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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20220629BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220629BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L21/60 301A
H01L23/28 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017121182
(22)【出願日】2017-06-21
(65)【公開番号】P2019009171
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-05-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 紀子
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-203668(JP,A)
【文献】実開平03-053858(JP,U)
【文献】特開2013-197531(JP,A)
【文献】特開2011-044628(JP,A)
【文献】実開平05-008941(JP,U)
【文献】特開2013-058606(JP,A)
【文献】特開2001-110949(JP,A)
【文献】特開2017-069458(JP,A)
【文献】特開2013-057719(JP,A)
【文献】国際公開第2010/147187(WO,A1)
【文献】特開2006-173392(JP,A)
【文献】特開2002-190637(JP,A)
【文献】特開2002-064166(JP,A)
【文献】特開平08-330346(JP,A)
【文献】実開昭64-050453(JP,U)
【文献】特開昭57-069767(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0075710(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
H01L 21/52 - 21/607
H01L 23/00 - 23/31
H01L 23/48 - 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパッド電極を有する配線基板と、
半導体素子が搭載され、前記半導体素子に接続された第2のパッド電極を有するサブマウント基板と、
前記第1のパッド電極と前記第2のパッド電極との間に接続されたボンディングワイヤと、
前記ボンディングワイヤの表面全体を鞘状に被覆する被覆樹脂と、を備え、
前記被覆樹脂の前記ボンディングワイヤの表面からの厚みは、前記第1のパッド電極に接する第1の端部領域及び前記第2のパッド電極に接する第2の端部領域よりも、前記第1の端部領域と前記第2の端部領域との間に亘って延在している中間領域の方が小さく、
前記被覆樹脂は、前記被覆樹脂の前記ボンディングワイヤの表面からの厚みが、前記中間領域において、前記中間領域の両端部から前記ボンディングワイヤの頂部に向けて薄くなるように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子は発光素子であり、
前記被覆樹脂は、前記発光素子の上面よりも高い位置に頂部を有することを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記配線基板及び前記サブマウント基板が固定されたマウント基板と、
前記マウント基板上における前記配線基板及び前記サブマウント基板間の領域において前記被覆樹脂と前記マウント基板との間の空間を埋め込むように形成された埋込樹脂と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記埋込樹脂は、前記被覆樹脂よりも低い粘度を有することを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記サブマウント基板上に形成され、前記第2のパッド電極に接続された配線電極及び前記配線電極に接続された第3のパッド電極と、
前記半導体素子に設けられた第4のパッド電極と、
前記第3及び第4のパッド電極間に接続されたボンディングワイヤと、
前記第3及び第4のパッド電極間の前記ボンディングワイヤを鞘状に被覆する被覆樹脂と、を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
m個(mは2以上の整数)の第1のパッド電極を有する配線基板と、
m個の半導体素子が搭載され、前記m個の半導体素子の各々に接続されたm個の第2のパッド電極を有するサブマウント基板と、
前記m個の第1のパッド電極と前記m個の第2のパッド電極との間の各々に接続されたm個のボンディングワイヤと、
前記m個のボンディングワイヤの各々の表面全体を鞘状に被覆するm個の被覆樹脂と、を備え、
前記m個の被覆樹脂の各々の前記ボンディングワイヤの表面からの厚みは、前記第1のパッド電極に接する第1の端部領域及び前記第2のパッド電極に接する第2の端部領域よりも、前記第1の端部領域と前記第2の端部領域との間に亘って延在している中間領域の方が小さく、
前記m個の被覆樹脂の各々は、前記m個の被覆樹脂の各々の前記ボンディングワイヤの表面からの厚みが、前記中間領域の各々において、前記中間領域の各々の両端部から前記ボンディングワイヤの各々の頂部に向けて薄くなるように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記配線基板及び前記サブマウント基板が固定されたマウント基板と、
前記マウント基板上における前記配線基板及び前記サブマウント基板間の領域において前記m個の被覆樹脂の全体と前記マウント基板との間の空間を埋め込むように形成された埋込樹脂と、を有することを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子などの半導体素子を含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光素子及び当該発光素子と外部回路とを接続する配線部を有する発光装置が知られている。また、発光装置のみならず、種々の半導体素子を含む半導体装置は、一般に、当該半導体素子及び外部回路間に配線部を有する。例えば、特許文献1には、光素子、信号処理部並びに第1及び第2ワイヤを備えた本体部と、これらを封止する封止部とを備えた光モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-057719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置は、種々の使用環境においても長時間安定した動作を行うことが好ましい。特に、半導体装置は、ボンディングワイヤを用いて半導体素子とパッケージ内の他の基板とを接続する場合が多い。このボンディングワイヤは、温度変化及び湿度変化が激しい環境、又は振動するような装置に搭載される場合であっても断線が防止され、また、適切に保護されていることが好ましい。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、半導体素子へのボンディングワイヤが適切に保護され、高寿命かつ高品質な半導体装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による半導体装置は、第1のパッド電極を有する配線基板と、半導体素子が搭載され、半導体素子に接続された第2のパッド電極を有するサブマウント基板と、第1のパッド電極と第2のパッド電極との間に接続されたボンディングワイヤと、ボンディングワイヤを鞘状に被覆する被覆樹脂と、を有することを特徴としている。
【0007】
また、本発明による半導体装置は、m個(mは2以上の整数)の第1のパッド電極を有する配線基板と、m個の半導体素子が搭載され、m個の半導体素子のそれぞれに接続されたm個の第2のパッド電極を有するサブマウント基板と、m個の第1のパッド電極とm個の第2のパッド電極との間のそれぞれに接続されたm個のボンディングワイヤと、m個のボンディングワイヤの各々を鞘状に被覆するm個の被覆樹脂と、を有することを特徴としている。
【0008】
また、本発明による半導体装置の製造方法は、配線基板上に設けられた第1のパッド電極と、半導体素子が搭載されたサブマウント基板上に設けられた第2のパッド電極とをボンディングワイヤによって接続する工程と、ボンディングワイヤに樹脂粘液を滴下し、樹脂粘液によってボンディングワイヤを鞘状に被覆する工程と、樹脂粘液を硬化させる工程と、を含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る半導体装置の上面図である。
図2】実施例1に係る半導体装置の上面を部分的に拡大して示す図である。
図3】実施例1に係る半導体装置の断面図である。
図4】実施例1に係る半導体装置における発光素子の断面図である。
図5A】実施例1に係る半導体装置の製造工程を示す図である。
図5B】実施例1に係る半導体装置の製造工程を示す図である。
図5C】実施例1に係る半導体装置の製造工程を示す図である。
図5D】実施例1に係る半導体装置の製造工程を示す図である。
図6】実施例2に係る半導体装置の断面図である。
図7】実施例3に係る半導体装置の上面図である。
図8】実施例3に係る半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。なお、以下においては、半導体装置が半導体素子として発光素子を有する場合、すなわち半導体装置が発光装置である場合について説明する。しかし、本発明は、発光素子のみならず、センサ素子やスイッチ素子など、種々の半導体素子を含む半導体装置に適用することができる。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係る半導体装置10の模式的な上面図である。半導体装置10は、機能素子として半導体素子20を有する。本実施例においては、半導体装置10は、4つの半導体素子20を有する。例えば、半導体素子20の各々は、発光ダイオードや半導体レーザなどの半導体発光素子を含む。すなわち、本実施例においては、半導体装置10は、互いに独立して発光動作を行う4つの発光素子を有する発光装置である。
【0012】
半導体装置10は、マウント基板(第1の基板)11と、マウント基板11に固定された配線基板(第2の基板)12及びサブマウント基板(第3の基板)13を有する。本実施例においては、マウント基板11は、熱伝導性の高い材料、例えばCuなどの金属材料からなる。本実施例においては、配線基板12及びサブマウント基板13は、接合層(図示せず)を介してマウント基板11に接合されている。
【0013】
配線基板12上には、外部(例えば電源回路や駆動回路)との接続端子(図示せず)、当該接続端子に接続された配線電極(第1の配線電極)W1、及び配線電極W1に接続されたパッド電極(第1のパッド電極)P1が設けられている。配線電極W1及びパッド電極P1は、例えばAu、Al及びCuからなる。配線基板12は、例えばセラミックス材料からなる。
【0014】
なお、本実施例においては、配線基板12がマウント基板11とは別個の部材であり、マウント基板11上に配線基板12が固定されている場合について説明する。しかし、配線基板12及びマウント基板11は一体的に形成された基板であってもよい。例えば、マウント基板11が配線基板12として形成され、マウント基板11上に配線電極W1及びパッド電極P1が形成されていてもよい。また、マウント基板11として配線基板12が設けられ、配線基板12上にサブマウント基板13が固定されていてもよい。
【0015】
サブマウント基板13上には、半導体素子20が搭載されている。本実施例においては、4つの半導体素子20が1列に整列してサブマウント基板12上に並置されている。サブマウント基板13は、例えば、熱伝導性の高い材料、例えばAlNなどのセラミックス材料からなる。
【0016】
具体的には、サブマウント基板13上には、半導体素子20に接続されたパッド電極(第2のパッド電極)P2が設けられている。サブマウント基板13上のパッド電極P2は、ボンディングワイヤ(第1のボンディングワイヤ)B1によって、配線基板12上のパッド電極P1に接続されている。ボンディングワイヤB1は、例えば、Au、Al、Cuなどの材料からなる。
【0017】
なお、配線基板12、配線電極W1及びパッド電極P1の全体を配線基板12と称する場合がある。また、サブマウント基板13、パッド電極P2、並びに、後述する配線電極W2及びパッド電極P3の全体をサブマウント基板13と称する場合がある。
【0018】
換言すれば、半導体装置10は、配線電極W1及び配線電極W1に接続されたパッド電極P1を有する配線基板12と、半導体素子20が搭載され、半導体素子20に接続されたパッド電極P2を有するサブマウント基板13と、パッド電極P1及びP2間に接続されたボンディングワイヤB1と、を有する。
【0019】
また、本実施例においては、サブマウント基板13上には、パッド電極P2に接続された配線電極(第2の配線電極)W2と、配線電極W2に接続されたパッド電極(第3のパッド電極)P3とが形成されている。また、半導体素子20には、半導体素子20の外部との接続端子であるパッド電極(第4のパッド電極)P4が設けられている。また、パッド電極P3及びP4は、ボンディングワイヤ(第2のボンディングワイヤ)B2によって接続されている。
【0020】
換言すれば、本実施例においては、サブマウント基板13は、パッド電極P2及びP3と、パッド電極P2及びP3間に接続された配線電極W2とを有する。また、半導体装置10は、サブマウント基板13上に形成され、パッド電極P2に接続された配線電極W2及び配線電極W2に接続されたパッド電極P3と、半導体素子20に設けられたパッド電極P4と、パッド電極P3及びP4間に接続されたボンディングワイヤB2と、を有する。
【0021】
なお、本実施例においては、半導体装置10は、マウント基板11上に、サブマウント基板13を挟んで2つの配線基板12が設けられている。また、本実施例においては、半導体素子20の各々は、カソード端子及びアノード端子となる2つのパッド電極P4を有する。当該2つのパッド電極P4は、それぞれ、ボンディングワイヤB2、配線電極W2、パッド電極P2及びボンディングワイヤB1を介して、2つの配線基板12の一方及び他方上のパッド電極P1に接続されている。
【0022】
図2は、マウント基板11の上面におけるボンディングワイヤB1の近傍を拡大して示す拡大図である。なお、図2は、図1の破線で囲まれた部分を拡大して示す図である。図2に示すように、半導体装置10は、ボンディングワイヤB1の各々を鞘状(管状)に被覆する被覆樹脂30を有する。
【0023】
半導体装置10は、被覆樹脂30がボンディングワイヤB1の本数分(本実施例においては4つ)設けられている。また、被覆樹脂30の各々は互いに離間して設けられている。なお、例えば、ボンディングワイヤB1及び被覆樹脂30は、それぞれ、少なくとも半導体素子20の個数分だけ設けられている。
【0024】
なお、本実施例においては、半導体装置10は、半導体素子20の各々を独立して動作させるように構成されている。従って、配線基板12上には少なくとも半導体素子20の個数分の配線電極W1及びパッド電極P1が設けられている。また、サブマウント基板13上には、少なくとも半導体素子20の個数分のパッド電極P2が設けられている。
【0025】
換言すれば、例えば、半導体装置10は、複数の半導体素子20を有する場合、m個(mは2以上の整数)のパッド電極P1を有する配線基板12と、m個の半導体素子20が搭載され、m個の半導体素子20の各々に接続されたm個のパッド電極P2を有するサブマウント基板13と、m個のパッド電極P1とm個のパッド電極P2との間の各々に接続されたm個のボンディングワイヤB1と、m個のボンディングワイヤB1の各々を鞘状に被覆するm個の被覆樹脂30と、を有する。
【0026】
被覆樹脂30の各々は、樹脂材料などの絶縁材料、例えばシリコン樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂などからなる。なお、被覆樹脂30は、例えばゲル化された樹脂材料によって構成されていてもよい。
【0027】
被覆樹脂30の各々は、ボンディングワイヤB1がパッド電極P1及びP2に接する部分を除き、ボンディングワイヤB1の表面全体を被覆して保護する。被覆樹脂30は、パッド電極P1の近傍の第1の端部領域30Aと、パッド電極P2の近傍の第2の端部領域30Bと、第1及び第2の端部領域30A及び30B間の領域の中間領域30Cとからなる。また、図2に示すように、被覆樹脂30は、中間領域30Cが第1及び第2の端部領域30A及び30BよりもボンディングワイヤB1の被覆厚が小さく(薄く)なるように構成されている。
【0028】
図3は、半導体装置10の断面図である。図3は、図1におけるV-V線に沿った断面図であるが、一部を省略している。図3を用いて被覆樹脂30について説明する。まず、本実施例においては、被覆樹脂30は、図3に示すように、第1及び第2の端部領域30A及び30Bにおいてパッド電極P1及びP2に接する以外は、ボンディングワイヤB1のみに接している。すなわち、被覆樹脂30は、ボンディングワイヤB1のみを被覆するように構成されている。
【0029】
また、本実施例においては、被覆樹脂30は、中間領域30Cにおいて最も線径が小さくなるように(細くなるように)構成されている。具体的には、被覆樹脂30における中間領域30Cの断面直径(外径)D3は、第1の端部領域30Aの断面直径(外径)D1及び第2の端部領域30Aの断面直径D2よりも小さい。従って、被覆樹脂30における中間領域30Cは、第1及び第2の端部領域30A及び30Bよりも、そのボンディングワイヤB1の被覆厚が小さい。
【0030】
ボンディングワイヤB1が被覆樹脂30に被覆されていることで、ボンディングワイヤB1の適切な保護を図ると共に、ボンディングワイヤB1に与える熱や振動の影響を抑制することができる。具体的には、まず、ボンディングワイヤB1を被覆樹脂30によって被覆することで、ボンディングワイヤB1を電気的に保護することができる。例えば、高湿な環境下で動作する場合でも、例えば水分などがボンディングワイヤB1に付着することが防止される。従って、半導体素子20の導通不良などが抑制される。
【0031】
また、被覆樹脂30自体がボンディングワイヤB1並びにパッド電極P1及びP2のみに接するように構成されていることで、被覆樹脂30が外部からの機械的影響(例えば振動)などを受けにくい。従って、ボンディングワイヤB1は、半導体装置10の外部からの機械的影響を受けにくくなる。
【0032】
また、被覆樹脂30は、所定の熱膨張率を有するため、温度変化に応じて熱膨張及び熱収縮を行う。従って、被覆樹脂30自体がボンディングワイヤB1に一定の熱応力を与える可能性がある。また、その熱応力はボンディングワイヤB1の中間の領域で大きくなりやすい。これに対し、被覆樹脂30は、中間領域30Cにおいて他の領域よりも断面直径(被覆厚)が小さい。従って、ボンディングワイヤB1が被覆樹脂30によって熱応力を受けることが抑制され、例えばボンディングワイヤB1の断線が抑制される。
【0033】
一方、被覆樹脂30の第1及び第2の端部領域30A及び30Bでは、ボンディングワイヤB1とパッド電極P1及びP2との接合を保証するために、高い保護強度が求められる。これに対し、被覆樹脂30は、第1及び第2の端部領域30A及び30Bにおいて中間領域30Cよりも大きな断面直径でボンディングワイヤB1を被覆している。従って、ボンディングワイヤB1とパッド電極P1及びP2との接続が確実に保護される。
【0034】
ここで、図4を用いて、半導体素子20について説明する。図4は、半導体素子20の近傍における半導体装置10の断面図である。本実施例においては、半導体素子20の各々は、支持基板21と、発光部として支持基板21上に積層されたp型半導体層(第1の半導体層)22、発光層23及びn型半導体層(第2の半導体層)24とを含む半導体発光素子である。p型半導体層22、発光素子23及びn型半導体層24は、例えば、窒化物系半導体からなる。
【0035】
具体的には、半導体素子20は、支持基板21上に、パッド電極P4として、p側パッド電極P4A及びn側パッド電極P4Bを有する。なお、p側パッド電極P4Aは、ボンディングワイヤB2としてのp側ボンディングワイヤB2Aを介して、サブマウント基板13上のパッド電極P3に接続されている。また、n側パッド電極P4Bは、ボンディングワイヤB2としてのn側ボンディングワイヤB2Bを介して、他のパッド電極P3に接続されている。
【0036】
また、半導体素子20は、支持基板21上に形成され、p側パッド電極P4Aに接続されたp側配線電極W3Aと、n側パッド電極P4Bに接続されたn側配線電極W3Bとを有する。また、半導体素子20は、p型半導体層22に接続されたp電極25と、n型半導体層24に接続されたn電極26とを有する。
【0037】
本実施例においては、p電極25は、p型半導体層22上に膜状に形成されている。また、n電極26は、p型半導体層22側からp型半導体層22及び発光層23を貫通してn型半導体層24に接続されている。また、p電極25及びn電極26は、フリップチップ実装によって支持基板21上のp側配線電極W3A及びn側配線電極W3Bにそれぞれ接続(接合)されている。本実施例においては、半導体素子20は、n型半導体層24の上面を光取り出し面とする。
【0038】
なお、半導体素子20は、p型半導体層22、発光層23及びn型半導体層24の側面と、p電極25及びn電極26を覆うように形成された絶縁膜27を有する。また、絶縁膜27には、p電極25及びn電極26の一部を露出させる開口部が設けられている。p電極25及びn電極26は、当該開口部を介して、それぞれp側配線電極W3A及びn側配線電極W3Bに接続されている。
【0039】
また、本実施例においては、半導体素子20は、n型半導体層24上に形成された波長変換層28を有する。波長変換層28は、例えば蛍光体粒子を含有する層状のバインダからなる蛍光体層を含む。波長変換層28は、発光層23から放出されて波長変換層28に入射された光の波長を変換し、当該波長変換光を出射光として出射する。本実施例においては、半導体素子20は、波長変換層28からの出射光を出力光として出力(放出)する発光素子である。
【0040】
なお、本実施例においては、マウント基板11の上面を基準とした場合、半導体素子20の上面(本実施例においては波長変換層28の上面)よりも高い位置にボンディングワイヤB2(ボンディングワイヤB2A及びB2B)及びボンディングワイヤB1の頂部が配置されている。すなわち、被覆樹脂30の頂部(本実施例においては中間領域30Cの頂部)は、半導体素子20の上面よりも高い位置に配置されている。
【0041】
ここで、半導体素子20が発光素子である場合、被覆樹脂30によって半導体装置10の光学的特性が向上する。具体的には、発光素子から放出された出射光の一部は、直接的又は間接的に被覆樹脂30に入射する場合がある。この被覆樹脂30内の光は、迷光となって被覆樹脂30内を伝搬する。
【0042】
しかし、被覆樹脂30は、そのほとんどが空気中に露出しており、換言すれば被覆樹脂30よりも小さな屈折率の媒体に接している。従って、被覆樹脂30に入射した光は、被覆樹脂30内において反射を繰り返し、減衰又は消滅する可能性が高い。すなわち、被覆樹脂30に入射した光が再度被覆樹脂30から出射する可能性は低い。
【0043】
従って、被覆樹脂30を有する場合、発光装置としての半導体装置10から迷光(意図しない光)が放出されることが抑制される。従って、半導体装置10として、例えば光学ノイズが少ない高品質な発光装置を提供することができる。
【0044】
なお、本実施例においては、被覆樹脂30が半導体素子20の上面よりも高い位置に頂部を有する場合について説明したが、被覆樹脂30は半導体素子20の上面よりも低い位置に頂部を有していてもよい。例えば、半導体素子20が発光素子として発光ダイオードを有する場合、発光素子からは放射的に光が放出される。従って、被覆樹脂30が設けられていれば、半導体装置10の光学的特性が向上する可能性が高い。
【0045】
なお、上記したように、本実施例においては半導体素子20が発光素子を含む場合について説明したが、半導体素子20は発光素子を含む場合に限定されない。また、半導体素子20のサブマウント基板13上への搭載(接続)構成は、上記した構成に限定されない。例えば、半導体素子20はトランジスタ素子であってもよいし、ボンディングワイヤB2を用いることなくパッド電極P2に接続されていてもよい。
【0046】
[半導体装置10の製造方法]
次に、図5A図5Dを用いて、半導体装置10の製造方法について説明する。図5A図5Dは、それぞれ、半導体装置10の製造中におけるマウント基板11を示す図3と同様の断面図である。
【0047】
[半導体素子20の搭載及びボンディングワイヤB1の形成]
図5Aは、半導体素子20が搭載され、ボンディングワイヤB1が形成されたマウント基板11の断面図である。まず、配線電極W1及びパッド電極P1が形成された配線基板12をマウント基板11に接合する(工程1)。また、パッド電極P2が形成されたサブマウント基板13に半導体素子20を搭載する(工程2)。本実施例においては、パッド電極P2の他、配線電極W2及びパッド電極P3が形成されたサブマウント基板13を準備した。また、ボンディングワイヤB2を用いてパッド電極P3を半導体素子20のパッド電極P4に接続することで、半導体素子20を搭載した。
【0048】
続いて、配線基板12上のパッド電極P1と、サブマウント基板13上に搭載された半導体素子20に接続されたパッド電極P2とをボンディングワイヤB1によって接続する(工程3)。本実施例においては、パッド電極P1にボールを形成してパッド電極P2にワイヤを接続するボールボンディングを行った。
【0049】
[樹脂粘液30PによるボンディングワイヤB1の被覆]
図5Bは、ボンディングワイヤB1に樹脂粘液30Pを滴下している途中のマウント基板11を示す図である。また、図5Cは樹脂粘液30Pを滴下した直後のボンディングワイヤB1を示す図である。
【0050】
ボンディングワイヤB1を形成した後、樹脂粘液30P、すなわち樹脂材料からなる粘液をボンディングワイヤB1に沿って滴下する(図5B及び図5C、工程4)。これによって、ボンディングワイヤB1の表面に纏わりつくように樹脂粘液30PがボンディングワイヤB1を被覆していく。すなわち、本工程では、ボンディングワイヤB1に樹脂粘液30Pを滴下し、樹脂粘液30PによってボンディングワイヤB1を鞘状に被覆する。
【0051】
より具体的には、本実施例においては、まず、ボンディングワイヤB1の直上に樹脂粘液30Pの滴下装置(図示せず)のノズルNZの先端を配置し、樹脂粘液30Pを所定量滴下する(図5B、工程4A)。これによって、樹脂粘液30PがボンディングワイヤB1の表面を伝ってその端部であるパッド電極P2に達する。そして、滴下を進めるに従って、樹脂粘液30PがボンディングワイヤB1を被覆していく。
【0052】
また、本実施例においては、樹脂粘液30Pを滴下しつつ滴下装置のノズルNZの先端をボンディングワイヤB1に沿って移動させる(図5C、工程4B)。すなわち、樹脂粘液30Pの滴下位置をボンディングワイヤB1に沿って移動させる。これによって、ボンディングワイヤB1の全体が樹脂粘液30Pによって確実に被覆される。
【0053】
なお、この樹脂粘液30Pの滴下工程においては、滴下装置のノズルNZの内径及び移動速度、並びに、樹脂粘液30Pの粘度、滴下量、滴下圧力及び滴下時間などを調節することで、上記したようなようにボンディングワイヤB1を被覆することができる。
【0054】
[樹脂粘液30Pの硬化、被覆樹脂30の形成]
図5Dは、樹脂粘液30Pを硬化させて被覆樹脂30が形成されたマウント基板11を示す図である。樹脂粘液30PをボンディングワイヤB1上に形成した後、樹脂粘液30Pを硬化させる(図5D、工程5)。本工程では、例えば樹脂粘液30Pが熱硬化性樹脂からなる場合は樹脂粘液30Pを加熱し、樹脂粘液30Pが紫外線硬化型樹脂からなる場合は樹脂粘液30Pに紫外線を照射する。
【0055】
本実施例においては、樹脂粘液30Pを加熱することで樹脂粘液30Pを硬化させた。ここで、樹脂粘液30Pが硬化する間、重力に従って、樹脂粘液30PがボンディングワイヤB1上をパッド電極P1及びP2に向かって移動する。これによって、パッド電極P1及びP2の近傍は樹脂粘液30Pが比較的多くなる。従って、樹脂粘液30Pが硬化した際には、図5Dに示すように、樹脂粘液30Pが比較的少ない領域である中間領域30Cを有する被覆樹脂30が形成される。このようにして、被覆樹脂30を有する半導体装置10を作製することができる。
【0056】
なお、本実施例においては、半導体装置10が複数(4つ)の半導体素子20を有する場合について説明したが、半導体装置10は、少なくとも1つの半導体素子20を有していればよい。また、配線基板12は少なくともパッド電極P1を有していればよい。
【0057】
このように、本実施例においては、半導体装置10は、パッド電極P1を有する配線基板12と、半導体素子20が搭載され、半導体素子20に接続されたパッド電極P2を有するサブマウント基板13と、パッド電極P1及びP2間に接続されたボンディングワイヤB1と、を有する。
【0058】
また、半導体装置10は、ボンディングワイヤB1を鞘状に被覆する被覆樹脂30を有する。従って、半導体素子20へのボンディングワイヤB1が適切に保護され、高寿命かつ高品質な半導体装置10を提供することができる。
【0059】
また、半導体装置10は、複数(m個)の半導体素子20を有する場合、配線基板12上のm個(mは2以上の整数)のパッド電極P1と、サブマウント基板13上のm個のパッド電極P2との間に接続されたm個のボンディングワイヤB1と、m個のボンディングワイヤB1の各々を鞘状に被覆するm個の被覆樹脂30とを有する。従って、ボンディングワイヤB1の各々を適切に保護することが可能となる。
【0060】
また、本実施例においては、半導体装置10の製造方法として、配線基板12上に形成されたパッド電極P1と、サブマウント基板13に搭載された半導体素子20に接続されたパッド電極P2とをボンディングワイヤB1によって接続する工程(工程3)と、ボンディングワイヤB1に樹脂粘液30Pを滴下し、樹脂粘液30Pによってボンディングワイヤ30Pを鞘状に被覆する工程(工程4)と、樹脂粘液30Pを硬化させる工程(工程5)と、を有する。従って、半導体素子20へのボンディングワイヤB1が適切に保護され、高寿命かつ高品質な半導体装置10を提供することができる。
【実施例2】
【0061】
図6は、実施例2に係る半導体装置40の断面図である。半導体装置40は、半導体装置10と同様の被覆樹脂(第1の被覆樹脂)30に加え、ボンディングワイヤB2を被覆する被覆樹脂(第2の被覆樹脂)50を有する。半導体装置40は、その他は半導体装置10と同様の構成を有する。
【0062】
具体的には、半導体装置40は、半導体装置10と同様に、サブマウント基板13上に形成され、パッド電極P2に接続された配線電極W2及び配線電極W2に接続されたパッド電極P3と、半導体素子20に設けられたパッド電極P4と、パッド電極P3及びP4間に接続されたボンディングワイヤB2と、を有する。
【0063】
そして、半導体装置40は、ボンディングワイヤB2を鞘状に被覆する被覆樹脂50を有する。ボンディングワイヤB2及び被覆樹脂50は、ボンディングワイヤB1及び被覆樹脂30と同様に、少なくとも半導体素子20の個数分形成される。従って、半導体素子40は、例えばm個の半導体素子20を有する場合、少なくともm個のボンディングワイヤB2及びm個の被覆樹脂50を有する。また、例えば半導体素子20が1つの場合、ボンディングワイヤB2及び被覆樹脂50は少なくとも1つ設けられる。
【0064】
本実施例においては、半導体素子20及びサブマント基板13間のボンディングワイヤB2が被覆樹脂50によって被覆されている。従って、ボンディングワイヤB1及びB2がそれぞれ被覆樹脂30及び50に被覆されている。従って、ボンディングワイヤB1のみならず、ボンディングワイヤB2の確実な保護を行うことができる。従って、半導体素子20へのボンディングワイヤB1及びB2が適切に保護され、高寿命かつ高品質な半導体装置40を提供することができる。
【0065】
なお、本実施例においては、例えば図6に示すように半導体素子20の上面よりも被覆樹脂50の頂部が高い位置に配置されている。従って、半導体素子20が発光素子を含む場合、被覆樹脂30と同様に、半導体素子20からの迷光が被覆樹脂50内で消滅する可能性が高い。従って、迷光の放出が抑制された高品質な半導体装置40を提供することができる。
【実施例3】
【0066】
図7は、実施例3に係る半導体装置60の上面図である。図8は、半導体装置60の断面図である。図8は、図7のW-W線に沿った断面図であるが、一部の図示を省略している。半導体装置60は、埋込樹脂70を有する点を除いては、半導体装置10と同様の構成を有する。
【0067】
本実施例においては、半導体装置60は、マウント基板11上における配線基板12及びサブマウント基板13間の領域においてマウント基板11と被覆樹脂30の各々との間の空間を埋め込むように形成された埋込樹脂70を有する。埋込樹脂70は、被覆樹脂30よりも低い粘度を有する樹脂材料からなる。
【0068】
また、本実施例においては、埋込樹脂70は、被覆樹脂30のマウント基板11側の表面に接するようにマウント基板11上に形成されている。なお、埋込樹脂70は、被覆樹脂30の隣接する他の被覆樹脂30側の表面に接していてもよい。なお、埋込樹脂70は、例えば、被覆樹脂30を形成した後、埋込樹脂70となる樹脂粘液を被覆樹脂30の上部からマウント基板11に滴下することで形成することができる。
【0069】
本実施例においては、比較的低粘度の樹脂である埋込樹脂70がボンディングワイヤB1の直下に形成され、ボンディングワイヤB1自体は比較的高粘度の被覆樹脂30によって被覆されている。これによって、ボンディングワイヤB1に生じ得る熱応力及びこれによる断線がさらに抑制される。
【0070】
具体的には、被覆樹脂30は、過度な温度変化を受けた場合、第1及び第2の端部領域30A及び30Bの熱膨張及び熱収縮の影響を無視できなくなる。第1及び第2の端部領域30A及び30Bが比較的大きく熱膨張及び熱収縮を行った場合、中間領域30Cの近傍のボンディングワイヤB1が、マウント基板11に近づく又は離れる方向に変形する場合がある。
【0071】
これに対し、埋込樹脂70が被覆樹脂30に接していることで、この被覆樹脂30及びボンディングワイヤB1の変形(移動)を抑制することができる。なお、埋込樹脂70が被覆樹脂30よりも低い粘度を有することが好ましいが、埋込樹脂70は被覆樹脂30とマウント基板11との間の空間を埋め込んでいれば一定の保護効果を得ることができる。
【0072】
本実施例においても、半導体装置60は少なくとも1つの半導体素子20を有していればよい。従って、半導体装置60は、配線基板12及びサブマウント基板13が固定されたマウント基板11と、マウント基板11上における配線基板12及びサブマウント基板13間の領域においてマウント基板11と被覆樹脂30との間の空間を埋め込むように形成された埋込樹脂70と、を有する。従って、半導体素子20へのボンディングワイヤB1が適切に保護され、高寿命かつ高品質な半導体装置60を提供することができる。
【0073】
また、半導体装置60は、複数の半導体素子20を有する場合、図7に示すように、少なくともm個(mは2以上の整数)の被覆樹脂30を有する。また、半導体装置60は、マウント基板11上における配線基板12及びサブマウント基板13間の領域においてm個の被覆樹脂30の全体とマウント基板11との間の空間を埋め込むように形成された埋込樹脂70と、を有する。従って、半導体素子20へのm個のボンディングワイヤB1の全体がm個の被覆樹脂30及び埋込樹脂70によって適切に保護され、高寿命かつ高品質な半導体装置60を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
10、40、60 半導体装置
11 マウント基板
12 配線基板
13 サブマウント基板
20 半導体素子
B1、B2 ボンディングワイヤ
30、50 被覆樹脂
70 埋込樹脂
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8