後、HPLCで精製し、MSで合成の可否を確認した後、凍結乾燥した。
【0056】
本実施例に用いられたペプチドへの高速液体クロマトグラフィーの結果、全てのペプチドの純度は、95%以上であった。
【0057】
ペプチドPEP1の製造についての具体的な過程は、以下の通りである。
【0058】
1)カップリング
NH2-Lys(Boc)-2-クロロ-トリチルレジンに、保護されたアミノ酸(8当量)と、カップリング試薬HBTU(8当量)/HOBt(8当量)/NMM(16当量)とをDMFに溶解して加えた後、常温で2時間反応させ、DMF、MeOH 、DMFの順に洗浄した。
【0059】
2)Fmoc脱保護
20%のDMF中のピペリジン(piperidine in DMF)を加えて、常温で5分間2回反応させ、DMF、MeOH 、DMFの順に洗浄した。
【0060】
3)前記1)と2)の反応を繰り返して行い、ペプチドの基本骨格NH2-E(OtBu)-A-R(Pbf)-P-A-L-L-T(tBu)-S(tBu)-R(Pbf)L-R(Pbf)-F-I-P-K(Boc)-2-クロロ-トリチルレジンを作製した。
【0061】
4)切断(Cleavage):合成が完了されたペプチドレジンに、切断カクテル(Cleavage Cocktail)を加えて、レジンからペプチドを分離した。
【0062】
5)得られた混合物に、冷却ジエチルエーテルを加えた後、遠心分離して得られたペプチドを沈殿した。
【0063】
6)Prep-HPLCで精製した後、LC/MSで分子量を確認し、凍結してパウダーとして製造した。
【0064】
実施例2:抗原(ペプチド)で活性化された樹状細胞の製造
樹状細胞の製造方法は、採取した血液などから単核細胞を増殖して製造する単核細胞の製造工程と、前記単核細胞を樹状細胞に分化する樹状細胞の分化工程からなる。単核細胞の樹状細胞への分化方法としては、IL-4(Inteleukin-4)などを含む培地で、単核細胞を培養し、未成熟の樹状細胞に分化でき、得られた未成熟の樹状細胞を、TNF-α(Tumor necrosis factors-α)などを含む培地で培養して、成熟の樹状細胞に分化できる。
【0065】
1.ヒト末梢血由来の単核細胞(human peripheral blood mononuclear cells、hPBMC)の分離
へパリン(heparin)のような抗凝固剤が含まれた真空採血管を用いて、健康なボランティアから末梢血5~100ccを採血した。採取した血液と、リン酸塩緩衝液(phosphate buffered saline、PBS)とを、所定の比率で混合して希釈した後、希釈した試料からリンホプレップ(Lymphoprep、登録商標)又はフィコールパック(Ficoll-Paque、登録商標)を用いた密度勾配遠心分離法で、ヒト末梢血由来の単核細胞を分離した。分離した末梢血由来の単核細胞は、PBSで2回洗浄した後、実験に用いた。一方、冷凍保存した末梢血由来の単核細胞を用いる場合は、37℃の恒温水槽で1分内に解凍して、細胞培養培地で2回洗浄した後、実験に用いた。
【0066】
2.CD14陽性細胞(CD14+)の分離
末梢血由来の単核細胞から、高純度のCD14+細胞を高収率で分離するために、プラスチック付着法と、CD14+MACS分離法とを用いた。プラスチック付着法は、全単核細胞を細胞培養容器に接種し、1~2時間培養した後、底に付着された細胞のみを、トリプシン(Trypsin)-EDTAを利用するか、又は物理的に脱着して使用した。MACS分離法は、CD14カラムを通して純粋のCD14+細胞を得る方法で、ミルテニーバイオテク(Miltenyi Biotec)社から販売されるマイクロビーズを用いて、製造社マニュアルに従って分離した。
【0067】
3.未成熟樹状細胞(immature dendritic cells、imDC)への分化
CD14+細胞を、0.5~2x106個/mlの濃度となるように、細胞培養容器に接種した。より具体的に、CD14+細胞を、IL-4(interleukin-4)500~1,500U/mlと、GM-CSF(Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)500~2,000U/mlとを含有するCellGro DC serum-free medium(CellGenix)培養培地に入れて、37℃、5%CO2の条件の下で5日間培養し、サイトカインの補充のために2~3日おきに細胞培養培地を交替した。
【0068】
4.未成熟樹状細胞のPEP1抗原(ペプチド)の活性化
免疫反応を誘導するために、未成熟樹状細胞に5~100μg/mlのPEP1を加え、500~1,500U/mlのIL-4、500~2,000U/mlのGM-CSF、及び10μg/mlのKLH(Keyhole limpet hemocyanin)を含有するCellGro DC serum-free medium(CellGenix)に入れて、37℃、5%CO2の条件の下で18~24時間抗原活性化を誘導した。
【0069】
5.成熟樹状細胞(mature dendritic cells、mDC)への分化
抗原活性化の後、直ちに未成熟樹状細胞の成熟化を誘導するために、5~20ng/mlのTNF-α(Tumor necrosis factors-α)、10~20ng/mlのIL-1β(Interleukin-1β)、1,000~2,000U/mlのIL-6(Interleukin-6)、及び0.01~10μg/mlの PGE2(Prostaglandin E2)を含有するCellGro DC serum-free medium(CellGenix)に入れて、37℃、5%CO2の条件の下で1日間培養した。
【0070】
実施例3:樹状細胞の機能分析
実施例3-1:未成熟樹状細胞のエンドサイトーシス(Endocytosis)及び細胞摂取能(Cellular uptake)の分析
未成熟樹状細胞は、成熟樹状細胞に比べて、抗原を認識して貪食する能力が優勢である。本発明の実施例により分化された未成熟樹状細胞が、抗原のPEP1を細胞内に流入するかを、フローサイトメトリー(Flow cytometry)及び共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)にて分析した。
1.未成熟樹状細胞のエンドサイトーシスの分析
未成熟樹状細胞1x10
6個/mlを、PEP1-FITC(Fluorescein isothiocyanate)50~100μg/mlで処理して、37℃で30分、1時間、2時間培養した。培養の後、PBSで2回洗浄し、FACSCalibur(Becton Dickinson)を用いて、未成熟樹状細胞のエンドサイトーシスを分析した。対照群は、樹状細胞を4℃で1時間培養して用いた。
図1のAは、対照群(黒色、左側のグラフ)に比べて、PEP1処理をした未成熟樹状細胞(緑色、右側のグラフ)が、右側の方に移動(shift)されたことを見せるFACSの結果である。未成熟樹状細胞が、PEP1を抗原として認知して優れた貪食能を有し、抗原提示細胞への機能を発揮していることを示す。これは、免疫反応の開始が、未成熟樹状細胞の抗原貪食と摂取した抗原が、処理過程(processing)を通じて、MHC分子に提示され、樹状細胞の成熟を通じて促進されることを示す。
【0071】
2.未成熟樹状細胞の摂取能の分析
未成熟樹状細胞3x10
5個/mlを、チャンバーウェル(chamber well)に接種し、PEP1-FITC50~100μg/mlで30分、1時間、2時間活性化した。活性化の後、チャンバーウェルをPBSで4回洗浄し、常温で15分間、2%(v/v)パラフォルムアルデヒド(Paraformaldehyde)で細胞を固定した。常温で15分間、DAPI(4'、6-diamidino-2-phenylindole)で核を染色し、共焦点顕微鏡で未成熟樹状細胞の摂取能を肉眼で分析した。
図1のBは、未成熟樹状細胞のPEP1抗原摂取能を分析した結果であって、PEP1-FITCが、未成熟樹状細胞内によく貪食され、浸透(緑色)していることを肉眼で確認できる。
【0072】
実施例3-2:PEP1活性化樹状細胞のT細胞の刺激力(stimulatory capacity)の分析
樹状細胞は、細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T lymphocytes、CTL)を活性化して、標的細胞を攻撃する方式で疾病を治療する。これにより、PEP1活性化樹状細胞のT細胞増殖反応とサイトカイン(Cytokine)分泌能とを分析した。
【0073】
1.PEP1活性化樹状細胞のT細胞増殖反応(T cell proliferation response)の分析
PEP1活性化樹状細胞が、T細胞増殖を誘導するかを、混合リンパ球反応試験(Mixed lymphocyte reactions、MLR)により分析した。混合リンパ球反応(Mixed lymphocyte reactions、MLR)は、共同刺激分子の活性化を測定する典型的な方法で、抗原提示細胞の機能を評価する標準化技法として知られている。PEP1活性化樹状細胞と、T細胞とを、1:10、1:50,1:100の比率で混合して、96ウェルプレイト(well plate)で72時間培養した。培養の後、BrdU取り込み(BrdU incorporation;BrdU Cell Proliferation Assay Kit、Cell Signaling Technology)を用いて、製造社マニュアルに従って、T細胞増殖力を分析した。具体的に、混合培養が終わった96ウェルプレイトに、BrdU溶液を最終濃度が1倍となるように入れた後、37℃で1~24時間培養した。プレイトを300gで10分間遠心分離して、BrdUが含まれた培地を取り除き、100μlの固定/変性(Fixing/Denaturing)溶液を、96ウェルプレイトに入れた後、常温で30分間反応させた。100μlのBrdU検出抗体(BrdU detection antibody)を、96ウェルプレイトに入れた後、常温で1時間反応させ、洗浄液で3回洗浄した。HRP(Horseradish peroxidase)が結合された2次抗体100μlを、96ウェルプレイトに入れた後、常温で30分間反応させ、洗浄液で3回洗浄した。最後に、100μlの発色試薬(Tetramethyl benzidine、TMB)を入れて、常温で30分間反応させ、100μlの発色停止試薬を加えた後、450nmでELISAリーダー(reader)により分析した。樹状細胞とTリンパ球を共に培養する際に、多数の細胞塊(aggregates)が形成され、これらの細胞群は、樹状細胞により刺激されたTリンパ球群を意味する。
図2は、樹状細胞の刺激能を確認する結果であって、PEP1活性化樹状細胞の濃度が、1:100、1:50、1:10と増加するによって、T細胞増殖の刺激能を示す吸光度(OD)がそれぞれ、0.42、0.57、0.98と増加することを示している。これは、PEP1活性化樹状細胞が、抗原提示細胞としてT細胞との交差反応を行い、T細胞による免疫反応を誘導していることを意味する。
【0074】
2.PEP1特異的T細胞のサイトカイン分泌能の分析
PEP1活性化樹状細胞とT細胞とを、72時間混合培養した後、培養液を収集した。1,600rpm、4℃で5分間遠心分離して上澄液を得た後、IFN-γELISA(IFN gamma ELISA kit、R&D Systems)を用いて、製造社マニュアルに従って、サイトカイン分泌能を分析した。具体的に、ポリクロナール抗体(Polyclonal antibody)IFN-γが付着された96ウェルプレイトに、100μlの希釈液を添加し、常温で2時間反応させた。洗浄液で4回洗浄した後、HRPが結合したIFN-γ2次抗体(IFN-γ Conjugated horseradish peroxidase)200μlを添加し、常温で2時間反応させた。洗浄液で4回洗浄した後、200μlの発色試薬を加え、常温で30分間反応させた後、50μlの発色停止試薬を加えて、直ちに450nmでELISAリーダー(reader)により分析した。
図3は、PEP1特異的T細胞が分泌するIFN-γ分泌量を分析した結果であって、PEP1特異的T細胞が、1,470.2±4.3pg/mlであり、対照群(T 細胞)の24.2±0.8pg/mlに比べて、約59.3倍高く分泌することが分かる。
【0075】
実施例4:臨床段階において、PEP1が含まれたペプチドで活性化された樹状細胞免疫治療効果の分析
前述のように、樹状細胞は、細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T lymphocytes、CTL)を活性化して、標的細胞を攻撃する方式で疾病を治療する。これにより、PEP1が含まれたペプチドで活性化された樹状細胞を製造し、これを個体に投与した後、個体において各ペプチドに対するT細胞の反応増加程度を、ELISPOTアッセイで観察する方法を用いた。
【0076】
1.実験対象及び方法
実験対象としては、疾病(癌)に罹患した患者4名を選定し、樹状細胞免疫治療方法は、以下の通りである。各患者から末梢血を採血して、単核細胞を収集したのち、培養する。単核細胞の培養過程において、分化された未成熟樹状細胞を、PEP1が含まれた癌抗原ペプチドで抗原活性化する。樹状細胞が成熟すると、もう一度同一のペプチドで抗原活性化する。活性化された成熟の樹状細胞を分離して、各患者に投与する。
【0077】
より具体的に、治療に用いた樹状細胞及びNK細胞(Natural killer cells)は、2週毎に採取した患者の全血25mlから単核細胞を増殖して製造し、増殖した単核細胞を樹状細胞に分化した。即ち、本実施例では、患者の末梢血管から得たCD14+単核細胞を、IL-4及びGM-CFSと共に、6日間培養して増殖し、ストレプトコッカス物質 (Streptococcus agent)であるOK-432を処理して成熟化した。これと共に、樹状細胞の製造過程のうち、WT1、MUC1及びその他の抗原で樹状細胞を活性化した。
【0078】
遺伝子検査と、抗原検査、腫瘍マーカー検査を経た患者の癌特性に合わせ、癌抗原と類似の機能をする物質(癌細胞の溶解物(lysate)、腫瘍特異タンパク質、腫瘍関連のペプチド)を、樹状細胞に配合して、樹状細胞の癌認識能力を向上する活性化過程を行う。本発明において使用できる癌関連の抗原としては、これらに限定されることではないが、本実施例で用いられた癌関連の抗原として、WT1、MUC-1、CA125、MAGE-A3、CEA、NY-ESO1、Survivin 、Her2などと共に、テロメラーゼ由来のペプチドであるPEP1を樹状細胞の活性化に用いた。活性化方法としては、具体例に限定されることではないものの、樹状細胞を癌抗原と共に培養することなどが挙げられる。活性化は、未成熟の樹状細胞又は成熟の樹状細胞で実施できる。本発明の具体的な一実施例では、患者の末梢血を採取して、単核細胞を収集及び培養し、単核細胞から分化された未成熟樹状細胞に、ペプチド処理をすることにより活性化して、成熟の樹状細胞に分化すると、さらにペプチド処理をして活性化する過程を行う。活性化に使用する抗原の量は、具体的に、以下のように当業界において一般に用いられる量を使用してもよいが、これに限定されない。例えば、PEP1は、これらの抗原と共に、1μg/ml~1000μg/mlの量で使用でき、WT1 20μg/ml、MUC1 20μg/ml、CEA 20μg/ml、CA125 500μg/ml、及びHER2 20μg/mlの量で使用できる。このように用意した樹状細胞(1x107)を、14日間隔で6回皮内注射した。
【0079】
樹状細胞免疫治療が、抗原で活性化されたペプチドに対するT細胞の反応増加を与えるかを調べるために、以下のように実験を行った。樹状細胞免疫治療を実施する患者の末梢血から、ピコール法(ficoll、フィコールを用いた遠心分離法)を用いて、バフィーコート(buffy coat)層を分離して単核細胞を得た。3~4日間培養をした後、ELISPOTアッセイを実行した。ELISPOTアッセイは、ImmunoSpotキット(Celluluar Technology Limited、USA)のプロトコールに従って進行した。具体的はに、ImmunoSpotプレイトに、ウェル当りの1x105個の細胞濃度で、T細胞を分注した。各ウェルにペプチド刺激剤(抗原ペプチド)として、Peptivator WT1、Peptivator NY-ESO1(Miltenyi Biotec.、Germany)、MUC-1、MAGE-A3、Survivin及びPEP1を、各々の最適濃度で添加した後、48時間培養した。CTL活性化に関与するTh1(Helper T cell 1)反応から放出されるIFN-γ、及びTh2(Helper T cell 2)反応から放出されるIL-4を、特異的抗体検出試薬を用いて染色した。IFN-γを放出する細胞は、赤く染色され、IL-4を放出する細胞は、青色で染色される。染色の後、プレイトをImmunoSpot分析器(Cellular Technology Ltd.、USA)を用いて検査し、各スポット数を分析した。
【0080】
2.実験対象別のELISPOTの結果及び分析
樹状細胞免疫治療の施行前/後の患者別ELISPOTの結果は、以下の通りである。
【0081】
1)74才女性胃癌患者(患者1)
樹状細胞免疫治療の施行前のELISPOTの結果、 何のペプチドも添加していない陰性対照群(negative control)と比較してみるとき、視覚化したもの及び数値の両方とも、差異は見せなかった(
図4を参照)。樹状細胞ワクチンを6回投与し、各種ペプチド刺激によるCTL活性をELISPOTで確認した。治療の施行後のELISPOTの結果、陰性対照群に比べて、PEP1、MUC1、WT1、Survivinのいずれの群においても、スポットの増加を示した(
図5を参照)。
【0082】
【0083】
【表3】
2)77才男性肺癌患者(患者2)
樹状細胞免疫治療の施行前のELISPOTの結果、何のペプチドも添加していない陰性対照群と比較してみるとき、視覚化されたもの及び数値の両方において、差異はなかった(
図6を参照)。樹状細胞ワクチンを6回投与し、各種ペプチド刺激によるCTL活性をELISPOTで確認した。治療の施行後のELISPOTの結果、陰性対照群に比べて、PEP1、MUC1、WT1、NY‐ESO1のいずれの群においても、スポットの増加を示した(
図7を参照)。MHC-クラス-I経路の活性化を意味するIFN-γ分泌を示すスポット(赤色)が、44日経過した後でも検出された。
【0084】
【0085】
【表5】
3)72才男性膵臓癌患者(患者3)
樹状細胞免疫治療の施行前のELISPOTの結果、何のペプチドも添加していない陰性対照群と比較してみるとき、視覚化されたもの及び数値の両方において、差異はなかった(
図8を参照)。樹状細胞ワクチンを6回投与し、各種ペプチド刺激によるCTL活性をELISPOTで確認した。治療の施行後のELISPOTの結果、陰性対照群に比べて、PEP1、MUC1、WT1のいずれの群においても、スポットが増加した(
図9を参照)。PEP1、MUC1、WT1ペプチドによるMHC-クラス-I経路の活性化を意味するIFN-γのスポット(赤色)が検出され、MHC-クラス-II経路の活性化を意味するIL-4スポット(青色)も多数検出された。
【0086】
【0087】
【表7】
4)66才女性乳癌患者(患者4)
実験に用いたT細胞の処理数を、既存の2倍で適用した(2x10
5細胞/ウェル)。樹状細胞免疫治療の施行前のELISPOTの結果、何のペプチドも添加していない陰性対照群と比較してみるとき、視覚化されたもの及び数値の両方において、差異はなかった(
図10を参照)。樹状細胞ワクチンを6回投与し、各種ペプチド刺激によるCTL活性をELISPOTで確認した。治療の施行後のELISPOTの結果、陰性対照群に比べて、PEP1、MUC1、WT1のいずれの群においても、スポットが増加した(
図11を参照)。MHC-クラス-I経路の活性化を意味するIFN-γのスポット(赤色)が、35日後にも検出され、MHC-クラス-II経路の活性化を意味するIL-4スポット(青色)も多数検出された。
【0088】
【0089】
【表9】
以上のような4名の患者のELISPOTアッセイの結果を分析すると、抗原ペプチドで活性化する段階を含む樹状細胞免疫治療法により、抗原ペプチドに特異的なCTL活性化を示すスポットが、多く見つかっていることが分かる。これは、本発明による樹状細胞免疫治療法が、抗原特異的なT細胞反応を誘導することを示す。
【0090】
また、IFN-γは、多様なペプチド刺激によりMHC-クラス-I経路として機能するCTLを活性化するTh1細胞から分泌されるものであり、IL-4は、MHC-クラス-II経路として機能するTh2細胞から分泌されるものであると知られている。前記実験を通じて、本実験で用いたペプチド抗原は、MHC-クラス-I経路の活性化のみならず、MHC-クラス-II経路の活性化にも関与することを推測できる。
【0091】
実施例5:臨床段階において、PEP1が含まれたペプチドで活性化された樹状細胞免疫治療及びPEP1投与の併用治療効果の分析
標的治療に最も適合した対象である癌にかかった個体を対象にして実験を行った。PEP1を含んだペプチドで活性化された樹状細胞を用いた樹状細胞治療剤及びNK細胞治療剤、及びPEP1を含む免疫治療剤を直接投与する治療法を併用するのが、癌が進行された患者に深刻な副作用なく、効果的な治療法となり得るという仮定に基づいて、実験を行った。
【0092】
実験対象は、総4名を選定し、各患者の状態を考慮して実験を進み、この実験は、以下の通りである。
【0093】
1)肺癌1期の89才女性(患者5)
この患者は、2012年に、放射線切除治療法を一度受け、局所再発の後、2013年に同一の施術をもう一度受けた。また、2013年に、1次樹状細胞免疫治療を受けた。2014年5月に、肺をPET-CTで検査した結果、いくつかの腫塊(mass)が見つかり、いくつかの腫瘍マーカー(tumor marker)の数値が増加した状態であった。
【0094】
その後、患者は、2週に1回ずつ、総6回にかけて、樹状細胞治療剤と、NK細胞治療剤とを用いた免疫治療を受けた。治療に用いられた樹状細胞と、NK細胞とは、特許番号第5577472号(The Life Science Institute Co. Ltd、Tokyo、Japan)の方法に準拠して、2週毎に採取した患者の全血25mlから得た。4種のペプチド(WT-1、MUC-1、PEP1及びMAGE-A3)を、抗原ペプチドとして用いて、樹状細胞を活性化した。樹状細胞は、リンパ節付近の皮内注射(intradermal injection)を通じて、NK細胞は、血管点滴注入(drip infusion of vein)を通じて投与した。
【0095】
樹状細胞免疫治療を含む免疫治療の施行後、患者の肺の腫塊と腫瘍マーカーの変化は、表10の通りである。
【0096】
【表10】
表9のように、腫塊及び腫瘍マーカーが、際立って減少しており、免疫治療中、副作用は見つからなかった。
【0097】
2)膵臓癌3期の47才男性(患者6)
この患者は、2014年に、膵臓癌の判定を受け、同年度に部分的な膵臓切除術及び手術後の処方として、経口化学治療法を受けた。実験対象として選定された直後、CTを通じて2ヶ所で肝への転移を見つけた。いくつかの腫瘍マーカーの数値も増加した状態であった。
【0098】
その後、患者は、2週に1回ずつ、総6回にかけて、樹状細胞(DC)免疫治療及びNK細胞を用いた併用免疫治療法を受けた。さらに、2週毎にPEP1ペプチドを含む免疫治療剤を、9回にかけて投与した。PEP1ペプチドを含む免疫治療剤は、毎回0.56mgの用量で投与した。治療に使用された樹状細胞及びNK細胞は、2週毎に採取した患者の全血25mlから得た。樹状細胞の活性化のために、4種のペプチド(WT-1、MUC-1、PEP1及びSurvivin)が、抗原ペプチドとして樹状細胞にパルスされた。樹状細胞(DC)及びPEP1は、リンパ節付近の皮内注射を通じて、NK細胞は、血管点滴注入を通じて投与した。また、患者は、免疫治療法を受ける期間の間、隔週でFOLFORINOX化学治療を受けた。
【0099】
PEP1を含むペプチドで活性化された樹状細胞治療剤、及びPEP1を含む免疫治療剤の投与を含む免疫治療の施行後、患者の肝への癌転移及び腫瘍マーカーの変化は、表11の通りである。
【0100】
【表11】
表11のように、癌転移及び腫瘍マーカーが、際立って減少しており、免疫治療中、副作用は見つからなかった。
【0101】
3)肺癌3期の70才女性(患者7)
この患者は、2011年に、肺癌の判定を受け、同年度に手術治療を受け、2013年にはいくつかの化学治療を受けた。その後、実験対象として選定された直後、CT検査の結果、右側の肺で一つの腫塊が見つかり、一つの腫瘍マーカーの数値が増加した状態であった。
【0102】
患者は、樹状細胞免疫治療と、NK細胞を用いた免疫治療法とを連続して2度受けた。1度の免疫治療法は、2週に1回ずつ、総6回にかけて進行されるため、この患者は、総12回の免疫治療法を受けた。また、2週毎にPEP1ペプチドを含む免疫治療剤を、11回にかけて投与した。PEP1ペプチドを含む免疫治療剤は、毎回0.56mgで投与した。治療に用いられた樹状細胞及びNK細胞は、2週毎に採取した患者の全血25mlから得た。
【0103】
樹状細胞の活性化のために、1~6回にかけた1度目の治療において、3種のペプチド(WT-1、MUC-1及びSurvivin)が、抗原ペプチドとして、樹状細胞にパルスされた。7~12回にかけた2度目の治療において、5種のペプチド(WT-1、MUC-1、NY-ESO1、PEP1及びMAGE-A3)が、抗原ペプチドとして、樹状細胞にパルスされた。樹状細胞(DC)と、PEP1とは、リンパ節付近の皮内注射を通じて、NK細胞は、血管点滴注入を通じて投与された。また、患者は、免疫治療法を受ける期間の間、いくつかの化学治療法を受けた。
【0104】
樹状細胞(DC)免疫治療及びPEP1の投与を含む2度の免疫治療の施行後、CT検査の結果、患者の右肺にある腫塊は、サイズに殆ど変化がなかった。しかし、患者の一部の腫瘍マーカーは、減少しており、詳細な数値の変化は、表12の通りである。
【0105】
【表12】
表12のように、癌転移及び腫瘍マーカーが減少しており、免疫治療中、副作用は見つからなかった。
【0106】
4)肺癌3期の77才男性(患者8)
この患者は、2014年に、肺癌の判定を受け、いかなる治療も受けていない状態で、同年度に対象として選定された。対象に選定された直後、CT検査をした結果、左肺に一つの腫塊と、多数のリンパ節の転移が発見された。腫瘍マーカーの数値もまた上がった状態であった。
【0107】
患者は、我々の病院で2週に1回ずつ、総6回にかけて樹状細胞(DC)治療剤及びNK細胞治療剤を用いた免疫治療法を受けた。また、2週毎にPEP1ペプチドを、総13回にかけて投与した。PEP1ペプチドを含む免疫治療剤は、毎回0.56mgの用量で投与した。治療に用いられた樹状細胞(DC)及びNK細胞は、2週毎に採取した患者の全血25mlから得た。樹状細胞の活性化のために、6種のペプチド( WT-1、MUC-1、PEP1、CEA、NY-ESO1及びMAGE-A3)が、抗原ペプチドとして、樹状細胞にパルスされた。樹状細胞及びPEP1は、リンパ節付近の皮内注射を通じて、NK細胞は、血管点滴注入を通じて投与された。免疫治療中、患者は別の病院で放射線治療を33回受けた。
【0108】
樹状細胞免疫治療及びPEP1の投与を含む免疫治療の施行後、免疫治療後の患者のリンパ節の転移状態の変化又は放射線治療による炎症、胸膜腔内の胸水量の増加は、見せなかった。しかし、患者の腫瘍マーカーのうち6種の数値が減少しており、全体腫瘍マーカーの数値の変化は、表13の通りである。
【0109】
【表13】
5)肺癌4期の66才女性(患者9)
この患者は、2014年に、肺癌の判定を受け、4コース(4 courses)の化学治療法と、全脳放射線治療法(whole brain radiation therapy)とを受けた。免疫治療を開始するとき、右肺の上部及び下部で、腫塊(mass)、胸水(pleural effusion)、リンパ節腫脹(swelling of mediastinum LNs)、及び多数の脳腫塊(multiple brain masses)が、CT及びMRIを通じて観察された。
【0110】
その後、患者は、2週に1回ずつ、総6回にかけて樹状細胞(DC)免疫治療及びNK細胞を用いた免疫治療法を受けた。また、2週毎にPEP1ペプチドを含む免疫治療剤を、12回にかけて投与した。治療に用いられた樹状細胞及びNK細胞は、2週毎に採取した患者の全血25mlから得た。樹状細胞の活性化のために、4種のペプチド(WT-1、MAGE-A3、PEP1及びCEA)が、抗原ペプチドとして、樹状細胞にパルスされた。樹状細胞及びPEP1は、リンパ節付近の皮内注射を通じて、NK細胞は、血管点滴注入を通じて投与された。また、患者は、免疫治療法を受ける期間の間、化学治療法を受けた。
【0111】
樹状細胞免疫治療を含む免疫治療の施行後、肺腫塊と脳腫塊のサイズが減少し、胸水は観察されなかった。腫瘍マーカーもまた減少しており、その変化は、表14の通りである。免疫治療中、副作用は見つからなかった。
【0112】
【表14】
6)乳癌1期の53才女性(患者10)
この患者は、2014年に、乳癌の判定を受け、左側の乳腺腫瘍切除術を受けた。転移は発見せず、一つの腫瘍マーカーの数値が増加した状態であった。
【0113】
その後、患者は、2週に1回ずつ、総5回にかけて、樹状細胞(DC)免疫治療及びNK細胞を用いた免疫治療法を受けた。また、2週毎にPEP1ペプチドを含む免疫治療剤を6回にかけて投与した。治療に用いられた樹状細胞及びNK細胞は、2週毎に採取した患者の全血25mlから得た。樹状細胞の活性化のために、4種のペプチド(WT-1、NY-ESO1、PEP1及びHer2)が、抗原ペプチドとして、樹状細胞にパルスされた。樹状細胞及びPEP1は、リンパ節付近の皮内注射を通じて、NK細胞は、血管点滴注入を通じて投与された。また、患者は、免疫治療法を受ける期間の間、化学治療法に次いで、放射線治療法を受けた。
【0114】
樹状細胞免疫治療を含む免疫治療の施行後、再発又は転移は、観察されなかった。腫瘍マーカーは、殆ど同一のレベルを保持しており、その変化は、表15の通りである。免疫治療中、副作用は見つからなかった。
【0115】
【表15】
7)肺小細胞癌(small cell carcinoma of lung)4期の61才男性(患者11)
この患者は、2014年に、肺癌の判定を受け、6コース(6 courses)の化学治療法を受けた。免疫治療を開始する際、胸水、腹腔リンパ節腫脹(swelling of abdominal LNs)が、PET-CTを通じて観察されており、一つの腫瘍マーカーの数値が増加した状態であった。
【0116】
その後、患者は、2週に1回ずつ、総6回にかけて、樹状細胞(DC)免疫治療及びNK細胞を用いた免疫治療法を受けた。また、2週毎にPEP1ペプチドを含む免疫治療剤を13回にかけて投与した。治療に用いられた樹状細胞及びNK細胞は、2週毎に採取した患者の全血25mlから得た。樹状細胞の活性化のために、4種のペプチド(WT-1、MUC-1、PEP1及びSurvivin)が、抗原ペプチドとして、樹状細胞にパルスされた。樹状細胞及びPEP1は、リンパ節付近の皮内注射を通じて、NK細胞は、血管点滴注入を通じて投与された。さらに、患者は、免疫治療法を受ける期間の間、化学治療法を受けた。
【0117】
樹状細胞免疫治療を含む免疫治療の施行後、胸水及び腹腔リンパ節腫脹の変化は、ほとんどなかった。腫瘍マーカーは、多少減少しており、その変化は、表16の通りである。免疫治療中、副作用は見つからなかった。
【0118】
【表16】
8)胃癌4期の62才男性(患者12)
この患者は、2015年1月に、胃癌の判定を受け、全体胃切除術(total gastrectomy)に次いで、TS-1及びオキサリプラチン(oxaliplatin)化学治療法を受けた。2015年2月に免疫治療を開始するとき、胸水及び腹水が、CTを通じて観察され、検査した全ての腫瘍マーカー(CEA、CA19-9、CA15-3及びCA72-4)は、正常範囲内の状態であった。
【0119】
その後、患者は、2週に1回ずつ、総6回にかけて、樹状細胞(DC)免疫治療及びNK細胞を用いた免疫治療法を受けた。また、2週毎にPEP1ペプチドを含む免疫治療剤を7回にかけて投与した。治療に用いられた樹状細胞及びNK細胞は、2週毎に採取した患者の全血25mlから得た。樹状細胞の活性化のために、5種のペプチド(WT-1、MUC-1、PEP1、MAGE-A3及びNY-ESO1)が、抗原ペプチドとして、樹状細胞にパルスされた。樹状細胞及びPEP1は、リンパ節付近の皮内注射を通じて、NK細胞は、血管点滴注入を通じて投与された。さらに、患者は、免疫治療法を受ける期間の間、TS-1及びオキサリプラチン化学治療法を受けた。
【0120】
樹状細胞免疫治療を含む免疫治療の施行後、胸水及び腹水の減少が、CTを通じて観察され、再発及び転移は、観察されなかった。腫瘍マーカーは、免疫治療の施行前と同様に正常範囲内を保持しており、免疫治療中、副作用は見つからなかった。
【0121】
前記8名の患者において示された結果は、PEP1を含むペプチドで活性化された樹状細胞免疫治療が、患者の腫瘍マーカーの減少で示された抗癌効果があることを示す。また、樹状細胞免疫治療及びNK細胞治療のみを受けた患者5に比べて、PEP1の投与を並行した患者6の場合には、腫瘍マーカーがより減少していることを示した。これは、PEP1の併用投与が、免疫治療の効果をより優秀にするだけではなく、樹状細胞免疫治療において、PEP1の活性化による免疫相昇効果を類推できる結果であると言える。
【0122】
追加に、患者7~患者12は、樹状細胞免疫治療と同時に、化学治療及び/又は放射線療法をさらに受けた患者であって、全ての患者において腫瘍マーカーが減少するか、又は正常範囲内に保持されていることを見せた。これは、一般に化学治療及び放射線療法は、患者の免疫反応を顕著に低下することを考慮するとき、本発明による樹状細胞免疫治療が、免疫反応の減少の環境にもかかわらず、免疫反応を増加して、腫瘍マーカーの減少をもたらす効果を示すと言える。また、患者7~患者12の場合、PEP1を併用投与した患者であるが、これは、PEP1の併用が、免疫反応を増加する効果を与えるだけではなく、樹状細胞免疫治療において、PEP1の活性化による免疫相昇効果を類推できるまた他の結果であると言える。
【0123】
前記多数の実施例から、PEP1を含むペプチドで活性化された樹状細胞を用いた樹状細胞免疫治療法が、免疫反応を強化させ、これにより、優れた疾病治療の効果が発揮されることが分かる。また、樹状細胞免疫治療法と、PEP1の投与とを並行した際、樹状細胞免疫治療法のみを行った結果より優れた効果が発揮されることもまた分かる。従って、本発明による樹状細胞免疫治療法は、効果的な標的指向性疾病治療剤として開発でき、これを用いて、癌を含んだ標的指向性治療が必要な個体に、適切な治療法を提供できる。また、樹状細胞免疫治療剤及びPEP1の併用投与時にも、優れた標的指向性疾病治療の効果を示すことができると期待される。
【配列表】